説明

結晶性の多孔性有無機混成体及びその製造方法

本発明は、結晶性の多孔性有無機混成体及びその製造方法に関するものであって、具体的に結晶性の多孔性有無機混成体は、一つ以上の無機金属前駆体、一つ以上のリガンドとして作用することができる有機化合物及び溶媒を含有する反応物混合液を製造するステップ(ステップ1);及び前記反応物混合液から反応を通じて結晶性有無機混成体を形成するステップ(ステップ2)を含む方法により製造され、前記反応は、3気圧以下の圧力で行なわれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶性の多孔性有無機混成体及びその製造方法に関するものであって、具体的に結晶性の多孔性有無機混成体は、一つ以上の無機金属前駆体、一つ以上のリガンドとして作用することができる有機化合物及び溶媒を含有する反応物混合液を製造するステップ(ステップ1);及び前記反応物混合液から反応を通じて結晶性の多孔性有無機混成体を形成するステップ(ステップ2)を含む方法によって製造され、前記反応は、3気圧以下の圧力で行なわれる。
【背景技術】
【0002】
多孔性有無機混成体は、一般的に“多孔性配位高分子(porous coordination polymers)”とも言い[Angew.Chem.Intl.Ed.、43、2334.2004]、または“金属-有機骨格体(metal−organic frameworks)”とも言う[Chem.Soc.Rev.、32、276、2003]。前記多孔性有無機混成体は、分子配位結合と材料科学との接木により、最近、新しく発展し始め、前記多孔性有無機混成体は、高表面積と分子サイズまたはナノサイズの細孔を有しており、吸着剤、気体保存物質、センサー、メンブレイン、機能性薄膜、薬物伝達物質、触媒及び触媒担体等に用いられるだけでなく、細孔サイズよりも小さいゲスト分子を捕集するか、または細孔を利用して分子サイズに応じて分子を分離するのに用いられ得るので、最近、活発に研究されてきた。
【0003】
特に、結晶性の多孔性有無機混成体は、中心金属イオンが有機リガンドと結合して形成された多孔性の有無機高分子化合物と定義されることができ、且つ骨格構造内に有機物と無機物を全て含み、分子サイズまたはナノサイズの細孔構造を有する結晶性化合物を意味する。
【0004】
前記のような多孔性有無機混成体を製造するのにおいて、溶媒熱合成法を主に用いるが、水熱安全性を増加させるために酸を添加するステップを含む水熱合成法を用いたりもする。前記水熱合成により製造された代表的な多孔性有無機混成体としては、化学式がCrО(HО)F[C−(CО・nHО(n〜14.5)、FeO(HO)F[C-(CO]・nHO(n〜14.5)、CrF(HО)О[C(CО・nHО(n〜25)である多孔性有無機混成体が報告された[Science 23、2040、2005;Chemical Communication 2820、2007、Accounts of Chemical Research、38、217、2005]。しかし、前記従来の工程でのように、高圧条件で結晶化補助剤であるフッ酸を用いた場合、多孔性有無機混成体の実在的な応用ステップであるスケール-アップ工程への適用のための反応器の選択において、テフロン(登録商標)反応器以外には、材質の選択の面で非常に制限的であり、廃棄物の処理費用も相対的に高い問題があった。最近、韓国特許出願2007-0063881においては、既存の多孔性有無機混成体の合成に結晶化補助剤であるフッ酸を用いずに、硝酸を含む合成溶液から有無機混成体を製造する方法を発表した。しかし、有無機混成体の製造工程が3気圧以上の高圧条件で運転しなければならず、特に高圧(>3気圧以上)、高温条件で5%以上の高濃度酸を用いなければならないので、反応器の選択において多くの制限があった。
【0005】
一方、水分を容易に吸着及び脱着させる吸着剤は、多様な用途を有している。例えば、除湿器は、低温で水分を吸着した後、高温に加熱すれば、脱着される特性を有する吸着剤を活用することができる。また、冷・暖房機に吸着剤を活用すれば、暖房時には低い温度の室外の湿気を吸着した後、室内に流入し、高温の室内で脱着して加湿器の役割の代わりにすることもでき、冷房時には、低い温度の室内の湿気を吸着し、高い温度の室外で脱着し、室外に送ることもでき、快適な室内雰囲気を得ることができる。このような概念を適用したエアコン及び湿度調節器が米国登録特許6978635号、同6959875号、同6675601等で提案されている。しかし、このような装置に用いられた吸着剤について詳しくは言及されておらず、シリカゲル、ゼオライト、イオン交換樹脂を用いるとのみ言及されているか、または吸着剤を用いるとのみとされている。また、このような吸着剤の場合、吸着量が低いだけでなく、脱着にも100℃以上の高温が要求される等、運転コストの上昇の原因となる。
【0006】
最近、韓国登録特許806586号は、低温で水分の吸着及び脱着をすることができる多孔性有無機混成体に関する適用例を報告した。しかし、表面積が1,000m以上、細孔体積1.0ml/g以上に結晶化しなければならないので、追加の精製工程による製造工程の費用が非常に高くなる短所があった。
【0007】
従って、吸着剤として容易に用いるためには、低温でも脱着可能であり、吸着量及び脱着量の差が大きく、製造工程は経済的な吸着剤の開発が非常に必要である。しかし、吸着量が増加すれば、脱着が難しく、吸着量が少ない場合には吸着量と脱着量の差の少ない問題が常に存在した。
【0008】
また、現在まで室内空間内の存在する有機化合物を除去することができる吸着剤としては、活性炭及び疎水性ゼオライトを主に用いた。活性炭は、微細洞空が発達され、比表面積が非常に大きく、非極性分子に対する吸着力が強く、排気ガスの除去、臭いの除去及び脱色効果に優れるのに対し、ゼオライトは、3〜10Å程度の細孔径を有する親水性吸着剤であって、一酸化炭素、二酸化炭素及び水分吸着特性が強い特性を有する。しかし、ほとんどが疎水性または親水性特性のみを有しており、水が含まれた揮発性有機化合物を効果的に吸着して除去することは容易でない短所があった。
【0009】
よって、本発明者は、3気圧以下の低圧、高濃度(溶媒/金属前駆体のモル比≦100)の合成条件で、均一な粒度分布を有する結晶性の多孔性有無機混成体を開発した。前記結晶性の多孔性有無機混成体を含む吸着剤は、低温でも水分吸・脱着が容易であり、水分吸着剤、ヒートポンプ、乾燥剤、下水処理用吸着剤/乾燥剤、冷凍機用吸着剤、冷房及び空気空調器用吸着剤への応用が可能であり、従来、常用化された吸着剤よりも揮発性有機化合物(VOCs)に対して優れた吸着効果を示すという点を確認し、本発明を完成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、3気圧以下の低圧で結晶化補助剤であるフッ素の有無に関係なく、結晶性の多孔性有無機混成体を効果的に製造する方法、及びそれにより製造される結晶性の多孔性有無機混成体を提供するのにある。また、前記結晶性の多孔性有無機混成体を含む吸着剤は、低温でも特定物質に対する吸・脱着性質に優れるという点を利用し、水分吸着剤、ヒートポンプ、乾燥剤、下水処理用吸着剤/乾燥剤、冷凍機用吸着剤、冷房及び空気空調用吸着剤、触媒等への応用が可能であり、揮発性有機化合物の除去に有用である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明は、高濃度の合成条件で結晶化の速度を画期的に増加させ、用いられた溶媒の自動吸着速度を調節することにより、3気圧以下の低圧製造条件を確立し、結晶化補助剤であるフッ酸の有無に関係なく、結晶性の多孔性有無機混成体を合成することができる製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、結晶性の多孔性有無機混成体の製造時に、高濃度の合成条件で結晶化の速度を画期的に増加させることができ、反応中に結晶形成の速度と溶媒自動吸着の速度を調節することにより、3気圧以下の低圧条件であるにもかかわらず、高い結晶性を有し、均一な粒度分布を有する結晶性の多孔性有無機混成体を提供することができる。特に、本発明の多孔性有無機混成体を水分吸着剤として用いる場合、100℃以下の低温で脱着が容易に起こる。前記吸着剤が低温でも水分吸脱着が容易であり、気相及び液相化合物に対し、吸・脱着特性に優れるという点を利用し、水分吸着剤、ヒートポンプ、乾燥剤、下水処理用吸着剤/乾燥剤、冷凍機用吸着剤、冷房及び空気空調用吸着剤及び触媒への応用が可能である。また結晶性の多孔性有無機混成体を室内空間内に存在する微量の室内汚染物質等を除去のための触媒及び吸着剤として用いる場合、特定の有害物質を効果的に除去することができ、シックハウス症候群の防止、各種有害物質の除去に有用に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、一例示的な実施様態による結晶性の多孔性有無機混成体のX-線回折スペクトラムの結果である。
【図2】図2は、一例示的な実施様態による窒素吸・脱着実験の結果である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
下記の詳細な説明において、本願の一部を形成する、添付された図面を参照する。詳細な説明、図面及び請求の範囲に記載された例示的な実施様態は、制限的なものであって、意図されたものではない。本願に提示された主題対象の思想または範囲から外れることなく、他の実施様態が利用されることができ、他の変更がなされることができる。本願に全般的に記載され、図面で例示されているように、本願に開示された事項は、非常に広範囲であり、異なる構成で、配列、置換、組み合わせ及び設計されることができ、これらの全ての構成は明白に考慮され、本開示の一部を成すという点は容易に理解されるだろう。
【0015】
一実施様態において、結晶性の多孔性有無機混成体は、下記ステップを含む方法により製造される:一つ以上の無機金属前駆体、一つ以上のリガンドとして作用することができる有機化合物及び溶媒を含有する反応物混合液を製造するステップ(ステップ1);及び前記反応物混合液から反応を通じて、結晶性の多孔性有無機混成体を形成するステップ(ステップ2)。ここで、前記反応は、3気圧以下の圧力で行なわれる。
【0016】
以下、結晶性の多孔性有無機混成体の製造方法をステップ別に詳細に説明する。
【0017】
一実施様態による前記結晶性有無機混成体の製造方法において、ステップ1は、一つ以上の無機金属前駆体、一つ以上のリガンドとして作用することができる有機化合物及び溶媒を含有する反応物混合液を製造するステップである。
【0018】
無機金属前駆体として用いられる金属元素を含む化合物の例は、一つ以上の金属ハルライドまたはこの水和物、金属ナイトレートまたはこの水和物、金属スルフェートまたはこの水和物、金属アセテートまたはこの水和物、金属カルボニル、金属アルコキシドのような金属塩またはこの水和物等を含む。一実施様態において、前記結晶性の多孔性有無機混成体の金属前駆体内の金属は、いかなる金属でも可能であり、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Ru、Оs、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、As、Sb、Bi等が代表的な金属物質である。特に、配位化合物を作りやすい転移金属が好ましい。一部の実施様態において、転移金属のうち、クロム、バナジウム、鉄、ニッケル、コバルト、銅、チタン、ジルコニウム、マンガン等が好ましく、クロムまたは鉄がさらに好ましい。他の実施様態において、転移金属の他にも配位化合物を作る典型元素はもちろん、ランタンのような金属も可能である。典型元素の中では、アルミニウム及びシリコンが適当であり、ランタン金属の中では、セリウム、イットリウム、テルビウム、ユーロピウム、ランタンが適当である。金属源としては、金属自体はもちろん、金属のいかなる化合物も用いることができる。
【0019】
結晶性の多孔性有無機混成体のまた一つの構成元素であるリガンドとして作用することができる有機化合物は、リンカー(linker)とも言い、配位することができる作用基を有するいかなる有機化合物も可能である。一部の実施様態において、配位することができる作用基の例は、カルボキシル基、カルボン酸陰イオン基、アミノ基(−NH)、イミノ基(>C=NH)、アミド基(−CОNH)、スルホン酸基(−SОH)、スルホン酸陰イオン基(−SО)、メタンジチオ酸基(−CSH)、メタンジチオ酸陰イオン基(−CS)、ピリジン基またはピラジン基等を一つ以上含むことができるが、これに制限されるものではない。
【0020】
一実施様態において、有機リガンドの例は、配位することができる部位が2個以上である化合物、例えば、バイデンテート(bidentate)、トリデンテート(tridentate)のようなポリデンテート(polydentate)有機化合物を含むことができる。前記有機リガンドの例は、配位する部位があれば、中性有機化合物、例えば、ビピリジン、ピラジン等、陰イオン性有機化合物、例えば、テレフタルレート、ナフタレンジカルボキシレート、ベンゼントリカルボキシレート、ベンゼントリベンゾエート、ピリジンジカルボキシレート、ビピリジルジカルボキシレート等のような一つ以上のカルボン酸の陰イオン性化合物を含むことができる。一実施様態において、カルボキシレート誘導体として、ベンゼン環にCl、Br、I、NO、NH、COOH、SOH等が含まれたカルボキシレートを用いることができる。
【0021】
他の実施様態において、カルボン酸の陰イオン性有機リガンドとして、テレフタルレートのような芳香族環を有する陰イオンの他に、例えば、ホルメート、オキサレート、マロネート、サクシネート、グルタメート、ヘキサンジオエート、ヘプタンジオエートのような線状のカルボン酸の陰イオン、シクロヘキシルジカルボキシレートと共に、非芳香族リングを有する陰イオン等を用いることができるが、これに制限されるものではない。
【0022】
他の実施様態において、有機リガンドは、ジヒドロキシテレフタレート、またはこの誘導体であり得る。一部の例示的な実施様態において、有機リガンドとして、2,5-ジヒドロキシテレフタルレートまたはこの誘導体が含まれることができる。一実施様態において、ジヒドロキシテレフタレート誘導体として、ベンゼン環にCl、Br、I、NO、NH、COOH、SOH等が含まれたジヒドロキシテレフタレートを用いることができる。
【0023】
他の実施様態において、有機リガンドとして作用し得る有機化合物として、配位することができる部位がある有機化合物だけでなく、潜在的に配位することができる部位を有しており、反応条件で配位することができるように変化される有機化合物を用いることができる。例えば、テレフタル酸のような有機酸を用いる場合、反応後には、テレフタルレートに変換され、金属成分と結合することができる。一部の実施様態において、このような有機化合物の例は、ベンゼンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、ベンゼントリカルボン酸、ナフタレントリカルボン酸、ベンゼントリ安息香酸、ピリジンジカルボン酸、ビピリジルジカルボン酸、ギ酸、蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタミン酸、ヘキサンジオ酸、ヘプタンジオ酸、シクロヘキシルジカルボン酸のような有機酸及びそれらの陰イオン、ピラジン、ビピリジン、ジヒドロキシテレフタル酸等を含むことができる。一部の実施様態において、一つ以上の有機物を混合して用いることができる。
【0024】
一実施様態において、前記ステップ1において、金属成分と有機化合物を共に溶解させることができる溶媒が必要である。例えば、溶媒として、水;メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類;EG(エチレングリコール(ethylene glycol)、グリセロール等のアルキレンポリオール;ポリエチレングリコール等のポリアルキレンポリオール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の炭化水素類;N,N-ジメチルホルムアミド(DMF);N,N-ジエチルホルムアミド(DEF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、アセトニトリル、ジオキサン、クロロベンゼン、ピリジン、N-メチルピロリドン(NMP)、スルホラン、テトラハイドロフラン(THF)、ガンマ-ブチロラクトン、シクロヘキサノールのような指環族アルコール等、いかなる物質も使用可能であり、二つの以上の溶媒を混ぜて用いることもでき、このうち、水またはアルコールを溶媒として用いることが好ましい。
【0025】
前記ステップ2は、前記反応物混合液から反応を通じて結晶性の多孔性有無機混成体を形成するステップ(ステップ2)であって、前記反応は、3気圧以下の圧力で行なわれる。
【0026】
結晶性の多孔性有無機混成体は、既存の公知になったいかなる方法でも、合成が可能であり、公知になった製造方法には、水熱合成(hydrothermal)、ソルボサーマル合成、マイクロ波の照射、音波(Sono)の合成方法等が含まれることができる。一実施様態において、結晶性の多孔性有無機混成体は、室温近傍で溶媒の拡散(solvent diffusion)を利用するか、または水を溶媒として用いて、高温で反応させる水熱合成で製造されることができる。他の実施様態において、結晶性の多孔性有無機混成体は、有機物を溶媒として用いるソルボサーマル合成を通じて製造されることができる[Microporous Mesoporous Mater.、vol73、p.15、(2004)]。また他の実施様態において、結晶性の多孔性有無機混成体は、ゼオライトやメゾ細孔体化合物のような他の無機多孔性物質の製造方法と類似に水や適当な有機溶媒を用いて、溶媒や混合溶液の沸点以上の合成温度と自然蒸気圧(autogeneous pressure)状態下で結晶化過程を経て、一般的に製造される。一部の実施様態において、金属イオンまたはその化合物及び有機リガンドを溶媒存在下で一定時間撹拌または超音波を照射し、有機物が金属と配位結合するようにして結晶核を形成させ、前記のような結晶核が形成された反応液にマイクロ波を照射して結晶化反応を行うことができる。
【0027】
一実施様態において、結晶性の多孔性有無機混成体は、金属前駆体と有機リガンドとして作用することができる有機化合物を反応させることにより製造されることができる。一部の実施様態において、結晶性の多孔性有無機混成体は、金属前駆体、有機リガンドとして作用することができる有機化合物及び溶媒を含む反応物混合液(reaction mixture)を加熱するステップを含む方法で製造されることができる。
【0028】
反応物混合液の加熱温度は、実質的に制限されない。一部の実施様態において、反応物混合液の加熱温度は、室温以上であり得る。他の実施様態において、反応物混合液の加熱温度は、25℃以上であり得、また他の実施様態において、反応物混合液の加熱温度は、50℃以上、60℃以上、80℃以上、または100℃以上であり得る。一部の実施様態において、加熱温度は、250℃以下であり得る。
【0029】
反応物混合液の加熱ステップにおいて、反応圧力は実質的に制限されず、反応温度での反応物の自動圧力(autogeneous pressure)で合成することが簡便である。しかし、一部の例示的な実施様態において、高濃度の合成条件で結晶化の速度を画期的に増加させ、反応中に結晶の形成速度と溶媒自動吸着の速度を調節するため、3気圧以下の低圧条件で反応することが好ましい。一部の実施様態において、前記反応は、2.5気圧以下、または2気圧以下で行なわれることができる。理論にこだわることではないが、沸点が反応温度以下に低い溶媒を用いても、反応中に生成される多孔性有無機混成体結晶が溶媒を急速に吸着され、圧力が上昇されないものと考えられる。一実施様態によって、低圧条件で反応を進行させる場合、高価の高圧反応器の代わりに、多様な種類の安価な反応器を用いることができ、結晶性の多孔性有無機混成体の製造のための投資費用を節減することができる。
【0030】
一実施様態において、前記反応は、反応物混合液のうち、金属前駆体が高濃度である条件で行なわれる。例えば、反応物の混合液のうち、無機金属前駆体に対する溶媒のモル比は100以下である。他の実施様態において、反応物の混合液のうち、無機金属前駆体に対する溶媒のモル比は60以下、50以下または25以下である。高濃度である条件で反応を進行させる場合、多孔性有無機混成体の結晶化の速度及び/または得られる結晶性の多孔性有無機混成体の反応器単位体積当り収率の収率を高めることができる。
【0031】
また他の実施様態による結晶性の多孔性有無機混成体の製造方法において、前記ステップ2で得られた多孔性有無機混成体を無機塩、酸度調節剤、溶媒またはこれらの混合物で処理して精製するステップを含むことができる。結晶性の多孔性有無機混成体の細孔内に存在する金属、塩及びその対イオン(counterr ion)または有機リガンドを除去するために、溶媒、無機塩、酸度調節剤を用いて細孔内にキレーションされた有機または無機物不純物を除去し、多孔性有無機混成体の表面積を増加させるステップでさらに行なうことができる。
【0032】
一実施様態による無機塩は、アンモニウムイオン(NH)、アルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群より選ばれる1価または2価の陽イオンと、ハロゲン陰イオン、炭酸イオン(CO2−)、窒酸イオン及び硫酸イオンからなる群より選ばれる1価または2価の陰イオンを含むことができる。一部の実施様態において、無機塩の例は、2価陽イオンとして、Ca2+またはMg2+を含む塩、他の実施様態において、1価陰イオンとして、F、IまたはBrを含む塩、また他の実施様態において、1価陽イオンと2価陰イオンを含む塩、一例示的な実施様態において、NHF、KF、KI、KBrを含むことができる。
【0033】
酸度調節剤を用いることにより、結晶性の多孔性有無機混成体の精製工程の時間を短縮し、経済的な精製工程を具現することができる。一実施様態において、pH調節剤として、塩基性化合物を用いることができ、好ましくは、アンモニアまたは塩化カリウム(KOH)を用いることができる。
【0034】
一実施様態による結晶性の多孔性有無機混成体は、下記化学式で表される化合物またはこの水和物から選ばれる1種以上の化合物が適当である:MX(HO)O[C4-yZ'(CO](M=Fe、Mn、Cr、V、Al、Ti、ZrまたはMg;X=Cl、Br、I、FまたはOH;ZまたはZ'=H、NH、Br、I、NOまたはOH;0≦y≦4);MO(HO)X[C3-yZ'-(CO](M=Fe、Mn、Cr、V、Al、Ti、ZrまたはMg;X=Cl、Br、I、FまたはOH;ZまたはZ'=H、NH、Br、I、NOまたはOH;0≦y≦3);MO(HO)1-y(OH)[C-(CO](0≦y≦1;M=Fe、Mn、Cr、V、Al、Ti、ZrまたはMg;X=Cl、Br、IまたはF);またはM1-y(OH)(HO)O[C(CO](0≦y≦1;M=Fe、Mn、Cr、V、Al、Ti、ZrまたはMg;X=Cl、Br、IまたはF)。
【0035】
一実施様態において、結晶性の多孔性有無機混成体は、下記の化学式で表される化合物、またはこの水和物から選ばれる1種以上の化合物である:M(OH)[C4-yZ'(CO]12(M=Ti、SnまたはZr;ZまたはZ'=H、NH、Br、I、NOまたはOH;0≦y≦4);またはM(dhtp)(HO)(M=Ni、Co、Mg、MnまたはFe;dhtp=2,5-ジヒドロキシテレフタル酸)。
【0036】
一実施様態において、多孔性有無機混成体は、下記のステップを含む方法で製造される:金属前駆体、有機リガンドとして作用することができる有機化合物及び溶媒を含有する反応物混合液を製造するステップ;及び前記反応物混合液を加熱するステップ。
【0037】
さらに、前記結晶性の多孔性有無機混成体は、MO(HO)1-y(OH)[C-(CO]・nHO(0≦y≦1;M=Cu、Fe、Mn、Cr、V、Al、Ti、ZrまたはMg;X=Cl、Br、IまたはF;0≦n≦100)または、M1-y(OH)(HO)O[C(CO]・nHO(0≦y≦1;M=Cu、Fe、Mn、Cr、V、Al、Ti、ZrまたはMg;X=Cl、Br、IまたはF;0≦n≦100)の化学構造式を有することができ、前記化学式において、Xが-OHで部分的に置換されることができる。
【0038】
一実施様態において、結晶性の多孔性有無機混成体は、銅テレフタレート、鉄テレフタレート、マンガンテレフタレート、クロムテレフタレート、バナジウムテレフタレート、アルミニウムテレフタレート、チタニウムテレフタレート、ジルコニウムテレフタレート、マグネシウムテレフタレート、銅ベンゼントリカルボキシレート、鉄ベンゼントリカルボキシレート、マンガンベンゼントリカルボキシレート、クロムベンゼントリカルボキシレート、バナジウムベンゼントリカルボキシレート、アルミニウムベンゼントリカルボキシレート、チタニウムベンゼントリカルボキシレート、ジルコニウムベンゼントリカルボキシレート、マグネシウムベンゼントリカルボキシレート、これらの誘導体、これらの溶媒化物、これらの水和物、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0039】
好ましくは、結晶性の多孔性有無機混成体は、銅テレフタレート、鉄テレフタレート、クロムテレフタレート、アルミニウムテレフタレート、銅ベンゼントリカルボキシレート、鉄ベンゼントリカルボキシレート、クロムベンゼントリカルボキシレート、アルミニウムベンゼントリカルボキシレート、鉄ベンゼントリベンゾエート、クロムベンゼントリベンゾエート、アルミニウムベンゼントリベンゾエート、これらの誘導体、これらの溶媒化物、これらの水和物または、これらの組み合わせを含むことができる。一実施様態において、カルボキシレート誘導体として、ベンゼン環にCl、Br、I、NO、NH、COOH、SOH等が含まれたカルボキシレートを用いることができる。
【0040】
一実施様態において、結晶性の多孔性有無機混成体は、テレフタレート、ベンゼントリベンゾエート、またはベンゼントリカルボキシレートのうち、2個以上のリガンドと金属元素を含むことができる。
【0041】
一実施様態において、多孔性有無機混成体の表面積及び/または、細孔体積は、大きければ大きいほど吸着効果に優れる。一部の実施様態において、多孔性有無機混成体の表面積は、300m/g以上であり得る。他の実施様態において、多孔性有無機混成体の表面積は、500m/g以上、700m/g以上、1,000m/g以上、1,200m/g以上、1,500m/g以上、または1,700m/g以上であり得ることもあるが、これに制限されるものではない。一部の実施様態において、多孔性有無機混成体の表面積は、10,000m/g以下であり得る。一実施様態において、多孔性有無機混成体の細孔体積は、0.1ml/g以上、または0.4ml/g以上であり得る。他の実施様態において、多孔性有無機混成体の細孔体積は10ml/g以下であり得る。
【0042】
一実施様態において、多孔性有無機混成体は、不飽和金属部位を有し、前記不飽和金属部位に表面機能化化合物が結合される。一実施様態において、多孔性有無機混成体の不飽和金属部位に多様な作用基を有する表面機能化化合物を結合させ、多孔性有無機混成体の表面を改質乃至機能化させることができる。不飽和金属部位は、多孔性有無機混成体において、水、または有機溶媒が除去された金属での配位可能な部位であって、作用基を有する化合物が共有結合、または配位結合を形成することができる位置を意味する。このような表面機能化は、本願に参照として導入される韓国登録特許公報第10-0864313号、第10-0816538号等に開示されたところにより行われることができる。
【0043】
一実施様態において、多孔性有無機混成体は、粉末、薄膜、メンブレイン、ペレット、ボール、フォーム(foam)、スラリー、ペースト、ペイント、ハニコム(honeycomb)、ビード、メッシュ、繊維、ダンボール(corrugated sheet)、ローター等の形態で提供されることができるが、特定の形態に制限されるものではない。例えば、薄膜またはメンブレイン形態の多孔性有無機混成体は、反応物混合液に、所定の基板を浸漬した後、加熱する方法で製造されることができる。他の例示的な実施様態において、金属前駆体、有機リガンドとして作用することができる有機化合物及び溶媒を含有する反応物混合液を加熱して製造されたスラリー形態の多孔性有無機混成体を押出成形し、多孔性有無機混成体の押出成形体を製造することができる。また他の実施様態において、ペレット、ビード、ハニコム、メッシュ、膜のような成形体は、適正な有機または無機バインダーを用いて製造されることができる。
【0044】
一部の実施様態において、添加された有、無機バインダーは、多孔性有無機混成体と粉末の重さの50%を超過しない。一例示的な実施様態において、無機バインダーの例は、シリカ、アルミナ、ベーマイト、ゼオライト、メゾ細孔体、カーボン、グラファイト、層状構造化合物、金属アルコキシド、金属ハライド等を含み、他の例示的な実施様態において、有機バインダーの例は、1種以上のアルコール及びセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリレート等を含むが、これに制限されるものではない。
【0045】
一部の実施様態において、前記基板の例は、シリカ、アルミナ、シリコン、アルミニウム、ポリプロピレン、ポリイミド、伝導性ポリマー、ガラス、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛オキサイド及び/または耐熱性重合体で製造された基板、またはこれらの表面処理された基板を含むが、これに制限されるものではない。一部の実施様態において、多孔性有無機混成体がナノサイズの粉末である場合、大きい表面積を有するようになり、吸着剤として用いられる場合の吸着効率に優れる。
【0046】
また、本発明は、前記結晶性の多孔性有無機混成体を含む水分吸着剤を提供する。
【0047】
一実施様態による水分吸着剤は、結晶模様が比較的均一であり、比表面積が高い多孔性有無機混成体を含んでおり、吸着剤1g当たり0.1〜3g、または0.1〜1gの吸着物質を吸着することができ、100℃以下、好ましくは10〜100℃以下で脱着が容易である。さらに、本発明による水分吸着剤は、従来のフッ酸を含有した有無機混成体に比べて、1.5倍以上の初期水分吸収率と3倍以上の水分吸収量が増加したことを確認し、低温で加湿、除湿に優れる効果があることを確認した。
【0048】
一実施様態において、前記結晶性の多孔性有無機混成体を揮発性有機化合物(VOCS)等の除去のための吸着剤として用いる場合、特定の有害物質を効果的に吸着・除去することができ、シックハウス症候群の防止、各種有害物質の除去に有用に用いることができる。前記結晶性の多孔性有無機混成体を含む吸着剤は、有害物質である蒸気相または粒子相の揮発性有機化合物(VOCs)を除去することができる。一例示的な実施様態において、前記結晶性の多孔性有無機混成体は、トルエン、ベンゼン、メチルエチルケトン等の揮発性有機化合物以外に、シックハウス症候群を起こすホルムアルデヒド、アセトアルデイド、タール、ニトロソアミン類、ポリサイクリックアロマティックハイドロカーボン類等のような蒸気相または粒子相物質等を効果的に除去することができる。このような性質を利用し、前記結晶性の多孔性有無機混成体を含む吸着剤を空気浄化用フィルターとして用いることができる。
【0049】
一実施様態による結晶性の多孔性有無機混成体は、不均一触媒として用いられることができ、例えば、酸化反応用触媒または酸触媒として用いられることができる。一部の実施様態において、結晶性の多孔性有無機混成体は、酸化反応用触媒として、スルホキシド化(sulfoxidation)反応、エポキシ化(epoxidation)反応、ホスフィン酸化反応またはフリーデル-クラフトベンジル化(Fridel-Crafts benzylation)反応等の酸化反応に活性を有する。他の実施様態において、結晶性の多孔性有無機混成体は、酸触媒として、アルキル化(alkylation)反応、エステル化反応(esterfication)またはベックマン再配列反応(Beckman rearrangement)等の酸触媒反応に活性を有する。
【0050】
一実施様態において、結晶性の多孔性有無機混成体は、高い結晶性を有し、均一な粒度分布を有しており、気相及び液相化合物の吸・脱着応用である水分吸着剤、ヒートポンプ、乾燥剤、下水処理用吸着剤/乾燥剤及びこれを含む下水処理装置、冷凍機用吸着剤、吸着式冷房及び空調器システムに用いることができる。特に、水分吸着剤として用いる場合、100℃以下の低温で脱着が容易であり、加湿剤または除湿剤として有用に用いることができる。
【0051】
下記実施例を通じて、本発明の主題の特徴と長所をさらに説明しようとするが、下記実施例に制限されるものではない。本発明の主題は、本願に記載されている特定の実施様態及び実施例に制限されるものと見なされてはいけない。本開示の観点で、多様な例示的な実施様態及び実施例の他にも、当業者は、本願に開示されている一部構成の変形、置換、付加及びそれらの組み合わせが可能であることを容易に認識することができるだろう。
【実施例】
【0052】
<実施例1>
ガラス反応器に鉄ナイトレート(Fe(NO・6HO)67mmol及び1,3,5-ベンゼントリカルボン酸(BTCA)44mmolを添加した後、蒸溜水を加え、反応物の最終のモル比は、Fe(NO・6HO:BTCA:HO=1:0.66:11.3であった。前記反応物を室温で500rpmで20分間撹拌し、均一な反応物になるようにした。前記の前処理された反応物を含有したガラス反応器を反応温度120℃、8時間維持して結晶化反応を行なった後、室温で冷却洗浄(蒸溜水)及び乾燥して多孔性有無機混成体(鉄ベンゼントリカルボキシレート;Fe-BTC)を製造した。多孔性有無機混成体(Fe-BTC)製造時の反応圧力を測定してみた結果、前記反応温度120℃での内部圧力は1barであった。理論にこだわることではないが、このような低圧合成工程は、反応温度でFe-BTC結晶が溶媒を急速に吸収するからであると判断される。
【0053】
製造された多孔性有無機混成体の粒子サイズが、核成長速度調節によって〜200nmの非常に均一なナノ粒子に形成されることを電子顕微鏡で確認した。X-線回折スペクトラムの形態が文献上[Chemical Communication 2820、2007]のFe-BTCと同一の構造であるが(図1)、ICP分析の結果、得られた多孔性有無機混成体Fe-BTCは、フッ素が含まれていない化学式FeO(HO)OH[C-(CO]・nHO(0<n<50)で表すことができる物質であることが確認された。窒素吸・脱着実験の結果、表面積が1850m/gであり、吸着量はP/P0=0.5から540ml/gであることを確認した(図2)。特に、反応器1L当たり多孔性有無機混成体の収率が150gであった。電子顕微鏡の分析の結果、粒子サイズが50〜500nm以下と非常に小さくなったことが分かった。
【0054】
<実施例2>
さらに、HFを添加して混合物を製造することを除き、実施例1と同一の方法により、多孔性有無機混成体を製造した。反応物の最終のモル比は、Fe(NO・6HO:BTCA:HO:HF=1:0.66:11.3:0.15であった。前記反応物を室温で500rpmで20分間撹拌し、均一な反応物になるようにした。前記前処理された反応物を含有したテフロン(登録商標)反応器を反応温度120℃、12時間維持して結晶化反応を行なった後、室温で冷却洗浄(蒸溜水)及び乾燥して多孔性有無機混成体(Fe-BTC)を製造した。多孔性有無機混成体(Fe-BTC)の製造時の反応圧力を測定してみた結果、前記反応温度120℃での内部圧力は1barであった。理論にこだわることではないが、このような結果は、120℃でFe-BTC結晶が溶媒を急速に吸着するからであるものと考えられる。
【0055】
X-線回折スペクトラムの形態が文献[Chemical Communication 2820、2007]上のFe-BTCと同一の構造であることを確認した。ICP分析の結果、得られた多孔性有無機混成体Fe-BTCは、化学式FeO(HO)1-yOH[C-(CO]・nHO(0<y<1、0<n<50)で表すことができる物質であることが確認された。得られた有無機混成体Fe-BTC0.1gを70℃で30分真空乾燥させた後、水分の吸着実験を重量法で行なった。相対湿度60%でも吸着剤重量当たり水分吸着量が0.8g/gであった。このように多孔性有無機混成体は、100℃以下でも水分吸着及び脱着が容易であり、加湿、除湿等に非常に優れた性能を見せていることが分かる。X-線回折スペクトラムの形態が文献上[Chemical Communication 2820、2007]のFe-BTCと同一の構造であることを確認した。
【0056】
<実施例3>
金属塩として鉄ナイトレートの代わりに鉄塩化物(FeCl・6HO)を用い、実施例1と同一の方法により多孔性有無機混成体(Fe-BTC)を製造した。X-線回折スペクトラムの形態が文献上[Chemical Communication 2820、2007]のFe-BTCと同一の構造であることを確認した。ICP分析の結果、得られた多孔性有無機混成体Fe-BTCは、フッ素が含まれていない化学式FeO(HO)Cl1-yOH[C-(CO]・nHO(0<y<1、0<n<50)で表すことができる物質であることが確認された。
【0057】
<実施例4>
テフロン(登録商標)反応器にCr(NO・9HO、及び1,4-ベンゼンジカルボン酸(BDCA)を添加した後、蒸溜水を添加して反応物の最終のモル比がCr:BDCA:HO=1:1:12となるようにした。前記反応物を含有したテフロン(登録商標)反応器を還流オーブンに入れ、210℃で11時間反応をさせた後、室温で冷却した後、遠心分離、蒸溜水を利用した洗浄、乾燥させて多孔性有無機混成体として表面積が3,800m/gであるクロムテレフタルレート(クロムベンゼンジカルボキシレート;Cr-BDC)を得た。得られた有無機混成体Cr-BDC0.1gを70℃で30分真空乾燥させた後、水分の吸着実験を重量法で行なった。相対湿度60%で吸着剤重量当たり水分吸着量が1.2g/gであった(3時間以内)。
【0058】
<実施例5>
反応温度が100℃であることを除き、実施例1と同一の方法により、多孔性有無機混成体(Fe-BTC)を製造した。X-線回折スペクトラムの形態が文献上[Chemical Communication 2820、2007]のFe-BTCと同一の構造であるが、ICP分析の結果、得られた多孔性有無機混成体Fe-BTCは、フッ素が含まれていない化学式FeO(HO)OH[C-(CO]・nHO(0<n<50)で表すことができる物質であることが確認された。
【0059】
<実施例6>
実施例1の鉄ナイトレートの代わりにアルミニウムナイトレート水和物を用いて有無機混成体を製造した。但し、製造されたAl-BTCを300℃窒素雰囲気で熱処理し、残留したBTCAリガンドを除去した窒素吸着量を測定した結果、比表面積が1,930m/gであった。
【0060】
<実施例7>
テフロン(登録商標)反応器に金属鉄塩化物(FeCl)40.8mmol及び1,3,5-ベンゼントリカルボン酸(BTCA)26.8mmolを添加した後、蒸溜水を加え、反応物の最終のモル比は、FeCl:BTCA:HO=1:0.66:34であった。前記反応物を室温で500rpmで20分間撹拌し、均一な反応物になるようにした。前記前処理された反応物を含有したテフロン(登録商標)反応器を反応温度160℃、8時間維持して結晶化反応を行なった後、室温で冷却、洗浄(蒸溜水)及び乾燥して多孔性有無機混成体(Fe-BTC)を形成した。
【0061】
X-線回折スペクトラムの形態が文献上[Chemical Communication 2820、2007]の結晶構造であるMIL-100(Fe)構造と同一であることを確認した。ICP分析の結果、得られた多孔性有無機混成体Fe-BTCの構造は、MIL-100と同一であるが、構造内にフッ素が含まれておらず、化学式:FeO(HO)Cl[C-(CO])で表すことができる物質であることを確認した。窒素吸脱着実験の結果、表面積が1,500m/gであり、吸着量はP/Po=0.5で450ml/gであることを確認した。電子顕微鏡分析の結果、粒子サイズが200〜500nm以下であることを確認した。
【0062】
前記製造された多孔性有無機混成体1gを1MのNHF50mlに入れ、70℃温度で撹拌し、細孔体の細孔内に存在する不純物を除去することにより、比表面積が向上した有無機混成体を製造した。X-線回折スペクトラムからアンモニウムフルオライド処理後にも結晶性が損傷なしに維持されることを確認することができた。また、前記アンモニウムフルオライド処理後の多孔性有無機混成体の表面積は、1,820m/gで測定され、吸着量は、P/PO=0.5で550ml/gと測定された。
【0063】
<実施例8>
前記実施例7において、FeClの代わりに、VClを用いたことを除去し、実施例7と同一に多孔性有無機混成体を製造した。X-線回折スペクトラムから実施例7と同一の構造の物質が得られることを確認した。電子顕微鏡の写真から100nm程度の均一な粒径特性を有する多孔性有無機混成体が得られることを確認することができた。
【0064】
<実施例9>
前記実施例1において得られたFe-BTC粉末を、偏心プレス(Korsch社 EK0型)を用いてペレットを製造した。先ず、モールディングされる粒子間の粘着力を増加させるために、黒煙3重量%とFe-BTC97重量%を混合した後、24時間ボールミリングした。混合及びボールミリングの後、パウダーの結晶性は、純粋Fe-BTCと比べてほとんど変化されないことを確認した。前記ボールミリング粉末を偏心プレスを用いて成形した結果、結晶性が20%程度減少された直径3mmFe-BTCペレットを得ることができた。
【0065】
<実施例10>
前記実施例1のFe-BTC粉末に水10重量%入れて練り込んだFe-BTCスラリーをシリンダー型押出機に投入し、押出機の内部を真空状態に維持し、シリンダーの回転速度50rpm、300mm/分の成形速度で押出体を製造した。製造された押出体を80℃で12時間の間乾燥した後、焼成炉を利用して120℃から2時間熱処理した。最終の押出成形体のBET表面積は、1710m/gであった。
【0066】
<比較例1>
多孔性有無機混成体(Fe-BTCA)は、テフロン(登録商標)反応器に鉄ナイトレート(Fe(NO・6HO)67mmol及び1,3,5-ベンゼントリカルボン酸(BTCA)44mmolを添加した後、蒸溜水を加え、反応物の最終のモル比は、Fe(NO・6HO:BTCA:HO=1:0.66:278であった。前記反応物を室温で500rpmで20分間撹拌し、均一な反応物になるようにした。前記の前処理された反応物を含有したテフロン(登録商標)反応器を反応温度160℃、12時間維持し、結晶化反応を行なった後、室温で冷却洗浄(蒸溜水)及び乾燥して多孔性有無機混成体(Fe-BTC)を製造した。X-線回折スペクトラムの形態が文献上[Chemical Communication 2820、2007]のFe-BTCと同一の構造であることを確認した。ICP分析の結果、得られた多孔性有無機混成体Fe-BTCは、フッ素が含まれていない化学式FeO(HO)OH[C-(CO]・nHO(0<n<50)で表すことができる物質であることが確認された。窒素吸脱着実験の結果、表面積が1700m/gであった。反応器1L当たり多孔性有無機混成体の収率が8gであった。
【0067】
<比較例2>
商業用水分吸着剤として用いられるカーボン(Ecopro Carbon比表面積=665m/g、細孔体積=0.39ml/g)を準備した。前記カーボン吸着剤を100℃で30分間真空乾燥させた後、実施例2と同一の条件で水分吸着実験を進行した結果、水分吸着量は0.36g/gであった。すなわち、実施例2の吸着剤は、脱着温度を70℃にしたにもかかわらず、本発明による吸着剤は2.2倍以上の水分吸着量を示した。
【0068】
<比較例3>
商業用水分吸着剤として用いられるゼオライトY(アルドリチ社、Si/Al=5.6、比表面積=827m/g、細孔体積=0.35ml/g)を準備した。前記ゼオライトY吸着剤を200℃で30分間真空乾燥させた後、実施例2と同一の条件で水分吸着実験を進行した結果、水分吸着量は0.35g/gであった。すなわち、実施例2の吸着剤は、脱着温度を70℃にしたにもかかわらず、本発明による吸着剤は2.2倍以上の水分吸着量を示した。
【0069】
前記実施例及び比較例の結果から、3気圧以上の高圧条件で合成された従来の工程と比べて、3気圧以下の低圧工程により同一の結晶性を有する多孔性有無機混成体を製造した。特に、本工程により単位反応器の体積当り有無機混成体の製造収率を2倍以上増加させることができることを確認し、またアンモニウム塩及びフッ化カリウム等の無気塩で処理する場合に、表面積が18%以上増加したことを確認することができた。特に、本発明による多孔性有無機混成体を低温水分吸着剤として用いる場合、100℃以下でも容易に脱着性質を示し、このような特性を利用して加湿、除湿等に非常に優れた性能を達成するすことができることが分かる。また揮発性有機化合物等の蒸気相及び粒子相の特定の有害物質を効果的に除去することができることを確認した。
【0070】
それぞれの刊行物、特許出願、登録特許、またはその他の文書が詳細であり、個別的にその全体が参照として導入されるものと示しているように、本明細書で言及した全ての刊行物、特許出願、登録特許、及びその他の文書は、本願に参照として導入する。参照として導入する文献に含まれた定義は、本願での定義と矛盾する限り、除外する。
【0071】
以上から、本発明の多様な実施様態は、例示の目的として本願に記載されたものであり、本発明の範囲及び思想から外れることなく、多様な変形がなされ得るという点は、理解されるだろう。従って、本願に開示された多様な実施様態は制限的なものと意図されたものではなく、その真の範囲及び思想は、下記請求の範囲に示される。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明によると、結晶性の多孔性有無機混成体の製造時に、高濃度の合成条件で結晶化の速度を画期的に増加させることができ、反応中に結晶形成の速度と溶媒自動吸着の速度を調節することにより、3気圧以下の低圧条件であるにもかかわらず、高い結晶性を有し、均一な粒度分布を有する結晶性の多孔性有無機混成体を提供することができる。特に、本発明の多孔性有無機混成体を水分吸着剤として用いる場合、100℃以下の低温で脱着が容易に起こる。前記吸着剤が低温でも水分吸脱着が容易であり、気相及び液相化合物に対して吸・脱着特性に優れるという点を利用して、水分吸着剤、ヒートポンプ、乾燥剤、下水処理用吸着剤/乾燥剤、冷凍機用吸着剤、冷房及び空気空調用吸着剤及び触媒としても応用が可能である。また結晶性の多孔性有無機混成体を室内空間内の存在する微量の室内汚染物質等を除去のための触媒及び吸着剤として用いる場合、特定の有害物質を効果的に除去することができ、シックハウス症候群の防止、各種有害物質の除去に有用に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記ステップを含む結晶性の多孔性有無機混成体の製造方法:一つ以上の無機金属前駆体、一つ以上のリガンドとして作用することができる 有機化合物及び溶媒を含有する反応物混合液を製造するステップ(ステップ1);及び前記反応物混合液から反応を通じて結晶性の多孔性有無機混成体を形成するステップ(ステップ2)、ここで、前記反応は、3気圧以下の圧力で行なわれる。
【請求項2】
前記反応物混合液のうち、無機金属前駆体に対する溶媒のモル比が100以下であることを特徴とする請求項1に記載の結晶性の多孔性有無機混成体の製造方法。
【請求項3】
前記ステップ1の金属前駆体が Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、As、Sb及びBiからなる群より選ばれる一つ以上の金属またはこれを含む化合物であることを特徴とする請求項1に記載の結晶性の多孔性有無機混成体の製造方法。
【請求項4】
前記ステップ1の金属前駆体がCr、Fe、Al、Cu、Mn、Ti、Zr、Sn及びVからなる群より選ばれる一つ以上の金属またはこれを含む化合物であることを特徴とする請求項1に記載の結晶性の多孔性有無機混成体の製造方法。
【請求項5】
前記ステップ1のリガンドとして作用することができる有機化合物が、カルボキシル基、カルボン酸の陰イオン基、アミノ基(-NH)、イミノ基(>C=NH)、アミド基(-CONH)、スルホン酸基(-SOH)、スルホン酸陰イオン基(-SO-)、メタンジチオサン基(-CSH)、メタンジチオサン陰イオン基(-CS-)、ピリジン基及びピラジン基からなる群より選ばれる一つ以上の作用基を有する化合物またはこの混合物であることを特徴とする請求項1に記載の結晶性の多孔性有無機混成体の製造方法。
【請求項6】
カルボン酸の陰イオン基を有する化合物が、ベンゼンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、ベンゼントリカルボン酸 、ナフタレントリカルボン酸 、ベンゼントリ安息香酸、ピリジンジカルボン酸、ビピリジルカルボン酸、ギ酸、蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ヘキサンジオ酸、ヘプタンジオ酸及びシクロヘキシルジカルボン酸からなる群より選ばれる一つ以上の化合物から由来されることを特徴とする請求項5に記載の結晶性の多孔性有無機混成体の製造方法。
【請求項7】
ステップ2で得られた多孔性有無機混成体を無機塩、酸度調節剤、溶媒またはこれらの混合物で処理することにより、結晶性の多孔性有無機混成体内の不純物を精製するステップ(ステップ3)をさらに含むことを特徴とする結晶性の多孔性有無機混成体の製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項による方法で製造され、前記結晶性の多孔性有無機混成体が、下記化学式で表される化合物またはこの水和物から選ばれる1種以上の化合物であることを特徴とする結晶性の多孔性有無機混成体:
X(HO)O[C4-yZ'(CO](M=Fe、Mn、Cr、V、Al、Ti、ZrまたはMg;X=Cl、Br、I、FまたはOH;ZまたはZ'=H、NH、Br、I、NOまたはOH;0≦y≦4);
O(HO)X[C3-yZ'-(CO](M=Fe、Mn、Cr、V、Al、Ti、ZrまたはMg;X=Cl、Br、I、FまたはOH;ZまたはZ'=H、NH、Br、I、NOまたはOH;0≦y≦3);
O(HO)1-y(OH)[C-(CO](0≦y≦1;M=Fe、Mn、Cr、V、Al、Ti、ZrまたはMg;X=Cl、Br、IまたはF);または
1-y(OH)(HO)O[C(CO](0≦y≦1;M=Fe、Mn、Cr、V、Al、Ti、ZrまたはMg;X=Cl、Br、IまたはF)。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか一項による方法で製造され、前記多孔性有無機混成体が、銅テレフタルレート、鉄テレフタルレート、マンガンテレフタルレート、クロムテレフタルレート、バナジウムテレフタルレート、アルミニウムテレフタルレート、銅ベンゼントリカルボキシレート、鉄ベンゼントリカルボキシレート、マンガンベンゼントリカルボキシレート、クロムベンゼントリカルボキシレート、バナジウムベンゼントリカルボキシレート、アルミニウムベンゼントリカルボキシレート、鉄ベンゼントリベンゾエート、クロムベンゼントリベンゾエート、アルミニウムベンゼントリベンゾエート、これらの誘導体、これらの溶媒化物、これらの水和物またはこれらの組み合わせを含むことを特徴とする結晶性の多孔性有無機混成体。
【請求項10】
請求項1乃至7のいずれか一項による方法で製造され、テレフタルレート、ベンゼントリベンゾエート及びベンゼントリカルボキシレートからなる群より選ばれる2個以上のリガンドと金属元素を含むことを特徴とする結晶性の多孔性有無機混成体。
【請求項11】
請求項1乃至7のいずれか一項による方法で製造され、前記多孔性有無機混成体が 、粉末、薄膜、メンブレイン、ペレット、ボール、フォーム(foam)、スラリー、ペースト、ペイント、ハニコム(honeycomb)、ビード、メッシュ、繊維、ダンボール(corrugated sheet)またはローターの形態で製造されることを特徴とする結晶性の多孔性有無機混成体。
【請求項12】
請求項1乃至7のいずれか一項による方法で製造される結晶性の多孔性有無機混成体を用いて水分を吸着することを特徴とする水分吸着剤。
【請求項13】
前記水分吸着剤が10〜100℃で吸着剤1g当たり0.1〜3gの吸着物質を吸着することができることを特徴とする請求項12に記載の水分吸着剤。
【請求項14】
請求項1乃至7のいずれか一項による方法で製造される結晶性の多孔性有無機混成体を含むことを特徴とする空気浄化用フィルター。
【請求項15】
請求項1乃至7のいずれか一項による方法で製造される結晶性の多孔性有無機混成体を含み、蒸気相または粒子相の揮発性有機化合物(VOCs)の吸着のために用いられることを特徴とする吸着剤。
【請求項16】
請求項1乃至7のいずれか一項による方法で製造される結晶性の多孔性有無機混成体を含み、シックハウス症候群を起こすホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、タール、ニトロソアミン類、ポリサイクリックアロマティックハイドロカボン類からなる群より選ばれる一つ以上の蒸気相または粒子相物質の吸着のために用いられることを特徴とする吸着剤。
【請求項17】
請求項1乃至7のいずれか一項による方法で製造される結晶性の多孔性有無機混成体を含むことを特徴とする不均一触媒。
【請求項18】
請求項1乃至7のいずれか一項による方法で製造される結晶性の多孔性有無機混成体を含むことを特徴とする吸着式冷房及び空調器システム。
【請求項19】
請求項1乃至7のいずれか一項による方法で製造される結晶性の多孔性有無機混成体を含むことを特徴とするヒートポンプ。
【請求項20】
請求項1乃至7のいずれか一項による方法で製造される結晶性の多孔性有無機混成体を含むことを特徴とする下水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−511385(P2013−511385A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539808(P2012−539808)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【国際出願番号】PCT/KR2010/008127
【国際公開番号】WO2011/062412
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(591066339)財団法人韓国化学研究院 (3)
【氏名又は名称原語表記】Korea Research Institute of Chemical Technology
【住所又は居所原語表記】100 Jang−dong Yusung−ku,Taejeon−si Korea
【Fターム(参考)】