説明

結晶性ガラス粉末

【課題】内部の気泡が少ないため薄型化しても配線の断線を引き起こしにくく、かつ高性能な高周波回路に十分対応可能な低誘電損失特性を有するガラスセラミック誘電体に好適な結晶性ガラス粉末を提供する。
【解決手段】熱処理によって、主結晶としてディオプサイド結晶を析出するとともに、長石結晶を析出することを特徴とする結晶性ガラス粉末、およびそれを焼成してなるガラスセラミック誘電体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガラスセラミック誘電体材料として用いられる結晶性ガラスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、IC、LSI等が高密度実装されるセラミック多層基板、厚膜回路部品、半導体パッケージ等の絶縁材料としてガラスセラミック誘電体が知られている。
【0003】
近年、通信機器の分野においては、利用される周波数帯域が0.1GHz以上の高周波となりつつあり、このような高周波帯域を利用する多層基板等の絶縁材料として使用可能な結晶性ガラス組成物の開発が進められている。また、高性能な高周波回路基板や誘電体フィルター等には、例えば誘電損失tanδが20×10−4以下という低誘電損失特性が求められている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−120436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、電子部品に対してますます小型化、薄型化のニーズが高まっており、電子部品に用いられる基板についても薄型化が求められている。当該基板には、例えば結晶性ガラス粉末を含むガラスセラミック粉末を焼成して得られる、ディオプサイド結晶(2SiO・CaO・MgO)を析出してなるガラスセラミック誘電体が使用される。しかし、基板の薄型化が進む中、ガラスセラミック誘電体内部に微小な気泡(空隙)が存在すると、配線の断線の問題が顕著になる。また、気泡が原因で誘電損失も増大する傾向にある。
【0006】
ガラスセラミック誘電体内部に発生する気泡は、原料結晶性ガラス粉末の焼結工程において、結晶化による非流動部分の形成速度が速く、焼結体全体の軟化変形が阻害されることが原因となって生じる。すなわち、結晶性ガラス粉末が軟化変形することなく結晶化が進行すると、結晶化に伴う体積収縮が焼結体全体にいきわたらず、各ガラス粉末間の空隙に気泡が残存する。
【0007】
そこで、焼成時における結晶化速度を遅くして焼結体の軟化変形を可能にし、焼結体全体を均一に収縮させれば、ガスの放出やガラス相へのガスの溶解も促進され、気泡の残存の抑制に効果的である。結晶化速度を遅くするためには、結晶化後にガラス相が残存するように、結晶性ガラスの組成をディオプサイド結晶の組成からずらすことが有効である。しかしながら、ガラスセラミック誘電体中における残存ガラス相の割合が多すぎると、誘電損失を上昇させる原因となるという問題がある。特に、残存ガラス相が多成分系組成である場合、誘電損失の上昇が顕著であり、高周波回路基板への使用が困難になる。
【0008】
そこで、本発明は、内部の気泡が少ないため薄型化しても配線の断線を引き起こしにくく、かつ高性能な高周波回路に十分対応可能な低誘電損失特性を有するガラスセラミック誘電体に好適な結晶性ガラス粉末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は種々検討を行った結果、主結晶としてディオプサイド結晶が析出するとともに、さらにディオプサイド結晶以外の特定の結晶が析出する結晶性ガラス粉末により前記課題を解決できることを見出し、本発明として提案するものである。
【0010】
すなわち、本発明は、熱処理によって、主結晶としてディオプサイド結晶が析出するとともに、長石結晶が析出することを特徴とする結晶性ガラス粉末に関する。
【0011】
本発明者等は、ディオプサイド結晶が析出した後に残存するガラス相の一部または全部を、結晶化開始温度がディオプサイド結晶より高くかつ体積収縮率の小さい長石結晶に結晶化可能な結晶性ガラス粉末を用いることにより、結晶析出に伴う気泡の発生を極力抑制しつつ、残存ガラス相を低減することができること見出した。これにより、気泡率が小さい低誘電損失が小さいガラスセラミック誘電体を作製することが可能となる。
【0012】
なお、本発明において「結晶性ガラス」とは、熱処理するとガラスマトリクス中から結晶が析出する性質を有する非晶質のガラスを意味する。また、「ディオプサイド結晶」とは、ディオプサイド結晶だけでなくディオプサイド固溶体結晶も含む。
【0013】
また「熱処理」とは、ディオプサイド結晶および長石結晶の結晶化開始温度以上で結晶化を充分に進行させることを意味し、具体的には800〜1000℃で20分以上の熱処理をいう。
【0014】
第二に、本発明の結晶性ガラスは、長石結晶が、ストロンチウム長石結晶(SrAlSi)および/またはバリウム長石結晶(BaAlSi)であることを特徴とする。
【0015】
第三に、本発明の結晶性ガラスは、組成として質量%で、SiO 40〜65%、CaO 10〜35%、MgO 11〜30%、Al 0.5〜20%、SrO 0〜25%、BaO 0〜25%を含有し、かつ質量比で、2.4<SiO/(SrO+BaO)<3.2の関係を満たすことを特徴とする。
【0016】
本発明の結晶性ガラスが上記組成を有することにより、熱処理により、主結晶としてディオプサイド結晶を析出するとともに、長石結晶が析出しやすくなる。なお、SiO−CaO−MgO系ガラスは失透傾向が強く、ガラス化が不安定になりやすいが、Alやアルカリ土類酸化物(BaO、SrO)を加えることでガラスを安定化することができ、量産性に優れたガラスを得ることができる。
【0017】
第四に、本発明は、前記いずれかの結晶性ガラス粉末60〜100質量%およびセラミック粉末0〜40質量%を含むことを特徴とするガラスセラミック材料に関する。
【0018】
第五に、本発明のガラスセラミック材料は、セラミック粉末がAlを含むことを特徴とする。
【0019】
セラミック粉末にAlを含むと、ディオプサイド結晶析出後の残存ガラス相におけるSi、Ba、Srの各成分とセラミック粉末中のAl成分が反応して長石結晶が析出しやすくなる。
【0020】
第六に、本発明は、前記いずれかのガラスセラミック材料を焼成してなるガラスセラミック誘電体に関する。
【0021】
第七に、本発明のガラスセラミック誘電体は、長石結晶を0.1〜30質量%含有することを特徴とする。
【0022】
第八に、本発明のガラスセラミック誘電体は、気泡率が6体積%以下であることを特徴とする。
【0023】
第九に、本発明のガラスセラミック誘電体は、誘電率εが6〜11、かつ周波数0.1GHz以上での誘電損失tanδが20×10−4以下であることを特徴とする。
【0024】
第十に、本発明のガラスセラミック誘電体は、マイクロ波用回路部品材料に用いることを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の結晶性ガラス粉末は、熱処理によって、主結晶としてディオプサイド結晶が析出するとともに、長石結晶が析出することを特徴とする。
【0026】
長石結晶としては、例えばストロンチウム長石結晶やバリウム長石結晶が挙げられる。これらの長石結晶を析出させることにより、熱処理後の残存ガラス相を効果的に低減することができ、気泡率および誘電損失が小さいガラスセラミック誘電体を作製することが可能となる。なお、そのほかにも誘電損失や気泡率が上昇しない範囲でカリウム長石結晶(CaAlSi)が析出してもかまわない。
【0027】
本発明の結晶性ガラス粉末は、組成として質量%で、SiO 40〜65%、CaO 10〜35%、MgO 11〜30%、Al 0.5〜20%、SrO 0〜25%、BaO 0〜25%を含有し、かつ質量比で、2.4<SiO/(SrO+BaO)<3.2の関係を満たすことが好ましい。以下に、ガラスの組成を上記のように限定した理由を述べる。なお、以下の説明において、「%」は特に断りのない限り「質量%」を意味する。
【0028】
SiOはガラスのネットワークフォーマーであるとともに、ディオプサイド結晶および長石結晶の構成成分である。SiOの含有量は40〜70%、特に45〜60%であることが好ましい。SiOの含有量が40%より少ないとガラス化しにくくなり、70%より多いと低温焼成(例えば、1000℃以下)が困難になる傾向がある。
【0029】
CaOはディオプサイド結晶の構成成分であり、その含有量は10〜35%、特に11〜33%であることが好ましい。CaOの含有量が10%より少ないとディオプサイド結晶が析出しにくくなり、結果としてガラスセラミック誘電体の誘電損失が高くなる傾向がある。CaOの含有量が35%より多いとガラスの流動性が悪化する傾向がある。
【0030】
MgOもディオプサイド結晶の構成成分であり、その含有量は11〜30%、12〜20%であることが好ましい。MgOの含有量が11%より少ないと結晶が析出しにくくなり、30%より多いとガラス化しにくくなる。
【0031】
Alはガラスを安定化させるための成分であり、その含有量は0.5%以上、特に1%以上であることが好ましい。上限については特に限定されないが、その含有量が多すぎるとディオプサイド結晶が析出しにくくなり、結果としてガラスセラミック誘電体の誘電損失が高くなる傾向がある。したがって、上限は20%以下、特に10%以下であることが好ましい。
【0032】
SrOはストロンチウム長石結晶の構成成分であり、その含有量は0〜25%、0.1〜23%、特に1〜20%であることが好ましい。SrOの含有量が25%より多いと、ディオプサイド結晶の析出量が少なくなる傾向があり、結果としてガラスセラミック誘電体の誘電損失が大きくなりやすい。
【0033】
BaOはバリウム長石結晶の構成成分であり、その含有量は0〜25%、0.1〜23%、特に1〜20%であることが好ましい。BaOの含有量が25%より多いと、ディオプサイド結晶の析出量が少なくなる傾向があり、結果としてガラスセラミック誘電体の誘電損失が大きくなりやすい。
【0034】
なお、ストロンチウム長石結晶またはバリウム長石結晶の少なくとも1種を析出させるために、SrOとBaOは合量で0.1%以上、特に1%以上含有することが好ましい。
【0035】
また、SiOと(SrO+BaO)の比を特定の範囲に制限することで、焼成後の残存ガラス相から効率的に長石結晶を結晶させることができる。具体的には、2.4<SiO/(SrO+BaO)<3.2、特に、2.45≦SiO/(SrO+BaO)≦3.15の関係を満たすことが好ましい。SiOと(SrO+BaO)の比が当該範囲から外れる場合は、長石結晶が析出しにくくなる。
【0036】
その他にも、本発明の結晶性ガラス粉末には、下記の成分を添加することができる。
【0037】
ZnOはガラス化を容易にする成分であり、その含有量は0〜20%、特に0.1〜15%であることが好ましい。ZnOの含有量が20%より多くなると結晶性が弱くなり、ディオプサイド結晶の析出量が少なくなる傾向がある。その結果、ガラスセラミック誘電体の誘電損失が大きくなりやすい。
【0038】
CuOは、絶縁材料基板において配線として使用されるAgによるガラスセラミック誘電体の着色を抑制する効果がある成分である。CuOの含有量は0〜1%、特に0.01〜0.2%であることが好ましい。CuOの含有量が1%より多いと、ガラスセラミック誘電体の誘電損失が大きくなりすぎる傾向がある。
【0039】
また上記成分以外にも、ガラスセラミック誘電体の誘電損失等の特性を損なわない範囲で、TiO、Nb、Y、P、B、Bi等の他成分を合量で30%まで添加してもよい。
【0040】
本発明の結晶性ガラス粉末の平均粒径D50は10μm以下、特に5μm以下であることが好ましい。平均粒径D50が10μmを超えると、ガラスセラミック誘電体中に気泡が発生しやすくなる。一方、下限はとくに限定されないが、取り扱いやすさや加工コストの観点から0.1μm以上であることが好ましい。
【0041】
本発明の結晶性ガラスには、熱膨張係数、靭性等の特性を改善する目的で、必要に応じてアルミナ粉末、コージェライト粉末、ムライト粉末、クォーツ粉末、ジルコン粉末等のセラミック粉末などを混合し、ガラスセラミック材料として用いてもよい。本発明のガラスセラミック材料は、結晶性ガラス粉末60〜100質量%およびセラミック粉末0〜40質量%、好ましくは結晶性ガラス65〜99.5質量%およびセラミック粉末0.05〜35質量%、さらに好ましくは結晶性ガラス70〜99質量%およびセラミック粉末1〜30質量%を含む。セラミック粉末の含有量が40質量%を超えると、ガラスセラミック誘電体の緻密化が困難となる傾向がある。
【0042】
なお、セラミック粉末として、Alを含むセラミック粉末を使用することにより、ディオプサイド結晶析出後の残存ガラス相中のSi、Ba、Srの各成分とセラミック粉末中のAl成分が反応して長石結晶が析出しやすくなる。Alを含むセラミック粉末としては、アルミナ粉末、コージェライト粉末、ムライト粉末等が挙げられる。
【0043】
また、結晶核としてディオプサイドやストロンチウム長石、バリウム長石の結晶物を0.1〜1質量%程度混合することで、結晶化度の向上が可能となる。
【0044】
本発明の結晶性ガラスを含むガラスセラミック材料を、結晶性ガラスの結晶化開始温度以上で熱処理することにより、主結晶としてディオプサイド結晶が析出し、かつ長石結晶が析出したガラスセラミック誘電体が得られる。
【0045】
ガラスセラミック誘電体におけるディオプサイド結晶の含有量は70質量%以上、75質量%以上、特に80質量%以上であることが好ましい。ディオプサイド結晶の含有量が70質量%未満であると、誘電損失が大きくなる傾向がある。なお、ディオプサイド結晶の含有量が多すぎると、ガラスセラミック誘電体中の気泡が多くなるため、上限は99.5質量%以下、特に99質量%以下であることが好ましい。
【0046】
ガラスセラミック誘電体における長石結晶の含有量は0.1〜30質量%、1〜20質量%、特に2〜10質量%であることが好ましい。長石結晶の含有量が30質量%より多くなると、ディオプサイド結晶が相対的に少なくなるため、誘電損失が大きくなったり、機械的強度が低下する傾向がある。
【0047】
ガラスセラミック誘電体において、残存ガラス相は0.5質量%以上、特に1質量%以上であることが好ましい。残存ガラス相が0.5質量%未満であると、ガラスセラミック誘電体中に気泡が発生しやすくなる。なお、残存ガラス相の含有量が多すぎると、相対的にディオプサイド結晶や長石結晶が少なくなり、誘電損失が大きくなる傾向があるため、上限は20質量%以下、特に10質量%以下であることが好ましい。
【0048】
本発明のガラスセラミック誘電体は、気泡率が6体積%以下、特に5体積%以下であることが好ましい。気泡率が大きくなると、絶縁材料基板として用いた場合に配線の断線が生じやすくなったり、誘電損失が大きくなったりする傾向がある。
【0049】
本発明のガラスセラミック誘電体は誘電率が低く、かつ高周波領域において誘電損失が低いことを特徴とする。具体的には、本発明のガラスセラミック誘電体は、誘電率が6〜11、好ましくは6〜10、かつ0.1GHz以上の高周波領域における誘電損失tanδが20×10−4以下、好ましくは18×10−4以下、さらに好ましくは15×10−4以下であることが好ましい。
【0050】
次に、本発明の結晶性ガラス粉末およびガラスセラミック誘電体の製造方法を説明する。
【0051】
本発明の結晶性ガラス粉末は、所定の組成となるように原料粉末を調製し、1300〜1650℃の温度で溶融後、成形、冷却した後、粉砕することにより得られる。
【0052】
本発明のガラスセラミック誘電体は、例えば以下のようにして製造される。まず、上記の通り得られた結晶性ガラス粉末に必要に応じてセラミック粉末を混合し、所定量の結合剤、可塑剤および溶剤を添加してスラリーを調製する。結合剤としては、例えばポリビニルブチラール樹脂、メタアクリル酸樹脂等、可塑剤としては例えばフタル酸ジブチル等、溶剤としては例えばトルエン、メチルエチルケトン等を使用することができる。
【0053】
得られたスラリーをドクターブレード法によってグリーンシートに成形する。グリーンシートを乾燥させ、所定寸法に切断する。必要に応じて、機械的加工を施してスルーホールを形成し、導体や電極となる低抵抗金属材料をスルーホールおよびグリーンシート表面に印刷する。続いてグリーンシートを複数枚積層し、熱圧着によって一体化する。
【0054】
さらに積層グリーンシートを、800〜1000℃、特に850〜900℃で焼成することによって結晶性ガラス粉末からディオプサイド結晶と長石結晶を析出させ、ガラスセラミックからなる絶縁層を有する多層基板、つまりガラスセラミック誘電体を得ることができる。
【0055】
なお、ここでは本発明のガラスセラミック誘電体を多層基板に適用した例を説明したが、これに限定されるものではなく、例えば厚膜回路部品や半導体パッケージ等の電子部品材料に適用することも可能である。
【実施例】
【0056】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0057】
表1および2は本発明の実施例(試料No.1〜5)および比較例(試料No.6〜10)を示す。
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】

【0060】
各試料は以下のように調製した。まず表に示す組成となるように原料粉末を調製し、1550℃で溶融後、成形、冷却することにより結晶性ガラスを作製した。得られた結晶性ガラスを粉砕し、平均粒径D50が2μmの結晶性ガラス粉末を作製した。
【0061】
各結晶性ガラス粉末に対し、表に示すセラミック粉末を所定の割合で混合し、表に示す焼成温度で20分間保持して結晶を析出させ、ガラスセラミック誘電体を得た。ガラスセラミック誘電体について、析出結晶を同定し、析出結晶およびガラス相の割合、気泡率、25℃における誘電率および誘電損失を測定した。結果を表1および2に示す。
【0062】
ガラスセラミック誘電体における析出結晶は、粉末X線回折装置(株式会社リガク RINT2100)によって同定した。析出結晶および残存ガラス相の割合はX線回折パターンから多重ピーク分離法により算出した。
【0063】
気泡率は、ガラスセラミック誘電体断面のSEM像を画像解析することにより求めた。画像解析には三谷商事株式会社のWINROOFを使用した。
【0064】
誘電率と誘電損失はハッキーアンドコールマン法(測定周波数10GHz)により求めた。
【0065】
表1および2から明らかなように、実施例であるNo.1〜5では、ディオプサイド結晶および長石結晶が析出し、残存ガラス相が1〜5質量%と少ないため、気泡率は2〜4体積%と低かった。また、10GHzの周波数で誘電率が7〜9、誘電損失が8〜14×10−4と低かった。
【0066】
一方、比較例であるNo.6〜8では、長石結晶が析出せず、No.8〜10では、ディオプサイド結晶が析出しなかった。そのため、いずれも残存ガラス相が8質量%以上と多くなり、誘電損失が21×10−4以上と大きくなった。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の結晶性ガラスは、内部の気泡が少なく高周波帯域において誘電損失が小さいため、小型または薄型の多層基板、マイクロ波用回路部品、パッケージ等に使用されるガラスセラミック誘電体用材料として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱処理によって、主結晶としてディオプサイド結晶が析出するとともに、長石結晶が析出することを特徴とする結晶性ガラス粉末。
【請求項2】
長石結晶が、ストロンチウム長石結晶および/またはバリウム長石結晶であることを特徴とする請求項1に記載の結晶性ガラス粉末。
【請求項3】
組成として質量%で、SiO 40〜65%、CaO 10〜35%、MgO 11〜30%、Al 0.5〜20%、SrO 0〜25%、BaO 0〜25%を含有し、かつ質量比で、2.4<SiO/(SrO+BaO)<3.2の関係を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載の結晶性ガラス粉末。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の結晶性ガラス粉末60〜100質量%およびセラミック粉末0〜40質量%を含むことを特徴とするガラスセラミック材料。
【請求項5】
セラミック粉末がAlを含むことを特徴とする請求項4に記載のガラスセラミック材料。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のガラスセラミック材料を焼成してなるガラスセラミック誘電体。
【請求項7】
長石結晶を0.1〜30質量%含有することを特徴とする請求項6に記載のガラスセラミック誘電体。
【請求項8】
気泡率が6体積%以下であることを特徴とする請求項6または7に記載のガラスセラミック誘電体。
【請求項9】
誘電率εが6〜11、かつ周波数0.1GHz以上での誘電損失tanδが20×10−4以下であることを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載のガラスセラミック誘電体。
【請求項10】
マイクロ波用回路部品材料に用いることを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載のガラスセラミック誘電体。

【公開番号】特開2012−51767(P2012−51767A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−196474(P2010−196474)
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】