説明

結晶性ポリエステルを含む硬化性転相インク

【課題】インクが基板と接触すると速やかに固まり(またはゲル化し)、画像基板上でインクが不均一に分布することがない、硬化性転相インクを提供する。
【解決手段】インク媒剤と、少なくとも1つの結晶性ポリエステル樹脂とを含む、硬化性転相インク組成物。前記少なくとも1つの結晶性ポリエステル樹脂が、約10,000ダルトン(Da)〜約60,000Daの重量平均分子量(MW)を有し、約5,000Da〜約12,000Daの数平均分子量(Mn)を有し、約2.0〜約5.0の多分散度を有する、硬化性転相インク組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般的に、硬化性転相インク、例えば、放射線硬化性転相インク、および、例えば、インクジェット印刷によって、画像を作成する際のこれらの使用に関する。より特定的には、本開示は、硬化性ゲル化剤と、結晶性ポリエステル樹脂とを含む放射線硬化性転相インク、例えば、紫外線硬化性転相インクに関する。
【背景技術】
【0002】
転相インクによって、より簡単に画像を印刷し、多孔性基板に印刷することができるが、これらのインクは、微細なバンディングを示すことがある。微細なバンディングは、平滑であって、均一であるべき画像領域でインクが不均一に分布することである。インクが放出されたときにインク温度が下がるため、インクが基板と接触すると速やかに固まり(またはゲル化し)、画像基板上でインクが不均一に分布することがある。基板において、印刷ヘッドが通る方向にバンドまたは線ができる場合、ヒトの肉眼で、この不均一な分布を観察できることがある。
【0003】
微細なバンディングは、接触による平滑化によって、画像基板上のインクを平滑化することによって対処されてもよい。本明細書で使用される場合、句「接触による平滑化」は、インクの分布を標準化するか、または平坦にする試みにおいて、インク表面を十分に加圧する接触部材(例えば、ローラ、ベルト、プレス、ワイパ)を用いる処理技術である。加熱要素は、接触部材を加熱し、その結果、平滑化操作のためにインクを軟化させるために、接触部材付近に位置しているか、または接触部材内に位置していてもよい。接触による平滑化技術の例としては、米国特許公開第2010/0103235号、米国特許公開第2010/0101716号、米国特許公開第2010/0101717号に記載されている技術が挙げられる。接触平滑化技術および装置のさらなる例としては、米国特許出願第12/544,031号、米国特許出願第12/625,472号、米国特許出願第12/814,741号に記載されているものが挙げられる。
【0004】
しかし、転相インクを接触によって平滑化することには、課題もある。例えば、インクを接触部材を介する接触によって平滑化することによって、インク層が分断してしまうことがある。したがって、転相インクの一部が接触部材に転写され、その後の処理済画像の印刷品質に影響を及ぼすことがある。例えば、接触部材から転写されたインクの一部分が、その後、接触部材と接触する次の媒体に堆積し、すでに平滑化された画像のゴーストが残ることがある。さらに、接触部材にインクが蓄積すると、接触部材を交換する必要があるか、または、定期的に接触部材からインクを取り除く必要がある。その結果、インクを分断することなく、また、接触部材にインクが蓄積することなく、画像における転相インクの微細なバンディングによる欠陥に対処することは、有用であろう。接触による平滑化手順で剥離液を用いると、インクの分断および転写を減らすことができるが、インクの分断およびオフセットの可能性を減らす傾向が高くなる設計によって、剥離液を使用しなくてすむことも有用であろう。
【発明を実施するための形態】
【0005】
用語「官能基」は、例えば、この基が結合する基および分子の化学特性を決定づける様式で整列した原子群を指す。官能基の例としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボン酸基などが挙げられる。
【0006】
用語「長鎖」は、例えば、nが鎖中の炭素原子の数をあらわし、nが、約8〜約60、例えば、約20〜約45、または約30〜約40の数である炭化水素鎖(CHを指す。用語「短鎖」は、例えば、nが鎖中の炭素原子の数をあらわし、nが、1〜約7、例えば、約2〜約5、または約3〜約4の数である炭化水素鎖を指す。
【0007】
用語「硬化性」は、例えば、重合(例えば、遊離ラジカル経路を含む)によって硬化させることが可能な材料、および/または、放射線感受性の光開始剤を用いることによって、重合が光によって開始する材料を記述する。用語「放射線硬化性」は、例えば、放射線源(光源および熱源を含み、開始剤が存在する状態または存在しない状態を含む)にさらされると硬化する、すべての形態を指す。例示的な放射線硬化技術としては、場合により、光開始剤および/または感作剤存在下で、紫外(UV)光(例えば、波長が200〜400nmの光)を用いる硬化、または、それより稀だが可視光を用いる硬化、場合により、光開始剤が存在しない状態で、電子線照射を用いる硬化、高温熱開始剤(主に、吐出温度では不活性であってもよい)が存在する状態または存在しない状態での熱硬化を用いる硬化、およびこれらの適切な組み合わせが挙げられる。
【0008】
本明細書で使用される場合、用語「粘度」は、複素粘度を指し、複素粘度は、サンプルに一定の剪断歪みを与えるか、または振れ幅の小さな正弦振動的変形を加えることが可能な機械的なレオメーターによって与えられる、典型的な測定値である。この種類の装置では、操作者によってモーターに剪断歪みが加えられ、トランスデューサーによってサンプルの変形(トルク)が測定される。このような装置の例は、Rheometrics Fluid Rheometer RFS3またはARES mechanical spectrometerであり、いずれもTA Instrumentsの一部門であるRheometrics製である。または、剪断応力を加え、得られる歪みを測定する制御式応力装置を用いてもよい。このような装置の例は、現行の主要なレオメーターであり、主な製造業者は、Anton Parr GmbH、Bohlin Instruments、Malvern Instrumentsの一部門、ATS Rheosystems and TA Instrumentsである。このようなレオメーターは、例えば、細管粘度計のような過渡測定値ではなく、種々のプレート回転頻度ωで粘度を周期的に測定する。往復式プレートレオメーターは、同相および相外の両方で応力または変位に対する流体の応答を測定することができる。複素粘度η*は、η*=η’−iη”で定義され、式中、η’=G”/ωであり、η”=G’/ωであり、iは√−1である。または、例えば、細管粘度または剪断粘度の過渡測定値のみを測定することが可能な粘度計、例えば、Brookfield Engineering LaboratoriesまたはCannon Instrument Companyによって製造されている粘度計を用いてもよい。
【0009】
いくつかの実施形態では、硬化性転相インクは、室温でゲルであるか、または、吐出温度で基板に吐出された後にインク組成物が冷やされるにつれて、ゲルが発現してもよい。また、硬化性転相インクは、室温で固体であってもよい。
【0010】
本明細書に記載のインク組成物がゲル状態である場合、インク組成物の粘度は、少なくとも約1,000mPa・sであり、例えば、少なくとも約10,000mPa・s、または少なくとも約100,000mPa・sである。例示的なインク組成物のゲル状態での粘度値は、ゲル化温度で約10〜約10mPa・s、例えば、約104.5〜約106.5mPa・sの範囲であってもよい。ゲル化温度は、約20℃〜約85℃、例えば、約25℃〜約80℃、約25℃〜約70℃、約25℃〜約65℃、または約25℃〜約35℃、例えば、約30℃であってもよい。実施形態のゲル状態での粘度は、印刷プロセスによってさまざまであってもよい。例えば、中間転写体を使用する例示的な実施形態で使用するには、または、インクのにじみおよび毛羽だちを最低限にするために、多孔性の紙に直接吐出する場合には、最も高い粘度が適切であろう。一方、ほとんど孔が存在しない基板(例えば、プラスチック)では、個々のインクピクセルのドットゲインおよび凝集を制御するために、粘度が低いことが必要な場合がある。ゲル粘度は、インク配合物および基板温度によって制御することができる。
【0011】
硬化性転相インクは、吐出温度での粘度が約15mPa・s未満、例えば、約12mPa・s未満、例えば、約3〜約12mPa・s、例えば、約5〜約10mPa・sである。インク組成物は、110℃未満の温度、例えば、約40℃〜約100℃、または約55℃〜約100℃、例えば、約60℃〜約100℃、または約70℃〜約100℃、約70℃〜約90℃で吐出させてもよい。さらに、硬化性転相インクは、弾性係数(G’)が、約3000Pa〜約4000Pa、約3100Pa〜約3500Pa、約3100Pa〜約3300Paであってもよい。
【0012】
いくつかの実施形態では、硬化性転相インクは、結晶性ポリエステル樹脂を含む。本明細書で使用される場合、「結晶性」は、三次元の規則性を有するポリエステルを指す。「半結晶性樹脂」は、本明細書で使用される場合、結晶度が例えば約10〜約99%、より特定的には、約10〜約50%の樹脂を指す。さらに、本明細書でこれ以降使用される場合、他の意味であると明記されていない限り、「結晶性ポリエステル樹脂」および「結晶性樹脂」は、結晶性樹脂と半結晶性樹脂の両方を包含する。
【0013】
結晶性ポリエステル樹脂は、多くの供給源から入手可能であり、種々の融点、例えば、約30℃〜約120℃、例えば、約50℃〜約90℃の融点を有する。結晶性樹脂は、例えば、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)で測定した場合、数平均分子量(M)が、例えば、約5,000〜約12,000ダルトン(Da)、約5,000〜約11,000Da、約6,000〜約11,000Da、約9,000〜約11,000Daであってもよい。上述の樹脂の重量平均分子量(M)は、例えば、ポリスチレン標準を用いたGPCで決定した場合、約10,000〜約60,000Da、約15,000〜約50,000Da、約15,000〜約30,000Da、約20,000〜約22,000Daであってもよい。結晶性樹脂の分子量分布(M/M)または多分散度は、例えば、約2〜約5、約2〜約4、約2〜約3、約2〜約2.5、約2〜約2.2である。
【0014】
ポリエステル結晶性ポリエステル樹脂は、重縮合触媒存在下、少なくとも1つの有機ジオールおよび少なくとも1つの有機二塩基酸を反応させることによって、重縮合プロセスによって調製することができる。一般的に、化学量論量のモル比率の有機ジオールおよび有機二塩基酸を利用するが、ある場合には、有機ジオールの沸点が約180℃〜約230℃の場合には、過剰量のジオールを用い、重縮合プロセス中に除去してもよい。利用する触媒の量はさまざまであり、例えば、樹脂の約0.01〜約1モル%の量で選択されてもよい。さらに、有機二塩基酸の代わりに、有機ジエステルを選択してもおく、この場合、アルコール副生成物が生じる。
【0015】
有機ジオールの例としては、炭素原子が約2〜約36個の脂肪族ジオール、例えば、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、シクロヘキサンジオール、トリエチレングリコール、ダイマージオール、ベンゼンジメタノール、シクロヘキサンジメタノール、2,2−ジブチル−1,3−プロパンジオール、2,8−ビス(ヒドロキシメチル)三環[5.2.1.02,6]デカン、1,16−ヘキサデカンジオールおよび2−フェニル−1,3−プロパンジオール、テトラフルオロ−1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−エタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオールなど、アルカリスルホ−脂肪族ジオール、例えば、ソジオ2−スルホ−1,2−エタンジオール、リチオ2−スルホ−1,2−エタンジオール、ポタシオ2−スルホ−1,2−エタンジオール、ソジオ2−スルホ−1,3−プロパンジオール、リチオ2−スルホ−1,3−プロパンジオール、ポタシオ2−スルホ−1,3−プロパンジオール、これらの混合物などが挙げられる。脂肪族ジオールは、例えば、樹脂の約45〜約50モル%の量で選択され、アルカリスルホ−脂肪族ジオールは、樹脂の約1〜約10モル%の量で選択されてもよい。
【0016】
結晶性ポリエステル樹脂を調製する際に選択される有機二塩基酸またはジエステルの例としては、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ドデカン二酸、フマル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、オキサロ酢酸、ダイマー二塩基酸、マロン酸、テトラフルオロコハク酸、メチルマロン酸、チオジ酢酸、ジグリコール酸、マレイン酸、オキサロ酢酸、アセトキシ酢酸、シクロプロパン−1,1−ジカルボン酸、グルタコン酸、イタコン酸、1,3−アセトンジカルボン酸、ケトグルタル酸、ジメチルマロン酸、メチルコハク酸、グルタル酸、ムコン酸、シクロブタン−1,1−ジカルボン酸、2−オキソアジピン酸、2,2−ジメチルコハク酸、メチルグルタル酸、3,3’−チオジプロピオン酸、4−オキソヘプタン二酸、ジメチルグルタル酸、シクロヘキサン−1,1−ジカルボン酸、5−オキソアゼライン酸、フェニレンジ酢酸、インダン−2,2−ジカルボン酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、マロン酸、メサコン酸、これらのジエステルまたは酸無水物;および、アルカリスルホ−有機二塩基酸、例えば、ジメチル−5−スルホ−イソフタレート、ジアルキル−5−スルホ−イソフタレート−4−スルホ−1,8−ナフタレン酸無水物、4−スルホ−フタル酸、ジメチル−4−スルホ−フタレート、ジアルキル−4−スルホ−フタレート、4−スルホフェニル−3,5−ジカルボメトキシベンゼン、6−スルホ−2−ナフチル−3,5−ジカルボメタ−オキシベンゼン、スルホ−テレフタル酸、ジメチル−スルホ−テレフタレート、5−スルホ−イソフタル酸、ジアルキル−スルホ−テレフタレート、スルホエタンジオール、2−スルホプロパンジオール、2−スルホブタンジオール、3−スルホペンタンジオール、2−スルホヘキサンジオール、3−スルホ−2−メチル−ペンタンジオール、2−スルホ−3,3−ジメチルペンタンジオール、スルホ−p−ヒドロキシ安息香酸、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホネートのナトリウム塩、リチウム塩またはカリウム塩、またはこれらの混合物が挙げられる。有機二塩基酸は、例えば、樹脂の約40〜約50モル%の量で選択され、アルカリスルホ−脂肪族二塩基酸は、樹脂の約1〜約10モル%の量で選択されてもよい。
【0017】
結晶性ポリエステルの分子量は、合成中に一官能の酸(例えば、シクロヘキサンカルボン酸、3−(tert−ブトキシ)プロピオン酸、2,2−ジメチル酪酸、ヘキサン酸、ステアリン酸、オクタン酸)または一官能アルコール(例えば、メチルシクロヘキサノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、3,3−ジエトキシ−1−プロパノール、メチルベンジルアルコール、メトキシフェニルエチルアルコール、ドデカノール)を含むことによって制御することができる。
【0018】
結晶性ポリエステル樹脂の具体的な例としては、ポリ(エチレン−アジペート)、ポリ(プロピレン−アジペート)、ポリ(ブチレン−アジペート)、ポリ(ペンチレン−アジペート)、ポリ(ヘキシレン−アジペート)、ポリ(オクチレン−アジペート)、ポリ(エチレン−サクシネート)、ポリ(プロピレン−サクシネート)、ポリ(ブチレン−サクシネート)、ポリ(ペンチレン−サクシネート)、ポリ(ヘキシレン−サクシネート)、ポリ(オクチレン−サクシネート)、ポリ(エチレン−セバケート)、ポリ(プロピレン−セバケート)、ポリ(ブチレン−セバケート)、ポリ(ペンチレン−セバケート)、ポリ(ヘキシレン−セバケート)、ポリ(オクチレン−セバケート)、ポリ(ノニレン−セバケート)、ポリ(デシレン−セバケート)、ポリ(ウンデシレン−セバケート)、ポリ(ドデシレン−セバケート)、ポリ(エチレン−ドデカンジオエート)、ポリ(プロピレン−ドデカンジオエート)、ポリ(ブチレン−ドデカンジオエート)、ポリ(ペンチレン−ドデカンジオエート)、ポリ(ヘキシレン−ドデカンジオエート)、ポリ(オクチレン−ドデカンジオエート)、ポリ(ノニレン−ドデカンジオエート)、ポリ(デシレン−ドデカンジオエート)、ポリ(ウンデシレン−ドデカンジオエート)、ポリ(ドデシレン−ドデカンジオエート)、ポリ(エチレン−フマレート)、ポリ(プロピレン−フマレート)、ポリ(ブチレン−フマレート)、ポリ(ペンチレン−フマレート)、ポリ(ヘキシレン−フマレート)、ポリ(オクチレン−フマレート)、ポリ(ノニレン−フマレート)、ポリ(デシレン−フマレート)、コポリ(5−スルホイソフタロイル)−コポリ(エチレン−アジペート)、コポリ(5−スルホイソフタロイル)−コポリ(プロピレン−アジペート)、コポリ(5−スルホイソフタロイル)−コポリ(ブチレン−アジペート)、コポリ(5−スルホ−イソフタロイル)−コポリ(ペンチレン−アジペート)、コポリ(5−スルホ−イソフタロイル)−コポリ(ヘキシレン−アジペート)、コポリ(5−スルホ−イソフタロイル)−コポリ(オクチレン−アジペート)、コポリ(5−スルホ−イソフタロイル)−コポリ(エチレン−アジペート)、コポリ(5−スルホ−イソフタロイル)−コポリ(プロピレン−アジペート)、コポリ(5−スルホ−イソフタロイル)−コポリ(ブチレン−アジペート)、コポリ(5−スルホ−イソフタロイル)−コポリ(ペンチレン−アジペート)、コポリ(5−スルホ−イソフタロイル)−コポリ(ヘキシレン−アジペート)、コポリ(5−スルホ−イソフタロイル)−コポリ(オクチレン−アジペート)、コポリ(5−スルホイソフタロイル)−コポリ(エチレン−サクシネート)、コポリ(5−スルホ−イソフタロイル)−コポリ(プロピレン−サクシネート)、コポリ(5−スルホ−イソフタロイル)−コポリ(ブチレン−サクシネート)、コポリ(5−スルホ−イソフタロイル)−コポリ(ペンチレン−サクシネート)、コポリ(5−スルホイソフタロイル)−コポリ(ヘキシレン−サクシネート)、コポリ(5−スルホ−イソフタロイル)−コポリ(オクチレン−サクシネート)、コポリ(5−スルホ−イソフタロイル)−コポリ(エチレン−セバケート)、コポリ(5−スルホ−イソフタロイル)−コポリ(プロピレン−セバケート)、コポリ(5−スルホ−イソフタロイル)−コポリ(ブチレン−セバケート)、コポリ(5−スルホ−イソフタロイル)−コポリ(ペンチレン−セバケート)、コポリ(5−スルホ−イソフタロイル)−コポリ(ヘキシレン−セバケート)、コポリ(5−スルホ−イソフタロイル)−コポリ(オクチレン−セバケート)、コポリ(5−スルホ−イソフタロイル)−コポリ(エチレン−アジペート)、コポリ(5−スルホ−イソフタロイル)−コポリ(プロピレン−アジペート)、コポリ(5−スルホ−イソフタロイル)−コポリ(ブチレン−アジペート)、コポリ(5−スルホ−イソフタロイル)−コポリ(ペンチレン−アジペート)、コポリ(5−スルホ−イソフタロイル)−コポリ(ヘキシレン−アジペート)およびこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0019】
また、適切な結晶性ポリエステル樹脂としては、米国特許第7,329,476号および米国特許公開第2006/0216626号、同第2008/0107990号、同第2008/0236446号および同第2009/0047593号に開示されているものが挙げられる。いくつかの実施形態では、適切な結晶性樹脂としては、エチレングリコールと、以下の式を有するドデカン二酸およびフマル酸コモノマーの混合物とで構成される樹脂を挙げることができ、
【化1】


式中、bは、5〜2000であり、dは、5〜2000である。
【0020】
半結晶性ポリエステル樹脂が用いられる場合、半結晶性樹脂としては、ポリ(3−メチル−1−ブテン)、ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)、ポリ(エチレン−p−カルボキシフェノキシ−ブチレート)、ポリ(エチレン−酢酸ビニル)、ポリ(ドコシルアクリレート)、ポリ(ドデシルアクリレート)、ポリ(オクタデシルアクリレート)、ポリ(オクタデシルメタクリレート)、ポリ(ベヘニルポリエトキシエチルメタクリレート)、ポリ(エチレンアジペート)、ポリ(デカメチレンアジペート)、ポリ(デカメチレンアザラエート)、ポリ(ヘキサメチレンオキサレート)、ポリ(デカメチレンオキサレート)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、ポリ(ブタジエンオキシド)、ポリ(デカメチレンオキシド)、ポリ(デカメチレンスルフィド)、ポリ(デカメチレンジスルフィド)、ポリ(エチレンセバケート)、ポリ(デカメチレンセバケート)、ポリ(エチレンスベレート)、ポリ(デカメチレンサクシネート)、ポリ(エイコサメチレンマロネート)、ポリ(エチレン−p−カルボキシフェノキシ−ウンデカノエート)、ポリ(エチレンジチオンソフタレート)、ポリ(メチルエチレンテレフタレート)、ポリ(エチレン−p−カルボキシフェノキシ−バレレート)、ポリ(ヘキサメチレン−4,4’−オキシジベンゾエート)、ポリ(10−ヒドロキシカプリン酸)、ポリ(イソフタルアルデヒド)、ポリ(オクタメチレンドデカンジオエート)、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ(ジプロピルシロキサン)、ポリ(テトラメチレンフェニレンジアセテート)、ポリ(テトラメチレントリチオジカルボキシレート)、ポリ(トリメチレンドデカンジオエート)、ポリ(m−キシレン)、ポリ(p−キシリレンピメルアミド)、およびこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0021】
結晶性ポリエステルは、硬化性転相インク組成物中に、硬化性転相インクの約0.1重量%〜約15重量%、約1重量%〜約10重量%、約1重量%〜約7.5重量%、約1重量%〜約5重量%、約1.5重量%〜約4重量%、約2重量%〜約3.5重量%の量で存在してもよい。
【0022】
110℃よりも低い吐出温度で硬化性転送インクを吐出または印刷する場合、硬化性転相インク組成物中の結晶性ポリエステル樹脂の量は、1〜約5重量%である。しかし、硬化性転相インク組成物を110℃よりも高い温度で吐出する場合、さらなる量の結晶性ポリエステル樹脂を加えてもよい。
【0023】
いくつかの実施形態では、硬化性転相インクは、少なくともゲル化剤と、少なくとも硬化性ワックスと、場合により光開始剤と、場合により着色剤と、少なくとも硬化性モノマーとで構成されるインク媒剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、2種類以上のさらなる硬化性液体モノマーが硬化性転相インク中に存在する場合、硬化性液体モノマーは、「コモノマー」と呼ばれる。コモノマーは、任意の適切な硬化性モノマーから選択されてもよい。
【0024】
実施形態のインク組成物は、ゲル化材料(例えば、エポキシ−ポリアミドコンポジットゲル化剤)の溶解度およびゲル化特性のために、第1のコモノマーを含んでいてもよく、このゲル化材料は、熱によって誘発され、可逆性のゲル相を有するインク媒剤を含むインク組成物を製造するのに有用であり、この場合、インク媒剤は、硬化性液体モノマー(例えば、UV−硬化性液体モノマー)で構成される。このようなインク組成物のゲル相によって、インク液滴を、これを受け入れる基板に固定することができる。
【0025】
上述の組成物の少なくとも1つの硬化性モノマーの例としては、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート(例えば、Sartomer製SR−9003)、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ブタンジオールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、アルコキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、イソデシルアクリレート、トリデシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、ジ−トリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、プロポキシル化グリセロールトリアクリレート、イソボルニルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ネオペンチルグリコールプロポキシレートメチルエーテルモノアクリレート、イソデシルメタクリレート、カプロラクトンアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソオクチルメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ジオキサングリコールジアクリレート、これらの混合物などが挙げられる。比較的極性のないモノマーとして、イソデシル(メタ)アクリレート、カプロラクトンアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ブチルアクリレートから作られるものを挙げることができる。それに加え、多官能アクリレートモノマー/オリゴマーは、反応性希釈剤としてだけではなく、硬化した画像の架橋密度を高め得る材料として用いてもよく、それにより、硬化した画像の靱性が高まる。
【0026】
用語「硬化性モノマー」は、硬化性オリゴマーを包含することも意図されており、硬化性オリゴマーを組成物中で用いてもよい。組成物中で使用可能な、適切な硬化性オリゴマーの例は、粘度が低く、例えば、約50cPs〜約10,000cPsである。多官能アクリレートおよび多官能メタクリレートとして、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、1,2−エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカノールジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、アミン修飾されたポリエーテルアクリレートトリメチロールプロパントリアクリレート、グリセロールプロポキシレートトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ−/ヘキサ−アクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート(Sartomer Co.Inc.からSR399LVおよびSR494として入手可能)などから作られるものを挙げることができる。
【0027】
硬化性モノマーのさらなる例としては、アクリレート化エステル、アクリレート化ポリエステル、アクリレート化エーテル、アクリレート化ポリエーテル、アクリレート化エポキシ、ウレタンアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートが挙げられる。
【0028】
いくつかの実施形態では、硬化性モノマーは、短鎖アルキルグリコールジアクリレートまたはエーテルジアクリレートから選択されてもよく、または、短鎖アルキルエステル置換基を有するアクリレート(例えば、カプロラクトンアクリレート)から選択されてもよい。
【0029】
実施形態の硬化性転相インク組成物は、1種以上のコモノマーを、インク媒剤の合計重量に対し、約5重量%〜約80重量%の範囲の量で含んでいてもよい。
【0030】
硬化性転相インク組成物は、少なくとも1つのゲル化剤を含んでいてもよい。
【0031】
有機ゲル化剤は、所望の温度範囲内で、インク媒剤およびインク組成物の粘度を顕著に上げるように機能する。特に、ゲル化剤は、インク組成物が吐出される特定の温度より低い温度では、インク媒剤中で半固体ゲルを形成している。半固体ゲル相は、1つ以上の固体ゲル化分子と液体溶媒とで構成される動的平衡として存在する物理的なゲルである。半固体ゲル相は、非共有結合による相互作用、例えば、水素結合、ファンデルワールス相互作用、芳香族の結合以外の相互作用、イオン結合または配位結合、ロンドン分散力などによって一緒に保持される、分子成分が力学的に網目状になった集合体であり、物理的な力(例えば、温度または機械的撹拌)または化学的な力(例えば、pHまたはイオン強度)によって刺激を加え、巨視的なレベルで液体状態から半固体状態へと可逆的に遷移させることができる。
【0032】
いくつかの実施形態では、インク組成物がゲル状態を形成する温度は、インク組成物の吐出温度よりも低い任意の温度であり、例えば、インク組成物の吐出温度よりも約10℃またはそれ以上低い任意の温度である。
【0033】
インク組成物中で使用するのに適したゲル化剤としては、硬化性アミド、硬化性ポリアミド−エポキシアクリレート成分、ポリアミド成分で構成される硬化性ゲル化剤、米国特許出願第12/474,946号に開示されているような、硬化性エポキシ樹脂およびポリアミド樹脂で構成される硬化性コンポジットゲル化剤、およびこれらの混合物などが挙げられる。組成物にゲル化剤が含まれると、組成物を塗布した後に冷えると、組成物の粘度が急速に増加するため、基板に過剰に浸透することなく、この組成物を基板(例えば、基板の1つ以上の部分)の上に、および/または、基板上にすでに作成されている画像の1つ以上の一部分の上に塗布することができる。液体が多孔性基板(例えば、紙)に過剰に浸透すると、基板の不透明性が望ましくないほど低下する場合がある。硬化性ゲル化剤は、組成物のモノマーを硬化させるのにも関与していてもよい。
【0034】
インク組成物は、任意の適切な量、例えば、組成物の約1重量%〜約50重量%の量でゲル化剤を含んでいてもよい。
【0035】
インク組成物は、少なくとも1つの硬化性ワックスを含んでいてもよい。
【0036】
硬化性ワックスは、他の成分と混和し、硬化性モノマーと重合し、ポリマーを形成するであろう任意のワックス成分であってもよい。
【0037】
硬化性ワックスの適切な例としては、硬化性基を含むワックス、または硬化性基で官能化されたワックスが挙げられる。硬化性基としては、例えば、アクリレート、メタクリレート、アルケン、アリルエーテル、エポキシド、オキセタンなどを挙げることができる。これらのワックスは、ワックス(例えば、カルボン酸またはヒドロキシルに変換可能な官能基を有しているポリエチレンワックス)の反応によって合成することができる。本明細書に記載の硬化性ワックスを、上述の硬化性モノマーで硬化してもよい。
【0038】
硬化性基で官能化されていてもよい、末端がヒドロキシルのポリエチレンワックスの適切な例としては、限定されないが、鎖長nの平均鎖長が約16〜約50の混合物である構造CH−(CH−CHOHを有する炭素鎖と、同じような平均鎖長を有する直鎖低分子量ポリエチレンとの混合物が挙げられる。
【0039】
硬化性基で官能化されていてもよい、末端がカルボン酸のポリエチレンワックスの適切な例としては、鎖長nの平均鎖長が約16〜約50の混合物である構造CH−(CH−COOHを有する炭素鎖と、同じような平均鎖長を有する直鎖低分子量ポリエチレンとの混合物が挙げられる。
【0040】
硬化性ワックスは、組成物中に、例えば、組成物の約0.1重量%〜約30重量%の量で含まれてもよい。
【0041】
実施形態のインク媒剤は、硬化性成分と、場合により、さらなる硬化性モノマー、着色剤、開始剤、酸化防止剤、および任意の従来の任意要素の添加剤を含むさらなる材料との混合物であってもよい。このような従来の添加剤としては、例えば、消泡剤、滑り剤およびレベリング剤、界面活性剤、顔料分散剤などを挙げることができる。さらに、インクは、所望な場合、さらなるモノマー材料またはポリマー材料を含んでいてもよい。
【0042】
インク組成物は、場合により、着色剤を含んでいてもよい。インク組成物において、染料、顔料、これらの混合物などを含む、任意の望ましい着色剤または有効な着色剤を使用してもよいが、ただし、着色剤を、インク媒剤に溶解させることが可能か、または分散させることが可能な場合に限る。組成物を、従来のインク−着色材料、例えば、Color Index(C.I.)Solvent Dye、Disperse Dye、改質されたAcid DyeおよびDirect Dye、Basic Dye、Sulphur Dye、Vat Dyeなどと組み合わせて用いてもよい。
【0043】
着色剤は、インク組成物中に、例えば、インク組成物の重量の約0.1〜約15重量%、例えば、約2.0〜約9重量%の量で含まれていてもよい。
【0044】
(開始剤)
硬化性転相インク組成物は、場合により、開始剤(例えば、光開始剤)を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、このような開始剤は、インクの硬化を促進するのに望ましい。
【0045】
いくつかの実施形態では、放射線(例えば、UV光線)を吸収し、インクの硬化性成分の硬化を開始させる光開始剤を用いてもよい。遊離ラジカル重合によって硬化する実施形態のインク組成物(例えば、アクリレート基を含むインク組成物、またはポリアミドで構成されるインク)の光開始剤として、ベンゾフェノン、ベンゾインエーテル、ベンジルケタール、α−ヒドロキシアルキルフェノン、α−ヒドロキシケトン、α−アルコキシアルキルフェノン、α−アミノアルキルフェノン、α−アルコキシアルキルフェノン、α−アミノアルキルフェノン、CibaからIRGACUREおよびDAROCURの商品名で販売されるアシルホスフィン光開始剤のような光開始剤で作られるものを挙げることができる。アミン共力剤から作られているもの、すなわち、水素原子を光開始剤に与え、それによって、重合を開始させるラジカル種を生成する補助開始剤(アミン共力剤は、インク中に溶解している酸素を消費することができ、酸素は遊離ラジカル重合を阻害するため、酸素の消費によって重合速度が上がる)、例えば、エチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、2−エチルヘキシル−4−ジメチルアミノ−ベンゾエートも挙げることができる。このリストは、排他的なものではなく、望ましい波長の放射線(例えば、UV光)にさらされると遊離ラジカル反応が開始する任意の既知の光開始剤を、制限なく使用することができる。
【0046】
インク組成物中に含まれる開始剤の合計量は、例えば、インク組成物の約0.5〜約15重量%、例えば、約1〜約10重量%であってもよい。
【0047】
また、硬化性転相インク組成物は、場合により、酸化防止剤を含んでいてもよい。インク組成物の任意要素の酸化防止剤は、画像が酸化するのを防ぎ、さらに、インク調製プロセスの加熱部分の間にインク成分が酸化するのを防ぐ。
【0048】
存在する場合、任意要素の酸化防止剤は、実施形態のインク組成物中に、任意の望ましい量または有効な量で存在し、例えば、インク組成物の少なくとも約0.01重量%、少なくとも約0.1重量%、または少なくとも約1重量%の量で存在する。
【0049】
実施形態の硬化性転相インクを、任意の適切な技術で調製してもよい。一例として、インクは、まず、開始剤成分と、硬化性モノマーおよび任意要素のオリゴマーの混合物とを混合し、特定の量のゲル化剤を加え(この量は、インク組成物の50重量%未満、または15重量%未満であってもよい)、場合により、特定の量の反応性ワックスを加え(この量は、インク組成物の50重量%未満、または10重量%未満であってもよい)、この混合物を加熱し、低粘度の単一相を得て、その後に、この熱い混合物を撹拌しつつ、加熱した顔料分散物(濃縮物であってもよい)に加えることによって調製してもよい。次いで、インク組成物を、場合により高温でフィルターによって濾過し、無関係な粒子を除いてもよい。インク組成物を調製する方法は、インク組成物を調製する際に使用される反応性ゲル化剤の種類に合うように変えてもよい。例えば、他の成分を加える前に、インク組成物の成分の1つにおいて、ゲル化剤の濃縮物を調製してもよい。補助ゲル化剤を含む溶液を、上述の方法に類似した方法で調製してもよい。インク調製方法のさらなる例を以下の実施例に記載する。
【0050】
直接的にインクジェットプロセスで印刷するための装置に、上述のインク組成物を使用してもよく、この場合、溶融したインクの液滴が、記録基板上に画像状パターンになるように放出され、記録基板は、最終的な記録基板である。記録基板は、記録中に任意の適切な温度であってもよく、または、間接的な(オフセット)インクジェット用途で印刷するのに使用してもよく、この場合、溶融したインクの液滴が、記録基板上に画像状パターンになるように吐出され、記録基板は中間転写体であり、画像状パターンのインクは、次いで、中間転写体から最終的な記録基板へと転写される。
【0051】
インク組成物を中間転写基板(例えば、中間転写溶融式のドラムまたはベルト)に吐出してもよい。適切な設計において、例えば、中間転写融合部材がインクジェットヘッドに対して4〜18回回転する(一定回数ずつ移動する)間に、適切に着色されたインク組成物を吐出することによって画像が塗布されてもよい。
【0052】
中間転写体は、任意の適切な形態(例えば、ドラムまたはベルト)であってもよい。転写体表面は、室温であってもよいが、いくつかの実施形態では、転写体は、例えば、インク組成物がゲル状態にある温度内に入る表面温度を有するように加熱されてもよい。
【0053】
中間転写体表面にのせたら、吐出されたインク組成物は、中間転写体表面でインクが部分的に硬化するように制限された程度まで放射線にさらされてもよい。この中間体での硬化は、インク組成物を完全には硬化させないが、吐出されたインクが固定されるのには役立つ程度まで硬化し、その結果、画像を受け入れる基板に適切な透過量で転写することができ、このためには、インクの液滴が転写前に特定のレオロジーを有していることが必要である。
【0054】
中間転写体、場合により中間転写体の上に硬化させた中間体に吐出した後、インク組成物を、その後に、画像を受け入れる基板に転写する。基板は、例えば、無孔性の可とう性食品包装用基板、食品包装紙用接着剤、箔ラミネート、布地、プラスチック、ガラス、金属などの任意の適切な材料であってもよい。
【0055】
基板に転写した後、または直接印刷方式が利用される場合には、基板に吐出した後に、画像を、回転する接触部材と接触させてもよく、この接触部材は、画像の平滑化を達成するために、Xerox Docket No.20090780−US−NPおよび関連する出願に開示されている油溶液または水溶液の形態で剥離層を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。次いで、基板上の画像を放射線にさらすことによって、インク組成物を硬化させる。これにより、インク組成物の硬化反応が開始する。
【0056】
間接的な印刷プロセスを用いる場合、中間転写体は、任意の望ましい形態または適切な形態(例えば、ドラムまたはローラ、ベルトまたはウェブ、平坦な表面またはプレート状など)であってもよい。中間転写体の温度は、例えば、中間転写体内または中間転写体付近に加熱器を配置することによって、または転写体を冷却するために空気流を用いることによって、などの任意の望ましい方法または適切な方法によって制御することができる。
【0057】
硬化性転相インク組成物の以下の実施例は、上の実施形態をさらに説明する。これらの実施例は、本開示を実施する際に利用可能な異なる組成物および条件を示す。すべての比率は、他の意味であると示されていない限り、重量による。しかし、本開示を、多くの種類の組成物を用いて実施することができ、上の開示および以下の指摘にしたがって、多くの異なる用途を有していてもよいことは明らかであろう。
【0058】
10種類の異なるインク配合物を、表1および表2において以下に記載するように調製した。インクA〜Jは、それぞれ、顔料分散物以外のすべての成分をあわせ、これらの成分を90℃、200rpmで約1時間混合することによって、それぞれ20gスケールで調製された。1時間後、それぞれのインクに顔料分散物を加え、あわせたインク組成物を90℃でさらに1時間撹拌した。すべてのインクは完全に混和しており、与えられた溶液は、高温では注ぐことが可能な粘度であり、室温まで冷却すると、堅いゲルを生成した。さらに、インクA〜BおよびD〜Eは、それぞれ「結晶性ポリエステル樹脂1番」を含んでおり、この結晶性ポリエステル樹脂の特徴は、Mが22,000Daであり、Mが10.2であり、多分散度が2.2である。さらに、インクF〜GおよびI〜Jは、それぞれ「結晶性ポリエステル樹脂2番」を含んでおり、この結晶性ポリエステル樹脂の特徴は、Mが21,300Daであり、Mが10,200Daであり、多分散度が2.2である。本明細書のこの実施例で使用される場合、結晶性ポリエステル樹脂は、供給源に基づくポリマー命名法を用いて命名される。例えば、「結晶性ポリエステル樹脂1番」は、ポリ(ドデカン酸−alt−1,9−ノナンジオール)エステルであり(ポリ(ノニレン−ドデカンジオエート)とも呼ばれ)、「結晶性ポリエステル樹脂2番」は、ポリ(ドデカン酸−alt−(1,9−ノナンジオール)0.475(ネオペンチルグリコール)0.025)エステルである。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
実施例のインクA〜BおよびF〜Gの温度依存性動的粘度を、TA Instruments製RFS III制御式応力レオメーターに50mmの平行プレートを取り付けたものを用いて測定した。
【0062】
【表3】

【0063】
上の表3に示されるように、結晶性ポリエステル樹脂を硬化性転相インク組成物の2.5重量%の量で含む硬化性転相インク組成物(インクAまたはインクF)から、5.0重量%の量で含む硬化性転相インク組成物(インクBまたはインクG)は、80℃〜90℃の目標吐出温度で、約13cP未満の吐出可能な粘度を有する。
【0064】
【表4】

【0065】
上の表4に示されるように、弾性係数は、いずれかの結晶性ポリエステル樹脂の重量%が大きくなるにつれて大きくなっている。弾性係数が大きいことは、凝集性が大きいことの指標であり、その結果、接触による平滑化中または転写中にインクの分断またはオフセットが起こりにくくなるだろう。
【0066】
インクAおよびインクFを、印刷ヘッドにのせ、改変したPhaserプリンタを用いて透明物に吐出した。次いで、印刷する四角形を、接触による平滑化ローラによって供給し、表面速度100ipsでチェイスシートとともに供給した。オフセットで平滑化する表面は、viton中の25%カゴ状ポリシルセスキオサン(POSS)であった。
【0067】
接触によって平滑化した表面に対するオフセット度は、接触によって平滑化した表面からチェイスシートへ転写される画像の明度パラメーターL*を測定することによって決定された。明度パラメーターL*は、X−Rite Corporation製の手持ち式のX−Rite 938分光測色濃度計を用いて測定された。L*値が、例えば、約85よりも大きいことが、インクのオフセットが非常に少ないか、または接触ローラからのインクの転写が非常に少ないことの指標となるため、望ましい。しかし、L*値が、例えば、約80よりも小さいことは、接触によって平滑化するローラに対し、インクのオフセットが顕著であることの指標となるため、望ましくない。
【0068】
インクAおよびインクFを用いて印刷された最初のチェイスシートのL*値、および、比較インクAおよび比較インクBの2種類の比較インクを用いて印刷された最初のチェイスシートのL*値を以下の表4に示す。比較インクAおよびBは、比較インクAおよび比較インクBが任意の結晶性ポリエステル樹脂を含んでいないという以外は、インクAおよびFとまったく同じ材料を用いて、まったく同じ様式で調製した。さらに、以下の表4に示されているように、L*値を、紙単独のベースラインとしての目標値(オフセットなし)と比較した。
【0069】
【表5】

【0070】
上の表5に示されるように、インクAおよびインクFの場合、比較インクA〜Bのインクと比較して、チェイスシートのL*が大きくなっていることは、インクAおよびインクFの場合に起こるインクの分断またはオフセットが少なくなっていることを示す。
【0071】
さらに、平滑化した後の印刷物のL*値と、最初のチェイスシートのL*との差(ΔL*)を、上述のそれぞれのインクについて評価した。この値は、接触によって平滑化したロールに対するインクの親和性の概算値を与える。例えば、接触によって平滑化したロールに対する親和性が高いインクは、平滑化した後の印刷物のL*値が小さくなる(暗度が小さい)。これらの値を以下の表6に示す。
【0072】
【表6】

【0073】
上の表6に示されるように、インクAおよびインクFの場合、比較インクA〜Bのインクと比較して、チェイスシートのΔL*が大きくなっていることは、インクAおよびFが、接触によって平滑化したローラに特定の親和性を有してないことを示している。
【0074】
種々の上に開示された特徴および機能、および他の特徴および機能、またはこれらの代替物を、望ましくは、多くの他の異なるシステムまたは用途と組み合わせてもよいことが理解されるだろう。また、種々の現時点では発見されていないか、または予想されていない代替物、改変、変更、または改良は、今後当業者によってなされてもよく、さらに、添付の特許請求の範囲に包含されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク媒剤と、少なくとも1つの結晶性ポリエステル樹脂とを含む、硬化性転相インク組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1つの結晶性ポリエステル樹脂が、約10,000ダルトン(Da)〜約60,000Daの重量平均分子量(M)を有し、約5,000Da〜約12,000Daの数平均分子量(M)を有し、約2.0〜約5.0の多分散度を有する、請求項1に記載の硬化性転相インク組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1つの結晶性ポリエステル樹脂が、約20,000Da〜約22,000Daの重量平均分子量(M)を有し、約9,000Da〜約11,000Daの数平均分子量(M)を有し、約2.0〜約2.2の多分散度を有する、請求項1に記載の硬化性転相インク組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1つの結晶性ポリエステルが、少なくとも1つの有機ジオールと、少なくとも1つの有機二塩基酸とを反応させることによって作成され、
前記有機ジオールが、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラフルオロ−1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、シクロヘキサンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリエチレングリコール、ダイマージオール、1,7−ヘプタンジオール、ベンゼンジメタノール、シクロヘキサンジメタノール、2,2−ジブチル−1,3−プロパンジオール、2,8−ビス(ヒドロキシメチル)三環[5.2.1.02,6]デカン、1,16−ヘキサデカンジオール、2−フェニル−1,3−プロパンジオールからなる群から選択され、
前記有機二塩基酸が、アジピン酸、コハク酸、セバシン酸、ドデカン二酸、フマル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、オキサロ酢酸、ダイマー二塩基酸、シュウ酸、マロン酸、テトラフルオロコハク酸、メチルマロン酸、チオジ酢酸、ジグリコール酸、マレイン酸、オキサロ酢酸、アセトキシ酢酸、シクロプロパン−1,1−ジカルボン酸、グルタコン酸、イタコン酸、1,3−アセトンジカルボン酸、ケトグルタル酸、ジメチルマロン酸、メチルコハク酸、グルタル酸、ムコン酸、シクロブタン−1,1−ジカルボン酸、2−オキソアジピン酸、2,2−ジメチルコハク酸、メチルグルタル酸、3,3’−チオジプロピオン酸、4−オキソヘプタン二酸、ジメチルグルタル酸、シクロヘキサン−1,1−ジカルボン酸、5−オキソアゼライン酸、フェニレンジ酢酸、インダン−2,2−ジカルボン酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸からなる群から選択される、請求項1に記載の硬化性転相インク組成物。
【請求項5】
前記結晶性ポリエステルが、ポリ(エチレン−アジペート)、ポリ(プロピレン−アジペート)、ポリ(ブチレン−アジペート)、ポリ(ペンチレン−アジペート)、ポリ(ヘキシレン−アジペート)、ポリ(オクチレン−アジペート)、ポリ(エチレン−サクシネート)、ポリ(プロピレン−サクシネート)、ポリ(ブチレン−サクシネート)、ポリ(ペンチレン−サクシネート)、ポリ(ヘキシレン−サクシネート)、ポリ(オクチレン−サクシネート)、ポリ(エチレン−セバケート)、ポリ(プロピレン−セバケート)、ポリ(ブチレン−セバケート)、ポリ(ペンチレン−セバケート)、ポリ(ヘキシレン−セバケート)、ポリ(オクチレン−セバケート)、ポリ(ノニレン−セバケート)、ポリ(デシレン−セバケート)、ポリ(ウンデシレン−セバケート)、ポリ(ドデシレン−セバケート)、ポリ(エチレン−ドデカンジオエート)、ポリ(プロピレン−ドデカンジオエート)、ポリ(ブチレン−ドデカンジオエート)、ポリ(ペンチレン−ドデカンジオエート)、ポリ(ヘキシレン−ドデカンジオエート)、ポリ(オクチレン−ドデカンジオエート)、ポリ(ノニレン−ドデカンジオエート)、ポリ(デシレン−ドデカンジオエート)、ポリ(ウンデシレン−ドデカンジオエート)、ポリ(ドデシレン−ドデカンジオエート)、ポリ(エチレン−フマレート)、ポリ(プロピレン−フマレート)、ポリ(ブチレン−フマレート)、ポリ(ペンチレン−フマレート)、ポリ(ヘキシレン−フマレート)、ポリ(オクチレン−フマレート)、ポリ(ノニレン−フマレート)、ポリ(デシレン−フマレート)、コポリ(5−スルホイソフタロイル)−コポリ(エチレン−アジペート)、コポリ(5−スルホイソフタロイル)−コポリ(プロピレン−アジペート)、コポリ(5−スルホイソフタロイル)−コポリ(ブチレン−アジペート)、コポリ(5−スルホ−イソフタロイル)−コポリ(ペンチレン−アジペート)、コポリ(5−スルホ−イソフタロイル)−コポリ(ヘキシレン−アジペート)、コポリ(5−スルホ−イソフタロイル)−コポリ(オクチレン−アジペート)、コポリ(5−スルホ−イソフタロイル)−コポリ(エチレン−アジペート)、コポリ(5−スルホ−イソフタロイル)−コポリ(プロピレン−アジペート)、コポリ(5−スルホ−イソフタロイル)−コポリ(ブチレン−アジペート)、コポリ(5−スルホ−イソフタロイル)−コポリ(ペンチレン−アジペート)、コポリ(5−スルホ−イソフタロイル)−コポリ(ヘキシレン−アジペート)、コポリ(5−スルホ−イソフタロイル)−コポリ(オクチレン−アジペート)、コポリ(5−スルホイソフタロイル)−コポリ(エチレン−サクシネート)、コポリ(5−スルホイソフタロイル)−コポリ(プロピレン−サクシネート)、コポリ(5−スルホイソフタロイル)−コポリ(ブチレン−サクシネート)、コポリ(5−スルホイソフタロイル)−コポリ(ペンチレン−サクシネート)、コポリ(5−スルホイソフタロイル)−コポリ(ヘキシレン−サクシネート)、コポリ(5−スルホイソフタロイル)−コポリ(オクチレン−サクシネート)、コポリ(5−スルホ−イソフタロイル)−コポリ(エチレン−セバケート)、コポリ(5−スルホ−イソフタロイル)−コポリ(プロピレン−セバケート)、コポリ(5−スルホ−イソフタロイル)−コポリ(ブチレン−セバケート)、コポリ(5−スルホ−イソフタロイル)−コポリ(ペンチレン−セバケート)、コポリ(5−スルホ−イソフタロイル)−コポリ(ヘキシレン−セバケート)、コポリ(5−スルホ−イソフタロイル)−コポリ(オクチレン−セバケート)、コポリ(5−スルホ−イソフタロイル)−コポリ(エチレン−アジペート)、コポリ(5−スルホ−イソフタロイル)−コポリ(プロピレン−アジペート)、コポリ(5−スルホ−イソフタロイル)−コポリ(ブチレン−アジペート)、コポリ(5−スルホ−イソフタロイル)−コポリ(ペンチレン−アジペート)、コポリ(5−スルホ−イソフタロイル)−コポリ(ヘキシレン−アジペート)、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるポリエステルを含む、請求項1に記載の硬化性転相インク組成物。
【請求項6】
前記インク媒剤が、少なくともゲル化剤と、少なくとも硬化性ワックスと、少なくとも硬化性モノマーとを含む、請求項1に記載の硬化性転相インク組成物。
【請求項7】
基板に印刷するための硬化性転相インク組成物と、インクを吐出するデバイスと、接触によって平滑化する部材またはローラと、場合により中間転写体と、吐出した前記硬化性インク組成物を硬化させる硬化デバイスとを備え、
ここで、前記インク組成物が、インク媒剤と、結晶性ポリエステル樹脂とを含む、インク印刷デバイス。
【請求項8】
硬化性転相インク組成物であって、
インク媒剤と、少なくとも1つの結晶性ポリエステル樹脂とを含み、
前記少なくとも1つの結晶性ポリエステル樹脂が、約10,000ダルトン(Da)〜約60,000Daの重量平均分子量(M)を有し、約5,000Da〜約12,000Daの数平均分子量(M)を有し、約2.0〜約5.0の多分散度を有し、
前記インク組成物が、約3000Pa〜約4000Paの弾性係数(G’)を有し、約25℃〜約35℃のゲル化温度で約10mPa・s〜約106.5mPa・sの粘度を有し、
前記インク組成物が、約60℃〜約100℃の吐出温度で、約3〜約15mPa・sの粘度を有する、硬化性転相インク組成物。

【公開番号】特開2012−82417(P2012−82417A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211223(P2011−211223)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】