説明

結晶形およびその使用

本発明は、末梢μオピオイド受容体アンタゴニストとして有用な、(R)−N−メチルナルトレキソンの新しい形態およびその組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
オピオイドは、進行癌およびその他の末期疾患の患者において苦痛を和らげるために広く用いられている。オピオイドは、中枢神経系のオピオイド受容体を活性化して痛みを和らげる、麻酔性の薬物である。しかしオピオイドはまた、中枢神経系の外側の受容体にも作用して、便秘、悪心、嘔吐、尿滞留、および激しいかゆみを含む副作用を引き起こす。最も顕著なのは胃腸管(GI)での作用であり、オピオイドは胃内容排出および腸の推進性運動活性(propulsive motor activity)を阻害し、これにより腸管通過速度を低下させ、便秘を引き起こす。痛みに対するオピオイドの有効性は、生じる副作用のためにしばしば制限され、この副作用は患者を弱らせ、患者にしばしばオピオイド鎮痛薬の使用を中止させる。
【背景技術】
【0002】
鎮痛性オピオイドが誘発する副作用に加えて、ある研究では、内因性オピオイド化合物および受容体はまた、動物およびヒトの両方において胃腸(GI)管の活動にも影響を与え、腸運動および液体の粘膜輸送の正常な調節に関与する可能性があることが示唆された。(Koch, T. R, et al, Digestive Diseases and Sciences 1991, 36, 712-728; Schuller, A.G.P., et al., Society of Neuroscience Abstracts 1998, 24, 524, Reisine, T., and Pasternak, G., Goodman & Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics Ninth Edition 1996, 521-555 and Bagnol, D., et al., Regul. Pept. 1993, 47, 259-273)。したがって、内因性化合物および/または受容体活性の異常な生理学的レベルは、腸の機能障害を導き得る。
【0003】
例えば、外科手術、特に腹部の手術を受けた患者はしばしば、手術(または術後)腸閉塞(イレウス)と呼ばれる特定の腸機能障害に苦しみ、これは、自然のオピオイドレベルの変化によって引き起こされ得る。同様に、出産後間もない女性は一般に産後イレウスを患うが、これは出産のストレスの結果としての、類似する自然のオピオイド変化により引き起こされると考えられている。術後または産後イレウスに関連する胃腸障害は典型的には3〜5日持続し、いくつかの重篤なケースでは1週間以上持続する。手術後患者へのオピオイド鎮痛薬の投与は、現在ではほぼ一般的に行われる実践であるが、腸機能障害を悪化させる可能性があり、これによって正常な腸機能の回復が遅れ、入院日数が長引き、医療費の増加を招く。
【0004】
ナロキソン、ナルトレキソン、およびナルメフェンなどのオピオイド受容体アンタゴニストは、オピオイドの望ましくない末梢性効果を打ち消す手段として検討されてきた。しかしこれらの剤は、末梢オピオイド受容体に作用するのみでなく、中枢神経系部位にも作用し、そのためオピオイドの利点である鎮痛効果を逆転させたり、またはオピオイド退薬症状を引き起こす。オピオイド誘発性副作用の制御における使用に対する好ましいアプローチには、血液脳関門を容易に通過しない、末梢オピオイド受容体アンタゴニスト化合物の投与が挙げられる。例えば、末梢μオピオイド受容体アンタゴニスト化合物であるメチルナルトレキソン、および関連化合物が、患者におけるオピオイド誘発性の副作用を抑えるための使用について開示されている(例えば、便秘、痒み、悪心、および/または嘔吐)。例えば、米国特許第5,972,954号、第5,102,887号、第4,861,781号、および第4,719,215号;およびYuan, C. -S. et al. Drug and Alcohol Dependence 1998, 52, 161を参照のこと。同様に、末梢性に選択的なピペリジン−N−アルキルカルボキシレートおよび3,4−ジメチル−4−アリール−ピペリジンオピオイド受容体アンタゴニストが、オピオイド誘発性の副作用である便秘、悪心または嘔吐ならびに過敏性腸症候群および特発性便秘の処置に有用であると記載されている。例えば、米国特許第5,250,542号、第5,434,171号、第5,159,081号、および第5,270,328号参照。
上述の任意の疾患に対する処置が必要な患者への投与に適した形態の、末梢μオピオイド受容体アンタゴニスト化合物を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0005】
概要
本発明は、末梢μオピオイド受容体アンタゴニストである化合物1の、固体形態を提供する:
【化1】

式中、化合物は窒素について(R)立体配置である。本発明はまた、かかる固体形態を含む医薬組成物および製剤も提供する。化合物1、および本発明のその固体形態は、オピオイド投与に関連する副作用の処置、予防、改善、遅延または重篤度および/もしくは発生率の低減に有用であり、該副作用としては例えば以下が挙げられる:胃腸障害(例えば腸運動の阻害、便秘、GI括約筋収縮、悪心、嘔吐(嘔吐)、胆管痙攣、オピオイド腸機能障害、疝痛(colic))、身体違和感、痒み、尿滞留、呼吸抑制、乳頭収縮、心血管作用、胸壁硬直および咳の抑制、ストレス反応の抑制、および麻酔性鎮痛薬投与に関連する免疫抑制など、またはこれらの組合せ。提供される化合物の他の使用は以下に示す。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1A】図1AはA形態の粉末X線回折パターンを示すグラフである。
【図1B】図1Bは150±1度Kの温度で収集した単結晶データから計算された、A形態の粉末X線回折パターンを示すグラフである。
【図2】図2はA形態のDSCおよびTGを重ねて示すグラフである。
【図3】図3は非晶質の化合物1の粉末X線回折パターンを示すグラフである。
【図4】図4はB形態の粉末X線回折パターンを示すグラフである。
【図5】図5はB形態のDSCおよびTGを重ねて示すグラフである。
【0007】
【図6】図6はD形態の粉末X線回折パターンを示すグラフである。
【図7】図7はD形態のDSCおよびTGを重ねて示すグラフである。
【図8】図8は150±1度Kの温度で収集した単結晶データから計算された、C形態の粉末X線回折パターンを示すグラフである。
【図9】図9はA形態+C形態(好ましい配向)の混合物の粉末X線回折パターンを示すグラフである。
【0008】
発明の態様の詳細な説明
発明のある側面の一般的説明
国際特許出願公開番号WO2006/127899号には、化合物1、(R)−N−メチルナルトレキソン臭化物が記載されており、これは次の構造:
【化2】

を有し、ここで化合物は窒素について(R)立体配置である。本発明のある態様において、化合物1の少なくとも約99.6%、99.7%、99.8%、99.85%、99.9%、または99.95%は、窒素について(R)立体配置である。試料中に存在する(R)−N−メチルナルトレキソン臭化物の量を、同じ試料中に存在する(S)−N−メチルナルトレキソン臭化物の量と比較して決定するための方法は、WO2006/127899に詳細に記載されており、これの全体は本明細書に参照として組み込まれる。他の態様において、化合物1は0.15%以下の(S)−N−メチルナルトレキソン臭化物を含む。さらに他の態様において、化合物1は、(S)−N−メチルナルトレキソン臭化物を0.10%または0.05%以下含有する。
【0009】
「(R)−MNTX」としても知られている化合物1は、治療モデルにおいて末梢μオピオイド受容体アンタゴニスト活性を示す。したがって化合物1は、オピオイド鎮痛療法に関連する副作用(例えば胃腸作用(例えば胃内容排出の遅延、GI管運動の変化)など)を含む、オピオイド活性の望ましくない副作用に拮抗するのに有用である。本発明のある態様において、化合物1は、オピオイド投与に関連する副作用の、処置、予防、改善、遅延、または重篤度および/もしくは発生の低減に対して有用であり、該副作用としては例えば以下が挙げられる:胃腸障害(例えば腸運動の阻害、便秘、GI括約筋収縮、悪心、嘔吐(嘔吐)、胆管痙攣、オピオイド腸機能障害、疝痛)、身体違和感、痒み、尿滞留、呼吸抑制、乳頭収縮、心血管作用、胸壁硬直および咳の抑制、ストレス反応の抑制、および麻酔性鎮痛薬投与に関連する免疫抑制など、またはこれらの組合せ。化合物1および本明細書に記載のその形態の他の使用は以下に示す。
【0010】
化合物1の固体形態:
化合物1は、種々の固体形態で存在可能であることが見出されている。かかる形態は、同質異像(polymorph)として知られるニート結晶形(neat crystal form)を含む。かかる固体形態はまた、溶媒和物、水和物、および非晶質を含む。化合物1の全てのかかる固体形態は、本発明により意図される。ある態様において、本発明は、化合物1を、同質異像、溶媒和物、水和物、および非晶質の化合物1から選択される1または2種以上の固体形態の混合物として提供する。
【0011】
本明細書において、用語「同質異像」とは、特定の化学的実体により実現される、異なる結晶構造を意味する。具体的には、同質異像は、特定の化学化合物が1種より多い構造的配置によって結晶化できる場合に生じる。本明細書において、用語「溶媒和物」は、化学量論的または非化学量論的な量の溶媒、または溶媒の混合物が、結晶構造に組み込まれている結晶形を意味する。同様に、用語「水和物」とは、化学量論的または非化学量論的な量の水が、結晶構造に組み込まれている結晶形を意味する。
【0012】
本発明のある態様において、化合物1は結晶質固体として提供される。ある態様において、結晶質固体は、実質的に非晶質の化合物1を含まない。本明細書において、用語「実質的に非晶質の化合物1を含まない」とは、固体が非晶質の化合物1の相当量を含まないことを意味する。本発明のある態様において、用語「実質的に非晶質の化合物1を含まない」とは、固体中の化合物1の少なくとも約95重量%が結晶形であることを意味する。本発明のさらに他の態様において、用語「実質的に非晶質の化合物1を含まない」とは、固体中の化合物1の少なくとも約99重量%が結晶形であることを意味する。
【0013】
本発明のある態様において、化合物1はニート結晶形として提供され、したがっていかなる水または溶媒も結晶構造内に含まれない。化合物1は、少なくとも1種のニート結晶形として、または同質異像として存在することができ、これは本明細書においてA形態と呼ばれる。
ある態様において、本発明はA形態の化合物1を提供する。他の態様において、本発明は、その粉末X線回折(「XRPD」)パターンのピークを約20.06度の2θにおいて有することを特徴とする、A形態の化合物1を提供する。本明細書において、用語「約」とは、本明細書で引用する任意の2θの度数値の参照において用いる場合には、示された値±0.2度の2θを意味する。
【0014】
ある態様において、2θの度数値は、本明細書に記載する場合、小数第2位まで報告する。他の態様において、2θの度数値は、本明細書に記載する場合、小数第1位まで報告する。さらに他の態様において、2θの度数値は、本明細書に記載する場合、小数位なしで報告する。用語「約」を本明細書で引用する任意の2θの度数値を参照して用いる場合、この用語は、値が報告される小数位に従って、示された値±0.2度の2θを意味することが理解される。
他の態様によれば、A形態の化合物1は、その計算されたXRPDパターンにおいて1または2以上のピークを、150±1°Kの温度で収集した単結晶データについて、約13.6、13.9、16.85、17.35、23、23.85、24.7、26.75、および34.75度の2θにおけるものから選択して有することを特徴とする。他の態様において、A形態の化合物1は、その計算された粉末X線回折パターンにおいて2もしくは3以上の、または3もしくは4以上のピークを、150±1°Kの温度で収集した単結晶データについて、約13.6、13.9、16.85、17.35、23、23.85、24.7、26.75、および34.75度の2θにおけるものから選択して有することを特徴とする。さらに他の態様において、A形態の化合物1は、その計算されたXRPDパターンにおいて実質的に全てのピークを、150±1°Kの温度で収集した単結晶データについて、約13.6、13.9、16.85、17.35、23、23.85、24.7、26.75、および34.75度の2θにおけるものから選択して有することを特徴とする。
【0015】
他の態様において、A形態の化合物1は、そのXRPDパターンにおいて下の表1Aに挙げた実質的に全てのピークを有することを特徴とする。
表1A.A形態のXRPDピーク
【表1】

【0016】
さらに他の態様において、A形態の化合物1は、そのXRPDパターンにおいて下の表1Bに挙げた実質的に全てのピークを有することを特徴とする。
表1B.A形態のXRPDピーク
【表2】

【0017】
本発明のある態様において、A形態の化合物1は、そのXRPDパターンにおいて、150±1°Kの温度で収集した単結晶データから計算された、下の表1Cに挙げた実質的に全てのピークを有することを特徴とする。
表1C.150±1°KにおいてA形態の単結晶について計算されたXRPDピーク
【表3】

【表4】

【0018】
1つの側面によれば、A形態の化合物1は、図1Aに示すものと実質的に同様のXRPDパターンを有する。本明細書において、句「実質的に全てのピーク」とは、化合物がそのXRPDにおいて、挙げられたピークの少なくとも約80%を示すことを意味する。他の態様において、句「実質的に全てのピーク」とは、化合物がそのXRPDにおいて、挙げられたピークの少なくとも約85、90、95、97、98または99%を示すことを意味する。他の態様によれば、A形態の化合物1は、150±1°Kの温度で収集した単結晶データから計算された場合に、図1Bに示すものと実質的に同様のXRPDパターンを有する。他の態様において、A形態は、図2に示すものと実質的に同様のDSCパターンを有することを特徴とする。
【0019】
本発明のある態様において、A形態は粉末X線回折における代表的なピークを特徴とし、これらのピークは、B形態、C形態、およびD形態の標準調製物についてのX線回折パターン結果との比較により決定される。いくつかの態様において、A形態は粉末X線回折における代表的なピークを特徴とし、これらのピークは約1〜約30度の2θの範囲内にあり、B形態、C形態、およびD形態の標準調製物についてのX線回折パターン結果との比較により決定される。A形態の化合物1を調製するための方法は、以下の例の節に記載する。
【0020】
他の態様によれば、本発明は、化合物1を非晶質固体として提供する。非晶質の化合物1の粉末X線回パターンを図3に示す。非晶質固体は当業者によく知られており、特に凍結乾燥、溶解、および超臨界流体からの沈殿などの方法により一般に調製される。非晶質の化合物1の調製方法は、以下の例の節に記載する。
【0021】
ある態様において、本発明は、結晶質化合物1を実質的に有さない非晶質の化合物1を提供する。本明細書において、用語「結晶質化合物1を実質的に有さない」とは、化合物が相当量の結晶質化合物1を含まないことを意味する。結晶質化合物1は、本明細書に記載のニート結晶形、溶媒和物および水和物、または非晶質の化合物1の調製および/または単離から生じる化合物1の他の結晶形を含む。本発明のある態様において、存在する化合物1の少なくとも約95重量%は、非晶質化合物である。本発明のさらにある態様において、存在する化合物1の少なくとも約99重量%は、非晶質化合物である。
【0022】
他の態様において、本発明は、非晶質の化合物1と、化合物1の少なくとも1つの結晶形とを含む組成物を提供する。化合物1のかかる結晶形は、本明細書に記載のニート結晶形、溶媒和物および水和物、または非晶質の化合物1の調製および/または単離から生じる化合物1の他の結晶形を含む。ある態様において、本発明は、非晶質の化合物1と、本明細書に記載の化合物1の少なくとも1種の結晶形とを含む組成物を提供する。他の態様において、本発明は、非晶質の化合物1と、A形態、B形態、C形態またはD形態から選択される少なくとも1つの結晶形の化合物1とを含む組成物を提供する。
化合物1は、少なくとも2種の水和物形態または水和物−溶媒和物混合形態において存在することができることが見出された。かかる形態の2つを、本明細書においてB形態およびD形態と呼ぶ。
【0023】
ある態様において、本発明はB形態の化合物1を提供する。ある態様において、本発明は、B形態の化合物1を、他の形態の化合物1を実質的に含むことなく提供する。他の態様において、B形態は、化合物1の水和物−メタノラート混合物である。1つの態様によれば、B形態は、そのXRPDパターンにおいて1または2以上のピークを、約7.9、8.18、20.3、21.44、24.11および25.12度の2θにおけるものから選択して有することを特徴とする。ある態様において、B形態は、そのXRPDパターンにおいて2もしくは3以上、または3もしくは4以上のピークを、約7.9、8.18、20.3、21.44、24.11および25.12度の2θにおけるものから選択して有することを特徴とする。他の態様において、B形態は、そのXRPDパターンにおいて実質的に全てのピークを、約7.9、8.18、20.3、21.44、24.11および25.12度の2θにおけるものから選択して有することを特徴とする。
ある態様において、B形態の化合物1は、そのXRPDパターンにおいて次の表2Aに挙げた実質的に全てのピークを有することを特徴とする。
【0024】
表2A.B形態のXRPDピーク
【表5】

【0025】
さらに他の態様において、B形態の化合物1は、そのXRPDパターンにおいて次の表2Bに挙げた実質的に全てのピークを有することを特徴とする。
表2B.B形態のXRPDピーク
【表6】

【0026】
1つの態様によれば、B形態の化合物1は、図4に示すものと実質的に同様のXRPDパターンを有する。他の態様において、本発明は、図5に示すものと実質的に同様のDSCパターンを有する、B形態の化合物1を提供する。
本発明のある態様において、B形態は粉末X線回折における代表的なピークを特徴とし、これらのピークは、A形態、C形態、およびD形態の標準調製物についてのX線回折パターン結果との比較により決定される。いくつかの態様において、B形態は粉末X線回折における代表的なピークを特徴とし、これらのピークは、約1〜約30度の2θの範囲内にあり、A形態、C形態、およびD形態の標準調製物についてのX線回折パターン結果との比較により決定される。B形態の化合物1を調製するための方法は、以下の例の節に記載する。
【0027】
ある態様において、本発明は、D形態の化合物1を提供する。他の態様において、本発明は、D形態の化合物1を、他の形態の化合物1を実質的に含むことなく提供する。1つの態様によれば、D形態は、そのXRPDパターンにおいて1または2以上のピークを、約7.66、8.42、14.79および21.06度の2θにおけるものから選択して有することを特徴とする。ある態様において、D形態は、そのXRPDパターンにおいて2もしくは3以上、または3もしくは4以上のピークを、約7.66、8.42、14.79および21.06度の2θにおけるものから選択して有することを特徴とする。他の態様において、D形態は、そのXRPDパターンにおいて実質的に全てのピークを、約7.66、8.42、14.79および21.06度の2θにおけるものから選択して有することを特徴とする。
【0028】
ある態様において、D形態の化合物1は、そのXRPDパターンにおいて次の表3Aに挙げた実質的に全てのピークを有することを特徴とする。
表3A.D形態のXRPDピーク
【表7】

【0029】
さらに他の態様において、D形態の化合物1は、そのXRPDパターンにおいて次の表3Bに挙げた実質的に全てのピークを有することを特徴とする。
表3B.D形態のXRPDピーク
【表8】

【0030】
1つの側面によれば、D形態の化合物1は、図6に示すものと実質的に同様のXRPDパターンを有する。他の態様において、本発明は、図7に示すものと実質的に同様のDSCパターンを有する、D形態の化合物1を提供する。
本発明のある態様において、D形態は粉末X線回折における代表的なピークを特徴とし、これらのピークは、A形態、B形態、およびC形態の標準調製物についてのX線回折パターン結果との比較により決定される。いくつかの態様において、D形態は粉末X線回折における代表的なピークを特徴とし、これらのピークは、約1〜約30度の2θの範囲内にあり、A形態、B形態、およびC形態の標準調製物についてのX線回折パターン結果との比較により決定される。D形態の化合物1を調製するための方法は、以下の例の節に記載する。
【0031】
化合物1は溶媒和結晶形で存在できることが見出された。ある態様において本発明は、本明細書においてC形態と呼ぶ、化合物1の結晶質n−プロパノラートを提供する。ある態様において本発明は、C形態の化合物1を、他の形態の化合物1を実質的に含むことなく提供する。他の態様によれば、C形態の化合物1は、その計算されたXRPDパターンにおいて1または2以上のピークを、150±1°Kの温度で収集した単結晶データについて、約10.8、12.8、14.8、15.9、16.25、18.5、19.15、22、23.6、24.25、25.7、27.5、28.1、28.9、31.5、および31.75度の2θにおけるものから選択して有することを特徴とする。ある態様において、C形態の化合物1は、その計算されたXRPDパターンにおいて2もしくは3以上、または3もしくは4以上のピークを、150±1°Kの温度で収集した単結晶データについて、約10.8、12.8、14.8、15.9、16.25、18.5、19.15、22、23.6、24.25、25.7、27.5、28.1、28.9、31.5、および31.75度の2θにおけるものから選択して有することを特徴とする。他の態様において、C形態の化合物1は、その計算されたXRPDパターンにおいて実質的に全てのピークを、150±1°Kの温度で収集した単結晶データについて、約10.8、12.8、14.8、15.9、16.25、18.5、19.15、22、23.6、24.25、25.7、27.5、28.1、28.9、31.5、および31.75度の2θにおけるものから選択して有することを特徴とする。
【0032】
本発明のある態様において、C形態の化合物1は、そのXRPDパターンにおいて、下の表4Aに挙げた、150±1°Kの温度で収集した単結晶データから計算された実質的に全てのピークを有することを特徴とする。
表4A.150±1°KにおいてC形態の単結晶について計算されたXRPDピーク
【表9】

【表10】

【0033】
他の態様において、本発明は、A形態とC形態の化合物1の混合物を含む組成物を提供する。他の態様によれば、A形態とC形態の化合物1(好ましい配向)の混合物のXRPDパターンは、10.58および22.74度の2θにおけるピークの1つまたは両方を有する。当業者は、「好ましい配向」の指定は、結晶がXRPDデータ収集の過程において整列する傾向を有する場合に起こる現象を意味することを認識する。この現象はしばしば、当業者が認識するように、XRPDパターンでのより大きなピークの形成をもたらす。本発明のある態様において、A形態とC形態の化合物1(好ましい配向)の混合物のXRPDパターンは、約10.58、11.56、13.88、15.42、20.82、21.86、22.74、23.2、24.74、および26.96度の2θにおける実質的に全てのピークを有する。
【0034】
他の態様において、A形態とC形態の化合物1(好ましい配向)の混合物のXRPDパターンは、次の表4Bに挙げたそのXRPDパターンの実質的に全てのピークを有する。
表4B.A形態とC形態(好ましい配向)のXRPDピーク
【表11】

【表12】

【0035】
1つの態様によれば、C形態の化合物1は、150±1°Kの温度で収集した単結晶データから計算された、図8に示すものと実質的に同様のXRPDパターンを有する。他の態様によれば、A形態とC形態の化合物1(好ましい配向)の混合物は、図9に示すものと実質的に同様のXRPDパターンを有する。
本発明のある態様において、C形態は粉末X線回折における代表的なピークを特徴とし、これらのピークは、A形態、B形態、およびD形態の標準調製物についてのX線回折パターン結果との比較により決定される。いくつかの態様において、C形態は粉末X線回折における代表的なピークを特徴とし、これらのピークは、約1〜約30度の2θの範囲内にあり、A形態、B形態、およびD形態の標準調製物についてのX線回折パターン結果との比較により決定される。C形態の化合物1を調製するための方法は、以下の例の節に記載する。
【0036】
ある態様において、本発明は、化合物1の1種または2種以上の追加の固体形態を含む、A形態の化合物1を提供する。他の態様において、本発明は、化合物1の1種または2種以上の水和物、化合物1の溶媒和物、または非晶質化合物2を含む、A形態の化合物1を提供する。さらに他の態様において、本発明は、1種または2種以上のC形態、D形態、または非晶質体、および任意にB形態を含む、A形態の化合物1を提供する。したがって、本発明の他の側面は、化合物1組成物を提供する。
本明細書において、用語「化合物1組成物」とは、A形態、C形態、D形態、および非晶質の化合物1の少なくとも2種、および任意にB形態を含む、組成物を意味する。他の態様において、化合物1組成物は、B形態、C形態、D形態、および非晶質の化合物1の少なくとも2種を含む。本発明のある態様において、化合物1組成物は、A形態およびD形態の化合物1を含む。さらに他の態様において、化合物1組成物は、A形態および非晶質の化合物1を含む。
【0037】
薬学的に許容し得る組成物
上述のように、本発明は、末梢μオピオイド受容体アンタゴニストとして有用であり、オピオイド誘発性の副作用の処置に関する臨床関連モデルにおいて効用を示す、化合物1の新しい形態を提供する。本発明の他の側面により、薬学的に許容し得る組成物であって、本明細書に記載の化合物1の発明形態または化合物1組成物、および任意に、薬学的に許容し得る担体、アジュバント、またはビヒクルを含む、前記組成物が提供される。本発明のある態様において、かかる薬学的に許容し得る組成物は任意に、1または2以上の追加の治療剤をさらに含む。
【0038】
上述のように、本発明の薬学的に許容し得る組成物は、薬学的に許容し得る担体、アジュバント、またはビヒクルを追加して含み、これらは本明細書において、任意の全ての溶媒、希釈剤、または他の液体ビヒクル、分散液または懸濁液補助剤、界面活性剤、等張剤、増粘剤または乳化剤、保存剤、固体結合剤、潤滑剤などを、所望の特定の剤形に適するように含む。Remington's Pharmaceutical Sciences, Sixteenth Edition, E. W. Martin (Mack Publishing Co., Easton, Pa., 1980)には、薬学的に許容し得る組成物を製剤化するのに用いる、種々の担体、およびこれらの調製のための既知の技術が開示されている。任意の従来の担体媒体が、本明細書に記載の化合物1の発明形態または化合物1組成物と不適合である場合、すなわち、望ましくない生物学的効果を生成することにより、または薬学的に許容し得る組成物の任意の他の成分(単数または複数)と有害性の様式で相互作用することにより、不適合である場合を除き、それらの使用は、本発明の範囲内であることが意図される。薬学的に許容し得る担体として作用できる材料のいくつかの例は、限定することなく、以下を含む:イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、緩衝物質例えばリン酸塩、グリシン、ソルビン酸、またはソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩類または電解質、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ろう、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロック重合体、羊毛脂、ラクトース、グルコースおよびスクロースなどの糖類;コーンスターチおよびジャガイモデンプンなどのデンプン;セルロースおよびその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロース;粉末トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;ココアバターおよび座剤ワックスなどの賦形剤;ピーナツ油、綿実油などの油;ベニバナ油;ゴマ油;オリーブ油;コーン油および大豆油;グリコール;例えばプロピレングリコールまたはポリエチレングリコール;オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル;寒天;緩衝剤例えば水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム;アルギン酸;パイロジェン非含有水;等張食塩水;リンガー溶液;エチルアルコール、およびリン酸緩衝液、ならびに他の非毒性適合性潤滑剤、例えばラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウム、ならびに着色剤、放出剤、被覆剤、発汗剤、香味剤および芳香剤、保存剤および抗酸化剤もまた、製剤化実施者の判断により、組成物に含むことができる。
【0039】
定義
本明細書において、化合物または薬学的に許容し得る組成物の「有効量」は、所望の治療および/または予防効果を達成可能である。「有効量」は、化合物または化合物を含有する組成物の少なくとも最小量であって、末梢μオピオイド受容体の調節に関連する疾患の1または2以上の症状を予防、改善、低減、遅延するかまたはその重篤度を軽減するのに十分な量、および/または、オピオイド鎮痛療法に関連する副作用(例えば胃腸障害(例えば運動不全型便秘など)、悪心、嘔吐(例えば吐き気)、等)を予防、改善、遅延するかまたはその重篤度を軽減するのに十分な量である。化合物または化合物を含有する組成物の「有効量」とは、迷走性内因性末梢オピオイドまたはμオピオイド受容体活性に関連する1または2以上の症状および疾患(例えば、特発性便秘、腸閉塞など)を、予防、改善、低減、遅延または軽減するのに十分である。
【0040】
用語「製剤」とは、化合物1の発明形態または化合物1組成物を、対象への投与のために1または2以上の賦形剤と組み合わせて含む、調製物を意味する。一般に特定の医薬添加剤を、それぞれの用途のために、化合物1の発明形態または化合物1組成物の最適な放出、分散および活性の発現を実現することを目的として、選択する。
本明細書において、用語「対象」は哺乳類を意味し、ヒトおよび動物の対象、例えば家畜(例えばウマ、イヌ、ネコなど)を含む。
本明細書において、用語「用量単位形態」とは、処置する患者に適切な、物理的に分離された剤の単位を意味する。
【0041】
本発明による化合物1の発明形態または化合物1組成物を、末梢μオピオイド受容体の調節に関連する疾患の処置またはその重篤度を緩和するのに有効な、任意の量および任意の投与経路を用いて投与することができる。正確な必要量は、対象により、対象の種、年齢および一般状態、感染の重篤度、特定の剤、その投与形態などに応じて異なる。しかし、化合物1の発明形態または化合物1組成物の合計1日使用量は、健全な医学的判断の範囲内で、担当医師により決定されることが理解される。任意の特定の患者または生物の、具体的な有効用量レベルは、処置する疾患および疾患の重篤度;用いる特定の活性剤の活性;用いる特定の組成物;患者の年齢、体重、一般健康状態、性別、食事;投与の時間、投与経路、および用いる特定の活性剤の排泄速度;処置の期間;用いる特定の化合物と組み合わせて用いる、または同時に用いる薬剤、および医学分野においてよく知られた類似の要因などを含む、種々の要因に依存する。
【0042】
本発明の薬学的に許容し得る組成物は、ヒトおよび他の動物に、経口的、鼻腔内、直腸内、非経口的、嚢内、膣内、腹腔内、局所的(粉末、軟膏または滴下物として)、口腔内などにより、処置される感染症の重篤度に依存して投与することができる。ある態様において、化合物1の発明形態または化合物1組成物は、経口または非経口的に、1日当たり対象の体重当たり約0.01mg/kg〜約50mg/kgの用量レベルで、好ましくは約1mg/kg〜約25mg/kgで、1日に1または2回以上投与して、所望の治療効果を得ることができる。
【0043】
経口または鼻腔内投与用の液体剤形には、限定はしないが、薬学的に許容し得る乳濁液、マイクロエマルション、溶液、懸濁液、エアロゾル、ゲル、シロップ、およりエリキシル剤が含まれる化合物1の発明形態または化合物1組成物に加えて、液体剤形は、当分野で一般に用いられる不活性希釈剤を含んでよく、例えば、水または他の溶媒、溶解剤、および乳化剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングルコール、ジメチルホルムアミド、油類(特に綿実油、落花生油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドルフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、およびこれらの混合物などである。不活性の希釈剤に加えて、経口組成物はまた、湿潤剤、乳化剤、分散剤、甘味剤、香味剤、および芳香剤などのアジュバントも含むことができる。エアロゾル製剤は典型的に、生理学的に許容し得る水性または非水性の溶媒中に活性物質の溶液または細かな懸濁物を含み、通常は密封容器内に、無菌形態の単一または複数用量で提供され、該容器は、噴霧装置と共に用いるための、カートリッジまたは詰め替え品の形態をとることができる。代替的に、密封容器は、容器内の内容物がなくなれば廃棄される、計量バルブ付き単一用量の鼻吸入器またはエアロゾルディスペンサーなどの、単体分注器であってもよい。剤形がエアロゾルディスペンサーを含む場合、これは薬学的に許容し得る推進剤を含有する。エアロゾル剤形はまた、ポンプ式噴霧機の形態をとることもできる。
【0044】
注射用製剤、例えば無菌の注射用水性または油性懸濁液は、既知の技術にしたがって好適な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を用いて製剤化することができる。無菌の注射用製剤はまた、非毒性の非経口的に許容し得る希釈剤または溶媒中の、例えば1,3−ブタンジオール中の、無菌の注射用溶液、懸濁液、または乳濁液であってもよい。用いることのできる許容し得るビヒクルおよび溶媒としては、水、リンガー溶液、U.S.P.および等張塩化ナトリウム溶液である。さらに、無菌の固定油も、溶媒または懸濁媒体として便利に用いられる。この目的で、任意の無刺激性の固定油を用いることができ、合成モノ−またはジグリセリドを含む。さらに、オレイン酸などの脂肪酸も、注射物の製造に用いられる。
【0045】
注射用製剤は、例えば、細菌保持フィルターを通したろ過により、または、無菌の水もしくは他の無菌の注射用媒体中に、使用前に溶解または分散させることのできる無菌の固体組成物の形態で、無菌の剤を組み込むことにより、滅菌することができる。
有利なことには、本明細書に記載の非晶質の化合物1は増強された水溶性を有する。したがって、非晶質の化合物1は、静脈内および筋肉内送達に有用である。ある態様において、本発明はまた、静脈内および筋肉内送達用の注射製剤に関する。
【0046】
本発明の化合物1の発明形態または化合物1組成物の効果を延長するために、皮下注射または筋肉内注射からの化合物の吸収を遅延させることが、多くの場合に望ましい。これは、水溶性の低い結晶または非結晶材料の液体懸濁物を用いることにより、実現可能である。化合物の吸収率はその溶解速度に依存し、これは次に結晶サイズおよび結晶形に依存し得る。代替的に、非経口投与される化合物形態の吸収の遅延は、化合物を油性ビヒクルに溶解または懸濁させることにより達成される。注射用デポ(蓄積)形態は、ポリアクチド−ポリグリコリドなどの生物分解性ポリマー中に、化合物のマイクロカプセルマトリクスを形成することにより、作製される。化合物のポリマーに対する割合および、用いる特定のポリマーの性質に応じて、化合物放出速度を制御することができる。他の生物分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)およびポリ(アンヒドリド)を含む。デポ注射製剤はまた、化合物を身体組織に適合的なリポソームまたはマイクロエマルションに閉じ込めることによっても調製される。
【0047】
典型的な非経口組成物は、無菌の水性担体または、非水性もしくは非経口的に許容し得る油中の、例えばポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、レシチン、ラッカセイ油またはゴマ油中の、化合物の溶液または懸濁液からなる。
直腸および膣内投与用の組成物は、座剤、ペッサリー、膣錠(vaginal tab)、発泡体、または浣腸剤の形態が便利である。直腸および膣内投与用の組成物は、好ましくは座剤であって、これは、化合物1の発明形態または化合物1組成物を、好適な無刺激性の賦形剤または担体、例えばココアバター、ポリエチレングリコールまたは座剤用ワックスと混合して調製でき、これらは周囲温度においては固体であるが、体温では液体であり、したがって直腸または膣腔で溶解して活性化合物を放出するものである。
【0048】
経口投与用の固体の剤形は、カプセル、錠剤、ピル、散剤、および顆粒を含む。かかる固体の剤形において、化合物1の発明形態または化合物1組成物を、少なくとも1種の不活性な薬学的に許容し得る賦形剤または担体、例えばクエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウムと、および/または、a)充填剤または増量剤、例えばデンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、およびケイ酸、b)結合剤、例えばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、スクロース、およびアカシア、c)湿潤薬、例えばグリセロール、d)崩壊剤、例えば寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、ある種のケイ酸塩、および炭酸ナトリウム、e)溶液遅延剤、例えばパラフィン、f)吸収促進剤、例えば四級アンモニウム塩、g)湿潤剤、例えばセチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロール、h)吸収剤、例えばカオリンおよびベントナイト粘土、およびi)潤滑剤、例えばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびこれらの混合物と、混合する。カプセル、錠剤およびピルの場合、剤形はまた、緩衝剤を含んでもよい。
【0049】
口腔内および舌下での投与に好適な組成物は、錠剤、ロゼンジおよびパステル剤を含み、ここで活性成分は、糖およびアカシア、トラガカント、またはゼラチンおよびグリセリンなどの担体と共に製剤化される。
同様の種類の固体の組成物はまた、充填剤として、軟質および硬質ゼラチンカプセル中で、ラクトースまたは乳糖および高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を用いて、使用することができる。錠剤、糖衣剤、カプセル、ピル、および顆粒の固体剤形は、腸溶コーティングおよび薬学製剤分野においてよく知られた他のコーティングなどの、コーティングおよび殻と共に調製することができる。これらは任意に乳白剤を含んでよく、また1もしくは2以上の活性成分を、腸管のある部分においてのみ、またはある部分に優先的に、任意には遅延した様式で、放出する組成物であってよい。用いることのできる包埋組成物は、高分子物質およびワックスを含む。類似の種類の固体組成物もまた、軟質および硬質ゼラチンカプセルにおける充填剤として、ラクトースまたは乳糖および高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を用いて、使用することができる。
【0050】
化合物1の発明形態または化合物1組成物はまた、上記のような1または2以上の賦形剤と共にマイクロカプセル化形態にすることができる。錠剤、糖衣剤、カプセル、ピル、および顆粒の固体剤形は、腸溶コーティング、放出制御コーティング、および薬学製剤分野においてよく知られた他のコーティングなどの、コーティングおよび殻と共に調製することができる。かかる固体剤形において、化合物1の発明形態または化合物1組成物は、少なくとも1種の不活性希釈剤、例えばスクロース、ラクトースまたはデンプンなどと混合してよい。かかる剤形はまた、通常の実践のように、不活性希釈剤以外の追加の物質、例えば錠剤化潤滑剤および他の錠剤化助剤、例えばステアリン酸マグネシウムおよび微結晶性セルロースなども含んでよい。カプセル、錠剤およびピルの場合、剤形はまた、緩衝剤を含んでもよい。これらは任意に乳白剤を含んでよく、また1もしくは2以上の活性成分を、腸管のある部分においてのみ、またはある部分に優先的に、任意には遅延した様式で、放出する組成物であってよい。用いることのできる包埋組成物は、高分子物質およびワックスを含む。
【0051】
経口投与用の組成物は、活性成分が消化管を通過するときにこれを分解から保護するように設計することができ、例えば錠剤またはカプセル上の製剤の外部コーティングによる。
他の態様においては、化合物1の発明形態または化合物1組成物は、延長された(または「遅延」または「持続性」の)放出組成物において提供される。この遅延放出組成物は、化合物1の発明形態または化合物1組成物を、遅延放出成分と組み合わせて含む。この組成物は、化合物1の発明形態または化合物1組成物の、下部消化管、例えば小腸、大腸、結腸および/または直腸への標的化放出を可能とする。ある態様において、化合物1の発明形態または化合物1組成物を含む遅延放出組成物はさらに、酢酸フタル酸セルロースおよび他のフタル酸塩(例えば酢酸フタル酸ポリビニル、メタクリレート(オイドラギット))などの腸溶コーティングまたはpH依存性コーティングを含む。代替的に、遅延放出組成物は、小腸および/または結腸への、pH感受性メタクリレートコーティング、pH感受性重合体ミクロスフェア、または加水分解により分解される重合体の提供による、制御放出を提供する。遅延放出組成物は、疎水性またはゲル化賦形剤またはコーティングを用いて製剤化することができる。結腸送達は、アミロースまたはペクチンなどの細菌酵素により消化されるコーティングにより、pH依存性ポリマーにより、時間と共に膨張するヒドロゲルプラグ(Pulsincap)により、時間依存性ヒドロゲルコーティング、および/または、アゾ芳香結合コーティングに結合したアクリル酸により、さらに提供することができる:
【0052】
ある態様において、本発明の遅延放出組成物は、ヒプロメロース、微結晶セルロース、および潤滑剤を含む。化合物1の発明形態または化合物1組成物、ヒプロメロースおよび微結晶セルロースの混合物は、経口投与用の錠剤またはカプセルに製剤化されてよい。ある態様において、混合物は顆粒化し、錠剤に押圧する。
他の態様において、本発明の遅延放出組成物は、複数微粒子製剤において提供される。化合物1の発明形態または化合物1組成物と好適なポリマーの混合物を、顆粒化してペレットを形成し、これを被覆する。ある態様において、ペレットは非機能性コーティングで密封被覆する。他の態様において、ペレットは最初に非機能性コーティングで密封被覆し、次に機能性コーティングで被覆する。
【0053】
本明細書において、用語「非機能性コーティング」とは、薬剤の放出速度に影響しないコーティングである。非機能性コーティングの例としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロースまたはポリビニルアルコールが挙げられる。ある態様において、非機能性コーティングは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびポリエチレングリコールを含有する、Opadry(登録商標)Clearである。
本明細書において、用語「機能性コーティング」とは、剤形からの薬剤の放出速度に影響するコーティングである。機能性コーティングの例としては、エチルセルロースおよびポリメタクリレート誘導体(オイドラギット)を含む。
【0054】
本発明の化合物の局所または経皮投与用の剤形は、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ジェル、粉末、溶液、スプレー、吸入薬またはパッチを含む。活性成分は、無菌条件下で薬学的に許容し得る担体および、必要に応じて任意の必要な保存剤または緩衝液と混合する。眼製剤、点耳剤、および点眼剤も、本発明の範囲内であることが意図される。さらに本発明は、経皮パッチの使用も意図され、これは、化合物の身体への制御送達を提供するという、追加の利点を有する。かかる剤形は、化合物を適切な媒体中に溶解または分散させることにより、作製することができる。吸収促進剤もまた、化合物の皮膚にわたる流動を増加させるために用いることができる。速度は、速度制御膜を提供することにより、または化合物をポリマーマトリクスもしくはゲルに分散させることにより、制御可能である。
本組成物は、化合物1の発明形態または化合物1組成物を、投与方法に依存して、重量で0.1%〜99%(w/w)、好ましくは0.1%〜60%(w/w)、より好ましくは0.2%〜20%(w/w)、および最も好ましくは0.25%〜12%(w/w)、含有することができる。
【0055】
混合製品および混合投与
ある態様において、化合物1の発明形態または化合物1組成物は、本明細書に記載の1または2以上の疾患を処置するために、それのみで投与することができ、または代替的に、本明細書に記載の1または2以上の疾患を処置するのに有用な、1または2以上の他の活性剤を組み合わせて(同時に、または順番に)、投与してもよい。したがって、本発明の組成物またはその製剤は、1または2以上の活性剤と同時に、その前に、またはそれに続いて、投与することができる。
ある態様において、本発明の組成物は、化合物1の発明形態または化合物1組成物に加えて、1または2以上の他の活性剤であって、化合物1の発明形態または化合物1組成物ではないものを含む。ある態様において、本発明は、化合物1の発明形態または化合物1組成物および少なくとも1種の追加の活性剤を送達する製剤を提供する。
【0056】
いくつかの態様において、本発明の製剤は、オピオイドおよび化合物1の発明形態または化合物1組成物の両方を含む。オピオイドおよび化合物1の発明形態または化合物1組成物の両方を含む、かかる混合製品は、痛みの軽減およびオピオイド関連副作用(例えば胃腸効果(例えば胃内容排出の遅延、GI管運動の変化)など)の最小化の両方を可能とするであろう。
【0057】
鎮痛処置に有用なオピオイドは当分野で知られている。例えば、オピオイド化合物は、限定はしないが以下を含む:アルフェンタニル、アニレリジン、アシマドリン、ブレマゾシン、ブルプレノルフィン、ブトルファノール、コデイン、デゾシン、ジアセチルモルヒネ(ヘロイン)、ジヒドロコデイン、ジフェノキシラート、エチルモルヒネ、フェドトジン、フェンタニル、フナルトレキサミン、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、レバロルファン、酢酸レボメタジル、レボルファノール、ロペラミド、メペリジン(ペチジン)、メタドン、モルヒネ、モルヒネ−6−グルコロニド、ナルブフィン、ナロルフィン、ニコモルヒネ、オピウム、オキシコドン、オキシモルホン、パパベレタム、ペンタゾシン、プロピラン、プロポキシフェン、レミフェンタニル、スフェンタニル、チリジン、トリメブチン、およびトラマドール。いくつかの態様において、オピオイドは、以下から選択される少なくとも1種のオピオイドである:アルフェンタニル、ブプレノルフィン、ブトルファノール、コデイン、デゾシン、ジヒドロコデイン、フェンタニル、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、レボルファノール、メペリジン(ペチジン)、メタドン、モルヒネ、ナルブフィン、ニコモルヒネ、オキシコドン、オキシモルホン、パパベレタム、ペンタゾシン、プロピラン、プロポキシフェン、スフェンタニル、および/またはトラマドール。本発明のある態様において、オピオイドは、モルヒネ、コデイン、オキシコドン、ヒドロコドン、ジヒドロコデイン、プロポキシフェン、フェンタニル、トラマドール、およびこれらの混合物から選択される。本発明のある態様において、オピオイドは、モルヒネ、コデイン、オキシコデイン、ヒドロコデイン、ジヒドロコデイン、プロポキシフェン、フェンタニル、トラマドール、およびこれらの混合物から選択される。特定の態様において、オピオイドはロペラミドである。特別な態様において、オピオイドは、ブトルファノールなどの混合アゴニストである。いくつかの態様において、対象は、1種より多いオピオイドを、例えばモルヒネおよびヘロイン、またはメタドンおよびヘロインを投与される。
【0058】
本発明の混合組成物中に存在する、追加の活性剤(単数または複数)の量は、典型的には、その活性剤を唯一の治療剤として含む組成物中で通常投与される量を超えない。本発明のある態様において、追加の活性剤の量は、その化合物を唯一の治療剤として含む組成物中に通常存在する量の、約50%〜100%である。
ある態様において、本発明の製剤はまた、胃腸障害の従来療法と併用して、および/または組み合わせて用いて、便秘および腸機能障害の改善を支援することができる。例えば、従来療法には、腸管の機能的刺激、便軟化剤、緩下薬(例えば、ジフェニルメタン緩下剤、瀉下性緩下剤、浸透圧性緩下剤、塩類緩下剤など)、膨張性剤および膨張性緩下剤、潤滑剤、静脈からの水分補給、および経鼻胃減圧などが挙げられるが、これに限定されない。
【0059】
本発明の製剤の使用およびキット
上述のように、本発明は、オピオイド鎮痛療法の望ましくない副作用(例えば胃腸効果(例えば胃内容排出の遅延、GI管運動の変化)など))に拮抗するのに有用な、化合物1の発明形態または化合物1組成物、およびその薬学的に許容し得る組成物および製剤を提供する。さらに、化合物1の発明形態または化合物1組成物、およびその薬学的に許容し得る組成物および製剤は、μオピオイド受容体への結合により改善される疾患状態を有する対象を処置するために、またはμオピオイド受容体系の一時的な抑制が望ましい任意の処置(例えば、腸閉塞など)において、用いることができる。本発明のある態様において、製剤の使用方法は、ヒト対象におけるものである。
【0060】
したがって、化合物1の発明形態または化合物1組成物、またはその薬学的に許容し得る組成物および製剤は、オピオイドの使用に関連する副作用の処置、予防、改善、遅延または低減に有用であり、該副作用としては、例えば以下が挙げられる:胃腸障害(例えば、腸運動の阻害、便秘、GI括約筋収縮、悪心、嘔吐(嘔吐)、胆管痙攣、オピオイド腸機能障害、コリック)、身体違和感、痒み、尿滞留、呼吸抑制、乳頭収縮、心血管作用、胸壁硬直および咳の抑制、ストレス反応の抑制、および麻酔性鎮痛薬投与に関連する免疫抑制など、またはこれらの組合せ。したがって、化合物1の発明形態または化合物1組成物、またはその薬学的に許容し得る組成物および製剤の使用は、オピオイドを投与されている対象のクオリティ・オブ・ライフの観点から、また慢性の便秘から生じる合併症、例えば痔、食欲減退、粘膜損傷、敗血症、結腸癌リスク、および心筋梗塞などを軽減させるために、有用である。
【0061】
いくつかの態様において、化合物1の発明形態または化合物1組成物、およびその薬学的に許容し得る組成物および製剤は、急性オピオイド投与を受ける対象への投与に有用である。ある態様において、提供される製剤は、術後胃腸障害を患う患者への投与に有用である。
他の態様において、化合物1の発明形態または化合物1組成物、およびその薬学的に許容し得る組成物および製剤はまた、慢性オピオイド投与を受ける対象への投与に有用である(例えば、AIDS患者、癌患者、心血管患者など、オピオイド療法を受けている末期患者;疼痛管理のための慢性オピオイド療法を受けている対象;オピオイドの退薬の維持のためのオピオイド療法を受けている対象)。いくつかの態様において、対象は、慢性疼痛管理のためにオピオイドを用いる対象である。いくつかの態様において、対象は、末期患者である。他の態様において、対象は、オピオイド退薬維持療法を受けている人である。
【0062】
化合物1の発明形態または化合物1組成物、およびその薬学的に許容し得る組成物および製剤の、代替的または追加の使用は、オピオイド使用の作用を処置、低減、抑制または予防するためであり、前記オピオイドの使用には、例えば内皮細胞(例えば血管内皮細胞)の異常な移動または増殖、血管新生の増加、および日和見性病原菌(例えば緑膿菌)からの致死因子産生の増加が含まれる。本明細書に記載の式I、II、もしくはIIIの化合物または他の化合物、およびその薬学的に許容し得る組成物および製剤の、追加の有利な使用は、オピオイド誘発性免疫抑制の処置、血管新生の阻害、血管増殖の阻害、疼痛の処置、炎症性腸症候群などの炎症状態の処置、感染症および筋骨格系の疾患、例えば骨粗しょう症、関節炎、骨炎、骨膜炎、筋疾患の処置、および自己免疫疾患の処置を含む。
【0063】
ある態様において、化合物1の発明形態または化合物1組成物、およびその薬学的に許容し得る組成物および製剤は、胃腸障害を予防する、抑制する、低減する、遅延する、緩和するまたは処置するための方法において用いることができ、前記胃腸障害としては以下を含むがこれに限定しない:過敏性腸症候群、オピオイド誘発性腸機能障害、結腸炎、術後または産後イレウス、悪心および/または嘔吐、胃運動および胃内容排出の低下、胃、および小腸および/または大腸の推進運動(propulsion)の抑制、非推進性部分収縮(non-propulsive segmental contraction)の振幅の増加、オッディ括約筋収縮、肛門括約筋緊張の増加、直腸膨張を伴う反射性弛緩の低下、胃、胆管、膵臓または腸の分泌の低下、腸内容物からの水吸収の増加、胃食道逆流、胃不全麻痺、痙攣、膨張、腹部または上胃部の痛みおよび不快感、便秘、特発性便秘、腹部手術後(例えば、結腸切除術、右半結腸切除術、左半結腸切除術、横断結腸切除術、結腸切除テイクダウン(colectomy takedown)、低位前方切除術))の術後胃腸障害、および経口投与された医薬または栄養物質の遅延吸収。
【0064】
化合物1の発明形態または化合物1組成物、およびその薬学的に許容し得る組成物および製剤の提供される形態は、血管新生を含む癌、免疫抑制、鎌状赤血球貧血症、血管創傷、および網膜症を含む状態の処置に、炎症関連疾患(例えば過敏性腸症候群)、免疫抑制、慢性炎症の処置にも、有用である。
さらなる態様において、化合物1の発明形態または化合物1組成物、およびその薬学的に許容し得る組成物および製剤の使用の、獣医学的用途(例えば、ウマ、イヌ、ネコなどの家畜の処置)が提供される。したがって、提供される製剤の、上述のヒト対象に対して記載されたものと同様の、獣医学的用途における使用が意図される。例えば、ウマの胃腸運動の阻害、例えば疝痛および便秘などは、ウマにとって致命的となり得る。疝痛を患ったウマが苦しむ痛みは、死を誘発するショックをもたらし、一方長期の便秘もウマの死の原因となる。末梢オピオイド受容体アンタゴニストによるウマの処置は、例えば2005年1月20日に発行された米国特許公報第20050124657号に記載されている。
【0065】
化合物1の発明形態または化合物1組成物、およびその薬学的に許容し得る組成物および製剤は、併用療法においても用いることができ、すなわち、化合物1の発明形態または化合物1組成物、およびその薬学的に許容し得る組成物および製剤は、1または2以上の他の所望の療法または医療処置と、同時に、その前に、またはそれに続いて、投与可能であることが理解される。併用レジメンにおいて用いる特定の併用療法(治療または手順)では、所望の治療および/または手順の適合性、および達成すべき所望の治療効果を考慮する。用いる療法は、同一の疾患に対して所望の効果を達成してもよく(例えば製剤は、同じ疾患の処置に用いる他の化合物と同時に投与してよい)、または、これらは異なる効果を達成してもよい(例えば任意の副作用の制御)。本明細書において、特定の疾患または状態を処置または予防するために通常投与される、追加の治療化合物は、「処置される疾患または状態に適切である」と知られているものである。
【0066】
他の態様において、化合物1の発明形態または化合物1組成物、およびその薬学的に許容し得る組成物および製剤、および単位用量形態は、医薬の製造に有用であり、該医薬としてはオピオイド使用の副作用(例えば、胃腸副作用(例えば腸運動の抑制、GI括約筋収縮、便秘)、悪心、嘔吐(嘔吐)、身体違和感、痒みなど)またはこれらの組合せの処置において有用な医薬を含むが、これに限定しない。化合物1の発明形態または化合物1組成物、およびその薬学的に許容し得る組成物および製剤は、急性オピオイド療法を受けている患者(例えば急性オピオイド投与を受けている、術後胃腸障害を患う患者)、オピオイドを慢性的に使用している対象(例えば、AIDS患者、癌患者、心血管患者などのオピオイド療法を受けている末期患者;疼痛管理のための慢性オピオイド療法を受けている対象;オピオイドの退薬の維持のためのオピオイド療法を受けている対象)の処置に有用な、医薬の製造のために有用である。さらにまた、疼痛の処置、炎症性腸症候群などの炎症状態の処置、感染症の処置、骨粗しょう症、関節炎、骨炎、骨膜炎、筋疾患(ミオパシー)などの筋骨格系の疾患の処置、自己免疫疾患および免疫抑制の処置、腹部外科手術(例えば、結腸切除術(例えば、右半結腸切除術、左半結腸切除術、横断結腸切除術、結腸切除テイクダウン、低位前方切除術))後の術後胃腸障害、特発性便秘、および腸閉塞(例えば、術後腸閉塞、産後イレウス)の治療、ならびに血管新生、慢性炎症性および/または慢性疼痛を伴う癌、鎌状赤血球貧血症、血管創傷、および網膜症などの疾患の処置に有用な医薬の製造にも、有用である。
【0067】
本発明によりさらに包含されるのは、化合物1の発明形態または化合物1組成物、またはその薬学的に許容し得る組成物および製剤、ならびに容器(例えばフォイルまたはプラスチックパッケージ、または他の好適な容器)を含む医薬パックおよび/またはキットである。かかるキットには任意に、使用のための指示書もさらに提供される。
本明細書に記載の本発明をより完全に理解するために、以下の例を示す。これらの例は説明目的のみであり、いかなる様式においても本発明を限定するものとみなされるべきではないことが理解される。
本発明のそれぞれの側面の全ての特徴は、変更すべきところは変更して、他の全ての側面に応用される。
【0068】
一般手順
化合物1は、国際特許出願公開第WO2006/127899号に詳細に記載されている方法に従って調製され、この文献の全体は、本明細書に参照として組み込まれる。
粉末X線回折(XRPD):
粉末X線回折(XRPD)解析は、Shimadzu XRD-6000粉末X線回折計を用い、CuKα線を用いて行った。装置には、長く高精度焦点のX線管が装備されている。管の電圧およびアンペア数は、それぞれ40kVおよび40mAに設定した。発散および散乱スリットは1°に設定し、受信スリット(receiving slit)は0.15mmに設定した。回折された電磁波は、NaIシンチレーション検出器により検出した。θ〜2θの連続走査を、3°/分(0.4秒/0.02°ステップ)で、2.5〜40°の2θについて行った。シリコン標準を分析して、装置の配列をチェックした。データはXRD-6100/7000 v.5.0を用いて収集および解析した。試料は、これをアルミニウムホルダー内にシリコンインサートと共に配置することにより、解析用に調製した。
【0069】
XRPDパターン解析:
粉末X線回折(XRPD)解析は、120°の2θ範囲を有するCPS(曲線部分高感受性)検出器を備えたInel XRG-3000回折計を用いて行った。実時間データは、0.03°の2θの分解能にてCu−Kα線を用いて収集した。管の電圧およびアンペア数は、それぞれ40kVおよび30mAに設定した。モノクロメータースリットは、5mm×160μmまたは2mm×160μmに設定した。パターンは2.5〜40°の2θを表示した。試料は、これらを薄壁ガラス毛細管内に充填して解析用に調製した。各毛細管をゴニオメーターヘッドに搭載し、これをモーター駆動してデータ取得時に毛細管をスピンさせた。試料は5分間または10分間解析した。装置の較正は、シリコンの参照標準を用いて行った。
【0070】
XRPDパターン収集:
XRPDパターンは、Bruker D-8 Discover回折計およびBrukerのGeneral Area Diffraction Detection System (GADDS、v.4.1.20)を用いて行った。Cu−Kα線の入射ビームは、高精度焦点管(40kV、40mA)、ゲーベルミラー、および0.5mmの二重ピンホールコリメータを用いて生成した。試料標本は毛細管内に充填し、変換ステージに固定した。ビデオカメラおよびレーザーを用いて、目的領域を透過幾何配置の入射ビームと交差するよう配置した。入射ビームを走査して、配向統計量を最適化した。ビームストップを用いて、低角度での入射ビームからの空気散乱を最小化した。回折パターンを、試料から15cmの位置に置いたHi-Star領域検出器を用いて収集し、GADDSを用いて処理した。回折パターンのGADDS画像の強度を、0.04°の2θのステップサイズを用いて統合した。統合したパターンは、回折強度を2θの関数として表示する。解析の前に、シリコン標準を解析してSi111のピーク位置を確認した。XRPDピークのリストは、Pattern Matchソフトウェア、version 2.1.1を用いて作成した。
【0071】
示差走査熱量測定(「DSC」):
示差走査熱量測定を、TA Instruments示差走査熱量計2920を用いて行った。試料をアルミニウムDSCパンに入れ、重量を正確に記録した。パンに蓋をかぶせてそのまま放置した。試料細胞を窒素パージ下、10℃/分の割合で加熱し、最終温度を250または300℃とした。インジウム金属を較正標準として用いた。記録した温度は、最大転移におけるものである。
【0072】
熱重量分析(「TG」):
熱重量分析を、TA Instruments 2950熱重量分析計を用いて行った。各試料をアルミニウム試料パンに入れ、TG炉に挿入した。炉は、窒素下で10℃/分の割合で加熱し、最終温度を350℃とした。ニッケルおよびアルメルOを、較正標準として用いた。
溶液1DH NMR分光法:
溶液H NMRスペクトルを、周囲温度でVarian UNITYINOVA-400分光計にて399.796MHzのHラーモア周波数で取得した。試料はDMSO−dに溶解した。スペクトルは、8.2μsのHパルス幅、2.50秒の取得時間、走査間の遅延5秒、スペクトル幅6400Hzで32000データ点、および40の共同追加走査で取得した。自由誘発遅延(FID)を、Varian VNMR 6.1Cソフトウェアにて131072点および0.2Hzの指数線拡大因子を用いて処理して、信号対雑音比を改善した。不完全に重水素化されたDMSOからの残留ピークは、およそ2.50ppmにあった。約3.3ppmでの比較的広いピークは水によるものである。スペクトルは、0.0ppmでの内部テトラメチルシラン(TMS)を参照した。
【0073】
例1
A形態の調製
化合物1(54.7mg)を2,2,2−トリフルオロエタノール(2mL)に溶解し、溶液を0.2μmのナイロンフィルターを通して20mLバイアル中にろ過した。20mLバイアルを、5mLの酢酸エチルを含む100mLのガラスの広口ビン内部に置いた。20mLバイアルは蓋をせず、広口ビンは蓋をして、蒸気の拡散を生じさせた。4日後、溶液中に単結晶が観察された。
150°Kにおける単斜晶細胞パラメータ(monoclinic cell parameter)および計算された容積は以下である:a=7.9013(3)Å、b=12.7337(9)Å、c=9.4247(7)Å、α=90.00°、β=98.868(4)°、γ=90.00°、V=936.91(10)Å、ここで各値は±1.5である。A形態の化合物1について、式量はZ=2で435.35g/molであり、そのため密度の計算値は1.543gcm−3である。スペース基は、キラルスペース基であるP21(no.4)と決定された。A形態の化合物1の単結晶は、室温でインデックスされ、単位細胞パラメータは次の表5に概略を示す。
【0074】
表5.A形態の単位細胞データ
【表13】

【0075】
例2
B形態の調製
化合物1(52.8mg)をメタノール(35mL)に音波破砕しつつ溶解して、透明な溶液を得た。溶液を0.2μmのナイロンフィルター(Whatman)を通してろ過し、回転蒸発器を用いて蒸発させた(周囲温度浴を用いた)。試料が目視的に乾燥した後、試料を回転蒸発器に約1時間静置した。ニードル(needle)およびブレード(blade)を有する複屈折の球晶(spherulites)を含む白色固体を得た。蒸発を約45℃で行った場合に、A形態のXRPDパターンおよび追加ピークを観察した。
【0076】
例3
C形態の調製
化合物1(321.5mg)をTFE(4.28mL)に音波破砕しつつ溶解した。透明な溶液を得た。この溶液を、0.2μmのナイロンフィルター(Whatman)を通して透明な20mLバイアル中にろ過した。ろ過した溶液の500μLアリコートを、1ドラムのバイアルに分取した。このバイアルに、アリコート(500μL)の1−プロパノールを撹拌しつつ分注して、全部で3mLを加えた。透明な溶液を得た。溶液を周囲条件で約1時間静置した。試料は、溶液中に懸濁した非常に少量の沈殿物を含むことが観察された。これを次に冷蔵庫に入れた。固体の無色のスペック(speck)を含む透明な溶液が5日後に得られた。溶液をピペットで取り出して廃棄し、固体を周囲条件で一晩乾燥させた。複屈折5角形のプレート(plate)を含有する試料を、単結晶X線解析に供した。
【0077】
単斜晶細胞パラメータ(monoclinic cell parameter)および計算された容積は以下である:a=7.7724(6)Å、b=15.2539(6)Å、c=9.7329(6)Å、α=90.00°、β=91.899(3)°、γ=90.00°、V=1153.29(12)Å、ここで各値は±1.5である。化合物1の式の重量はZ=2で496.45g/molであり、そのため結晶構造の密度計算値は1.430gcm−3である。スペース基はP21(no.4)と決定され、これはキラルスペース基である。C形態の単位細胞パラメータは、次の表6に概略を示す。
表6.C形態の単位細胞データ
【表14】

【0078】
例4
D形態の調製
非晶質の化合物1をメタノール(濃度約5mg/mL)に溶解した。透明な溶液を得た。この溶液を、0.2μmのナイロンフィルター(Whatman)を通してろ過した。酢酸エチルを、酢酸エチル:メタノールの比率4:1で素早く加えることにより、D形態の沈殿が生じた。得られた白色固体は、未知の形態で複屈折ではないようであった。エチル酢酸を同じ溶媒比率でよりゆっくり加えた実験により、透明溶液を得た。溶液のゆっくりとした蒸発により、細いニードルの複屈折球晶を含む白色固体を得た。酢酸エチルをトルエンで置き換えた高速濃縮実験においても、大きな複屈折ニードルを含む白色固体を得た。
【0079】
例5
非晶質の化合物1の調製
非晶質の化合物1を、水溶液から凍結乾燥により調製した。循環DSC実験を非晶質の化合物1について実施して、ガラス転移温度を約23℃と決定した。
【0080】
例6
化合物の多形スクリーニング
本明細書に記載の化合物1の形態を、多形スクリーンによって同定した。このスクリーンにおいて、化合物1を種々の溶媒および条件下で結晶または沈殿を生じさせた。このスクリーンの結果を下の表7〜13にまとめた。これらの表は、用いた溶媒および条件、得られた形態(XRPDにより決定)、および晶癖の記載を示す。これらの表において、条件は、スラリー、FE、SC、FD、CP、RE、またはSEとして指定した。これらの用語の各々は以下に詳細に定義する。
本明細書において、用語「衝撃沈殿」(「CP」)とは、化合物1の飽和溶液を種々の溶媒中に調製し、これを0.2μmのナイロンフィルターを通してオープンバイアル中にろ過する方法を意味する。種々の抗溶媒のアリコートを撹拌しつつ分取して、沈殿を生じさせた。いくつかのケースにおいては、試料は冷蔵庫または冷凍庫に入れて、沈殿を促進した。固体は、溶媒をピペットで取り出して、固体を周囲条件下で空気乾燥させることにより、解析前に収集した。
【0081】
本明細書において、用語「凍結乾燥」(「FD」)とは、化合物1の飽和溶液を水中に調製し、溶液を0.2μmのナイロンフィルターを通してオープンバイアル中にろ過する方法を意味する。溶液は、液体窒素浴中またはドライアイス中で回転させ、イソプロパノールで洗浄することにより、バイアルの壁に薄い層として凍結させた。凍結試料を含むバイアルを凍結乾燥容器内に入れ、これを次にFlexi-Dry凍結乾燥機に1〜3日間取り付けた。温度は実験期間中、−50〜−60℃に維持した。
用語「高速蒸発」(「FE」)とは、化合物1の溶液を種々の溶媒中に調製し、ここで試料を、アリコートの添加の間音波破砕する方法を意味する。混合物が目視観察により判定して完全に溶解すると、溶液を0.2μmのナイロンフィルターを通してろ過した。ろ過した溶液は、周囲条件下でオープンバイアル中で蒸発させた。固体を分離して分析した。
【0082】
用語「回転蒸発」(「RE」)とは、化合物1または非晶質の化合物1の濃縮溶液を、種々の有機溶媒中に調製し、0.2μmのナイロンフィルターを通してオープンバイアル中にろ過する方法を意味する。いくつかのケースにおいては、ろ過した溶液の4〜5mLのアリコートを、透明バイアル中に分取した。バイアルを回転蒸発器に取り付けて、溶媒を蒸発させて乾燥した。水浴は通常は周囲温度で行ったが、いくつかのケースにおいては水浴は約50℃に加熱して蒸発を促進した。回転蒸発後に試料が完全に乾燥していない場合は、バイアルを真空オーブン中に25℃で18時間入れた。固体を分離して分析した。
本明細書において、用語「除冷」(「SC」)とは、化合物1の飽和溶液を種々の溶媒中に高い温度において調製し、溶液を0.2μmのナイロンフィルターを通して暖かいバイアル中に温ろ過する方法を意味する。バイアルは蓋をしてホットプレート上に置き、ホットプレートはスイッチを切り、試料が周囲温度に徐々に冷却されるようにした。
【0083】
用語「除蒸発」(「SE」)とは、化合物1の溶液を種々の溶媒中に調製し、ここで試料を、アリコート添加の間に音波破砕する方法を意味する。目視観察により判断して混合物が完全に溶解したら、溶液を0.2μmのナイロンフィルターを通してろ過した。いくつかのケースにおいては、抗溶媒のアリコートをろ過した溶液に撹拌しつつ加えた。溶液を、ピンホールを開けたアルミニウムホイルで蓋をしたバイアル中で、周囲条件にて蒸発させた。固体を分離して分析した。
用語「スラリー実験」とは、化合物1の懸濁液を、周囲条件または上昇温度にて、所与の溶媒に十分な固体を加えることにより調製し、不溶解の固体が存在するようにした方法を意味する。混合物は次に、周囲温度または上昇温度のどちらかでの密封バイアル内の軌道シェーカー(orbit shaker)に7日間入れた。固体を真空ろ過により、または液体相をピペットで取って分離し、固体を分析前に周囲条件にて空気乾燥させた。
【0084】
本明細書において、用語「蒸気拡散実験」とは、化合物1の濃縮溶液を種々の溶媒中に調製し、0.2μmのナイロンフィルターを通してろ過する方法を意味する。ろ過した溶液は1ドラム−バイアルに分取し、これを次に約2mLの抗溶媒を含有する20mLのバイアル内に入れた。1ドラム−バイアルは蓋をせず、20mLバイアルは蓋をして、蒸気の拡散を生じさせた。固体は真空ろ過により収集して分析した。
用語「毛細管結晶化技術」とは、毛細管多形スクリーンを化合物1について行う方法を意味する。種々の結晶化技術を用いた。これらの技術は以下に記載する。粉末X線回折品質の毛細管を用いた。結晶化の試みから固体が観察されると、これらを顕微鏡で複屈折および形態について分析した。あらゆる結晶形が見られたが、しかし時には、固体は未知の形態を示し、これはいくつかのケースにおいては毛細管への充填のため、または小さな粒子サイズのためであった。十分に存在する場合は、試料を次にXRPDで解析し、結晶パターンを互いに比較して、新しい結晶形を同定した。
【0085】
用語「遠心蒸発(CentriVap)結晶化:(「遠心蒸発」)とは、所与の溶媒または溶媒混合物中に化合物1の溶液を調製し、0.2μmのナイロンフィルターを通してろ過する方法を意味する。毛細管に45μLの溶液をシリンジを介して充填した。毛細管を遠心分離した。溶媒を減圧下で、機械的真空ポンプを用いて、Labconco CentriVap(登録商標)遠心蒸発器で蒸発させた。蒸発器温度は、周囲温度に維持した。
【0086】
用語「毛細管中蒸発」(「EC」)とは、所与の溶媒または溶媒混合物中に化合物1の溶液を調製し、0.2μmのナイロンフィルターを通してろ過する方法を意味する。毛細管に45μLの溶液をシリンジを介して充填した。毛細管を遠心分離した。蒸発は、開いた毛細管中で周囲温度および上昇温度で行った。
用語「毛細管中の溶媒/抗溶媒結晶化」とは、所与の溶媒中に化合物1の溶液を調製し、0.2μmのナイロンフィルターを通してろ過する方法を意味する。毛細管に15μLの溶液を充填し、遠心分離した。30μLの抗溶媒を加えた。毛細管を遠心分離した。透明な溶液が得られたら、毛細管を周囲温度に置いて溶媒を蒸発させるか、またはLabconco CentriVap遠心蒸発器で、減圧下、周囲条件で機械ポンプを用いて蒸発させた。
【0087】
用語「固体または気体ストレス下での蒸気拡散」(「VS」)とは、毛細管に約1cmの化合物1を充填する方法を意味する。約5mLの種々の溶媒を含有する背の高いバイアル中に毛細管を置くことにより、固体を溶媒蒸気に暴露した。毛細管は約14日後に取り除いた。
【0088】
表7.化合物1の多形スクリーン
【表15】

【0089】
【表16】

【0090】
【表17】

【0091】
【表18】

【0092】
表8.気体拡散実験
【表19】

【0093】
表9.化合物1の毛細管多形スクリーン
【表20】

【0094】
【表21】

【0095】
表10.溶媒/抗溶媒結晶化による化合物1の毛細管多形スクリーン
【表22】

【0096】
【表23】

【0097】
表11.気体ストレスによる化合物1の毛細管多形スクリーン
【表24】

【0098】
【表25】

【0099】
表12.非晶質の化合物1の簡易多形スクリーン
【表26】

【0100】
【表27】

【0101】
【表28】

【0102】
表13.非晶質の化合物1の気体拡散実験
【表29】

【0103】
例7
種々の溶媒中の室温でのA形態の平衡溶解物(equilibrium solubilite)を次の表14に挙げる。それぞれの場合、室温でのA形態の平衡溶解度は、過剰な化合物を異なる溶媒中に入れて、周囲の室温にて、光から保護しつつ一晩撹拌して測定した。次の溶媒および水性緩衝液中の溶解度を、室温で評価した:メタノール、エタノール、ベンジルアルコール、ジメチルスルホキシド、注入用の水、静菌性水(0.9%のベンジルアルコール含有)、5%デキストロース、生理食塩水(0.9%NaCl)、pH1.1(グリシンHCl)、pH4.2(グリシンHCl)、pH7.1(リン酸緩衝液)、およびpH9.1(グリシン)。溶解度は、他の記載がない限り、最も近いmg/mLで報告する。
溶解度試料の追加のセットを、ヒトGI管(pH1、0.1NのHCl、H4.5酢酸緩衝液、pH7.1リン酸緩衝液、pH9.0ホウ酸緩衝液)を模倣した条件下で調製した。全ての溶液は、37℃のオーブンで一晩保存し、次にWhatman0.45μmナイロンシリンジフィルターを通してろ過して、不溶性の物質を除去した。ろ液はHPLCにより強度について分析し、結果を表14にまとめた。
【0104】
表14.周囲温度でのA形態のおよその溶解度
【表30】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
B形態の化合物1であって:
【化1】

式中、前記化合物は窒素について(R)立体配置であり、前記化合物はA形態の化合物1を実質的に含まない、前記化合物。
【請求項2】
化合物が、その粉末X線回折パターンにおいて、約7.9、8.18、20.3、21.44、24.11および25.12度の2θにおけるピークから選択される、1または2以上のピークを有することを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
化合物が、その粉末X線回折パターンにおいて、約7.9、8.18、20.3、21.44、24.11および25.12度の2θにおけるピークから選択される、2または3以上のピークを有することを特徴とする、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
化合物が、その粉末X線回折パターンにおいて、約7.9、8.18、20.3、21.44、24.11および25.12度の2θにおけるピークから選択される、3または4以上のピークを有することを特徴とする、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
化合物が、その粉末X線回折パターンにおいて、約7.9、8.18、10.64、11.57、12.68、13.44、13.89、14.38、15.42、16.01、16.39、17.18、19.89、20.79、21.44、21.9、23.35、24.49、24.87、25.53、および29.17度の2θにおけるピークから選択される、実質的に全てのピークを有することを特徴とする、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
化合物が、その粉末X線回折パターンにおいて、以下:
【表1】

から選択される実質的に全てのピークを有することを特徴とする、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
化合物が、図4に示すものと実質的に同様の粉末X線回折パターンを有することを特徴とする、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
D形態の化合物1であって:
【化2】

式中、前記化合物は窒素について(R)立体配置である、前記化合物。
【請求項9】
化合物が、その粉末X線回折パターンにおいて、約7.66、8.42、14.79および21.06度の2θにおけるピークから選択される、1または2以上のピークを有することを特徴とする、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
化合物が、その粉末X線回折パターンにおいて、約7.66、8.42、14.79および21.06度の2θにおけるピークから選択される、2または3以上のピークを有することを特徴とする、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
化合物が、その粉末X線回折パターンにおいて、約7.66、8.42、14.79および21.06度の2θにおけるピークから選択される、3または4以上のピークを有することを特徴とする、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
化合物が、その粉末X線回折パターンにおいて、約7.66、8.42、12.85、13.48、16.11、17.53、18.67、19.61、21.06、21.79、22.07、23.25、24.53、および26.23度の2θにおけるピークから選択される、実質的に全てのピークを有することを特徴とする、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
化合物が、その粉末X線回折パターンにおいて、以下:
【表2】

【表3】

から選択される実質的に全てのピークを有することを特徴とする、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
化合物が、図6に示すものと実質的に同様の粉末X線回折パターンを有することを特徴とする、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
C形態の化合物1であって:
【化3】

式中、前記化合物は窒素について(R)立体配置である、前記化合物。
【請求項16】
化合物が、150±1°Kの温度で収集した単結晶データから計算された、その粉末X線回折パターンにおいて、約10.8、12.8、14.8、15.9、16.25、18.5、19.15、22、23.6、24.25、25.7、27.5、28.1、28.9、31.5、および31.75度の2θにおけるピークから選択される、1または2以上のピークを有することを特徴とする、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
化合物が、150±1°Kの温度で収集した単結晶データから計算された、その粉末X線回折パターンにおいて、約10.8、12.8、14.8、15.9、16.25、18.5、19.15、22、23.6、24.25、25.7、27.5、28.1、28.9、31.5、および31.75度の2θにおけるピークから選択される、2または3以上のピークを有することを特徴とする、請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
化合物が、150±1°Kの温度で収集した単結晶データから計算された、その粉末X線回折パターンにおいて、約10.8、12.8、14.8、15.9、16.25、18.5、19.15、22、23.6、24.25、25.7、27.5、28.1、28.9、31.5、および31.75度の2θにおけるピークから選択される、3または4以上のピークを有することを特徴とする、請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
化合物が、150±1°Kの温度で収集した単結晶データから計算された、その粉末X線回折パターンにおいて、約10.8、12.8、14.8、15.9、16.25、18.5、19.15、22、23.6、24.25、25.7、27.5、28.1、28.9、31.5、および31.75度の2θにおけるピークから選択される、実質的に全てのピークを有することを特徴とする、請求項18に記載の化合物。
【請求項20】
化合物が、150±1°Kの温度で収集した単結晶データから計算された、その粉末X線回折パターンにおいて、以下:
【表4】

から選択される実質的に全てのピークを有することを特徴とする、請求項19に記載の化合物。
【請求項21】
化合物が、150±1°Kの温度で収集した単結晶データから計算された場合に、図8に示すものと実質的に同様の粉末X線回折パターンを有することを特徴とする、請求項20に記載の化合物。
【請求項22】
化合物が、単斜晶細胞パラメータ:a=7.7724(6)Å、b=15.2539(6)Å、c=9.7329(6)Å、α=90.00°、β=91.899(3)°、γ=90.00°、ここで各値は±1.5Åである、を有する、請求項15に記載の化合物。
【請求項23】
A形態およびC形態の化合物1の混合物を含む組成物であって:
【化4】

式中、前記化合物は窒素について(R)立体配置である、前記組成物。
【請求項24】
組成物が、その粉末X線回折パターンにおいて、約10.58および22.74度の2θにおけるピークから選択される一方または両方を有することを特徴とする、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
組成物が、その粉末X線回折パターンにおいて、約10.58、11.56、13.88、15.42、20.82、21.86、22.74、23.2、24.74、および26.96度の2θにおけるピークから選択される、実質的に全てのピークを有することを特徴とする、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
組成物が、その粉末X線回折パターンにおいて、以下:
【表5】

から選択される実質的に全てのピークを有することを特徴とする、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
組成物が、図9に示すものと実質的に同様の粉末X線回折パターンを有することを特徴とする、請求項26に記載の化合物。
【請求項28】
非晶質の化合物1:
【化5】

式中、前記化合物は窒素について(R)立体配置である、前記化合物。
【請求項29】
A形態の化合物1であって:
【化6】

式中、前記化合物は窒素について(R)立体配置であり、1または2以上のC形態、D形態、または非晶質の化合物1、および任意にB形態をさらに含む、前記化合物。
【請求項30】
A形態および非晶質の化合物1を含む、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
B形態、C形態、D形態、および非晶質の化合物1の少なくとも2種を含む、組成物。
【請求項32】
(a)請求項29に記載の化合物;
(b)請求項31に記載の組成物;または
(c)B形態、C形態、D形態、および非晶質の化合物1の1種または2種以上、および任意に薬学的に許容し得る担体、アジュバント、またはビヒクル、
を含む、医薬組成物。
【請求項33】
請求項32に記載の医薬組成物を含む、経口製剤。
【請求項34】
請求項32に記載の医薬組成物、キレート剤、および界面活性剤を含むコア;ならびに腸溶コーティングを含む、経口製剤。
【請求項35】
コアが、球状体、ビーズまたはペレットを含む、請求項34に記載の製剤。
【請求項36】
コアが、担体、結合剤、増量剤、および/または崩壊剤をさらに含む、請求項35に記載の製剤。
【請求項37】
請求項32に記載の医薬組成物と粘膜付着放出制御剤とを含む粘膜付着コーティングをさらに含む、請求項36に記載の製剤。
【請求項38】
請求項32に記載の医薬組成物を含む経口製剤であって、前記製剤が、化合物を少なくとも2つの独立した部分において送達すること、ここで第1部分は胃に送達され、第2部分は腸上部に送達され;
前記製剤が、請求項32に記載の医薬組成物を含むコア、ならびに前記組成物と粘膜付着放出制御剤とを含む粘膜付着コーティングを含み;
第1部分の胃への送達は、実質的に粘膜付着コーティングからであり、第2部分の腸への送達は、実質的にコアからのものである、
前記経口製剤。
【請求項39】
請求項32に記載の医薬組成物、キレート剤、および界面活性剤を含むコア;ならびに腸溶コーティングを含む、経口製剤。
【請求項40】
コアが、複数微粒子、ペレット、顆粒、球状体、または粒子および少なくとも1種の追加の賦形剤を含む、請求項39に記載の製剤。
【請求項41】
コアが、増量剤または結合剤または崩壊剤を含む、請求項40に記載の製剤。
【請求項42】
増量剤または結合剤が、微結晶セルロースを含む、請求項41に記載の製剤。
【請求項43】
コアが、崩壊剤をさらに含む、請求項42に記載の製剤。
【請求項44】
崩壊剤が、クロスポビドンである、請求項43に記載の製剤。
【請求項45】
調製されたコアが、カプセル殻内にあるか、または錠剤形態に圧縮されている、請求項44に記載の製剤。
【請求項46】
オピオイド処置を受ける対象において、オピオイド療法の副作用を低減する方法であって、該対象に、請求項32に記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項47】
疾患が、オピオイド受容体活性により引き起こされるか、媒介されるか、または悪化されることを特徴とする、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
対象において内因性オピオイド活性の作用を低減する方法であって、該対象に、請求項32に記載の医薬組成物の有効量を含む組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項49】
処置により影響を受ける副作用が、腸運動の阻害、胃腸障害、便秘、腸の低運動、嵌頓、胃の低運動、GI括約筋収縮、括約筋緊張の増加、胃腸運動の阻害、胃内容排出の阻害、胃内容排出の遅延、不完全な排便、吐き気、嘔吐、皮膚の紅潮、膨張、腹部膨満、発汗、身体違和感、痒み、および尿滞留から選択される少なくとも1つの作用を含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
対象が、短期のオピオイド投与を受けている患者または長期のオピオイド投与を受けている患者である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
処置により影響される作用が、腸閉塞(イレウス)、術後腸閉塞、麻痺性イレウス、産後イレウス、腹部手術後に発症する胃腸障害、および特発性便秘から選択される少なくとも1つの状態または疾患を含む、請求項50に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−522756(P2010−522756A)
【公表日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−501013(P2010−501013)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【国際出願番号】PCT/US2008/004116
【国際公開番号】WO2008/121352
【国際公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(505377108)プロジェニックス ファーマシューティカルズ,インコーポレーテッド (10)
【Fターム(参考)】