説明

結晶性シリコン薄膜の形成方法及び装置

【課題】比較的低温下で、安価に、安全に結晶性シリコン薄膜を得て、該結晶性シリコン薄膜から容易に終端処理された結晶性シリコン薄膜を得ることができる結晶性シリコン薄膜の形成方法及び装置を提供する。
【解決手段】シリコンスパッタターゲットTと被成膜物品Sを設置した成膜室1内に水素ガスを導入し、高周波電力を印加して、プラズマ発光における波長656nmでの水素原子ラジカルの発光スペクトル強度Hα及び波長414nmでのシランラジカルの発光スペクトル強度SiH* との比(Hα/SiH* )が0.3〜1.3であるプラズマを発生させ、該プラズマにてシリコンスパッタターゲットTをケミカルスパッタリングして被成膜物品S上に結晶性シリコン薄膜を形成し、次いで、終端処理室10において、終端処理用ガスに高周波電力を印加することで発生させた終端処理用プラズマのもとで該結晶性シリコン薄膜の表面を終端処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は結晶性シリコン薄膜の形成方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
結晶性シリコンとしては、多結晶シリコン、ナノ結晶シリコン等が知られているが、これらには様々の用途がある。
多結晶シリコン薄膜は、例えば、液晶表示装置における画素に設けられるTFT(薄膜トランジスタ)スイッチの材料として、また、各種集積回路、太陽電池等の作製に採用されている。ナノ結晶シリコンは不揮発性メモリ、発光素子、光増感剤としての利用が期待されている。
【0003】
多結晶シリコン薄膜の形成方法については、被成膜基板の温度を800℃以上に維持して低圧下にプラズマCVD法等のCVD法やスパッタ蒸着法等のPVD法により形成する方法(例えば特開平5−234919号公報、特開平11−54432号公報参照)、各種CVD法やPVD法により比較的低温下にアモルファスシリコン薄膜を形成したのち、後処理として例えば1000℃程度の熱処理或いは600℃程度で長時間にわたる熱処理を該アモルファスシリコン薄膜に施して形成する方法(例えば特開平5−218368号公報参照)が知られている。
【0004】
アモルファスシリコン膜にレーザーアニール処理を施して該膜を結晶化させる方法も知られている(例えば特開平8−124852号公報参照)。
上記の他、モノシラン(SiH4 )、ジシラン(Si2 6 )等のシラン系ガスを水素やフッ化シリコン(SiF)などで希釈したガスのプラズマのもとで、500℃程度以下の低温下に結晶性シリコン薄膜を基板上に直接形成する方法も提案されている(例えば特開2000−195810号公報参照)。
【0005】
ところで、結晶性シリコン薄膜は、その表面が酸素や窒素などで終端処理されていることが望ましい。ここで「酸素や窒素などによる終端処理」とは、結晶性シリコン薄膜の表面に酸素や、窒素が結合し、(Si−O)結合や、(Si−N)結合、或いは(Si−O−N)結合などを生じさせることを言う。
【0006】
かかる終端処理による酸素や窒素の結合は、終端処理前の結晶性シリコン薄膜表面に、例えば、未結合手のような欠陥があっても、これを補うがごとく機能し、結晶性シリコン薄膜全体として実質上欠陥の抑制された状態を形成する。かかる終端処理が施された結晶性シリコン薄膜は電子デバイスの材料として利用された場合、該デバイスに求められる特性が向上する。例えば、TFT材料として用いられた場合、TFTにおける電子移動度の向上させたり、OFF電流を低減させることができる。また、長時間のTFTの使用においても電圧電流特性が変化し難い等の信頼性が向上する。
かかる終端処理については、特開2004−83299号公報に、酸素或いは窒素で終端されたシリコンナノ結晶構造体の形成方法が記載されている。
【0007】
【特許文献1】特開平5−234919号公報
【特許文献2】特開平11−54432号公報
【特許文献3】特開平5−218368号公報
【特許文献4】特開平8−124852号公報
【特許文献5】特開2004−83299号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、かかる従来の結晶性シリコン薄膜の形成方法のうち、被成膜基板を高温にさらす方法では、膜形成する基板として高温に耐え得る高価な基板(例えば石英ガラス基板)を採用しなければならず、例えば耐熱温度500℃以下の安価な低融点ガラス基板(代表的には無アルカリガラス基板)への結晶性シリコン薄膜の形成は困難である。そのため、結晶性シリコン薄膜の製造コストが基板コストの面から高くなってしまう。アモルファスシリコン膜を高温下に熱処理する場合も同様の問題がある。
【0009】
アモルファスシリコン膜をレーザーアニール処理する場合には、比較的低温下に結晶性シリコン膜を得ることができるが、レーザー照射工程を必要とすることや、非常に高いエネルギー密度のレーザー光を照射しなければならないこと等から、この場合も結晶性シリコン薄膜の製造コストが高くなってしまう。また、レーザー光を膜の各部に均一に照射することは難しく、さらにレーザー照射により水素脱離が生じて膜表面が荒れることもあり、これらにより良質の結晶性シリコン薄膜を得ることは困難である。
【0010】
シラン系ガスを水素やフッ化シリコン(SiF)などで希釈したガスのプラズマのもとで比較的低温下に結晶性シリコン薄膜を直接基板上に形成する方法では、シラン系ガスを水素ガス等で希釈して用いるので、膜堆積速度(成膜速度)が低下する。また、モノシランガスは大気中で自然発火する危険性を有している。
【0011】
また、特開2004−83299号公報に記載されているシリコンナノ結晶構造体の形成方法における、終端処理前の、ナノメータスケール厚のシリコン微結晶とアモルファスシリコンからなるシリコン薄膜の形成は、水素化シリコンガスと水素ガスとを含むガスの熱カタリシス反応で行うか、或いは水素化シリコンガスと水素ガスとを含むガスへの高周波電界の印加でプラズマを形成し、該プラズマのもとで行う、というものであり、先に説明した従来の結晶性シリコン薄膜と同様の問題を含んでいる。
【0012】
そこで本発明は、従来の被成膜基板の加熱やアモルファスシリコン膜の熱処理或いはレーザーアニール処理を要する結晶性シリコン薄膜の形成方法と比べると比較的低温下で、安価に、また、モノシランガスを用いる場合と比べると安全に結晶性シリコン薄膜を得て、該結晶性シリコン薄膜から容易に終端処理された結晶性シリコン薄膜を得ることができる結晶性シリコン薄膜の形成方法を提供することを課題とする。
【0013】
また本発明は、従来の被成膜基板の加熱やアモルファスシリコン膜の熱処理或いはレーザーアニール処理を要する結晶性シリコン薄膜の形成方法と比べると比較的低温下で、安価に、また、モノシランガスを用いる場合と比べると安全に結晶性シリコン薄膜を得て、該結晶性シリコン薄膜から容易に終端処理された結晶性シリコン薄膜を得ることができる結晶性シリコン薄膜の形成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は前記課題を解決するため研究を重ね次の知見を得た。
すなわち、水素ガス由来の、プラズマ発光における波長656nmでの水素原子ラジカルの発光スペクトル強度Hα及び波長414nmでのシランラジカルの発光スペクトル強度SiH* との比(Hα/SiH* )がHα/SiH* が0.3〜1.3であるプラズマでシリコンスパッタターゲットをケミカルスパッタリング(反応性スパッタリング)し、これによりスパッタリングされた原子と水素プラズマによる励起効果及び被成膜物品の堆積膜表面と水素ラジカルの反応などにより被成膜物品上に膜を堆積形成すれば、従来のシラン系ガスを水素ガスで希釈したガスのプラズマのもとで形成されるシリコン薄膜と同様に、結晶性を示し、表面粗度の小さい、良質の結晶性シリコン膜が形成される。
【0015】
しかも、かかる終端処理前の結晶性シリコン薄膜は比較的低温下に膜形成でき、例えば耐熱温度500℃以下の安価な低融点ガラス基板(代表的には無アルカリガラス基板)への結晶性シリコン薄膜の形成も可能であり、それだけ安価に被成膜物品上に結晶性シリコン薄膜を形成できる。
さらに、大気中で自然発火するシランガスを使用しないので、それだけ安全に結晶性シリコン薄膜を形成できる。
【0016】
このようにして形成される結晶性シリコン薄膜を、酸素含有ガス及び(又は)窒素含有ガスからなるプラズマに曝すことで、容易に酸素や窒素で終端処理された結晶性シリコン薄膜が得られる。
【0017】
本発明はかかる知見に基づき、
シリコンスパッタターゲットと被成膜物品を設置した成膜室内に水素ガスを導入し、該ガスに高周波電力を印加することで該成膜室内にプラズマ発光における波長656nmでの水素原子ラジカルの発光スペクトル強度Hαと波長414nmでのシランラジカルの発光スペクトル強度SiH* との比(Hα/SiH* )が0.3〜1.3であるプラズマを発生させ、該プラズマにて前記シリコンスパッタターゲットをケミカルスパッタリングして前記被成膜物品上に結晶性シリコン薄膜を形成する工程と、
酸素含有ガス及び窒素含有ガスから選ばれた少なくとも一種の終端処理用ガスに高周波電力を印加することで発生させた終端処理用プラズマのもとで前記結晶性シリコン薄膜の表面を終端処理する終端処理工程と
を含む結晶性シリコン薄膜の形成方法を提供する。
【0018】
ここでSiH* は、成膜室内に導入される水素ガスに高周波電力を印加することで発生する水素ガスプラズマによるシリコンスパッタターゲットのスパッタリングにより発生してプラズマ中に存在するシランラジカルの発光スペクトル強度(波長414nm)であり、Hαはプラズマ発光分光により波長656nmにピークを示す水素原子ラジカルの発光スペクトル強度である。
【0019】
Hα/SiH* はプラズマ中の水素ラジカルの豊富さを示しており、この値が0.3より小さくなってくると、形成される膜の結晶性が低下し、1.3より大きくなってくると、かえって膜形成が困難になってくる。Hα/SiH* の値は各種ラジカルの発光スペクトルをプラズマ発光分光計測装置により測定し、その測定結果に基づいて得ることができる。また、Hα/SiH* の制御は、水素ガスに印加する高周波電力の大きさ、成膜ガス圧、水素ガス導入量等のうち少なくとも一つの制御により行える。
【0020】
前記水素ガスへの高周波電力印加の代表例として、前記成膜室に対し高周波放電電極からの放電による誘導結合方式で行う場合を挙げることができる。これにより成膜室内部は水素ラジカル及び水素イオンに富んだ状態となる。
本発明者は、誘導結合方式により水素ガスをプラズマ化し、プラズマ発光分光することで、該プラズマにおいてHα(656nm)及びHβ(486nm)が支配的となることを観測している。HαやHβが豊富であることは水素ラジカル濃度が高いことを意味している。この点は、HαやHβが乏しくなる容量結合方式によるプラズマ生成の場合と大きく異なっている。
【0021】
誘導結合方式による水素ガスへの高周波電力印加により形成されたプラズマのプラズマポテンシャルは、条件にもよるが、例えば約20eV程度であり、いずれにしてもかなり低いので、通常の物理的なスパッタリングは起こり難い。しかし、本発明者はプラズマ発光分光によりSi(288nm)の存在を観測している。これはシリコンスパッタターゲット表面における、水素ラジカル及び水素イオンによるケミカルスパッタリング(反応性スパッタリング)によるものである。
【0022】
水素ガスへの高周波電力印加のための高周波放電電極は、成膜室の外側に設置してもよいし、電力印加をより効率よく行うために成膜室内に設置してもよい。成膜室外に設置するときには、高周波放電電極が臨む成膜室壁部分は誘電体材料で形成すればよい。
【0023】
成膜室内に設置するときは、該電極の導体部表面を電気絶縁性材料で被覆することが好ましい。電極導体部表面を電気絶縁性材料で被覆することで、自己バイアスにより電極がプラズマからの荷電粒子によりスパッタリングされ、電極由来のスパッタ粒子が形成しようとする膜中に混入することを抑制できる。
かかる絶縁性材料としては、石英ガラスや電極のアルマイト処理による材料を例示できる。
【0024】
前記シリコンスパッタターゲットは様々な状態で提供できる。例えば成膜室のガスプラズマに触れる部分〔例えば、プラズマに触れ易い成膜室内壁(室壁の内側に設けた内壁であってもよい)〕の全部又は一部をシリコン膜形成、シリコンウエハの貼着、シリコン片の付設等によりシリコンで覆ってシリコンスパッタターゲットにしてもよい。成膜室それ自体とは別途独立したシリコンスパッタターゲットを成膜室内に設置してもよい。
【0025】
高周波放電電極を成膜室の外側に設置するにしても、内側に設置するにしても、シリコンスパッタターゲットは、これを円滑にケミカルスパッタリングするうえで、少なくともプラズマの発生領域である高周波放電電極に臨む位置、換言すれば高周波放電電極の近傍位置に設けることが好ましい。
例えば高周波放電電極を成膜室内に設置する場合において、該高周波放電電極に臨設されるシリコンスパッタターゲットの例として、該電極周囲を囲むとともに被成膜物品側に開放された筒状配置のシリコンスパッタターゲットを挙げることができる。
【0026】
また、いずれにしても、前記結晶性シリコン薄膜形成における前記プラズマのポテンシャルは15eV〜45eV程度であることが好ましく、電子密度は1010cm-3〜1012cm-3程度であることが好ましい。 前記結晶性シリコン薄膜形成における前記成膜室内圧力(成膜圧)は0.6Pa〜13.4Pa(約5mTorr〜約100mTorr)程度であることが好ましい。
【0027】
結晶性シリコン薄膜形成におけるプラズマポテンシャルが15evより低くなってくると、結晶性が低下してくるし、45eVより高くなってきても結晶化が阻害されやすくなる。
また、プラズマ中の電子密度が1010cm-3より小さくなってくると、結晶化度が低下したり、膜形成速度が低下したりし、1012cm-3より大きくなってくると、膜及び被成膜物品がダメージを受けやすくなる。
【0028】
結晶性シリコン薄膜形成における成膜室内圧力が0.6Pa(約5mTorr)より低くなってくると、プラズマが不安定となったり、膜形成速度が低下してきたりし、13.4Pa(約100mTorr)より高くなってくると、プラズマが不安定になったり、膜の結晶性が低下したりする。
かかるプラズマポテンシャルやプラズマの電子密度は、印加する高周波電力の大きさ、周波数、成膜圧等のうち少なくとも一つを制御することで調整できる。
【0029】
前記終端処理工程の実施については、支障がなければ、結晶性シリコン薄膜形成工程後に、前記成膜室内へ前記終端処理用ガスを導入し、該ガスに高周波電力を印加して終端処理用プラズマを発生させ、該プラズマのもとで結晶性シリコン薄膜の表面を終端処理してもよい。
また、前記成膜室から独立した終端処理室を準備し、該終端処理室において終端処理工程を実施してもよい。
【0030】
また、前記成膜室において前記結晶性シリコン薄膜形成工程を実施したあと、該結晶性シリコン薄膜が形成された被成膜物品を該成膜室に(直接的に或いは物品搬送ロボットを有する搬送室を介する等して間接的に)連設された終端処理室へ搬入し、該終端処理室で前記終端処理工程を実施してもよい。
【0031】
かかる終端処理室における終端処理において、終端処理用ガスに高周波電力を印加する高周波放電電極についても、前記のような誘導結合プラズマを発生させる電極としてもよい。
終端処理用ガスとしては、前記のとおり酸素含有ガス又は(及び)窒素含有ガスを用いるが、酸素含有ガスとしては、酸素ガスや酸化窒素(N2 O)ガスを例示でき、窒素含有ガスとしては、窒素ガスやアンモニア(NH3 )ガスを例示できる。
【0032】
本発明は、また、次の結晶性シリコン薄膜の形成装置も提供する。すなわち、
被成膜物品を支持する物品ホルダを有する成膜室と、
前記成膜室内に配置されるシリコンスパッタターゲットと、
前記成膜室内へ水素ガスを導入する水素ガス供給装置と、
前記成膜室内から排気する排気装置と、
前記成膜室内へ前記水素ガス供給装置から供給される水素ガスに高周波電力を印加して前記シリコンスパッタターゲットをケミカルスパッタリングするためのケミカルスパッタリング用プラズマを形成する高周波電力印加装置と、
前記成膜室内のケミカルスパッタリング用プラズマ発光における波長656nmでの水素原子ラジカルの発光スペクトル強度Hαと波長414nmでのシランラジカルの発光スペクトル強度SiH* との発光強度比(Hα/SiH* )を求めるプラズマ発光分光計測装置と、
酸素含有ガス及び窒素含有ガスから選ばれた少なくとも一種の終端処理用ガスに高周波電力を印加することで終端処理用プラズマを発生させ、該終端処理用プラズマのもとで前記被成膜物品上に形成される結晶性シリコン薄膜の表面を終端処理するための終端処理装置と
を含んでいる結晶性シリコン薄膜形成装置である。
【0033】
この、薄膜形成装置は、前記発光分光計測装置で求められる発光強度比(Hα/SiH* )と0.3以上1.3以下の範囲から定められた基準値とを比較して、前記成膜室内プラズマにおける発光強度比(Hα/SiH* )が該基準値に向かうように、前記高周波電力印加装置の電源出力、前記水素ガス供給装置から前記成膜室内へ導入される水素ガス導入量及び前記排気装置による排気量のうち少なくとも一つを制御する制御部をさらに有していてもよい。
【0034】
この薄膜形成装置においても、前記ケミカルスパッタリング用プラズマを形成する高周波電力印加装置は、前記成膜室に対し設置された高周波放電電極を含み、該電極からの放電により誘導結合方式で高周波電力印加を行うものでもよい。
かかる高周波放電電極は前記成膜室内に設置してもよく、その場合、シリコンスパッタターゲットは、前記の薄膜形成方法で説明したと同様に、少なくとも該高周波放電電極に臨設してもよい。
高周波放電電極を成膜室内に設置する場合、該高周波放電電極はその導体部表面が電気絶縁性材料で被覆されることが望ましい。
【0035】
前記終端処理装置は、前記成膜室内へ酸素含有ガス及び窒素含有ガスから選ばれた少なくとも一種の終端処理用ガスを導入する終端処理用ガス供給装置と、
該成膜室内へ該終端処理用ガス供給装置から供給される終端処理用ガスに高周波電力を印加して終端処理用プラズマを発生させる高周波電力印加装置と
を含んでいるものを例示できる。
【0036】
この終端処理装置の場合、終端処理用プラズマを発生させる高周波電力印加装置として、前記のケミカルスパッタリング用プラズマを形成する高周波電力印加装置を、電力の大きさ等を必要に応じ調整する等して、利用してもよい。
また、排気装置については、前記の排気装置を利用できる。
終端処理室として前記成膜室から独立した終端処理室を採用することも可能である。
【0037】
また、終端処理装置は、前記成膜室に(直接的に或いは物品搬送ロボットを有する搬送室を介する等して間接的に)連設され、該成膜室おいて結晶性シリコン薄膜が形成された被成膜物品が搬入される終端処理室と、
該終端処理室内から排気する排気装置と、
該終端処理室内へ酸素含有ガス及び窒素含有ガスから選ばれた少なくとも一種の終端処理用ガスを導入する終端処理用ガス供給装置と、
該終端処理室内へ該終端処理用ガス供給装置から供給される終端処理用ガスに高周波電力を印加して終端処理用プラズマを発生させる高周波電力印加装置と
を含んでいるものでもよい。
【0038】
かかる終端処理室用の高周波電力印加装置についても、終端処理用ガスに高周波電力を印加する高周波放電電極は、誘導結合プラズマを発生させる電極としてもよい。
【発明の効果】
【0039】
以上説明したように本発明によると、従来の被成膜基板の加熱やアモルファスシリコン膜の熱処理或いはレーザーアニール処理を要する結晶性シリコン薄膜の形成方法と比べると比較的低温下で、安価に、また、モノシランガスを用いる場合と比べると安全に結晶性シリコン薄膜を得て、該結晶性シリコン薄膜から容易に終端処理された結晶性シリコン薄膜を得ることができる結晶性シリコン薄膜の形成方法を提供することができる。
【0040】
また本発明によると、従来の被成膜基板の加熱やアモルファスシリコン膜の熱処理或いはレーザーアニール処理を要する結晶性シリコン薄膜の形成方法と比べると比較的低温下で、安価に、また、モノシランガスを用いる場合と比べると安全に結晶性シリコン薄膜を得て、該結晶性シリコン薄膜から容易に終端処理された結晶性シリコン薄膜を得ることができる結晶性シリコン薄膜の形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説朋する。図1は本発明に係る終端処理された結晶性シリコン薄膜の形成に用いる装置の1例の概略構成を示している。
図1に示す装置は成膜室1を備えており、該成膜室内には物品ホルダ2、該ホルダ上方の高周波放電電極51及び該電極に臨むシリコンスパッタターゲットTが設置されている。
【0042】
電極51はその導体部表面が石英ガラスからなる絶縁材52で被覆されている。
この電極51には、マッチングボックスMB1を介して放電用高周波電源PW1が接続されている。電極51、マッチングボックスMB1及び電源PW1は、後述するように成膜室内へ導入される水素ガスに高周波電力を印加する高周波電力印加装置5を構成している。
【0043】
電源PW1は出力可変電源であり、例えば、周波数13、56MHzの高周波電力を供給できる。なお、電源周波数は13.56MHzに限定されるものではなく、例えば60MHz程度からから数100MHzの範囲のものも採用できる。
【0044】
物品ホルダ2は被成膜物品(本例では基板S)を加熱するヒータ21を備えている。物品ホルダ2は成膜室1とともに接地されている。
シリコンスパッタターゲットTは筒形状に形成されており、電極51を囲むように該電極に臨み、成膜室1の天井部に取付け保持されている。筒状ターゲットTの下端はホルダ2に向け開放されている。
【0045】
なお、ターゲットTに加え、或いはターゲットTに代えて、例えば、図示のターゲットTに囲まれた成膜室天井壁部分等にシリコンスパッタターゲットを設けてもよい。そのようなターゲットは例えばシリコンウエハを該天井壁部分に貼着等にて保持させることで設けることができる。このように、シリコンスパッタターゲットを成膜室1内に形成されるプラズマに触れやすい部位に設けるとよい。
【0046】
成膜室1に対し水素ガス供給装置4が設けられており、該水素ガス供給装置4は前記ターゲットTの外側領域において天井部に設けたガス導入ノズルN1から室内へ水素ガスを供給できる。
【0047】
成膜室1には上記のほか、成膜室1内から排気する排気装置3が接続されており、成膜室内に形成されるプラズマの状態を計測するための発光分光計測装置6も付設されている。
排気装置3は、排気量調整を行うコンダクタンスバルブ及び該バルブを介して室1に接続された排気ポンプを含んでいる。
【0048】
ここでの発光分光計測装置6は、図2(A)に示すように、既述のシランラジカルの発光スペクトル強度SiH* (波長414nm)を検出する分光器61、水素の発光スペクトル強度Hα(波長656nm)及びHβ(波長486nm)を検出する分光器62、64を含むものである。分光器61、62で検出された発光強度SiH* 及びHαは演算部63に入力され、ここで、発光強度比(Hα/SiH* )が求められる。なお、分光器に代えて、フィルター付きの光センサを採用することも可能である。
【0049】
図1に示す結晶性シリコン薄膜形成装置は、また、基板搬送室7を介して成膜室1に連設された終端処理室10を有している。基板搬送室7と成膜室1との間には開閉可能のゲートバルブV1があり、基板搬送室7と終端処理室10との間には開閉可能のゲートバルブV2がある。基板搬送室7内には、基板搬送ロボット71が設置されている。
【0050】
終端処理室10内には、物品ホルダ20及び該ホルダ上方の、平板型高周波放電電極501が設けられている。
電極501はマッチングボックスMB2を介して放電用高周波電源PW2に接続されている。電極501、マッチングボックスMB2及び電源PW2は、後述するように終端処理室10内へ導入される終端処理用ガスに高周波電力を印加する高周波電力印加装置50を構成している。
【0051】
電源PW2は出力可変電源であり、例えば、周波数13、56MHzの高周波電力を供給できる。なお、電源周波数は13.56MHzに限定される必要はない。
物品ホルダ20は、後述するように、成膜室1内で結晶性シリコン薄膜が形成された被成膜基板Sを加熱するヒータ201を備えている。物品ホルダ20は室10とともに接地されている。
【0052】
終端処理室10に対し終端処理用ガス供給装置40が設けられており、該ガス供給装置40は室10の天井部に設けたガス導入ノズルN2から室内へ終端処理用ガスを供給できる。
ここでの終端処理用ガスは、酸素ガス又は窒素ガスである。
【0053】
終端処理室10には上記のほか、室10内から排気する排気装置30が接続されている。排気装置30は、排気量調整を行うコンダクタンスバルブ及び該バルブを介して室10に接続された排気ポンプを含んでいる。
【0054】
次に、以上説明した装置による、基板S上への、酸素終端処理又は窒素終端処理された結晶性シリコン薄膜の形成例について説明する。
この膜形成においては、成膜室1内の成膜ガス圧を0.6Pa〜13.4Paの範囲のものに維持して行う。成膜ガス圧は、図示を省略しているが、成膜室1に圧力センサを接続する等して検出すればよい。
【0055】
先ず、成膜室1において基板S上に終端処理前の結晶性シリコン薄膜を形成する。
排気装置3にて成膜室1内から排気を開始する。そのときの排気量は、室1内の成膜ガス圧0.6Pa〜13.4Paを考慮した排気量に調整しておく。
排気装置3の運転により成膜室1の内圧が目指す成膜ガス圧より低くなってくると、水素ガス供給装置4から成膜室1内に水素ガスを導入するとともに出力可変電源PW1から高周波放電電極51に高周波電力を印加し、これにより導入された水素ガスを誘導結合方式でプラズマ化する。
【0056】
かくして発生したプラズマからの、発光分光計測装置6による検出情報から該プラズマにおけるHα(656nm )及びHβ(486nm)を計測する。
そして、電極51へ印加する高周波電力、ガス供給装置4からの水素ガス導入量、室内ガス圧等のうち少なくとも一つを制御することで、プラズマにおけるHα(656nm )及びHβ(486nm)の発光強度が十分大くなる高周波電力、水素ガス導入量等の条件を決定する。
【0057】
また、水素ガスプラズマにおけるHα/SiH* が0.3〜1.3となり、プラズマのポテンシャルが15eV〜45eVとなり、プラズマにおける電子密度が、1010cm-3〜1012cm-3となる高周波電力、水素ガス導入量等の条件を決定する。
プラズマポテンシャル、電子密度は例えば、図示省略のラングミューアプローブを室1内へ挿入し、これを用いてラングミューアプローブ法により確認できる。
これらを勘案して最終的な高周波電力、水素ガス導入量、成膜ガス圧等の条件を決定する。
【0058】
このようにして成膜条件を決定したあとは、その条件に従って膜形成を行う。
膜形成においては、ホルダ2にて支持する被成膜基板Sの温度を500℃以下の比較的低温、例えば400℃程度に加熱できるようにヒータ21を設定し、該ホルダ2に被成膜基板Sを搭載する。次いで排気装置3にて成膜室1から排気し、ひき続き水素ガス供給装置4から成膜室1内へ所定量の水素ガスを導入するとともに電極51に電源PW1から高周波電力を印加することで、電極51からの放電を誘導結合方式にて行わせ、これによりプラズマを発生させる。
【0059】
すると、電極51に対し臨設されたシリコンスパッタターゲットTをプラズマがケミカルスパッタリング(反応性スパッタリング)し、それにより基板S上にシリコン薄膜が形成される。この膜は、従来のシラン系ガスを水素ガスで希釈して得られるガスプラズマのもとに形成される結晶性シリコン薄膜と同様に、結晶性を示すシリコン薄膜である。
基板温度は低すぎると、シリコンの結晶化が困難になるので、他の条件にもよるが概ね200℃以上が望ましい。
【0060】
次に、このようにして結晶性シリコン薄膜を形成した基板を終端処理室10へ搬入して該結晶性シリコン薄膜の表面に酸素終端処理又は窒素終端処理を施す。
このとき、基板Sの室10への搬入は、ゲートバルブV1を開け、ロボット71でホルダ2上の基板Sを取り出し基板搬送室7内へ引き入れ、ゲートバルブV1を閉じ、引き続きゲートバルブV2を開けて、該基板を室10内のホルダ20に搭載することで行う。その後、ロボット可動部分を基板搬送室7内へ引っ込め、ゲートバルブV2を閉じ、室10において終端処理を実施する。
【0061】
終端処理室10における終端処理においては、基板Sを、必要に応じ、ヒータ201で終端処理に適する温度に加熱する。そして、排気装置30にて終端処理室10内から排気を開始し、室10の内圧が目指す終端処理ガス圧より低くなってくると、終端処理用ガス供給装置40から室10内へ、終端処理用ガス(本例では酸素ガス又は窒素ガス)を所定量導入するとともに出力可変電源PW2から高周波放電電極501に高周波電力を印加し、これにより導入されたガスを容量結合方式でプラズマ化する。
かくして発生する終端処理用プラズマのもとで、基板S上の結晶性シリコン薄膜の表面に酸素終端処理或いは窒素終端処理を施し、終端処理された結晶性シリコン薄膜を得る。
【0062】
なお、室10においても、高周波放電電極として高周波放電アンテナを用いて誘導結合型プラズマを発生させてもよい。また、室1においては、高周波放電アンテナ51に代えて、平行平板型電極を採用して、容量結合型プラズマを形成してもよい。
【0063】
かかる終端処理工程における終端処理圧としては、それとは限定されないが、例えば、0.2Pa〜7.0Pa程度を挙げることができる。
また、終端処理工程における基板の加熱温度は、成膜室1におけるシリコン薄膜形成が比較的低温で実施可能であることを意味あらしめるため、また、基板Sの耐熱性を考慮して、室温〜500℃程度の温度範囲から選択する場合を例示できる。
【0064】
次に、図1に示すタイプの装置による、終端処理された結晶性シリコン薄膜の形成の実験例について説明する。
(1)実験例1(酸素終端処理された結晶性シリコン薄膜の形成)
(1-1) 結晶性シリコン薄膜形成工程
基板:無アルカリガラス基板
基板温度:400℃
高周波電源:13.56MHz、 2000W
水素ガス導入量:50sccm
成膜圧力:13Pa(98mTorr)
プラズマにおけるHα/SiH* :1.0
プラズマポテンシャル:30eV
プラズマにおける電子密度:1011cm-3
膜厚:約500Å
【0065】
このようにして得られた膜の結晶性をレーザラマン分光分析により評価したところ、図3のラマンスペクトルに示されるように、ラマンシフト520cm-1の結晶性を示すピークが出現し、結晶性が確認された。
【0066】
(1-2) 終端処理工程
基板温度:400℃
酸素ガス導入量:100sccm
高周波電源:13.56MHz、1kW
終端処理圧:0.67Pa
処理時間 :1分
【0067】
(2)実験例2(窒素終端処理された結晶性シリコン薄膜の形成)
(2-1) 結晶性シリコン薄膜形成工程
実験例1の場合と同じ
(2-2) 終端処理工程
基板温度:400℃
窒素ガス導入量:200sccm
高周波電源:13.56MHz、1kW
終端処理圧:0.67Pa
処理時間 :5分
【0068】
このように酸素終端処理、窒素終端処理された結晶性シリコン薄膜は、TFT電気特性としてのて電子移動度が、終端処理しない場合より、一層向上し、また、OFF電流が低減した。
【0069】
以上説明した、終端処理前の結晶性シリコン薄膜形成工程におけるシリコン薄膜形成においては、電源PW1の出力、水素ガス供給装置4による水素ガス供給量、成膜室内圧を左右する排気装置3による排気量等の制御はマニュアル的になされた。
【0070】
しかし、図2(B)に示すように、発光分光計測装置6の演算部50で求められた発光強度比Hα/SiH* を制御部Contに入力してもよい。そして、かかる制御部Contとして、演算部50から入力された発光強度比Hα/SiH* が予め定めた基準発光強度比(基準値)か否かを判断し、基準発光強度比から外れていると、基準発光強度比に向けて、前記の出力可変電源PW1の出力、水素ガス供給装置4による水素ガス供給量、及び排気装置3による排気量のうち少なくとも一つを制御することができるように構成されたものを採用してもよい。
【0071】
かかる制御部Contの具体例として、排気装置3のコンダクタンスバルブ(図示省略)を制御することで該装置3による排気量を制御し、それにより成膜室1内のガス圧を、前記基準発光強度比達成に向けて制御するものを挙げることができる。
【0072】
この場合、出力可変電源PW1の出力、水素ガス供給装置4による水素ガス供給量及び排気装置3による排気量等について、基準発光強度比或いはそれに近い値が得られる、予め実験等で求めた電源出力、水素ガス供給量及び排気量等を初期値として採用すればよい。
【0073】
かかる初期値決定に際しても、排気装置3による排気量は、成膜室1内の圧力が0.6Pa〜13.4Paの範囲に納まるように決定する。また、プラズマのポテンシャルが15eV〜45eVの範囲に、プラズマにおける電子密度が1010cm-3〜1012cm-3の範囲に納まるように決定する。
【0074】
そして、電源PW1の出力、水素ガス供給装置4による水素ガス供給量については、それらの初期値をその後も維持し、排気装置3による排気量を、基準発光強度比達成に向けて、制御部Contに制御させればよい。
【0075】
次に、成膜室において終端処理工程を実施できるシリコン薄膜形成装置の例について、図4を参照して説明しておく。
図4に示すシリコン薄膜形成装置は、図1に示す装置において、成膜室1を終端処理室として利用するものである。この装置では、物品ホルダ2は、絶縁部材11を介して室1に設置されているとともに、切り換えスイッチSWに接続されており、スイッチSWの一方の端子は接地されており、他方の端子は、高周波電力印加装置50’を構成するマッチングボックスMB2を介して高周波電源PW2に接続されている。また、成膜室1内へ、終端処理用ガス供給装置40からノズルN2にて終端処理用ガスを供給できる。
図4の装置において図1の装置における部品等と実質上同じ部品等には図1の装置と同じ参照符号を付してある。
【0076】
図4の装置によると、終端処理前のシリコン薄膜形成工程では、ホルダ2をスイッチSWの操作により接地状態におき、水素ガス供給装置4と高周波電力印加装置5とを用いて基板S上に結晶性シリコン薄膜を形成できる。終端処理工程では、ホルダ2をスイッチSWの操作により電源PW2に接続し、終端処理用ガス供給装置40と高周波電力印加装置50’を用いて、基板上の結晶性シリコン薄膜表面に終端処理を施せる。
【0077】
なお、図4の装置における終端処理工程においては、シリコンスパッタターゲットTがスパッタリングされないように、或いは、されても無視できる程度に抑制されるように、高周波電力や室内圧を調整することが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、結晶性シリコン薄膜を利用したTFT(薄膜トランジスタ)スイッチ等の各種半導体部品、半導体装置等の形成のために、終端処理された結晶性シリコン薄膜を形成する場合に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明に係る結晶性シリコン薄膜の形成に用いる装置の1例の概略構成を示す図である。
【図2】図2(A)は、プラズマ発光分光計測装置例を示すブロック図であり、図2(B)は、排気装置による排気量制御を行う回路例のブロック図である。
【図3】実験例により形成された終端処理前シリコン膜の結晶性をレーザラマン分光分析により評価した結果を示す図である。
【図4】本発明に係る結晶性シリコン薄膜の形成に用いる装置の他の例の概略構成を示す図である。
【符号の説明】
【0080】
1 成膜室
2 物品ホルダ
21 ヒータ
3 排気装置
4 水素ガス供給装置
N1 ガス導入ノズル
5 高周波電力印加装置
51 高周波放電電極
52 絶縁材
MB1 マッチングボックス
PW1 放電用高周波電源
T シリコンスパッタターゲット
S 基板
6 プラズマ発光分光計測装置
61、62、64 分光器
63 演算部
Cont 制御部
10 終端処理室
20 物品ホルダ
201 ヒータ
30 排気装置
40 終端処理用ガス供給装置
N2 ガス導入ノズル
50 高周波電力印加装置
501 高周波放電電極
MB2 マッチングボックス
PW2 高周波電源
7 基板搬送室
71 基板搬送ロボット
V1、V2 ゲートバルブ
11 電気絶縁性部材
50’ 高周波電力印加装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンスパッタターゲットと被成膜物品を設置した成膜室内に水素ガスを導入し、該ガスに高周波電力を印加することで該成膜室内にプラズマ発光における波長656nmでの水素原子ラジカルの発光スペクトル強度Hαと波長414nmでのシランラジカルの発光スペクトル強度SiH* との比(Hα/SiH* )が0.3〜1.3であるプラズマを発生させ、該プラズマにて前記シリコンスパッタターゲットをケミカルスパッタリングして前記被成膜物品上に結晶性シリコン薄膜を形成する工程と、
酸素含有ガス及び窒素含有ガスから選ばれた少なくとも一種の終端処理用ガスに高周波電力を印加することで発生させた終端処理用プラズマのもとで前記結晶性シリコン薄膜の表面を終端処理する終端処理工程と
を含むことを特徴とする結晶性シリコン薄膜の形成方法。
【請求項2】
前記成膜室において前記結晶性シリコン薄膜形成工程を実施したあと、該結晶性シリコン薄膜が形成された被成膜物品を該成膜室に連設された終端処理室へ搬入し、該終端処理室で前記終端処理工程を実施する請求項1記載の結晶性シリコン薄膜の形成方法。
【請求項3】
被成膜物品を支持する物品ホルダを有する成膜室と、
前記成膜室内に配置されるシリコンスパッタターゲットと、
前記成膜室内へ水素ガスを導入する水素ガス供給装置と、
前記成膜室内から排気する排気装置と、
前記成膜室内へ前記水素ガス供給装置から供給される水素ガスに高周波電力を印加して前記シリコンスパッタターゲットをケミカルスパッタリングするためのケミカルスパッタリング用プラズマを形成する高周波電力印加装置と、
前記成膜室内のケミカルスパッタリング用プラズマ発光における波長656nmでの水素原子ラジカルの発光スペクトル強度Hαと波長414nmでのシランラジカルの発光スペクトル強度SiH* との発光強度比(Hα/SiH* )を求める発光分光計測装置と、 酸素含有ガス及び窒素含有ガスから選ばれた少なくとも一種の終端処理用ガスに高周波電力を印加することで終端処理用プラズマを発生させ、該終端処理用プラズマのもとで前記被成膜物品上に形成される結晶性シリコン薄膜の表面を終端処理するための終端処理装置と
を含んでいることを特徴とする結晶性シリコン薄膜形成装置。
【請求項4】
前記終端処理装置は、前記成膜室に連設され、該成膜室おいて結晶性シリコン薄膜が形成された被成膜物品が搬入される終端処理室と、
該終端処理室内から排気する排気装置と、
該終端処理室内へ酸素含有ガス及び窒素含有ガスから選ばれた少なくとも一種の終端処理用ガスを導入する終端処理用ガス供給装置と、
該終端処理室内へ該終端処理用ガス供給装置から供給される終端処理用ガスに高周波電力を印加して終端処理用プラズマを発生させる高周波電力印加装置と
を含んでいる請求項3記載の結晶性シリコン薄膜形成装置。
【請求項5】
前記終端処理装置は、
終端処理室を兼ねさせる前記成膜室と、
該成膜室内へ酸素含有ガス及び窒素含有ガスから選ばれた少なくとも一種の終端処理用ガスを導入する終端処理用ガス供給装置と、
該成膜室内へ該終端処理用ガス供給装置から供給される終端処理用ガスに、前記物品ホルダを高周波電極として高周波電力を印加して終端処理用プラズマを発生させる高周波電力印加装置と
を含んでいる請求項3記載の結晶性シリコン薄膜形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−88314(P2007−88314A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−277047(P2005−277047)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【出願人】(000003942)日新電機株式会社 (328)
【Fターム(参考)】