説明

結像装置及び結像方法

従来の結像装置の分解能は、回折限界により制限される。回折限界を超える分解能を達成できる「完全」結像装置は、実現が不可能と考えられていた。しかしながら、本開示は、回折限界を超える向上した分解能を達成できるとともに実際に実現できる結像装置を提供する。該結像装置は、a.所定の屈折率プロファイルに従って変化する屈折率を有するレンズと、b.ソースと、c.装置から波を分離する出口と、d.レンズ、ソース、及び出口の周囲に配置された反射器とを備え、反射器及びレンズの屈折率プロファイルは共に、ソースから複数の方向のいずれかに伝送される波を出口へ指向させるよう構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結像装置及び結像方法に関し、特に完全結像の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
1870年頃、イエナ大学のドイツ人物理学者エルンスト・アッベは、光学結像理論を確立し、レンズの分解能限界を推定した。アッベ以前には、良質のレンズの作製は試行錯誤の繰り返しであった。アッベの理論により、彼と彼の協力者である光学機器作製業者カール・ツァイス及び事業家オットー・ショットとで近代光学産業を築くことが可能となった。カール・ツァイス・イエナは、100年以上を経た今でもよく知られている。
【0003】
従来のレンズは全て、分解能に限界がある。最強の顕微鏡でさえも、原子、分子、又はナノ構造を見ることは不可能であり、そのためには電子又は原子間力顕微鏡が必要である。光の波長で分解能限界が決まり、可視光の場合は0.5マイクロメートルである。
【0004】
2000年に、インペリアル・カレッジ・ロンドンのジョン・ペンドリー教授が顕著な理論的成果を発表し(非特許文献1)、これは、負屈折材料でできたレンズ(すなわち、正屈折材料とは逆方向に光を曲げるレンズ)が理論上は完全である、すなわち、負屈折材料でできた平面レンズ(非特許文献2)が、原理上はアッベの限界を超えて無限の分解能で光を結像できるというものである。それ以来、負屈折は完全結像を達成するための鍵であると考えられてきた。
【0005】
負屈折は、負の誘電率(dielectric)ε及びμの両方を有する材料で生じる。他の場合にも、例えばフォトニック結晶でもこれを実現することはできるが(非特許文献3)、負屈折による完全結像には負のε及びμが必要である。負屈折は、大きな議論の的であったが(概説は非特許文献4を参照)、この分野に携わる物理学者の大半は、負屈折が現実であるという見解で一致している。特に、実験(非特許文献5、非特許文献6)により、赤外光に関して負のスネルの法則が実証された。
【0006】
こうして、完全レンズの探求は、負屈折(天然材料では容易に見られない光学特性)が可能であると考えられるメタマテリアルに関する研究の発起を触発した(非特許文献2)。
【0007】
メタマテリアルは、負屈折を示すよう加工され得るが(非特許文献7及び非特許文献8を参照)、そのような場合、根本的な理由から吸収性且つ狭帯域である傾向がある。特に、Stockman(非特許文献9)は、負屈折が常に小さな帯域幅に制限され、散逸材料(dissipative materials)でのみ生じ得ることを示した。したがって、実際には、負屈折材料は、光を迅速に吸収することで結像能(imaging potential)が完全に損なわれる。さらに、レンズの厚さが波長と同等になると超分解能が失われやすく、波長よりも大幅に薄い「貧弱なレンズ(poor-man's lens)」しか回折限界を超えるサブ波長結像を示さなかった(非特許文献10)。
【0008】
レンズの分解能限界は、より一層高速のコンピュータの作製に必要なマイクロチップ技術を制限する。半導体作製業者は、シリコンチップ上の何十億もの微小トランジスタの構造を撮影する。さらなる小型化が求められるトランジスタに対する飽くなき欲求を満たすために、レンズの分解能限界ゆえに半導体作製業者はより短い波長の光を使用せざるを得ないが、これはますます困難になっている。したがって、分解能の改善を可能にする代替的な結像方法が必要である。
【0009】
負屈折材料に提案される代替形態は、不定計量を有する材料(materials with indefinite metric)に依存するハイパーレンズを含む(非特許文献11)。これらのレンズは、εの固有値の1つが負である異方性材料でできており、したがってこれらの材料は双曲幾何学を実現する(よってハイパーレンズという名称である)。ハイパーレンズは、サブ波長細部を失うことなく近接場から光を絞り出すことを可能にするが、その分解能はその幾何学的寸法により決まるので無制限ではない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Pendry J B 2000 Phys. Rev. Lett. 85 3966
【非特許文献2】Veselago V G 1968 Sov. Phys.-Usp. 10 509
【非特許文献3】P.V. Parimi et al., Nature 426, 404 (2003)
【非特許文献4】J.R. Minkel, Phys. Rev. Focus 9, 23 (2002)
【非特許文献5】J. Yao et al. Science 321, 930 (2008)
【非特許文献6】J. Valentine et al., Nature 455, 376 (2008)
【非特許文献7】Smith D R, Pendry J B and Wiltshire M C K 2004 Science 305 788
【非特許文献8】Soukoulis C M, Linden S and Wegener M 2007 Science 315 47
【非特許文献9】Stockman M I 2007 Phys. Rev. Lett. 98 177404
【非特許文献10】N. Fang et al., Science 308, 534 (2005)
【非特許文献11】Z. Jacob, L.V. Alekseyev, and E. Narimanov, Opt. Express 14, 8247 (2006)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の第1態様は、結像装置であって、
a.所定の屈折率プロファイルに従って変化する屈折率を有するレンズと、
b.ソース(source)と、
c.装置から波を分離する出口(outlet)と、
d.レンズ、ソース、及び出口の周囲に配置された反射器と
を備え、反射器及びレンズの屈折率プロファイルは共に、ソースから複数の方向のいずれかに伝送される波を出口へ指向させるよう構成される結像装置を提供する。
【0012】
ソースから複数の方向のいずれかに伝送される波を出口へ指向させるのに単独で適した屈折率プロファイルを有するレンズを実現することは、不可能であるように思われる。しかしながら、本発明者は、レンズ、ソース、及び出口の周囲に反射器を設けることにより、反射器と共にこの機能を果たすことができる屈折率プロファイルを有するレンズを作製することが可能であることに気付いた。これは、完全分解能での結像を達成するための重要な要件であるので、本開示の第1態様による結御像装置は、従来のレンズと比べて改善された像分解能を達成することができる。屈折率プロファイルは、反射器と共にこの機能を果たすことができる任意の形態をとり得る。一実施形態では、屈折率は、一般化ルネベルグ集束プロファイル(下記の第1節における方程式(II)を参照)に一致する。この場合、レンズの縁部と反射器との間に隙間が設けられる。代替的な実施形態では、屈折率は、マクスウェルの魚眼集束プロファイル(下記の第1節における方程式(XI)を参照)に一致し得る。この場合、反射器はレンズに隣接する。
【0013】
好ましくは、出口はソースの反対側にある。一実施形態では、レンズは平面視で実質的に円形である。この場合、出口はソースの直径方向反対側にあることが好ましい。
【0014】
回折限界を超えた波の結像を可能にすることにより、波の波長よりも小さな構造を結像することができる。これにより、ナノ構造の結像には現在は(構造が波長よりも大きいような)極めて短い波長の光の使用が必要であるが、これらの小さな構造の結像が容易になる。したがって、本開示は、ナノリソグラフィでの使用に特に適している。
【0015】
本開示の第1態様による結像装置は、ソースから伝送される複数の波を出口に集束させることが可能である。
【0016】
通常、波は電磁波(例えば、限定はしないが、波は紫外光、可視光、マイクロ波、又は赤外線であり得る)又は音波である。
【0017】
レンズは半球等の3次元形状を有し得るが、好ましくは、レンズは実質的に平面状(すなわち、実質的に2次元)である。この場合、放射線が電磁放射線である場合、光はTE偏光であることが好ましい。TE偏光とは、電場がレンズの平面に対して直交方向の向きにあることを意味する。
【0018】
回折限界を超える完全結像は、装置から波を分離する出口がある場合にのみ可能である。そうでない場合、集束した波は、像において反射されて符号が反転し、波の振動にわたって平均化された符号反転は、標準回折限界に一致するぼけた像を生み出す。出口を使用することで、これがなくなり、完全結像が可能になる。一実施形態では、出口は、波を吸収する像検出器を含む。例えば、限定はしないが、像検出器は、感光若しくは写真感光材料層、フォトダイオード、又はCCD若しくはCMOSピクセルアレイを含み得る。代替的に、出口は、光ファイバ等の集波器又は反射器を含み得る(装置から波を分離する機能を果たすことができる限り)。出口は、反射器の内側境界内のどこに位置付けてもよい(但し、その位置は通常はソースの位置に応じて決まる)。一実施形態では、出口はレンズに埋設されるが、好ましくは、出口はレンズの外面に位置決めされる。この配置は、出口をレンズに埋設する必要なく結像装置からの効率的な像転写を容易にする。出口は、代替的にレンズと反射器との間の隙間に位置決めされ得る。
【0019】
ソースも、反射器の境界内のどこに位置決めしてもよいが、好ましくは、レンズがソース及び出口を備える。
【0020】
一実施形態では、レンズ、ソース、及び出口は、全て同一平面上にある。この場合、反射器は、通常はレンズ、ソース、及び出口を上記平面上で2次元で包囲する。付加的又は代替的に、この場合、波は通常はソースから上記平面上で複数の方向のいずれかに伝送される。
【0021】
好ましくは、波は、出口がなければ波がレンズ及び反射器によりソースへ指向し戻されるように閉鎖軌道に沿って、ソースから出口へ指向される。
【0022】
屈折率プロファイルは、構造化材料/メタマテリアルにより提供され得る。これは、結像される照明の波長よりも短いが分子寸法よりも大きな構造を含む材料である。一例は、微細構造ファイバとも称するフォトニック結晶ファイバであり、ファイバに沿ってガラス中に空孔を含む。しかしながら、より好ましくは、屈折率プロファイルは屈折率分布(graded refractive index)プロファイルである。「屈折率分布プロファイル」は、徐々に(且つ連続的に)変化する屈折率プロファイルとして定義することができる。このようなプロファイルは、材料のドーピング又は混合により作ることができる(一例は屈折率分布型光ファイバである)。例えば、限定はしないが、レンズをシリカ(屈折率1.45)及び窒化ケイ素(屈折率2)の混合物から形成することができ、屈折率分布プロファイルは1.45〜2の範囲である。代替的に、このようなプロファイルを誘電体のドーピングにより作ることができる。屈折率分布プロファイルは、構造化材料/メタマテリアル(上述)と区別されるべきである。屈折率プロファイルを屈折率分布プロファイルにすることにより、像分解能は、レンズ内のいかなるサブ構造によっても制限されない。逆に、屈折率プロファイルが構造化材料/メタマテリアルにより形成される場合、サブ構造は像分解能を制限し得る(但し、像分解能は回折限界を超えたままであり得る)。したがって、屈折率分布プロファイルは、さらにより高い像分解能を提供することができる。
【0023】
屈折率分布プロファイルの代替形態は、テーパ導波路である(例えば、S.K. Yao et al., Appl. Opt. 18, 4067 (1979)を参照)。ここで、徐々に変化する屈折率プロファイルは、基板上の所与の屈折率を有する層の厚さを変えることにより設定される。導波路として働く層は、放射線を閉じ込めて支持する。その厚さが、層プロファイルに従って変化する実効屈折率を発生させる。
【0024】
好ましくは、レンズは等方性誘電体から形成される。これにより、広帯域光源の完全結像が可能となる。
【0025】
好ましくは、ソースは、波を結像装置に結合する手段を含む。一実施形態では、ソースは結像対象の物体(ナノ構造等)である。この場合、物体は、例えば、外部の光波源により照明されて、光波をレンズへ反射又は散乱させ得る。波がレンズ及び反射器により物体から出口へ指向されると、物体の完全像が出口に形成される。
【0026】
本開示の第3節で説明する例では、金ドットが物体としての役割を果たし、ドットは集束レーザビームにより照明される。本開示の第4節で説明する例では、ソースは同軸ケーブルである。この場合、ケーブルをレンズの外面と接触させ、マイクロ波がケーブルを通してレンズへ伝送される。
【0027】
レンズ及び反射器は任意の形状を有し得る。この形状は、光学等角写像により適用することができる(U. Leonhardt, Science 312, 1777 (2006))。この場合、屈折率プロファイル及び反射器の形状は、共形変換により変形される。
【0028】
通常、反射器は平面視で実質的に環状である。この場合、レンズは、反射器の環内に位置付けられることが好ましい。より好ましくは、レンズは、反射器の環と同心状であり得る。
【0029】
一実施形態では、レンズは平面視で実質的に円形である。レンズが円形であり、反射器が環状である場合、反射器の環がレンズよりも大きな半径を有することが好ましい。この場合、レンズの屈折率プロファイルは、一般化ルネベルグプロファイルに一致し得る。代替的な実施形態では、反射器の環及びレンズは、実質的に同一の半径を有する。この場合、レンズの屈折率プロファイルは、マクスウェルの魚眼プロファイルに一致し得る。
【0030】
一実施形態では、レンズは回転対称であり、下記の陰方程式により与えられる屈折率プロファイルn(r)で半径rに沿って変化し、
【0031】
【数1】

【0032】
式中、ρは0〜rの範囲のパラメータであり、
はレンズの半径であり、
は反射器の半径であり、
bは積分変数である。
【0033】
この場合、レンズは、下記の方程式と一致する最大屈折率nを有し、
【0034】
【数2】

【0035】
式中、rはレンズの半径であり、
は反射器の半径であり、
ξは積分変数である。
【0036】
レンズの誘電率は、通常はその屈折率の二乗に等しい。
【0037】
本開示の第2態様は、結像装置を使用した結像方法であって、装置は、
a.所定の屈折率プロファイルに従って変化する屈折率を有するレンズと、
b.ソースと、
c.装置から波を分離する出口と、
d.レンズ、ソース、及び出口の周囲に設けられた反射器と
を備える結像方法において、
波をソースから複数の方向に伝送するステップと、レンズ及び反射器を使用して、伝送された波を出口へ指向させるステップと、出口を使用して指向された波の少なくとも一部を装置から分離するステップとを含む結像方法を含む。
【0038】
一実施形態では、波はソースから全方向に伝送される。
【0039】
通常、複数の波が出口に集束される。
【0040】
一実施形態では、レンズ、ソース、及び出口は、全て同一平面上にある。付加的又は代替的に、レンズは実質的に平面状であり得る。この場合、波が電磁波である場合には、電磁波の電場成分がレンズの平面に対して実質的に垂直であることが好ましい。同じくこの場合、波はソースからレンズの平面内で伝送される。
【0041】
上述のように、新たな方法が提案され、新たな製品を作製することができる。
【0042】
製品は、所与の公式又は原理に従って変化する屈折率を有する、ミラーにより囲まれたレンズを含み得る。好ましくは、上記屈折率の変化は、屈折率分布プロファイルにより達成され得る。
【0043】
「所与の公式又は原理」は、例えば、ルネベルグの集束プロファイル、すなわち円上の任意の点から円上の対向点へ光線を集束させる屈折率プロファイルから導くことができる。全光線ではなく、連続した一連の光線を集束させる必要がある。
【0044】
ルネベルグは、彼の没後に出版された本であるR. K. Luneburg, Mathematical Theory of Optics (University of California Press, Berkeley and Los Angeles, 1964) に発表されているようなプロファイルを計算する数学的方法を開発した。
【0045】
本開示では、ミラーを集束円に配置することができる。本発明者は、これによりルネベルグの集束プロファイルが完全結像装置になることに気付いた。
【0046】
従来のレンズでの結像は、回折限界により制限され、サイズが結像放射線の波長の半分(又はそれ未満)に匹敵する細部は分解できない。本開示による結像装置は、この限界(「回折限界」として一般に知られている)を超える結像が可能である。
【0047】
この装置(ミラーを含む)の共形変換(U. Leonhardt, Science 312, 177 (2006))は、同じ機能性を有するが異なる形態をとることができ、これは原理上有利であり得る。
【0048】
一般概念及び具体的な実施形態は、以下の説明から得ることができる。種々の改良及び変更を本発明の範囲から逸脱せずに行うことができる。
【0049】
本発明の実施形態を、図面を参照して単なる例として次に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】ルネベルグの一般化集束プロファイルを示す。屈折率プロファイル又は半径r(グレー)は、いかなる光線もこのプロファイルに当たる限り衝突パラメータbに関係なく半径rにおける点から半径rにおける対向点へ進むよう設計される。総散乱角は、全体的に負の符号(overall minus sign)を除いて、角度a及びaの和である。
【図2】ルネベルグレンズの概略光線図である。
【図3A】一般化ルネベルグプロファイルに一致する第1変更型魚眼ミラーの概略平面図である。この場合、光が集束形屈折率プロファイル外の点から放出され、全光線がこの像点に集束するわけではない。
【図3B】一般化ルネベルグプロファイルに一致する第2変更型魚眼ミラーの概略平面図である。この場合、光が屈折率プロファイル内に放出されれば完全結像が達成される。
【図4】r単位で半径rを有するレンズ(集束媒質)に必要な屈折率範囲nのプロットである。
【図5】r単位で半径rを有する集束媒質に関する屈折率プロファイルn(r)のプロットである。
【図6A】平面への球の立体射影を示す。北極Nから球の表面上の各点{X,Y,Z}を通して線を引く。この線が赤道を通る平面と交わる場所に、射影点{x,y}がある(Y及びyは図示せず)。Nを∞として北半球を赤道の外側にマッピングし、南半球を内側にマッピングする。南極Sは原点に現れる。
【図6B】平面への球の立体射影を示す。球上の円を平面上の円に射影する。光線は、測地線、つまり球上の大円を辿る。1点から放出された全光線が、対蹠点で再交差し、そこで完全像を形成する。
【図6C】平面への球の立体射影を示す。立体射影での光の円の交差の仕方を示す。
【図7】立体射影の実施に必要な屈折率プロファイルを視覚化したものである。等方性媒質で十分であることを示す。立体射影を実施するために、光学媒質の屈折率を、球上の線要素とそれに対応して射影された平面上の線要素との比により与えなければならない。立体射影が円を円にマッピングするので、この比は線要素の方向に依存し得ず、媒質は等方性である(立体射影は等角図である)。北半球上の円が拡大され、球上の屈折率n未満の屈折率を必要とすることを示す。南半球上の円(図示せず)は最大1/2に縮小され、屈折率は赤道の内側でn〜2nの範囲にある。方程式(1)の屈折率プロファイルを有するマクスウェルの魚眼が、立体射影を実施することが分かる。方程式(5)を参照。
【図8A】マクスウェルの魚眼プロファイル(r=r=r)に一致する屈折率を有するレンズと、レンズの周囲に設けられた反射器とを備える、魚眼ミラーを示す。球の赤道におけるミラーは、光線が完全な大円をなすという錯覚を与えるが、光線は現実には反射される。
【図8B】マクスウェルの魚眼プロファイル(r=r=r)に一致する屈折率を有するレンズと、レンズの周囲に設けられた反射器とを備える、魚眼ミラーを示す。マクスウェルの魚眼により実施される立体射影で平面上の1点から放出された光を示す。任意点(ソース)から反射した光線は全て、対応する像点(出口)に集合する。
【図9A】グリーン関数を示す。南極においてソースが放出した波を、球上で視覚化して平面に射影する。画像は、v=20.25である電場(12)の実部を示し、球上の視覚化のために半径を1+0.5ReEとして変調する。北極では場が1点に集束する。マクスウェルの魚眼での鮮鋭な結像を示す。
【図9B】図9Aと同様であるが、任意のソース点で放出された波を確立するために図9Aに示す場を球上で回転させてから投影したものである。平面上で、回転は角度γ及びχを用いた回転メビウス変換(20)に対応する。球の回転角は、2γである(ここではγ=−0.2π)。マクスウェルの魚眼での鮮鋭な結像を示す。
【図10】魚眼ミラーにおける結像を示す。ソース点(左端)で放出された無限に鋭い場が、無限分解能で像点(右端)に集束するまで電磁波として伝播する。集束は、図8A及び図8Bに示す反射器により拘束されたマクスウェルの魚眼により行われる。視認性をよりよくするために、図9A及び図9Bのパラメータを用いた方程式(32)により与えられる−ReEを示す。像は、位相シフトvπを有し、反射器のない魚眼における像の逆符号を有する。
【図11A】連続屈折率分布型媒質でのマクスウェルの魚眼の時間領域シミュレーションを示す。
【図11B】シリコンナノ構造から構成された離散化媒質でのマクスウェルの魚眼の時間領域シミュレーションを示す。
【図11C】マクスウェルの魚眼の時間領域シミュレーションを示し、点ソース(下半分にある)が連続装置の上半分に明確に結像される。
【図11D】マクスウェルの魚眼の時間領域シミュレーションを示し、点ソース(下半分にある)が離散化装置に明確に結像される。
【図12】Aは、第3節に記載の第1実験解析の魚眼の走査型電子顕微画像を示し、分布ブラッグ反射器により包囲された完全な装置の図である。Bは、第3節に記載の第1実験解析の魚眼の走査型電子顕微画像を示し、光を装置に結合するのに使用される散乱源を包囲する領域の拡大図である。Cは、第3節に記載の第1実験解析の魚眼の走査型電子顕微画像を示し、装置の縁部における領域の拡大図である。
【図13】第3節の第1実験解析において魚眼の走査に使用される実験設備の概略図である。近接場走査型顕微鏡(NSOM)チップは、100nmの開口を有する。装置のソースを、約10μmのビームに集束させた1.55μmレーザを使用してウェーハの裏側から照明した。
【図14】Aは、第3節の実験解析の測定された装置の概略図であり、断面プロットの場所を点線で示す。Bは、装置のNSOMスキャンを示す。下半分にある明るい領域は、ソースレーザからの直接照明である。上半分にあるより明るいスポットは、シミュレーションに従った像の形成を示す。Cは、周囲に対する像点の強度の差を示す、図14Aに示す断面プロットの比較である。
【図15A】光が仮想球の表面上を伝播するという錯覚をマクスウェルの魚眼が与えることを示す。点ソース(左下)からの波は、球を巡って伝播して対蹠点(右上)に集束する。
【図15B】波が南半球内で集束するよう円形ミラーを仮想球の赤道周囲に配置する。
【図16】第4節の実験解析で作製された結像装置を示す。円形金属ミラーにより包囲された同心状の回路板層上の銅構造と誘電体フィラーとが、垂直方向に向いた電場を有するマイクロ波放射線に関する図15Bの半球の幾何学的形状を作り出す。マクスウェルの理論式と比較した装置の各層における誘電率ε=nの設計プロファイルも示す。
【図17A】第4節の解析からの実験結果を示す。マイクロ波がソースから検出器の役割を果たす1つ又は2つの出口へ進み得る、2つの実験のスキームを示す。
【図17B】第4節の解析からの実験結果を示す。出口を正確な像点に配置した場合の走査電場振幅の二乗係数(modulus squared)を示し、λは自由空間波長を示す。本図の強度プロファイルは、放射線がサブ波長分解能で右側の出口/検出器に入る場合に、図17Cとほぼ区別不可能である正確な像点の鋭いピークを示す。
【図17C】第4節の解析からの実験結果を示す。第2出口を第1出口からサブ波長距離のところに加えた場合の走査電場振幅の二乗係数を示す。本図の強度プロファイルは、放射線がサブ波長分解能で右側の出口/検出器に入る場合に、図17Bとほぼ区別不可能である正確な像点の鋭いピークを示す。
【図18】AおよびBは、第4節の解析の実験結果を理論的予測と比較したプロットである。ソースと出口との間の線に沿って走査した場振幅を、完全屈折率プロファイルと無限遠に局在化した線光源及び出口とを前提とする理論の解析公式と比較したものである。複素フーリエ振幅の実部を示す。理論と十分に一致した進行波を示し、理論からのずれは主にソース及び出口における不完全性に起因する。
【図19A】出口のない結像を示す。出口がないのでマイクロ波が放射線源により放出されて再吸収される、実験のスキームを示す。
【図19B】出口のない結像を示す。走査電場振幅の二乗係数を示し、鮮明な像が形成されない。
【図20】AおよびBは、第4節の実験結果を理論と比較したプロットである。ソースと出口との間の線に沿って走査した場振幅を解析公式(A6)と比較したものである。複素フーリエ振幅の実部を示す。理論と非常によく一致した定常波を示し、像付近のサブ波長特徴は、魚眼ミラーの実現に使用される材料の構造から生じるものであり、ソース付近のずれはその不完全性に起因する。
【発明を実施するための形態】
【0051】
明確化のために、以下の節(1〜4)のそれぞれで引用する参考文献を、この具体的な実施形態の説明の最後に付録として別個に列挙する。参考文献番号は各節毎に付け直す。
【0052】
第1節:完全結像の概論
背景技術で示したように、大半の物理学者は、負屈折が完全結像に必要であり、実際には作製し難い人工材料を必要とすると今まで考えてきた。さらに、負屈折に関する物理的問題のない完全結像光学機器が提案されているが(Maxwell J C 1854 Camb. Dublin Math. J. 8 188; Lenz W 1928 contribution in Probleme der Modernen Physik ed P Debye (Leipzig: Hirzel); Stettler R 1955 Optik 12 52; Luneburg R K 1964 Mathematical Theory of Optics (Berkeley, CA: University of California Press)及びBorn M and Wolf E 1999 Principles of Optics (Cambridge: Cambridge University Press)を参照)、それらは波ではなく光線に関して完全であることしか証明されていない。例えば、正屈折を使用するマクスウェルの魚眼は、マクスウェルによる論文以来、理論的概念として知られてきた(J.C. Maxwell, Cambridge and Dublin Math. J. 8, 188 (1854))。マクスウェルの魚眼は、任意の点から放出された全光線を正確な像点に集束させ、これにより光線に関する完全レンズとなる。しかしながら、このような光学機器の分解能が光の波動性により制限されることで、このようなレンズを不完全にすると一般に考えられてきた。従来のマクスウェル魚眼レンズを実際に作製することは(不可能でないとしても)極めて困難であるとも考えられる。
【0053】
完全結像という用語は、1箇所から別の箇所へ波を伝達し、オリジナルの全細部を保ちつつ新たな場所に実像を形成することを意味するために使用される。新たな場所における像のスポットサイズは、原理上、無限小にすることができる。すなわち、その最小サイズが従来のレンズに関連する回折限界により制限されない。
【0054】
不可視性に関する研究によれば、通常の(正屈折)材料における結像も(負屈折材料と比べて)等しく完全で、実際にははるかに実現しやすい。
【0055】
径方向対称性を有する完全レンズの設計は、逆散乱問題である。ルドルフ・K・ルネベルグが1944年のブラウン大学での光学に関する講義において理論解を提案し、これは後に、彼の没後に出版された本[1]において発表された。ここでは、散乱トモグラフィの視覚的解釈を展開した参考文献[2]の表記を使用する。ミラー(又は反射器。これらの用語は交換可能に使用されるが、任意の反射素子又は反射手段を意味するために使用される)を、ルネベルグのケースに加える。後述するように、ミラーの存在は驚くほど有益な効果をもたらす。
【0056】
完全結像装置をどのようにして作ることができるかを説明するために、半径rまで延びる径方向に対称な屈折率プロファイルn(r)について考察することから開始する(図1を参照)。この屈折率プロファイルは、例えばレンズにより実現され得る。完全結像装置を作るために、半径r(この場合、r>r)における点から放出された全光線を、これらが屈折率プロファイルn(r)に当たる限り半径r(この場合も、r>r)における対向点に集束させる必要がある。衝突パラメータbを有する光線について考察する。b≦rである限り、2点間の散乱角は、
χ=−α−α、sinα=b/r (I)
であり、それ以外の場合は、光線が集束形屈折率プロファイルn(r)に当たらないので散乱角はゼロである。このようになる1つの例示的なプロファイルは、一般化ルネベルグプロファイルにより陰形式で与えられる[2]。
【0057】
【数3】

【0058】
式(II)は、nが半径の関数としてではなく転回パラメータρに関して直接表されるので、陰形式であり、転回パラメータρはさらに、
ρ=nr (III)
により半径に関連付けられる。
【0059】
この理論の働きを見るために、2つの既知の実施例を検討されたい。
【実施例】
【0060】
ルネベルグレンズ
提示する第1実施例はルネベルグレンズであり(図2を参照)、これは、無限遠から到来する光を屈折率プロファイルの表面の1点に集束させるものである。すなわち、
=∞、r=r (IV)
である。
【0061】
この場合、α=0、α=arcsin(b/r)である。以下の積分
【0062】
【数4】

【0063】
を使用し、再構成公式(II)から
【0064】
【数5】

【0065】
を得る。この結果を転回パラメータの関係式(III)に代入し、ρに関して得られる方程式を解き、これは、
【0066】
【数6】

【0067】
となり、関係式(III)に従って次式が得られる。
【0068】
【数7】

【0069】
これが、ルネベルグレンズ、レーダ技術で使用される装置の屈折率プロファイルである。理論的観点から、ルネベルグレンズは光学における調和振動子ポテンシャルを実現する[3]。
【0070】
マクスウェルの魚眼
第2実施例はマクスウェルの魚眼レンズであり、これは、ルネベルグの一般的な集束プロファイルの特殊なケースである。この場合、
=r、r=r (IX)
である。さらに、α=α=arcsin(b/r)である。
【0071】
再構成公式(II)及び積分(V)から転回パラメータに関する屈折率プロファイルを得る。
【0072】
【数8】

【0073】
これにより、関係式(III)に従って次式が得られる。
【0074】
【数9】

【0075】
これが、マクスウェルの魚眼の屈折率プロファイルである。ルネベルグ[1]は、このプロファイルが立体射影による球の幾何学的形状を実現することに気付いた。
【0076】
後続の節で説明するように、マクスウェルの魚眼レンズを実際に作製することは(不可能でないとしても)極めて困難であると考えられる。こうした理由で、マクスウェルの魚眼は実際に実現されていなかった。しかしながら、第2節でより詳細に説明するように、本発明者らは、マクスウェルの魚眼(及び実際には一般化ルネベルグプロファイル)を実現する方法を見出した。要するに、上述のように、マクスウェルの魚眼を実現するために、反射器がレンズの周囲にr=r=r(又は一般化ルネベルグプロファイルを実現するためにr(=r)>r)で設けられる。反射器を導入する理由は、第2節でより詳細に説明するが、このような反射器と組み合わせた一般的なルネベルグプロファイルの実施を説明すると以下のようになる。
【0077】
変更型魚眼ミラー
「変更型魚眼ミラー」という用語は、一般化ルネベルグプロファイルに従って変化する所定の屈折率プロファイルを有するレンズと、レンズの周囲に設けられた反射器とを備える結像装置を意味するためにここでは使用される。これは本開示の実施形態にすぎず、レンズが一般化ルネベルグプロファイルを有する必要はなく、任意の他の適当な屈折率プロファイルを使用することができることを理解されたい。
【0078】
2つの変更型円形(平面視で、図3A及び図3Bを参照)魚眼ミラー10、20を、図3A及び図3Bにそれぞれ示す。各魚眼ミラー10、20は、この場合は一般化ルネベルグプロファイル(下記を参照)に一致する所定の屈折率プロファイルに従って変化する屈折率を有するレンズ12、22を備える。ソース16、26が、それぞれ装置において波(通常は電磁波又は音波)を伝送するために設けられ、装置から波を分離するための出口18、28も設けられる。さらに(上述のように)、各魚眼ミラー10、20は、レンズ12、22、ソース16、26、及び出口18、28の周囲に設けられた反射器14、24を備える(この場合、レンズ、出口、及びソースは、同一平面上にあり、反射器は、レンズ、ソース、及び反射器を上記平面上で2次元で包囲する)。
【0079】
ソース16、26は、反射手段又は散乱手段等の放射線を装置に結合する手段(結像対象の物体等)であり得る。代替的に、ソースは、レーザダイオード等の線源であり得る。出口は、レンズの外面上に位置決めされることが好ましく、その理由は、これがより効率的な像転写を促すからである。「出口」は通常、感光若しくは写真感光材料層、フォトダイオード、又はCCD若しくはCMOSピクセルアレイ等の吸収素子であるが、装置から放射線を分離する機能を果たす限り、光ファイバ等の集光器又はミラー等の反射素子とすることもできる。通常は2つ以上の出口が設けられる。
【0080】
10、20のいずれの場合も、2つの半径r及びrは同じであり、
=r (XII)
レンズ12、22は、集束半径rで反射器により2次元で包囲される。この実施形態ではr(=r)>rであることにも留意されたい。
【0081】
この場合、レンズは一般化ルネベルグプロファイル(r=r及びr>r)に一致するが、レンズは、代替的にマクスウェルの魚眼の屈折率プロファイル(r=r=r)に一致してもよい。別の代替的な実施形態では、反射器及びレンズの屈折率プロファイルがソース26から複数の(必ずしも全部ではない)方向のいずれかに放出された波を出口28へ指向させるよう構成される限り、レンズは任意の他の屈折率プロファイルに一致してもよい(但し、これは後述するように第1ミラー10には当てはまらない)。
【0082】
第2変更型魚眼ミラー20では、ソース26及び出口28は、レンズ22内(すなわち半径r内)に位置決めされる。しかしながら、第1変更型魚眼ミラー10では、ソース26及び出口28は、レンズ12外(すなわち半径r外)ではあるもののrにおける反射器14の境界内に位置決めされる。
【0083】
第2変更型魚眼ミラー20では、レンズ22及び反射器24は、ソース26から複数の(場合によっては全部だが必ずしもそうとは限らない)方向のいずれかに放出された波を出口28へ指向させるよう構成される。すなわち、反射器上の任意の点Pから到来する波は、反対側で集束して反射され、それから集束媒質を再度通過してPへ戻る。結果として、光線は、レンズの集束形屈折率プロファイルに当たると閉ループを形成する。このプロファイルにおける点rから放出された波(光線等)は、常に閉鎖軌道に沿って伝播する(すなわち、出口がない場合、波はソースに指向し戻される)。装置の径方向対称性は、これらの光線全部が−rも通らければならないことを示唆する。換言すれば、rにおけるソースは、−rで完全結像される(第2魚眼ミラー20の場合、「−r」はrにおけるソース26からレンズ上の直径方向反対の点28を表す)。
【0084】
図3Bに示す場合では、波は、ソース26から放出される方向に関係なく出口28に集束する。ソース26から複数の(場合によっては全部がた必ずしもそうとは限らない)方向のいずれかに放出された波が出口28に指向されることで、完全結像の達成が可能になる。すなわち、出口に集束した波のスポットサイズは無限小であり得る、つまりその最小サイズが回折限界に制限されない。
【0085】
第1変更型魚眼ミラー10では、ソースから伝送される波が集束する点が波の伝送方向に依存する。したがって、全光線軌道が閉じているわけではなく、像はおそらく完全ではない。これは、図3Aにおいて、ソース16から放出された光線がソースの直径方向反対側の点18に完全に集束していないことにより示される。正確には、像は不完全である。しかしながら、屈折率プロファイル又は反射器を修正することにより、完全結像を達成することができる(又は代替的に、図3Bのようにソース16、26及び出口18、28をレンズ12内に位置付けてもよい)。
【0086】
なお、波が閉鎖軌道を辿ることが完全結像に必須であるとはみなされない。しかしながら、マクスウェル魚眼ミラーの場合、r=rであるので全光線軌道が閉じている。図3Bに示す一般化ルネベルグプロファイルの場合、ソース及び出口がレンズ内にあるので全光線軌道が閉じている。
【0087】
図3A及び図3Bに示す実施形態では、反射器は実質的に環状であり、レンズは反射器の環内に位置決めされる。好ましくは、レンズ及び反射器は同心状である。
【0088】
装置20のレンズ22及び反射器24は、(r>rなので)相互間に隙間29が配置されることに留意されたい。図1を再度参照すると、一般化ルネベルグプロファイルを有するレンズでは、半径rにおける反射器を離れる光を反射器上の対向点−rに集束させることが必要である。マクスウェル魚眼レンズでは、r=r=rの場合、レンズがレンズの一方の側から他方の側へ著しく光を曲げる必要がある(反射器及びレンズが実質的に同一の半径を有するので、反射器はレンズに直接隣接する。図8Bを参照)。しかしながら、一般化ルネベルグプロファイルを用い、r(=r)>rの場合、レンズ22と反射器24との間の隙間29に起因して一部の光線はレンズに当たらない。したがって、反射器24により反射された波は、マクスウェルの魚眼よりも緩やかな角度でレンズ22に入る。結果として、レンズの屈折力をさほど大きくする必要がない。これにより、レンズの最大屈折率対最小屈折率の比を低減することが可能である。
【0089】
これを、r単位で半径rを有する集束媒質に関する屈折率プロファイルn(r)を示す図5に示す。これは、r=1であるとき(すなわちマクスウェルの魚眼の場合)、rが0(すなわちレンズの中心)の場合にnが2でピークに足し、r=1の場合に(すなわちレンズの縁部で)nが1に減少することを示す。しかしながら、r>r(一般化ルネベルグプロファイル)の場合、これを図5にr<1で表すが、レンズの縁部で(r=1の場合に)必要な屈折率と比べたレンズの中心(r=0)で必要な屈折率の比が小さくなる。
【0090】
したがって、変更型魚眼プロファイル(すなわち一般化ルネベルグプロファイル)の使用には、マクスウェルの魚眼に優る以下の利点がある。完全集束に必要な屈折率コントラストがマクスウェルの魚眼よりも小さい。したがって、これらは、例えば屈折率分布プロファイル及びテーパ導波路を用いて作製しやすい。レンズ22が一般化ルネベルグプロファイルに一致する結像装置20の一実施形態では、レンズの最大屈折率対最小屈折率の比は約1.38である。この場合、レンズは、シリカ(屈折率1.45)及び窒化ケイ素(屈折率2)の混合物から形成され、屈折率分布プロファイルは1.45〜2の範囲にある。現在の技術では、屈折率プロファイルが1〜2の範囲にある必要がある場合、屈折率分布プロファイル(離散化プロファイルではなく連続プロファイル)は達成し難い。したがって、構造化(すなわち離散化)屈折率プロファイルがこの場合に必要となる。このような構造化プロファイルは、達成可能な像分解能を制限する(この手法を使用して回折限界を超えて分解能を高めることは依然として可能であり得るが)。
【0091】
装置10、20では、レンズ12、22は実質的に平面状であり、ソース、出口、及び反射器と同一平面上にある。代替的な実施形態では、レンズ及び反射器は3次元であり得る。
【0092】
変更型魚眼ミラーの作製には何が必要か?再構成公式(II)及び関係式(III)から次式が得られる。
【0093】
【数10】

【0094】
半径は、転回パラメータρの単調増加関数(微分により得られる)であり、r≦ρである。結果として、ρはrの一価関数であり、屈折率プロファイルは物理的に認められる。関数ρ(r)も単調増加でなければならない。さらに、関数n(ρ)は、ρの単調減少であり(同じく微分により得られる)、したがってnはrの単調減少であり、最大屈折率値(highest index value)は、次式を用いた原点における値である[4]。
【0095】
【数11】

【0096】
この公式を用いて、変更型魚眼ミラーに必要な屈折率範囲を迅速に計算することができる。半径r及びrが与えられれば、屈折率プロファイル自体は、ρが0〜rの範囲でありrが公式(XIII)に従って数値的に計算される(r,ρ)値の表を格納することにより、最も容易に計算される。続いて、補間関数ρ(r)が計算されたデータから構成され、屈折率プロファイルは、
0≦r≦rで、n=ρ(r)/r、r>rで、n=1 (XV)
のように計算される。
【0097】
集束媒質半径r(r単位で)対最大屈折率値nのプロットを図4に示す。nが増加するとrが増加する(但し、図4に示すように、関係に僅かな非線形性がある)。
【0098】
ここまでは、本発明者らの理論は完全像からの光線のみを示しているが、以下に示すように、波も驚くほど完全に集束させることができる。
【0099】
第2節:マクスウェルの魚眼の像分解能は光の波動性により制限されない。
ここで、完全結像光学機器の原型であるマクスウェルの魚眼[6]がいかなる基準でも完全であり、原理上は無限の分解能を有することを数学的に立証する。コンピュータシミュレーションにより、無限分解能が一般化ルネベルグプロファイルを使用しても達成可能であることが分かる。また、この証明は「光」に言及するが、あらゆる種類の電磁波及び音波等の他の全タイプの波に適用可能である。
【0100】
光学等角写像[14]〜[17]の実施[11]〜[13]に適用した製造技法を用いて、実際に作製可能な完全結像装置にするために魚眼を変更する方法も示す。このような装置は、材料のサブ構造によってしか制限されず光の波動性による制限は受けない分解能での、広帯域遠方場結像に適用され得る。
【0101】
負の屈折による結像が驚異的に目を引いたことを考えると、特にボーン及びウルフによるPrinciples of Optics[10]に記載されているように、(実際には不可能と考えられたが)負屈折を必要としない完全結像光学機器の既知の理論的提案を調査することがいかに軽視されていたかには驚かされる。最も有名な完全結像光学機器であるマクスウェルの魚眼[6]は、マクスウェル方程式[18、19]で、但しその結像特性に重点を置かずに処理されるものであったが、スカラー波に関する魚眼[20]及び切頭魚眼(truncated fish eyes)[21]における波の伝播の数値シミュレーションにも同じことが言える。ここで、2次元(2D)マクスウェル魚眼における波動光学的結像を解析する。その主な理由は、このような装置が赤外光に対してシリコンチップ上の集積光学系に[11、12]、又は場合によっては、可視光に対して窒化ガリウム又はダイヤモンド集積光学系で作製できるからである。解析数学を結果の証明に適用する前に、主要な概念及び論証の視覚的解説で解析を始める。
【0102】
マクスウェル[6]は、全光線が円である屈折率プロファイルを発明し、彼の論文によれば、「媒質における任意の点から進む全光線が別の点で正確に交差する。」マクスウェルが述べたように、「優れた光学特性を有するこの種の媒質の存在の可能性は、魚の水晶体」すなわち魚眼「を考えることで示唆され、これらの特性を探索する方法は、ニュートンのPrincipia, Lib. I. Prop. VIIから類推された。」ルネベルグ[9]は、マクスウェルの魚眼プロファイルを美しい幾何学的形態で表し、魚眼は、平面に対する球の表面(又は3D空間に対する4D超球の3D表面)の立体射影をなす。球の表面は、一定曲率を有する湾曲空間であるので、魚眼は、光に関しては仮想湾曲空間から物理的空間への変換を行い[22]、広帯域不可視性[23、24]の達成のために提案される非ユークリッド変換光学系の最も単純な素子である[23]。
【0103】
プトレミーが発明した立体射影は、製図で使用されるメルカトル投影[25]の中心にある。図6A〜図6Cは、球30の表面上の点が赤道を通る平面32にどのように射影されるかを示す。各点を通して、北極からこの平面32と1点、つまり射影点36で交わる線34を引く。このように、球30の表面は平面32にマッピングされ、またその逆も同様であり、両方が等価表現である。以下において、2つの画像、球30と平面32とを自由且つ頻繁に切り替えて論証を単純化する。
【0104】
球30の表面上の光線を想像する。光線は、測地線、つまり大円に沿って伝播する。1点で放出される光線束を考える。この点から出発する全大円が、球30の上の対蹠点で交わらなければならない。図6Bを参照されたい。立体射影は、球上の円を平面32上の円にマッピングする[25]。結果として、立体射影の光学的実施において、つまりマクスウェルの魚眼[6]において、全光線が円となり、1点からの全光線が対蹠点の射影で交わり、完全像を形成する。
【0105】
立体射影を実施して光が球の表面上を伝播するという錯覚を与えることを望む場合、球表面の幾何学的形状を均一な屈折率nと一致させる物理的空間内の屈折率プロファイルnを作る必要がある。屈折率nは、仮想空間内の線要素と物理的空間内の対応する線要素との比である[23]。概して、この比は線要素の方向に依存するので、この幾何学実現材料(geometry-implementing material)は光学的異方性である。しかしながら、立体射影は円を円に、無限小円にさえ変換するので、線要素の比は方向に依存し得ない。媒質は光学的等方性である。図7を参照されたい。この図から、必要な屈折率プロファイルnの本質的挙動を読み取ることができる。赤道では、nは球30の屈折率nに等しい。南極の射影、つまり平面の原点では、nは2nでなければならない。nが北極の射影、つまり無限遠点付近でゼロになる傾向があることも分かる。立体射影[9]を実施する魚眼プロファイルに関するマクスウェルの厳密式[6]は、これらの値を補間する。
【0106】
【数12】

【0107】
式中、rは、装置のサイズに関して測定された平面32の原点からの距離を示す。これらの寸法では、赤道は単位円にある。赤道を超えると、r>1での北半球の射影領域では、屈折率はn未満、最終的には1未満になる。材料中の光の速度は真空中の光の速度を越えなければならない。
【0108】
超光速伝播の見掛け上の必要性を回避するために、非ユークリッドクローキングの概念[23]を採用し、反射器40(ミラー)を赤道周囲に配置する。図8Aを参照されたい。南半球42上を伝播する光に関しては、ミラーは、光線が北半球で回るという錯覚を与えるが、現実には反射される。赤道で放出された光は、赤道の反対側で集束する。図8B(図3Bと同様だがr=r=r)は、対蹠点44の反射像が平面内のソース46の鏡像(中心における反転)であることを示す。反射器で囲まれた円内の各点が完全像を形成する。これに対して、楕円ミラーは、焦点領域の代わりに2つの焦点しか有しないので、結像にあまり適していない。
【0109】
r≦1に必要な屈折率プロファイル(1)は、平面チップ上に、例えばシリコンを空孔で希釈すること(diluting silicon with air holes)により[11]、又はシリカの屈折率をシリコン柱で強化することにより[12]生成することができる。2の屈折率コントラストn(0)/n(1)が、約1500nmの赤外線で達成可能である。窒化ガリウム又はダイヤモンド集積光学系を使用して、約500nmの波長を有する可視光に適した構造を作製することができる。このような装置は、像分解能が波長よりも大幅に良好であれば、ナノスタンプからの像の転写又は他の用途に用いることができる。以下において、これが実際に本当であることを示す。
【0110】
単位強度を有する点ソースの電磁場、グリーン関数を求めれば十分であり、その理由は、任意の他のソースを強度の異なる連続した点ソース群とみなすことができ、発生した場は、種々の点におけるグリーン関数の重ね合わせだからである。第1に、最も好都合なソース点である原点、つまり南極の立体射影に関するグリーン関数を導く。球の対称性から、北極が逆に南極におけるソースであるかのように、電磁波が北極に集束することが予想され、これを次節で証明する。したがって、南極における場は、北極におけるソース場の完全像である。図9Aは、このグリーン関数を示す。続いて、球の回転対称性を利用し、球上の関連電磁場と共に点ソースを回転させる。図9Bを参照されたい。平面に対する立体射影は、任意ソース点に関する所望のグリーン関数を与える。場を球上で単に回転させるので、ソースに関係なく完全結像が予想され、これも次節で証明する。
【0111】
最後に、静電学における鏡像法の適応[26]を本質的に適用することにより、ミラーにおける反射も包含する。図10はその結果を示し、ミラーに拘束されたマクスウェルの魚眼は完全レンズとなり、すなわち、結像スポットサイズを理論上は無限小にすることができる。
【0112】
計算
本節では、解析数学により本発明者らの視覚的論証を裏付ける。平面32のデカルト座標x及びyを表すために複素数z=x+iyを使用するのが便利である。立体射影[25]において、単位球の表面上の点{X,Y,Z}を
z=X+iY/1−Z (2)
に、又は球上の球座標θ及びφで、
z=eiφcot(θ/2) (3)
にマッピングする。
【0113】
r=|z|を有するマクスウェルの屈折率プロファイル(1)について、公式
n=2nsin(θ/2) (4)
が得られる。
【0114】
球座標に関して線要素dx及びdyを表現し、
(dx+dy)=n(dθ+sinθdφ) (5)
を得る。
【0115】
したがって、球上の線要素は、平面内のデカルト線要素とはn/nの比だけ異なり、この比は、角度の尺度ではなく長さの尺度を変更する共形因子であり、立体射影は等角写像である[25]。この写像を実現する光学媒質(1)は等方性である。方程式(5)は、マクスウェルの魚眼(1)が立体射影(2)を実際に行うことを証明する[9]。
【0116】
電場ベクトルEが平面に直交した向きのTE偏光[27]を考える(実際には、マクスウェル魚眼プロファイルに従った2Dレンズを考える場合、Eはレンズの平面に直交する)。この場合、1つのベクトル成分E、つまり直交成分しか重要ではない。フーリエ解析により、単色場Eに関してEを展開する。これらは、ソース及び像点を除き、ヘルムホルツ方程式[10、27]に従う。
(∇+n)E=0 (6)
ソース点付近で、Eは線ソースの対数場(logarithmic field)に近付くべきである[26]。場Eを遅延させることも必要であり、すなわち時間領域において、
【0117】
【数13】

【0118】
であり、式中、tは、(装置の寸法に関して測定した伝播長の)適当な単位の時間を示す。簡単のために、
=1 (8)
となるよう波数kを再スケーリングする。
【0119】
像が逆に働く線ソースである、極めてよく局所化された(infinitely-well localized)ドレイン(すなわち、装置から光を分離する出口)であるかのように、場Eが像点付近でも対数的であることが示されれば、無限分解能での完全結像が証明されている。以下の理由により、光学媒質をドレイン(又は「出口」。ドレイン及び出口は交換可能に使用される)及びソースで補う必要がある。ヘルムホルツ方程式(6)を書くにあたり、定常状態の単色波を考える。しかしながら、ソースは、どこかで消えるはずである電磁波の流れを連続的に発生させている。自由空間において、波は無限遠の距離で、つまり無限遠点で消える。結像の場合、波は有限のドレインを見付けなければならない。そうでなければ定常状態が存在し得ないからである。波が像において(出口により)吸収されると想定しなければならない。しかしながら、ソース及びドレインには因果関係もあるべきであり、本発明者らのモデルでは、任意の逆ソース(inverse source)を予想像点に単に配置することはできない。ドレインにおける場は、ソースと像との間の時間遅延に起因して位相シフトを示さなければならず、グリーン関数を方程式(7)に従って遅延させなければならない。因果律及び無限分解能の両方が、完全結像の証明に必要である。
【0120】
図9Aに示す最も好都合なソース点を考える。この場合、ソースは原点、つまり南極の立体射影に配置される。径方向対称性を示すことが自然であるので、ヘルムホルツ方程式(6)は、r=|z|を有する極座標において、
【0121】
【数14】

【0122】
となる。この常微分方程式の一般解は、指数
【0123】
【数15】

【0124】
及び変数
【0125】
【数16】

【0126】
を用いたルジャンドル関数の重ね合わせ[28]P(±ζ)である。kとvとの関係は、波数と球面調和関数の指数との関係と同じであるが、vは必ずしも整数とは限らない。特殊解を書こう。
【0127】
【数17】

【0128】
これは、第二種ルジャンドル関数Q[28]に関しても表すことができる。
【0129】
【数18】

【0130】
なお、Qの定義は曖昧な場合があり、複素平面上で選択された分枝に応じて決まるので、ここでは式(12)が一般に好まれる。加えて、この式には、分母及び分子の両方がゼロとなる傾向がある場合に整数vへの有意義な制限がある[28]。[28]の方程式3.9.(9)及び3.9.(15)から漸近系(asymptotics)
【0131】
【数19】

【0132】
が得られ、これは、公式(12)が線ソースから放出された電磁波を記述することを証明する。その理由は、原点周囲の小円内のrに関して、
【0133】
【数20】

【0134】
が得られるからであり、ここではdsを積分路に直交する向きにした2Dにおけるガウスの定理を使用した。グリーン関数(12)の遅延を証明するために、式(13)のQに対して[28]の積分表現3.7.(12)を利用する。
【0135】
【数21】

【0136】
したがって、グリーン関数はvの累乗の積分(an integral over powers in v)である。0≦θ≦πでarg(cosθ+icoshξsinθ)≦πであり、k→∞でv→kであるので、exp(ivπ)を乗じた被積分関数は、複素k平面の上半分で指数関数的に小さくなる。したがって、フーリエ変換(7)の積分路をそこで閉じることができる。exp(ivπ)を乗じた表現(16)の被積分関数は、kが解析的であるので、フーリエ積分(7)はt<0で消え、これはEが遅延グリーン関数を記述することを証明する。[28]の方程式3.9.(9)及び3.9.(15)から、漸近系
【0137】
【数22】

【0138】
も得られ、これは、無限遠における像がvπの位相遅延で完全に形成されることを証明する。さらに、[28]の方程式3.9.(2)から、0〜∞のどこかに位置するv及びrに関して好都合な漸近公式
【0139】
【数23】

【0140】
が得られるが、これは、ソース及び像付近を除き(except near source and image)、グリーン関数(12)の優れた近似である。
【0141】
ここまで、原点におけるソースのグリーン関数を求めた。任意ソース点のグリーン関数を推定するためには、図9に示す立体射影における球の対称性を利用する。ソースを、その関連場と共に南極から(図9A)球30上の別の任意点へ回転させて平面32に射影する(図9B)。球上の回転は、複素平面上のメビウス変換の部分集合に対応する[25]。メビウス変換は、一定の複素係数を有する双線形複素関数(bilinear complex function)により与えられ、
【0142】
【数24】

【0143】
球上の回転は次式に対応する[25]。
【0144】
【数25】

【0145】
ヘルムホルツ方程式(6)におけるラプラシアンに関して、次式を得る。
【0146】
【数26】

【0147】
回転(20)に関する関係
【0148】
【数27】

【0149】
から、ヘルムホルツ方程式(6)における屈折率プロファイル(1)の変換を得る。
【0150】
【数28】

【0151】
結果として、マクスウェルの魚眼に関しては、ヘルムホルツ方程式(6)は回転メビウス変換下で不変であり、これは立体射影における球の回転対称性を単に反映する。逆メビウス変換
【0152】
【数29】

【0153】
から、z’=0におけるソース点が、
=−b/d=eiχtanγ (25)
に移り、z’=∞における像が
=−a/c=−eiχcotγ=−1/z (26)
で現れることが分かる。
【0154】
電場は、
r=|z’| (27)
で式(12)により与えられる。
【0155】
z’→0であるソースz付近で、z−zのメビウス変換(20)を線形化し、z’→∞である像z付近で、z−zの1/z’を線形化する。対数表現(14)及び(17)において、線形化プレファクタ(linearlization prefactors)は、漸近系を変えない付加的な定数をもたらすにすぎない。結果として、
【0156】
【数30】

【0157】
マクスウェルの魚眼は、ソース点に関係なく完全像を形成する。像界における負符号は、像が正反対の強度のソースであるかのように、単位強度でzにおいて放出された電磁波がzにおいて集束することを示す。さらに、像は、屈折率プロファイル(1)での又は仮想球上での伝播により生じた位相遅延vπを有する。球の内部曲率により、遅延定数(10)は波数kが線形でなく、僅かに非調和である。しかしながら、位相遅延が均一であるので、全体的なソース分布は忠実に結像されるだけでなくコヒーレントにも結像される。
【0158】
最後に、円形ミラー(反射器)により囲まれたマクスウェルの魚眼の波動光学、つまり図8A、図8B、及び図10に示す場合を扱う。ミラーにおいて、電場が消えるはずである。静電学における鏡像法[26]と同様に、仮想ソースの場によりミラーの効果を説明すると想定してみよう。仮想ソースは、実際のソースの逆符号を有するべきであり、球上では、π−θにおける赤道を通る平面の上方のソースの鏡像にこれがあると予想する。鏡像の(mirrored)ソースの立体射影(3)は、単位円における反転
z’=1/z (29)
である[25]。
【0159】
ソースに関してだけでなく電場全体に関しても、変換(29)を考える。ヘルムホルツ方程式(6)におけるラプラシアンに関して、次式を得る。
【0160】
【数31】

【0161】
また、変換された屈折率プロファイル(1)に関して、次式を得る。
【0162】
【数32】

【0163】
したがって、場Eν(z)の鏡像Eν(1/z’)も妥当な解である。本来のソースの場E(z)に、ミラーにより出現した仮想ソースの場Eν(1/z’)を加えよう。
=Eν(z)−Eν(1/z) (32)
単位円において、1/zはzに等しいので、場Eはここで消える。結果として、公式(32)は、境界条件を満たすことで、魚眼ミラーの正確なグリーン関数を記述する。ミラー内の像は、仮想ソースの像である。変換(29)から、像点z’は、
z’=−z (33)
に位置付けられることになる。
【0164】
公式(32)及び漸近系(28)から次式が得られる。
【0165】
【数33】

【0166】
方程式(28)と比べた符号反転は、ミラーにおけるπ位相シフトから得られるものであるが、全体的な位相遅延は均一なままであり、(v+1)πである。分解能が無限であるので、魚眼ミラーはいかなる基準でも完全像を形成する。装置は、材料におけるある程度の吸収さえ許容し得る。例えば、吸収が誘電プロファイルに比例する屈折率の虚部として現れると想定する。これは、現実の屈折率プロファイル(1)で波数kの虚部を有する場合と同等である。ここでは、複素kを含む全kのグリーン関数を求めた。漸近系(34)はkとは無関係なので、振幅損失の原因となるプレファクタを除き、このような吸収は像品質に影響を及ぼさない。
【0167】
考察
マクスウェルの魚眼[6]は完全レンズとなる。しかしながら、これは、ソース及び像(すなわち出口)の両方を光学媒質(すなわちレンズ)内に収容する独特なレンズである。負屈折完全レンズ[1]は、「近視的な」光学機器でもあり、結像範囲がレンズ厚さのちょうど2倍であるが[29]、ソース及び像が装置外にある。ハイパーレンズ[30、31]は、回折限界を超えた遠方場結像のために、微小物体からの光を遠方場に絞り出すが、ハイパーレンズの分解能はその幾何学的寸法により制限され、原理上でさえも無限ではない。
【0168】
魚眼ミラーは、光の波長よりも著しく細かい細部を有する埋め込み像を波長よりもはるかに長い距離にわたって転写するために適用することができ、これはナノリソグラフィに有用な特徴である。応用可能な用途の別の例を挙げると、魚眼ミラーは、誘電体に埋め込まれた離れた原子又は分子間の極めて明確な量子リンク、例えばダイヤモンドにおける色中心を作ることができる[32]。魚眼ミラーは、光学以外に、波が制御可能な波速で2Dヘルムホルツ方程式(6)に従う場合にはどこにでも適用することができる。例えば、魚眼ミラーは、音波に関して理想的なささやきの回廊を作ることができ、又は液体上の表面波を集束させることができ、又は場合によっては、量子囲い内で激しくもつれた量子波を生み出すことができる[33]。
【0169】
誘電率及び透磁率を−1に設定した負屈折完全レンズ[1]のように、魚眼レンズは像を拡大しない。しかしながら、ミラーを赤道以外の大円の立体投影に配置することにより、拡大完全結像装置を作製できることに留意されたい。光学等角写像[14]により、複数の像を形成する魚眼の共形変換[9]も実施することができる。したがって、レンズ及び反射器は任意の形状とすることができる。魚眼ミラーは、有限の屈折率コントラストを有する等方性誘電体からなるので、低損失材料で作製することができ、スペクトルの広帯域で動作することができる。像分解能は原理上は無限である。実際には、離散化構造形成により達成される屈折率プロファイルでは、材料のサブ波長構造の寸法が分解能を制限し得る。必要な屈折率プロファイル(1)は、ホスト誘電体をドーピングすることにより(すなわち、屈折率分布プロファイルを作ることにより)作られるが、分子分解能に達し得ると考えられる。
【0170】
本節では、2D魚眼におけるTE偏光[27]の伝播に焦点を当て、この場合の完全分解能を証明した。ここでは、電磁波方程式であるヘルムホルツ方程式(6)は、線要素の二乗としてn(dx+dy)を用いた2D幾何学におけるスカラー波方程式であり、その理由は、ヘルムホルツ方程式を次式のように書くことができるからである。
【0171】
【数34】

【0172】
式中、指数は、計量テンソル


その行列式g=n、及び逆計量テンソル

を用いた幾何学[22]における座標x及びyを指し、反復指数を総和する。結果として、マクスウェルの魚眼により成立した光の幾何学は、光線に制限されずに波まで及び、これにより、波が光線と同様に完全結像される理由が説明される。これに対して、磁場ベクトルHが平面に直交する向きであるTM偏光[27]では、完全結像が生じない。この場合、磁場に関して対応する波動方程式[27]
【0173】
【数35】

【0174】
は、2D幾何学における波動方程式として理解することはできない。原点に配置されたソースの場合、魚眼プロファイル(1)に関して、漸近解H〜r−4及びH〜constが無限遠にあることが分かり、これらのいずれも、2次元で完全像の必要な対数発散を形成しない。これは、波に関する幾何学的形態が不完全であるTM偏光では2D魚眼における完全結像が不可能であることを証明する。他方、3Dインピーダンス整合マクスウェル魚眼は、4D超球[22]の表面、3D湾曲空間を完全に実現する。この場合に完全結像が予想される。
【0175】
完全結像は、多くの場合はエバネッセント波の増幅として論じられるが、この状況は、球の幾何学的形状によってのみ生じると思われるマクスウェルの魚眼における結像には該当しない。なお、負屈折完全レンズを理解するための代替的な純粋に幾何学的な状況もあり[29]、こうしたレンズは、複数の像での座標変換を実現する。完全結像に最も重要と思われるものは、光の幾何学である[22、24]。
【0176】
同様の証拠を一般化ルネベルグプロファイルに適用できることに留意されたい。
【0177】
第3節:実験解析第1部−誘電体を使用した光領域における完全結像
光を無収差且つ超高分解能(原理上は無限)で結像することができる光領域における完全結像の展望は、技術及びナノファブリケーションに変革をもたらし得る[1、2、3、4、5、6]。上記では、屈折率が空間的に変化する誘電媒質において完全結像を達成できることを理論的に示した[7、8]。レンズの幾何学的形状は、球面空間を実平面空間に射影するための変換光学[9、10、11、12、13、14、15]を使用して規定され、マクスウェルの魚眼を形成する[16、17、18、19]。変換光学の実証の大半は、製造し易さにより、ユークリッド空間でマイクロ波領域において行われてきた。ここでは、シリコンナノフォトニクス構造を使用して光領域における非ユークリッド空間[20]への変換を実証する。
【0178】
光領域における完全結像のためのマクスウェルの魚眼レンズは、大きな長さスケールにわたる誘電率の明確な変化を必要とするので、以前は光学で十分に実現されていなかった[21、22]。1.5μmでの光領域における完全結像を可能にする設計構造50を、図11Aに示す。この構造は、数マイクロメートルにわたって2:1の比を有する屈折率の径方向分布を含む。この構造は、ここではシリコン及び空気から構成された分布ブラッグ反射器(DBR)52として示される反射器により境界される。最小屈折率は、レンズの縁部54(反射器の近く)で1.6であり、最大屈折率は、中心56で3.2である。この装置は、DBR内の任意の点に位置するソースから装置の中心56に対する対称点へ完全像を転写する。装置の動作を図11Cで見ることができ、この図では、装置の下方部分におけるソース62からの装置の上方部分におけるシミュレート像形成60を示す。なお、このような構造においてサブ波長分解能を達成するために、結像点に出口が必要であり[23、24]、これは結像領域で例えば非線形フォトレジストを使用して達成することができる。マイクロ波領域での最近の実験が示すように、そこで検出される光のみが完全結像される(下記第4節の実験解析第2部を参照)。
【0179】
シリコンフォトニクスは、屈折率の調整に、したがって誘電体構造における光領域での変換光学を可能にするのに優れたプラットフォームとして示されてきた[25、26]。このようなプラットフォームでは、シリコンウェーハ67にサブ波長の柱64及び孔66を分配して実効屈折率の空間変調を誘起することにより、屈折率が離散化される。図11Aにおける設計構造の離散化版を図11Bに示す。柱及び孔の直径及び高さは、それぞれ120nm及び500nmであり、Eビームリソグラフィを使用してアクセス可能であると同時に異なる特徴密度に対して高品質の均一なエッチングを可能にするサイズである。予想される散乱損失により、半径15μmの比較的小さなサイズの魚眼構造を扱うことを選択した。なお、将来の製造技法では、特徴のサイズを小さくすることで伝播損失を減らすことが可能となるはずである。
【0180】
シミュレーションは、連続魚眼構造においてだけでなくナノメートルサイズのシリコン構造から構成された離散化魚眼構造においても像形成を示す。ミープ[27]を使用して時間領域においてマクスウェルの魚眼をシミュレートし、その結果を、連続及び離散化の屈折率プロファイルそれぞれについて図11C及び図11Dに示す。シリコン構造の後方散乱がレンズの性能を低下させるが、図11Dに示す離散化の場合でさえも像が明確に形成されることが分かる。
【0181】
離散化屈折率分布を形成するために、図12A〜図12Cに示すように、シリコン・オン・インシュレータ・プラットフォーム上に構造を製造し、最適化エッチング技法でのEビームリソグラフィを使用した[25、28]。低屈折率領域(ブラッグ反射器52の近く)では、空気背景上のシリコン柱64の密度が局所的な実効屈折率を規定する。高屈折率領域(中心)では、シリコンウェーハ層における空孔66を使用して局所的な実効屈折率を制御した。柱及び孔は、図12B及び図12Cで見ることができる。両方のタイプの特徴を1つのEビームステップでパターニングするために、電子線量変調の高度な制御が必要であり、これを近接効果補正の最適化により達成した。使用レジストは170nmのXR−1541(登録商標)層とした。500nmシリコン層を、高異方性塩素プロセスを使用してエッチングした。図12Bに示すように、直径約240nmの第1金ドット70及び第2金ドット72を、それぞれソース及び出口として使用した。これらのドットを、700nmの495k PMMA層においてEビームにより同じくパターニングされたリフトオフマスクに堆積させた。
【0182】
近接場走査型顕微鏡(NSOM)設備を使用した魚眼における像形成を示す。図13が示すように、装置のソース70を、1.55μmレーザ74を使用してウェーハ67の裏側から照明し、約10μmのビームに集束させ、ソース70は、入射レーザ放射線の少なくとも一部をレンズに結合する。走査チップ76は、100nmの開口を有する。走査中、チップ76を約3μmの固定高さに保った。その理由は、チップが接触すると、シリコン柱64とチップ自体との間のサイズの差に起因して装置が損傷し、これが表面に対する感度を大幅に低下させるからである。結果として、一部の遠方場回折パターンが測定において見える。
【0183】
実験の結果を図14A〜図14Cに示す。ソース70は装置の下半分に位置決めされ、像72は上半分に形成される。レーザ74ソースからの直接照明により、ソース点を見ることは不可能だが、像は予測される場所に明るいスポットとして明確に示される。像点72の強度がその周囲の回折パターンよりも高いことも、図14Cの断面プロットで観察することができ、これは図11Dにおけるシミュレーションからの本発明者らの予想に一致する。
【0184】
結論として、光領域におけるマクスウェルの魚眼レンズ及び本装置における像形成の実施が実証される。リソグラフィ及びエッチング分解能、並びにグレースケールリソグラフィ等の連続屈折率を生成する新規製造技法の進歩は、散乱損失の少ない装置の製造を可能にするはずである。損失の低減は、サブ波長分解能を有するこのような装置の測定を可能にする。
【0185】
さらにより短い波長のサブ回折限界分解能を有するこの特殊レンズの実証は、ナノリソグラフィ技術の変革をもたらすことが見込まれる。
【0186】
第4節第2部−マイクロ波での負屈折を用いない完全結像
ここでは、マイクロ波でのマクスウェルの魚眼における完全結像を実証する。本発明者らのデータによれば、線ソースの場は、結像において検出器アレイ(CCD又はCMOSピクセルアレイ)の役割(又は実際にはフォトレジスト、写真材料等の役割)を果たす受動的出口(光を魚眼ミラーから分離するよう働く)を通って出ることができれば、超波長距離にわたりサブ波長分解能で結像される。
【0187】
上述のように、通常のレンズは、光の波長よりもはるかに細かい構造を分解できない[1]。負屈折メタマテリアルでできた完全レンズは、無限分解能で結像すると予測された[2]。しかしながら、実際には、根本的な理由でこのような材料は吸収性があり[3]、波長よりも大きな距離にわたる完全結像は不可能に思われた。上述のように、本発明者らの認識によれば、完全結像は正屈折材料を使用して実際には可能である。本節では、特にマイクロ波での超波長距離にわたるサブ波長分解能での結像を実証する。
【0188】
光のように、マイクロ波は電磁波であるが、cm波長及びGHz周波数を有し、これは、光学では現在考えられない程度まで詳細に結像波の電磁場を調査することを可能にする。負屈折を使用する代わりに、電磁波を原理上は無限精度で集束させるよう電磁波の空間[5、6]を曲げるように見える正屈折率プロファイル[4]を実現した。本マイクロ波実験は、光に関して、負屈折を用いない完全結像の概念、特に完全分解能を達成する際の検出の役割を実証し、結像が最も重要視される用途への重要な指針となる。
【0189】
光学材料は、光により認識される空間幾何学的形状を変え[6]、不可視性等の錯視を生じ得る[8、9]。完全結像[2、7、10、11]は、物体が2つ以上の位置にあるように見える錯視でもあり、上記で言及したように、完全結像とは、1箇所から別の箇所へ電磁場を伝達し、オリジナルの全細部を保ちつつ新たな場所に実像を形成することを意味する。例えば、負屈折[2]は、空間を折り畳んで[13]、折り畳み空間領域に光学的「カーボンコピー」を生成することが分かる[12]。
【0190】
ハイパーレンズ[14]は、拡大虚像[15]を作る双曲幾何学を成立させる。マクスウェルの魚眼[4]として知られる、ここで実証する装置は、電磁波が仮想球の表面上を伝播するという錯覚を与えるが、現実には(上述の2D実施形態では)、電磁波は平面導波路に閉じ込められ、物理平面の任意の点が、仮想球上の、非ユークリッド幾何学の湾曲空間の点に対応する[16]。
【0191】
仮想球が完全結像装置として働く理由を知るために、物理平面内のソースから連続的に放出される波を考え、同等の仮想球上でのそれらを想像する。いかなるソースも、点ソースの集合とみなすことができるので、球上の任意位置の単一の点ソースが発生させる波を調査すれば十分である。波は、放出点から球を巡って伝播し、物理平面内の像点に対応する対蹠点(図15Aを参照)に集束する。しかしながら、波が像における出口により取り出される場合にのみ、集束が完全であり、無限に鋭い[7](下記の実験結果第2部の付録も参照)。出口とは、結像の用途で検出器の役割を果たす点状吸収器を意味する。上述のように、検出器は、例えば、限定はしないが、CCD若しくはCMOSアレイ、感光若しくは写真感光材料層、又はフォトダイオードであり得る。出口がなければ、波がソースに戻ってサブ波長集束のない定常パターンを形成する[17、18]。
【0192】
波の一部のみが出口を通って逃げる場合、その部分のみが完全集束される。さらに、本発明者らの実験において、検出器アレイのように、2つ以上の出口が波に対して提供される場合、出口が像点から波長の約半分の範囲にあれば、波は正確な像点に最も近い出口を選択することが分かった。検出器間の距離を波長よりも大幅に短くすることができるので、分解能はサブ波長であり、原理上は無限に鋭くなり得る。波の検出された部分しか点状の精度で結像されないが、検出がまさに結像点なので、これは完全に十分である。
【0193】
マクスウェルの魚眼は、[4]のように装置の中心から距離rに沿って変化する屈折率を有する材料を必要とする。
【0194】
【数36】

【0195】
式中、「a」は、仮想球の半径に対応する特性長である(「a」が前節のrに対応することにも留意されたい)。定数nは、r=aでの屈折率であり、仮想球の屈折率でもある。実際には、マクスウェルの魚眼を半径r=aにあるミラー[7]により包囲することが有利であり、このミラーは、仮想球の赤道周囲のミラーに相当する(図15Bを参照)。この場合、屈折率プロファイルは、ミラーにおけるnから中心における2nまでの範囲にあるが、以前として完全像[7]を形成する(図1b)。なお、マクスウェルの魚眼は、ソース及び像の両方が装置内にある特殊な「レンズ」である。
【0196】
マクスウェルの魚眼は作製されたことがない[19、20]。平面導波路[21]をなす2つの平行な金属板間に閉じ込められたマイクロ波放射線のための、魚眼ミラー[7]を実現した。この装置を板間に挿入し、その屈折率プロファイル(37)は、平面導波路内のマイクロ波を図15Bに示すような仮想半球上の波であるかのように挙動させる。5mmの板間隔を選択し、板に対して垂直な電場を有するマイクロ波のみが内部を進むことができるようにする。これは、この偏波の電磁波に関してのみ誘電率ε=nの材料が空間を完全に曲げるように見えるので[7]、完全結像に重要である。図16に示す本装置80は、その電磁特性を整形するエッチング除去構造を有する同心状の銅回路板(Rodgers RT6006)層82でできた、マイクロ波クローキング装置[22]又は改良Eatonレンズ[23]に類似したものであるが、魚眼構造が電磁場ではなく電場に応答する点が異なる[22、23]。回路板層は、金属ミラー84(完全結像に必要な反射器を形成する)により包囲される。こうした構造は、装置がスペクトルの広帯域にわたって完全結像を行うことができるよう非共振作動用に設計される[24]。実用上の理由から、いくつかの層に誘電体粉末(ECCOSTOCK Hik Powders、図16を参照)を補い、組み合わせた金属構造及び充填材が、a=5cm、n=1での所望の屈折率プロファイル(37)をもたらす。本装置は、厚さが5mmであり、導波路の金属板間にちょうど嵌まる。
【0197】
この場合のソースとして、底板に挿通された同軸ケーブルを使用する。ケーブルは、外径が2.1mmであり、1.68mmのTeonアイソレータ及び0.5mmの内側導体を有し、後者は、おおよその線ソースを形成するために装置内で4.5mm露出させる。ソースケーブルを通して、合成器及び解析器として兼用されるベクトルネットワークアナライザ(HP8722D)により発生させた自由空間波長λ=3cmのマイクロ波放射線を入射させる。出口も底板に挿通するが、完全に受動的であり、ケーブルにインピーダンス整合された吸収器に通じる。最大パワー抽出及びベストフォーカスのために、出口は、ソースと同一の設計の同軸ケーブルであることにより逆にソースとして働く[25]。導波路内の場は、1mm刻みで左右両方向に移動する上板に挿通した同軸ケーブルにより走査される[21]。ケーブルは露出させず、検出による場の歪みが最小であるようにする。走査ケーブルは、信号を測定して合成場に対して同相成分及び違相成分に分解するベクトルネットワークアナライザに供給される。数学的に、これらの成分は、導波路の各走査空間点で取得される複素時間フーリエ振幅(complex temporal Fourier amplitude)の実部及び虚部に対応する。
【0198】
図17Aは、マクスウェルの魚眼ミラー[7]の結像性能を探る2つの実験のスキームを示す。第1実験では、ソースに対して正確な結像点に配置された1つの出口90を用いる。第2実験では、第1出口90から0.2λの距離に配置した別の出口92を加え、ここで、λ=λ/nは像における局所波長である。図17Bは、走査場強度(複素フーリエ変換の二乗係数)を示し、これはサブ波長が像スポット94に集束することを明確に示す。第2出口92を加えた場合、強度プロファイルはほぼ同一であり(図17C)、これは、出口同士が0.5λの標準回折限界[1]よりも近い場合でも波が正確な出口に集束することを証明する。
【0199】
図18A及び図18Bは、ソースと像との間の線に沿って走査した第1実験における場96を、完全に滑らかな屈折率プロファイル(37)及び理想的な線ソースをとることに基づく理論的予測98[7]と比較したものである。これらの図は、場の振幅の実部及び虚部の両方を示すことで、入射させたマイクロ波放射線のほとんどが装置の出口から出る進行波[18]を形成することを証明する。装置が(屈折率分布材料又はテーパ導波路ではなく)構造化材料でできており、ソース及び出口が理想的でないことを考えると、理論との一致は極めて良好である。ソースは、近接場で板と平行な電気成分も有する電磁波を発し、ソース及び出口は、それらの幾何学的サイズよりもはるかに大きな電磁場断面(electromagnetic cross sections)を有する[26、27]。現在のところ、結像分解能はソース及び検出器により制限されると思われるが、原理上はこれを完全にすることができる。
【0200】
実験解析第2部の付録
この付録では、本発明者らのマイクロ波データと理論との比較に使用した解析表式を集約し、出口のない、したがってサブ波長分解能ではない結像に関する実験結果を示す。簡単のために、装置半径aの単位での波長の平面におけるデカルト座標x及びyを記述し、n=1とする。2つの座標を1つの複素数z=x+izに組み合わせるのが便利である。この表記法及び本発明者らによる単位で、マクスウェルの魚眼[4]の屈折率プロファイルは、以下のように書ける。
【0201】
【数37】

【0202】
波数k(本発明者らによる単位で)及び垂直方向に分極した電場を有する定常電磁場を考える。この場合、電場強度は、k及びzに依存する1つのスカラー複素フーリエ振幅Eのみによって特徴付けられ、これをE(z)で示す。波が、r=1における完全ミラーにより包囲された誘電率ε=n及び屈折率(A1)を有する材料内を伝播すると仮定する。理論[7]によれば、完全線ソースの場は、厳密表現
【0203】
【数38】

【0204】
により与えられ、式中、Pは、指数
【0205】
【数39】

【0206】
のルジャンドル関数[28]である。プラス記号は正の波数kを指し、マイナス記号は負の波数kを指す(出口のない場合の場を説明するために、負のkが必要となる)。ルジャンドル関数の変数ζとして、
【0207】
【数40】

【0208】
となり、zは、複素数表示z=x+iyでの線ソースの座標x及びyを示す。波動関数(A2)は、1つはソースz0において、1つは像点において、装置の領域|z|<1内で2つの対数特異点[7]を発生させる。
z’=−z (A5)
これは、波が原理上は無限分解能で正確な像を形成することを意味する。像における特異点は、位相因子exp(iπv)を保持することが分かるので[7]、位相遅延はπvである。図18A及び図18Bは、式(A2)が、ソース及び像の有限電磁気的サイズに起因した不完全性を除き、本発明者らのデータとよく一致することを示す。なお、公式(A2)は、出口を通して焦点で消えて完全像を形成する進行波の場を記述したものである。この出口は、結像において検出器の役割を果たす完全に受動的な吸収器である。
【0209】
出口がない場合、波はソースに戻ってそこで再吸収され、定常波を形成する。定常波を素元的な放射線の灰の連続した流れ(continuous stream of elementary ashes of radiation)として想像する。像(A5)付近では、各素元波が、マクスウェル方程式の先進解[27]のように、逆に働くソースが放出した放射線のように集束するが、波が戻るときは遅延波のように見える[27]。したがって、出口のない定常形での全電磁波は、先進波及び遅延波の重ね合わせである。
【0210】
【数41】

【0211】
式(A6)は、必要に応じて、ソースに対数特異点を有する実数場(real field)を記述することが確認される[18]。実数場(A6)は、複合波でありexp(ikx)のような進行波に対応する波(A2)とは対照的に、自由空間内の平面波cos(kx)のような定常波を形成する。定常波(A6)が像点において特異点(A5)を発生させず、定常波(A6)が完全像を形成しないことも確認される。
【0212】
図19A及び図19Bは、検出器が場を監視しない場合の、出口のない結像に関する実験結果を示す。出口のある完全結像(図17Bに示す)における鋭いピークの代わりに、波は回折限界焦点を形成する。図20は、測定された場を公式(A6)と比較したものである。出口がない場合、波は実数である(wave is real)ので定常波が形成されることが分かる。ここでは、実験状況がより単純であるので、理論と実験とが完全結像方式よりもさらによく一致し、波が出口を通って逃げる必要がない。像付近のサブ波長特徴は、マクスウェルの魚眼の実現に使用される材料の構造、つまり回路板のリング82(図16)から生じる。連続放射線の各素元波が、ソースに反射し戻される前に完全精度でそこに集束しようとするので、像付近の装置のサブ波長構造が明らかになる。本発明者らの実験結果によれば、検出された場のみがマクスウェルの魚眼[4]で完全結像される。
【0213】
要約
説明したように、負屈折材料が完全結像装置にとって重要であると一般に考えられている。しかしながら、2009年に、U・レオンハルトは、マクスウェルの魚眼についてマクスウェル方程式を解析的に解くことにより(U. Leonhardt, New J. Phys, 11, 093040 (2009), published 29 September 2009)、この装置が(波に関しても)無限分解能を有し、損失の影響を受けないことを証明した。本発明者らのその後の認識によれば、ルネベルグプロファイルは同じ特性を有し、実際に完全結像の展望を開く。本発明者らが発見したように、負屈折は完全結像に結局必要ないであろう。
【0214】
マクスウェルの「魚眼」では、1点からの光線が別の点に忠実に集まることが知られている。光が粒子からなる場合、光は完全像を形成する。しかしながら、光は波でもあり、光の「うねり」がこれらのレンズの分解能を回折限界に制限するとこれまで考えられていた。
【0215】
一見したところ、波動計算を行った者はこれまでにいない。驚くべきことに、本発明者らは、出口を像点に設けて波を装置から分離すれば、マクスウェルの魚眼が原理上は無限分解能を有する(その分解能が光の波動性により制限されない)ことを証明した。負屈折を必要としないので、このような装置は実際に有効であり得る。
【0216】
理論上の上記の証明に加えて、本発明者らは第3節において、マクスウェルの魚眼(レンズ周囲に設けた反射器、ソース、及び出口を有する)を、シリコンに組み込んだ構造化材料を使用して近赤外光で実現できることを示した。さらに、第3節は、完全結像がマイクロ波に関してマクスウェルの魚眼(この場合もレンズ周囲に設けた反射器、ソース、及び出口を有する)で有効となることを示す。
【0217】
本発明者らの知見は、光が物体の周りで曲がって物体を見えなくするという広帯域不可視性の概念によ影響されたものである。ここで、不可視性の背景にある概念が結像に適用される。
【0218】
説明したように、上記開示による完全レンズは、シリコンチップ上に作製することができ、例えば、半導体作製業者がさらにより細かい構造を作り、より多くのトランジスタを集積することを可能にする。理論物理学が新たな技術を派生させ得る。
【0219】
要約すると、完全結像は負屈折に依存すると考えられていたが、ここでは、通常の静屈折光学媒質も完全像を形成し得ることを示す。特に、本発明者らは、2次元(2D)集積光学におけるマクスウェルの魚眼が光の波長により制限されない分解能を有する完全機器となることを数学的に立証した。本発明者らは、完全結像装置を実際に作製できるように、魚眼の変更の仕方も示した。ナノリソグラフィ及び他の光学分野に特に適用されるのに加えて、この完全結像方法は、波が2Dヘルムホルツ方程式に従う限り、光学以外、音響学、流体力学、又は量子物理学にも適用することができる。
【0220】
この詳細な説明において本発明のいくつかの実施形態を記載したが、添付の特許請求の範囲は、種々の変更及び改良に従った記載の実施形態とは異なり得る本発明の他の実施形態を含む。
【0221】
参考文献
第1節
[1]R.K. Luneburg, Mathematical Theory of Optics (University of California Press, Berkeley and Los Angeles, 1964)
[2]A. Hendi, J. Henn, and U. Leonhardt, Phys. Rev. Lett 97, 073902 (2006)
[3]U. Leonhardt, New J. Phys. 8, 1 18 (2006)
[4]Yu. N. Demkov, V. N. Ostrovsky, and N. B. Berezina, Sov-Phys. JETP 33, 867 (1971)
第2節
[1]Pendry J B 2000 Phys. Rev. Lett. 85 3966
[2]Veselago V G 1968 Sov. Phys.-Usp. 10 509
[3]Smith D R, Pendry J B and Wiltshire M C K 2004 Science 305 788
[4]Soukoulis C M, Linden S and Wegener M 2007 Science 315 47
[5]Stockman M I 2007 Phys. Rev. Lett. 98 177404
[6]Maxwell J C 1854 Camb. Dublin Math. J 8 188
[7]Lenz W 1928 contribution in Probleme der Modernen Physik ed P Debye (Leipzig: Hirzel)
[8]Stettler R 1955 Optik 12 529
[9]Luneburg R K 1964 Mathematical Theory of Optics (Berkeley, CA: University of California Press)
[10]Born M and Wolf E 1999 Principles of Optics (Cambridge: Cambridge University Press)
[11]Valentine J, Li J, Zentgraf T, Bartal G and Zhang X 2009 Nat.Mater. 8 568
[12]Gabrielli L H, Cardenas J, Poitras C B and Lipson M 2009 Nat. Photonics 3 461
[13]Lee J H, Blair J, Tamma V A, Wu Q, Rhee S J, Summers C J and Park W 2009 Opt. Express 17 12922
[14]Leonhardt U 2006 Science 312 1777
[15]Leonhardt U 2006 New. J. Phys. 8 1 18
[16]Li J and Pendry J B 2008 Phys. Rev. Lett. 101 203901
[17]Leonhardt U 2009 Nat. Mater. 8 537
[18]Tai C T 1958 Nature 182 1600
[19]Rosu H C and Reyes M 1994 Nuovo Cimento D 16 517
[20]Makowski A J and Gorska K J 2009 Phys. Rev. A 79 0521 16
[21]Greenwood A D and Jin J-M 1999 IEEE Antennas Propag. Mag. 41 9
[22]Leonhardt U and Philbin T G 2009 Prog. Opt. 53 69
[23]Leonhardt U and Tyc T 2009 Science 323 1 10
[24]Tyc T, Chen H, Chan C T and Leonhardt U 2010 IEEE J. Select. Top. Quantum Electron, in press (arXiv: 0906. 4491)
[25]Needham T 2002 Visual Complex Analysis (Oxford: Clarendon)
[26]Jackson J D 1998 Classical Electrodynamics (New York: Wiley)
[27]Landau L D and Lifshitz E M 1993 Electrodynamics of Continuous Media (Oxford: Butterworth-Heinemann)
[28]Erdelyi A, Magnus W, Oberhettinger F and Tricomi F G 1981 Higher Transcendental Functions vol I (New York: McGraw-Hill)
[29]Leonhardt U and Philbin T G 2006 New J. Phys. 8 247
[30]Jacob Z, Alekseyev L V and Narimanov E 2006 Opt. Express 14 8247
[31] Liu Z, Lee H, Xiong Y, Sun C and Zhang X 2007 Science 315 1686
[32]Gurudev Dutt M V, Childress L, Jiang L, Togan E, Maze J, Jelezko F, Zibrov A S, Hemmer P R and Lukin M D 2007 Science 316 1312
[33]Heller E J, Crommie M F, Lutz C P and Eigler D M 1994 Nature 369 464 [34] Schleich W and Scully M O 1984 General Relativity and Modern Optics in Les Houches Session XXXVIII New Trends in Atomic Physics (Amsterdam: Elsevier)
第3節
[1]Pendry, J. Negative Refraction Makes a Perfect Lens. Phys. Rev. Lett. 85, 3966-3969 (2000)
[2]Cai, W., Genov, D. & Shalaev, V. Superlens based on metal-dielectric composites. Phys. Rev. B 72, 193101 (2005)
[3]Fang, N., Lee, H., Sun, C. & Zhang, X. Sub-diffraction-limited optical imaging with a silver superlens. Science 308, 534-7 (2005)
[4]Kawata, S., Inouye, Y. & Verma, P. Plasmonics for near-field nano- imaging and superlensing. Nat. Photon. 3, 388-394 (2009)
[5]Kildishev, A. V. & Shalaev, V. M. Engineering space for light via transformation optics. Opt. Lett. 33, 43-45 (2008)
[6]Salandrino, A. & Engheta, N. Far-field subdiffraction optical microscopy using metamaterial crystals: Theory and simulations. Phys. Rev. B 74, 75103-75105 (2006)
[7]Leonhardt, U. Perfect imaging without negative refraction. New J. Phys. 11, 093040 (2009)
[8]Benitez, P., Minano, J. C. & Gonzalez, J. C. Perfect focusing of scalar wave fields in three dimensions. Opt. Express 18, 7650 (2010)
[9]Leonhardt, U. Optical conformal mapping. Science 312, 1777-80 (2006)
[10]Pendry, J. B., Schurig, D. & Smith, D. R. Controlling Electromagnetic Fields. Science 312, 1780-1782 (2006)
[11]Schurig, D., Pendry, J. B. & Smith, D. R. Calculation of material properties and ray tracing in transformation media. Opt. Express 14, 9794 (2006)
[12]Leonhardt, U. & Philbin, T. G. General relativity in electrical engineering. New J. Phys. 8, 247 (2006)
[13]Shalaev, V. M. Physics: Transforming light. Science 322, 384-6 (2008)
[14]Chen, H., Chan, C. T. & Sheng, P. Transformation optics and metamaterials. Nat. Mater. 9, 387-96 (2010)
[15] Leonhardt, U. & Philbin, T. Geometry and Light: The Science of Invisibility (Dover Publications, 2010)
[16]Maxwell, J. C. Problem 3. Cambridge and Dublin Math. J. 8, 188 (1854)
[17]Luneburg, R. K. Mathematical theory of optics (University of California Press, 1964)
[18]Glaser, W. Maxwell's Fish Eye as an Ideal Electron Lens. Nature 162, 455-456 (1948)
[19]Tai, C. T. Maxwell Fish-eye treated by Maxwell Equations. Nature 182, 1600-1601 (1958)
[20] Leonhardt, U. & Tyc, T. Broadband invisibility by non-Euclidean cloaking. Science 323, 1 10-2 (2009)
[21]Fuchs, B., Lafond, O., Rondineau, S. & Himdi, M. Design and characterization of half Maxwell fish-eye lens antennas in millimeter waves. IEEE T. Microw. Theory. 54, 2292-2300 (2006)
[22]Foca, E. et al. Superlensing with plane plates consisting of dielectric cylinders in glass envelopes. Phys. Stat. Sol. (A) 206, 140-146 (2009)
[23]Blaikie, R. J. Comment on Perfect imaging without negative refraction. New J. Phys. 12, 058001 (2010)
[24]Leonhardt, U. Reply to comment on Perfect imaging without negative refraction. New J. Phys. 12, 058002 (2010)
[25]Gabrielli, L. H., Cardenas, J., Poitras, C. B. & Lipson, M. Silicon nanostructure cloak operating at optical frequencies. Nat. Photon. 3, 461 - 463(2009)
[26] Valentine, J., Li, J., Zentgraf, T., Bartal, G. & Zhang, X. An optical cloak made of dielectrics. Nat. Mater. 8, 568-71 (2009)
[27]Oskooi, A. F. et al. Meep: A flexible free-software package for electromagnetic simulations by the FDTD method. Comput. Phys. Commun. 181, 687-702 (2010)
[28] Spadoti, D. H., Gabrielli, L. H., Poitras, C. B. & Lipson, M. Focusing light in a curved-space. Opt. Express 18, 3181 (2010)
第4節
[1]Born, M. and Wolf, E. Principles of Optics (Cambridge University Press, 1999)
[2]Pendry, J. B. Negative Refraction Makes a Perfect Lens. Phys. Rev. Lett. 85, 3966-3969 (2000)
[3]Stockman, M. I. Criterion for Negative Refraction with Low Optical Losses from a Fundamental Principle of Causality. Phys. Rev. Lett. 98, 177404 (2007)
[4]Maxwell, J. C. Problem 3. Cambridge and Dublin Math. J. 8, 188-188 (1854)
[5]Luneburg, R. K. Mathematical Theory of Optics (University of California Press, 1964)
[6]Leonhardt, U. and Philbin, T. G. Geometry and Light: the Science of Invisibility (Dover, 2010)
[7]Leonhardt, U. Perfect imaging without negative refraction. New J. Phys. 11, 093040 (2009)
[8]Leonhardt, U. Optical Conformal Mapping. Science 312, 1777-1780 (2006)
[9]Pendry, J. B., Schurig, D. and Smith, D. R. Controlling Electromagnetic Fields. Science 312, 1780-1782 (2006)
[10]Leonhardt, U. and Philbin, T. G. Perfect imaging with positive refraction in three dimensions. Phys. Rev. A 81, 01 1804 (2010)
[11]Benitez, P., Minano, J. C. and Gonzalez, J. C. Perfect focusing of scalar wave fields in three dimensions. Opt. Express 18, 7650-7663 (2010)
[12]Leonhardt, U. and Philbin, T. G. General relativity in electrical engineering. New J. Phys. 8, 247 (2006)
[13]Chen, H., Chan, C. T. and Sheng, P. Transformation optics and metamaterials. Nature Materials 9, 387-396 (2010)
[14]Jacob, Z., Alekseyev, L. V and Narimanov, E. Optical Hyperlens: Far- field imaging beyond the di_raction limit. Opt. Express 14, 8247-8256 (2006)
[15] Liu, Z. et al. Far-Field Optical Hyperlens Magnifying Sub-Diffraction- Limited Objects. Science 315, 1686-1686 (2007)
[16]Leonhardt, U. and Tyc, T. Broadband Invisibility by Non-Euclidean Cloaking. Science 323, 1 10-1 12 (2009)
[17]Blaikie, R. J. Comment on <'>Perfect imaging without negative refraction'. New J. Phys. 12, 058001 (2010)
[18]Leonhardt, U. Reply to comment on <'>Perfect imaging without negative refraction'. New J. Phys. 12, 058002 (2010)
[19]Fuchs, B., Lafond, O., Rondineau, S. and Himdi, M. Design and Characterization of Half Maxwell Fish-Eye Lens Antennas in Millimeter Waves. IEEE Transactions on Microwave Theory and Techniques 54, 2292-2300 (2006)
[20]Foca, E. et al. Superlensing with plane plates consisting of dielectric cylinders in glass envelopes. Phys. Status Solidi A 206, 140-146 (2009)
[21]Zhao, L., Chen, X. and Ong, C. K. Visual observation and quantitative measurement of the microwave absorbing e_ect at X band. Rev. Sci. Instrum. 79, 124701 (2008)
[22]Schurig, D. et al. Metamaterial Electromagnetic Cloak at Microwave Frequencies.Science 314, 977-980 (2006)
[23]Ma, Y. G., Ong, C. K., Tyc, T. and Leonhardt, U. An omnidirectional retroreflector based on the transmutation of dielectric singularities. Nature Materials 8, 639-642 (2009)
[24] Smith, D. R. and Pendry, J. B. Homogenization of metamaterials by field averaging. J. Opt. Soc. Am. B 23, 391 -403 (2006)
[25]Marques, R., Freire, M. J. and Baena, J. D. Theory of three- dimensional subdiffraction imaging. Appl. Phys. Lett. 89, 21 1 1 13 (2006)
[26]Combleet, S. Microwave optics: the optics of microwave antenna design (Academic Press, 1976)
[27]Jackson, J. D. Classical Electrodynamics (Wiley, 1999)
[28]Erdelyi, A., Magnus, W., Oberhettinger, F. and Tricomi, F. G. Higher Transcendental Functions, Vol. I (McGraw-Hill, New York, 1981)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結像装置であって、
a.所定の屈折率プロファイルに従って変化する屈折率を有するレンズと、
b.ソースと、
c.前記装置から波を分離する出口と、
d.前記レンズ、前記ソース、及び前記出口の周囲に配置された反射器と
を備え、前記反射器及び前記レンズの前記屈折率プロファイルは共に、前記出口がなければ波が前記レンズ及び前記反射器により前記ソースへ指向し戻されるように閉鎖軌道に沿って、前記ソースから複数の方向のいずれかに伝送される波を前記出口へ指向させるよう構成される結像装置。
【請求項2】
請求項1に記載の結像装置において、前記波は音波又は電磁波である結像装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の結像装置において、前記レンズ、前記ソース、及び前記出口は全て同一平面上にある結像装置。
【請求項4】
請求項3に記載の結像装置において、前記反射器は、前記レンズ、前記ソース、及び前記出口を前記平面上で2次元で包囲する結像装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の結像装置において、前記波は、前記ソースから前記平面上で複数の方向のいずれかに伝送される結像装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の結像装置において、前記屈折率プロファイルは屈折率分布プロファイルである結像装置。
【請求項7】
請求項6に記載の結像装置において、前記屈折率プロファイルはドーピングした誘電体を含む結像装置。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の結像装置において、前記屈折率プロファイルはテーパ導波路を含む結像装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の結像装置において、前記ソースは波を前記装置に結合する手段を含む結像装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の結像装置において、前記出口は前記ソースの反対側にある結像装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の結像装置において、前記出口は伝送された波を吸収する像検出器を含む結像装置。
【請求項12】
請求項11に記載の結像装置において、前記像検出器は、感光材料層、フォトダイオード、CCD若しくはCMOSピクセルアレイ、又は写真感光材料層を含む結像装置。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の結像装置において、前記レンズは等方性誘電体を含む結像装置。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の結像装置において、前記レンズは前記ソース及び前記出口を備える結像装置。
【請求項15】
請求項14に記載の結像装置において、前記出口は前記レンズの外面に位置決めされる結像装置。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の結像装置において、前記レンズの縁と前記反射器との間に隙間をさらに備える結像装置。
【請求項17】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の結像装置において、前記反射器は前記レンズに隣接する結像装置。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の結像装置において、前記反射器は平面視で実質的に環状である結像装置。
【請求項19】
請求項18に記載の結像装置において、前記レンズは前記反射器の環内に位置付けられる結像装置。
【請求項20】
請求項18又は19に記載の結像装置において、前記レンズは前記反射器の前記環と同心状である結像装置。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれか1項に記載の結像装置において、前記レンズは平面視で実質的に円形である結像装置。
【請求項22】
請求項18〜20のいずれか1項に従属する場合の請求項21に記載の結像装置において、前記反射器の前記環は前記レンズよりも大きな半径を有する結像装置。
【請求項23】
請求項18〜20のいずれか1項に従属する場合の請求項21に記載の結像装置において、前記反射器の環及び前記レンズは実質的に同一の半径を有する結像装置。
【請求項24】
請求項21〜23のいずれか1項に記載の結像装置において、前記出口は前記ソースの直径方向反対側にある結像装置。
【請求項25】
請求項1〜24のいずれか1項に記載の結像装置において、前記レンズはシリカ及び/又は窒化ケイ素を含む結像装置。
【請求項26】
請求項1〜25のいずれか1項に記載の結像装置において、前記レンズは回転対称であり、下記の陰方程式により与えられる前記屈折率プロファイルn(r)で半径rに沿って変化し、
【数1】

式中、ρは0〜rの範囲のパラメータであり、
はレンズの半径であり、
は反射器の半径であり、
bは積分変数である結像装置。
【請求項27】
請求項26に記載の結像装置において、前記レンズは、下記の方程式と一致する最大屈折率nを有し、
【数2】

式中、rはレンズの半径であり、
は反射器の半径であり、
ξは積分変数である結像装置。
【請求項28】
請求項1〜27のいずれか1項に記載の結像装置において、前記レンズは実質的に平面状である結像装置。
【請求項29】
請求項28に記載の結像装置において、前記波は電磁波であり、該電磁波の電場成分は、前記レンズの平面に対して実質的に垂直である結像装置。
【請求項30】
請求項1〜29のいずれか1項に記載の結像装置において、前記レンズの誘電率はその屈折率の二乗に等しい結像装置。
【請求項31】
結像装置を使用した結像方法であって、前記装置は、
a.所定の屈折率プロファイルに従って変化する屈折率を有するレンズと、
b.ソースと、
c.前記装置から波を分離する出口と、
d.前記レンズ、前記ソース、及び前記出口の周囲に設けられた反射器と
を備える結像方法において、
波を前記ソースから複数の方向に伝送するステップと、前記レンズ及び前記反射器を使用して、前記出口がなければ波が前記レンズ及び前記反射器により前記ソースへ指向し戻されるように閉鎖軌道に沿って、前記伝送された波を前記出口へ指向させるステップと、該出口を使用して前記指向された波の少なくとも一部を前記装置から分離するステップとを含む結像方法。
【請求項32】
請求項31に記載の結像装置において、波を前記ソースから伝送するステップは、波を前記ソースから全方向に伝送するステップを含む結像方法。
【請求項33】
請求項31又は32に記載の結像方法において、複数の波を前記出口に集束させるステップをさらに含む結像方法。
【請求項34】
請求項31〜33のいずれか1項に記載の結像方法において、前記レンズ、前記ソース、及び前記出口は全て同一平面上にある結像方法。
【請求項35】
請求項31〜34のいずれか1項に記載の結像方法において、前記レンズは実質的に平面状である結像方法。
【請求項36】
請求項35に記載の結像方法において、前記波は電磁波であり、該電磁波の電場成分は、前記レンズの平面に対して実質的に垂直である結像方法。
【請求項37】
請求項35又は36に記載の結像方法において、前記波は前記レンズの平面内で前記ソースから伝送される結像方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3a】
image rotate

【図3b】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図6C】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8A】
image rotate

【図8B】
image rotate

【図9A】
image rotate

【図9B】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11A−11D】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15A】
image rotate

【図15B】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17A】
image rotate

【図17B】
image rotate

【図17C】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19A】
image rotate

【図19B】
image rotate

【図20】
image rotate


【公表番号】特表2013−505481(P2013−505481A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−530335(P2012−530335)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【国際出願番号】PCT/GB2010/051465
【国際公開番号】WO2011/036469
【国際公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(511083994)ユニバーシティー コート オブ ザ ユニバーシティー オブ セイント アンドリューズ (5)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY COURT OF THE UNIVERSITY OF ST ANDREWS
【出願人】(512076450)マサリュク ユニバーシティー (1)
【氏名又は名称原語表記】MASARYK UNIVERSITY
【出願人】(510243539)コーネル ユニバーシティー (5)
【Fターム(参考)】