説明

結び目のない縫合糸アンカー

【課題】縫合糸アンカーを提供する。
【解決手段】縫合糸アンカー10は、シェル12と、アンカー部材14と、を含む。シェルは、遠位端部18と、近位端部20と、それらの間の側壁22と、を有し、内部を通る軸方向カニュレーション部24を画定する本体26を含む。アンカー部材は、遠位端部28と、カニュレーション部内に嵌るような大きさにされた近位端部30と、を有する本体を含む。側壁は、アンカー部材がカニュレーション部内に受け入れられた状態で、アンカー部材の第1の側方部分が横方向に露出し、アンカー部材の横方向に反対側の第2の側方部分が側壁によって取り囲まれるように、側方のカットアウトを画定する。第1の側方部分の摩擦強化手段は、縫合糸アンカーが、骨表面により画定された骨孔内に配置されたときに、摩擦により骨表面に係合する。縫合糸は、シェルとアンカーとの間、更にアンカーと骨表面との間に捕らえられる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本出願は縫合糸アンカーに関し、より詳細には、結び目のない縫合糸アンカーに関する。
【0002】
結び目のない縫合糸アンカーにより、外科医が縫合糸をアンカーに対して固定するために結び目を作ることを必要とせずに、縫合糸の骨への固定が可能となる。結び目のない特定のアンカーは、その遠位端部で縫合糸をノッチに捕捉し、次いで骨孔に挿入されて縫合糸をアンカーと骨との間に捕らえて固定をもたらす。軟骨では、縫合糸は時間と共に骨に食い込む可能性があり、そのため、縫合糸の張力が緩む。その他の特定の設計では、縫合糸を連結部品間に捕捉するが、この連結部品は更に外側に広がって、骨孔からの引き戻しを制限する。これらのアンカーは多くの利益を有するが、普通のねじ式アンカーと同じレベルの骨への固定は通常得られない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、単純かつ洗練された設計で、従来技術のこれらの制限及び他の制限を克服する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明による縫合糸アンカーは、シェルと、アンカー部材と、を含む。シェルは、遠位端部と、近位端部と、それらの間の側壁と、を有し、内部を通る軸方向カニュレーション部を画定する本体を含む。アンカー部材は、遠位端部と、カニュレーション部内に嵌るような大きさにされた近位端部と、を有する本体を含む。側壁は、アンカー部材がカニュレーション部内に受け入れられた状態で、アンカー部材の第1の側方部分が横方向に露出し、アンカー部材の横方向に反対側の第2の側方部分が側壁によって取り囲まれるように、側方のカットアウトを画定する。第1の側方部分の摩擦強化手段は、縫合糸アンカーが、骨表面により画定された骨孔内に配置されたときに、摩擦により骨表面に係合するように構成されている。
【0005】
好ましくは、摩擦強化手段は、アンカー部材本体周囲の外部スレッディングを含む。更に好ましくは、アンカー部材本体の外部スレッディングに係合した、側壁の内側表面上の補足的な内部スレッディングが設けられる。
【0006】
好ましくは、カットアウトはシェルの近位端部まで延在する。好ましくは、シェルの遠位端部は、アンカー部材を完全に取り囲む。
【0007】
好ましくは、アンカー部材の遠位部分は滑らかであり、摩擦強化手段がなく、そのため骨孔への進入及び整列が容易となる。
【0008】
好ましくは、1つ以上の縫合糸が、側壁とアンカー部材との間に係止される。軸方向に延在する縫合糸受け入れ凹部は、シェルに対するアンカー部材の回転にもかかわらず縫合糸を中に配置されたままにするように構成されたアンカー部材の第2の側方部分に隣接して側壁に沿って設けられることができる。好ましくは、縫合糸は、シェルからその近位端部を越えて近位に延在し、その結果、シェルは、骨孔を形成する骨を縫合糸による擦過から保護するように機能することができる。
【0009】
本発明の一態様では、縫合糸は、側壁とアンカー部材との間でカニュレーション部に沿って遠位方向に下がり、シェルの遠位端部でカニュレーション部を出て、アンカー部材の第1の側方部分に沿って上がるように、通される。
【0010】
本発明の別の態様では、縫合糸通し装置は、アンカー部材と側壁との間に延在する。通し装置は、細長い可撓性部材を含み、可撓性部材は、シェルの近位端部から延び、かつ縫合糸捕捉構成で終了する。好ましくは、縫合糸捕捉構成は、縫合糸捕捉ループを含む。
【0011】
本発明による方法は、軟組織の骨への固定を提供する。本方法は、縫合糸を軟組織に通す工程と、骨に骨孔を準備する工程と、縫合糸アンカーのシェルを骨孔内に配置させる工程と、アンカー部材をシェルに係合させる工程と、を含む。シェルは、遠位端部と、近位端部と、それらの間の側壁と、を有し、内部を通る軸方向カニュレーション部を画定する本体を含む。アンカー部材は、縫合糸がアンカー部材と側壁との間で軟組織から延びる状態で、カニュレーション部内に配置され、係合させる工程が、縫合糸をアンカー部材と側壁との間に係止させる。
【0012】
好ましくは、アンカー部材をシェルに係合させる前に、軟組織から延びる縫合糸は、所望の程度まで引っ張られる。
【0013】
好ましくは、縫合糸は更に、アンカー部材と骨孔内の骨との間に係止される。
【0014】
好ましくは、縫合糸は、シェルからその近位端部を越えて組織に向かって延びることにより、骨孔から延在し、そのためシェルは縫合糸と骨との間の擦傷を低減する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による縫合糸アンカーの分解斜視図。
【図2】骨及び軟組織の断面側面図。
【図3】ドライバーツールに装填された図1の縫合糸アンカーの斜視図。
【図4】図1の縫合糸アンカーが初めに移植されている図2の骨の断面側面図。
【図5】移植されている図1の縫合糸アンカーのアンカー部材を示す断面側面図。
【図6】完全に移植された図1の縫合糸アンカーを示す断面側面図。
【図7A】本発明による縫合糸アンカーのシェルの代替的実施形態の外側斜視図。
【図7B】図7Aのシェルの内側斜視図。
【図8】アンカー部材(断面図)が中に配置された図7Aのシェルの頂面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明による縫合糸アンカー10を図示する。この図は、シェル12と、シェル内に受け入れられるアンカー部材14とを含む。シェル12は、遠位端部18と近位端部20とを有する本体16を含み、その間の側壁22は、アンカー部材14を受け入れるように構成された軸方向のカニューレ処置24を画定する。
【0017】
アンカー部材14は、遠位端部28と近位端部30とを有する細長い本体26を含み、これはカニュレーション部24内に嵌るような大きさにされる。本体26の遠位ノーズ32は、減少した直径、及びねじ切りのない滑らかな外側表面34を有する。遠位端部での面取り36は、骨孔(図1に図示せず)への進入を容易にする例えば六角形の工具係合凹部38が、本体の近位端部30に設けられる。本体の近位端部30は、より小さい遠位ノーズ32で浮き出し40を作るわずかに大きい直径を有する。骨係合ねじ山42は、その近位端部30で本体26を取り囲み、浮き出し40まで延在し、より硬い皮質骨(図1には図示せず)内での更なる保持のために、平行する第2のねじ山44が近位端部30で始まる。
【0018】
シェルの遠位端部18における側壁22は、カニュレーション部24を取り囲み、アンカー部材の遠位ノーズ32に対応する大きさにされた内径を有する。シェルの近位端部20における側壁22は、アンカー部材本体の近位端部30に対応する大きさにされた、より大きい内径を有し、浮き出し46を作り、これは、浮き出し40に係合して、シェル12を通るアンカー部材14の遠位運動を制限する。側壁22の近位端部20における内部ねじ山48は、ねじ山42及び44と嵌合する。側壁22は、近位端部20においてカニュレーション部24を取り囲まず、むしろ開いて側方のカットアウト50を形成して、ねじ山42及び44を含むアンカー部材14の片側を露出させる。
【0019】
シェル12は、カニュレーション部24を通して、かつシェル12とアンカー部材14との間で1つ以上の縫合糸52を受け入れるように構成されている。長手方向の縫合糸経路54は、その長さに沿って内部ねじ山48の頂点の高さを低減することによって作られる。したがって、経路内にある縫合糸52は、ねじ山42及び44とねじ山48との相互作用により、経路54から抜け出しにくい。
【0020】
ねじ山42及び44の頂点の高さ、即ち直径は、アンカー部材14の近位端部30で、より大きい。遠位ねじ山42の直径がより小さいことにより、骨孔(図1には図示せず)に入る際に「より小さいプロファイル」のデバイス構造が可能となる。シェル12が骨孔内に前進した後、アンカー部材14は、静止したシェル12に対して回転し、動かされる。より大きい近位ねじ山42及び44は、シェル12を広げさせ、更に縫合糸の房52を2つの構成部品間で圧縮する。
【0021】
縫合糸アンカー10は、好適な生体適合性材料で形成され、好ましくは、滅菌処理され、耐細菌密封部材(図示せず)内にパッケージ化されることにより、滅菌外科手術への準備が整えられている。多くの生分解性材料は、PEEKポリマー(ポリエーテルエーテルケトン)又はステンレス鋼などの非生分解性材料よりも、低強度かつ脆性である。アンカー10の単純な設計により、構造的一体性を維持しながら、そのような生分解性材料の使用をより簡単にすることができる。
【0022】
本発明の新規縫合糸アンカーは、金属材料、非生分解性ポリマー、生分解性ポリマー、又は生分解性ポリマー若しくはコポリマーと生体機能性セラミックとの複合材料から作製することができる。本明細書で使用するとき、生分解性という用語は、体内で分解し、次いで体内に吸収されるか又は体内から排出されるかのいずれかである材料を意味すると定義される。本明細書で使用するとき、生体機能性セラミックという用語は、体内組織と適合性がある、セラミック材料及びガラス材料を意味すると定義される。生体機能性セラミックは、好ましくは生分解性である。
【0023】
本発明のアンカーを製造するために使用することができる金属材料としては、ステンレス鋼、チタン、ニッケルとチタンとの合金、又は他の生体適合性金属材料が挙げられる。
【0024】
本発明のアンカーを製造するために使用することができる非生分解性材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、PEEK、又は他の生体適合性の非吸収性ポリマーが挙げられる。
【0025】
本発明で使用されるアンカーを製造するために使用することができる生分解性ポリマーとしては、脂肪族ポリエステル、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアミド、及びポリアルキレンオキシドからなる群から選択される生分解性ポリマーが挙げられる。好ましくは、生分解性ポリマーは、脂肪族ポリエステルのポリマー及びコポリマー、並びにそれらのブレンドである。脂肪族ポリエステルは、典型的には、開環重合で合成される。好適なモノマーとしては、乳酸、ラクチド(L−、D−、メソ、及びD、Lの混合を含む)、グリコール酸、グリコリド、ε−カプロラクトン、p−ジオキサノン(1,4−ジオキサン−2−オン)、トリメチレンカーボネート(1,3−ジオキサン−2−オン)、δ−バレロラクトン、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。
【0026】
本発明の複合材料アンカーに使用することができる生体機能性セラミックとしては、モノ−、ジ−、トリ−、α−トリ−、β−トリ−、及びテトラ−リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、硫酸カルシウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸マグネシウムカルシウムが挙げられる。β−リン酸トリトリカルシウムを使用することが、特に好ましい。生体機能性セラミックに加えて、バイオグラスもまた、この複合材料スクリューに使用することができる。バイオグラスとしては、リン酸ガラス及びリン酸バイオグラスを挙げることができる。
【0027】
好適な生体適合性の合成ポリマーとしては、脂肪族ポリエステル、ポリ(アミノ酸)、コポリ(エーテル−エステル)、シュウ酸ポリアルキレン、ポリアミド、チロシン誘導ポリカーボネート、ポリ(イミノカーボネート)、ポリオルトエステル、ポリオキサエステル、ポリアミドエステル、ポリオキサエステル含有アミン基、ポリ(無水物)、ポリホスファゼン、ポリウレタン、ポリ(エーテルウレタン)、ポリ(エステルウレタン)、ポリ(プロピレンフマレート)、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)、及びこれらのブレンドからなる群から選択されるポリマーを挙げることができる。
【0028】
本発明の目的上、脂肪族ポリエステルとしては、ラクチド(乳酸、D−、L−、及びメソラクチドを含む)、グリコリド(グリコール酸を含む)、ε−カプロラクトン、p−ジオキサノン(1,4−ジオキサン−2−オン)、トリメチレンカーボネート(1,3−ジオキサン−2−オン)、トリメチレンカーボネートのアルキル誘導体、δ−バレロラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、ε−デカラクトン、ヒドロキシブチレート、ヒドロキシバレレート、1,4−ジオキセパン−2−オン(その二量体1,5,8,12−テトラオキサシクロテトラデカン−7,14−ジオンを含む)、1,5−ジオキセパン−2−オン、6,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2−オン、2,5−ジケトモルホリン、ピバロラクトン、α,α−ジエチルプロピオラクトン、エチレンカーボネート、エチレンオキサレート、3−メチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン、3,3−ジエチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン、6,6−ジメチル−ジオキセパン−2−オン、6,8−ジオキサビシクロオクタン−7−オンのホモポリマー及びコポリマー、並びにこれらのポリマーブレンドが挙げられるが、それらに限定されない。更なる例示的なポリマー又はポリマーブレンドとしては、非限定的な例として、ポリジオキサノン、ポリヒドロキシブチレート−コ−ヒドロキシバレレート、ポリオルトカーボネート、ポリアミノカーボネート、及びポリトリメチレンカーボネートが挙げられる。本発明で用いられる脂肪族ポリエステルは、直鎖、分岐又は星型構造を有するホモポリマー又はコポリマー(ランダム、ブロック、セグメント化、テーパ形状ブロック、グラフト、三元ブロック等)であることができる。本発明の目的において、ポリ(イミノカーボネート)には、Dombら編「Handbook of Biodegradable Polymers」、Hardwood Academic Press、251〜272頁(1997年)にKemnitzer及びKohnにより記載されたポリマーが挙げられると理解される。本発明の目的上、コポリ(エーテル−エステル)は、Cohn及びYounesによる、「Journal of Biomaterials Research」、Vol.22、993〜1009頁(1988年)、並びにCohnによる、「Polymer Preprints(ACS Division of Polymer Chemistry)」、Vol.30(1)、498頁(1989年)に記載のコポリエステル−エーテル(例えば、PEO/PLA)が挙げられることが理解される。本発明の目的上、ポリアルキレンオキサレートとしては、米国特許第4,208,511号、同第4,141,087号、同第4,130,639号、同第4,140,678号、同第4,105,034号、及び同第4,205,399号に記載されているものが挙げられる。ポリホスファゼン、即ち、L−ラクチド、D,L−ラクチド、乳酸、グリコリド、グリコール酸、パラ−ジオキサノン、トリメチレンカーボネート、及びE−カプロラクトンから作製される、コ−、ター−、及びより高次の混合モノマーを基にしたポリマーは、Allcockによる、「The Encyclopedia of Polymer Science」、Vol.13、31〜41頁,Wiley Intersciences、John Wiley & Sons、1988年、及びVandorpeらによる、Dombら編「Handbook of Biodegradable Polymers」、Hardwood Academic Press、161〜182頁(1997年)などに記載されている。ポリ無水物としては、HOOC−−C.sub.6H.sub.4−−O−−(−CH.sub.2).sub.m−−O−−C.sub.6H.sub.4−−COOH(式中、「m」は2〜8の範囲内の整数である)の形態の二塩基酸から誘導されたもの、及び12個までの炭素からなる脂肪族α〜ω二塩基酸を有する、そのコポリマーが挙げられる。ポリオキサエステル、ポリオキサアミド、並びにアミン及び/又はアミド基を含有するポリオキサエステルは、米国特許第5,464,929号、同第5,595,751号、同第5,597,579号、同第5,607,687号、同第5,618,552号、同第5,620,698号、同第5,645,850号、同第5,648,088号、同第5,698,213号、同第5,700,583号、及び同第5,859,150号のうちの1つ以上に記載されている。ポリオルトエステルは、例えば、Dombら編「Handbook of Biodegradable Polymers」、Hardwood Academic Press,99〜118頁(1997年)に、Hellerによって記載されているものである。
【0029】
ここで更に図2を参照すると、ある長さの縫合糸52が軟組織60(例えば、腱板腱など)を通って、骨64(上腕骨など)に準備された骨孔62に隣接して通されている。骨は、硬い外側皮層65と、軟らかい内側海綿状部分66と、を有する。
【0030】
ここで更に図3を参照すると、アンカー10がドライバーツール68に装填されている。ドライバー68は、ツールの遠位端部74を有する細長いシャフト72を含む内側ドライバー70(六角ドライバーなど)を含み、これは細長い外管76に共軸的に受け入れられる。ツールの端部74は、アンカー本体14のツール受け入れ凹部38内に受け入れられ、外管76の遠位端部78は、シェルの近位端部20と接する。
【0031】
軟組織60からの縫合糸52は上に延びて、関節鏡処置において骨孔62にアクセスするのに使用されるカニューレ80を出る。遠位縫合糸捕捉ループ86と近位通し装置タブ88とを有する細長い可撓性ワイヤ84を含む縫合糸通し装置82は、シェル12とアンカー部材14との間で縫合糸経路54に沿って延在する。縫合糸52は、ループ86に捕捉され、通し装置82が経路54に沿って引かれると、縫合糸が引かれ経路54を通されて、それをアンカー10内に装填する。
【0032】
ここで更に図4を参照すると、ドライバーツール68の縫合糸アンカー10は、縫合糸52を軟組織60から運び、カニューレ80を下方に供給するが、これは、カットアウト50が、縫合糸52が軟組織60を通過する場所から離れて面する状態で、骨孔62内に設置される。外管76にかかる力は、シェル12を骨64の表面の下にある骨孔62内に進める。アンカー部材のねじ山42及び44は、シェルのねじ山48又は骨64にまだ係合していない。縫合糸52は、軟組織60からアンカー10に、そして経路54を下方に遠位に延び、次いで遠位端部18を越えて、近位に上方に戻り、骨孔62を出る。ここで縫合糸52は、軟組織60を所望の位置まで引くように、及び所望の張力を縫合糸52にかけるように、引っ張られる。
【0033】
ここで更に図5を参照すると、外管76が引き戻され、内側ドライバー70が回転されて、アンカー部材14をシェル12及び骨孔62内に進ませる。図6に示されるようにアンカー部材14が完全に位置付けられると、縫合糸52は、経路54に沿ってシェル12とアンカー部材14との間、更に骨64とアンカー部材のねじ山42、44との間に捕らえられる。第2のねじ山44は、硬い皮質骨内65での更なる保持を提供する。シェル12は、縫合糸52を骨64に食い込むことから保護する。
【0034】
図7A及び7Bは、側壁22の外面92が長手方向の突出した固定突起部94及び横方向の突出した固定突起部96のそれぞれ両方を有することを除いてはシェル12と類似する、シェル90の更なる実施形態を説明する。横方向の突起部96は、シェル12の周りを周囲方向に延出し、骨内で引き抜きに対する更なる保持力を提供する。長手方向の突起部94は、アンカー部材12(図7A又は7Bには図示せず)の挿入中に適用されるトルクによって誘発される回転に対する抵抗を提供する。あるいは、シェル90と外管76との間に回転防止係合が作られて、アンカー部材が挿入される際にシェルを回転に対抗して保持してもよい。例えば、1つ以上の近位突出部98をシェル90に形成し、外管の遠位端部76の嵌合くぼみ(図示せず)と整合してもよい。この実施形態は更に、よりはっきりとした障害を内部ねじ山102に含む縫合糸経路100を示す。
【0035】
本発明について、その好ましい実施形態に関連して説明してきた。明らかに、先の詳細な説明を読み理解すると、修正及び変更が他者にも思いつくであろう。そのような修正及び変更が添付の特許請求の範囲及びその等価物の範疇に入る限り、本発明はそのような修正及び変更のすべてを含むと解釈されるものとする。
【0036】
〔実施の態様〕
(1) シェルと、アンカー部材と、を含む縫合糸アンカーであって、
前記シェルは、遠位端部と、近位端部と、それらの間の側壁と、を有し、内部を通る軸方向カニュレーション部を画定する本体を含み、
前記アンカー部材は、遠位端部と、前記カニュレーション部内に嵌るような大きさにされた近位端部と、を有する本体を含み、
前記側壁は、前記アンカー部材が前記カニュレーション部内に受け入れられた状態で、前記アンカー部材の第1の側方部分が横方向に露出し、前記アンカー部材の横方向に反対側の第2の側方部分が前記側壁によって取り囲まれるように、側方のカットアウトを画定し、
前記縫合糸アンカーが、骨表面により画定された骨孔内に配置されるときに、前記第1の側方部分の摩擦強化手段によって摩擦により前記骨表面に係合する、縫合糸アンカー。
(2) 前記摩擦強化手段が、前記アンカー部材本体周囲の外部スレッディングを含む、実施態様1に記載の縫合糸アンカー。
(3) 前記アンカー部材本体の前記外部スレッディングに係合した、前記側壁の内側表面上の補足的な(complimentary)内部スレッディングを更に含む、実施態様2に記載の縫合糸アンカー。
(4) 前記カットアウトが、前記シェルの近位端部まで延在する、実施態様1に記載の縫合糸アンカー。
(5) 前記シェルの遠位端部が、前記アンカー部材を完全に取り囲む、実施態様1に記載の縫合糸アンカー。
(6) 前記アンカー部材の遠位部分が、滑らかであり、前記摩擦強化手段がない、実施態様1に記載の縫合糸アンカー。
(7) 前記側壁と前記アンカー部材との間に係止された縫合糸を更に含む、実施態様1に記載の縫合糸アンカー。
(8) 軸方向に延在する縫合糸受け入れ凹部を前記アンカー部材の第2の側方部分に隣接して前記側壁に沿って更に含む、実施態様7に記載の縫合糸アンカー。
(9) 前記縫合糸が、前記シェルからその近位端部を越えて近位に延びる、実施態様7に記載の縫合糸アンカー。
(10) 前記側壁と前記アンカー部材との間で前記カニュレーション部に沿って遠位方向に下がり、前記シェルの遠位端部で前記カニュレーション部を出て、前記アンカー部材の第1の側方部分に沿って上がるように通る縫合糸を更に含む、実施態様1に記載の縫合糸アンカー。
【0037】
(11) 前記アンカー部材と前記側壁との間に延在する縫合糸通し装置を更に含み、前記通し装置が、細長い可撓性部材を含み、前記可撓性部材が、前記シェルの近位端部から延在し、かつ縫合糸捕捉構成で終了する、実施態様1に記載の縫合糸アンカー。
(12) 前記縫合糸捕捉構成が、縫合糸捕捉ループを含む、実施態様11に記載の縫合糸アンカー。
(13) 軟組織を骨に固定する方法であって、前記方法が、
縫合糸を前記軟組織に通す工程と、
前記骨に骨孔を準備する工程と、
縫合糸アンカーのシェルを前記骨孔内に配置させる工程であって、前記シェルが、遠位端部と、近位端部と、それらの間の側壁と、を有し、内部を通る軸方向カニュレーション部を画定する本体を含む、工程と、
アンカー部材を前記シェルに係合させる工程であって、前記縫合糸が、前記アンカー部材と前記側壁との間で前記軟組織から延びる状態で、前記アンカー部材が前記カニュレーション部内に配置され、前記係合させる工程により、前記縫合糸を前記アンカー部材と前記側壁との間に係止させる、工程と、を含む、方法。
(14) 前記アンカー部材を前記シェルに係合させる前に、前記縫合糸を引っ張って前記軟組織から所望の程度まで延ばす、実施態様13に記載の方法。
(15) 前記縫合糸を前記アンカー部材と前記骨孔内の前記骨との間に係止させることを更に含む、実施態様13に記載の方法。
(16) 前記縫合糸が、前記シェルからその近位端部を越えて前記組織に向かって延びることにより、前記骨孔から延在し、そのため前記シェルが、前記縫合糸と前記骨との間の擦傷を低減する、実施態様13に記載の方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シェルと、アンカー部材と、を含む縫合糸アンカーであって、
前記シェルは、遠位端部と、近位端部と、それらの間の側壁と、を有し、内部を通る軸方向カニュレーション部を画定する本体を含み、
前記アンカー部材は、遠位端部と、前記カニュレーション部内に嵌るような大きさにされた近位端部と、を有する本体を含み、
前記側壁は、前記アンカー部材が前記カニュレーション部内に受け入れられた状態で、前記アンカー部材の第1の側方部分が横方向に露出し、前記アンカー部材の横方向に反対側の第2の側方部分が前記側壁によって取り囲まれるように、側方のカットアウトを画定し、
前記縫合糸アンカーが、骨表面により画定された骨孔内に配置されるときに、前記第1の側方部分の摩擦強化手段によって摩擦により前記骨表面に係合する、縫合糸アンカー。
【請求項2】
前記摩擦強化手段が、前記アンカー部材本体周囲の外部スレッディングを含む、請求項1に記載の縫合糸アンカー。
【請求項3】
前記アンカー部材本体の前記外部スレッディングに係合した、前記側壁の内側表面上の補足的な内部スレッディングを更に含む、請求項2に記載の縫合糸アンカー。
【請求項4】
前記カットアウトが、前記シェルの近位端部まで延在する、請求項1に記載の縫合糸アンカー。
【請求項5】
前記シェルの遠位端部が、前記アンカー部材を完全に取り囲む、請求項1に記載の縫合糸アンカー。
【請求項6】
前記アンカー部材の遠位部分が、滑らかであり、前記摩擦強化手段がない、請求項1に記載の縫合糸アンカー。
【請求項7】
前記側壁と前記アンカー部材との間に係止された縫合糸を更に含む、請求項1に記載の縫合糸アンカー。
【請求項8】
軸方向に延在する縫合糸受け入れ凹部を前記アンカー部材の第2の側方部分に隣接して前記側壁に沿って更に含む、請求項7に記載の縫合糸アンカー。
【請求項9】
前記縫合糸が、前記シェルからその近位端部を越えて近位に延びる、請求項7に記載の縫合糸アンカー。
【請求項10】
前記側壁と前記アンカー部材との間で前記カニュレーション部に沿って遠位方向に下がり、前記シェルの遠位端部で前記カニュレーション部を出て、前記アンカー部材の第1の側方部分に沿って上がるように通る縫合糸を更に含む、請求項1に記載の縫合糸アンカー。
【請求項11】
前記アンカー部材と前記側壁との間に延在する縫合糸通し装置を更に含み、前記通し装置が、細長い可撓性部材を含み、前記可撓性部材が、前記シェルの近位端部から延在し、かつ縫合糸捕捉構成で終了する、請求項1に記載の縫合糸アンカー。
【請求項12】
前記縫合糸捕捉構成が、縫合糸捕捉ループを含む、請求項11に記載の縫合糸アンカー。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−71007(P2013−71007A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−213764(P2012−213764)
【出願日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【出願人】(507083478)デピュイ・ミテック・エルエルシー (47)
【住所又は居所原語表記】325 Paramount Drive,Raynham,Massachusetts 02767 United States of America
【Fターム(参考)】