説明

結晶形態の6−N−ピリジルメチルアミノインドロカルバゾール化合物

本発明は、下記式(I):(式中、Rは、無置換又はヒドロキシメチル基で置換されたピリジルメチル基を表す。)で示される結晶形態の6−N−ピリジルメチルアミノ−12,13−ジヒドロ−2,10−ジヒドロキシ−12−β−D−グルコピラノシル−5H−インドロ[2,3−a]ピロロ[3,4−c]カルバゾール−5,7(6H)−ジオンの遊離塩基、その医薬上許容される塩又はその溶媒和物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、医薬の分野で有用であり、具体的には腫瘍細胞の増殖を阻害し、抗腫瘍効果を発揮する、新規な結晶形態のインドロピロロカルバゾール誘導体の遊離塩基、その医薬上許容される塩又はその溶媒和物、その製法、及びそれを有効成分として含む医薬組成物などに関する。
【背景技術】
我々は、抗がん活性を有する新規インドロピロロカルバゾール誘導体を見出し、かかる一連の化合物について特許出願をしてきた(米国特許第5591842号明細書、米国特許第5668271号明細書、米国特許第5804564号明細書、米国特許第5922860号明細書、国際公開第95/30682号パンフレット、国際公開第96/04293号パンフレット、国際公開第98/0743号パンフレット、欧州特許出願公開公報第0528030号明細書、特開平10−245390号公報など)。
ここで、特開平10−245390号明細書には、下記の式:

[式中、Rは、ヒドロキシ基、低級アルコキシ基、ヒドロキシ低級アルキル基及びヒドロキシ低級アルケニル基からなる群から選ばれる1又は2個の置換基を有するフェニル基、ナフチル基、ピリジル基、フリル基又はチエニル基(但し、置換基として低級アルコキシ基を有する場合は、同時にヒドロキシ基、低級アルコキシ基、ヒドロキシ低級アルキル基及びヒドロキシ低級アルケニル基からなる群から選ばれるもう一つの置換基を有する)を示し、mは、1〜3の整数を示し、Gは、β−D−グルコピラノシル基を示し、インドロピロロカルバゾール環上のヒドロキシ基の置換位置は、1位と11位又は2位と10位である]で表される化合物が記載されている。しかしながら、この明細書には当該化合物の結晶形についての記載も示唆もない。現に当該明細書に記載の製法で実施例化合物を合成・単離すると非晶質であることが確かめられている。
上記化合物を実際の抗腫瘍剤として市場化する場合には、その化合物の物理化学的安定性の面からみて結晶形態であることが望ましい。特に上記化合物の非晶形の固体は安定性が不十分であり、通常の条件化で長期間保存すると、変色し、純度の低下をきたす。また、仮に上記化合物を非晶固体あるいは液剤として市場化するとしても、該非晶形固体を実質的に純粋なものとして製造するためには複雑な精製工程を要し、結晶化による精製工程なしには実際の市場化には種々問題がある。
このように、結晶形態である上記インドロカルバゾール化合物を得ることは極めて重要なことにも関わらず、これまで上記化合物の結晶について詳細な検討はなされてこなかった。
【発明の開示】
本発明者らは、非晶形であることに由来する上記の問題を解決すべく鋭意研究した結果、上記式(IA)で示される化合物の中で、結晶形態の化合物を見いだし、本発明を完成した。
本発明は、下記式(I):

(式中、Rは、無置換又はヒドロキシメチル基で置換されたピリジルメチル基を表す。)で示される結晶形態の6−N−ピリジルメチルアミノ−12,13−ジヒドロ−2,10−ジヒドロキシ−12−β−D−グルコピラノシル−5H−インドロ[2,3−a]ピロロ[3,4−c]カルバゾール−5,7(6H)−ジオンの遊離塩基、その医薬上許容される塩又はその溶媒和物に関する。
本発明は、好ましくは、結晶形態の下記式(II):

で示される化合物の遊離塩基、その医薬上許容される塩又はその溶媒和物;
結晶形態の下記式(III):

で示される化合物の遊離塩基、その医薬上許容される塩又はその溶媒和物;或いは、結晶形態の下記式(IV):

で示される化合物の遊離塩基、その医薬上許容される塩又はその溶媒和物に関する。
ここで、結晶形態の上記式(I)で示される化合物の遊離塩基と、結晶形態の上記式(I)で示される化合物の医薬上許容される塩(以下、「分子内塩」という。)を比べると、特に注射剤としての処方に関しては、その水溶性の向上及び製剤上、添加剤を多量に添加する必要がないと期待されることなどから、結晶形態の上記式(I)で示される化合物の分子内塩であることが望ましい。
なお、特開平10−245390号明細書には、上記式(IV)で示される化合物の具体的な構造及び製法の開示はないので、新規な化合物であると認められる。当該化合物の製法は、実施例7−1に記載する。
また、本発明は、さらに好ましくは、結晶形態である上記式(II)で示される化合物の塩酸塩、硫酸塩、若しくはメタンスルホン酸塩;
結晶形態である上記式(III)で示される化合物の塩酸塩、硫酸塩、若しくはメタンスルホン酸塩;又は
結晶形態である上記式(IV)で示される化合物の塩酸塩、硫酸塩、若しくはメタンスルホン酸塩に関する。
また、本発明は、好ましくは、結晶形態である上記式(II)、(III)、又は(IV)で示される化合物の溶媒和物に関する。
本発明は、さらに好ましくは、結晶形態である上記式(II)で示される化合物のメタンスルホン酸塩のエタノール和物に関する。
本発明は、薬学的に許容し得る担体又は希釈剤と一緒に、結晶形態である上記式(I)で示される化合物の遊離塩基、その医薬上許容される塩又はその溶媒和物を有効成分として含む、医薬組成物に関する。
また、本発明は、薬学的に許容し得る担体又は希釈剤と一緒に、結晶形態である上記式(I)で示される化合物の遊離塩基、その医薬上許容される塩又はその溶媒和物を有効成分として含む、抗がん剤に関する。
さらに、本発明は、薬学的に許容し得る担体又は希釈剤と一緒に、結晶形態の上記式(I)で示される化合物を用いた、注射用抗がん剤に関する。
また、本発明は、好ましくは、薬学的に許容し得る担体又は希釈剤と一緒に、結晶形態の上記式(II)、(III)又は(IV)で示される化合物を用いた、注射用抗がん剤に関する。
ここで、本明細書で用いる「結晶形態」とは、固体であって、その内部構造が三次元的に構成原子の規則正しい繰り返しでできているものをいい、結晶多形を含む。一方、「非晶形」とは、結晶状態ではない、アモルファス(無定形)の状態をいう。
本明細書で用いる「遊離塩基」とは、塩基分子が酸又は水素イオンと結合していない状態をいう。
本明細書で用いる「医薬上許容される塩」とは、例えば、塩酸、硫酸、臭化水素酸、硝酸、リン酸、過塩素酸等の無機酸;例えば酢酸、マレイン酸、フマール酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、アスコルビン酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸;例えばメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等のスルホン酸等との付加塩が挙げられ、好ましくは、塩酸、硫酸、リン酸、酢酸、フマール酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、メタンスルホン酸、又はベンゼンスルホン酸との付加塩であり、さらに好ましくは、塩酸、硫酸、又はメタンスルホン酸との付加塩である。
本明細書で用いる「溶媒和物」とは、溶媒の結合した化合物をいい、例えば、エタノール和物、水和物等である。
本明細書で用いる「薬学的に許容される担体若しくは希釈剤」という用語は、溶剤〔例えば、水、生理食塩水、アルコール(例えば、エタノール)、グリセリン、植物オイルなど〕;添加剤〔例えば、賦形剤、基剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、湿潤剤、安定剤、乳化剤、分散剤、保存剤、甘味剤、着色剤、矯味剤、芳香剤、緩衝剤、さらに可溶化剤、又は防腐剤、浸透圧を変えるための塩、コーティング剤、あるいは抗酸化剤〕などを含む。
本明細書で用いる「抗がん剤」は、「がん」患者を治療するための「製剤」であり、「がん」とは、固形がん及び造血器がんをいう。ここで、固形がんは、例えば、脳腫瘍、頭頸部がん、食道がん、甲状腺がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、乳がん、胃がん、胆のう・胆管がん、肝がん、膵がん、結腸がん、直腸がん、卵巣がん、絨毛上皮がん、子宮体がん、子宮頸がん、腎孟・尿管がん、膀胱がん、前立腺がん、陰茎がん、睾丸がん、胎児性がん、ウイルス腫瘍、皮膚がん、悪性黒色腫、神経芽細胞腫、骨肉腫、ユーイング腫、軟部肉腫などであり、好ましくは、結腸がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、膀胱がん、頭頸部がん、胃がん、膵がん、肝がん、卵巣がんであり、さらに好ましくは、結腸がん、非小細胞肺がん、頭頸部がんである。一方、造血器がんとしては、例えば、急性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、真性多血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫などである。また、「製剤」とは、経口製剤及び非経口製剤を含む。経口製剤としては、例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤などであり、一方、非経口製剤としては、例えば、溶液若しくは懸濁液等の殺菌した液状の製剤、具体的には、注射剤、点滴剤などであり、好ましくは、静脈内注射剤又は静脈内点滴剤であり、さらに好ましくは静脈内点滴剤である。これらの静脈内注射剤及び静脈内点滴剤は、予め溶解したものの他、粉末のまま或いは適当な担体(添加物)を加えたものを用時溶解する形態もとり得る。
次に、結晶形態である式(I)で示される化合物の製法を記載する。
本発明は、結晶形態の上記式(I)で示される化合物の製造方法であって、
・非晶形の上記式(I)で示される化合物に対して、1等量から100等量の対応する酸を含むか又は適量の酢酸を含んでいてもよい有機溶媒溶液を、その濃度が50mg/Lから1g/Lになるように加える工程、
・得られた溶液を加熱環流する工程、
・必要に応じて、得られた溶液を濾過することにより不溶物を除去する工程、
・得られた溶液から溶媒を留去し、濃縮する工程、
・得られた固体の懸濁溶液を加熱環流する工程、
・得られた懸濁溶液を0℃から35℃に冷却する工程、及び
・得られた結晶を単離する工程、を含むことを特徴とする前記方法に関する。当該方法のより具体的な実施形態は、下記の製法1及び製法2である。
製法1(上記式(I)で示される化合物の分子内塩結晶の場合)
非結晶形の式(I)で示される化合物に対し、1等量から100等量、好ましくは、5から20等量の対応する酸(塩酸、硫酸、メタンスルホン酸等)を含む、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、アセトン、酢酸エチル、ヘキサン、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、及びこれらの混合溶液からなる群から選択される溶液; 又は、好ましくは、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、及びこれら混合溶媒からなる群から選択される溶液; さらに好ましくは、メタノール溶液を、その溶液の濃度が50mg/Lから1g/Lになるように加え、5分から200時間、好ましくは、10から20時間、さらに好ましくは15時間、加熱還流する。
得られた溶液中、完全に溶解しないものがある場合には、常圧もしくは減圧下濾過して不溶物を除く。次に、その溶媒を常圧もしくは減圧下で1/3から1/10になるまで濃縮留去すると固体が析出する。
析出した固体の懸濁溶液をそのまま1時間から200時間、好ましくは、10時間から20時間、さらに好ましくは15時間、加熱還流する。
得られた懸濁溶液を0℃から35℃に冷却した後、得られた固体を常圧または減圧下濾取し、適量の、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、アセトン、酢酸エチル、ヘキサン、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、及びこれらの混合溶媒からなる群から選択される溶媒; 又は、好ましくは、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、及びこれらの混合溶媒からなる群から選択される溶媒; さらに好ましくは、メタノール又はエタノールで、1回から数回洗浄する。
得られた固体を25℃から80℃、好ましくは40℃で、0.5時間から100時間、減圧下乾燥すると固体が得られる。得られた固体を適量の、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、アセトン、酢酸エチル、ヘキサン、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、及びこれらの混合溶媒からなる群から選択される溶媒; 又は、好ましくは、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、及びこれらの混合溶媒からなる群から選択される溶媒; さらに好ましくはエタノールに懸濁し、40℃から130℃、好ましくは、70℃から80℃、さらに好ましくは75℃で0.1時間から200時間、好ましくは15時間から25時間、さらに好ましくは、20時間、加熱攪拌する。
得られた反応液を0℃から35℃、好ましくは室温に冷却した後、得られた固体を常圧または減圧下濾取し、適量の、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、アセトン、酢酸エチル、ヘキサン、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、及びこれらの混合溶媒からなる群から選択される溶媒; 又は、好ましくは、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、及びこれらの混合溶媒からなる群から選択される溶媒、さらに好ましくは、エタノール又は2−プロパノールで1回から数回洗浄する。
得られた固体を25℃から80℃、好ましくは40℃から60℃、さらに好ましくは50℃で0.5時間から100時間、減圧下乾燥することにより目的とする、式(I)で示される化合物の分子内塩結晶を製造することができる。
製法2(上記式(I)で示される化合物の遊離塩基の結晶の場合)
非結晶形の式(I)で示される化合物に対し、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、アセトン、酢酸エチル、ヘキサン、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、及びこれらの混合溶媒からなる群から選択される溶媒;又は、好ましくは、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、及びこれらの混合溶媒からなる群から選択される溶媒; さらに好ましくはエタノール、或いは、0.1等量から100等量の酢酸を含む上記溶媒の溶液を、その溶液の濃度が50mg/Lから1g/Lになるように加え、5分から200時間、好ましくは、0.25時間から15時間、加熱還流する。得られた溶液中、完全に溶解しないものがある場合には、常圧もしくは減圧下濾過して不溶物を除く。
次に、その溶媒を常圧もしくは減圧下で1/3から1/10になるまで濃縮留去すると固体が析出する。析出した固体の懸濁溶液をそのまま0分から200時間、好ましくは、2.5時間から15時間、加熱還流する。
得られた懸濁溶液を0℃から35℃、好ましくは、室温に冷却した後、得られた固体を常圧または減圧下濾取し、適量の、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、アセトン、酢酸エチル、ヘキサン、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、及びこれらの混合溶媒; 又は、好ましくは、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、及びこれらの混合溶媒; さらに好ましくは、メタノール、エタノール、又は2−プロパノールで1回から数回洗浄する。
得られた固体を25℃から80℃、好ましくは、40℃から60℃、さらに好ましくは50℃で、0.5時間から100時間減圧下乾燥すると固体が得られる。得られた固体を適量の、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、アセトン、酢酸エチル、ヘキサン、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、及びこれらの混合溶媒からなる群から選択される溶媒; 又は、好ましくは、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、及びこれらの混合溶媒からなる群から選択される溶媒に懸濁し、40℃から130℃、好ましくは、70℃から80℃で0.1時間から200時間、好ましくは15時間から25時間、さらに好ましくは20時間、加熱攪拌する。
得られた反応液を0℃から35℃、好ましくは35℃に冷却した後、得られた固体を常圧または減圧下濾取し、適量の、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、アセトン、酢酸エチル、ヘキサン、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、及びこれらの混合溶媒からなる群から選択される溶媒; 又は、好ましくは、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、及びこれらの混合溶媒からなる群から選択される溶媒; さらに好ましくはメタノール、エタノール、又は2−プロパノールで1回から数回洗浄する。得られた固体を25℃から80℃、好ましくは、40℃から60℃、さらに好ましくは、50℃で0.5時間から100時間、減圧下乾燥することにより目的とする、式(I)で示される化合物の遊離塩基結晶を製造することができる。
また、本発明は、結晶形態の式(I)で示される化合物の製造方法であって、
・非晶形の式(I)で示される化合物を、1等量から100等量の対応する酸を含むか又は適量の酢酸を含んでいてもよい有機溶媒溶液に懸濁させる工程、
・得られた溶液を40℃から130℃で加熱攪拌する工程、
・得られた溶液を0℃から35℃に冷却する工程、及び
・得られた結晶を単離する工程、を含むことを特徴とする前記方法に関する。当該方法のより具体的な実施形態は、下記の製法3及び製法4である。
製法3(上記式(I)で示される化合物の分子内塩結晶の場合)
非結晶形の式(I)で示される化合物に対し、1等量から100等量、好ましくは2等量の対応する酸(塩酸、硫酸、メタンスルホン酸等)を含む、適量のジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、アセトン、酢酸エチル、ヘキサン、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、及びこれらの混合溶媒からなる群から選択される溶媒; 又は、好ましくは、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、及びこれらの混合溶媒からなる群から選択される溶媒; さらに好ましくは、エタノールに懸濁させ、40℃から130℃、好ましくは75℃から80℃で、0.1時間から200時間、好ましくは、15から168時間、加熱攪拌する。
得られた反応液を0℃から35℃に冷却した後、得られた固体を常圧または減圧下濾取し、適量のジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、アセトン、酢酸エチル、ヘキサン、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、及びこれらの混合溶媒からなる群から選択される溶媒; 又は、好ましくは、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、及びこれらの混合溶媒からなる群から選択される溶媒; さらに好ましくは、エタノール又は2−プロパノールで1回から数回洗浄する。
得られた固体を25℃から80℃、好ましくは、40℃から60℃、さらに好ましくは50℃で0.5時間から100時間、減圧下乾燥することにより目的とする、式(I)で示される化合物の分子内塩結晶を製造することができる。
製法4(上記式(I)で示される化合物の遊離塩基の結晶の場合)
非結晶形の式(I)で示される化合物に対し、適量のジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、アセトン、酢酸エチル、ヘキサン、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、及びこれらの混合溶媒からなる群から選択される溶媒;又は、好ましくは、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、及びこれらの混合溶媒からなる群から選択される溶媒、或いは、0.1等量から100等量の酢酸を含む上記溶媒に懸濁し、40℃から130℃、好ましくは、75℃から80℃で0.1時間から200時間、好ましくは、15時間から24時間、加熱攪拌する。
得られた反応液を0℃から35℃、好ましくは室温に冷却した後、得られた固体を常圧または減圧下濾取し、適量のジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、アセトン、酢酸エチル、ヘキサン、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、及びこれらの混合溶媒からなる群から選択される溶媒;又は、好ましくは、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、及びこれらの混合溶媒からなる群から選択される溶媒; さらに好ましくは、エタノール又は2−プロパノールで1から数回洗浄する。
得られた固体を25℃から80℃、好ましくは、40℃から60℃、さらに好ましくは、50℃で0.5時間から100時間、減圧下乾燥することにより目的とする、式(I)で示される化合物の遊離塩基の結晶を製造できる。
さらに、本発明は、結晶形態の式(I)で示される化合物の製造方法であって、
・非晶形の式(I)で示される化合物を、水又は1等量から100等量の対応する酸を含む水溶液に加える工程、
・得られた溶液を40℃から130℃で加熱攪拌する工程、
・必要に応じて、得られた溶液を濾過することにより不溶物を除去する工程、
・得られた反応溶液の温度を0℃から35℃に下げながら攪拌する工程、及び
・得られた結晶を単離する工程、を含むことを特徴とする前記方法に関する。当該方法のより具体的な実施形態は、下記の製法5である。
製法5(上記式(I)で示される化合物の遊離塩基結晶及び分子内塩結晶の場合)
非結晶形の式(I)で示される化合物に対し、水或いは1等量から100等量の対応する酸(酢酸、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸等)を含む水溶液を適量加え、0.5分から20時間、40℃から130℃、好ましくは、60℃から70℃に加熱する。得られた溶液中、完全に溶解しないものがある場合は、必要に応じ常圧もしくは減圧下濾過して不溶物を除く。
得られた溶液に、0℃から130℃、好ましくは60℃から80℃、さらに好ましくは70℃で適量のジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、アセトン、酢酸エチル、ヘキサン、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、及びこれらの混合溶媒からなる群から選択される溶媒; 又は、好ましくは、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、及びこれらの混合溶媒からなる群から選択される溶媒; さらに好ましくはエタノールを加え、0℃から35℃、好ましくは室温で0.1時間から100時間、好ましくは15時間から20時間、さらに好ましくは18時間攪拌する。
得られた固体を常圧または減圧下濾取し、適量のジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、アセトン、酢酸エチル、ヘキサン、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、及びこれらの混合溶媒からなる群から選択される溶媒;又は、好ましくは、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、及びこれらの混合溶媒からなる群から選択される溶媒; さらに好ましくはエタノール又は2−プロパノールで数回洗浄する。
得られた固体を25℃から80℃、好ましくは40℃から60℃、さらに好ましくは50℃で0.5時間から100時間、好ましくは60時間から80時間、さらに好ましくは72時間、減圧下乾燥することにより目的とする、式(I)で示される化合物の遊離塩基結晶及び分子内塩結晶を製造することができる。
また、上記に記載の、薬学的に許容し得る担体又は希釈剤と一緒に、結晶形態である上記式(I)で示される化合物を有効成分として含む、医薬組成物; 薬学的に許容し得る担体又は希釈剤と一緒に、結晶形態である上記式(I)で示される化合物を有効成分として含む、抗がん剤; 並びに、薬学的に許容し得る担体又は希釈剤と一緒に、結晶形態の上記式(I)で示される化合物を用いた、注射用抗がん剤、は、製剤技術分野の当業者に周知ないし慣用の方法を用いることにより容易に製造することができる。例えば、静脈注射用液剤、静脈注射用凍結乾燥製剤若しくは静脈注射用粉末充填製剤が挙げられる。
静脈注射用液剤は、結晶形態である上記式(I)で示される化合物を適当な溶剤、例えば、注射用蒸留水、生理食塩水、ブドウ糖水溶液、アルコール類、大豆油などの植物由来の油、静脈注射用液体(例えばクエン酸ナトリウム及びクエン酸の水溶液)等又はその混合溶液に溶解することにより製造することができる。
また、静脈注射用凍結乾燥製剤は、結晶形態である上記式(I)で示される化合物をそのまま或いは適当な添加剤と共に適当な溶剤に溶解し、注射用バイアル等に小分けしたのち、凍結乾燥することにより製造することができる。
さらに、静脈注射用粉末充填製剤は、結晶形態である上記式(I)で示される化合物を粉末のまま或いは適当な添加物を加えたものを、注射用バイアル等に小分けすることにより製造することができる。
静脈注射用液剤は予め溶解したものをそのまま投与に用いる他、適当な溶剤又は希釈剤で用時希釈して投与する形態もとり得る。静脈注射用凍結乾燥製剤及び静脈注射用粉末充填製剤は、適当な溶剤又は希釈剤で用時溶解して投与される。ここでいう適当な溶剤又は希釈剤としては、例えば注射用蒸留水、生理食塩水、ブドウ糖水溶液、アルコール類、静脈内注射用液体(例えばクエン酸ナトリウム及びクエン酸の水溶液)若しくは電解質溶液(点滴静注及び静脈内注射用)等、又はこれらの混合溶液が挙げられる。
次に、熱安定性、光安定性、溶解度、及び吸湿性に関して、結晶形態の式(I)で示される化合物と非晶形の式(I)で示される化合物のデータを比較する。
(1)熱安定性試験
式(II)、式(III)、及び式(IV)で示される化合物の遊離塩基アモルファスとそれぞれの結晶の固体熱安定性試験を表1に示す。なお、本試験は、密閉バイアル中で行われた80℃加速試験である。表1から明らかなように、各アモルファスに比べて結晶は際立って優れた熱安定性を示す(第1図)。

(2)光安定性試験
式(II)、式(III)、及び式(IV)で示される化合物の遊離塩基アモルファスとそれぞれの結晶の固体光安定性試験を表2に示す。なお、本試験は、密閉バイアル中で25℃、2000ルックスの光源下で行われた。表2から明らかなように、各アモルファスに比べて結晶は際立って優れた光安定性を示す(第2図)。

(3)水に対する溶解度の試験
上記式(II)、(III)、又は(IV)で示される化合物の各分子内塩結晶とそれぞれの遊離塩基アモルファスの水に対する溶解度を以下に示す。
式(II)で示される化合物の遊離塩基アモルファス: 0.001mg/mL以下
式(II)で示される化合物の塩酸塩結晶: 10−50mg/mL
式(II)で示される化合物のメタンスルホン酸塩結晶: 10−50mg/mL
式(III)で示される化合物の遊離塩基アモルファス: 0.001mg/mL以下
式(III)で示される化合物の塩酸塩結晶: 50−100mg/mL
式(IV)で示される化合物の遊離塩基アモルファス: 0.001mg/mL以下
式(IV)で示される化合物の塩酸塩結晶: 10−50mg/mL
以上より、式(II)、(III)、又は(IV)で示される化合物の各分子内塩結晶は、それぞれの遊離塩基アモルファスと比べて、際だって優れた水に対する溶解度を示すと言える。
(4)吸湿性試験
上記式(II)で示される化合物の遊離塩基アモルファスと同化合物の塩酸塩結晶の吸湿性を比較したところ、通常の保管湿度である湿度30%から75%で比較すると、遊離塩基アモルファスの重量は加湿条件(水の吸着過程)において7.6%増量するのに対し、結晶の重量は1.5%の微増であった。即ち、式(II)で示される化合物の遊離塩基アモルファスの加湿時(相対湿度30%から75%)における重量変化率は、7.6%であった。一方、式(II)で示される化合物の塩酸塩結晶の加湿時(相対湿度30%から75%)における重量変化率は、1.5%であり、加湿による影響が非常に小さかった。
また、除湿条件の重量変化(水の脱着過程)については、遊離塩基アモルファスの場合は加湿条件の重量変化と著しく異なることから吸湿性による溶解等が疑われるが、結晶の場合は重量変化がどちらの条件でもほぼ一致しており吸湿による影響は観察されなかった(第3図参照)。
上記式(IV)で示される化合物の遊離塩基アモルファスと同化合物の結晶の吸湿性を比較した場合も、湿度30%から75%で比較すると、遊離塩基アモルファスの重量は2.8%増量するのに対し、結晶の重量は0.6%の微増であった。即ち、式(IV)で示される化合物の遊離塩基アモルファスの加湿時(相対湿度30%から75%)における重量変化率は、2.8%であった。一方、式(IV)で示される化合物の塩酸塩結晶の加湿時(相対湿度30%から75%)における重量変化率は、0.6%であり、加湿による影響が非常に小さかった。
更に、除湿条件の重量変化について、遊離塩基アモルファスの場合は加湿条件の重量変化と著しく異なることから吸湿性による溶解等が疑われるが、結晶の場合は重量変化がどちらの条件でもほぼ一致しており吸湿による影響は少ない(第4図参照)。つまり、結晶にすることでアモルファスの持つ吸湿性が著しく改善されたものと言える。
以上より、結晶形態の式(I)で示される化合物、特に、結晶形態の式(II)で示される化合物の遊離塩基及び分子内塩; 結晶形態の式(III)で示される化合物の遊離塩基及び分子内塩; 結晶形態の式(IV)で示される化合物の遊離塩基及び分子内塩は、それぞれの対応する非結晶形のもの(遊離塩基アモルファス)に比べて、際だって優れた熱安定性・光安定性及び水溶性・低吸湿性を示すものと認められる。さらに、参考例に示されるように、遊離塩基アモルファスを結晶化することで、式(I)で示される化合物の純度を際だって向上させることもできる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、式(II)、式(III)、及び式(IV)で示される化合物の遊離塩基アモルファスとそれぞれの結晶の固体熱安定性試験(80℃加速試験)の結果を示す図である。図中の白カラムは、アモルファス試料の4週間後残存率(%)を表し、斜線カラムは、結晶試料の4週間後残存率(%)を表す。
第2図は、式(II)、式(III)、及び式(IV)で示される化合物の遊離塩基アモルファスとそれぞれの結晶の固体光安定性試験(25℃、2000ルックス光源下での試験)の結果を示す。図中の白カラムは、アモルファス試料の4週間後残存率(%)を表し、斜線カラムは、結晶試料の4週間後残存率(%)を表す。
第3図は、上記式(II)で示される化合物の遊離塩基アモルファスと同化合物の塩酸塩結晶の吸湿性試験の結果を示す図である。
図中の■は、式(II)で示される化合物の遊離塩基アモルファスの加湿時における重量変化率(%)を表し、□は、同化合物の遊離塩基アモルファスの除湿時における重量変化率(%)を表す。一方、図中の●は、式(II)で示される化合物の塩酸塩結晶の加湿時における重量変化率(%)を表し、○は、同化合物の塩酸塩結晶の除湿時における重量変化率(%)を表す。
第4図は、上記式(IV)で示される化合物の遊離塩基アモルファスと同化合物の塩酸塩結晶の吸湿性試験の結果を示す図である。
図中の■は、式(IV)で示される化合物の遊離塩基アモルファスの加湿時における重量変化率(%)を表し、□は、同化合物の遊離塩基アモルファスの除湿時における重量変化率(%)を表す。一方、図中の●は、式(IV)で示される化合物の塩酸塩結晶の加湿時における重量変化率(%)を表し、○は、同化合物の塩酸塩結晶の除湿時における重量変化率(%)を表す。
第5図は、実施例2−1に記載の方法で得られた化合物2の結晶の粉末X線回折パターンである。
第6図は、実施例3に記載の方法で得られた化合物3の結晶の写真(偏光顕微鏡、倍率400倍)である。
第7図は、実施例4に記載の方法で得られた化合物4の結晶の写真(偏光顕微鏡、倍率400倍)である。
第8図は、実施例7−1に記載の方法で得られた化合物8の結晶の粉末X線回折パターンである。
【発明を実施するための最良の形態】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、もとより本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
実施例1−1

化合物1の結晶の製法A(上記の製法2による): 特開平10−245390号明細書の実施例14に記載の方法で調整した非結晶形の化合物1(500mg)を酢酸(0.218ml)及びメタノール(500ml)に加え、15時間加熱還流した。化合物1を完全に溶解した後、400mlのメタノールを常圧で留去することにより濃縮し、析出した固体の懸濁溶液をそのまま15時間加熱還流した。室温で冷却した後、得られた固体を濾取し、メタノール(1ml)で3回洗浄し40℃で24時間減圧下乾燥すると、381mgの赤色固体が得られた。こうして得られた赤色固体(250mg)をエタノール(6.5ml)に懸濁し、75℃で20時間加熱攪拌すると、黄色結晶の生成が認められた。室温で冷却した後、得られた結晶を濾取し、エタノール(1ml)で3回洗浄し、50℃で72時間減圧下乾燥することにより、黄色結晶の化合物1(247mg)を得た。
分子量:
ESI(m/z):654 (M−H)
プロトン核磁気共鳴(NMR)スペクトルデータ:
H−NMR(400 MHz、重ジメチルスルホキシド(DMSO−d6)、δppm):11.17(1H、s)、9.79(2H、s)、8.84(1H、d、J=8.8Hz)、8.75(1H、d、J=8.4Hz)、8.50(1H、s)、8.40(1H、d、J=5.1Hz)、7.59(1H、d、J=5.1Hz)、7.17(1H、s)、6.97(1H、s)、6.82(1H、d、J=8.8Hz)、6.80(1H、d、J=8.8Hz)、6.26(1H、t、J=4.4Hz)、5.96(1H、d、J=8.1Hz)、5.88(1H、s)、5.39(1H、s)、5.24(1H、s)、5.14(1H、s)、4.93(1H、d、J=4.0Hz)、4.74(2H、s)、4.36(2H、d、J=4.4Hz)、3.76〜4.02(4H、m)、3.43〜3.52(2H、m)
赤外吸収(IR)スペクトル:
IR(全反射型赤外吸収法(ATR:Attenuated Total Reflection Infrared)):3315,1746、1697,1620,1576,1458,1371,1333,1232,1198,1119,1069,1015,615 cm−1
高圧液体クロマトグラフ(HPLC)純度データ:
純度:99.6%(逆相カラム:ワイエムシーパックプロ シー18、エーエス−303(YMC−PACK Pro C18、AS−303))


上記粉末X線回折分析データは自動X線装置リント アルティマ プラス システム(RINT−Ultima+システム)(2kW)(リガクインターナショナルコーポレーション(Rigaku International Corporation)製造)によって測定した。分析方法は次のとおりである。
X線放射源:銅(Cu)
チューブ電圧/チューブ電流:40kV/30mA
モノクロメーター:自動モノクロメーター
ゴニオメーター:広角ゴニオメーター
スキャンステップ:0.02度(deg.)
スキャン速度:2.00度(deg.)/分
ディバージェンス・スリット(divergence slit):1度(deg.)
スキャッターリング・スリット(scattering slit):1度(deg.)
レシービング・スリット(receiving slit):0.15mm
測定温度:室温
残留溶媒測定:
エタノール<0.01%
残留溶媒含量はヘッドスペ−スサンプラ/ガスクロマトグラフ/質量選択的検出器(HSS/GC/MSD)(アジレント・テクノロジー(Aglilent Technoloies)製造)によって測定した。
吸湿性試験:
吸湿性試験は、アイガソープ モイスチャー ソープション アナライザー、ハイデン アナリティカル リミテッド(IGAsorp Moisture Sorption Analyzer、Hiden Analytical Limited)製造によって測定した(第3図参照)。
実施例1−2
化合物1の結晶の製法B(上記の製法4による):特開平10−245390号明細書の実施例14に記載の方法で調整した非結晶形の化合物1(30mg)を、エタノール(1.0ml)及び酢酸(0.005ml)に懸濁し、75℃で15時間加熱攪拌すると黄色結晶の生成が認められた。得られた溶液を室温に冷却した後、この結晶を濾取し、エタノール(1ml)で3回洗浄し、50℃で120時間減圧下乾燥することにより、29mgの黄色結晶の化合物1を得た。
なお、実施例1−2で示した方法により得られた結晶も実施例1−1と同様の粉末X線回折スペクトルをしめした。
実施例2−1

化合物2の結晶の製法A(上記の製法1による): 特開平10−245390号明細書の実施例14に記載の方法で調整した非結晶形の化合物1(500mg)をメタノール(300ml)及び塩酸−メタノール試薬(10ml)からなる混合溶媒に加え、4時間加熱還流した。化合物1を完全に溶解した後、得られた溶液から200mlのメタノールを常圧で留去することにより濃縮し、析出した固体の懸濁溶液をそのまま15時間加熱還流した。室温に冷却した後、得られた固体を濾取し、メタノール(1ml)で3回洗浄し、40℃で24時間減圧下乾燥すると、393mgの黄色固体が得られた。こうして得られた黄色固体(240mg)をエタノール(6ml)に懸濁し、75℃で20時間加熱攪拌した。室温に冷却した後、黄色結晶を濾取し、エタノール(1ml)で3回洗浄し、50℃で72時間減圧下乾燥することにより、黄色結晶の化合物2(235mg)を得た。
ESI(m/z):654 (M−H)
H−NMR(400 MHz、DMSO−d6、δppm):11.18(1H、s)、9.82(2H、s)、8.83(2H、m)、8.76(1H、d、J=8.4Hz)、8.71(1H、s)、8.51(1H、d、J=5.9Hz)、7.17(1H、d、J=1.8Hz)、6.97(1H、d、J=2.2Hz)、6.83(1H、dd、J=8.4、1.8Hz)、6.81(1H、dd、J=8.4,2.2Hz)、5.97(1H、d、J=8.8Hz)、4.83(2H、s)、4.58(2H、s)、3.72〜4.03(4H、m)、3.40〜3.55(2H、m)
IR(ATR):3240,1738,1693,1620,1576,1472,1410,1377,1339,1321,1225,1186,1121,1051,1005,905,829,818,743 cm−1
純度:99.1%
上記純度データは実施例1−1と同じ条件で測定された。


上記粉末X線回折分析データは実施例1−1と同じ条件で測定された。
イオン定量:
塩酸(HCl) 1.01 モル比率
イオン定量はキャピラリー電気泳動(HPCE,Agilent Technoplogies製造)によって測定した。
残留溶媒:エタノール(EtOH)<0.01%
上記残留溶媒分析データは実施例1−1と同じ条件で測定された。
実施例2−2
化合物2の結晶の製法B(上記の製法3による): 特開平10−245390号明細書の実施例14に記載の方法で調整した非結晶形の化合物1(30mg)を、エタノール(1.0ml)及び1モル濃度(M)塩酸水溶液(0.09ml)に懸濁し、75℃で15時間加熱攪拌すると黄色結晶の生成が認められた。得られた溶液を室温で冷却した後、この結晶を濾取し、エタノール(1ml)で3回洗浄し、50℃で24時間減圧下乾燥することにより、黄色結晶の化合物2(29mg)を得た。
なお、実施例2−2で示した方法により得られた結晶も実施例2−1と同様の粉末X線回折スペクトルを示した。
【実施例3】

化合物3の結晶の製法(上記の製法5による): 特開平10−245390号明細書の実施例14に記載の方法で調整した非結晶形の化合物1(500mg)を、エタノール(180ml)、水(180ml)および、硫酸(0.0407ml)からなる混合溶媒に加え、70℃で加熱攪拌することにより溶解した。この溶液を、室温で18時間ゆっくり攪拌すると、燈色結晶が析出した。この結晶を濾取し、エタノール(1ml)で3回洗浄し、50℃で72時間減圧下乾燥することにより、燈色針状結晶の化合物3(491mg)を得た(第6図参照)。
ESI(m/z):654 (M−H)
H−NMR(400 MHz、DMSO−d6、δppm):11.19(1H、s)、9.80(1H、s)、9.77(1H、s)、8.84(1H、d、J=8.8Hz)、8.78(1H、d、J=8.8Hz)、8.63(1H、d、J=5.5Hz)、8.62(1H、s)、8.08(1H、d、J=5.5Hz)、7.17(1H、d、J=1.1Hz)、6.97(1H、d、J=1.8Hz)、6.83(1H、dd、J=8.8、1.1Hz)、6.80(1H、dd、J=8.8,1.8Hz)、6.41(1H、bs)、5.97(1H、d、J=8.8Hz)、5.87(1H、bs)、5.05〜5.72(3H、m)、4.92(1H、bs)、4.79(2H、s)、4.48(2H、s)、3.76〜4.03(4H、m)、3.41〜3.54(2H、m)
IR(ATR):3290,2360,1744,1692,1618,1578,1458,1400,1375,1329,1231,1196,1120,1049,1015,739 cm−1
純度:98.4%
上記純度データは実施例1−1と同じ条件で測定された。
イオン定量:
SO 0.48 モル比率
上記イオン定量分析データは実施例2−1と同じ条件で測定された。
残留溶媒:エタノール 検出されず
上記残留溶媒分析データは実施例1−1と同じ条件で測定された。
【実施例4】

化合物4の結晶の製法(上記の製法5による): 特開平10−245390号明細書の実施例14に記載の方法で調整した非結晶形の化合物1(50mg)を、エタノール(1.8ml)、水(0.5ml)、及びメタンスルホン酸(0.0099ml)からなる混合溶媒に加え、65℃で加熱攪拌することにより溶解した。この溶液を、室温で22時間ゆっくり攪拌すると、黄燈色結晶が析出した。この結晶を濾取し、エタノール(1ml)で3回洗浄し、50℃で72時間減圧下乾燥することにより、黄燈色結晶の化合物4(49mg)を得た(第7図参照)。
ESI(m/z):654 (M−H)
H−NMR(400 MHz、DMSO−d6、δppm):11.18(1H、s)、9.80(1H、s)、9.77(1H、s)、8.84(1H、d、J=8.4Hz)、8.81(1H、d、J=5.5Hz)、8.76(1H、d、J=8.4Hz)、8.71(1H、s)、8.46(1H、d、J=5.5Hz)、7.17(1H、s)、6.97(1H、s)、6.82(1H、d、J=8.4Hz)、6.79(1H、d、J=8.4Hz)、6.52(1H、bs)、5.97(1H、d、J=9.5Hz)、5.83(1H、bs)、4.83(2H、s)、4.56(2H、s)、3.75〜4.02(4H、m)、3.40〜3.53(2H、m)、2.30(3H、s)
IR(ATR):3311,1747,1699,1620,1583,1456,1329,1196,1153,1124,1042,1016,779,742 cm−1
イオン定量:
メタンスルホン酸(CHSOH) 1.00 モル比率
上記イオン定量分析データは実施例2−1と同じ条件で測定された。
残留溶媒:エタノール 検出されず
上記残留溶媒分析データは実施例1−1と同じ条件で測定された。
【実施例5】

化合物5の結晶の製法(上記の製法3による):特開平10−245390号明細書の実施例14に記載の方法で調整した非結晶形の化合物1(109mg)を、エタノール(3.6ml)及びメタンスルホン酸(0.022ml)に懸濁し、75℃で15時間加熱攪拌すると、黄色結晶の生成が認められた。得られた溶液を室温に冷却した後、この結晶を濾取し、エタノール(1ml)で3回洗浄し、50℃で72時間減圧下乾燥することにより、黄色結晶の化合物5(107mg)を得た。
ESI(m/z):654 (M−H)
H−NMR(400 MHz、DMSO−d6、δppm):11.18(1H、s)、9.77(2H、bs)、8.83(1H、d、J=8.8Hz)、8.83(1H、d、J=5.9Hz)、8.86(1H、d、J=8.8Hz)、8.71(1H、s)、8.50(1H、d、J=5.9Hz)、7.17(1H、s)、6.97(1H、s)、6.82(1H、d、J=8.8Hz)、6.80(1H、d、J=8.8Hz)、5.97(1H、d、J=8.4Hz)、4.83(2H、s)、4.57(2H、s)、3.75〜4.03(4H、m)、3.42〜3.52(4H、m)、2.30(3H、s)、1.05(3H、t、J=7.0Hz)
IR(ATR):3312,2341,1753,1707,1622,1581,1456,1377,1327,1232,1196,1111,1022,745,635,617 cm−1
純度:99.2%
上記純度データは実施例1−1と同じ条件で測定された。

上記粉末X線回折分析データは実施例1−1と同じ条件で測定された。
イオン定量:
メタンスルホン酸 1.14 モル比率
上記イオン定量分析データは実施例2−1と同じ条件で測定された。
残留溶媒: エタノール 5.49%
上記残留溶媒分析データは実施例1−1と同じ条件で測定された。
【実施例6】


化合物7の結晶の製法(上記の製法3による): 特開平10−245390号明細書の実施例27に記載の方法で調整した非結晶形の化合物6(500mg)を、エタノール(15ml)及び6M塩酸水(0.25ml)に懸濁し、75℃で168時間加熱攪拌すると、燈色結晶の生成が認められた。得られた溶液を室温に冷却した後、この結晶を濾取し、エタノール(1ml)で3回洗浄し、50℃で72時間減圧下乾燥することにより、燈色結晶の化合物7(430mg)を得た。
ESI(m/z):654 (M−H)
H−NMR(400 MHz、DMSO−d6、δppm):11.18(1H、s)、9.82(2H、s)、8.80(1H、d、J=8.8Hz)、8.73(1H、d、J=8.8Hz)、8.38(1H、t、J=7.3Hz)、8.13(1H、d、J=7.3Hz)、7.77(1H、d、J=7.7Hz)、7.17(1H、s)、6.97(1H、s)、6.83(1H、d、J=8.8Hz)、6.80(1H、d、J=8.8Hz)、5.97(1H、d、J=8.5Hz)、4.77(2H、s)、4.63(2H、s)、3.75〜4.03(4H、m)、3.42〜3.54(2H、m)
IR(ATR):3170,1738,1688,1614,1580,1415,1345,1290,1250,1198,1088,1061,1002,907,831,799,741 cm−1
純度:99.5%
上記純度データは実施例1−1と同じ条件で測定された。

上記粉末X線回折分析データは実施例1−1と同じ条件で測定された。
イオン定量:
塩酸 1.13 モル比率
上記イオン定量分析データは実施例2−1と同じ条件で測定された。
残留溶媒:エタノール 0.27%
上記残留溶媒分析データは実施例1−1と同じ条件で測定された。
実施例7−1

化合物8の結晶の製法:
1)非晶形の化合物8の製法

化合物A(ヒドラジン体)6.3g及び4−ピリジンカルボアルデヒド1.45mlをメタノール210mlに溶解し、1.76mlの酢酸を加えた後、70℃で終夜撹拌した。析出した固体を濾別してメタノールで洗浄した後、得られた固体をメタノールー−テトラヒドロフラン(1:1)の混合溶媒7.0Lに溶解し、10%パラジウム炭素1gを加え、水素雰囲気下で終夜撹拌した。得られた反応液をセライトで濾過したのち、その濾液を濃縮した。残差をセファデックスLH−20カラムクロマトグラフィに充填し、メタノールで展開した。目的とする分画を濃縮乾燥することにより化合物8(3.3g)を得た。
2)化合物8の結晶の製法(上記の製法2による)
上記1)で調整した非結晶形の化合物8(250mg)を、メタノール(500ml)及び酢酸(0.135ml)に加え、15分間加熱還流した。化合物8を完全に溶解した後、得られた溶液から430mlのメタノールを常圧で留去することにより濃縮し、析出した固体の懸濁溶液をそのまま2.5時間加熱還流した。この溶液を室温に冷却した後、得られた固体を濾取し、メタノール(1ml)で3回洗浄し、50℃で2時間減圧下乾燥すると、200mgの黄色固体が得られた。こうして得られた黄色固体(200mg)をエタノール(5ml)に懸濁し、75℃で20時間加熱攪拌した。得られた溶液を室温に冷却した後、黄色結晶を濾取し、エタノール(1ml)で3回洗浄し、50℃で72時間減圧下乾燥することにより、黄色結晶の化合物8(197mg)を得た。
ESI(m/z):624 (M−H)
H−NMR(400 MHz、DMSO−d6、δppm):11.17(1H、s)、9.78(1H、s)、9.76(1H、s)、8.84(1H、d、J=8.8Hz)、8.76(1H、d、J=8.8Hz)、8.47(2H、d、J=5.5Hz)、7.54(2H、d、J=5.5Hz)、7.16(1H、d、J=1.8Hz)、6.96(1H、d、J=1.8Hz)、6.82(1H、dd、J=8.8、1.8Hz)、6.80(1H、dd、J=8.8,1.8Hz)、6.32(1H、t、J=3.7Hz)、5.95(1H、d、J=8.4Hz)、5.87(1H、t、J=3.7Hz)、5.34(1H、d、J=3.7Hz)、5.12(1H、d、J=4.8Hz)、4.91(1H、d、J=4.8Hz)、4.33(2H、d、J=4.4Hz)、3.76〜4.02(4H、m)、3.44〜3.52(2H、m)
IR(ATR):1749,1690,1630,1578,1456,1400,1369,1329,1253,1196,1153,1121,1080,1061,1013,800,743,617 cm−1
純度:98.2%
上記純度データは実施例1−1と同じ条件で測定された。


上記粉末X線回折分析データは実施例1−1と同じ条件で測定された。
残留溶媒:
エタノール 0.10%、 メタノール 0.32%
上記残留溶媒分析データは実施例1−1と同じ条件で測定された。
実施例7−2
化合物8の結晶の製法B(上記の製法4による): 実施例7−1の1)に記載の方法で調整した非結晶形の化合物8(30mg)を、エタノール(1ml)及び酢酸(0.005ml)に懸濁し、75℃で15時間加熱攪拌すると、黄色結晶の生成が認められた。得られた溶液を室温に冷却した後、この結晶を濾取し、エタノール(1ml)で3回洗浄し、50℃で15時間減圧下乾燥することにより、27mgの黄色結晶の化合物8を得た。
実施例7−2で示した方法により得られた結晶も実施例7−1と同様の粉末X線回折スペクトルを示した。
【実施例8】

化合物9の結晶の製法A(上記の製法3による): 実施例7−1の1)に記載の方法で調整した非結晶形の化合物8(300mg)を、エタノール(10ml)及び1M塩酸水(0.9ml)に懸濁し、75℃で114時間加熱攪拌すると、燈色結晶の生成が認められた。得られた溶液を室温に冷却した後、この結晶を濾取し、エタノール(1ml)で3回洗浄し、50℃で72時間減圧下乾燥することにより、燈色結晶の化合物9(279mg)を得た。
ESI(m/z):624 (M−H)
H−NMR(400 MHz、DMSO−d6、δppm):11.18(1H、s)、9.83(2H、s)、8.85(2H、d、J=6.2Hz)、8.84(1H、d、J=8.4Hz)、8.76(1H、d、J=8.4Hz)、8.27(2H、d、J=6.2Hz)、7.17(1H、d、J=1.1Hz)、6.97(1H、d、J=1.9Hz)、6.83(1H、dd、J=8.4、1.1Hz)、6.81(1H、dd、J=8.4,1.9Hz)、5.96(1H、d、J=8.8Hz)、4.64(2H、s)、3.75〜4.03(4H、m)、3.42〜3.55(2H、m)
IR(ATR):3312,1740,1666,1616,1576,1481,1381,1319,1190,1159,1123,1074,739,613 cm−1
純度:98.2%
上記純度データは実施例1−1と同じ条件で測定された。

上記粉末X線回折分析データは実施例1−1と同じ条件で測定された。
イオン定量:
塩酸 0.97 モル比率
上記イオン定量分析データは実施例2−1と同じ条件で測定された。
残留溶媒:エタノール 検出されず
上記残留溶媒分析データは実施例1−1と同じ条件で測定された。
参考例: 結晶化による式(II)で示される化合物の高純度化例
特開平10−245390の実施例14に示す方法で調整した未精製の化合物(II)(純度88%)を製法2により結晶化したところ純度98%の化合物(II)を得た。
【産業上の利用可能性】
結晶形態の式(I)で示される化合物は、対応する非晶形の化合物に比べて際だって優れた安定性、溶解度などを示すので、抗がん剤の有効成分として産業上の利用可能性がある。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I):

(式中、Rは、無置換又はヒドロキシメチル基で置換されたピリジルメチル基を表す。)で示される結晶形態の6−N−ピリジルメチルアミノ−12,13−ジヒドロ−2,10−ジヒドロキシ−12−β−D−グルコピラノシル−5H−インドロ[2,3−a]ピロロ[3,4−c]カルバゾール−5,7(6H)−ジオンの遊離塩基、その医薬上許容される塩又はその溶媒和物。
【請求項2】
式(I)の化合物が、下記式(II):

で示される化合物;
下記式(III):

で示される化合物;又は
下記式(IV):

で示される化合物である、請求の範囲1記載の遊離塩基、その医薬上許容される塩、又はその溶媒和物。
【請求項3】
式(I)の化合物が、請求の範囲2記載の式(II)で示される化合物であり、かつ、その医薬上許容される塩が、塩酸塩、硫酸塩、又はメタンスルホン酸塩であるか;
式(I)の化合物が、請求の範囲2記載の式(III)で示される化合物であり、かつ、その医薬上許容される塩が塩酸塩、硫酸塩、又はメタンスルホン酸塩であるか;又は
式(I)の化合物が、請求の範囲2記載の式(IV)で示される化合物であり、かつ、その医薬上許容される塩が塩酸塩、硫酸塩、又はメタンスルホン酸塩である、請求の範囲1記載の医薬上許容される塩。
【請求項4】
式(I)の化合物が、請求の範囲2記載の式(II)、(III)、又は(IV)で示される化合物である、請求の範囲1記載の溶媒和物。
【請求項5】
式(I)の化合物が、請求の範囲2記載の式(II)で示される化合物であり、その医薬上許容される塩がメタンスルホン酸塩であり、かつ、エタノール和物である、請求の範囲1記載の溶媒和物。
【請求項6】
請求の範囲1記載の結晶形態の式(I)で示される化合物の製造方法であって、
非晶形の式(I)で示される化合物に対して、1等量から100等量の対応する酸を含むか又は適量の酢酸を含んでいてもよい有機溶媒溶液を、その濃度が50mg/Lから1g/Lになるように加える工程;
得られた溶液を加熱環流する工程;
必要に応じて、得られた溶液を濾過することにより不溶物を除去する工程;
得られた溶液から溶媒を留去し、濃縮する工程;
得られた固体の懸濁溶液を加熱環流する工程;
得られた懸濁溶液を0℃から35℃に冷却する工程;及び
得られた結晶を単離する工程、を含むことを特徴とする前記方法。
【請求項7】
請求の範囲1記載の結晶形態の式(I)で示される化合物の製造方法であって、
非晶形の式(I)で示される化合物を、1等量から100等量の対応する酸を含むか又は適量の酢酸を含んでいてもよい有機溶媒溶液に懸濁させる工程;
得られた溶液を40℃から130℃で加熱攪拌する工程;
得られた溶液を0℃から35℃に冷却する工程; 及び
得られた結晶を単離する工程、を含むことを特徴とする前記方法。
【請求項8】
請求の範囲1記載の結晶形態の式(I)で示される化合物の製造方法であって、
非晶形の式(I)で示される化合物を、水又は1等量から100等量の対応する酸を含む水溶液に加える工程;
得られた溶液を40℃から130℃で加熱攪拌する工程;
必要に応じて、得られた溶液を濾過することにより不溶物を除去する工程;
得られた反応溶液の温度を0℃から35℃に下げながら攪拌する工程;及び
得られた結晶を単離する工程、を含むことを特徴とする前記方法。
【請求項9】
薬学的に許容し得る担体又は希釈剤と一緒に、請求の範囲1記載の結晶形態の式(I)で示される化合物の遊離塩基、その医薬上許容される塩又はその溶媒和物を有効成分として含む、医薬組成物。
【請求項10】
薬学的に許容し得る担体又は希釈剤と一緒に、請求の範囲1記載の結晶形態の式(I)で示される化合物の遊離塩基、その医薬上許容される塩又はその溶媒和物の遊離塩基、その医薬上許容される塩又はその溶媒和物を有効成分として含む、抗がん剤。
【請求項11】
請求の範囲1記載の結晶形態の式(I)で示される化合物を用いた、注射用抗がん剤。
【請求項12】
式(I)で示される化合物が、請求の範囲2記載の式(II)、(III)、又は(IV)で示される化合物である、請求の範囲11記載の注射用抗がん剤。

【国際公開番号】WO2005/010019
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【発行日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−512073(P2005−512073)
【国際出願番号】PCT/JP2004/010741
【国際出願日】平成16年7月21日(2004.7.21)
【出願人】(000005072)萬有製薬株式会社 (51)
【Fターム(参考)】