説明

結合剤、腐食防止剤、及び金属の被加工物

本発明は、少なくとも一つのチタン及び又は一つのジルコニウム化合物(結合剤100重量%に対して少なくとも0.5重量%)、少なくとも一つの有機官能性シラン、特にモノシラン、及び溶媒を含む結合剤に関する。本発明は、結合剤がその溶媒に不溶である少なくとも一つのフッ素化ポリマーを含むことを特徴としている。また、本発明は、この結合剤を用いて精製される腐食防止剤及び溶接可能な腐食防止剤、さらには、この腐食防止剤でコーティングされた被加工物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好ましくは溶接可能な金属表面用腐食防止剤、及びそのための結合剤及び被覆された被加工物に関する。
【背景技術】
【0002】
溶接可能である腐食防止剤に対する切迫した要望がある。それらは、被加工物の金属表面に容易に被覆されるべきであり、それらは、信頼できる腐食防止を提供すべきであり、又、それらは、被加工物が一緒に溶接される際、溶接の継ぎ目の弱化を生じるべきではない。
【0003】
亜鉛粒子及び有機又は無機の結合剤を含有する溶接可能な腐食防止剤は周知である。これらの腐食防止剤は、水又は有機溶媒のいずれかに基づく。安全な加工のために、水性の腐食防止剤が明らかに好ましい。
【0004】
溶接可能な腐食防止剤の典型的な例は、特許出願、DE19748764(特許文献1)、DE19951133(特許文献2)、及びDE10022075(ヘンケル)(特許文献3)に記載されている。水溶液における有機結合剤は常に粉末状の金属及びそれに添加されたいわゆる腐食防止顔料を有する。必要に応じて、水の代わりに溶媒の混合物が使用される。有機結合剤のうちで、ブロックされた(blocked)PU樹脂と同様にエポキシ樹脂がある。必要に応じて、結合剤用の硬化剤が腐食防止剤に添加される。これらのやり方と共に、溶接がさらに難しくなるように被覆された被加工物に対して絶縁効果を有することは腐食防止剤にとって不利であることが判っている。溶接については、有機結合剤との導電性を確保して迅速で、完全な且つ無傷の溶接接続を達成することは厄介であることが分かっている。
【0005】
例えば、チタン酸塩とシランを主成分とした主として無機であるそのほかの結合剤は、やや改善された導電性を有する。しかしながら、結合剤は依然として腐食防止粒子間で絶縁効果を有する。JP2004−04358A(特許文献4)は、反射防止膜を形成するためのコーティング剤を記載している。それは、溶媒に溶解されたフッ素含有の共重合体(コポリマー)を含有する。そこに記載されたコーティング剤は、腐食防止に好適ではなく、特に溶接可能な腐食防止剤には好適ではない。
【0006】
WO02/100151(アドシル)(特許文献5)は、とりわけ、シランの縮合が少量の金属アルコールによって触媒されるコーティングを記載している。コーティング剤は、接触忌避表面を創製すべきであるならば、硬質潤滑剤としてPTFEを含有することができる。
【特許文献1】DE 197 48 764
【特許文献2】DE 199 51 133
【特許文献3】DE 100 22 075
【特許文献4】JP 2004−04358A
【特許文献5】WO 02/100151
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、腐食防止剤のために好ましい結合剤、特に溶接可能な腐食防止剤のための結合剤及び腐食防止剤、特に加工は単純なままで信頼でき且つ安定した溶接接続を保証する溶接可能な腐食防止剤を提供することである。
【0008】
この目的は、請求項1に記載の結合剤並びに請求項23及び24に記載の腐食防止剤によって、及び請求項30に記載の被加工物によって解決されている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る結合剤は、以下の成分:少なくとも1つのチタン及び/又は1つのジルコニウム化合物、少なくとも1つの有機官能性シラン及び溶媒及び結合剤の溶媒に不溶である少なくとも1つのフッ素化ポリマー(重合体)を有し、その際、チタン化合物及び/又はジルコニウム化合物は、結合剤の100重量%に関して、少なくとも0.5重量%の量で使用される。固形物として添加されるフッ素化ポリマーは、特に、この結合剤又はそれから製造された腐食防止剤、特に溶接可能な腐食防止剤で被覆される金属被加工物の良好な溶接性のために重要である。本発明に係る結合剤を用いて溶接可能な腐食防止剤を製造すれば、両側で被覆された2つの被加工物でさえ容易に溶接することができる。
【0010】
チタン酸塩及びジルコン酸塩は、接着促進の周知の優れた特性は別として、溶接温度に達した際、結合剤又は腐食防止剤の導電性を明らかに高めるので、チタン酸塩及びジルコン酸塩の使用は、本発明に従って有用であることが判っている。このことは、チタン及び/又はジルコニウム化合物の一部は、酸化チタンのみを言及する必要があるが、アナスタチック状態(anastatic state)で半導体特性を呈するという事実による。導電性を高めるには、好ましくはチタン酸塩及び/又はジルコン酸塩が、特に好ましくは有機チタン酸塩又は有機ジルコン酸塩が使用される。キレートは、特に結合剤での使用に好適である。様々な有機チタン酸塩及び/又は有機ジルコン酸塩の混合物も好適に使用することができる。
【0011】
チタン及び/又はジルコニウム化合物は、結合剤に関して、0.5重量%〜95重量%の量で使用される。結合剤の好ましい実施態様としては、少なくとも3重量%、特に少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも10重量%、特に好ましくは少なくとも12重量%、有利には少なくとも15重量%の金属化合物が使用される。それぞれ結合剤に関して80重量%までの、特に好ましくは70重量%までの、好ましくは50重量%までの、有利には40重量%までの量を使用することが有利であることが判っている。
【0012】
有機官能性のシラン又はモノシランは、結合剤の成分として知られている。さらなる開発によれば、好ましくは、メチルフェニル−、フェニル−及びメチルシリコーン樹脂が、本発明に係る結合剤で使用される。ビニル又はアリル基、アクリルエステル、エチレンイミノ基、フッ素化フェニル残基、フッ素誘導体、ヒドロキシ有機基、カルボキシ有機基、アミノアルキル基を持つシリコーン樹脂、シロキサン−シラザン混合重合物、フェニレン基又は有機樹脂との共縮合産物を持つシラン化合物を考慮することができる。上述のシラン化合物の混合物も可能である。
【0013】
少なくとも1つの有機官能性シラン又は少なくとも1つの有機官能性モノシランは好ましくは、分解温度が溶接温度より低くなるように選択される。従って、有機官能性シランは、溶接温度に達する前又は少なくとも溶接温度に達した時点で、大部分が分解される。シランの実質的な又は完全な分解は、均一な溶接継ぎ目の形成に寄与する。有機官能性シランは、結合剤に関して、好ましくは0.01重量%〜20重量%の量で使用される。2重量%を超える、好ましくは5重量%を超える使用が有利である。本発明の好適な実施態様によれば、それぞれ結合剤に関して15重量%までの、特に有利には12重量%までの、10重量%までの有機官能性シランを含有する処方が好ましく使用され、特に好ましくは、7重量%までである。使用される有機官能性シラン又は有機官能性シランの混合物の各量は、それぞれ意図される適用及び結合剤の処理における必要条件に依存する。
【0014】
有利な実施態様によれば、結合剤は有機溶媒又は有機溶媒の混合物を有する。アルコール類、脂肪族及び/又は芳香族の炭化水素類及びエステル類が特に好適である。
【0015】
驚くべきことに、結合剤の溶媒に不溶の固形フッ素化ポリマーは、普通の結合剤やポリマーのそれとは異なった結合挙動を有することが判った。そのような不溶性のフッ素化ポリマーは、あらゆる表面で、特に金属表面で均一に広がらない。従って、それらは、島又は点の形態で固まる傾向を有する。しかしながら、このほとんど望ましくない挙動によって、この場合、フッ素化ポリマーを持つ結合剤が、特に腐食防止剤として使用される際に、粉末状のポリマーが、液体結合剤とは異なって被覆される金属表面又は導電性粒子の上で広がらないので、互いの間で、導電性粒子、特に腐食防止粒子の改善された接触を提供することが保証される。従って、導電性粒子と金属表面の間の接触は、結合剤によるこれまでの普通の浸透がなくても優れたままであり、非常に優れた腐食防止コーティングが形成される。それ故に、溶接可能な腐食防止剤として使用される場合、腐食防止粒子の直接的な結合によって優れた導電性が確保される。
【0016】
フッ素化ポリマーは、好ましくは、結合剤中にて粉末形態で使用される。従って、それは結合剤の溶媒に不溶性である。粉末状のポリマーはさらに高い温度で融解し、室温より高く溶接温度より低い温度で硬化する。このように、それは、点状成形された接続を形成することで、いわば、腐食防止に必須の金属粒子の接着が最適に維持される。フッ素化ポリマーは、繰り返し加熱された後でさえ、その結合能を失わないことが特に有利であることが判っている。加熱されるたびにフッ素化ポリマーの一部が分解されることが回避できなくてもよい一方で、残りの部分は再加熱されるたびにコーティング内での結合にさらに寄与する。粉末状のフッ素化ポリマーの好ましい粒経は、結合剤から作製されるコーティングの膜厚に依存する。それは、好ましくは20μmまで、特に好ましくは10μmまで、有利には5μmまでである。
【0017】
本発明に係る効果を達成するには、結合剤中に少なくとも1つのフッ素化ポリマーが必要である。フッ素化ポリマーの混合物が使用されてもよい。以下のフッ素化ポリマー:単独で又は混合物で、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ポリビニリデン(PVDF)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、パーフルオロアルコキシ共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレンの過フッ素化プロピレン及びパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体(EPE)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロメチルビニルエーテルの共重合体(MFA)、テトラフルオロエチレンのエチレンとの共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)及びエチレンとクロロトリフルオロエチレンの共重合体(ECTFE)が特に好ましい。
【0018】
本発明に係る結合剤の好ましい実施態様は、フッ素化ポリマーが、100℃〜500℃の間、好ましくは150℃〜350℃の間の融点で使用されることを提供する。そのようなフッ素化ポリマーの選択によって、溶接温度に達した際、フッ素化ポリマーは、大部分又はまさに完全に分解されていることが確保される。
【0019】
さらに好ましい実施態様によれば、溶接温度に達した際、有機官能性シランも実質的に分解されるので、最適な腐食防止が確保されるように溶接可能な腐食防止剤のための結合剤を使用する場合、腐食防止に必要な金属粒子が結合剤に大きく妨害されないで互いに接触する。
【0020】
本発明に係る結合剤の使用に依存して、フッ素化ポリマーの使用は、それぞれ結合剤に関して、0.1重量%〜20重量%まで幅広く変化し、その際、15重量%が好ましく、特に好ましくは10重量%までであり、有利には5重量%を超え、特に有利には少なくとも2.5重量%である。
【0021】
少なくとも7.5HE、好ましくは5HE、特に好ましくは6HE〜最大3HEの平均粒径を持つフッ素化有機ポリマーが使用される。粒度の指示及び測定は、ASTM D1210に従う。
【0022】
請求項1で定義されるような本発明に係る、又は上述の実施態様のいずれか1つに係る結合剤は、補助結合剤が加えられる場合、特定の適用のために選択的にさらに進展させることができる。補助結合剤は、たとえば、必要に応じて結合剤に弾性を持たせることができる。しかしながら、それらはまた、結合剤又は被加工物上の結合剤を用いて作製された腐食防止剤の接着性を改善することもできる。
【0023】
好適な補助結合剤は、特に液体の有機結合剤である。補助結合剤は、好ましくは0.01重量%〜20重量%までの量で使用される。アクリレート樹脂、アルデヒド樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂エステル類、セトン樹脂、マレエート樹脂、メラミン樹脂及びフェノール樹脂を、たとえば、単独で又は混合物で使用することができる。
【0024】
有利なさらなる実施態様によれば、結合剤は、添加剤、特に、粘度,レオロジー,濡れ(湿潤),及び分散の特性、沈積挙動を調整するための、又、保存安定性,滑り特性,及び加工の特性の調整のための添加剤を有する。それ自体が周知の添加剤を加えることによって、結合剤は適用目的又は加工特性によって与えられる必要条件に調整される。結合剤の粘度及びレオロジー(流動学的な)挙動は、腐食防止粒子又は顔料と混合する場合に重要であるだけでなく、結合剤又は結合剤の使用によって製造されるコーティングを被加工物の表面に塗布する場合も重要である。濡れ特性及び分散特性並びに沈積挙動は、それらが、粒子又は金属粒子、塩又は顔料の形態でのフッ素化ポリマーであろうとなかろうと、普通、粒子の導入を簡略化し、粒子の懸濁を均一にするように調整される。滑り特性を調整するための添加剤は、結合剤によって得られる又は結合剤によって製造されるコーティング剤で使用されるコーティングの特性を調整することを目的とする。保存の特性を調整する添加剤は、結合剤又はそれで製造されたコーティング剤の早い反応を防ぐことを目的とする。
【0025】
添加剤の使用は、好ましくは0.01重量%〜20重量%の間である。使用されるべき適切な量は、単純な最適化試験によって決定される。
【0026】
本発明に係る結合剤は、有利には150℃〜350℃の間の、好ましくは150℃〜200℃の間の焼成温度を有する。焼成温度の指示は、被覆された被加工物を焼成するのに必要とされる各目的温度を言う。特に、強度の高い鋼材の被加工物が被覆されるべき場合、広いスペクトルの調整可能な焼成温度が有利である。そのような材料は、材料強度に負の影響を及ぼさないように高い温度に加熱されるべきではない。本発明によれば、結合剤及びそれで作製された腐食防止剤をこれらの必要条件に適合させるのは容易に可能である。
【0027】
焼成持続時間は、好ましくは1秒間〜90分間の間である。それは本質的に到達すべき焼成温度及び焼成温度が生成される方法に依存する。誘導法は普通非常に短い焼成時間に連動し、対流熱移動を用いる方法は普通長い焼成温度を必要とする。30秒間〜30分間の間の焼成持続時間が好ましく、特に好ましいのは1分間〜20分間の間である。本発明に係る結合剤は、焼成について特別の方法又は設備の使用に頼らなくてもよい。
【0028】
上述の結合剤は腐食防止剤での使用に好適である。この目的で、結合剤は、それに、腐食防止粒子、特に金属粒子、好ましくは亜鉛若しくはアルミニウムの粒子、又は金属塩、又は様々な金属粒子の混合物、又は金属塩又は金属粒子と金属塩の混合物を加える。
【0029】
結合剤が腐食防止剤で使用される場合、必要とされる製品特性の機能として好ましく選択されるチタン又はジルコニウム化合物及びフッ素化ポリマー及び有機官能性シランの有利な効果を上記で詳細に説明してきた。腐食防止剤の本発明に係る成分は、主として結合剤と同様に上述の腐食防止粒子である。
【0030】
本発明に係る腐食防止剤は、それぞれ腐食防止剤に関して好ましくは少なくとも0.1重量%〜95重量%までの、好ましくは85重量%までの、特に好ましくは70重量%までの、有利には60重量%までの、特に有利には35重量%までの腐食防止粒子を含む。
【0031】
本発明に係る腐食防止剤は、有利な実施態様によれば、仕上げコーティングの乾燥膜厚が1μm〜50μm、好ましくは20μmまで、特に好ましくは15μmまで、有利には5μmまでになるように調整される。乾燥膜厚は、主として好適な大きさの金属及び/又は塩の粒子を選択することによって決定することができる。腐食防止剤が適用される各集合体によっても乾燥膜厚を決定することができる。
【0032】
それが最新技術以上の優れた電導性を有することが、本発明に係る腐食防止剤の特定の利点として理解されなければならない。
【0033】
溶接可能な腐食防止剤が本発明に従って使用されるのであれば、それは、特に、両側が共に被覆された2つの被加工物を互いに溶接することができることを特徴とする。両側が共に被覆された2つの被加工物が一緒に溶接される場合、合計4層の溶接可能な腐食防止剤が強力な溶接接続を達成するために耐えなければならない。この問題を確実に解決する技術的に信頼できるコーティングは、今までに知られていない。本発明に係る溶接可能な腐食防止剤を用いてのみそれは可能となった。このことはまた、本発明に係る溶接可能な腐食防止剤によって被覆される被加工物が一緒に溶接される際に、生じる溶接電極間の、従来技術とは異なった、ほとんど低下しない導電性による。
【0034】
本発明に係る溶接可能な腐食防止剤の特定の利点は、約80msの処理時間での点状溶接でも信頼できる溶接が創出され、蒸発した金属も結合剤の残留物、特にモノシランも溶接に弱点を創らない、という点で理解されなければならない。
【0035】
本発明に係る結合剤及びそれから作製されるコーティング剤、特に腐食防止剤及び/又は溶接可能な腐食防止剤は、容易に加工処理され得る。例えば、ドクター(手直し)法、噴霧法、塗装法、浸漬法、圧延法などのような既知の塗布方法のいずれかを用いてそれらを被加工物の表面に塗布することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明の詳細は、例示となる実施態様を参照して、以下でさらに詳細に説明される。
【0037】
結合剤I
結合剤1は、本発明に係る結合剤の効果のために、必須の請求項1で言及された成分で構成される:
トリメトキシビニルシラン:11重量%、
チタン−エチルヘキサノレート(チタン酸テトラ−2−エチルヘキシル):27重量%、
ポリチタン酸n−ブチル(チタンテトラブタノレート、ポリマー):41重量%、
ポリフッ化ビニリデン:4重量%、及び
アルコール:17重量%
合計:結合剤に関して100重量%−それぞれ結合剤に対して、結合剤I及びIIに関する全ての指示−
結合剤Iの製造を以下で説明する。
【0038】
添加剤入りの結合剤II(腐食防止剤との混合を改善するために調製される)
トリメトキシビニルシラン:9.5重量%、
チタン−エチルヘキサノレート(チタン酸テトラ−2−エチルヘキシル):24重量%、
ポリチタン酸n−ブチル(チタンテトラブタノレート、ポリマー):35.5重量%、
アルコール:14重量%、
ポリフッ化ビニリデン:3.5重量%、及び
沈積防止剤:全体で11重量%。種々の沈積防止剤を用いる。ここで、2.5重量%の非晶性珪酸、3重量%の塗装添加剤Y25SN(アシュランド)及び5.5重量%のエトセル45溶液、エワルド・ドルケン社のアルコール中11%、及び湿潤分散添加剤:2.5重量%ディスパービック160溶液、芳香族炭化水素(エワルド・ドルケン社)中20%。
合計:結合剤に関して100重量%。
【0039】
結合剤I及びIIの製造
一体化された無限に可変の撹拌装置を伴った冷却可能で且つ加熱可能な処理容器で、これら結合剤の処方I及びIIをそれぞれ調製する。上述の順序で撹拌しながら、結合剤I及び結合剤IIの上述の成分を処理容器で連続して混合する。温度は、−10℃〜+60℃の間である。撹拌装置を1000rpmに設定し、各成分を加えた後、結合剤を5分間混合する。
結合剤は、200℃の焼成温度を有する。
【0040】
本発明に係る腐食防止剤の組成を例示となる方法にて以下に記載する。溶接可能な腐食防止剤の処方も提供する。
【0041】
腐食防止剤I
43重量%の結合剤IIは、それに、約4μmの亜鉛粒子の平均直径を持つ55重量%の亜鉛ペースト(亜鉛ペースト:10重量%の有機溶媒で安定化した90重量%の亜鉛粉末)、及び2重量%のアルミニウムペーストを加えた。亜鉛及びアルミニウムの粒子は、陰極の腐食防止用である。腐食防止剤Iのこの処方は100重量%である。
【0042】
腐食防止剤II
ここで記載される腐食防止剤IIは、溶接可能な腐食防止剤である。45重量%の結合剤IIは、それに、約4μmの亜鉛粒子の平均直径を持つ25重量%の亜鉛ペースト(亜鉛ペースト:10重量%の有機溶媒で安定化した90重量%の亜鉛粉末)及び25重量%のリン化鉄を加えた。亜鉛粒子及びリン化鉄は、腐食防止粒子として使用された。次いで、5重量%の有機溶媒を加えて粘度を調整する。溶媒が必要でなければ、さらなる結合剤、亜鉛ペースト及びリン化鉄を2:1:1の比で腐食防止剤IIに加える。溶接可能な腐食防止剤の処方された組成は100重量%である。
【0043】
溶接可能な腐食防止剤を製造するために結合剤が提供される。上述の処理容器にて1850rpmで15分間、腐食防止粒子での混合を行う。溶接可能な腐食防止剤の製造は、室温から40℃を超えない温度範囲で行う。
【0044】
溶接可能な腐食防止剤を自動車の車体におけるB−ピラーの構成部品に塗布する。目的温度として測定された焼成温度は200℃であり、連続対流炉における焼成時間は30分である。腐食防止コーティングの乾燥膜厚は10±3μmである。このコーティングは、DIN 50 021に従った塩噴霧試験で赤さびの形成なしで少なくとも48時間耐える。
【0045】
2mmの材料厚さを有し、双方に共上述の方法で腐食防止剤IIによって被覆されたB−ピラーの2つの構成部品を電極によって点状溶接する。こうして点状溶接された構成部品を自動車の構造に使用することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
100重量%の結合剤に関して、少なくとも0.5重量%の量での少なくとも1つのチタン及び/又はジルコニウム化合物と、
少なくとも1つの有機官能性シラン、特にモノシランと、
溶媒と、を含み、
前記溶媒に不溶である少なくとも1つのフッ素化ポリマーを含む、
ことを特徴とする結合剤。
【請求項2】
前記少なくとも1つのチタン及び/又はジルコニウム化合物は、チタン酸塩及び/又はジルコン酸塩、好ましくは、有機チタン酸塩及び/又は有機ジルコン酸塩である、
ことを特徴とする請求項1に記載の結合剤。
【請求項3】
前記有機チタン化合物及び/又は有機ジルコニウム化合物として、チタン及び/又はジルコニウムのキレートが使用される、
ことを特徴とする請求項2に記載の結合剤。
【請求項4】
前記少なくとも1つのチタン及び/又はジルコニウム化合物は、0.5〜95重量%、好ましくは少なくとも3重量%、5重量%、7重量%、好ましくは少なくとも10重量%、特に好ましくは少なくとも12重量%、有利には少なくとも15重量%の量で存在する、
ことを特徴とする請求項1〜3いずれか一つに記載の結合剤。
【請求項5】
前記少なくとも1つのチタン及び/又はジルコニウム化合物は、それぞれ結合剤に関して、0.5〜95重量%、好ましくは80重量%までの、特に好ましくは70重量%までの、有利には50重量%までの、特に有利には30重量%までの量で添加される、
ことを特徴とする請求項1〜3いずれか一つに記載の結合剤。
【請求項6】
前記有機官能性シランとして、シラン化合物が、メチルフェニル、フェニル及びメチルシリコーン樹脂、ビニル又はアリル基,アクリルエーテル,エチレンイミノ基,フッ素化フェニル残基,フッ素誘導体,ヒドロキシ有機基,カルボキシ有機基,アミノアルキル基を持つシリコーン樹脂を含む、シロキサン−シラン混合重合物、フェニレン基を持つシラン化合物又は有機樹脂との共縮合産物を持つシラン化合物、又は前記シラン化合物の混合物から構成される群から選択される、
ことを特徴とする請求項1〜5いずれか一つに記載の結合剤。
【請求項7】
少なくとも1つの有機官能性シランが、それぞれ結合剤に関して、0.01〜20重量%、有利には2重量%を超えた、好ましくは5重量%を超えた、好ましくは15重量%までの、特に好ましくは12重量%までの、有利には10重量%までの、特に有利には7重量%までの量で使用される、
ことを特徴とする請求項1〜6いずれか一つに記載の結合剤。
【請求項8】
前記有機官能性シランの分解温度は、溶接温度よりも低い、
ことを特徴とする請求項1〜7いずれか一つに記載の結合剤。
【請求項9】
前記溶媒は、有機溶媒、特に、アルコール、脂肪族及び芳香族の炭化水素類及びエステル類を含む群からの溶媒又は溶媒の混合物である、
ことを特徴とする請求項1に記載の結合剤。
【請求項10】
前記結合剤は、フッ素化ポリマー又はフッ素化ポリマーの混合物である、
ことを特徴とする請求項1に記載の結合剤。
【請求項11】
前記結合剤は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、パーフルオロアルコキシ共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレンの過フッ素化プロピレン及びパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体(EPE)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロメチルビニルエーテルの共重合体(MFA)、テトラフルオロエチレンのエチレンとの共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)及びエチレンとクロロトリフルオロエチレンの共重合体(ECTFE)を含む群から選択されるフッ素化ポリマー又はフッ素化ポリマーの混合物の1つである、
ことを特徴とする請求項1に記載の結合剤。
【請求項12】
前記少なくとも1つのフッ素化ポリマーは、100〜450℃の間の融点、好ましくは150〜350℃の間の融点を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の結合剤。
【請求項13】
前記フッ素化ポリマーは、それぞれ結合剤に関して、0.1重量%〜20重量%の、有利には15重量%までの、特に有利には10重量%までの、好ましくは5重量%を超えた、特に好ましくは2.5重量%を超えた割合で使用される、
ことを特徴とする請求項1に記載の結合剤。
【請求項14】
結合剤の溶媒に不溶である前記フッ素化ポリマーは、ASTM D1210に従って測定された、7.5HE〜3HEの間、好ましくは6HE〜3HEの間、好ましくは5HE〜3HEの間の範囲内の平均粒経を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の結合剤。
【請求項15】
少なくとも1つの補助結合剤が使用される、
ことを特徴とする請求項1に記載の結合剤。
【請求項16】
前記少なくとも1つの補助結合剤は、結合剤に関して0.01〜20重量%の量で使用される、
ことを特徴とする請求項15に記載の結合剤。
【請求項17】
前記少なくとも1つの補助結合剤は、可溶性の有機結合剤である、
ことを特徴とする請求項15又は16に記載の結合剤。
【請求項18】
前記少なくとも1つの補助結合剤又はそのような補助結合剤の混合物は、アクリレート樹脂、アルデヒド樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂エステル類、セトン樹脂、マレエート樹脂、メラミン樹脂、及びフェノール樹脂を含む群から選択される、
ことを特徴とする請求項15〜17いずれか一つに記載の結合剤。
【請求項19】
前記結合剤は、添加剤、特に、粘度,レオロジー,濡れ,及び分散の特性、沈積挙動を調整するための、又、保存安定性,滑り特性,及び加工の特性を調整するための添加剤を含む、
ことを特徴とする請求項1〜18いずれか一つに記載の結合剤。
【請求項20】
前記結合剤において、添加剤又は添加剤の混合物が、結合剤に関して、0.01重量%〜20重量%の量で使用される、
ことを特徴とする請求項19に記載の結合剤。
【請求項21】
焼成中の目的温度が、100℃〜500℃、好ましくは150℃〜350℃の間である、
ことを特徴とする請求項1〜20いずれか一つに記載の結合剤。
【請求項22】
前記焼成の持続時間が、1秒〜90分の間、好ましくは30秒〜30分の間、特に好ましくは1分〜20分の間である、
ことを特徴とする請求項1〜21いずれか一つに記載の結合剤。
【請求項23】
請求項1〜22の少なくとも一つに記載の結合剤を含み、腐食防止粒子を有する、
ことを特徴とする腐食防止剤。
【請求項24】
請求項1〜22の少なくとも一つに記載の結合剤を含み、腐食防止粒子を有し、それが溶接可能な腐食防止剤である、
ことを特徴とする腐食防止剤。
【請求項25】
前記腐食防止粒子として、金属塩が単独で又は混合物で、特にリン化鉄又は二硫酸モリブデン及び/又はグラファイトが使用される、
ことを特徴とする請求項23又は24に記載の腐食防止剤。
【請求項26】
前記腐食防止粒子として、金属粒子又は金属合金の粒子、特に亜鉛及び/又はアルミニウムの粒子が使用される、
ことを特徴とする請求項23又は24に記載の腐食防止剤。
【請求項27】
前記腐食防止粒子は、それぞれ腐食防止剤に関して、0.1重量%〜95重量%の、好ましくは85重量%までの、特に好ましくは70重量%までの、有利には60重量%までの、特に有利には35重量%までの量で使用される、
ことを特徴とする請求項23又は24に記載の腐食防止剤。
【請求項28】
前記腐食防止剤は、その乾燥膜厚が、50μmまで、好ましくは20μmまで、特に好ましくは15μmまで、有利には5μmまでとなるように構成される、
ことを特徴とする請求項23〜27いずれか一つに記載の腐食防止剤。
【請求項29】
前記腐食防止剤は、それで被覆されかつ溶接される被加工物について、少なくとも48時間のDIN 50 021に従った塩噴霧試験に対して耐性を保証する、
ことを特徴とする請求項23〜28いずれか一つに記載の腐食防止剤。
【請求項30】
請求項23〜29の少なくとも一つに記載の腐食防止剤で被覆される、
ことを特徴とする金属の被加工物。


【公表番号】特表2009−507948(P2009−507948A)
【公表日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−529554(P2008−529554)
【出願日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【国際出願番号】PCT/EP2006/008775
【国際公開番号】WO2007/028629
【国際公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(501241173)エーヴァルト デルケン アーゲー (7)
【Fターム(参考)】