結晶シリコンの製造方法
【課題】結晶シリコンの位置を制御可能な結晶シリコンの製造方法を提供する。
【解決手段】結晶シリコンの製造方法は、基板上にa−Si膜を形成する工程S1と、単結晶シリコンの熱伝導率以上の熱伝導率を有し、かつ、所望のパターンに配置された貫通孔を有するマスクをa−Si膜上に配置する工程S2と、a−Si膜およびマスクに熱プラズマジェットを照射しながら熱プラズマジェットを所望の方向に走査する工程S3とを備える。
【解決手段】結晶シリコンの製造方法は、基板上にa−Si膜を形成する工程S1と、単結晶シリコンの熱伝導率以上の熱伝導率を有し、かつ、所望のパターンに配置された貫通孔を有するマスクをa−Si膜上に配置する工程S2と、a−Si膜およびマスクに熱プラズマジェットを照射しながら熱プラズマジェットを所望の方向に走査する工程S3とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、結晶シリコンの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、大気圧下における直流アーク放電によって生成された熱プラズマジェットを石英基板上のアモルファスシリコン膜に照射してアモルファスシリコン膜を溶融結晶化する方法が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−060810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の方法では、結晶シリコンの位置を制御することが困難であった。
【0005】
そこで、この発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、結晶シリコンの位置を制御可能な結晶シリコンの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の実施の形態による結晶シリコンの製造方法は、基板上にアモルファスシリコン膜を形成する第1の工程と、単結晶シリコンの熱伝導率以上の熱伝導率を有し、かつ、所望のパターンに配置された貫通孔を有するマスクをアモルファスシリコン膜上に配置する第2の工程と、アモルファスシリコン膜およびマスクに熱プラズマジェットを照射しながら熱プラズマジェットを所望の方向に走査する第3の工程とを備える。
【発明の効果】
【0007】
この発明の実施の形態による結晶シリコンの製造方法においては、熱プラズマジェットは、マスクがアモルファスシリコン膜上に配置された状態で所望の方向に走査される。その結果、マスクに接するアモルファスシリコン膜の領域は、溶融結晶化せず、貫通孔を介して熱プラズマジェットに曝されるアモルファスシリコン膜の領域だけが溶融結晶化する。
【0008】
従って、結晶シリコンの位置を制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の実施の形態による結晶シリコンの製造に用いる半導体製造装置の構成図である。
【図2】図1に示す半導体製造装置の動作を説明するための概念図である。
【図3】プラズマ処理装置の概略図である。
【図4】この発明の実施の形態による結晶シリコンの製造方法を示す第1の工程図である。
【図5】この発明の実施の形態による結晶シリコンの製造方法を示す第2の工程図である。
【図6】熱プラズマジェットの照射による熱伝導を説明するための概念図である。
【図7】図1に示す半導体装置を用いて結晶化した結晶シリコンの光学顕微鏡像を示す図である。
【図8】溶融結晶化の概念図である。
【図9】マスクの斜視図である。
【図10】この発明の実施の形態による一般的な結晶シリコンの製造方法を示す工程図である。
【図11】この発明の実施の形態による結晶シリコンの製造方法を用いたTFTの製造方法を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0011】
図1は、この発明の実施の形態による結晶シリコンの製造に用いる半導体製造装置の構成図である。図1を参照して、半導体製造装置100は、架台1と、圧電素子2と、プラズマ源10と、測定装置30と、制御装置40と、XYステージ50とを備える。
【0012】
圧電素子2は、一方端が架台1に固定され、他方端がプラズマ源10に連結される。
【0013】
プラズマ源10は、陽極11と、絶縁体12と、導体13と、陰極14と、ガス導入管15と、給水管16と、排出管17と、電源回路20とを含む。
【0014】
陽極11は、概略、中空の円筒形状からなり、XYステージ50側に噴出口18を有する。また、陽極11は、その内部に中空部分19を有する。そして、陽極11は、例えば、熱伝導率が高い銅(Cu)からなる。
【0015】
絶縁体12は、陽極11と導体13との間に陽極11および導体13に接して配置される。そして、絶縁体12は、例えば、アルミナおよびセラミックス等からなる。
【0016】
導体13は、略十字形状を有する。そして、導体13のうち、水平方向DR1に配置された部分は、絶縁体12に接して配置される。また、導体13のうち、上下方向DR2に配置された部分は、陽極11の噴出口18の方向へ突出するとともに、一方端が尖っており、他方端が圧電素子2に連結されている。さらに、導体13は、陰極14を挿入するための孔を有する。そして、導体13は、例えば、Cuからなる。
【0017】
絶縁体12が陽極11および導体13に接するように配置されることによって、内部空間21が形成される。
【0018】
陰極14は、導体13に挿入されるとともに、一方端側が導体13から露出する。また、陰極14は、その一方端が噴出口18に向かって尖っている。そして、陰極14は、例えば、タングステン、タンタル、ルテニウム、およびジルコニウム等の熱陰極金属材料からなる。
【0019】
ガス導入管15は、その一方端側が陽極11を貫通して内部空間21に達するように陽極11に固定される。そして、ガス導入管15は、アルゴン(Ar)ガスを保持するガスボンベ(図示せず)に連結されている。給水管16は、その一方端側が陽極11を貫通して中空部分19に達するように陽極11に固定される。排出管17は、その一方端側が陽極11を貫通して中空部分19に達するように陽極11に固定される。
【0020】
噴出口18は、例えば、600μmφの直径を有する。電源回路20は、陽極11と陰極14との間に電気的に接続される。測定装置30は、その底面30Aが陽極11の底面11Aに一致するように陽極11の外周面に設置される。XYステージ50は、支持部材(図示せず)によって架台1に固定される。
【0021】
圧電素子2は、制御装置40から電圧が印加されると、上下方向DR2に伸縮し、プラズマ源10を上下方向DR2へ移動させる。
【0022】
プラズマ源10は、電源回路20から直流電圧が印加され、ガス導入口15からArガスが内部空間21へ供給されると、直流アーク放電によって熱プラズマジェットを発生する。そして、プラズマ源10は、その発生した熱プラズマジェットを噴出口18から放射する。
【0023】
ガス導入管15は、Arガスをガスボンベ(図示せず)からプラズマ源10の内部空間21へ供給する。この場合、内部空間21は、大気圧に設定される。
【0024】
給水管16は、冷却水を陽極11の中空部分19へ供給する。排出管17は、陽極11の中空部分19から冷却水を排出する。
【0025】
電源回路20は、陽極11がプラスになり、陰極14がマイナスになるように、直流電圧を陽極11−陰極14間に印加する。
【0026】
測定装置30は、制御装置40からの制御に従って、XYステージ50に設置された基板60と噴出口18との距離を測定する。より具体的には、測定装置30は、距離の測定を指示するための信号DSを制御装置40から受けると、レーザ光を出射する。出射されたレーザ光は、ハーフミラー(図示せず)によって2つに分割され、一方のレーザ光は、基板60に照射され、他方のレーザ光は、リファレンスに照射される。そして、一方のレーザ光は、基板60で反射されて測定装置30に到達する。また、他方のレーザ光は、リファレンスで反射されて測定装置30に到達する。測定装置30は、一方のレーザ光と他方のレーザ光とが測定装置30に到達するときに生じる干渉パターンを検出する。そして、測定装置30は、噴出口18と基板60との距離をLとすると、その検出した干渉パターンと距離Lとの関係に基づいて距離Lを算出する。そうすると、測定装置30は、その算出した距離Lを制御装置40へ出力する。
【0027】
制御装置40は、信号DSを測定装置30へ出力する。また、制御装置40は、距離Lを測定装置30から受け、その受けた距離Lに基づいて、噴出口18と基板60との距離が所望の距離に設定されるように、圧電素子2に電圧を印加する。
【0028】
半導体製造装置100においては、噴出口18と基板60との距離は、例えば、1mmに設定される。制御装置40は、測定装置30によって測定された距離Lが1mmになるように電圧を圧電素子2に印加する。
【0029】
半導体製造装置100は、プラズマ源10によって熱プラズマジェットを発生し、その発生した熱プラズマジェットを基板60上に形成されたアモルファスシリコン(a−Si)膜に照射することによって、a−Si膜を溶融結晶化する。
【0030】
半導体製造装置100における動作について説明する。図2は、図1に示す半導体製造装置100の動作を説明するための概念図である。
【0031】
図2を参照して、a−Si膜61が形成された基板60をXYステージ50に設置する。なお、a−Si:H膜61の膜厚は、例えば、50nmである。
【0032】
そして、a−Si膜61を溶融結晶化する場合、制御装置40は、測定装置30によって測定された距離Lが1mmになるように電圧を圧電素子2に印加する。これによって、噴出口18と基板60との距離が1mmに設定される。
【0033】
その後、ガス導入管15は、内部空間21の圧力が大気圧になるように、Arガスをガスボンベ(図示せず)からプラズマ源10の内部空間21へ供給する。この場合、Arガスの流量は、例えば、2.5〜3.2リットル/分である。また、給水管16は、冷却水を陽極11の中空部分19に供給するとともに、排出管17は、陽極11の中空部分19から冷却水を排出する。これによって、陽極11は、冷却される。
【0034】
引き続いて、電源回路20は、例えば、1.9〜2.1kWの直流電力を陽極11−陰極14間に印加する。そうすると、陰極14は、先端部から熱プラズマジェットTPJを発生し、その発生した熱プラズマジェットTPJを噴出口18を介してa−Si膜61に照射する。この場合、移動機構(図示せず)によってプラズマ源10を2600〜4000mm/sの速度で移動させる。
【0035】
その結果、a−Si膜61のうち、熱プラズマジェットTPJが照射された部分が溶融結晶化され、結晶シリコン611が形成される。この結晶シリコン611は、100μm以上の粒径を有する。
【0036】
図3は、プラズマ処理装置の概略図である。図3を参照して、プラズマ処理装置600は、石英管610と、反応室620と、基板ホルダー630と、ヒーター640と、配管650と、バルブ660と、アンテナ670と、マッチング回路680と、高周波電源690とを備える。
【0037】
石英管610は、10cmφの直径を有し、その一方端が反応室620内に挿入されるように固定される。反応室620は、中空の円筒形状からなり、上面620Aに石英管610の一方端を挿入するための開口部621を有し、側面620Bに排気口622を有する。そして、反応室620は、開口部621から石英管610の一方端が挿入されることによって、内部空間が石英管610の内部空間と連通する。従って、ポンプ(図示せず)によって反応室620および石英管610の内部の気体を排気口622を介して排気できる。
【0038】
基板ホルダー630は、反応室620の下面620C上に配置される。ヒーター640は、シリコンカーバイド(SiC)からなり、基板ホルダー630内に配置される。
【0039】
配管650は、バルブ660を介して石英管610の他方端に連結される。バルブ660は、配管650に装着される。アンテナ670は、基板ホルダー630上に設置された基板60から32cmの位置で石英管610の周囲を取り巻くように配置される。そして、アンテナ670は、その一方端がマッチング回路680に接続され、他方端が接地される。
【0040】
マッチング回路680は、アンテナ670の一方端と高周波電源690との間に接続される。高周波電源690は、マッチング回路680と、接地ノードとの間に接続される。
【0041】
ヒーター640は、基板ホルダー630を介して基板60を所定の温度に加熱する。配管650は、シラン(SiH4)ガスおよび水素(H2)ガス等をボンベ(図示せず)から石英管610内に導く。バルブ660は、SiH4ガスおよびH2ガス等を石英管610内へ供給し、またはSiH4ガスおよびH2ガス等の石英管610内への供給を遮断する。
【0042】
マッチング回路680は、高周波電源690から供給された高周波電力の高周波電源690側への反射を低くして高周波電力をアンテナ670へ供給する。高周波電源690は、例えば、60MHzの高周波電力をマッチング回路680を介してアンテナ670へ供給する。
【0043】
プラズマ処理装置600における処理動作について説明する。基板60が基板ホルダー630上に配置され、排気口622から反応室620および石英管610の真空引きが行なわれる。
【0044】
その後、バルブ660が開けられ、ボンベ(図示せず)から所定量のSiH4ガスが配管650を介して石英管610内へ導入される。そして、石英管610内の圧力が所定の圧力に達すると、高周波電源690は、60MHzの高周波電力をマッチング回路680を介してアンテナ670に供給する。この場合、マッチング回路680は、高周波電源690から供給された高周波電力の高周波電源690側への反射が最も低くなるように調整される。
【0045】
そうすると、石英管610内でプラズマ710が発生し、水素化アモルファスシリコン(a−Si:H)膜が基板60上に堆積される。
【0046】
a−Si:H膜の堆積が終了すると、高周波電源690がオフされ、バルブ660が閉じられて処理動作が終了する。
【0047】
図4および図5は、それぞれ、この発明の実施の形態による結晶シリコンの製造方法を示す第1および第2の工程図である。
【0048】
図4を参照して、結晶シリコンの製造が開始されると、石英からなる基板60を洗浄し、その洗浄した基板60をプラズマ処理装置600の基板ホルダー630上に配置する(工程(a))。
【0049】
そして、石英管610および反応室620内を排気口622から真空引きし、到達圧力が1×10−5Pa以下になると、ボンベ(図示せず)から5sccmのSiH4ガスを配管650を介して石英管610および反応室620内に導入し、石英管610および反応室620内の圧力を6.65Paに設定する。
【0050】
その後、高周波電源690は、30Wの高周波電力をマッチング回路680を介してアンテナ670に印加する。これによって、石英管610内にプラズマ710が発生し、a−Si:H膜110が基板60上に堆積される(工程(b))。この場合、a−Si:H膜110の膜厚は、例えば、100nmである。
【0051】
引き続いて、a−Si:H膜110/基板60を窒素(N2)ガス雰囲気中で450℃で1時間熱処理し、a−Si:H膜110中の水素を脱離する。これによって、a−Si:H膜110は、水素含有量が少ないa−Si膜61になる(工程(c))。
【0052】
図5を参照して、工程(c)の後、マスク120をa−Si膜61上に配置する(工程(d))。このマスク120は、例えば、525μmの厚みを有する単結晶シリコンからなり、貫通孔121を有する。貫通孔121は、長方形の平面形状を有する。長方形の短辺の長さ、即ち、基板60の平面方向DR3における貫通孔121の長さ(=貫通孔121の幅w)は、例えば、0.5mm以下である。また、長方形の長辺の長さ、即ち、図5の紙面に垂直な方向における貫通孔121の長さは、例えば、3〜4mmである。
【0053】
工程(d)の後、マスク120/a−Si膜61/基板60を半導体装置100のXYステージ50上に設置する。そして、上述した方法によって、噴出口18と基板60との距離を1mmに設定する。その後、2.5〜3.2リットル/分の流量のArガスをガス導入管15を介してプラズマ源10の内部空間21へ供給する。また、給水管16は、冷却水を陽極11の中空部分19に供給するとともに、排出管17は、陽極11の中空部分19から冷却水を排出する。引き続いて、電源回路20は、例えば、1.9〜2.1kWの直流電力を陽極11−陰極14間に印加する。
【0054】
そうすると、陰極14は、先端部から熱プラズマジェットTPJを発生し、その発生した熱プラズマジェットTPJを噴出口18を介してa−Si膜61およびマスク120に照射する。この場合、移動機構(図示せず)によってプラズマ源10を2600〜4000mm/sの速度で矢印122の方向に移動させる。即ち、貫通孔121の短辺方向に沿って熱プラズマジェットTPJを走査する(工程(e))。
【0055】
その結果、a−Si膜61が結晶化され、結晶シリコン611が製造される(工程(f))。これによって、結晶シリコンの製造が終了する。
【0056】
結晶シリコン611は、領域611A,611Bからなる。領域611Aは、a−Si膜が溶融結晶化した領域であり、領域611Bは、a−Si膜が固相結晶化した領域である。
【0057】
図6は、熱プラズマジェットの照射による熱伝導を説明するための概念図である。図6の(a)を参照して、熱プラズマジェットTPJがマスク120に照射されている場合、マスク120の構成材料である単結晶シリコンは、130W/m/Kの熱伝導率を有するため、熱プラズマジェットTPJの照射によってマスク120内で発生した熱は、マスク120の面内方向に伝導し、マスク120に接しているa−Si膜61の領域61Bには、伝導し難くく、a−Si膜61の領域61Bは、マスク120によって温度が上昇するが、溶融されない。
【0058】
一方、熱プラズマジェットTPJが貫通孔121を介してa−Si膜61に照射されている場合、a−Si膜61内に熱が発生し、a−Si膜61の領域61Aが溶融される。
【0059】
従って、a−Si膜61の領域61Aは、溶融結晶化され、a−Si膜61の領域61Bは、固相結晶化される。
【0060】
この発明の実施の形態においては、好ましくは、図6の(b)に示すマスク120Aを用いる。マスク120Aは、マスク120の周縁部を残して内側を一定の深さにエッチングした構成からなる。これによって、マスク120Aをa−Si膜61上に配置したとき、マスク120Aとa−Si膜61との間に隙間が発生する。その結果、熱プラズマジェットTPJをマスク120Aに照射したときに発生する熱がa−Si膜61に伝導するのをほぼ100%遮断できる。
【0061】
このように、マスク120を用いることによって、a−Si膜61において、熱を与える位置を制御できる。また、基板60への熱の投与を抑制できる。
【0062】
また、マスク120Aを用いることによって、a−Si膜61において、熱を与える位置を更に精密に制御できる。また、基板60への熱の投与を更に抑制できる。
【0063】
図7は、図1に示す半導体装置100を用いて結晶化した結晶シリコンの光学顕微鏡像を示す図である。
【0064】
図7において、(a)は、マスク120無しでa−Si膜を溶融結晶化したときの光学顕微鏡像を示し、(b)は、貫通孔121の幅wを0.5mmに設定したときの光学顕微鏡像を示し、(c)は、貫通孔121の幅wを0.1mmに設定したときの光学顕微鏡像を示す。
【0065】
図7の(a)を参照して、熱プラズマジェットTPJは、矢印131の方向へ走査された。その結果、領域132,134は、a−Si膜61が固相結晶化した領域であり、領域133は、a−Si膜61が溶融結晶化した領域である。
【0066】
領域132,134における結晶粒径は、20nm程度であり、領域133における粒径は、100〜200μmである。
【0067】
そして、領域133において、結晶成長の方向は、熱プラズマジェットTPJの走査方向に対して変化する。また、溶融結晶化した領域133においては、クラックが発生している。
【0068】
図7の(b)を参照して、熱プラズマジェットTPJは、矢印135の方向へ走査された。その結果、領域136,138は、a−Si膜61が固相結晶化した領域であり、領域137は、a−Si膜61が溶融結晶化した領域である。
【0069】
領域136,138における結晶粒径は、20nm程度であり、領域137における粒径は、100〜200μmである。
【0070】
そして、領域137において、結晶成長の方向は、貫通孔121の幅方向、即ち、熱プラズマジェットTPJの走査方向に対して揃っている。また、溶融結晶化した領域137においては、クラックが発生していない。
【0071】
図7の(c)を参照して、熱プラズマジェットTPJは、矢印139の方向へ走査された。その結果、領域140,142は、a−Si膜61が固相結晶化した領域であり、領域141は、a−Si膜61が溶融結晶化した領域である。
【0072】
領域140,142における結晶粒径は、20nm程度であり、領域141における粒径は、100〜200μmである。
【0073】
そして、領域141において、結晶成長の方向は、貫通孔121の幅方向、即ち、熱プラズマジェットTPJの走査方向に対して揃っている。また、溶融結晶化した領域141においては、クラックが発生していない。
【0074】
このように、マスク120を用いた場合には、結晶成長の方向が貫通孔121の幅方向に対して揃っている。即ち、マスク120を用いた場合、結晶成長の方向が熱プラズマジェットTPJの走査方向に対して揃っている((b),(c)参照)。そして、溶融結晶化した領域137,141においては、クラックが発生していない。また、貫通孔121の幅wを0.35〜0.5mmに設定した場合、溶融結晶化した領域では、貫通孔121の中心部分に149〜160μmの長距離結晶成長が確認された。
【0075】
従って、マスク120を用いてa−Si膜61を溶融結晶化することによって、結晶成長の方向を揃えることができるとともに、クラックの発生を防止できる。
【0076】
図8は、溶融結晶化の概念図である。図8の(a)を参照して、マスク120が無い場合、熱プラズマジェットTPJが矢印123の方向へ走査されると、瞬間的には、熱プラズマジェットTPJ1,TPJ2,TPJ3がa−Si膜61へ順次照射される。
【0077】
その結果、a−Si膜61の溶融領域の端部は、曲線k1〜k3によって規定される。従って、図7の(a)に示すように結晶成長の方向が熱プラズマジェットの走査方向に対して揃わなくなる。
【0078】
一方、マスク120を用いた場合、熱プラズマジェットTPJが矢印124の方向へ走査されると、瞬間的には、熱プラズマジェットTPJ1,TPJ2,TPJ3がa−Si膜61へ順次照射される((b)参照)。
【0079】
その結果、a−Si膜61の溶融領域の端部は、直線k4,k5によって規定される。従って、図7の(b),(c)に示すように結晶成長の方向が熱プラズマジェットの走査方向に対して揃う。
【0080】
この発明の実施の形態においては、貫通孔121の幅wは、熱プラズマジェットTPJの孔径よりも小さければ、どのような値であってもよい。貫通孔121の幅wが熱プラズマジェットTPJの孔径よりも小さければ、a−Si膜は、熱プラズマジェットTPJの走査方向において、全領域が溶融結晶化するからである。
【0081】
また、マスク120は、単結晶シリコンに限らず、金属からなっていてもよく、一般的には、130W/m/K以上の熱伝導率を有する材料であれば、どのような材料から成っていてもよい。
【0082】
更に、a−Si膜61は、熱CVD法によって形成されてもよい。熱CVD法は、材料ガス(SiH4ガス)の熱分解温度以上の温度を用いてa−Si膜を基板上に堆積する。そのため、水素がa−Si膜中へ殆ど取り込まれない。従って、熱CVD法によってa−Si膜を形成することによって、上述した水素を脱離する工程を省略できる。
【0083】
図9は、マスクの斜視図である。図9を参照して、マスク200は、上述したマスク120と同じ材料からなり、碁盤目状に配置された複数の貫通孔201を有する。貫通孔201は、上述した貫通孔121と同じ寸法を有する。
【0084】
方向DR4における貫通孔201の寸法は、方向DR5における貫通孔201の寸法よりも小さく、熱プラズマジェットTPJの孔径よりも小さい。従って、マスク200を用いてa−Si膜を溶融結晶化する場合、方向DR5において熱プラズマジェットTPJを一定の距離づつずらせながら、熱プラズマジェットTPJを矢印202〜204に示すように方向DR4に沿って走査する。
【0085】
これによって、大面積な基板上の所望の位置に結晶シリコンを碁盤目状に製造できる。
【0086】
従って、マスク200は、例えば、TFT(Thin Film Transisitor)をマトリックス状に形成する場合に好適である。
【0087】
また、複数の貫通孔201は、碁盤目状に配置されていなくてもよく、所望のパターンに従って配置されていてもよい。
【0088】
更に、マスク200に形成する貫通孔は、貫通孔201のように長方形の平面形状を有する貫通孔に限らず、平面形状の一部の寸法が熱プラズマジェットTPJの孔径よりも小さければ、任意の平面形状からなる貫通孔であってもよい。
【0089】
更に、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)において使用されている技術を用いて貫通孔を形成することによって、微細かつ精密な形状を有する貫通孔をマスク200に形成できる。その結果、局所的に熱を投与することができる。
【0090】
このように、マスク200の材料として単結晶シリコンを用いることによって、MEMSにおける技術を用いて貫通孔201を微細かつ精密な形状に加工できる。
【0091】
図10は、この発明の実施の形態による一般的な結晶シリコンの製造方法を示す工程図である。
【0092】
図10を参照して、まず、最初に、a−Si膜を基板60上に形成する(工程S1)。なお、a−Si膜を基板上に形成するとは、(i)a−Si:H膜を基板上に堆積し、その堆積したa−Si:H膜を熱処理して水素を脱離することによってa−Si膜を基板上に形成すること、(ii)最初から水素量の少ないa−Si膜を基板上に形成すること、の両方を含む。そして、a−Si:H膜は、プラズマCVD法等の各種の方法を用いて基板上に堆積されてもよく、a−Si膜は、熱CVD法等の各種の方法を用いて基板上に最初から形成されてもよい。
【0093】
工程S1の後、単結晶シリコンの熱伝導率以上の熱伝導率を有し、かつ、所望のパターンに配置された貫通孔を有するマスクをa−Si膜上に配置する(工程S2)。
【0094】
そして、a−Si膜およびマスクに熱プラズマジェットを照射しながら熱プラズマジェットを所望の方向に走査する(工程S3)。この場合、熱プラズマジェットの走査方向における貫通孔の寸法は、熱プラズマジェットの孔径よりも小さい。これによって、所望の位置に結晶シリコンを製造できる。
【0095】
このように、熱プラズマジェットの走査方向における貫通孔の寸法を熱プラズマジェットの孔径よりも小さく設定することによって、熱プラズマジェットの走査方向に対して結晶成長の方向を揃えることができる。
【0096】
図11は、この発明の実施の形態による結晶シリコンの製造方法を用いたTFTの製造方法を示す工程図である。
【0097】
図11を参照して、TFTの製造が開始されると、図4および図5に示す工程(a)〜(f)に従って、結晶シリコン611が基板60上に製造される(工程(a))。
【0098】
そして、リン(P)イオンが結晶シリコン611の領域611Bにイオン注入され(工程(b))、ソース電極621が領域611Aの左側に形成され、ドレイン電極622が領域611Aの右側に形成される(工程(c))。
【0099】
その後、例えば、SiH4ガスおよびN2Oガスを材料として用いたプラズマCVD法によって、SiO2膜を結晶シリコン611の全面に形成し、フォトリソグラフィおよびエッチングによって、ゲート酸化膜623を結晶シリコン611の領域611Aに接して形成する(工程(d))。
【0100】
引き続いて、ゲート電極624をゲート酸化膜623に接して形成する。これによって、TFTが完成する(工程(e))。
【0101】
このように、この発明の実施の形態による結晶シリコンの製造方法を用いてアモルファスシリコン膜の所望の位置を溶融結晶化することによって、基板60上の所望の位置にTFTを製造することができる。
【0102】
また、図9に示すマスク200を用いることによって、基板60上の所望の位置にTFTをマトリックス状に製造することができる。
【0103】
そして、上述した方法によって製造したTFTにおいて、260cm2/V・sの移動度が得られた。
【0104】
また、熱プラズマジェットTPJの孔径と同じ程度の面積を有するa−Si膜を形成し、その形成したa−Si膜を上述した方法によって溶融結晶化する。そして、その溶融結晶化した結晶シリコンをチャネル層に用いたTFTを作製した結果、480cm2/V・sの移動度が得られた。
【0105】
従って、この発明の実施の形態による結晶シリコンの製造方法は、石英基板等の単結晶シリコンと異なる異種基板上に高品質な結晶シリコンを形成できることが実証された。
【0106】
なお、上記においては、プラズマ源10の噴出口18の直径は、600μmφであると説明したが、この発明の実施の形態においては、これに限らず、噴出口18の直径は、1mmφ以下の範囲であればよい。
【0107】
更に、a−Si膜61を溶融結晶化するときの基板60と噴出口18との距離は、1mmに限らず、2mmよりも短ければよい。
【0108】
更に、内部空間21の圧力は、大気圧に限らず、0.1気圧〜10気圧程度の範囲であればよい。
【0109】
更に、基板60は、石英に限らず、通常のガラスおよび樹脂性のフィルム等であってもよい。
【0110】
更に、ノンドープのa−Si膜を溶融結晶化すると説明したが、この発明の実施の形態においては、これに限らず、ボロン(B)を含むp型a−Si膜またはPを含むn型a−Si膜を溶融結晶化してもよい。
【0111】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0112】
この発明は、結晶シリコンの製造方法に適用される。
【符号の説明】
【0113】
1 架台、2 圧電素子、10 プラズマ源、11 陽極、12,13 絶縁体、14陰極、15 ガス導入管、16 給水管、17 排出管、18 噴出口、19 中空部分、20 電源回路、21 内部空間、30 測定装置、40 制御装置、50 XYステージ、60 基板、61 a−Si膜、100 半導体製造装置、110 a−Si:H膜、120 マスク、121 貫通孔、600 プラズマ処理装置、610 石英管、611 結晶シリコン、611A,611B 領域、620 反応室、621 ソース電極、622 ドレイン電極、623 ゲート酸化膜、624 ゲート電極、630 基板ホルダー、640 ヒーター、650 配管、660 バルブ、670 アンテナ、680 マッチング回路、690 高周波電源。
【技術分野】
【0001】
この発明は、結晶シリコンの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、大気圧下における直流アーク放電によって生成された熱プラズマジェットを石英基板上のアモルファスシリコン膜に照射してアモルファスシリコン膜を溶融結晶化する方法が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−060810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の方法では、結晶シリコンの位置を制御することが困難であった。
【0005】
そこで、この発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、結晶シリコンの位置を制御可能な結晶シリコンの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の実施の形態による結晶シリコンの製造方法は、基板上にアモルファスシリコン膜を形成する第1の工程と、単結晶シリコンの熱伝導率以上の熱伝導率を有し、かつ、所望のパターンに配置された貫通孔を有するマスクをアモルファスシリコン膜上に配置する第2の工程と、アモルファスシリコン膜およびマスクに熱プラズマジェットを照射しながら熱プラズマジェットを所望の方向に走査する第3の工程とを備える。
【発明の効果】
【0007】
この発明の実施の形態による結晶シリコンの製造方法においては、熱プラズマジェットは、マスクがアモルファスシリコン膜上に配置された状態で所望の方向に走査される。その結果、マスクに接するアモルファスシリコン膜の領域は、溶融結晶化せず、貫通孔を介して熱プラズマジェットに曝されるアモルファスシリコン膜の領域だけが溶融結晶化する。
【0008】
従って、結晶シリコンの位置を制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の実施の形態による結晶シリコンの製造に用いる半導体製造装置の構成図である。
【図2】図1に示す半導体製造装置の動作を説明するための概念図である。
【図3】プラズマ処理装置の概略図である。
【図4】この発明の実施の形態による結晶シリコンの製造方法を示す第1の工程図である。
【図5】この発明の実施の形態による結晶シリコンの製造方法を示す第2の工程図である。
【図6】熱プラズマジェットの照射による熱伝導を説明するための概念図である。
【図7】図1に示す半導体装置を用いて結晶化した結晶シリコンの光学顕微鏡像を示す図である。
【図8】溶融結晶化の概念図である。
【図9】マスクの斜視図である。
【図10】この発明の実施の形態による一般的な結晶シリコンの製造方法を示す工程図である。
【図11】この発明の実施の形態による結晶シリコンの製造方法を用いたTFTの製造方法を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0011】
図1は、この発明の実施の形態による結晶シリコンの製造に用いる半導体製造装置の構成図である。図1を参照して、半導体製造装置100は、架台1と、圧電素子2と、プラズマ源10と、測定装置30と、制御装置40と、XYステージ50とを備える。
【0012】
圧電素子2は、一方端が架台1に固定され、他方端がプラズマ源10に連結される。
【0013】
プラズマ源10は、陽極11と、絶縁体12と、導体13と、陰極14と、ガス導入管15と、給水管16と、排出管17と、電源回路20とを含む。
【0014】
陽極11は、概略、中空の円筒形状からなり、XYステージ50側に噴出口18を有する。また、陽極11は、その内部に中空部分19を有する。そして、陽極11は、例えば、熱伝導率が高い銅(Cu)からなる。
【0015】
絶縁体12は、陽極11と導体13との間に陽極11および導体13に接して配置される。そして、絶縁体12は、例えば、アルミナおよびセラミックス等からなる。
【0016】
導体13は、略十字形状を有する。そして、導体13のうち、水平方向DR1に配置された部分は、絶縁体12に接して配置される。また、導体13のうち、上下方向DR2に配置された部分は、陽極11の噴出口18の方向へ突出するとともに、一方端が尖っており、他方端が圧電素子2に連結されている。さらに、導体13は、陰極14を挿入するための孔を有する。そして、導体13は、例えば、Cuからなる。
【0017】
絶縁体12が陽極11および導体13に接するように配置されることによって、内部空間21が形成される。
【0018】
陰極14は、導体13に挿入されるとともに、一方端側が導体13から露出する。また、陰極14は、その一方端が噴出口18に向かって尖っている。そして、陰極14は、例えば、タングステン、タンタル、ルテニウム、およびジルコニウム等の熱陰極金属材料からなる。
【0019】
ガス導入管15は、その一方端側が陽極11を貫通して内部空間21に達するように陽極11に固定される。そして、ガス導入管15は、アルゴン(Ar)ガスを保持するガスボンベ(図示せず)に連結されている。給水管16は、その一方端側が陽極11を貫通して中空部分19に達するように陽極11に固定される。排出管17は、その一方端側が陽極11を貫通して中空部分19に達するように陽極11に固定される。
【0020】
噴出口18は、例えば、600μmφの直径を有する。電源回路20は、陽極11と陰極14との間に電気的に接続される。測定装置30は、その底面30Aが陽極11の底面11Aに一致するように陽極11の外周面に設置される。XYステージ50は、支持部材(図示せず)によって架台1に固定される。
【0021】
圧電素子2は、制御装置40から電圧が印加されると、上下方向DR2に伸縮し、プラズマ源10を上下方向DR2へ移動させる。
【0022】
プラズマ源10は、電源回路20から直流電圧が印加され、ガス導入口15からArガスが内部空間21へ供給されると、直流アーク放電によって熱プラズマジェットを発生する。そして、プラズマ源10は、その発生した熱プラズマジェットを噴出口18から放射する。
【0023】
ガス導入管15は、Arガスをガスボンベ(図示せず)からプラズマ源10の内部空間21へ供給する。この場合、内部空間21は、大気圧に設定される。
【0024】
給水管16は、冷却水を陽極11の中空部分19へ供給する。排出管17は、陽極11の中空部分19から冷却水を排出する。
【0025】
電源回路20は、陽極11がプラスになり、陰極14がマイナスになるように、直流電圧を陽極11−陰極14間に印加する。
【0026】
測定装置30は、制御装置40からの制御に従って、XYステージ50に設置された基板60と噴出口18との距離を測定する。より具体的には、測定装置30は、距離の測定を指示するための信号DSを制御装置40から受けると、レーザ光を出射する。出射されたレーザ光は、ハーフミラー(図示せず)によって2つに分割され、一方のレーザ光は、基板60に照射され、他方のレーザ光は、リファレンスに照射される。そして、一方のレーザ光は、基板60で反射されて測定装置30に到達する。また、他方のレーザ光は、リファレンスで反射されて測定装置30に到達する。測定装置30は、一方のレーザ光と他方のレーザ光とが測定装置30に到達するときに生じる干渉パターンを検出する。そして、測定装置30は、噴出口18と基板60との距離をLとすると、その検出した干渉パターンと距離Lとの関係に基づいて距離Lを算出する。そうすると、測定装置30は、その算出した距離Lを制御装置40へ出力する。
【0027】
制御装置40は、信号DSを測定装置30へ出力する。また、制御装置40は、距離Lを測定装置30から受け、その受けた距離Lに基づいて、噴出口18と基板60との距離が所望の距離に設定されるように、圧電素子2に電圧を印加する。
【0028】
半導体製造装置100においては、噴出口18と基板60との距離は、例えば、1mmに設定される。制御装置40は、測定装置30によって測定された距離Lが1mmになるように電圧を圧電素子2に印加する。
【0029】
半導体製造装置100は、プラズマ源10によって熱プラズマジェットを発生し、その発生した熱プラズマジェットを基板60上に形成されたアモルファスシリコン(a−Si)膜に照射することによって、a−Si膜を溶融結晶化する。
【0030】
半導体製造装置100における動作について説明する。図2は、図1に示す半導体製造装置100の動作を説明するための概念図である。
【0031】
図2を参照して、a−Si膜61が形成された基板60をXYステージ50に設置する。なお、a−Si:H膜61の膜厚は、例えば、50nmである。
【0032】
そして、a−Si膜61を溶融結晶化する場合、制御装置40は、測定装置30によって測定された距離Lが1mmになるように電圧を圧電素子2に印加する。これによって、噴出口18と基板60との距離が1mmに設定される。
【0033】
その後、ガス導入管15は、内部空間21の圧力が大気圧になるように、Arガスをガスボンベ(図示せず)からプラズマ源10の内部空間21へ供給する。この場合、Arガスの流量は、例えば、2.5〜3.2リットル/分である。また、給水管16は、冷却水を陽極11の中空部分19に供給するとともに、排出管17は、陽極11の中空部分19から冷却水を排出する。これによって、陽極11は、冷却される。
【0034】
引き続いて、電源回路20は、例えば、1.9〜2.1kWの直流電力を陽極11−陰極14間に印加する。そうすると、陰極14は、先端部から熱プラズマジェットTPJを発生し、その発生した熱プラズマジェットTPJを噴出口18を介してa−Si膜61に照射する。この場合、移動機構(図示せず)によってプラズマ源10を2600〜4000mm/sの速度で移動させる。
【0035】
その結果、a−Si膜61のうち、熱プラズマジェットTPJが照射された部分が溶融結晶化され、結晶シリコン611が形成される。この結晶シリコン611は、100μm以上の粒径を有する。
【0036】
図3は、プラズマ処理装置の概略図である。図3を参照して、プラズマ処理装置600は、石英管610と、反応室620と、基板ホルダー630と、ヒーター640と、配管650と、バルブ660と、アンテナ670と、マッチング回路680と、高周波電源690とを備える。
【0037】
石英管610は、10cmφの直径を有し、その一方端が反応室620内に挿入されるように固定される。反応室620は、中空の円筒形状からなり、上面620Aに石英管610の一方端を挿入するための開口部621を有し、側面620Bに排気口622を有する。そして、反応室620は、開口部621から石英管610の一方端が挿入されることによって、内部空間が石英管610の内部空間と連通する。従って、ポンプ(図示せず)によって反応室620および石英管610の内部の気体を排気口622を介して排気できる。
【0038】
基板ホルダー630は、反応室620の下面620C上に配置される。ヒーター640は、シリコンカーバイド(SiC)からなり、基板ホルダー630内に配置される。
【0039】
配管650は、バルブ660を介して石英管610の他方端に連結される。バルブ660は、配管650に装着される。アンテナ670は、基板ホルダー630上に設置された基板60から32cmの位置で石英管610の周囲を取り巻くように配置される。そして、アンテナ670は、その一方端がマッチング回路680に接続され、他方端が接地される。
【0040】
マッチング回路680は、アンテナ670の一方端と高周波電源690との間に接続される。高周波電源690は、マッチング回路680と、接地ノードとの間に接続される。
【0041】
ヒーター640は、基板ホルダー630を介して基板60を所定の温度に加熱する。配管650は、シラン(SiH4)ガスおよび水素(H2)ガス等をボンベ(図示せず)から石英管610内に導く。バルブ660は、SiH4ガスおよびH2ガス等を石英管610内へ供給し、またはSiH4ガスおよびH2ガス等の石英管610内への供給を遮断する。
【0042】
マッチング回路680は、高周波電源690から供給された高周波電力の高周波電源690側への反射を低くして高周波電力をアンテナ670へ供給する。高周波電源690は、例えば、60MHzの高周波電力をマッチング回路680を介してアンテナ670へ供給する。
【0043】
プラズマ処理装置600における処理動作について説明する。基板60が基板ホルダー630上に配置され、排気口622から反応室620および石英管610の真空引きが行なわれる。
【0044】
その後、バルブ660が開けられ、ボンベ(図示せず)から所定量のSiH4ガスが配管650を介して石英管610内へ導入される。そして、石英管610内の圧力が所定の圧力に達すると、高周波電源690は、60MHzの高周波電力をマッチング回路680を介してアンテナ670に供給する。この場合、マッチング回路680は、高周波電源690から供給された高周波電力の高周波電源690側への反射が最も低くなるように調整される。
【0045】
そうすると、石英管610内でプラズマ710が発生し、水素化アモルファスシリコン(a−Si:H)膜が基板60上に堆積される。
【0046】
a−Si:H膜の堆積が終了すると、高周波電源690がオフされ、バルブ660が閉じられて処理動作が終了する。
【0047】
図4および図5は、それぞれ、この発明の実施の形態による結晶シリコンの製造方法を示す第1および第2の工程図である。
【0048】
図4を参照して、結晶シリコンの製造が開始されると、石英からなる基板60を洗浄し、その洗浄した基板60をプラズマ処理装置600の基板ホルダー630上に配置する(工程(a))。
【0049】
そして、石英管610および反応室620内を排気口622から真空引きし、到達圧力が1×10−5Pa以下になると、ボンベ(図示せず)から5sccmのSiH4ガスを配管650を介して石英管610および反応室620内に導入し、石英管610および反応室620内の圧力を6.65Paに設定する。
【0050】
その後、高周波電源690は、30Wの高周波電力をマッチング回路680を介してアンテナ670に印加する。これによって、石英管610内にプラズマ710が発生し、a−Si:H膜110が基板60上に堆積される(工程(b))。この場合、a−Si:H膜110の膜厚は、例えば、100nmである。
【0051】
引き続いて、a−Si:H膜110/基板60を窒素(N2)ガス雰囲気中で450℃で1時間熱処理し、a−Si:H膜110中の水素を脱離する。これによって、a−Si:H膜110は、水素含有量が少ないa−Si膜61になる(工程(c))。
【0052】
図5を参照して、工程(c)の後、マスク120をa−Si膜61上に配置する(工程(d))。このマスク120は、例えば、525μmの厚みを有する単結晶シリコンからなり、貫通孔121を有する。貫通孔121は、長方形の平面形状を有する。長方形の短辺の長さ、即ち、基板60の平面方向DR3における貫通孔121の長さ(=貫通孔121の幅w)は、例えば、0.5mm以下である。また、長方形の長辺の長さ、即ち、図5の紙面に垂直な方向における貫通孔121の長さは、例えば、3〜4mmである。
【0053】
工程(d)の後、マスク120/a−Si膜61/基板60を半導体装置100のXYステージ50上に設置する。そして、上述した方法によって、噴出口18と基板60との距離を1mmに設定する。その後、2.5〜3.2リットル/分の流量のArガスをガス導入管15を介してプラズマ源10の内部空間21へ供給する。また、給水管16は、冷却水を陽極11の中空部分19に供給するとともに、排出管17は、陽極11の中空部分19から冷却水を排出する。引き続いて、電源回路20は、例えば、1.9〜2.1kWの直流電力を陽極11−陰極14間に印加する。
【0054】
そうすると、陰極14は、先端部から熱プラズマジェットTPJを発生し、その発生した熱プラズマジェットTPJを噴出口18を介してa−Si膜61およびマスク120に照射する。この場合、移動機構(図示せず)によってプラズマ源10を2600〜4000mm/sの速度で矢印122の方向に移動させる。即ち、貫通孔121の短辺方向に沿って熱プラズマジェットTPJを走査する(工程(e))。
【0055】
その結果、a−Si膜61が結晶化され、結晶シリコン611が製造される(工程(f))。これによって、結晶シリコンの製造が終了する。
【0056】
結晶シリコン611は、領域611A,611Bからなる。領域611Aは、a−Si膜が溶融結晶化した領域であり、領域611Bは、a−Si膜が固相結晶化した領域である。
【0057】
図6は、熱プラズマジェットの照射による熱伝導を説明するための概念図である。図6の(a)を参照して、熱プラズマジェットTPJがマスク120に照射されている場合、マスク120の構成材料である単結晶シリコンは、130W/m/Kの熱伝導率を有するため、熱プラズマジェットTPJの照射によってマスク120内で発生した熱は、マスク120の面内方向に伝導し、マスク120に接しているa−Si膜61の領域61Bには、伝導し難くく、a−Si膜61の領域61Bは、マスク120によって温度が上昇するが、溶融されない。
【0058】
一方、熱プラズマジェットTPJが貫通孔121を介してa−Si膜61に照射されている場合、a−Si膜61内に熱が発生し、a−Si膜61の領域61Aが溶融される。
【0059】
従って、a−Si膜61の領域61Aは、溶融結晶化され、a−Si膜61の領域61Bは、固相結晶化される。
【0060】
この発明の実施の形態においては、好ましくは、図6の(b)に示すマスク120Aを用いる。マスク120Aは、マスク120の周縁部を残して内側を一定の深さにエッチングした構成からなる。これによって、マスク120Aをa−Si膜61上に配置したとき、マスク120Aとa−Si膜61との間に隙間が発生する。その結果、熱プラズマジェットTPJをマスク120Aに照射したときに発生する熱がa−Si膜61に伝導するのをほぼ100%遮断できる。
【0061】
このように、マスク120を用いることによって、a−Si膜61において、熱を与える位置を制御できる。また、基板60への熱の投与を抑制できる。
【0062】
また、マスク120Aを用いることによって、a−Si膜61において、熱を与える位置を更に精密に制御できる。また、基板60への熱の投与を更に抑制できる。
【0063】
図7は、図1に示す半導体装置100を用いて結晶化した結晶シリコンの光学顕微鏡像を示す図である。
【0064】
図7において、(a)は、マスク120無しでa−Si膜を溶融結晶化したときの光学顕微鏡像を示し、(b)は、貫通孔121の幅wを0.5mmに設定したときの光学顕微鏡像を示し、(c)は、貫通孔121の幅wを0.1mmに設定したときの光学顕微鏡像を示す。
【0065】
図7の(a)を参照して、熱プラズマジェットTPJは、矢印131の方向へ走査された。その結果、領域132,134は、a−Si膜61が固相結晶化した領域であり、領域133は、a−Si膜61が溶融結晶化した領域である。
【0066】
領域132,134における結晶粒径は、20nm程度であり、領域133における粒径は、100〜200μmである。
【0067】
そして、領域133において、結晶成長の方向は、熱プラズマジェットTPJの走査方向に対して変化する。また、溶融結晶化した領域133においては、クラックが発生している。
【0068】
図7の(b)を参照して、熱プラズマジェットTPJは、矢印135の方向へ走査された。その結果、領域136,138は、a−Si膜61が固相結晶化した領域であり、領域137は、a−Si膜61が溶融結晶化した領域である。
【0069】
領域136,138における結晶粒径は、20nm程度であり、領域137における粒径は、100〜200μmである。
【0070】
そして、領域137において、結晶成長の方向は、貫通孔121の幅方向、即ち、熱プラズマジェットTPJの走査方向に対して揃っている。また、溶融結晶化した領域137においては、クラックが発生していない。
【0071】
図7の(c)を参照して、熱プラズマジェットTPJは、矢印139の方向へ走査された。その結果、領域140,142は、a−Si膜61が固相結晶化した領域であり、領域141は、a−Si膜61が溶融結晶化した領域である。
【0072】
領域140,142における結晶粒径は、20nm程度であり、領域141における粒径は、100〜200μmである。
【0073】
そして、領域141において、結晶成長の方向は、貫通孔121の幅方向、即ち、熱プラズマジェットTPJの走査方向に対して揃っている。また、溶融結晶化した領域141においては、クラックが発生していない。
【0074】
このように、マスク120を用いた場合には、結晶成長の方向が貫通孔121の幅方向に対して揃っている。即ち、マスク120を用いた場合、結晶成長の方向が熱プラズマジェットTPJの走査方向に対して揃っている((b),(c)参照)。そして、溶融結晶化した領域137,141においては、クラックが発生していない。また、貫通孔121の幅wを0.35〜0.5mmに設定した場合、溶融結晶化した領域では、貫通孔121の中心部分に149〜160μmの長距離結晶成長が確認された。
【0075】
従って、マスク120を用いてa−Si膜61を溶融結晶化することによって、結晶成長の方向を揃えることができるとともに、クラックの発生を防止できる。
【0076】
図8は、溶融結晶化の概念図である。図8の(a)を参照して、マスク120が無い場合、熱プラズマジェットTPJが矢印123の方向へ走査されると、瞬間的には、熱プラズマジェットTPJ1,TPJ2,TPJ3がa−Si膜61へ順次照射される。
【0077】
その結果、a−Si膜61の溶融領域の端部は、曲線k1〜k3によって規定される。従って、図7の(a)に示すように結晶成長の方向が熱プラズマジェットの走査方向に対して揃わなくなる。
【0078】
一方、マスク120を用いた場合、熱プラズマジェットTPJが矢印124の方向へ走査されると、瞬間的には、熱プラズマジェットTPJ1,TPJ2,TPJ3がa−Si膜61へ順次照射される((b)参照)。
【0079】
その結果、a−Si膜61の溶融領域の端部は、直線k4,k5によって規定される。従って、図7の(b),(c)に示すように結晶成長の方向が熱プラズマジェットの走査方向に対して揃う。
【0080】
この発明の実施の形態においては、貫通孔121の幅wは、熱プラズマジェットTPJの孔径よりも小さければ、どのような値であってもよい。貫通孔121の幅wが熱プラズマジェットTPJの孔径よりも小さければ、a−Si膜は、熱プラズマジェットTPJの走査方向において、全領域が溶融結晶化するからである。
【0081】
また、マスク120は、単結晶シリコンに限らず、金属からなっていてもよく、一般的には、130W/m/K以上の熱伝導率を有する材料であれば、どのような材料から成っていてもよい。
【0082】
更に、a−Si膜61は、熱CVD法によって形成されてもよい。熱CVD法は、材料ガス(SiH4ガス)の熱分解温度以上の温度を用いてa−Si膜を基板上に堆積する。そのため、水素がa−Si膜中へ殆ど取り込まれない。従って、熱CVD法によってa−Si膜を形成することによって、上述した水素を脱離する工程を省略できる。
【0083】
図9は、マスクの斜視図である。図9を参照して、マスク200は、上述したマスク120と同じ材料からなり、碁盤目状に配置された複数の貫通孔201を有する。貫通孔201は、上述した貫通孔121と同じ寸法を有する。
【0084】
方向DR4における貫通孔201の寸法は、方向DR5における貫通孔201の寸法よりも小さく、熱プラズマジェットTPJの孔径よりも小さい。従って、マスク200を用いてa−Si膜を溶融結晶化する場合、方向DR5において熱プラズマジェットTPJを一定の距離づつずらせながら、熱プラズマジェットTPJを矢印202〜204に示すように方向DR4に沿って走査する。
【0085】
これによって、大面積な基板上の所望の位置に結晶シリコンを碁盤目状に製造できる。
【0086】
従って、マスク200は、例えば、TFT(Thin Film Transisitor)をマトリックス状に形成する場合に好適である。
【0087】
また、複数の貫通孔201は、碁盤目状に配置されていなくてもよく、所望のパターンに従って配置されていてもよい。
【0088】
更に、マスク200に形成する貫通孔は、貫通孔201のように長方形の平面形状を有する貫通孔に限らず、平面形状の一部の寸法が熱プラズマジェットTPJの孔径よりも小さければ、任意の平面形状からなる貫通孔であってもよい。
【0089】
更に、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)において使用されている技術を用いて貫通孔を形成することによって、微細かつ精密な形状を有する貫通孔をマスク200に形成できる。その結果、局所的に熱を投与することができる。
【0090】
このように、マスク200の材料として単結晶シリコンを用いることによって、MEMSにおける技術を用いて貫通孔201を微細かつ精密な形状に加工できる。
【0091】
図10は、この発明の実施の形態による一般的な結晶シリコンの製造方法を示す工程図である。
【0092】
図10を参照して、まず、最初に、a−Si膜を基板60上に形成する(工程S1)。なお、a−Si膜を基板上に形成するとは、(i)a−Si:H膜を基板上に堆積し、その堆積したa−Si:H膜を熱処理して水素を脱離することによってa−Si膜を基板上に形成すること、(ii)最初から水素量の少ないa−Si膜を基板上に形成すること、の両方を含む。そして、a−Si:H膜は、プラズマCVD法等の各種の方法を用いて基板上に堆積されてもよく、a−Si膜は、熱CVD法等の各種の方法を用いて基板上に最初から形成されてもよい。
【0093】
工程S1の後、単結晶シリコンの熱伝導率以上の熱伝導率を有し、かつ、所望のパターンに配置された貫通孔を有するマスクをa−Si膜上に配置する(工程S2)。
【0094】
そして、a−Si膜およびマスクに熱プラズマジェットを照射しながら熱プラズマジェットを所望の方向に走査する(工程S3)。この場合、熱プラズマジェットの走査方向における貫通孔の寸法は、熱プラズマジェットの孔径よりも小さい。これによって、所望の位置に結晶シリコンを製造できる。
【0095】
このように、熱プラズマジェットの走査方向における貫通孔の寸法を熱プラズマジェットの孔径よりも小さく設定することによって、熱プラズマジェットの走査方向に対して結晶成長の方向を揃えることができる。
【0096】
図11は、この発明の実施の形態による結晶シリコンの製造方法を用いたTFTの製造方法を示す工程図である。
【0097】
図11を参照して、TFTの製造が開始されると、図4および図5に示す工程(a)〜(f)に従って、結晶シリコン611が基板60上に製造される(工程(a))。
【0098】
そして、リン(P)イオンが結晶シリコン611の領域611Bにイオン注入され(工程(b))、ソース電極621が領域611Aの左側に形成され、ドレイン電極622が領域611Aの右側に形成される(工程(c))。
【0099】
その後、例えば、SiH4ガスおよびN2Oガスを材料として用いたプラズマCVD法によって、SiO2膜を結晶シリコン611の全面に形成し、フォトリソグラフィおよびエッチングによって、ゲート酸化膜623を結晶シリコン611の領域611Aに接して形成する(工程(d))。
【0100】
引き続いて、ゲート電極624をゲート酸化膜623に接して形成する。これによって、TFTが完成する(工程(e))。
【0101】
このように、この発明の実施の形態による結晶シリコンの製造方法を用いてアモルファスシリコン膜の所望の位置を溶融結晶化することによって、基板60上の所望の位置にTFTを製造することができる。
【0102】
また、図9に示すマスク200を用いることによって、基板60上の所望の位置にTFTをマトリックス状に製造することができる。
【0103】
そして、上述した方法によって製造したTFTにおいて、260cm2/V・sの移動度が得られた。
【0104】
また、熱プラズマジェットTPJの孔径と同じ程度の面積を有するa−Si膜を形成し、その形成したa−Si膜を上述した方法によって溶融結晶化する。そして、その溶融結晶化した結晶シリコンをチャネル層に用いたTFTを作製した結果、480cm2/V・sの移動度が得られた。
【0105】
従って、この発明の実施の形態による結晶シリコンの製造方法は、石英基板等の単結晶シリコンと異なる異種基板上に高品質な結晶シリコンを形成できることが実証された。
【0106】
なお、上記においては、プラズマ源10の噴出口18の直径は、600μmφであると説明したが、この発明の実施の形態においては、これに限らず、噴出口18の直径は、1mmφ以下の範囲であればよい。
【0107】
更に、a−Si膜61を溶融結晶化するときの基板60と噴出口18との距離は、1mmに限らず、2mmよりも短ければよい。
【0108】
更に、内部空間21の圧力は、大気圧に限らず、0.1気圧〜10気圧程度の範囲であればよい。
【0109】
更に、基板60は、石英に限らず、通常のガラスおよび樹脂性のフィルム等であってもよい。
【0110】
更に、ノンドープのa−Si膜を溶融結晶化すると説明したが、この発明の実施の形態においては、これに限らず、ボロン(B)を含むp型a−Si膜またはPを含むn型a−Si膜を溶融結晶化してもよい。
【0111】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0112】
この発明は、結晶シリコンの製造方法に適用される。
【符号の説明】
【0113】
1 架台、2 圧電素子、10 プラズマ源、11 陽極、12,13 絶縁体、14陰極、15 ガス導入管、16 給水管、17 排出管、18 噴出口、19 中空部分、20 電源回路、21 内部空間、30 測定装置、40 制御装置、50 XYステージ、60 基板、61 a−Si膜、100 半導体製造装置、110 a−Si:H膜、120 マスク、121 貫通孔、600 プラズマ処理装置、610 石英管、611 結晶シリコン、611A,611B 領域、620 反応室、621 ソース電極、622 ドレイン電極、623 ゲート酸化膜、624 ゲート電極、630 基板ホルダー、640 ヒーター、650 配管、660 バルブ、670 アンテナ、680 マッチング回路、690 高周波電源。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にアモルファスシリコン膜を形成する第1の工程と、
単結晶シリコンの熱伝導率以上の熱伝導率を有し、かつ、所望のパターンに配置された貫通孔を有するマスクを前記アモルファスシリコン膜上に配置する第2の工程と、
前記アモルファスシリコン膜および前記マスクに熱プラズマジェットを照射しながら前記熱プラズマジェットを所望の方向に走査する第3の工程とを備える結晶シリコンの製造方法。
【請求項2】
前記所望の方向における前記貫通孔の寸法は、前記熱プラズマジェットの孔径よりも小さい、請求項1に記載の結晶シリコンの製造方法。
【請求項3】
前記マスクは、単結晶シリコンからなる、請求項1または請求項2に記載の結晶シリコンの製造方法。
【請求項4】
前記第1の工程は、
前記基板上に水素化アモルファスシリコン膜を堆積する第1のサブ工程と、
前記水素化アモルファスシリコン膜から水素を脱離して前記アモルファスシリコン膜を形成する第2のサブ工程とを含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の結晶シリコンの製造方法。
【請求項1】
基板上にアモルファスシリコン膜を形成する第1の工程と、
単結晶シリコンの熱伝導率以上の熱伝導率を有し、かつ、所望のパターンに配置された貫通孔を有するマスクを前記アモルファスシリコン膜上に配置する第2の工程と、
前記アモルファスシリコン膜および前記マスクに熱プラズマジェットを照射しながら前記熱プラズマジェットを所望の方向に走査する第3の工程とを備える結晶シリコンの製造方法。
【請求項2】
前記所望の方向における前記貫通孔の寸法は、前記熱プラズマジェットの孔径よりも小さい、請求項1に記載の結晶シリコンの製造方法。
【請求項3】
前記マスクは、単結晶シリコンからなる、請求項1または請求項2に記載の結晶シリコンの製造方法。
【請求項4】
前記第1の工程は、
前記基板上に水素化アモルファスシリコン膜を堆積する第1のサブ工程と、
前記水素化アモルファスシリコン膜から水素を脱離して前記アモルファスシリコン膜を形成する第2のサブ工程とを含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の結晶シリコンの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図7】
【公開番号】特開2013−21144(P2013−21144A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153503(P2011−153503)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【Fターム(参考)】
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