説明

結合ポラゲン含有多官能性モノマー及びそれからのポリアリーレン組成物

i)1個又はそれ以上のジエノフィル基(A−官能基)、ii)1個又はそれ以上の、2個の共役炭素−炭素二重結合及び離脱基Lからなる環構造(B−官能基)並びにiii)1個又はそれ以上の化学的に結合したポラゲンを含んでなる化合物(モノマー)であって、1個のモノマーのA−官能基が、環化付加反応条件下で、第二のモノマーのB−官能基と反応し、それによって架橋したポリフェニレンポリマーを形成できることを特徴とする化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結合したポラゲン(poragen)単位を含み、そして少なくとも2個の異なった反応性官能基を有する組成物及びこれらのモノマーから製造される芳香族ポリマーに関する。更に詳しくは、本発明は、単一モノマー中に、ポリフェニレンマトリックス形成性官能基及びポラゲンを含む組成物に関する。得られるポリマーは、マイクロエレクトロニクスデバイスに於いて低誘電定数絶縁層を製造する際に有用である。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているもののようなポリアリーレン樹脂は、半導体デバイス、特に集積回路に於ける絶縁フィルムとして使用するのに適している、低誘電定数材料である。このようなポリアリーレン化合物は、2個又はそれ以上のシクロペンタジエノン基を有する多官能性化合物を、2個又はそれ以上の芳香族アセチレン基を有する多官能性化合物(多官能性化合物の少なくとも幾らかは、3個又はそれ以上の反応性基を有する)と反応させることによって製造される。2個の芳香族アセチレン基と共に1個のシクロペンタジエノン基を含有する或る種の単一成分反応性モノマー、特に3,4−ビス(3−(フェニルエチニル)フェニル)−2,5−ジシクロペンタジエノン及び3,4−ビス(4−(フェニルエチニル)フェニル)−2,5−ジシクロペンタジエノン並びにかかるモノマーから製造されるポリマーも、上記の文献に開示されている。典型的には、これらの材料は、溶液中でb段階にあり、次いで基板(下地)の上に被覆し、続いて硬化を完結するために400〜450℃のように高い高温度で硬化(ガラス化)させる。
【0003】
特許文献2には、反応剤の比を調節することにより又は他の反応性種(species)をモノマー若しくは特許文献1の部分的に重合された生成物に添加することにより、特許文献1で教示されているようなポリマーのモジュラスを調節することが望ましいであろうことが教示されている。特許文献3には、フェニルアセチレン基を含有する芳香族ポリマーと反応して、枝分かれした又は架橋したポリマーを与えることができる、シクロペンタジエノン基を含む芳香族ポリマーが教示されている。特許文献4には、シクロペンタジエノン主鎖基及びフェニルアセチレン主鎖基の両方を含むポリマーが開示されている。
【0004】
特許文献5には、半導体デバイスのための低誘電定数絶縁層を形成するための、架橋性炭化水素含有マトリックス前駆体及び硬化性である別個の細孔形成材料(ポラゲン)を含む架橋性生成物が開示されている。前駆体を部分的に硬化させて、ポラゲンの吸蔵物を含有するマトリックスを形成させ、次いでこの細孔発生材料を除去して、マトリックス材料中にボイド又は細孔を形成することによって、低誘電定数絶縁フィルムを製造することができる。b段階ポリフェニレン樹脂配合物を形成するための、硬化性マトリックス樹脂と別個に添加された細孔形成材料、特に極小サイズのポラゲンとの混合物の使用は、ポラゲン凝集を受け、大直径細孔形成及び細孔の不均一分布になり、得られるフィルムの電子特性に於ける変動をおこし得る。
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,965,679号明細書(Godschalx等)
【特許文献2】米国特許第6,359,091号明細書
【特許文献3】米国特許第6,172,128号明細書
【特許文献4】米国特許第6,156,812号明細書
【特許文献5】国際特許出願公開第WO00/31183号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の進歩は、得られるフィルムの誘電定数に於ける改良に至ったが、フィルム特性に於ける追加の改良が、工業によって望まれている。特に、単一成分の手段により均質な多孔質材料を提供することができる硬化性組成物が、なお望まれている。更に、改良された物理的性質、特に、均一に分布された小さい細孔(small pore)を有するフィルム及び他の硬化組成物が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様に従えば、i)1個又はそれ以上のジエノフィル基(A−官能基)、ii)1個又はそれ以上の、2個の共役炭素−炭素二重結合及び離脱基Lを含んでなる環構造(B−官能基)並びにiii)1個又はそれ以上の化学的に結合したポラゲンを含んでなる化合物(モノマー)であって、1種のモノマーのA−官能基が、環化付加反応条件下で、第二のモノマーのB−官能基と反応し、それによって架橋したポリフェニレンポリマーを形成することができることを特徴とする化合物が提供される。
【0008】
本発明の第二の態様に従えば、環化付加反応条件下での、上記のモノマー、それらの混合物又はそれらを含む組成物のA基とB基との部分的反応によって製造される、硬化性オリゴマー又はポリマーが提供される。本発明のこの態様に於いて、硬化性オリゴマー又はポリマーには、オリゴマー又はポリマーの、側鎖基、末端基又は主鎖内の基として、2種の反応性A官能基及びB官能基の幾らかの残留物が含まれている。
【0009】
本発明の第三の態様に従えば、第一の態様又は第二の態様の上記の硬化性モノマー、オリゴマー若しくはポリマー又はこれらを含む組成物を、硬化させ、そして架橋させることによって製造された架橋ポリマーが提供される。得られる架橋ポリマーには、ポリマー全体に均一に分布された結合ポラゲンが含まれているのが好ましい。
【0010】
本発明の第四の態様に従えば、ガラス化(vitrified)ポリアリーレンポリマーからなる多孔質固体物品の製造方法であって、第一乃至第三態様の上記の硬化性モノマー若しくはオリゴマー又はこれらからなるポリマー若しくは組成物を用意する工程、このモノマーを、環化付加反応条件下で、任意に溶媒及び/又は1種若しくはそれ以上の別個に添加されたポラゲンの存在下で、部分的に重合させ、それによって硬化性オリゴマー又はポリマー含有組成物を形成する工程並びにこの組成物を硬化させそして架橋させて、結合したポラゲン及び任意に別個に添加されたポラゲンを含有する固体ポリアリーレンポリマーを形成する工程を含んでなる方法が提供される。更なる工程に於いて、任意の溶媒、結合したポラゲン及び/又は別個に添加されたポラゲンを除去することができる。
【0011】
第五の態様に於いて、本発明は、上記の方法によって製造された物品、望ましくは、結合したポラゲン及び/又は別個に添加されたポラゲンの除去によって形成された多孔質物品である。前記物品には均一な細孔の分布が含まれているのが望ましい。
【0012】
本発明の第六の態様に従えば、上記の物品は、フィルム又は回路ライン若しくはその中の回路ラインの層の間の絶縁体としてこのフィルムを含む半導体デバイスのような構造体である。
【発明の効果】
【0013】
前記モノマーは、半導体デバイスの製造に於いて使用される典型的な溶媒中に非常に可溶性であり、基板上に被覆し、そしてガラス化して、フィルム又は他の物品を形成する配合物中に使用することができる。この組成物は、チップ製造工程の間の細孔崩壊又は合体のための減少した可能性を有する、均一に分布された小さい細孔を有し、従って均一な電気的特性及び低い誘電定数を有するフィルムを得るために望ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
米国特許慣行の目的のために、本明細書中で参照した、任意の特許、特許出願又は刊行物の内容を、特に、モノマー、オリゴマー又はポリマー構造、合成技術及び当該技術分野に於ける一般的知識のその開示に関して、その全部を引用して本明細書に含めるものとする。本明細書中に出てくるとき、用語「含む又は含んでなる(comprising)」及びその変形は、同じものが本明細書中に開示されていても又は開示されていなくても、任意の追加の成分、工程又は手順の存在を排除することを意図しないものである。如何なる疑念も回避するために、用語「含む又は含んでなる」の使用によって本明細書中で特許請求された全ての組成物には、反対に記載されていない限り、任意の追加の添加剤、補助剤又は化合物が含んでいてもよい。反対に、本明細書中に出てくるとき、用語「から実質的になる(consisting essentially of)」は、操作性のために必須でないものを除いて、任意の続く列挙の範囲から、任意の他の成分、工程又は手順を排除する。使用されている場合、用語「のみからなる」は、特に明記されていない又は挙げられていない任意の成分、工程又は手順を排除する。用語「又は」は、文脈から明らかでない又は他の方法で記載されていない場合、個別に及び任意の組合せで、列挙された構成員を指す。
【0015】
本明細書で使用される用語「芳香族」は、(4δ+2)個のπ電子(但し、δは1又はそれ以上の整数である)を含有する、多原子環式環システムを指す。用語「縮合」は、本明細書に於いて、2個又はそれ以上の多原子環式環を含有する環システムに関して使用するとき、その少なくとも2個の環に関して、少なくとも1対の隣接する原子が両方の環内に含まれていることを意味する。
【0016】
「A−官能性(A-functionality)」は、単一のジエノフィル基を指す。
【0017】
「B−官能性」は、2個の共役炭素−炭素二重結合及び離脱基Lを含む環構造を指す。
【0018】
「b段階」はモノマー又はモノマー混合物の部分重合から得られるオリゴマー混合物又は低分子量ポリマー混合物を指す。
【0019】
「架橋性」は再造形又は再成形することができない材料にまで非可逆的に硬化させることができるマトリックス前駆体を指す。架橋は熱、UV、マイクロ波、X線又はe−ビーム照射によって助けることができる。
【0020】
「ジエノフィル」は好ましくはL基の除去及び芳香族環形成を含む環化付加反応に於いて、本発明に従って共役二重結合した炭素基と反応することができる基を指す。
【0021】
「不活性置換基」はモノマー又はb段階オリゴマーの任意の次の望ましい重合反応を妨害せず、本明細書に開示されたような更なる重合性単位を含まない置換基を意味する。
【0022】
「マトリックス前駆体」は硬化又は更なる硬化の際に、架橋ポリマー材料を形成する、モノマー、プレポリマー、ポリマー又はこれらの混合物を意味する。
【0023】
「モノマー」は重合性化合物又はこれらの混合物を指す。
【0024】
「マトリックス」は別個の組成物又はボイドの分散された領域を取り囲む連続相を指す。
【0025】
「ポラゲン(poragen)」は本発明のモノマー、オリゴマー又はポリマーと組み合わせることができ、そして最初に形成されたオリゴマーから又は更に好ましくはガラス化された(即ち、完全に硬化又は架橋された)ポリマーマトリックスから除去されて、ポリマー中のボイド又は細孔の形成になることができる、ポリマー又はオリゴマー成分を指す。ポラゲンは、マトリックスポリマーから、溶媒による溶解を含む任意の適当な技術により又は更に好ましくは熱分解により除去することができる。「結合ポラゲン」は、モノマー、オリゴマー又はガラス化ポリマーマトリックスに、化学的に結合された又はグラフト化されたポラゲンを指す。
【0026】
モノマー及びそれらの合成
本発明のモノマーは、好ましくは1個又はそれ以上のジエノフィル官能基、好ましくはアリールアセチレン基;1個又はそれ以上の、2個の共役炭素−炭素二重結合及び離脱基Lを有する炭化水素環又はヘテロ原子置換炭化水素環;1個又はそれ以上の結合ポラゲン側鎖並びに不活性置換基を任意的に含む。望ましくは、ポラゲン側鎖はA−官能基( )によるB−官能性を含む部分に結合されている。
【0027】
好ましいB−官能基は環式5員共役ジエン環(但しLは−O−、−S−、−(CO)−又は−(SO2)−を含む)又は6員共役ジエン環(但し、Lは−N=N−又は−O(CO)−を含む)を含む。任意的に、環構造及びそれらの置換基の炭素原子の2個は、一緒になって、芳香族環を形成することもできる。即ち、5員又は6員環構造は、縮合した多芳香族環系の一部であってよい。
【0028】
最も好ましくは、Lは−(CO)−であり、そうしてこの環は、シクロペンタジエノン基又はベンズシクロペンタジエノン基である。このような最も好ましいシクロペンタジエノン環の例は、その2、3、4又は5位で、更に好ましくはその2、3、4及び5位でアリール基を含むものである。
【0029】
好ましいジエノフィル基(A−官能基)は不飽和炭化水素基、最も好ましくはエチニル基又はフェニルエチニル基である。
【0030】
本発明のモノマーは、一般的に、式:AxByP*z(式中、A、B及びP*は、それぞれ、A−官能性、B−官能性及びポラゲン側鎖を表し、そしてx、y及びzは1又はそれ以上の整数である)によって示すことができる。更に好ましくはxは2又はそれ以上であり、そしてy及びzは2又はそれ以上である。
【0031】
本発明に従った適当なモノマーの例は、式:
【0032】
【化1】

【0033】
(式中、Lは−O−、−S−、−N=N−、−(CO)−、−(SO2)−又は−O(CO)−であり、
Zは、それぞれの存在に於いて独立に、水素、ハロゲン、置換されていない若しくは不活性に置換されたヒドロカルビル基、特にアリール基、更に特にフェニル基、Z”であるか又は2個の隣接するZ基は、それらが結合している炭素と一緒に、縮合芳香族環を形成し、
Z”は、2個若しくはそれ以上の上記の構造を結合する又はA−官能基、結合ポラゲン及び/若しくは上記のものの組合せを結合する、置換されていないか又は不活性的に置換されたヒドロカルビル基の二価誘導体であり、
そして少なくとも1個の存在に於いて、Zは−Z”−C≡CP*であり
又は少なくとも1個の存在に於いて、Zは−Z”−C≡CRであり、そして少なくとも1個の他の存在に於いて、Zは結合ポラゲンであり、
*は、それぞれの存在に於いて独立に、結合ポラゲンであり、そして
Rは、それぞれの存在に於いて独立に、水素、C1〜C4アルキル、C6〜C60アリール及びC7〜C60の不活性的に置換されたアリール基からなる群から選択される)
に対応する化合物である。
【0034】
本発明に従った好ましいモノマーは、式:
【0035】
【化2】

【0036】
(式中、R1は、P*、C6〜C20アリール、不活性的に置換されたアリール又はR2OC(O)−、更に好ましくはフェニル、ビフェニル、p−フェノキシフェニル又はナフチルであり、
2は、P*、C6〜C20アリール、不活性的に置換されたアリール、更に好ましくは、フェニル、ビフェニル、p−フェノキシフェニル又はナフチルであり、
wは、それぞれの存在に於いて独立に、1〜3の整数、更に好ましくは1であり、
Z”は、二価の芳香族基、更に好ましくはフェニレン、ビフェニレン、フェニレンオキシフェニレンであり、そして
*は、結合ポラゲン、好ましくはビニル芳香族モノマー、アルキレンオキシド、アリーレンオキシド、アクリル酸アルキル若しくはメタクリル酸アルキルの線状若しくは分枝状のオリゴマー若しくはポリマーの一価誘導体又はそれらの架橋した誘導体である)
によって表される、3−置換シクロペンタジエノン化合物又は3,4−二置換シクロペンタジエノン化合物である。
【0037】
上記のモノマーの非常に好ましい例は、下記の構造式:
【0038】
【化3】

【0039】
(式中、R3は、それぞれの存在で、−C≡C−P*であり、そして
4は、それぞれの存在で独立に、H、フェニル又はP*である)
によって表される。
【0040】
AxByP*zモノマーの合成
本発明に従ったモノマーは、一般的な方法を用いて、ジアリール置換アセトン化合物と芳香族ポリケトンとの縮合によって製造することができる。代表的な方法は、Macromolecules、第28巻、第124〜130頁(1995年);J.Org.Chem.、第30巻、第3354頁(1965年);J.Org.Chem.、第28巻、第2725頁(1963年);Macromolecules、第34巻、第187頁(2001年);Macromolecules、第12巻、第369頁(1979年);J.Am.Chem.Soc.、第119巻、第7291頁(1997年)及び米国特許第4,400,540号明細書に開示されている。
【0041】
更に好ましくは、このモノマーは、下記の式の一つに従って、下記のシントン又は分子成分の縮合によって製造することができる。
【0042】
【化4】

【0043】
AxByP*zモノマーのb段階化
オリゴマー及び部分的に架橋されたポリマー(b段階化)の製造は、下記の例示(例示中、XLは、架橋ポリマー鎖を表す)によって、A22*2モノマーを使用する一つの態様に於いて表すことができる。種々の同様に架橋したポリマーは、この技術によって製造することができる。
【0044】
【化5】

【0045】
それらの信念に結び付けられることを望まないが、ポリフェニレンオリゴマー及びポリマーは、モノマーと任意の溶媒との混合物を加熱するとき、シクロペンタジエノンとアセチレン基とのディールス−アルダー反応により形成されると思われる。この生成物は、多量のシクロペンタジエノン及びアセチレン末端基を、なお含むであろう。この混合物又はそれで被覆した物品を更に加熱すると、残留するシクロペンタジエノン又はB基と残留するアセチレン又はA基とのディールス−アルダー反応により、追加の架橋が起こり得る。理想的には、シクロペンタジエノン及びアセチレン基は、ディールス−アルダー反応条件下で、好ましくは280〜350℃、更に好ましくは285〜320℃の温度で、同じ速度で消費される。
【0046】
この架橋反応は、好ましくは、ゲル形成を回避するために、A及びB官能基の顕著な量の反応の前に停止される。次いで、オリゴマーを、組成物の更なる進行又は硬化の前に、適当な表面に適用することができる。オリゴマー化した又はb段階にある間に、この組成物は、標準的適用技術によって基板に容易に適用され、基板の表面上のコンポーネント、対象物又はパターンを覆った(平坦化した)平らな表面被覆を形成する。好ましくは、b段階のとき、モノマーの少なくとも10%が未反応のままである。最も好ましくは、モノマーの少なくとも20%が未反応のままである。未反応モノマーの%は、可視スペクトル分析又はSEC分析によって決定することができる。
【0047】
b段階組成物の被覆組成物を製造するための適当な溶媒には、メシチレン、安息香酸メチル、安息香酸エチル、ジベンジルエーテル、ジグリム、トリグリム、ジエチレングリコールエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート、炭酸プロピレン、ジフェニルエーテル、ブチロラクトンが含まれる。好ましい溶媒は、メシチレン、γ−ブチロラクトン、ジフェニルエーテル及びこれらの混合物である。
【0048】
その代わりに、モノマーを、高温度で1種又はそれ以上の溶媒中で重合させ、そして得られるオリゴマーの溶液を冷却しそして1種又はそれ以上の追加の溶媒と配合して、加工を助けることができる。他のアプローチに於いて、モノマーを、高温度で1種又はそれ以上の溶媒中で重合させてオリゴマーを形成し、これを非溶媒中に沈殿させることによって単離することができる。次いで、これらの単離したオリゴマーを、加工のための適当な溶媒中に再溶解させることができる。
【0049】
本発明のモノマー又はそれらのb段階オリゴマーは、硬化性組成物中で、単独で又はディールス−アルダー若しくは同様の環化付加反応の手段によって重合させることができる、1種若しくはそれ以上の官能基を含有する他のモノマー(又はそれらのb段階オリゴマー)との混合物として適切に使用される。このような他のモノマーの例には、特許文献1及び特許文献2に以前開示されているもののような、2個若しくはそれ以上のシクロペンタジエノン官能基及び/若しくはアセチレン官能基又はこれらの混合物を有する化合物が含まれる。b段階硬化反応に於いて、ジエノフィル基は、環式ジエン官能基と反応して、Lの除去及び芳香族環形成を起こす。続く硬化又はガラス化には、同様の環式付加又はジエノフィル官能基のみを含む付加反応が含まれるであろう。
【0050】
A及び/又はB官能基を含有する追加の重合性モノマーが、本発明に従った硬化性組成物中に含まれてよい。例には、式:
【0051】
【化6】

【0052】
(式中、Z’は、それぞれの存在に於いて独立に、水素、置換されていない若しくは不活性に置換された芳香族基、置換されていない若しくは不活性に置換されたアルキル基又は−W−(C≡C−Q)qであり、
X’は置換されていない若しくは不活性に置換された芳香族基、−W−C≡C−W−又は
【0053】
【化7】

【0054】
であり、
Wは置換されていない又は不活性に置換された芳香族基であり、そして
Qは水素、置換されていない若しくは不活性に置換されたC6〜C20アリール基又は置換されていない若しくは不活性に置換されたC1〜C20アルキル基であり、但し、X’及び/又はZ’基の少なくとも2個はアセチレン基からなり
qは1〜3の整数であり、そして
nは1〜10の整数である)
の化合物が含まれる。
【0055】
本発明のモノマーと連係して用いることができる上記の多官能性モノマーの例には、式II〜XXVの化合物が含まれる。
【0056】
【化8】

【0057】
【化9】

【0058】
【化10】

【0059】
【化11】

【0060】
【化12】

【0061】
【化13】

【0062】
【化14】

【0063】
【化15】

【0064】
環構造がシクロペンタジエノンである上記のモノマーI−XXVは、例えばAxByC’zモノマーモノマーに関して前に開示されたもののような一般的な方法を使用して、置換された又は置換されていないベンジルと置換された又は置換されていないベンジルケトンとの縮合(又は類似反応)によって製造することができる。他の構造を有するモノマーは、下記のようにして製造することができる。ピロンは、下記の文献及びその中に引用された文献に示されたもののような一般的な方法を使用して製造することができる。Braham等、Macromolecules、(1978年)、第11巻、第343頁;Liu等、J.Org.Chem.、(1996年)、第61巻、第6693−99頁;van Kerckhoven等、Macromolecules、(1972年)、第5巻、第541頁;Schilling等、Macromolecules、(1969年)、第2巻、第85頁及びPuetter等、J.Prakt.Chem.、(1951年)、第149巻、第183頁。フランは、下記の文献及びその中に引用された文献に示されたもののような一般的な方法を使用して製造することができる。Feldman等、Tetrahedron Lett.、(1992年)、第47巻、第7101頁;McDonald等、J.Chem.Soc.Perkin Trans.、(1979年)、第1巻、第1893頁。ピラジンは、Turchi等、Tetrahedron、(1998年)、第1809頁及びその中に引用された文献に示されたもののような方法を使用して製造することができる。
【0065】
前に開示されたような本発明のモノマー及び他のモノマーの混合物を使用する本発明の好ましい態様に於いて、混合物中の対応するA−官能基とB−官能基との比を、反応混合物中のB−官能基のA−官能基に対する比が、1:10〜10:1、最も好ましくは2:1〜1:4の範囲内であるように維持することが望ましい。好ましくは、この組成物は、追加的に、溶媒からなっていてよくそして任意に、また、ポラゲンからなっていてよい。
【0066】
本発明に於ける組成物に別個に添加することができる又はモノマーに結合させることができる適当なポラゲンには、モノマーから形成されたマトリックス中に小さいドメインを形成することができ、そして続いて、例えば熱分解により除去することができる任意の化合物が含まれる。好ましいポラゲンは、単独重合体並びにグラフトコポリマー、エマルジョンポリマー及びブロックコポリマーを含む2種又はそれ以上のモノマーの共重合体を含む重合体である。適当な熱可塑性材料には、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリフェニレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリテトラヒドロフラン、ポリエチレン、ポリシクロヘキシルエチレン、ポリエチルオキサゾリン、ポリビニルピリジン、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、これらの材料を製造するために使用されるモノマーのコポリマー及びこれらの材料の混合物が含まれる。熱可塑性材料は、事実上、線状、枝分かれ状、超枝分かれ状、樹枝状又は星形であってよい。ポラゲンは、また、b段階の間に又はこれに続いて、架橋性マトリックス前駆体又はオリゴマーと反応して、ポリマー鎖のブロック又はペンダント置換を形成するように設計することができる。例えばビニル、アクリレート、メタクリレート、アリル、ビニルエーテル、マレイミド、スチリル、アセチレン、ニトリル、フラン、シクロペンタジエノン、パーフルオロエチレン、BCB、ピロン、プロピオレート又はオルト−ジアセチレン基のような反応性基を含有する熱可塑性ポリマーは、ブロモ−、ビニル−又はエチニル官能基のような適当な反応性基を含有する前駆体化合物と化学結合を形成することができる。
【0067】
適当なブロックコポリマーポラゲンには、ブロックの一方が架橋ポリマーマトリックス樹脂と相溶性であり、そして他のブロックがそれと非相溶性であるものが含まれる。有用なポリマーブロックには、ポリスチレン、例えばポリスチレン及びポリ−α−メチルスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレン、ポリ乳酸、ポリシロキサン、ポリカプロラクトン、ポリウレタン、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリ塩化ビニル及びポリアセタール並びにアミン末端閉塞アルキレンオキシド(ハンツマン社(Huntsman Corp.)からジェファミン(Jeffamine)(登録商標)ポリエーテルアミンとして市販されている)が含まれてよい。
【0068】
非常に好ましいポラゲンは、溶液重合又は乳化重合によって製造された架橋ポリマーである。このような重合技術は、当該技術分野、例えば欧州特許出願公開第1,245,586号明細書及びその他で公知である。非常に小さい架橋炭化水素系ポリマー粒子は、1種又はそれ以上のアニオン性、カチオン性又は非イオン性界面活性剤の使用による乳化重合で製造された。このような製造の例は、とりわけ、J.Dispersion Sci.and Tech.、第22巻、第2〜3号、第231〜244頁(2001年);「合成樹脂エマルジョンの応用(The Applications of Synthetic Resin Emulsions)」、H.Warson著、Ernest Benn Ltd.、1972年、第88頁;Colloid Polym.Sci.、第269巻、第1171〜1183頁(1991年);Polymer.Bull.、第43巻、第417〜424頁(1999年);2003年2月12日出願のPCT第03/04668号明細書及び2003年2月12日出願の米国特許出願第10/366,494号明細書に記載されている。
【0069】
好ましくは、モノマーは、エチニル末端停止ポラゲン前駆体と、芳香族ハロゲン含有ジケトン又はジアリール置換アセトン誘導体とのパラジウム触媒反応により、ポラゲンに化学的に結合又はグラフト化される。これは、b段階の前に、モノマー中に官能化したポラゲンを含有させることによって、もっとも良く達成できる。この方法に於いて、結合ポラゲンは、得られる硬化ポリマーの中に均一に含有される。次いで、この混合物を、(好ましくは、例えばスピンコーティング又は他の公知の方法により溶媒被覆された)基板の上に被覆する。マトリックスを硬化させ、そして結合ポラゲンを、好ましくは、ポラゲンの熱分解温度よりも高い温度に加熱することによって除去する。この結果、樹脂中の均一で極めて小さいポラゲン及びガラス化樹脂マトリックス中の均一で極めて小さい細孔(ナノ細孔)になる。この方法で製造した多孔質フィルムは、フィルムが、導電性金属ラインをお互いから分離し、そして電気的に絶縁している、集積回路物品を製造する際に有用である。
【0070】
AxByP*zモノマー及びオリゴマーからの多孔質マトリックス
ポラゲンは、望ましくは、除去した際に、1〜200nm、更に好ましくは2〜100nm、最も好ましくは5〜50nmの平均細孔直径を有する、マトリックス内のボイド又は細孔の形成になる材料である。望ましくは、この細孔は相互連結されていない。即ち、得られるマトリックスは、独立気泡構造を有する。結合ポラゲンの性質は、発生させるべき細孔のサイズ及び形状、ポラゲン分解の方法、多孔質ナノ構造体中に許容される任意のポラゲン残渣のレベル並びに生成される任意の分解生成物の反応性又は毒性を含む、多数の要因に基づいて選択される。また、このマトリックスは、得られる多孔質構造体を支持するために十分な架橋密度を有することも重要である。
【0071】
特に、細孔形成が起こる温度は、前の溶媒除去及びb段階オリゴマーの少なくとも部分的ガラス化を可能にするために十分に高いが、ガラス化マトリックスのガラス温度、Tgよりも下であるように注意深く選択しなくてはならない。細孔形成が、マトリックスのTg以上の温度で起こると、細孔構造の部分的又は完全な崩壊になるであろう。
【0072】
本発明に於いて使用するのに適当な結合ポラゲンの例には、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリエステル、ポリスチレン、アルキル置換ポリスチレン及びブロックコポリマーを含む全てのコポリマー組合せ並びにこれらの官能化誘導体を含む、異なった巨大分子アーキテクチャー(線状、分枝状又は樹枝状)及び異なった化学的アイデンティティーを有する単位が含まれる。好ましくは、結合ポラゲンを製造するのに使用される物質は、その手段によって、ポラゲンが、製造の間にモノマーに化学的に結合される、1個又はそれ以上の官能基を有する。適当な官能化されたポリマー物質には、エチニル末端閉塞ポリスチレン、エチニル末端閉塞架橋ポリスチレンコポリマー、エチニル末端閉塞ポリスチレンボトルブラシ(bottlebrush)及びエチニル末端閉塞ポリスチレン星形ポリマーが含まれる。最も好ましくは、結合ポラゲン形成性化合物は、付加重合性エチニル官能基を含有する、架橋したビニル芳香族ミクロエマルジョン粒子(MEP)である。
【0073】
MEPは、ほぼ球形状の明確にできる表面を有する極めて小さい粒子サイズを有する分子内架橋した分子種(molecular species)である。非常に望ましくは、MEPは、5〜100nm、最も好ましくは5〜20nmの平均粒子サイズを有する。望ましくは、官能化されたMEPのグラフト化レベルは、セルフアライメント(self-alignment)になり、それによってMEPの分離したマイクロフェーズ分離になるために十分である。熱処理した際に、MEP相は分解し、その間にモノマーのA官能基及びB官能基の架橋が進行し、それによって、単一工程で、均一に分布された極めて小さい(<10ナノメーターの平均サイズ)ボイドを有する架橋したオリゴマー又はガラス化した固体を形成する。
【0074】
上記の方法に於いて、その形成の間にマトリックスの中に結合ポラゲンを含有させる結果は、細孔と、初期結合ポラゲン単位並びにポラゲンの限定された又は無い凝集及び不均一相分離とのほぼ均一な一致である。更に、結合ポラゲンの分解温度を適切に選択した場合に、細孔形成の目的のための別個の熱処理を回避することができる。得られる、フィルム又は皮膜を含む物品は、細孔分布の均一性に起因する、非常に均一な電気特性を有する、極めて低い誘電定数ナノ多孔質材料である。
【0075】
非常に望ましくは、本発明のモノマーから形成されたマトリックス材料は、少なくとも300℃、好ましくは少なくとも350℃、最も好ましくは少なくとも400℃の温度で、比較的熱安定性である。更に、このマトリックスポリマーは、また、完全に架橋又は硬化させた後に、300℃よりも高い、更に好ましくは350℃よりも高いTgを有する。更に望ましくは、曲げ弾性率が最も急速に増加する、加熱の際の温度として定義される、本発明の架橋又はガラス化温度は、望ましくはポラゲンの分解温度よりも低く、好ましくは400℃又はそれ以下、最も好ましくは300℃又はそれ以下である。この特性によって、実質的な細孔形成が起こる前に、架橋を起こすことが可能になり、それによって、得られる多孔質構造の崩壊を防止することができる。最後に、本発明の望ましい態様に於いて、ポラゲンの存在有り又は無しで、部分的に架橋又は硬化したポリマーの曲げ弾性率は、望ましくは、400℃又はそれ以下、好ましくは350℃又はそれ以下、最も好ましくは300℃又はそれ以下の温度で最大値に到達し、そして、完全に硬化したマトリックスを300℃よりも高い温度まで加熱した際に、熱分解による細孔形成の間に遭遇し得るような曲げ弾性率低下は、殆ど又は全く起こらない。
【0076】
一つの適当な操作方法に於いて、モノマー、任意のポラゲン形成性材料及び任意の溶媒を一緒にし、そして高温度、好ましくは少なくとも160℃、更に好ましくは少なくとも200℃で、少なくとも数時間、更に好ましくは少なくとも24時間加熱して、結合ポラゲンを含有する架橋性b段階オリゴマーの溶液を製造する。別個に添加するポラゲンの量に対するモノマーの量は、所望の多孔度を有する硬化マトリックスを与えるように調節することができる。その代わりに、結合ポラゲンを有する又は有しないコモノマーを、重合性組成物の中に含有させて、得られるマトリックス中の細孔の量を制御することができる。好ましくは、全モノマー重量基準の結合ポラゲンの量は、5〜80%、更に好ましくは20〜70%、最も好ましくは30〜60%である。
【0077】
本発明に於いて使用するための結合ポラゲンモノマーを含有する溶液は、所望の被覆及び適用特性を有する光学的透明溶液になるために十分に希釈される。好ましくは、使用される溶媒の量は、全溶液重量基準で50〜95%の範囲内である。この溶液は、全ての適当な方法、例えばスピンコーティングによって基板に適用し、次いで加熱して、残留する溶媒の大部分を除去し、そしてその中に分散された結合ポラゲン単位を含有する、モノマー又はb段階オリゴマーを残すことができる。溶媒除去工程の間及び/又は続く熱処理の間に、ポラゲン相は、望ましくは、完全に硬化又は架橋したマトリックス内に分離した均一に分散した吸蔵物を形成する。継続する又は次の加熱の際に、この吸蔵物は分解生成物に分解し、分解生成物は硬化したマトリックスを通って拡散し、それによって多孔質マトリックスを形成する。
【0078】
上記の多孔質マトリックス中の細孔の濃度は、硬化したポリマーの誘電定数又は反射指数を低下させるために十分に高いが、得られる多孔質マトリックスを、マイクロエレクトロニクスデバイスの製作に於いて必要な加工工程に耐えるようにするために十分に低い。好ましくは、得られる架橋した多孔質マトリックス中の細孔の量は、2.5よりも小さい、更に好ましくは2.0よりも小さい誘電定数を有する材料になるために十分なものである。
【0079】
この細孔の平均直径は、好ましくは100nmよりも小さく、更に好ましくは20nmよりも小さく、最も好ましくは10nmよりも小さい。この細孔サイズは、本発明のモノマーを製造する際に使用するMEPのサイズを調節することによって、容易に制御することができる。
【0080】
本発明の組成物は、公知の方法、例えば特許文献1に従って、集積回路の誘電フィルム及び中間層誘電体を製造するために使用することができる。多孔質フィルムを製造するために、結合ポラゲンは、好ましくは熱分解によって除去される。
【実施例】
【0081】
本発明を、本発明の限定として見なすべきではない下記の実施例によって更に例示する。反対に記載するか又は当該技術分野で一般的でない限り、全ての部及び%は重量基準である。
【0082】
実施例1 A2BP*2モノマーの合成
【0083】
【化16】

【0084】
A)4,4’−デシル−エチニルベンジルの合成
100mLの丸底フラスコに、4,4’−ジブロモベンジル(7.36g、0.02mol)、DMF(50mL)、ドデシン(dodecyne)(8.3g、0.05mol)及びトリエチルアミン(10.1g、0.1mol)を添加する。得られた混合物を、窒素で15分間パージし、次いでトリフェニルホスフィン(0.47g)及び酢酸パラジウム(0.0067g)を添加する。この反応混合物を70℃に7時間加熱する。室温にまで冷却した後、水(100mL)を添加する。この粗製生成物を濾過し、固体を塩化メチレンの中に再溶解させる。溶媒を蒸発させて、黄色結晶を得、これを塩化メチレン/メタノールから更に再結晶させる。収量9.3g、86%。
【0085】
B)モノマー合成
4,4’−デシルエチニルベンジル(2.69g、5.0mmol)及び1.26g(6.0mmol)の3,3’−ジフェニル−2−プロパノンを、100mLの無水2−プロパノールを含有する反応器に添加する。攪拌及び加熱を始め、そして懸濁液が還流温度に達したとき、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(水中50%、2個の部分で0.25mL)を添加し、直ちに深い赤紫色を誘発する。還流で1.5時間維持した後、HPLC分析によって、4,4’−デシルエチニルベンジル反応剤の完全な転化が達成されることが示される。この時点で、油浴を反応器から取り去り、そして反応混合物を40℃にまで冷却させる。生成物を、中度フリットガラス漏斗に通す濾過によって回収する。漏斗上の結晶性生成物を、2−プロパノールの2個の20mL部分で洗浄し、次いで真空オーブン内で乾燥して、2.0gの所望のA2BP*2モノマーを得る。DSC分析により、196℃のディールス−アルダー反応のための開始温度で、71.5℃の融点が示される。ディールス−アルダー反応は、248℃でのDSC曲線に於ける最高値及び154J/gの全熱出力で315℃の終点に到達する。
【0086】
実施例2 多孔質マトリックス配合物の製造
50mLの丸底フラスコに、2.0gの実施例1からの結合ポラゲン含有モノマー及び5.0gのγ−ブチロラクトン(GBL)を添加した。得られる混合物を窒素下で15分間パージし、次いで窒素下で油浴で200℃に6時間加熱する。次いで、この混合物を145℃まで冷却し、そして3.3gのシクロヘキサノンで希釈する。この混合物を室温にまで冷却して、b段階ポリマーの溶液を得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)1個又はそれ以上のジエノフィル基(A−官能基)、ii)1個又はそれ以上の、2個の共役炭素−炭素二重結合及び離脱基Lからなる環構造(B−官能基)並びにiii)1個又はそれ以上の化学的に結合したポラゲンを含んでなり、化合物であって、1種のモノマーのA−官能基が、環化付加反応条件下で、第二のモノマーのB−官能基と反応し、それによって架橋したポリフェニレンポリマーを形成することができることを特徴とする化合物。
【請求項2】
式:
【化1】

(式中、Lは、−O−、−S−、−N=N−、−(CO)−、−(SO2)−又は−O(CO)−であり、
Zは、それぞれの存在に於いて独立に、水素、ハロゲン、置換されていない若しくは不活性的に置換されたヒドロカルビル基、特にアリール基、更に特にフェニル基、Z”であるか、又は2個の隣接するZ基が、それらが結合している炭素と一緒に、縮合芳香族環を形成し、
Z”は、2個若しくはそれ以上の上記の構造と結合する又はA−官能基、結合ポラゲン及び/若しくは上記のものの組合せと結合する、置換されていない又は不活性的に置換されたヒドロカルビル基の二価誘導体であり、
そして少なくとも1個の存在に於いて、Zは−Z”−C≡CP*であるか、又は
少なくとも1個の存在に於いて、Zは−Z”−C≡CRであり、そして少なくとも1個の他の存在に於いて、Zは結合ポラゲンであり、
*は、それぞれの存在に於いて独立に、結合ポラゲンであり、そして
Rは、それぞれの存在に於いて独立に、水素、C1〜C4アルキル、C6〜C60アリール及びC7〜C60の不活性的に置換されたアリール基からなる群から選択される)
に対応する請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式:
【化2】

(式中、R1は、P*、C6〜C20アリール、不活性的に置換されたアリール又はR2OC(O)−であり、
2は、P*、C6〜C20アリール、不活性的に置換されたアリールであり、
wは、それぞれの存在に於いて独立に、1〜3の整数であり、
Z”は、二価の芳香族基であり、そして
*は、ビニル芳香族モノマー、アルキレンオキサイド、アリーレンオキサイド、アクリル酸アルキル若しくはメタクリル酸アルキルの線状若しくは分枝状のオリゴマー若しくはポリマーの一価誘導体又はそれらの架橋した誘導体を含む結合ポラゲンである)
に対応する請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
式:
【化3】

(式中、R3は、それぞれの存在で、−C≡C−P*であり、そして
4は、それぞれの存在で独立に、H、フェニル又はP*である)
に対応する請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の化合物を含む組成物を硬化させることによって形成される架橋ポリマー。
【請求項6】
結合ポラゲンP*を含む請求項5に記載の架橋ポリマー。
【請求項7】
請求項6に記載の架橋ポリマーから結合ポラゲンを除去することによって形成される多孔質マトリックス。

【公表番号】特表2007−505976(P2007−505976A)
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−527004(P2006−527004)
【出願日】平成16年9月15日(2004.9.15)
【国際出願番号】PCT/US2004/030228
【国際公開番号】WO2005/030830
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】