説明

結晶性ピロロ[2,3−D]ピリミジン化合物

【課題】医薬投与剤形、特に、経皮投与剤形中で使用するために改善された特性を示す、遊離塩基の新規な固体形態の提供。
【解決手段】粉末X線回折パターン、固体13C核磁気共鳴化学シフト等により特徴づけられる、3−((3R,4R)−4−メチル−3−[メチル−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−アミノ]−ピペリジン−1−イル)−3−オキソプロピオニトリルの新規の結晶形態および非結晶形態、それを含有する医薬組成物、それらの調製ならびにそれらの使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3−((3R,4R)−4−メチル−3−[メチル−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−アミノ]−ピペリジン−1−イル)−3−オキソプロピオニトリルの結晶形態または非結晶形態に関する。また、本発明は、結晶形態または非結晶形態を含む医薬組成物、およびそのような形態を調製するための方法にも関する。さらに、本発明は、種々の疾患の局所治療における結晶形態または非結晶形態の使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
3−((3R,4R)−4−メチル−3−[メチル−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−アミノ]−ピペリジン−1−イル)−3−オキソプロピオニトリルは、化学式C1620Oおよび以下の構造式を有する。
【0003】
【化1】

【0004】
3−((3R,4R)−4−メチル−3−[メチル−(7H−ピロロ[2,3−d]−ピリミジン−4−イル)−アミノ]−ピペリジン−1−イル)−3−オキソプロピオニトリルの合成は、WO2001/42246およびWO2002/096909に記載されており、それらは、本発明の出願人と同一の出願人によるものであり、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれている。3−((3R,4R)−4−メチル−3−[メチル−(7H−ピロロ[2,3−d]−ピリミジン−4−イル)−アミノ]−ピペリジン−1−イル)−3−オキソプロピオニトリルモノクエン酸塩の調製が、US6,965,027に記載されている。また、3−((3R,4R)−4−メチル−3−[メチル−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−アミノ]−ピペリジン−1−イル)−3−オキソプロピオニトリル遊離塩基の結晶形態または非結晶形態も、タンパク質キナーゼ、例として、酵素ヤヌスキナーゼ(JAK)の阻害剤として有用であり、したがって、臓器移植、異種移植、狼瘡、多発性硬化症、関節リウマチ、乾癬、I型糖尿病および糖尿病に由来する合併症、癌、喘息、アトピー性皮膚炎、自己免疫性甲状腺障害、潰瘍性大腸炎、クローン病、アルツハイマー病、白血病、および免疫抑制が望ましいであろう他の適応症のための免疫抑制剤として有用な療法である。本発明は、医薬投与剤形、特に、経皮投与剤形中で使用するために改善された特性を示す、遊離塩基の新規な固体形態に関する。
【0005】
化学構造に基づいて、化合物が結晶化するかどうか、どんな条件下で化合物が結晶化するか、化合物の結晶性の固体形態はいくつ存在し得るか、またはそれらの形態のいずれかの固体状態構造を、ある程度の確実性を伴って予測することはできない。任意の結晶性薬物の重要な特徴は、そのような物質の多形挙動である。一般に、薬物の結晶形態は、薬物の非結晶形態よりも好ましい。これは一部には、それらの優れた安定性による。例えば、多くの状況下で、保存時に、非結晶性薬物が、結晶性薬物の形態に変換する。薬物の非結晶形態と結晶形態は典型的に異なる物理学的特性および化学的特性を有することから、そのような相互変換は、医薬品の使用において安全性の理由で望ましくない場合がある。医薬化合物の異なる固体形態が示す異なる物理学的特性は、重要な薬学的パラメータ、例として、(製剤および製品の製造において重要である)保存、安定性、圧縮性、密度、および(生物学的利用率の決定において重要である)溶解速度に影響を及ぼす可能性がある。安定性の差は、化学反応性の変化(例えば、加水分解または酸化が異なり、その結果、特定の多形を含む投与剤形が、異なる多形を含む投与剤形よりも迅速に変色する可能性がある)、機械的な変化(例えば、速度論的に好まれる結晶形態が、熱力学的により安定な結晶形態に変換する場合、錠剤が保存時に崩壊する可能性がある)、または両方の変化(例えば、1つの多形の錠剤が、高い湿度においてはより分解を受けやすい場合がある)の結果生じ得る。極端な状況では、多形間の溶解性の差により、効力を欠き、かつ/または毒性を示す結晶形態への移行が生じることがある。加えて、結晶形態の物理学的特性が、医薬品の加工において重要である場合もある。例えば、特定の結晶形態は、溶媒和物をより容易に形成する場合があり、またはろ過および洗浄して、不純物を除くのが、他の結晶形態よりも困難である場合がある(すなわち、粒子形状およびサイズ分布が、1つの結晶形態では、他の形態とは異なる場合がある)。
【0006】
様々な物理的形態は、様々な利点をもたらすことから、薬物の1つの理想的な物理的形態があるわけではない。最も安定な形態およびそのような他の形態を探索することは非常な努力を要し、成果は予測不可能である。したがって、種々の製剤中で使用することができる多様な独特の薬物の形態、例えば、塩、多形、非結晶形態を求めることは重要である。薬物の形態を特定の製剤または治療的用途のために選択するには、多様な特性の検討が必要となり、特定の用途のための最良の形態は、1つの特定の重要な良好な特性を有する形態とすることができ、一方、他の特性は、許容できればよく、またはわずかに許容できればよい。
【0007】
薬物の開発の成功には、患者にとって治療上有効な治療となるための特定の一般的要件を満たすことが必要となる。これらの要件は、2つのカテゴリー、すなわち、(1)投与剤形の製造を成功させるための要件、および(2)薬物製剤を患者に投与した後の薬物送達および体内動態を成功させるための要件に分類される。
【0008】
同じ化合物の異なる結晶性の固体形態はしばしば、異なる固体状態の特性、例として、融点、溶解性、溶解速度、吸湿性、粉体の流動性、機械的特性、化学的安定性および物理的安定性を示す。これらの固体状態の特性は、ろ過、乾燥、および投与剤形の製造ユニットの操作における利点をもたらすことができる。したがって、同じ化合物の異なる結晶性の固体形態を同定したら、任意の所与のセットの加工および製造の条件下における最適な結晶性の固体形態、ならびにそれぞれの結晶性の固体形態の異なる固体状態の特性を決定することができる。
【0009】
分子の多形を、当技術分野で公知のいくつかの方法により得ることができる。そのような方法として、これらに限定されないが、溶融再結晶化、溶融冷却、溶媒再結晶化、脱溶媒和、急速蒸発、急速冷却、緩慢冷却、蒸気拡散および昇華が挙げられる。多形は、周知の技法、例として、これらに限定されないが、示差走査熱量測定(DSC)、熱重量測定(TGA)、X線粉末回折(XRPD)、単結晶X線回析、固体核磁気共鳴(NMR)、赤外(IR)分光法、ラマン分光法および高温光学顕微鏡法を使用して、検出、同定、分類、および特徴付けすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】WO2001/42246
【特許文献2】WO2002/096909
【特許文献3】US6,965,027
【特許文献4】WO2007/012953
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】International Tables for Crystallography(Vol.C、219、500、Kluwer Academic Publishers、1992)
【非特許文献2】Ferrer,N.、Nogues−Carulla、J.M.Diamond and Related Materials、1996、5、598〜602
【非特許文献3】Thongnopkun,P.、Ekgasit,S.Diamond and Related Materials、2005、14、1592〜1599
【非特許文献4】Pike Technologies Technical Note:Pike Reflections、Winter 2002、Vol.7/1
【非特許文献5】www.piketech.com
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、3−((3R,4R)−4−メチル−3−[メチル−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−アミノ]−ピペリジン−1−イル)−3−オキソプロピオニトリル遊離塩基の結晶形態および非結晶形態を対象とする。また、本発明は、組成物も対象とし、これらは、結晶性または非結晶性の3−((3R,4R)−4−メチル−3−[メチル−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−アミノ]−ピペリジン−1−イル)−3−オキソプロピオニトリル遊離塩基を含有する医薬組成物を包含する。さらに、本発明は、3−((3R,4R)−4−メチル−3−[メチル−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−アミノ]−ピペリジン−1−イル)−3−オキソプロピオニトリル遊離塩基の結晶性および非結晶性の固体形態を調製するためのプロセスも対象とする。
【0013】
薬物製剤、例えば、増強された生物学的利用率または安定性を示す薬物製剤が一貫して探求されていることから、薬物分子の新しいまたはより純粋な多形の形態が引き続き求められている。本明細書に記載する3−((3R,4R)−4−メチル−3−[メチル−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−アミノ]−ピペリジン−1−イル)−3−オキソプロピオニトリルの多形は、これらおよび他の必要性を満たすために役立つ。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、粉末X線回折パターン、固体13C核磁気共鳴スペクトル、ラマンスペクトルおよびFT−IRスペクトルにより特徴付けられる、3−((3R,4R)−4−メチル−3−[メチル−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−アミノ]−ピペリジン−1−イル)−3−オキソプロピオニトリルの結晶形態を提供する。
【0015】
本発明は、2−プロパノール、2−プロパノールとテトラヒドロフラン、テトラヒドロフラン、エタノールとn−ブタノール、エタノール、n−ブタノール、2−プロパノールとN,N−ジメチルホルムアミド、およびテトラヒドロフランを包含する溶媒系から結晶化した結晶形態を提供する。
【0016】
さらに、本発明は、粉末X線回折パターン、固体13C核磁気共鳴スペクトル、ラマンスペクトルおよびFT−IRスペクトルにより特徴付けられる、3−((3R,4R)−4−メチル−3−[メチル−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−アミノ]−ピペリジン−1−イル)−3−オキソプロピオニトリルの非結晶形態も提供する。
【0017】
また、本発明は、3−((3R,4R)−4−メチル−3−[メチル−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−アミノ]−ピペリジン−1−イル)−3−オキソプロピオニトリル;1つまたは複数の浸透増強剤;および薬学的に許容できる担体を含む医薬組成物も提供する。
【0018】
また、本発明は、結晶形態または非結晶形態からなる群から選択される3−((3R,4R)−4−メチル−3−[メチル−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−アミノ]−ピペリジン−1−イル)−3−オキソプロピオニトリル;1つまたは複数の浸透増強剤;および薬学的に許容できる担体を含む医薬組成物も提供する。
【0019】
また、本発明は、哺乳動物の疾患を治療する方法であって、結晶形態もしくは非結晶形態からなる群から選択される3−((3R,4R)−4−メチル−3−[メチル−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−アミノ]−ピペリジン−1−イル)−3−オキソプロピオニトリルまたはその薬学的に許容できる塩または医薬組成物の治療有効量を、それを必要とする哺乳動物に投与するステップを含む方法も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】およそ1当量の水を含有する、23℃における3−((3R,4R)−4−メチル−3−[メチル−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−アミノ]−ピペリジン−1−イル)−3−オキソプロピオニトリルの結晶形態の計算した粉末X線回折パターンを示す図である。
【図2】120℃における3−((3R,4R)−4−メチル−3−[メチル−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−アミノ]−ピペリジン−1−イル)−3−オキソプロピオニトリルの結晶形態の計算した粉末X線回折パターンを示す図である。
【図3】プロセス1を使用して調製した3−((3R,4R)−4−メチル−3−[メチル−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−アミノ]−ピペリジン−1−イル)−3−オキソプロピオニトリルの結晶形態の粉末X線回折パターンを示す図である。
【図4】プロセス2を使用して調製した3−((3R,4R)−4−メチル−3−[メチル−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−アミノ]−ピペリジン−1−イル)−3−オキソプロピオニトリルの結晶形態の粉末X線回折パターンを示す図である。
【図5】プロセス3を使用して調製した3−((3R,4R)−4−メチル−3−[メチル−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−アミノ]−ピペリジン−1−イル)−3−オキソプロピオニトリルの結晶形態の粉末X線回折パターンを示す図である。
【図6】プロセス2を使用して調製した3−((3R,4R)−4−メチル−3−[メチル−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−アミノ]−ピペリジン−1−イル)−3−オキソプロピオニトリルの結晶形態のラマンスペクトルを示す図である。
【図7】プロセス2を使用して調製した3−((3R,4R)−4−メチル−3−[メチル−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−アミノ]−ピペリジン−1−イル)−3−オキソプロピオニトリルの結晶形態のFT−IRスペクトルを示す図である。
【図8】プロセス2を使用して調製した3−((3R,4R)−4−メチル−3−[メチル−(7H−ピロロ[2,3−d]−ピリミジン−4−イル)−アミノ]−ピペリジン−1−イル)−3−オキソプロピオニトリルの結晶形態の固体13C核磁気共鳴スペクトルを示す図である。スピニングサイドバンドを、アステリスクを用いて示す。
【図9】メタノール溶媒を含有する3−((3R,4R)−4−メチル−3−[メチル−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−アミノ]−ピペリジン−1−イル)−3−オキソプロピオニトリルの結晶形態の粉末X線回折パターンを示す図である。
【図10】アセトン溶媒を含有する3−((3R,4R)−4−メチル−3−[メチル−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−アミノ]−ピペリジン−1−イル)−3−オキソプロピオニトリルの結晶形態の粉末X線回折パターンを示す図である。
【図11】1−ブタノール溶媒およびエタノール溶媒を含有する3−((3R,4R)−4−メチル−3−[メチル−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−アミノ]−ピペリジン−1−イル)−3−オキソプロピオニトリルの結晶形態の粉末X線回折パターンを示す図である。
【図12】N,N−ジメチルホルムアミド溶媒を含有する3−((3R,4R)−4−メチル−3−[メチル−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−アミノ]−ピペリジン−1−イル)−3−オキソプロピオニトリルの結晶形態の粉末X線回折パターンを示す図である。
【図13】テトラヒドロフラン溶媒を含有する3−((3R,4R)−4−メチル−3−[メチル−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−アミノ]−ピペリジン−1−イル)−3−オキソプロピオニトリルの結晶形態の粉末X線回折パターンを示す図である。
【図14】アセトン溶媒を含有する3−((3R,4R)−4−メチル−3−[メチル−(7H−ピロロ[2,3−d]−ピリミジン−4−イル)−アミノ]−ピペリジン−1−イル)−3−オキソプロピオニトリルの結晶形態の固体13C核磁気共鳴スペクトルを示す図である。スピニングサイドバンドを、アステリスクを用いて示す。
【図15】1−ブタノール溶媒およびエタノール溶媒を含有する3−((3R,4R)−4−メチル−3−[メチル−(7H−ピロロ[2,3−d]−ピリミジン−4−イル)−アミノ]−ピペリジン−1−イル)−3−オキソプロピオニトリルの結晶形態の固体13C核磁気共鳴スペクトルを示す図である。スピニングサイドバンドを、アステリスクを用いて示す。
【図16】N,N−ジメチルホルムアミド溶媒を含有する3−((3R,4R)−4−メチル−3−[メチル−(7H−ピロロ[2,3−d]−ピリミジン−4−イル)−アミノ]−ピペリジン−1−イル)−3−オキソプロピオニトリルの結晶形態(ロット121002−39−6)の固体13C核磁気共鳴スペクトルを示す図である。スピニングサイドバンドを、アステリスクを用いて示す。
【図17】テトラヒドロフラン溶媒を含有する3−((3R,4R)−4−メチル−3−[メチル−(7H−ピロロ[2,3−d]−ピリミジン−4−イル)−アミノ]−ピペリジン−1−イル)−3−オキソプロピオニトリルの結晶形態の固体13C核磁気共鳴スペクトルを示す図である。
【図18】3−((3R,4R)−4−メチル−3−[メチル−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−アミノ]−ピペリジン−1−イル)−3−オキソプロピオニトリルの非結晶形態の粉末X線回折パターンを示す図である。
【図19】3−((3R,4R)−4−メチル−3−[メチル−(7H−ピロロ[2,3−d]−ピリミジン−4−イル)−アミノ]−ピペリジン−1−イル)−3−オキソプロピオニトリルの非結晶形態の固体13C核磁気共鳴スペクトルを示す図である。スピニングサイドバンドを、アステリスクを用いて示す。
【図20】3−((3R,4R)−4−メチル−3−[メチル−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−アミノ]−ピペリジン−1−イル)−3−オキソプロピオニトリルの非結晶形態のラマンスペクトルを示す図である。
【図21】3−((3R,4R)−4−メチル−3−[メチル−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−アミノ]−ピペリジン−1−イル)−3−オキソプロピオニトリルの非結晶形態のFT−IRスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、3−((3R,4R)−4−メチル−3−[メチル−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−アミノ]−ピペリジン−1−イル)−3−オキソプロピオニトリルの結晶形態または非結晶形態を対象とする。また、本発明は、結晶形態または非結晶形態を含む医薬組成物、およびそのような形態を調製するための方法も対象とする。さらに、本発明は、種々の疾患の治療における結晶形態または非結晶形態の使用も対象とする。
【0022】
固体化学の当業者が固体形態を分析するために使用することができるいくつかの分析方法がある。用語「分析する」は、本明細書で使用する場合、固体形態の固体状態構造についての情報を得ることを意味する。例えば、X線粉末回析は、非晶質の固体形態と結晶性の固体形態とを見分け、化合物の結晶性の固体形態を特徴付け、同定するのに適した技法である。また、X線粉末回析は、混合物中の(1つまたは複数の)結晶性の固体形態の量を定量化するのにも適している。X線粉末回析では、X線を、結晶上に照射し、回折されたX線の強度を、X線供給源と試料により回折されたビームとの間の2倍の角度の関数として測定する。これらの回折されたX線の強度を、グラフ上にピークとしてプロットすることができ、x軸が、X線供給源と回折されたX線との間の2倍の角度(これは、「2θ」角として公知である)であり、y軸が、回折されたX線の強度である。このグラフを、X線粉末回析パターンまたは粉末パターンと呼ぶ。異なる結晶性の固体形態は、異なる粉末パターンを示す。これは、x軸上のピークの場所が、結晶の固体状態構造の特性であることによる。
【0023】
そのような粉末パターンまたはそれらの部分を、結晶性の固体形態を同定する指紋として使用することができる。したがって、未知の試料の粉末パターンを取り、その粉末パターンと参照の粉末パターンとを比較することができる。明確に一致する場合には、未知の試料が参照の形態と同じ結晶性の固体形態であることを意味する。また、固体形態の混合物を含有する未知の試料は、公知の化合物の粉末パターンを足したり、減じたりすることによって分析することもできる。
【0024】
結晶性の固体形態を特徴付けるために、粉末パターン中のピークを選択する場合、または参照の粉末パターンを使用して、形態を同定する場合には、他の固体形態中には存在しない、1つの形態中のピークまたはピークの集合を同定する。
【0025】
用語「特徴付ける」は、本明細書で使用する場合、1つの固体形態と別の固体形態とを区別することが可能である適切なセットのデータを選択すること意味する。X線粉末回析においては、そのセットのデータは、1つまたは複数のピークの位置である。どのX線粉末回析のピークが特定の形態を定義するかを選択することを、その形態を特徴付けるという。
【0026】
用語「同定する」は、本明細書で使用する場合、固体形態に特徴的なデータの選択を行い、それらのデータを使用して、試料中にその形態が存在するかどうかを決定することを意味する。X線粉末回析では、それらのデータは、1つまたは複数のピークのx軸の位置であり、それらの位置は、上記したように、問題になっている形態を特徴付ける。例えば、選択したいくつかのX線回析のピークが特定の固体形態を特徴付けることを決定したら、それらのピークを使用して、試料中にその形態が存在するかどうかを決定することができる。
【0027】
同じ化合物の結晶性の固体形態を、X線粉末回析を用いて特徴付けおよび/または同定する場合、しばしば、粉末パターン全体を使用する必要がない。しばしば、粉末パターン全体のより小さなサブセットを使用して、特徴付けおよび/または同定を実施することができる。化合物の結晶性の固体形態と他の結晶性の固体形態とを見分けるピークの集合を選択することによって、それらのピークに依存して、形態を特徴付けることも、例えば、未知の混合物中の形態を同定することもできる。別の分析技法からのデータ等の追加のデータ、または例えば、追加の多形が後に同定される場合には、粉末パターンからの追加のピークも足して、形態を特徴付けおよび/または同定することができる。
【0028】
計測器、試料および試料調製の差に起因して、ピーク値は時には、ピーク値の前に修飾語「約(about)」を用いて報告する。これは、固体化学技術では、ピーク値に内在する変動があることから、一般的な慣行である。粉末パターン中のピークの2θx軸値の典型的な精度は、約±0.2°の2θである。したがって、ほとんどのX線回折計上で、ほとんどの条件下で測定した場合、「約9.2°の2θ」にあるように見える粉末回析のピークは、そのピークが9.0°の2θと9.4°の2θとの間であり得ることを意味する。ピーク強度の変動性は、どのように試料容器中で個々の結晶が外部のX線供給源に関して配向するか(「選択配向性(preferred orientation)」として公知である)の結果である。この配向効果からは、結晶についての構造情報が得られない。X線粉末回析は、結晶性の固体形態を特徴付けおよび/または同定するために使用することができるいくつかの分析技法のうちの1つに過ぎない。分光学的技法、例として、ラマン分光法(顕微ラマン分光法を包含する)、赤外分光法および固体NMR分光法を使用して、結晶性の固体形態を特徴付けおよび/または同定することができる。また、これらの技法を使用して、混合物中の1つまたは複数の結晶性の固体形態の量を定量化することもでき、また、ピーク値を、ピーク値の前に修飾語「約(about)」を用いて報告することもできる。FT−ラマンおよびFT−赤外による測定に伴う、ピーク値についての典型的な変動性は、約±2cm−1である。13C化学シフトに伴う、ピーク値についての典型的な変動性は、結晶性物質については、約±0.2ppmである。示差走査熱量測定の開始温度と関連がある値についての典型的な変動性は、約±5℃である。
【0029】
用語「室温」は、本明細書で使用する場合、20℃〜23℃の温度範囲を指す。
【0030】
第1の態様では、本発明は、
I)CuKα1放射線(λ=1.54056Å)を使用して測定した、以下の2θ値を含有するX線粉末回析パターン:6.4、14.3および17.0°2θ±0.2°2θ、
II)CuKα1放射線(λ=1.54056Å)を使用して測定した、以下の2θ値を含有するX線粉末回析パターン:6.4、9.1および11.1°2θ±0.2°2θ、
III)以下の波数(cm−1)値を含有するラマンスペクトル:1305、1504および2267cm−1±2cm−1
IV)以下の波数(cm−1)値を含有する赤外スペクトル:1406、1554および1635cm−1±2cm−1
V)以下の共鳴(ppm)値を含有する13C固体NMRスペクトル:157.0、151.0、102.4、44.8、32.7ppm±0.2ppm、
VI)以下の共鳴(ppm)値を含有する13C固体NMRスペクトル:157.0、151.0、102.4、63.1、44.8、32.7ppm±0.2ppm、
VII)以下の共鳴(ppm)値を含有する13C固体NMRスペクトル:156.9、151.0、102.4、68.6、63.1、44.9、32.6ppm±0.2ppm、
VIII)以下の共鳴(ppm)値を含有する13C固体NMRスペクトル:156.9、151.0、102.4、68.6、44.9、32.6ppm±0.2ppm、
IX)以下の共鳴(ppm)値を含有する13C固体NMRスペクトル:156.9、151.0、102.4、60.1、44.9、32.6、18.8ppm±0.2ppm、
X)以下の共鳴(ppm)値を含有する13C固体NMRスペクトル:156.9、151.0、102.4、60.1、44.9、32.6ppm±0.2ppm、
XI)以下の共鳴(ppm)値を含有する13C固体NMRスペクトル:156.9、151.0、102.4、44.9、32.6、18.8ppm±0.2ppm、
XII)以下の共鳴(ppm)値を含有する13C固体NMRスペクトル:162.1、156.8、150.9、102.5、63.1、44.9、32.6ppm±0.2ppm、
XIII)以下の共鳴(ppm)値を含有する13C固体NMRスペクトル:162.1、156.8、150.9、102.5、44.9、32.6ppm±0.2ppm、
XIV)CuKα1放射線(λ=1.54056Å)を使用して測定した、以下の2θ値を含有するX線粉末回析パターン:6.4、14.3、17.0±0.2°2θ、さらに、63.1、63.1および68.6、68.6、18.8および60.1、18.8、60.1、63.1および162.1、ならびに162.1ppm±0.2ppmからなる群から選択される共鳴(ppm)値を含有する13C固体NMRスペクトル、
XV)CuKα1放射線(λ=1.54056Å)を使用して測定した、以下の2θ値を含有するX線粉末回析パターン:6.4、9.1および11.1±0.2°2θ、さらに、63.1、63.1および68.6、68.6、18.8および60.1、18.8、60.1、63.1および162.1、ならびに162.1ppm±0.2ppmからなる群から選択される共鳴(ppm)値を含有する13C固体NMRスペクトル、
XVI)CuKα1放射線(λ=1.54056Å)を使用して測定した、以下の2θ値を含有するX線粉末回析パターン:6.4、14.3、17.0°2θ±0.2°2θ、および0.0、2.6、2.9〜4.7重量%の間の2−プロパノールのレベル、
XVII)CuKα1放射線(λ=1.54056Å)を使用して測定した、以下の2θ値を含有するX線粉末回析パターン:6.4、9.1、11.1°2θ±0.2°2θ、および0.0、2.6、2.9〜4.7重量%の間の2−プロパノールのレベル、
XVIII)CuKα1放射線(λ=1.54056Å)を使用して測定した、以下の2θ値を含有するX線粉末回析パターン:6.4、14.3、17.0°2θ±0.2°2θ、および0.5〜4.0重量%の間の水のレベル、
XIX)CuKα1放射線(λ=1.54056Å)を使用して測定した、以下の2θ値を含有するX線粉末回析パターン:6.4、9.1、11.1°2θ±0.2°2θ、および0.5〜4.0重量%間の水のレベル、
XX)以下の共鳴(ppm)値を含有する13C固体NMRスペクトル:157.0、151.0、102.4、44.8、32.7ppm±0.2ppm、および0.0、2.6、2.9〜4.7重量%の間の2−プロパノールのレベル、
XXI)以下の共鳴(ppm)値を含有する13C固体NMRスペクトル:157.0、151.0、102.4、44.8、32.7ppm±0.2ppm、および0.5〜4.0重量%間の水のレベル、
XXII)およそ、a=19.6〜19.7Å、b=19.6〜19.7Å、c=8.7Å、α=90.0°、β=90.0°、およびγ=90.0からなる寸法および角度を有する結晶学的単位格子
からなる群から選択される1つまたは複数の特徴を有する結晶形態を含む。
【0031】
第2の態様では、本発明は、
I)以下の共鳴(ppm)値を含有する13C固体NMRスペクトル:161.9、152.0、103.3、31.8、26.0ppm±0.2ppm、
II)以下の波数(cm−1)値を含有するラマンスペクトル:1311、1506、および2258cm−1±2cm−1
III)以下の波数(cm−1)値を含有するFTIRスペクトル:1407、1554、および1647cm−1±2cm−1
IV)87℃のガラス転移温度
からなる群から選択される1つまたは複数の特徴を有する非結晶形態を含む。
【0032】
計測器および分析方法:
23℃における単結晶X線分析:プロセス9による記載に従って、試料結晶を、1,4−ジオキサン/水(1:1、体積に関して)の溶液の蒸発により調製した。代表的な結晶を調査し、0.87Åのデータセット(最大のsinθ/λ=0.57)を、Bruker APEX II/R回析計上で収集した。原子散乱因子を、International Tables for Crystallography(Vol.C、pp.219、500、Kluwer Academic Publishers、1992)から得た。単結晶X線データを、23℃で収集した。全ての結晶学的計算が、SHELXTLシステム(バージョン5.1、Bruker AXS、1997年)により円滑に進んだ。試行構造を、直接的な方法により得、常法通りに精密化した。差マップから、結晶水が明らかになった。水素の位置を、可能な限り計算した。メチルの水素の場所を、差フーリエの技法により決め、次いで、理想化した。窒素および酸素上の水素の場所を、差フーリエの技法により決め、精密化した。水素パラメータは、構造因子の計算に加えたが、精密化しなかった。最小二乗法による精密化の最後のサイクルにおいて計算したシフトは全て、対応する標準偏差の0.1未満であった。最終的なR指数は、4.15%であった。最終的な差フーリエから、欠落した電子密度も置き違えた電子密度もないことが明らかになった。
【0033】
120℃における単結晶X線分析:23℃におけるX線分析に利用した試料結晶をまた、120℃における単結晶X線分析にも利用した。代表的な結晶を調査し、1Åのデータセット(最大のsinθ/λ=0.5)を、Bruker APEX II/R回析計上で収集した。原子散乱因子を、International Tables for Crystallography(Vol.C、pp.219、500、Kluwer Academic Publishers、1992)から得た。単結晶X線データを、120℃で収集した。全ての結晶学的計算が、SHELXTLシステム(バージョン5.1、Bruker AXS、1997年)により円滑に進んだ。試行構造を、直接的な方法により得、常法通りに精密化した。差マップから、結晶水がないことが明らかになった。水素の位置を、可能な限り計算した。メチルの水素の場所を、差フーリエの技法により決め、次いで、理想化した。水素パラメータは、構造因子の計算に加えたが、精密化しなかった。最小二乗法による精密化の最後のサイクルにおいて計算したシフトは全て、対応する標準偏差の0.1未満であった。最終的なR指数は、9.29%であった。最終的な差フーリエから、欠落した電子密度も置き違えた電子密度もないことが明らかになった。
【0034】
粉末パターンの計算:粉末パターンを、単結晶X線データから、SHELXTLパッケージのプログラムを使用して計算した。このパッケージは、XFOG(SHELXTL、Bruker AXS、XFOG、バージョン5.100、1997年)およびXPOW(SHELXTL、Bruker AXS、XPOW、バージョン5.102、1997〜2000年)を包含した。画像を重ね合わせるのに必要となる適切な波長を、XCHファイル交換プログラム(SHELXTL、Bruker AXS、XCH、バージョン5.0.4、1995〜2001年)を使用して加えた。
【0035】
粉末X線回折:X線粉末回析パターンを、Siemens D5000回析計を用いて、銅の放射線を使用して生成した。計測器には、線焦点X線管が装備されていた。管の電圧およびアンペア数はそれぞれ、38kVおよび38mAに設定した。発散スリットおよび散乱スリットを1mmに設定し、受光スリットを0.6mmに設定した。回折されたCuKα1放射線(λ=1.54056Å)を、Sol−Xエネルギー分散X線検出器を使用して検出した。3.0〜40.0°の2θの、2.4°の2θ/分でのシータ2シータ(theta two theta)の連続的なスキャン(1秒/0.04°の2θのステップ)を使用した。アルミナ標準物質(NIST標準参照物質1976)を分析して、計測器の配置を調べた。データを、BRUKER AXSのDIFFRAC PLUSソフトウエア、バージョン2.0を使用して収集および分析した。分析のために、試料を、石英製ホルダー中にそれらを置くことによって調製した。
【0036】
PXRDの反射の帰属:Eva Application 9.0ソフトウエアを使用して、PXRDスペクトルを可視化および評価した。所与の反射の最大強度に、ピーク値を帰属させた。10%超の相対強度を示す全ての反射を、以下の表内に包含する。
【0037】
示差走査熱量測定:非結晶形態のガラス転移温度を、Mettler−Toledo821e示差走査熱量計を使用して、60mL/分の窒素パージ下で決定した。非結晶形態の試料を、40μLのアルミニウム製皿中に置いた。皿を、圧着し、ピンホールを用いて通風した。熱処理サイクルを、連続的に4回適用し、それにより、試料を、−10℃〜200℃に20℃/分で加熱し、次いで、200℃〜−10℃に−30℃/分で冷却した。最終的な熱ステップが続き、それにより、試料を、−10℃〜200℃に20℃/分で加熱した。ガラス転移温度を、熱処理の最終的な加熱セグメントから、Mettler−Toledo STAReソフトウエア、バージョン8.10を使用して測定し、測定した中間点により、本明細書に報告した。
【0038】
IR検出を用いる熱重量分析:熱重量分析を、高分解能変調2950熱重量分析装置(TA Instruments)を使用して、TA Instrument Control 1.1Aソフトウエアを用いて実施した。計測器の較正を、シュウ酸カルシウム一水和物を用いて実施した。およそ10mgの試料を、アルミニウム製皿(40μL)中に秤量した。試料を、乾燥窒素パージ(試料パージ:80mL/分、天秤パージ:20mL/分)下において、30℃〜300℃に、5℃/分の加熱速度で加熱した。発生したガスの赤外検出は、Nicolet magna−IR補助実験モジュールと組み合わせたThermo Nicolet Nexus 670FTIRモジュールを使用すると可能であった。各実験の間、輸送ラインの温度を225℃に維持し、セルの温度を250℃に維持した。
【0039】
固体13C核磁気共鳴分光法:分析のために、非結晶性試料を、4mmのZrO製回転子中に試料を詰め込むことによって調製した。プロトンデカップル13C CPMAS(交差分極マジック角回転実験)スペクトルを、周囲条件において、広口径のBruker−Biospin Avance DSX 500MHz NMR分光計中に配置したBruker−Biospin BL HFX CPMASプローブ上で収集した。回転子を、マジック角に方向付け、15.0kHzでスピンした。速いスピンのスピードにより、スピニングサイドバンドの強度が最小限に留まった。交差分極接触時間を2.0ミリ秒に設定した。およそ91kHzのプロトンデカップリングの磁場を適用した。632回のスキャンを、3.5秒の待ち時間で収集した。炭素のスペクトルを、外部標準物質の結晶性アダマンタンを使用して参照し、その高磁場共鳴は29.5ppmに設定した。
【0040】
2−プロパノラート(プロセス2):分析のために、結晶形態を、4mmのZrO製回転子中に試料を詰め込むことによって調製した。プロトン放出13C CPMAS(交差分極マジック角回転実験)スペクトルを、周囲条件において、広口径のBruker−Biospin Avance DSX 500MHz NMR分光計中に配置したBruker−Biospin 4mm HFX CPMASプローブ上で収集した。回転子を、マジック角に方向付け、15.0kHzでスピンした。速いスピンのスピードにより、スピニングサイドバンドの強度が最小限に留まった。交差分極接触時間を2.0ミリ秒に設定した。およそ87kHzのプロトンデカップリングの磁場を適用した。2,468回のスキャンを、1.3秒の待ち時間で収集した。炭素のスペクトルを、外部標準物質の結晶性アダマンタンを使用して参照し、その高磁場共鳴は29.5ppmに設定した。
【0041】
アセトン溶媒和物(プロセス5):分析のために、結晶形態を、4mmのZrO製回転子中に試料を詰め込むことによって調製した。プロトン放出13C CPMAS(交差分極マジック角回転実験)スペクトルを、周囲条件において、広口径のBruker−Biospin Avance DSX 500MHz NMR分光計中に配置したBruker−Biospin 4mm HFX CPMASプローブ上で収集した。回転子を、マジック角に方向付け、15.0kHzでスピンした。速いスピンのスピードにより、スピニングサイドバンドの強度が最小限に留まった。交差分極接触時間を2.0ミリ秒に設定した。およそ86kHzのプロトンデカップリングの磁場を適用した。11,332回のスキャンを、1.8秒の待ち時間で収集した。炭素のスペクトルを、外部標準物質の結晶性アダマンタンを使用して参照し、その高磁場共鳴は29.5ppmに設定した。
【0042】
n−ブタノラート/エタノラート(プロセス6):分析のために、結晶形態を、4mmのZrO製回転子中に試料を詰め込むことによって調製した。プロトン放出13C CPMAS(交差分極マジック角回転実験)スペクトルを、周囲条件において、広口径のBruker−Biospin Avance DSX 500MHz NMR分光計中に配置したBruker−Biospin 4mm HFX CPMASプローブ上で収集した。回転子を、マジック角に方向付け、15.0kHzでスピンした。速いスピンのスピードにより、スピニングサイドバンドの強度が最小限に留まった。交差分極接触時間を2.0ミリ秒に設定した。およそ86kHzのプロトンデカップリングの磁場を適用した。8,000回のスキャンを、5.5秒の待ち時間で収集した。炭素のスペクトルを、外部標準物質の結晶性アダマンタンを使用して参照し、その高磁場共鳴は29.5ppmに設定した。
【0043】
ジメチルホルムアミド溶媒和物(プロセス7):分析のために、結晶形態を、4mmのZrO製回転子中に試料を詰め込むことによって調製した。プロトン放出13C CPMAS(交差分極マジック角回転実験)スペクトルを、周囲条件において、広口径のBruker−Biospin Avance DSX 500MHz NMR分光計中に配置したBruker−Biospin 4mm HFX CPMASプローブ上で収集した。回転子を、マジック角に方向付け、15.0kHzでスピンした。速いスピンのスピードにより、スピニングサイドバンドの強度が最小限に留まった。交差分極接触時間を2.0ミリ秒に設定した。およそ87kHzのプロトンデカップリングの磁場を適用した。1,144回のスキャンを、10秒の待ち時間で収集した。炭素のスペクトルを、外部標準物質の結晶性アダマンタンを使用して参照し、その高磁場共鳴は29.5ppmに設定した。
【0044】
テトラヒドロフラン溶媒和物(プロセス8):分析のために、結晶形態を、4mmのZrO製回転子中に試料を詰め込むことによって調製した。プロトン放出13C CPMAS(交差分極マジック角回転実験)スペクトルを、周囲条件において、広口径のBruker−Biospin Avance DSX 500MHz NMR分光計中に配置したBruker−Biospin 4mm HFX CPMASプローブ上で収集した。回転子を、マジック角に方向付け、15.0kHzでスピンした。速いスピンのスピードにより、スピニングサイドバンドの強度が最小限に留まった。交差分極接触時間を2.0ミリ秒に設定した。およそ87kHzのプロトンデカップリングの磁場を適用した。5,120回のスキャンを、5.0秒の待ち時間で収集した。炭素のスペクトルを、外部標準物質の結晶性アダマンタンを使用して参照し、その高磁場共鳴は29.5ppmに設定した。
【0045】
赤外分光法:IRスペクトルを、KBrビームスプリッターおよびd−TGS KBr検出器が装備されているThermoNicolet Magna 560 FTIR分光計を使用して獲得した。Specac Golden Gate Mk II1回反射ダイヤモンドATRアクセサリーを、試料採取のために使用した。窒素パージを、IRベンチに接続し、ATRアクセサリーも接続した。データ獲得の前に、計測器の性能および較正の検証を、ポリスチレンを使用して実施した。各試料の前に、スペクトルを、Golden Gate ATRアンビルを高位置で用いて収集することによって、空気のバックグラウンドを収集した。粉末試料を、ダイヤモンドウィンドウに対して、Golden Gateアンビルにより、トルクレンチを使用して、20c・Nmのトルクをアンビルの圧縮制御ノブに適用して圧縮した。ATRアクセサリーを、それぞれの新しい試料をスキャンする前に清浄した。スペクトルを、2cm−1の分解能で、128回の共添加(co−added)スキャンおよび4000〜525cm−1の収集範囲を使用して収集した。ハップ−ゲンゼルアポディゼーションを使用した。3つの別個の試料スペクトルを、各スペクトルの収集の後に減圧および粉末の混合を実施して収集した。各試料についての別個のスペクトルを、一緒にして平均した。ピークの最大値に、バンドの位置を手作業で帰属させた。この方法を用いると、これらのピークの位置精度は、±2cm−1である。2400〜1900cm−1の間の領域におけるダイヤモンドのスペクトルの特徴が、Golden Gate d−ATRによる全てのスペクトルの試行中に存在することに留意すべきである(Ferrer,N.、Nogues−Carulla、J.M.Diamond and Related Materials、1996、5、598〜602;Thongnopkun,P.、Ekgasit,S.Diamond and Related Materials、2005、14、1592〜1599;Pike Technologies Technical Note:Pike Reflections、Winter 2002、Vol.7/1;www.piketech.com)。
【0046】
ラマン分光法:ラマンスペクトルを、1064nmのNdYAGレーザーおよびInGaAs検出器が装備されているThermoNicolet 960 FT−ラマン分光計を使用して収集した。4000〜100cm−1のデータ収集範囲を使用した。全てのスペクトルを、2cm−1の分解能、ハップ−ゲンゼルアポディゼーション、および100回の共添加スキャンを使用して記録した。データ獲得の前に、計測器の性能および較正の検証を、ポリスチレンを使用して実施した。試料を、ガラス製NMR管中で分析した。各試料について、3つの別個のスペクトルを、スペクトルを収集する度に試料を45°回転させて記録した。表示するスペクトルは、3つの個々のスペクトルの算術平均の結果である。ピークの最大値に、バンドの位置を手作業で帰属させた。この方法を用いると、これらのピークの位置精度は、±2cm−1である。結晶形態のスペクトルを、0.5Wのレーザー出力を使用して収集し、非結晶形態のスペクトルを、1.0Wのレーザー出力を使用して収集した。
【0047】
カールフィッシャー分析:水分含有量値を、Sartorius BP221S天秤が装備されているBinkmannのモデル737カールフィッシャー電量計を使用して測定した。
【0048】
残留溶媒分析:溶媒含有量値を、水素炎イオン化検出器およびカラムの操作のための分割噴射能力が装備されているガスクロマトグラフ、ならびに自動ヘッドスペース試料採取装置を使用して測定した。分析のために、各試料を、40mgの固体をヘッドスペースのバイアル中に正確に秤量することによって調製した。4.0mLのN,N−ジメチルアセトアミドをバイアルに添加し、バイアルを、セプタムおよびクリンプキャップを用いて直ちに密封した。ブランクおよび適切な溶媒標準物質を調製し、各試料の評価の前に試験した。
【0049】
本発明は、3−((3R,4R)−4−メチル−3−[メチル−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−アミノ]−ピペリジン−1−イル)−3−オキソプロピオニトリルの結晶形態または非結晶形態を提供し、これらは、1つまたは複数の固体状態の分析方法により同定することができる。
【0050】
表1に、23℃における、およそ1当量の水を含有する結晶形態についてのPXRDピークのリストを示す。
【0051】
【表1】

【0052】
表2に、120℃における、結晶形態についてのPXRDピークのリストを示す。
【0053】
【表2】

【0054】
表3に、プロセス1を使用して調製した結晶形態についてのPXRDピークのリストを示す。
【0055】
【表3】

【0056】
表4に、プロセス2を使用して調製した結晶形態についてのPXRDピークのリストを示す。
【0057】
【表4】

【0058】
表5に、プロセス3を使用して調製した結晶形態についてのPXRDピークのリストを示す。
【0059】
【表5】

【0060】
表6に、プロセス2を使用して調製した結晶形態についてのラマンピークのリストを示す。
【0061】
【表6−1】

【0062】
【表6−2】

【0063】
【表6−3】

【0064】
表7に、プロセス2を使用して調製した結晶形態についてのFT−IRピークのリストを示す。
【0065】
【表7−1】

【0066】
【表7−2】

【0067】
表8に、プロセス2を使用して調製した結晶形態についてのss13C NMRピークのリストを示す。
【0068】
【表8】

【0069】
表9に、メタノール溶媒を含有する結晶形態についてのPXRDピークのリストを示す。
【0070】
【表9】

【0071】
表10に、アセトン溶媒を含有する結晶形態についてのPXRDピークのリストを示す。
【0072】
【表10】

【0073】
表11に、1−ブタノール溶媒およびエタノール溶媒を含有する結晶形態についてのPXRDピークのリストを示す。
【0074】
【表11】

【0075】
表12に、結晶形態、N,N−ジメチルホルムアミド溶媒についてのPXRDピークのリストを示す。
【0076】
【表12】

【0077】
表13に、テトラヒドロフラン溶媒を含有する結晶形態についてのPXRDピークのリストを示す。
【0078】
【表13】

【0079】
表14に、アセトン溶媒を含有する結晶形態についてのss13C NMRピークのリストを示す。
【0080】
【表14】

【0081】
表15に、1−ブタノール溶媒およびエタノール溶媒を含有する結晶形態についてのss13C NMRピークのリストを示す。
【0082】
【表15】

【0083】
表16に、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)溶媒を含有する結晶形態についてのss13C NMRピークのリストを示す。
【0084】
【表16】

【0085】
表17に、テトラヒドロフラン(THF)溶媒を含有する結晶形態についてのss13C NMRピークのリストを示す。
【0086】
【表17】

【0087】
表18に、非結晶形態のガラス転移温度を示す。
【0088】
【表18】

【0089】
表19に、非結晶形態についてのss13C NMRピークのリストを示す。
【0090】
【表19】

【0091】
表20に、非結晶形態についてのラマンピークのリストを示す。
【0092】
【表20−1】

【0093】
【表20−2】

【0094】
【表20−3】

【0095】
表21に、非結晶形態についてのFT−IRピークのリストを示す。
【0096】
【表21】

【0097】
表22に、プロセス1により単離した結晶形態についての溶媒レベルを示す。
【0098】
【表22】

【0099】
表23に、プロセス2により単離した結晶形態についての溶媒レベルを示す。
【0100】
【表23】

【0101】
表24に、複数のプロセスにより単離した結晶形態についての溶媒レベルを示す。
【0102】
【表24】

【0103】
表25に、23℃における、結晶形態についての結晶学的なデータを示す。
【0104】
【表25】

【0105】
表26に、120℃における、結晶形態についての結晶学的なデータを示す。
【0106】
【表26】

【0107】
また、本発明は、結晶形態または非結晶形態を含む医薬組成物、およびそのような形態を調製するための方法も提供し、医学において使用するためならびに乾癬および皮膚炎等の疾患を治療する場合に使用するための医薬組成物も提供する。また、本発明は、乾癬および皮膚炎等の疾患を治療するための医薬の製造におけるそのような医薬組成物の使用も提供する
【0108】
本明細書に列挙する疾患および症候群を治療する方法には、治療有効量の本発明の多形または前記を含有する組成物を、そのような治療を必要とする個体に投与するステップが関与すると理解される。本明細書で使用する場合、疾患に関する用語「治療すること(treating)」は、疾患を、予防すること、阻害することおよび/または寛解させることを指すことを意味する。
【0109】
本明細書で使用する場合、「個体」または「患者」という用語を互換的に使用し、それらの用語は、哺乳動物、好ましくは、マウス、ラット、他のげっ歯類、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、または霊長類、最も好ましくは、ヒトを包含する任意の動物を指す。本明細書で使用する場合、句「治療有効量」は、研究者、獣医師、医師または他の臨床医により求められている、組織、系、動物、個体またはヒトにおいて生物学的なまたは医薬としての応答を惹起する活性な化合物または医薬品の量を指し、そうした応答は、以下のうちの1つまたは複数を包含する:
(1)疾患を予防すること;例えば、疾患、状態または障害の素因がある可能性があるが、まだ、疾患の病態も総体症状も経験したり示したりしていない個体において、疾患、状態または障害を予防すること;
(2)疾患を阻害すること;例えば、疾患、状態または障害の病態または総体症状を経験しているかまたは示している個体において、疾患、状態または障害を阻害すること(すなわち、病態および/または総体症状のさらなる発生を停止させるかまたは緩慢化すること);ならびに
(3)疾患を寛解させること;例えば、疾患、状態または障害の病態または総体症状を経験しているかまたは示している個体において、疾患、状態または障害を寛解させること(すなわち、病態および/または総体症状を後退させること)。
【0110】
投与量および製剤
また、本発明は、本多形のうちの1つまたは複数を、1つまたは複数の薬学的に許容できる担体、賦形剤、ビヒクル等と併せて利用する医薬組成物も包含する。
【0111】
3−((3R,4R)−4−メチル−3−[メチル−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−アミノ]−ピペリジン−1−イル)−3−オキソプロピオニトリルの本開示の結晶形態の多形または非結晶形態の局所製剤は、皮膚または粘膜への局所投与、皮膚(内)投与または経皮投与を行うことができる。そのような調製物を使用する局所投与は、上皮組織および粘膜組織を包含する身体および身体経路の内層の表面を越える投与の全ての従来法を網羅し、それらの方法は、経皮投与様式、上皮投与様式、頬側投与様式、肺投与様式、眼投与様式、鼻腔内投与様式、膣投与様式および直腸投与様式を包含する。この目的の典型的な製剤は、ゲル剤、ヒドロゲル剤、ローション剤、液剤、クリーム剤、コロイド剤、軟膏剤、散布剤、ドレッシング剤、泡剤、フィルム剤、皮膚パッチ、オブラート、インプラント、スポンジ、繊維、絆創膏およびマイクロエマルジョンを包含する。また、リポソームも使用することができる。典型的な担体は、アルコール、水、鉱油、流動ワセリン、白色ワセリン、グリセリン、ポリエチレングリコールおよびプロピレングリコールを包含する。そのような局所製剤は、追加の薬学的に許容できる賦形剤と組み合わせて調製することができる。臨床における有効性に不可欠であることが決定されている賦形剤は、1つまたは複数の浸透増強剤であり、例として、1つまたは複数の飽和またはシス不飽和のC10〜C18脂肪アルコールである。好ましくは、そのような脂肪アルコールは、C16〜C18脂肪アルコールを包含し、最も好ましくは、C18脂肪アルコールである。シス不飽和C16〜C18脂肪アルコールの例として、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、γ−リノレニルアルコールおよびリノレニルアルコールが挙げられる。オレイルアルコールが、浸透増強剤として最も好ましい。浸透増強剤として有用な飽和C10〜C18脂肪アルコールとして、デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコールおよびステアリルアルコールが挙げられる。あるいは、局所製剤を調製するために使用することができる他の浸透増強剤として、C10〜C18脂肪酸が挙げられ、それらとして、飽和の場合は、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸およびアラキジン酸を挙げることができる。好ましくは、浸透増強剤は、C16〜C18脂肪酸、より好ましくは、C18脂肪酸であり得る。あるいは、有用な浸透増強剤は、シス不飽和脂肪酸、例として、パルミトレイン酸(シス−9−ヘキサデセン酸)、オレイン酸(シス−9−オクタデセン酸)、シス−バクセン酸(シス−11−オクタデセン酸)、リノール酸(シス−9,12−オクタデカジエン酸)、γ−リノレン酸(シス−6,9,12−オクタデカトリエン酸)、リノレン酸(シス−9,12,15−オクタデカトリエン酸)およびアラキドン酸(シス−5,8,11,14−エイコサテトラエン酸)であり得る。浸透増強剤、例えば、C10〜C18脂肪アルコールから選択されるものを、約0.1〜約5%(w/v)、より好ましくは、1〜約4%、さらにより好ましくは、1〜約3%、最も好ましくは、約2.0%(w/v)の範囲に及ぶ量で使用する。一般に、任意の浸透増強剤またはそれらの組合せを、PEGを基剤とする軟膏剤製剤中に包含させることができ、それらの製剤は、約2%のオレイルアルコールを含有する製剤により達成されるレベルに等しいかまたはそれを上回るレベルの経皮流動を達成することができる。
【0112】
局所製剤は、3−((3R,4R)−4−メチル−3−[メチル−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−アミノ]−ピペリジン−1−イル)−3−オキソプロピオニトリルを、必要とする患者に1日1回または1日2回の用量で投与することができる治療有効量で含有する。これらの量は、約0.1%〜約5.0%(w/v)、より好ましくは、約0.1%〜約3.0%、さらにより好ましくは、約0.5%〜約2.3%、最も好ましくは、約2.0%(w/v)の範囲に及ぶ。これらの製剤の安定性を増強する他の賦形剤には、アルデヒド捕捉剤、例として、グリセリンおよびプロピレングリコール、ならびに抗酸化剤、例として、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、没食子酸プロピル、アスコルビン酸(ビタミンC)、ポリフェノール、トコフェロール(ビタミンE)およびそれらの誘導体がある。好ましくは、少なくとも30%のポリエチレングリコール、トファシチニブおよび1つまたは複数の浸透増強剤、ならびに製品を40℃で4週間保存した場合、総分解物のレベルが7%以下であるように安定な製剤を形成する追加の薬学的に許容できる賦形剤を含有するPEGを基剤とする軟膏剤製剤。より好ましくは、アルデヒド捕捉剤および抗酸化剤を製剤、すなわち、軟膏剤1(A)および軟膏剤2(C)中に添加することによって、ポリエチレングリコール含有軟膏剤製剤を安定化させ、結果として、製品を40℃で4週間保存した場合、総分解物のレベルは5%以下となる。
【0113】
さらに、本発明は、薬学的に許容できる担体が、少なくとも30重量%のPEGであり、安定化のための賦形剤を、40℃における4週間の後に総分解物のレベルが7重量%以下であるように化学的に安定な製剤を達成するのに十分な量でさらに含む、上記に記載した医薬組成物も提供する。
【0114】
また、本発明は、薬学的に許容できる担体が、少なくとも30重量%のPEGであり、1つまたは複数のアルデヒド捕捉剤または抗酸化賦形剤を、40℃における4週間の後に総分解物のレベルが7重量%以下であるように化学的に安定な製剤を達成するのに十分な量でさらに含む、上記に記載した医薬組成物も提供する。
【0115】
さらに、本発明は、当技術分野で公知のin vitroにおける方法により測定される、約2重量%のトファシチニブ遊離塩基、約1.8重量%のオレイルアルコール、約17.9重量%のグリセリン、約18重量%のプロピレングリコール、約30重量%のPEG400、約30重量%のPEG3350および約0.1重量%のBHAからなる組成物から測定される流動以上の経皮流動を有することによって特徴付けられる、上記に記載した医薬組成物も提供する。
【0116】
これらの教示の化合物を、当技術分野で公知の方法により調製することができる。これらの教示の化合物の調製において使用する試薬は、商業的に得ることもでき、または文献に記載されている標準的な手順により調製することもできる。例えば、本発明の化合物を、以下の実施例に示す方法に従って調製することができる。
【0117】
本発明の記載は、当業者に周知の多様な略語を利用し、それらは、以下を包含する:
aq.:水性
CHCN:アセトニトリル
DCM:ジクロロメタン
DMF:N,N−ジメチルホルムアミド
DMSO:ジメチルスルホキシド
EtOAc:酢酸エチル
EtOH:エタノール
FT−IR:フーリエ変換−赤外
HOAc:酢酸
MeOH:メタノール
PXRD:粉末X線回折
ss13C NMR:固体13C核磁気共鳴
THF:テトラヒドロフラン
TLC:薄層クロマトグラフィー
【実施例】
【0118】
以下の非限定的な実施例は、単に本発明を例証するためにのみ提示するものとする。当業者であれば、例示されない多数の均等物および変更形態があるが、それらは本教示の一部をやはり形成することを理解するであろう。
【実施例1】
【0119】
3−((3R,4R)−4−メチル−3−[メチル−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−アミノ]−ピペリジン−1−イル)−3−オキソプロピオニトリルの固体形態の調製
2−プロパノラート(プロセス1):結晶形態を、750グラムの3−((3R,4R)−4−メチル−3−[メチル−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−アミノ]−ピペリジン−1−イル)−3−オキソプロピオニトリルのクエン酸塩を、2−プロパノール(3.8L)と水(3.8L)との混合物に添加することによって調製した。得られた混合物を、20℃でおよそ1時間撹拌した。次いで、混合物に、4リットルの1モル水酸化ナトリウム水溶液を40分間にわたり添加した。次いで、混合物を、20℃でおよそ17時間撹拌した。固体を、減圧ろ過により単離し、1.9Lの水を用いて2回洗浄し、減圧下65℃でおよそ30時間乾燥した。得られた結晶性の固体は、カールフィッシャー分析により、1.0重量%の水を含有し、残留溶媒の分析により、2.6重量%の2−プロパノールを含有した。
【実施例2】
【0120】
2−プロパノラート(プロセス2):結晶形態を、271グラムの3−((3R,4R)−4−メチル−3−[メチル−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−アミノ]−ピペリジン−1−イル)−3−オキソプロピオニトリルのクエン酸塩を、2−プロパノール(1.36L)/水(1.36L)(1:1、体積に関して)の溶媒系に室温で添加することによって調製した。実験全体を通してオーバーヘッドスターラーを用いて、混合を促進した。スラリーを激しくかき混ぜながら、1.88Lの1.0N水酸化ナトリウム水溶液を、20℃でゆっくり添加した。次いで、1重量%の結晶形態の種結晶を反応器に添加し、撹拌を室温で数時間続け、スラリーを得た。固体を、減圧ろ過により単離し、水を用いて洗浄し、減圧下60℃〜70℃で乾燥した。得られた結晶性の固体は、カールフィッシャー分析および残留溶媒の分析を通して決定したところ、それぞれ、0.9重量%の水および2.8重量%の2−プロパノールを含有した。
【実施例3】
【0121】
2−プロパノラート(プロセス3):結晶形態を、218mgの非結晶性の3−((3R,4R)−4−メチル−3−[メチル−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−アミノ]−ピペリジン−1−イル)−3−オキソプロピオニトリルを、0.5mLの2−プロパノールに添加することによって調製した。混合物を、室温でおよそ5日間撹拌し、減圧ろ過により単離し、減圧下70℃で1日かけて乾燥した。得られた結晶性の固体は、残留溶媒の分析により4.7重量%の2−プロパノールを含有した。
【実施例4】
【0122】
メタノラート(プロセス4):結晶形態を、518mgの非結晶性の3−((3R,4R)−4−メチル−3−[メチル−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−アミノ]−ピペリジン−1−イル)−3−オキソプロピオニトリルを、25mLのメタノール/水(1:3、体積に関して)の溶媒系に室温で添加することによって調製した。実験全体を通して磁気撹拌子を用いて、混合を促進した。次いで、混合物を、1.9℃/分で50℃まで加熱した。懸濁液を、50℃に5分間維持し、1.0℃/分で5℃まで冷却し、5℃で75分かけてスラリーにした。固体を、減圧ろ過により単離し、周囲条件下でおよそ19時間乾燥した。得られた結晶形態の固体内に、発生したガスのIR検出を用いる熱重量分析により、およそ0.6重量%のメタノールおよび4.0重量%の水を検出した。
【実施例5】
【0123】
アセトン溶媒和物(プロセス5):結晶形態を、130グラムの3−((3R,4R)−4−メチル−3−[メチル−(7H−ピロロ[2,3−d]−ピリミジン−4−イル)−アミノ]−ピペリジン−1−イル)−3−オキソプロピオニトリルを、1.5Lのアセトン/水の混合物(75%のアセトン、体積に関して)中に54℃で溶解させることによって調製した。次いで、混合物を、25℃まで素早く冷却し、25℃に3時間維持し、次いで、5℃まで冷却した。固体を、減圧ろ過により単離し、減圧下50℃でおよそ17時間乾燥した。得られた結晶性の固体は、カールフィッシャー分析により、1.9重量%の水を含有し、残留溶媒の分析により、0.6重量%のアセトンを含有した。
【実施例6】
【0124】
n−ブタノラート/エタノラート(プロセス6):メチル−[(3R,4R)−4−メチル−ピペリジン−3−イル]−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−アミンを、WO2007/012953の実施例10の記載に従って調製した。1.33gのメチル−[(3R,4R)−4−メチル−ピペリジン−3−イル]−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−アミンの溶液を、丸底フラスコ中の5mLの1−ブタノールに添加した。この同じフラスコに、0.41mLの1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(417mg、0.5eq.)、続いて、1.15mLのシアノ酢酸エチル(1218mg、2.0eq.)を添加した。混合物を、窒素雰囲気下で撹拌した。混合物を40℃まで加熱し、撹拌をこの温度で17時間続けた。得られた懸濁液を、1℃/分で20℃まで冷却し、20℃でおよそ48時間かけてスラリーにした。固体を、減圧ろ過により単離し、50mLの1−ブタノール、続いて、50mLのアセトンを用いて洗浄し、真空下55℃でおよそ18時間乾燥した。得られた結晶形態の固体は、カールフィッシャー分析により、0.5重量%の水を含有し、残留溶媒の分析により、2.7重量%のn−ブタノール、0.2重量%のアセトンおよび1.8重量%のエタノールを含有した。
【実施例7】
【0125】
N,N−ジメチルホルムアミド溶媒和物(プロセス7):結晶形態を、614mgのプロセス1で調製した結晶形態を、12mLのN,N−ジメチルホルムアミド/メチルtert−ブチルエーテル(1:5、体積に関して)の溶媒系に室温で添加することによって調製した。実験全体を通して磁気撹拌子を用いて、混合を促進した。次いで、13日にわたり8回、混合物を、40〜50℃の間まで加熱し、室温まで冷却した。固体を、混合物から減圧ろ過により単離し、減圧下70℃で1日かけて乾燥した。得られた結晶形態内にN,N−ジメチルホルムアミドが存在することが、13C CPMAS固体NMR分光法により実証された。
【実施例8】
【0126】
テトラヒドロフラン溶媒和物(プロセス8):結晶形態を、633mgのプロセス1により調製した結晶形態を、10mLのテトラヒドロフラン/ヘプタン(2:1、体積に関して)の溶媒系に室温で添加することによって調製した。実験全体を通して磁気撹拌子を用いて、混合を促進した。次いで、13日にわたり8回、混合物を、40〜50℃の間まで加熱し、室温まで冷却した。固体を、混合物から減圧ろ過により単離し、減圧下70℃で1日かけて乾燥した。得られた結晶形態内にテトラヒドロフランが存在することが、13C CPMAS固体NMR分光法により実証された。
【実施例9】
【0127】
水和物(プロセス9):結晶形態を、1,4−ジオキサン/水(1:1、体積に関して)中の3−((3R,4R)−4−メチル−3−[メチル−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−アミノ]−ピペリジン−1−イル)−3−オキソプロピオニトリルの18mg/mL溶液を、50℃で蒸発させることによって調製した。
【実施例10】
【0128】
非結晶形態を、40グラムの3−((3R,4R)−4−メチル−3−[メチル−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−アミノ]−ピペリジン−1−イル)−3−オキソプロピオニトリルのクエン酸塩を、400mLの水/n−ブタノール(50v/v%)中に懸濁させることによって調製した。32.9グラムの炭酸カリウム(KCO)を懸濁液に添加し、15分間平衡化させた。次いで、分液ロートを利用して、混合物内の有機層を単離し、単離した有機層を、200mLの水を用いて洗浄し、得られた洗浄済みの有機層を単離した。洗浄した有機層を、500mLの丸底フラスコ中にろ過した。洗浄した有機層を、60℃の浴温度を用いる回転蒸発により濃縮して、固体を生成した。次いで、150mLのトルエンを得られた固体に添加し、混合物を、60℃の浴温度を用いる回転蒸発により再び濃縮して、濃厚な溶液を生成した。次いで、150mLのトルエンを得られた溶液に添加し、再び濃縮して、固体を生成した。次いで、150mLのアセトニトリルを得られた固体に添加し、混合物を回転蒸発により濃縮した。次いで、得られた生成物を減圧下におよそ17時間置いて、23.2gの非結晶性物質を得た。
【実施例11】
【0129】
非結晶形態を、2.1gの結晶形態を200mLのアセトン中、室温で1日かけて混合することによって調製した。懸濁液を室温でろ過して、透明な溶液を生成した。次いで、BUCHI Rotovapor R−205(BUCHI Labortechnik AG、スイス)、Edwards RV3真空ポンプ(West Sussex、英国)、および40℃に維持したBUCHI加熱浴B−490(BUCHI Labortechnik AG、スイス)を使用して溶媒を溶液から蒸発させて、非結晶性(amorphous)物質を単離した。単離した非結晶性(amorphous)物質を、真空下、40℃で1日かけて、続いて、80℃で4日かけて、かつ100℃で1日かけて乾燥して、非結晶性物質を得た。
【0130】
当業者であれば、本明細書に記載する形態の変更形態、改変形態および他の実行形態を、本教示の精神および必須の特徴から逸脱することなく思いつくであろう。したがって、本教示の範囲は、先行する例示的な記載によってではなく、代わりに、以下の特許請求の範囲によって定義されるものとし、請求項の均等物の意味するものおよび範囲に属する全ての変化形態は、特許請求の範囲に包括されることを意図する。
【0131】
これらに限定されないが、特許、特許出願、書籍、技術論文、業界誌および学術論文を包含する、本明細書において記載または参照する印刷刊行物のそれぞれは、それらの全体が、全ての目的で、参照により本明細書に組み込まれている。
【実施例12】
【0132】
無作為化、二重盲検、ビヒクル対照、4群、平行群間研究を実施して、慢性の軽度〜中等度の尋常性乾癬を有する対象に4週間BID(1日2回)投与した、トファシチニブ(また、tasocitinibまたはCP−690,550としても公知である)の遊離塩基(2%)の2つの局所製剤の有効性を特徴付けた。
【0133】
68人の完了した対象を得るために、総数71人の対象を登録した(およそ、24人の対象/薬物群および12人の対象/ビヒクル群)。対象を、1〜4の治療群に2:1:2:1の比で無作為化した(表27)。軟膏剤を作製するために、表28に列挙する成分を連続的なかき混ぜに適した容器中に添加し、PEG3350を融解するために、およそ65℃まで加熱する。PEG3350が完全に融解したら、かき混ぜながら、混合物を40℃未満まで冷却して、凝固を開始させる。次いで、凝固した半固体の塊を、分注に適している個々のチューブ中に充填する。
【0134】
【表27】

【0135】
軟膏剤1およびビヒクル1は、オレイルアルコールを2%含有し、一方、軟膏剤2およびビヒクル2は、オレイルアルコールを含有しなかった。表28に、4つの試験群に投与した製剤の組成を示す。
【0136】
【表28】

【0137】
治療を、治療領域に、およそ3mg/cmの塗布範囲で、局所用として4週間BID適用した。研究薬物の総治療領域のサイズを、単一の300cm(約1.5%のBSA)領域に固定し、この領域は、1つまたは複数の乾癬プラークの全部または一部を包含していた可能性がある。プラークのうちの1つを標的プラークとして同定し、このプラークは、少なくとも9cmのサイズでなければならなかった。選択した治療領域が、乾癬プラークに加えて、正常な皮膚を包含する場合には、また、研究薬物を、治療領域中の正常な(病変周囲の)皮膚にも塗布した。標的プラークを、ベースラインにおいて選択し、標的プラーク重症度スコア(TPSS)について評価した。この評価をそれに続く来診時全てにおいて実施して、有効性を評価した。間擦性であるプラークまたは手、足、頚部、顔、肘、膝、膝より下および頭皮にあるプラークは、標的プラークとするのにも、治療領域に包含するのにも適さないとみなした。活性な治療(軟膏剤1もしくは軟膏剤2)、またはビヒクル(ビヒクル1もしくはビヒクル2)を、治療領域にBID投与計画に従って塗布した。薬物動態学的(PK)試料採取を、第4週に、投与前(第0時間)において、かつ投与後、第1時間、第2時間において、および第4時間〜第9時間の間の任意の時点において行った。治験責任医師(または適切に訓練を受けた評価担当者)が、標的プラークを、硬結、鱗屑化および紅斑の徴候について個々にスコア化した。3つの徴候のそれぞれを、5点(0〜4)の重症度スケール上で評定した(表29)。
【0138】
【表29】

【0139】
個々の徴候の重症度サブスコアを合計する(E+I+S)。TPSSは、1きざみで、0〜12の範囲で変化し得、より高いスコアが、乾癬のより高い重症度を示す。有効性の主要エンドポイントについて、(トファシチニブ軟膏剤とビヒクルとの間の差の)片側90%信頼限界の上限が0未満である場合に、統計学的有意性を主張した。研究は、トファシチニブ軟膏剤1(A)とビヒクル1(B)との対比について、第4週におけるTPSSのベースラインからのパーセント変化に基づくと、統計学的に有意な有効性の証拠を示した。トファシチニブ軟膏剤2(C)とビヒクル2(D)との対比は、統計学的有意性を達成しなかった。表30に、最大の解析対象集団(FAS)についての、ベースラインおよび第4週におけるTPSSについての記述統計学を提示する。平均TPSSスコアは、治療群にわたり、ベースラインにおいては、6.80(トファシチニブ軟膏剤2)〜7.31(ビヒクル1)の範囲に及び、第4週においては、3.55(トファシチニブ軟膏剤1)〜5.89(ビヒクル2)の範囲に及んだ。4つの治療群のうち、トファシチニブ軟膏剤1(これは、オレイルアルコールを含有した)が、最も大きな平均およびベースラインからの平均パーセント減少(それぞれ、−3.73%および−53.97%の変化)を示し、一方、ビヒクル2は、最も小さな平均およびベースラインからの平均パーセント減少(それぞれ、−1.22%および−17.24%の変化)を示した。一次解析は、FASに対する第4週におけるTPSSのベースラインからのパーセント変化についての、トファシチニブとビヒクルとの間(すなわち、トファシチニブ軟膏剤1対ビヒクル1[対比1]、およびトファシチニブ軟膏剤2対ビヒクル2[対比2])の最小二乗平均(LSmean)の差であった(表31)。対比1について、最小二乗平均の差(CP−690,550軟膏剤1−ビヒクル1)は、−12.87%であり、片側90%上方CLは、−0.71%であった(有意である)。対比2について、最小二乗平均の差(CP−690,550軟膏剤2−ビヒクル2)は、−6.97%であり、片側90%上方CLは、6.62%であった(有意でない)。さらに、トファシチニブ軟膏剤1対象の13%が、対象の標的プラークの完全な消失も示し、一方、ビヒクル1、トファシチニブ軟膏剤2またはビヒクル2を塗布した対象で、完全な消失を示した対象はいなかった。PKデータは、44人の2%トファシチニブ軟膏剤を用いて治療した対象から入手可能であった。トファシチニブ軟膏剤1を投与した対象の62パーセント(62%、13/21)が、トファシチニブ軟膏剤2を投与した対象の26%(6/23)と比較して、(定量化の下限[LLOQ]、すなわち、0.1ng/mLを上回る)定量化可能なトファシチニブ濃度を伴う少なくとも1つの時点を有した。観察した最大の濃度は、トファシチニブ軟膏剤1およびトファシチニブ軟膏剤2に関して、それぞれ0.96ng/mLおよび0.65ng/mLであった。
【0140】
【表30】

【0141】
【表31】

【0142】
【表32】

【実施例13】
【0143】
3つの異なる浸透増強剤(オレイルアルコール、Span80またはモノオレイン酸グリセロール)を含有するPEGを基剤とする軟膏剤製剤を、in vitroにおける経皮皮膚吸収について試験した。(2人の別個の皮膚ドナーを使用した)in vitroにおける経皮吸収試験に基づくと、1.8%のオレイルアルコールを含有するトファシチニブのPEGを基剤とする軟膏剤製剤は、累積浸透および流動の両方の顕著な増加を示した。1.9%のSpan80および2.1%のモノオレイン酸グリセロール(GM)を含有する製剤については、顕著な増加を観察しなかった。1.8%のオレイルアルコールを有する軟膏剤の組成は、表28の軟膏剤1に類似する。
【0144】
【表33】

【実施例14】
【0145】
オレイルアルコールレベルの重要性。0%、1%および2%のオレイルアルコールを含有する、PEGを基剤とする軟膏剤製剤を、in vitroにおける経皮皮膚吸収について試験した。in vitroにおける経皮吸収試験に基づくと、浸透したトファシチニブの量は、製剤中のオレイルアルコールのレベルに従って、経時的に増加する。オレイルアルコールを有さない軟膏剤の組成は、表28の軟膏剤2と同じである。2%のオレイルアルコールを有する軟膏剤の組成は、表28の軟膏剤1と同じである。
【0146】
【表34】

【0147】
【表35】

【実施例15】
【0148】
本発明者らは、トファシチニブはポリエチレングリコール(PEG)の存在下では芳しくない安定性を示すことを見出した。驚くべきことに、グリセリンを製剤に添加すると、トファシチニブの安定性を改善することができることを発見した。以下のデータは、この増強された安定性を示す。
【0149】
【表36】

【0150】
抗酸化剤を添加することにより、ポリエチレングリコール(PEG)の存在下におけるトファシチニブの安定性がさらに改善した。研究では、トファシチニブとPEG400またはPEG3350との二成分混合物を調製し、60℃で保存した後の安定性について評価した。表35は、抗酸化剤の添加の結果、トファシチニブの安定性がさらに改善したことを示すデータを提示する。
【0151】
【表37】

【0152】
in−vitro経皮流動法:
Hanson Microette製の自動拡散セルシステムを使用して、in−vitroにおける経皮流動実験についてのデータを得た。ヒト死体の皮膚の小さな切片を拡散セル上にマウントし、平衡化すると、皮膚の表面温度が32℃に達した。部分的に媒体を置換する手順を利用し、この手順は、レセプターセルの内容物から一定分量の試料採取を行い、続いて、試料採取した媒体と等しい体積を置換することからなった。試料を、第2、4、8、12、20、24、30、36および48時間において収集して、累積浸透および流動のプロファイルを得た。0.1%ゲンタマイシン保存剤を有するリン酸緩衝溶液を、レセプター媒体として使用した。軟膏剤試料のおよそ10mgの限定された用量を塗布して、皮膚表面全体を覆った。レセプター媒体の試料を、トファシチニブ含有量を求めるのに適したHPLC法を使用してアッセイした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2θとして、6.4°、14.3°および17.0°2θ±0.2°2θにピークを含む粉末X線回折パターンを有する、3−((3R,4R)−4−メチル−3−[メチル−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−アミノ]−ピペリジン−1−イル)−3−オキソプロピオニトリルの結晶形態。
【請求項2】
63.1;63.1および68.6;68.6;18.8および60.1;18.8;60.1;63.1および162.1、ならびに162.1ppm±0.2ppmからなる群から選択される固体13C核磁気共鳴化学シフトを有する、請求項1に記載の結晶形態。
【請求項3】
2−プロパノールのレベルが、2.6〜2.9重量%である、請求項1に記載の結晶形態。
【請求項4】
水のレベルが、0.5〜4.0重量%である、請求項1に記載の結晶形態。
【請求項5】
2θとして、6.4°、9.1°および11.1°2θ±0.2°2θにピークを含む粉末X線回折パターンを有する、3−((3R,4R)−4−メチル−3−[メチル−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−アミノ]−ピペリジン−1−イル)−3−オキソプロピオニトリルの結晶形態。
【請求項6】
63.1;63.1および68.6;68.6;18.8および60.1;18.8;60.1;63.1および162.1、ならびに162.1ppm±0.2ppmからなる群から選択される固体13C核磁気共鳴化学シフトを有する、請求項5に記載の結晶形態。
【請求項7】
2−プロパノールのレベルが、2.6〜2.9重量%である、請求項5に記載の結晶形態。
【請求項8】
水のレベルが、0.5〜4.0重量%である、請求項5に記載の結晶形態。
【請求項9】
157.0、151.0、102.4、44.8および32.7ppm±0.2ppmにおける固体13C核磁気共鳴化学シフトを有する、3−((3R,4R)−4−メチル−3−[メチル−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−アミノ]−ピペリジン−1−イル)−3−オキソプロピオニトリルの結晶形態。
【請求項10】
2−プロパノールのレベルが、2.6〜2.9重量%である、請求項9に記載の結晶形態。
【請求項11】
水のレベルが、0.5〜4.0重量%である、請求項9に記載の結晶形態。
【請求項12】
3−((3R,4R)−4−メチル−3−[メチル−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−アミノ]−ピペリジン−1−イル)−3−オキソプロピオニトリルの非結晶形態であって、
a)161.9、152.0、103.3、31.8および26.0ppm±0.2ppmにおける化学シフトを含む固体13C核磁気共鳴スペクトル、
b)1311、1506および2258cm−1±2cm−1におけるラマンバンドのセット、ならびに
c)1407、1554および1647cm−1±2cm−1における赤外バンドのセット
からなる群から選択される物理学的または分光学的な分析により特徴付けられる非結晶形態。
【請求項13】
3−((3R,4R)−4−メチル−3−[メチル−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−アミノ]−ピペリジン−1−イル)−3−オキソプロピオニトリル;1つまたは複数の浸透増強剤;および薬学的に許容できる担体を含む医薬組成物。
【請求項14】
3−((3R,4R)−4−メチル−3−[メチル−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−アミノ]−ピペリジン−1−イル)−3−オキソプロピオニトリルが、結晶形態または非結晶形態を有する、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
クリーム剤、経皮パッチ、軟膏剤、点眼薬、ローション剤およびゲル剤から選択される局所製剤を含む、請求項13または14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
局所製剤が、約0.1%〜5.0%(w/v)の3−((3R,4R)−4−メチル−3−[メチル−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−アミノ]−ピペリジン−1−イル)−3−オキソプロピオニトリルを含有する、請求項13または14のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項17】
局所製剤が、約0.5%〜2.3%(w/v)の3−((3R,4R)−4−メチル−3−[メチル−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−アミノ]−ピペリジン−1−イル)−3−オキソプロピオニトリルを含有する、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項18】
局所製剤が、約2.0%(w/v)の3−((3R,4R)−4−メチル−3−[メチル−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−アミノ]−ピペリジン−1−イル)−3−オキソプロピオニトリルを含有する、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記浸透増強剤が、飽和C10〜C18脂肪アルコール、シス不飽和C10〜C18脂肪アルコール、C10〜C18飽和脂肪酸およびC10〜C18シス不飽和脂肪酸から選択される、請求項13または14に記載の医薬組成物。
【請求項20】
薬学的に許容できる担体が、少なくとも30重量%のPEGであり、安定化のための賦形剤を、40℃における4週間の後に総分解物のレベルが7重量%以下であるように化学的に安定な製剤を達成するのに十分な量でさらに含む、請求項13または14に記載の医薬組成物。
【請求項21】
薬学的に許容できる担体が、少なくとも30重量%のPEGであり、1つまたは複数のアルデヒド捕捉剤または抗酸化賦形剤を、40℃における4週間の後に総分解物のレベルが7重量%以下であるように化学的に安定な製剤を達成するのに十分な量でさらに含む、請求項13または14に記載の医薬組成物。
【請求項22】
グリセリンおよびプロピレングリコールから選択されるアルデヒド捕捉剤、ならびにブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、没食子酸プロピル、アスコルビン酸、ポリフェノール、トコフェロールおよびそれらの誘導体から選択される抗酸化剤をさらに含む、請求項13または14に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記浸透増強剤が、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、γ−リノレニルアルコール、リノレニルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸およびアラキジン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、シス−バクセン酸、リノール酸、γ−リノレン酸、リノレン酸、ならびにアラキドン酸から選択される、請求項13または14に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記浸透増強剤がオレイルアルコールである、請求項13、14、17または18に記載の医薬組成物。
【請求項25】
約2重量%のトファシチニブ遊離塩基、約1.8重量%のオレイルアルコール、約17.9重量%のグリセリン、約18重量%のプロピレングリコール、約30重量%のPEG400、約30重量%のPEG3350および約0.1重量%のBHAからなる組成物から測定される流動以上の経皮流動により特徴付けられる、請求項13または14に記載の医薬組成物。
【請求項26】
約2.0重量%の3−((3R,4R)−4−メチル−3−[メチル−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−アミノ]−ピペリジン−1−イル)−3−オキソプロピオニトリル、約2.0%のオレイルアルコール、約20.0%のグリセリン、少なくとも約30.0%のポリエチレングリコールおよび約0.1%のブチルヒドロキシアニソールを含む医薬組成物
【請求項27】
哺乳動物の疾患を局所的に治療する方法であって、結晶形態もしくは非結晶形態を有する3−((3R,4R)−4−メチル−3−[メチル−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−アミノ]−ピペリジン−1−イル)−3−オキソプロピオニトリルまたはそれらの薬学的に許容できる塩の治療有効量、1つまたは複数の浸透増強剤、および薬学的に許容できる担体を、それらを必要とする哺乳動物に局所投与様式により投与するステップを含み、前記疾患が、乾癬および皮膚炎からなる群から選択され、前記浸透増強剤が、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、γ−リノレニルアルコール、リノレニルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸およびアラキジン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、シス−バクセン酸、リノール酸、γ−リノレン酸、リノレン酸、およびアラキドン酸から選択される方法。
【請求項28】
前記疾患が乾癬であり、前記浸透増強剤がオレイルアルコールである、請求項27に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−219099(P2012−219099A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−86068(P2012−86068)
【出願日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【出願人】(593141953)ファイザー・インク (302)
【Fターム(参考)】