説明

結合層内で被覆された導電体と同導電体を製造する方法

本発明は、絶縁層内で被覆された導電体であって、それ自体が結合層内で被覆されており、当該導電体が、前記結合層が熱可塑性ポリマーおよび硬化性樹脂を含む組成物から得られることを特徴とする導電体に関する。また本発明は、結合層内で被覆された導電体を製造する方法であって、当該方法が、前記絶縁層内で被覆された前記導電体に前記組成物を付与し、そして前記硬化性樹脂を少なくとも部分的に硬化させるように処理を付与することを特徴とする方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は結合層内で被覆された導電体と共に、そのような導電体を製造する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
電気モータの製造において、出来る限り多数の巻線がステータのコアに組み込まれる。
【0003】
電気モータ、または、実際上、テレビの電磁偏向コイルに使用されるエナメル線として知られるマグネットワイヤは、小さな厚みの1つまたはそれ以上の絶縁層内で被覆された、しばしば銅製である、細い電線によって典型的には構成されている。
【0004】
所望の電気的、熱的、および、機械的な特性を得るために、1つまたはそれ以上のそうした絶縁層が、例えば、ポリウレタン;ポリビニル・アセタール・ホルマール;ポリエステル;ポリエステルイミド;または、ポリアミドイミドから構成され、これらの物質族は120℃から200℃の範囲に横たわる様々な温度等級を有する。コイルを一緒となるように保持するために、約150℃から190℃の融点を有する特定のポリアミド等の、粘着熱可塑性ポリマーから成る外層が使用される。この粘着層、即ち、熱の効果の下で粘着性となる層は、巻きを相互に結合する役割を果たすと共にそれらの巻きが1つの固体ユニットとして一緒となるように保持されることを保証する。この粘着層は上述の絶縁層上に重なる。
【0005】
特許文献1は、粘着層がナイロン6−12であるエナメル線を開示している。
【0006】
そのタイプのコイルを製造するため、エナメル・ワニスの1つまたはそれ以上の層が最初に巻線に付与され、そしてベークされた後、絶縁層を構成し、その後、粘着ポリマーが溶液中に付与されてからコイルが巻かれる。結合目的のため、電流がコイルに付与されながら、その巻きが一様に相互に押し付けられた状態で保持され、その電流が作用してジュール効果によって粘着ポリマーを溶解する。冷却に及んで、巻きは相互に接触して、そのアセンブリが固まると共に保護される。
【0007】
また、特許文献1で提案される如く、結合はコイルを炉に通過させることで達成される。
【0008】
しかしながら上述のコイルは、高い動作温度を含む複数の用途向け、例えば、粘着ポリマーの融解温度に届くか、またはそれを大きく超える自動車交流発電機のロータおよびステータ向けに意図されていない。
【0009】
高温度に耐えるコイルを得るために、異なるタイプのマグネットワイヤが使用される。これは電線であり、従来の絶縁層内で最初に被覆される電線であり且つその状態で巻回される電線であって、その後に溶媒中の不飽和ポリエステルまたはエポキシ樹脂等の樹脂に基づく含浸ワニス中に含浸される。引き続く熱処理は溶媒を押しのけて樹脂を硬化するのに役立っている。この製造方法は巻線のユーザによって具現化される必要があって、それは拘束されており、長期にわたり、具現化が難しく、そして大気中に放出される溶媒のために環境に対して有害である。
【特許文献1】米国特許第4,420,536号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、これら問題を軽減することであり、より広範には、結合層内で被覆され、高温度に耐え、そしてマグネットワイヤ、高圧線、および/または、通信ケーブルを形成するように単純である方法を用いて得られうる導電体を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下の明細書を通じて、プラスチック材料は高温度に耐えるといえ、それは、熱的に安定し、即ち、典型的には150℃以上で、何万時間の後等の長期にわたっても、良好な機械的特性を維持することをもたらす。
【0012】
この目的のため、本発明は絶縁層内で被覆された導電体を提供するものであり、それ自体で結合層内において被覆されており、その導電体は、前記結合層が熱可塑性ポリマーおよび硬化性樹脂を含む組成物から得られることを特徴としている。
【0013】
絶縁層は電気的に絶縁であると理解されるべきである。
【0014】
本発明の組成物から得られた層は高温度に耐え、その分子運動性は高温度でさえ低く、それは、ケーブル用途やマグネットワイヤ用途の双方において有益である。
【0015】
用語「硬化性樹脂」は、加工されるに及んで、不可逆変換に支配されるプラスチック材料を意味すべく使用され、適切な硬化処理がそれに付与されると(熱および/または紫外線タイプ照射の作用、硬化化合物との反応)、それは液体である初期状態から固体状態まで不可逆的に経過する。そうした硬化処理は重合と対応し、そしてより詳細には架橋(熱架橋および/または光架橋)と対応する。それで3次元の格子を形成する結果となる。
【0016】
硬化に及んで、硬化性樹脂は強力で不可逆の化学結合を形成して、最終層に優れた強度を付与する。架橋度が大きくなればなるほど、最終結合層の熱的および機械的な特性はより良好となる。
【0017】
硬化性な樹脂は、高温度でさえ結合が不可逆であることを保証する。
【0018】
好ましくは、硬化性樹脂は光硬化性または熱硬化性である。
【0019】
本発明の結合層は、選択された樹脂が熱硬化性であるか、または熱可塑性ポリマーが粘着性であるかの何れか一方若しくはそれらの双方である場合に「粘着性」であると言える。
【0020】
熱可塑性ポリマーが半結晶性であるとして選択されると共に樹脂が熱硬化性である場合、硬化目的のための直接または間接加熱は熱可塑性軟化やそれよる結合への寄与に至る。
【0021】
有益な実施例において、熱可塑性ポリマーは150℃と同等か、またはそれ以上のガラス転移温度(Tg)を示す。
【0022】
ガラス転移は、非結晶ポリマーまたは半結晶ポリマーの内の非結晶部における、粘性状態から(または粘性状態へ)、そして堅く且つ比較的脆い状態へ(または堅く且つ比較的脆い状態から)の可逆変化である。
【0023】
よって、非結晶ポリマーはこのガラス転移温度Tgまで剛性を維持している。このようにして、高いガラス転移温度Tgも満足のゆく機械的特性を最終結合層に高温度で授与すべく寄与する。
【0024】
例えば、約220℃のガラス転移温度Tgを有する非結晶ポリマーであるポリエーテルイミド(PEI)が言及され得る。
【0025】
好ましくは、熱可塑性ポリマーは半結晶性であり、熱可塑性ポリマーは200℃と同等か、またはそれ以上の融解温度を示す。
【0026】
例えば、約240℃の融解温度を有する半結晶ポリマーであるポリエチレン・テレフタレート(PET)が言及され得る。
【0027】
有益な特性によれば、熱可塑性ポリマーは硬化性樹脂内で好ましくは少なくとも部分的に溶解性であり、よって硬化に先行して均質混合物を形成させることが可能である。
【0028】
更には、熱可塑性ポリマーは以下のポリマーの内の1つまたはそれ以上から好ましくは選択される:ポリスチレン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリエーテルイミド;ポリアミド;ポリオレフィンおよびポリオレフィンの共重合体;ポリスルホン;ポリウレタン;ポリエステル;環状オリゴエステル;ポリイミドおよびポリイミドの共重合体;ポリフェニレンエーテル;ポリフタルアミド;ポリ塩化ビニル;ポリアクリル酸;ポリメタクリル酸;ポリカーボネート。
【0029】
硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、アルキル樹脂、アクリル樹脂、シアン酸エステル、並び、ベンゾオキサジンから選択される。
【0030】
ポリイミド(PI)およびポリイミドの共重合体の中で、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエステルイミド、および、ポリアミドイミドが言及され得る。
【0031】
ポリエステル族は特にポリエチレン・テレフタレート(PEI)およびポリブチレン・テレフタレート(PBT)を含む。
【0032】
ポリエーテル・スルホン(PES)およびポリフェニレン・スルホンはポリスルホン族の一部を形成する。
【0033】
樹脂が熱硬化性である場合、その構成物は以下の元素の内の少なくとも1つを含み得る:硬化性樹脂と化学反応性がある硬化化合物、硬化触媒、または、それら双方。
【0034】
熱硬化性樹脂は、硬化剤としても知られる硬化化合物や任意選択的な硬化触媒と予混合され得る。
【0035】
またこの硬化化合物は熱可塑性ポリマーであり得る。
【0036】
好適実施例において、樹脂は熱硬化性であり、そしてエポキシ単独重合体であり、更により好ましくはビスフェノール-Aのジグリシジルエーテルであり、硬化性化合物はアミン化合物、カルボン酸無水物、および、ポリアミドから選択される。
【0037】
本発明の組成物は、ポリフェニレンオキサイドの30%から60%重量部を含有すると共に、ビスフェノール-Aのジグリシジルエーテルと、4,4’-メチレンビス-(2,6-ジエチル)ベンゼンアミン・アミン、および、4,4’-メチレンビス-(3-クロロ-2,6-ジエチル)ベンゼンアミンから選択されたアミンとを含有する混合物の70%から40%重量部と、を含有し得る。
【0038】
硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、アルキル樹脂、アクリル樹脂、シアン酸エステル、並び、ベンゾオキサジンから選択された硬化性樹脂でもあり得る。
【0039】
例えば、ウレタン・アクリレート、ポリエステル・アクリレート、または、ポリエーテル・アクリレートは光硬化性アクリレート樹脂であり得る。
【0040】
樹脂が光硬化性である場合、その組成物は光開始剤と任意選択的には硬化触媒とを含み得る。
【0041】
本発明に従って被覆された導電体は、例えば、高圧線および/または通信ケーブル、若しくは、エナメル・マグネットワイヤの導体であり得る。
【0042】
最終的な結合層は、用途に依存して、シースとして作用し得るか、または絶縁物として作用するか、若しくは、その双方として作用し得るが、本発明の導電体は少なくとも1つの下に横たわる電気的絶縁層を常に含む。もし本発明の粘着層が導電体上に直に堆積されるものであれば、結合目的のための加熱中、様々な巻きが相互に電気的に接触し、それはエナメル線への適用に互換性がない。
【0043】
しかしながら本発明の導電体は絶縁層および粘着層の間に追加層を含み得る。
【0044】
本発明は結合層内で被覆された導電体を製造する方法をも提供し、該方法は、先に規定された組成物を前記導体上に付与して、前記硬化性樹脂を少なくとも部分的に硬化させるように処理することを含むことで特徴付けられる。
【0045】
組成物は、例えば、本発明の組成物を射出または押し出しを為すことで付与される。硬化性樹脂は熱可塑性樹脂を高いガラス転移温度で使用することを可能としている。
【0046】
加えて、熱硬化性樹脂は著しく流動性であり、そのままでは導体上に残留しない。
【0047】
本発明は引き続くいかなる含浸の実施も不要とする。
【0048】
用途目的で、組成物は蒸発させることができるか、または溶液に入れられ得る溶媒内で分散させられ得る。
【0049】
樹脂は付与されながら架橋し始めることができる。それにもかかわらず、適用条件は樹脂架橋の度合いを、例えば20%から25%未満に限定するように容易に調整され得る。
【0050】
結合に至る架橋は、例えばコイル適用例等の電線において直に加熱すること、電流を付与すること、および/または、紫外線タイプの照射を付与することによって生じさせる。
【0051】
処理のタイプ、処理の期間、そして必要に応じて、加熱温度は硬化性樹脂の関数として選択される。
【0052】
本発明の他の特性や長所等は非限定的な説明によって与えられた各種例の以下の記載から明らかとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0053】
エナメル・マグネットワイヤ1は、それ自体が以下の実施例1に記載された本発明の組成物から成る層4内で被覆されている従来のエナメル・ワニスから成る絶縁層3の内部で被覆された、例えば銅製の、導電体2を含む。層4は結合層を形成するものである。
【実施例1】
【0054】
この実施例1において、組成物は以下の処方を有する均一混合物である。
・高いガラス転移温度および/または高い融解温度を好ましくは有する熱可塑性ポリマーの30%から60%の重量部と、例えば供給者ジェネラル・エレクトリック・プラスチックス(General Electric Plastics)によってNoryl PPO 820の名前で販売される製品である、ポリフェニレンエーテルとしても知られる好ましくは40%のポリフェニレンオキサイド(PPO);
・例えば熱硬化性樹脂等の硬化性樹脂を含有する混合物の40%から70%重量部と、好ましくは;
・例えば供給者ダウ・ケミカル(Dow Chemical)によってD.E.R. 330の名前で販売される製品である、ビスフェノール-Aのジグリシジルエーテル(DGEBA)等の熱硬化性樹脂の41.8%;
・供給者ロンザ(Lonza)によってLonzacure MDEAの名前で販売される製品である、例えば4,4’-メチレンビス-(2,6-ジエチル)ベンゼンアミンのアミン等の、熱硬化性樹脂と化学的に反応する硬化化合物の18.2%。
【0055】
選択されたポリフェニレンエーテルは、純粋である際に210℃のガラス転移温度を示す非結晶ポリマーである。
【0056】
図1に示されたマグネットワイヤを用いてのエナメル・ワイヤ・コイルの製造は簡単で、速く、清潔であって、ユーザ自身によって実行され得る。
【0057】
巻回後、エナメル・ワイヤは、熱硬化性樹脂が架橋する度合いを増大するために、熱処理を被る、即ち、少なくとも30分そしてより好ましくは1時間にわたって炉で200℃まで加熱される。
【0058】
コイルに為され処理された後、そのワイヤは高温度に耐え且つそれ故に電気モータやテレビ用の電磁偏向コイル等の全てのタイプに適合する粘着層を含む。
【0059】
図2は、貯蔵弾性率G’(メガパスカル(MPa))が、温度の関数(℃)として、エナメル導線上の3つの結合層に対してどのように変動するかを示す3つの曲線10、20、30を表す。
【0060】
第1曲線10は、標準ポリアミドの従来の粘着層「A」の貯蔵弾性率を示す。第2曲線20は、実施例1で記載された本発明の組成物から得られ、且つ、30分にわたって20℃での熱処理を被った後の粘着層「B」の貯蔵弾性率を示す。第3曲線30は、実施例1で記載された本発明の組成物から得られ、且つ、60分にわたって200℃での熱処理を被った後の粘着層「C」の貯蔵弾性率を示す。
【0061】
貯蔵弾性率が温度の関数として変動する方式は、その層の結合能力や高温度に耐える能力についての情報を提供する。貯蔵弾性率G’は動的な機械的分析によって得られる。
【0062】
第1曲線10を参照して判明され得ることは、雰囲気温度で、層Aが堅固である場合、貯蔵弾性率が1000MPa以上である。約50℃と約110℃との間には約100MPaまでのこの貯蔵弾性率の第1降下があり:これはガラス転移相であり、層Aは軟化して、分子運動性を示す。約150℃からは第2であり且つ突然の降下がこの貯蔵弾性率に生じ、これは融解段階であり、そして層Aは粘着力を何等提示せずに液体となる。
【0063】
第2曲線20によって提示される貯蔵弾性率は約−50℃から約90℃までの温度の広い範囲にわたって2000MPa以上であり:層Bは非常に堅い。90℃と110℃との間には約600MPaの値までの第1降下がこの貯蔵弾性率に観測され:それにもかかわらず層Bは比較的に堅い。熱機械的な特性が安定している広範なレベルの後、この貯蔵弾性率での第2降下が約180℃から始まる。200℃以上で、層Bは剛性の特定量を保持する。
【0064】
第3曲線30に示される貯蔵弾性率は−50℃から150℃までにわたる温度の広い範囲で2000MPa以上であり:層Cは非常に堅い。
【0065】
選択加熱温度および加熱期間は選択された混合物や探し出された仕様に依存する。
【0066】
本発明に従った組成物の他の3つの実施例は以下に与えられる。
【実施例2】
【0067】
本発明の組成物は最初に溶媒中に準備される。
【0068】
好ましくはトルエン等の溶媒の750グラム(g)が、攪拌器、冷却器、および、温度プローブが装備された3つ口ウルフ壜内にロードされて、60℃まで加熱される。60℃の温度を維持しながら、150gの、例えば実施例1に記載された製品Noryl PPO 820のポリフェニレンエーテル等の熱可塑性ポリマーが、攪拌下、粉末漏斗によって徐々に添加される。導入は30分にわたって持続する。その混合物は非溶解粉末粒が見えなくなるまで連続的に攪拌される。
【0069】
落下漏斗を用いて、147gの、実施例1で先に記載された製品D.E.R. 330の、ビスフェノール-Aのジグリシジルエーテル(DGEBA)等の熱硬化性樹脂が、溶媒温度60℃に維持しながら、機械的攪拌下、20分にわたって徐々に添加される。その混合物は10分にわたって攪拌され続けられてから、粉末漏斗が用いられて、その中に、供給者ロンザによる製品Lonzacure MDEAの、例えば4,4’-メチレンビス-(3-クロロ-2,6-ジエチル)ベンゼンアミンのアミン等の熱硬化性樹脂と化学的に反応する硬化化合物の78gを導入する。
【0070】
その混合物は、結晶皿に配置される前に、機械的攪拌下、10分にわたって60℃に維持される。
【0071】
その後、トルエンは真空下で蒸発される。混合物の収量は100%に近い。
【実施例3】
【0072】
最初に本発明の組成物が溶媒中に準備される。
【0073】
750gのトルエンを、攪拌器、冷却器、および、温度プローブが装備されたウルフ壜内にロードしてから、60℃まで加熱する。60℃の温度を維持しながら、150gの、先の実施例1に記載された製品Noryl PPO 820のポリフェニレンエーテル等の熱可塑性ポリマーを、粉末漏斗を用いて、徐々に添加しながら攪拌を維持する。導入の期間は30分である。その混合物は非溶解粉末粒が見えなくなるまで連続的に攪拌される。
【0074】
落下漏斗を用いて、100gの、製品D.E.R. 330(ダウ・ケミカル)の、ビスフェノール-Aのジグリシジルエーテル(DGEBA)等の熱硬化性樹脂が、60℃の溶媒温度を維持しながら、機械的攪拌下、15分にわたって徐々に添加される。その混合物は10分にわたって攪拌し続けられてから、例えば供給者ロディア(Rhodia)による製品ロドシル光開始剤 2074等の2gの光開始剤が5分間にわたって徐々に導入される。
【0075】
この混合物は、結晶皿に配置される前に、機械的攪拌下、10分にわたって60℃に維持される。
【0076】
その後、トルエンは真空下で蒸発される。混合物の収量は100%に近い。
【実施例4】
【0077】
混合物が定住量フィーダを介して2つの共回転スクリューを有すると共に、第1ゾーンと第9ゾーンとの間に、60℃、160℃、190℃、190℃、180℃、180℃、180℃、180℃、および、180℃の各温度の9つの連続的な加熱ゾーンと、2つのフィード・ゾーンおよび2つの脱ガス・ウェルとが装備された押出ヘッドのフィード・ホッパー内に導入される。この混合物は以下を含む。:
・粉末形態の例えばNoryl PPO 820のポリフェニレンエーテル等の熱可塑性ポリマー1800gと;
・粉末形態の、先の実施例1で記載された製品Lonzacure MDEAの4,4’-メチレンビス-(2,6-ジエチル)ベンゼンアミンの398gと、を20g/分の速度。
【0078】
同時に、例えば樹脂D.E.R. 330の、ビスフェノール-Aのジグリシジルエーテル(DGEBA)等の熱硬化性樹脂の802gを80℃で徐々に導入し、ギヤポンプを用いて第2ゾーン内に13.3g/分の速度で導入する。
【0079】
金型は標準顆粒を得ることができるロッド押出金型である。
【0080】
試験
先の実施例2および実施例4を具現化することによって得られる材料が、それらの機械的特性を調整するために役立つ熱処理を施された。
【0081】
それら材料の弾性率G’が、(TAインストールメントによる)DMA2980装置を用いて、1ヘルツ(Hz)の周波数と、3℃/分の速度で温度を変動させながら、−50℃から+250℃までの温度範囲にわたっての100マイクロメートル(μm)の振幅と、で付与される応力によって、二重片持ちモードでの機械的で動的な分析によって決定された。
【0082】
標準的な先行技術に係るポリアミドが基準材料として使用された。
【0083】
得られた結果は以下の表1に要約されている。
【0084】
【表1】

【0085】
実施例2および4の材料の貯蔵弾性率は、標準ポリアミドに対するものよりも、25℃および150℃の双方で相当に大きい。
【0086】
必然的に、本発明は以上に記載された実施例に限定されるものではない。
【0087】
本発明は、それらの被覆材料および/または絶縁層のため、高圧線や通信ケーブルに充分同等に適用される。
【0088】
最後に、任意の手段が本発明の範囲を超えること無しに等価手段によって代替可能である。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】図1は、本発明の好適実施例におけるエナメル・マグネットワイヤとしての使用に適合する本発明の導電体の断面図である。
【図2】図2は、結合層の貯蔵弾性率が温度の関数としてどのように変動するかを示している。
【符号の説明】
【0090】
1 エナメル・マグネットワイヤ
2 導電体
3 絶縁層
4 結合層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層内で被覆された導電体であって、それ自体が結合層内で被覆されており、当該導電体が、前記結合層が熱可塑性ポリマーおよび硬化性樹脂を含む組成物から得られることを特徴とする導電体。
【請求項2】
前記硬化性樹脂が光硬化性または熱硬化性であることを特徴とする、請求項1に記載の導電体。
【請求項3】
前記熱可塑性ポリマーが150℃と同等か、またはそれ以上のガラス転移温度を示すことを特徴とする、請求項1または2に記載の導電体。
【請求項4】
前記熱可塑性ポリマーが半結晶性である場合、前記熱可塑性ポリマーが200℃と同等か、またはそれ以上の融解温度を示すことを特徴とする、請求項1乃至3の内の何れか一項に記載の導電体。
【請求項5】
前記熱可塑性ポリマーが前記硬化性樹脂中において少なくとも部分的に溶解性であることを特徴とする、請求項1乃至4の内の何れか一項に記載の導電体。
【請求項6】
前記熱可塑性ポリマーが、ポリスチレン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリエーテルイミド;ポリアミド;ポリオレフィンおよびポリオレフィンの共重合体;ポリスルホン;ポリウレタン;ポリエステル;環状オリゴエステル;ポリイミドおよびポリイミドの共重合体;ポリフェニレンエーテル;ポリフタルアミド;ポリ塩化ビニル;ポリアクリル酸;ポリメタクリル酸;ポリカーボネート、のポリマーの内の1つまたはそれ以上から選択されることを特徴とする、請求項1乃至5の内の何れか一項に記載の導電体。
【請求項7】
前記硬化性樹脂が、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、アルキル樹脂、アクリル樹脂、シアン酸エステル、並び、ベンゾオキサジンから選択されることを特徴とする、請求項1乃至6の内の何れか一項に記載の導電体。
【請求項8】
熱硬化性樹脂に対して、前記組成物が、前記硬化性樹脂と化学反応性がある硬化化合物、および、硬化触媒の内の少なくとも1つの化合物を含むことを特徴とする、請求項1乃至7の内の何れか一項に記載の導電体。
【請求項9】
前記樹脂が熱硬化性であり、そしてエポキシ単独重合体であり、更により好ましくはビスフェノール-Aのジグリシジルエーテルであり、前記硬化性化合物はアミン化合物、カルボン酸無水物、および、ポリアミドから選択されることを特徴とする、請求項8に記載の導電体。
【請求項10】
前記組成物が、ポリフェニレンオキサイドの30%から60%重量部を含有すると共に、ビスフェノール-Aのジグリシジルエーテルと、4,4’-メチレンビス-(2,6-ジエチル)ベンゼンアミン・アミン、および、4,4’-メチレンビス-(3-クロロ-2,6-ジエチル)ベンゼンアミンから選択されたアミンとを含有する混合物の70%から40%重量部と、を含有することを特徴とする、請求項1乃至9の内の何れか一項に記載の導電体。
【請求項11】
前記硬化性樹脂が、アクリル樹脂;メタクリル樹脂、エポキシ樹脂、および、ビニルエステルの樹脂の内の1つから選択された光硬化樹脂であることを特徴とする、請求項1乃至6の内の何れか一項に記載の導電体。
【請求項12】
光硬化性樹脂に対して、前記組成物が光開始剤を含むことを特徴とする、請求項1乃至6の内の何れか一項に記載の導電体。
【請求項13】
請求項1乃至12の内の何れか一項に記載の結合層(4)で被覆された導電体(1,2)を製造する方法であって、当該方法が、前記絶縁層内で被覆された前記導電体に前記組成物を付与し、そして前記硬化性樹脂を少なくとも部分的に硬化させるように処理を付与することを特徴とする方法。
【請求項14】
前記硬化処理が、熱処理、紫外線タイプ照射の処理の内の1つから選択されることを特徴とする、請求項13に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−510256(P2007−510256A)
【公表日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530353(P2006−530353)
【出願日】平成16年5月14日(2004.5.14)
【国際出願番号】PCT/FR2004/001183
【国際公開番号】WO2004/104101
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(306047549)ネクサン ソシエテ アノニム (1)
【氏名又は名称原語表記】NEXANS, SOCIETE ANONYME
【Fターム(参考)】