説明

結晶性オリゴマー及び硬化性樹脂組成物並びに接着シート

【課題】 従来、フェノールホルムアルデヒド樹脂からなる接着剤は、接着性能が良好であることから、各種の接着用途に使用されてきたが、放散されるホルムアルデヒドがシックハウス症候群の原因物質であるとして、非ホルムアルデヒド化が要求されている。
【解決手段】 本発明は重合性の不飽和結合とブロックイソシアネート基を有する常温で固形の結晶性オリゴマーまたはこれらを含む硬化性樹脂組成物を使用することにより、フェノール樹脂に関わる従来の問題を解決することができた。また、ポリビニルアセタールとして酸変性ポリビニルアセタールを用いることにより、より高度の密着性、耐熱性、耐水性がある硬化性樹脂組成物が得られた。結晶性オリゴマーは、水酸基と重合性の不飽和結合を有する化合物と、イソシアネート基を有する化合物と、イソシアネート基ブロック化剤とを反応させて得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は結晶性オリゴマー及び硬化性樹脂組成物並びに接着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
紙、布、ガラス繊維など多孔質な基材に、硬化性樹脂組成物が含浸処理されて調製された接着シートは、塗布工程や乾燥工程が不要であること、被着物の層間に介在させ加熱加圧するだけで接着加工できること、などから好んで採用されていた。
【0003】
ところが、ホルムアルデヒドなどがシックハウス症候群の原因物質となるとして2002年に厚生労働省指定されたことから非ホルムアルデヒド化があらゆる用途分野で求められている。また、熱硬化性樹脂としてフェノール樹脂にあっては、大気汚染、更に環境の保護の観点から、未反応フェノール類、あるいは1核体成分の揮発および溶出による汚染を低減することが求められている。
【特許文献1】特開平10−279893号公報
【特許文献2】特開平8−238713号公報
【特許文献3】特開平6−240108号公報
【特許文献4】特開平11−34248号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前記のような要望に応えんとするもので、シックハウス症候群対策ならびに大気汚染さらには環境保護の観点からフェノールホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂などホルムアルデヒドを放散する樹脂を採用せず、しかもフェノールの揮発若しくは溶出のない接着組成物と接着加工品を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はかかる状況に鑑み検討されたもので、請求項1記載の発明は、水酸基と重合性の不飽和結合を有する化合物と、イソシアネート基を有する化合物と、イソシアネート基ブロック化剤とを反応させてなり、重合性の不飽和結合とブロックイソシアネート基を有することを特徴とする結晶性オリゴマーである。請求項2記載の発明は、前記水酸基と重合性の不飽和結合を有する化合物が一級水酸基を有する(メタ)アクリレート、アリルアルコール、アリルエーテル、ビニルエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載の結晶性オリゴマーである。請求項3記載の発明は、前記結晶性オリゴマーとポリビニルアセタールを含んでなる硬化性樹脂組成物である。請求項4記載の発明は、前記ポリビニルアセタールが酸変性ポリビニルアセタールであることを特徴とする請求項3記載の硬化性樹脂組成物である。請求項5記載の発明は、前記硬化性樹脂組成物を繊維基材に含浸又は塗布してなることを特徴とする接着シートである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の結晶性オリゴマーは、常温で固形状であるためハンドリング性が良く、シックハウス症候群の原因物質であるホルムアルデヒドを含有せず、かつ、フェノールホルムアルデヒド樹脂を含まないため、大気汚染、あるいは人体有害性の観点から求められている未反応フェノールの溶出、揮発による汚染が全くない。また、水酸基と不飽和結合を有する重合性モノマー、イソシアネート基ブロック化剤、イソシアネート化合物を反応させることにより結晶性オリゴマーを得、これらを重合硬化せしめ、加熱する事によりブロック化剤が解離し、イソシアネート基が再活性化するため、木材などの親水性を有する材料との接着において耐水性、耐煮沸性、密着性が優れたものとなる。また、ポリビニルアセタールとを混合することによりイソシアネート基はポリビニルアセタール樹脂中の水酸基と反応し、3次元的なネットワークを形成する。更には、分子内にカルボン酸基を含有する酸変性ポリビニルアセタールを使用することにより、別途変性剤を添加せずとも優れた金属密着性、耐水性、耐熱性を有する硬化性樹脂組成物が得られる。加えて、表4に示すように従来のフェノール系の接着シートに比べ短時間で強固な接着強度が得られる。以下、本発明について詳細に説明する。
【0007】
水酸基と不飽和結合を有する重合性モノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、アリルアルコール、エチレングリコールモノアリルエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、1、4シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、4ーヒドロキシブチルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテルが好ましく用いられる。
【0008】
イソシアネート基を有する化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、4、4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(4、4’MDI)、ビス(4−イソシアネートシクロヘキシル)メタン、2、4−トルエンジイソシアネート、2、6−トルエンジイソシアネート、2、4−ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、リジンイソシアネート、1、5−ナフチレンジイソシアネート、トランスシクローキサン1、4−ジイソシアネート、2、4−キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、p-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、などが挙げられる。好ましくはジイソシアネート基間が直鎖状炭化水素構造、左右対称直線構造であるHDI、4、4’MDIが得られる化合物の結晶性の点で優れている。
【0009】
イソシアネート基ブロック化剤の例としては、フェノール類、ラクタム類、オキシム類、アルコール類、活性メチレン類、ベンゾトリアゾール類、メルカプタン類、酸アミド類、イミド類、アミン類、イミダゾール類、尿素類のものを挙げることができる。具体的には、メチルエチルケトンオキシム(MEKO)、アセトンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、アセトフェノンオキシム、ベンゾフェノンオキシム等のオキシム類、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、2−エチルヘキサノール、シクロヘキサノール等のアルコール類、ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピオラクタム等のラクタム類、フェノール類、アセチルアセトン、アセト酢酸エチル、マロン酸メチル、マロン酸エチル等の活性メチレン化合物等を挙げることができる。これらのうち、イソシアネート基への付加反応性、低温解離性の点でMEKOが好ましい。
【0010】
ブロック化剤のイソシアネートブロック基[H]とイソシアネート基を有する化合物のイソシアネート基[NCO]とのモル比(個数比)[H:NCO]は90:10〜1:99、より好ましくは50:50〜1:99、となるように配合することが好ましい。イソシアネート基の一部をブロック化剤と反応せしめ、ブロックイソシアネート化し、得られた結晶性オリゴマーを重合せしめ、加熱することにより、ブロック化剤が解離することによってイソシアネート基が活性化し、反応可能となる。[H:NCO]=90:10よりもブロック化剤が多くなると重合性が低下し、硬化物強度が低下する。[H:NCO]=1:99よりもブロック化剤が少ないと熱解離し再活性化できるイソシアネートが少ないため、親水性を有する物質との接着性、耐水性、耐熱性が低下する。
【0011】
ブロックイソシアネート基と重合性不飽和結合を有する常温において固形の結晶性オリゴマーの合成例について説明すれば、攪拌装置、温度計、コンデンサー、滴下装置を備えたフラスコに、水酸基と重合性の不飽和結合を有する化合物とイソシアネート基ブロック化剤を仕込み、昇温したのち、イソシアネート基を有する化合物及びブロック化剤を滴下し、生成される結晶性オリゴマーが析出せず、かつ重合固化しない温度条件に保持しながら撹拌し、ウレタン化反応とイソシアネート基ブロック化反応をさせることにより、重合性の不飽和結合とブロックイソシアネート基を有する常温において結晶性のオリゴマー混合物が得られる。
【0012】
応用例として一例をあげると、前記の結晶性オリゴマーを用いて取り扱い性、耐水、耐熱性に優れ、木材および金属との接着性を有する接着シートにするには、ポリビニルアセタール、重合性の不飽和結合とブロックイソシアネート基を有する常温において結晶性のオリゴマー、重合開始剤ならびに必要により充填剤などを配合して有機溶剤に溶解させたものを各種の多孔質な繊維素材などから作られた紙、布、ガラス繊維などの基材に含浸、乾燥して製造することができる。また有機溶剤を使用せずとも加熱溶融し塗布して使用することも可能である。
【0013】
ポリビニルアセタールは、ポリビニルアルコールと各種アルデヒド類を反応させ、アセタール化することによって得られる。アルデヒドとしてホルムアルデヒドを用いるポリビニルホルマール、アルデヒドとしてアセトアルデヒドを用いるポリビニルアセトアセタール、アルデヒドとしてブチルアルデヒドを用いるポリビニルブチラールが工業的に用いられている。また、アルデヒド類の混合物を用いたポリビニルアセタールが得られる。これらのポリマー組成としては、アセタール基、アセチル基、水酸基を分子内に有する。また、カルボン酸基を分子内に有する酸変性品がある。本発明ではこれらのポリビニルアセタールを単独または2種類以上混合して使用することができる。とりわけアセタール化度60〜90モル%、重合度500〜2500のものが好ましく使用される。アセタール化度が60モル%未満であると耐熱性が不十分になる傾向があり、90モル%を超えると高粘度になりすぎて好ましくない面がある。このため、アセタール化度65〜85モル%、重合度800〜2500のものがより好ましく使用される。特にアルミニウム、鉄、亜鉛、錫、銅などの金属、若しくは表面に金属層を有する被着体に対する密着性をより向上させるためには分子中にカルボン酸基を有する酸変性ポリビニルアセタールを使用することにより高度の密着性、耐久性が得られる。
【0014】
市販品を例示すれば、エスレックBL−1、BL−1H、BL−2、BL−2H、BL−5、BL−10、BL−S、BX−L、BM−1、BM−2、BM−5、BM−S、BH−3、BH−6、BH−A、BH−S、BX−1、BX−3、BX−5、KS−1、KS−3、KS−5、KS−10(以上 積水化学工業株式会社 製品名)、デンカブチラール#3000−1、#3000−2、#3000−4、#3000−K、#4000−2、#5000A、#5000−D、#6000−C、#6000−EP、#6000−CS(以上 電気化学工業株式会社 製品名)、ビニレック(チッソ株式会社 製品名)などがある。これらは単独使用若しくは併用のいずれでも構わない。
【0015】
ポリビニルアセタールに対する重合性の不飽和結合とブロックイソシアネート基を有する常温で固形の結晶性オリゴマーの配合範囲は、固形分として前者90重量部対後者10重量部〜前者10重量部対後者90重量部の範囲で使用される。前者90重量部対後者10重量部未満では耐熱性に劣るなどの問題が生じるため好ましくない。一方、前者10重量部対後者90重量部を超えると密着力が低下するなどのため好ましくない。
【0016】
重合開始剤には、加熱によって融解した結晶性オリゴマー、さらには反応性モノマー等の重合を引き起こすものであれば、いずれも使用できる。具体例として、ケトンパーオキサイド系、パーオキシケタール系、ジアルキルパーオキサイド系、ジアシルパーオキサイド系、パーオキシエステル系、パーオキシジカーボネート系などの有機過酸化物ならびにアゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物が挙げられる。
【0017】
他の添加剤として、フロー性、架橋密度の調整ならびに被着体に対する密着性向上などの目的でベタツキ発生等ハンドリング性を損なわない範囲で反応性モノマー類も使用できる。具体例として、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレートなどが挙げられる。アルミニウム、銅など金属、若しくは表面に金属層を持つ被着体に対する密着性をより向上させるために、シランカップリング剤或いは耐水性を悪化させない範囲でリン酸基含有重合性モノマーである2−(メタ)アクリロイロキシエチルアシッドフォスフェート、フマル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸など燐酸系、カルボン酸化合物を配合することが可能である。また、密着性、耐水性、耐熱性を向上させるべく不飽和二重結合を有しないブロックイソシアネート化合物の添加が可能である。
【0018】
さらに結晶化を促進させ、かつ取扱い時のべたつきを防止するために、ヒュームドシリカ、タルク等の無機微粉末、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム等の充填剤、柔軟性を向上させるためジオクチルアジペート、ジブチルセバシエート、フタル酸ジシクロヘキシル、トリエチレングリコールシ−2−エチルブチラール、トリエチレングリコールシ−2−エチルヘキソエート等の可塑剤、耐衝撃性等を向上するために不飽和ポリエステル、保存安定性を向上させるためにハイドロキノン等の重合禁止剤が配合可能である。
合成例
合成例1 重合性の不飽和二重結合とブロックイソシアネート基を有する結晶性オリゴマー
攪拌装置、温度計、留分凝縮冷却管(コンデンサー)、滴下装置を備えた2リットルのセパラブルフラスコに2−ヒドロキシエチルメタアクリレート208g(1.6モル)とメチルエチルケトンオキシム34.8g(0.4モル)及びウレタン化触媒であるジ−n−ブチルスズジラウレート0.13gを加え攪拌して70℃に昇温した。
【0019】
内温が90℃以下になるようにヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)の滴下速度を調整しながら168g(1モル)を添加した。滴下終了後、内温を80℃に保ちながら、反応液をサンプリングし、FTIRにてイソシアネート基にもとづく2275cm−1の吸収ピークが消失したことを確認した時点で、冷却バットに反応液を移送し、結晶化固化させ、重合性の不飽和結合とブロックイソシアネート基を有する常温で固形の結晶性オリゴマー(1)を得た。DTA測定(昇温速度・毎分10℃)による吸熱ピーク先端温度の測定法で融点69℃であった。
【0020】
合成例2 重合性の不飽和二重結合とブロックイソシアネート基を有する結晶性オリゴマー
攪拌装置、温度計、留分凝縮冷却管(コンデンサー)、滴下装置を備えた2リットルのセパラブルフラスコに4、4‘ジフェニルメタンジイソシアネート250g(1モル)を仕込み攪拌して50℃に昇温した。滴下装置に2−ヒドロキシエチルメタアクリレート208g(1.6モル)およびメチルエチルケトンオキシム34.8g(0.4モル)の混合物を仕込み、内温が95℃以下になるように滴下速度を調整しながら混合物を添加した。滴下終了後、内温を95℃に保ちながら、反応液をサンプリングし、FTIRにてイソシアネート基にもとづく2275cm−1の吸収ピークが消失したことを確認した時点で、冷却バットに反応液を移送し、結晶化固化させ、重合性の不飽和結合とブロックイソシアネート基を有する常温で固形の結晶性オリゴマー混合物(2)を得た。DTA測定(昇温速度・毎分10℃)による吸熱ピーク先端温度の測定法で融点76℃であった。
【0021】
合成例3 重合性の不飽和二重結合を有する結晶性オリゴマー
攪拌装置、温度計、留分凝縮冷却管(コンデンサー)、滴下装置を備えた2リットルのセパラブルフラスコに2−ヒドロキシエチルメタアクリレート260g(2モル)とウレタン化触媒であるジ−n−ブチルスズジラウレート0.13gを加え攪拌して70℃に昇温した。内温が90℃以下になるようにヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)の滴下速度を調整しながら168g(1モル)を添加した。滴下終了後、内温を80℃に保ちながら、反応液をサンプリングし、FTIRにてイソシアネート基にもとづく2275cm−1の吸収ピークが消失したことを確認した時点で、冷却バットに反応液を移送し、結晶化固化させ、重合性の不飽和結合を有する常温で固形の結晶性オリゴマー(3)を得た。DTA測定(昇温速度・毎分10℃)による吸熱ピーク先端温度の測定法で融点78℃であった。
【実施例】
【0022】
実施例1〜3
合成例1で調製した結晶性オリゴマー(1)、合成例2で調製した結晶性オリゴマー(2)、ポリビニルアセタールとしてエスレックBM2(積水化学工業株式会社 製品名 ブチラール化度 68mol%、重合度850、アセタール組成はブチルアルデヒド由来のポリビニルブリラール、Tg67℃)、反応性モノマーとしてリン酸基含有反応性モノマーである2−メタアクリロイロキシエチルアシッドフォスフェート、フマル酸、重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド(BPO)、有機溶剤としてメタノール、テトラヒドロフラン、アセトンを表1の通りに配合し、実施例1〜3の硬化性樹脂組成物を調製した。これらを23g/mのメラミン樹脂化粧板用オーバーレイ原紙に樹脂率200%条件(樹脂含有量46g/m)で含浸、乾燥して実施例1〜4の接着シートを調製し、試験条件に記載の方法によって、接着強度の測定試験を行ったところ、表2、3の結果であった。
実施例4〜5
合成例2で調整した結晶性オリゴマー、ポリビニルアセタールとしてデンカブチラール#5000−D(電気化学工業株式会社製、製品名、アセタール化度81wt%、重合度2100、アセタール組成はアセトアルデヒド由来の酸変性ポリビニルアセトアセタール、Tg110℃)、デンカブチラール#6000−EP(電気化学工業株式会社製、製品名、アセタール化度73wt%、重合度2400、アセタール組成はアセトアルデヒドとブチルアルデヒド混合アセタール、酸変性ポリビニルアセタール、Tg85℃)、重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド(BPO)、有機溶剤としてメタノール、アセトンを表1の通りに配合し、実施例4〜5の硬化性樹脂組成物を調製した。これらを23g/mのメラミン樹脂化粧板用オーバーレイ原紙に樹脂率200%条件(樹脂含有量46g/m)で含浸、乾燥して実施例4〜5の接着シートを調製し、試験条件に記載の方法によって、接着強度の測定試験を行ったところ、表2、3の結果であった。
【0023】
比較例
合成例3で調製した結晶性オリゴマー(3)、ポリビニルアセタールとしてエスレックBM2、反応性モノマーとしてリン酸基含有反応性モノマーである2−メタアクリロイロキシエチルアシッドフォスフェート、フマル酸、ブロックイソシアネート(製品名スミジュールBL3175、住化バイエルウレタン株式会社製)、重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド(BPO)、有機溶剤としてメタノール、テトラヒドロフランを表1の通りに配合し、比較例1〜2の樹脂組成物を調製した。これらを23g/mの前述のメラミン樹脂化粧板用オーバーレイ原紙に樹脂率200%条件(樹脂含有量46g/m)で含浸、乾燥して比較例1〜2の接着シートを調製した。合成例2で調整した結晶性オリゴマー(2)、ポリビニルアセタールとしてエスレックBM2、重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド(BPO)、有機溶剤としてメタノール、アセトンを表1の通りに配合し、比較例3の樹脂組成物を調製した。これを23g/mのメラミン樹脂化粧板用オーバーレイ原紙に樹脂率200%条件(樹脂含有量46g/m)で含浸、乾燥して比較例3の接着シートを調製した。比較例4としてフェノールホルムアルデヒド樹脂(レゾールタイプ:固形分50%)とポリビニルブチラールとして該エスレックBM2を使用して調整した比較例4の樹脂組成物を23g/mのメラミン樹脂化粧板用オーバーレイ原紙に樹脂率200%条件(樹脂含有量46g/m)で含浸、乾燥して比較例4の接着シートを調製し、試験条件に記載の方法によって、接着強度の測定試験を行ったところ、表2、3の結果であった。尚参考としてプレス時間を短縮し5分にした場合の結果を表4に示す。
【0024】
【表1】


【0025】
【表2】

【0026】
カバ材×カバ材
プレス温度 140℃
圧力 2.5MPa
ブレス時間 12分
注:接着強度単位 N/mm、かっこ内はカバ材材破率%、
FF単位 μg/m
【0027】
【表3】

【0028】
カバ材×アルミ板
プレス温度 140℃
圧力 2.5MPa
ブレス時間 15分
注:接着強度単位 N/mm、かっこ内はカバ材材破率%、
FF単位 μg/m

【0029】
【表4】

【0030】
カバ材×カバ材
プレス温度 140℃
圧力 2.5MPa
ブレス時間 5分
注:接着強度単位 N/mm、かっこ内はカバ材材破率%、
FF単位 μg/m

試験方法
1.引っ張り試験片(接着面積13mm×25mm)
厚さ1.0mm、幅25mmのカバ材同士
厚さ1.0mm、幅25mmのカバ材と厚み0.3mm、幅25mmのアルミ板
2.試験条件
常態 :処理なしで引張りせん断試験(引張り速度50mm/分)
耐熱試験:100℃、24時間乾燥器に放置したあと直ちに引張りせん断試験(引張り速度50mm/分)する。
【0031】
耐水試験:100℃、4時間煮沸した後、60℃、20時間乾燥し、さらに100℃、4時間煮沸したのち引張りせん断試験(引張り速度50mm/分)する。
3.FF :ホルムアルデヒド放散量の測定方法
JIS A1901−2003年 小型チャンバー試験に準拠し測定した。
4.FP:フリーフェノールの測定方法
接着物を200mlの水で1時間煮沸後、煮沸水をJIS K0102−1998年 工場排水試験方法に準拠し測定した。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明になる硬化性樹脂組成物は、重合硬化性不飽和結合とブロックイソソアネート基を有する常温で固形の結晶性オリゴマー混合物を含有することから、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂と同等以上の密着性、耐熱性、耐水性、良好なハンドリング性を有する。また、シックハウス症候群の原因物質であるホルムアルデヒドを含有しない。さらには、重合硬化性不飽和結合を有しないブロックイソシアネート化合物を別途添加せずとも高度の密着性、耐熱性、耐水性が得られる。また、ポリビニルアセタールは好ましくは酸変性ポリビニルアセタールを用いることにより、より高度の密着性、耐熱性、耐水性が得られる。
【0033】
したがって、プリント印刷配線板などに使用される銅箔と樹脂積層板とを積層する金属箔積層板、金属箔ラミネート化粧板、プラスチック板やプラスチックシートあるいは積層板もしくは木質系材料を貼り合せる接着剤、ガラス繊維等を結合させるバインダー等多種多用途に利用できる。これらの樹脂加工品は、建築用材料、家具材料、装飾材料、電子材料、車両材料、航空機材料、船舶材料など様々な分野に利用することができる。
【0034】
更に、本発明の硬化性樹脂組成物は付加反応硬化系であり、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、アミノ−ホルムアルデヒド樹脂のような縮合硬化系と比較して短時間での硬化で目的とする性能を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基と重合性の不飽和結合を有する化合物、イソシアネート基を有する化合物およびイソシアネート基ブロック化剤を反応させてなり、重合性の不飽和結合とブロックイソシアネート基を有することを特徴とする結晶性オリゴマー。
【請求項2】
前記水酸基と重合性の不飽和結合を有する化合物が一級水酸基を有する(メタ)アクリレート、アリルアルコール、アリルエーテル、ビニルエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載の結晶性オリゴマー。
【請求項3】
前記結晶性オリゴマーとポリビニルアセタールを含んでなる硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリビニルアセタールが酸変性ポリビニルアセタールであることを特徴とする請求項3記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記硬化性樹脂組成物を基材に含浸又は塗布してなることを特徴とする接着シート。


【公開番号】特開2009−29936(P2009−29936A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−195471(P2007−195471)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【出願人】(000100698)アイカ工業株式会社 (566)
【Fターム(参考)】