説明

結晶性ポリマー微孔性膜及びその製造方法、並びに濾過用フィルタ

【課題】単一種の分子構造を持つ材料のみを用いて、機能の異なる層を設けることができ、微小な孔径を有し、数十nmサイズの微粒子を効率良く捕捉することができ、高流量である結晶性ポリマー微孔性膜及びその製造方法、並びに、濾過用フィルタの提供。
【解決手段】未加熱の結晶性ポリマーを含む第1のペーストを調製する第1のペースト調製工程と、前記未加熱の結晶性ポリマーのDSCチャートにおける吸熱ピークの極大値(M)と、加熱処理済の結晶性ポリマーのDSCチャートにおける吸熱ピークの極大値(M)との比(M/M)が0.5〜0.95となる条件で加熱された結晶性ポリマーを含む第2のペーストを調製する第2のペースト調製工程と、積層予備成形体作製工程と、積層体形成工程と、対称加熱工程と、延伸工程とをこの順に含む結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶性ポリマー微孔性膜及びその製造方法、並びに濾過用フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
微孔性膜は古くから知られており、濾過用フィルタ等に広く利用されている。このような微孔性膜としては、例えば、セルロースエステルを原料とするもの(例えば、特許文献1参照)、脂肪族ポリアミドを原料とするもの(例えば、特許文献2参照)、ポリフルオロカーボンを原料とするもの(例えば、特許文献3参照)、ポリプロピレンを原料とするもの(例えば、特許文献4参照)などが挙げられる。
これらの微孔性膜は、電子工業用洗浄水、医薬用水、医薬製造工程用水、食品水等の濾過、滅菌に用いられ、近年、その用途及び使用量が拡大しており、粒子捕捉の点から信頼性の高い微孔性膜が注目されている。これらの中でも、結晶性ポリマーからなる微孔性膜は耐薬品性に優れており、特に、ポリテトラフルオロエチレン(以下、「PTFE」と称することもある)を原料とした結晶性ポリマー微孔性膜は、耐熱性及び耐薬品性に優れているため、その需要の伸びが著しい。
【0003】
このような結晶性ポリマー微孔性膜において、ホモポリテトラフルオロエチレンポリマーと変性ポリテトラフルオロエチレンコポリマーの各層を積層した予備成形体を圧延し、焼成体の融点以上の温度で加熱後、延伸することで、小さい平均孔径を有する濾過層と、大きな平均孔径を有する支持層とからなる複層膜が作製できることが提案されている(例えば、特許文献5及び6参照)。前記提案によれば、極めて薄い濾過層であっても形成可能であり、かつ層界面が完全に一体化している複層膜であることが開示されている。
しかしながら、前記提案では、詳細な熱処理条件の記載がなく、微小な孔径の膜を作製することは困難であり、各層の熱的性質の僅かな差異によって変質の度合いが変わることを利用していることから、異なる種類の素材を組み合わせる必要があり、所望の性能(高流量)を示すフィルタを作製することは困難であるという問題がある。
【0004】
また、ポリテトラフルオロエチレン粉末とつなぎとなる低融点材料(樹脂粉末)とを混合し、脆さに起因する成形時の成形品崩壊を解消するポリテトラフルオロエチレン成形体が提案されている(例えば、特許文献7参照)。
しかしながら、前記提案では、成形後の加熱処理により気孔率(空孔率)が低くなるため、たとえ薄い膜を作製したとしても高流量と高捕捉率とを両立することは困難であるという問題がある。
【0005】
したがって、単一種の分子構造を持つ材料のみを用いて、機能の異なる層を設けることができ、微小な孔径を有し、数十nmサイズの微粒子を効率良く捕捉することができ、高流量である結晶性ポリマー微孔性膜、及びその製造方法、並びに濾過用フィルタについて、速やかな開発が強く求められているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第1,421,341号明細書
【特許文献2】米国特許第2,783,894号明細書
【特許文献3】米国特許第4,196,070号明細書
【特許文献4】西独特許第3,003,400号明細書
【特許文献5】特開平3−179038号公報
【特許文献6】特開平3−179039号公報
【特許文献7】特開平5−093086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、単一種の分子構造を持つ材料のみを用いて、機能の異なる層を設けることができ、微小な孔径を有し、数十nmサイズの微粒子を効率良く捕捉することができ、高流量である結晶性ポリマー微孔性膜及びその製造方法、並びに濾過用フィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、成型性に優れる未加熱の結晶性ポリマーからなる層と、成型性には劣るが特定の条件(加熱温度、及び加熱時間)で加熱して得られる加熱処理済の結晶性ポリマーからなる層とを共存させることが、緻密層を作製する上での素材の成型性と小孔径化との両立に重要であることを見出した。即ち、未加熱の結晶性ポリマーを含む第1のペーストを調製する第1のペースト調製工程と、前記未加熱の結晶性ポリマーの示差走査熱量計を用いた測定で得られるDSCチャートにおける吸熱ピークの極大値(M)と、加熱処理済の結晶性ポリマーの示差走査熱量計を用いた測定で得られるDSCチャートにおける吸熱ピークの極大値(M)との比(M/M)が0.5〜0.95となる加熱条件で加熱された結晶性ポリマーを含む第2のペーストを調製する第2のペースト調製工程と、前記第1のペースト、及び前記第2のペーストを金型内で積層して、積層予備成形体を作製する積層予備成形体作製工程と、前記積層予備成形体を押出し、圧延して積層体を形成する積層体形成工程と、前記積層体を対称加熱する対称加熱工程と、前記積層体を延伸する延伸工程とをこの順に含むことにより、単一種の分子構造を持つ材料のみを用いて、機能の異なる層を設けることができ、微小な孔径を有し、数十nmサイズの微粒子を効率良く捕捉することができ、高流量である結晶性ポリマー微孔性膜及びその製造方法、並びに濾過用フィルタを見出し、本発明の完成に至った。
【0009】
本発明は、本発明者による前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 未加熱の結晶性ポリマーを含む第1のペーストを調製する第1のペースト調製工程と、前記未加熱の結晶性ポリマーの示差走査熱量計を用いた測定で得られるDSCチャートにおける吸熱ピークの極大値(M)と、加熱処理済の結晶性ポリマーの示差走査熱量計を用いた測定で得られるDSCチャートにおける吸熱ピークの極大値(M)との比(M/M)が0.5〜0.95となる加熱条件で加熱された結晶性ポリマーを含む第2のペーストを調製する第2のペースト調製工程と、前記第1のペースト、及び前記第2のペーストを金型内で積層して、積層予備成形体を作製する積層予備成形体作製工程と、前記積層予備成形体を押出し、圧延して積層体を形成する積層体形成工程と、前記積層体を対称加熱する対称加熱工程と、前記積層体を延伸する延伸工程と、をこの順に含むことを特徴とする結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法である。
<2> 第2のペースト調製工程における加熱条件における加熱の温度が、320℃超え、かつ、350℃以下で行われる前記<1>に記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法である。
<3> 第2のペースト調製工程における加熱処理済の結晶性ポリマーの平均粒子径が、0.1μm〜0.6μmである前記<1>から<2>のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法である。
<4> 結晶性ポリマーが、ポリテトラフルオロエチレン及びポリテトラフルオロエチレン共重合体の少なくともいずれかである前記<1>から<3>のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法である。
<5> ポリテトラフルオロエチレン共重合体が、テトラフルオロエチレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、ヘキサフルオロプロピレン、及びクロロトリフルオロエチレンから選択される少なくとも2種を含む前記<4>に記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法である。
<6> 前記<1>から<5>のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法により製造されたことを特徴とする結晶性ポリマー微孔性膜である。
<7> 前記<6>に記載の結晶性ポリマー微孔性膜を用いたことを特徴とする濾過用フィルタである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、従来における諸問題を解決でき、単一種の分子構造を持つ材料のみを用いて、機能の異なる層を設けることができ、微小な孔径を有し、数十nmサイズの微粒子を効率良く捕捉することができ、高流量である結晶性ポリマー微孔性膜及び結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法、並びに、濾過用フィルタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の結晶性ポリマー微孔膜の製造方法の工程の一例を示す図である。
【図2】図2は、本発明の結晶性ポリマー微孔膜の製造方法の他の工程の一例を示す図である。
【図3】図3は、積層予備成形体の一例を示す図である。
【図4】図4は、本発明の結晶性ポリマー微孔膜の製造方法の他の工程の一例を示す図である。
【図5】図5は、本発明に係る2層構造の結晶性ポリマー微孔膜の一例を示す模式図である。
【図6】図6は、本発明に係る3層構造の結晶性ポリマー微孔膜の一例を示す模式図である。
【図7】図7は、ハウジングに組込む前の一般的なプリーツフィルターエレメントの構造の一例を表す図である。
【図8】図8は、カプセル式フィルターカートリッジのハウジングに組込む前の一般的なフィルターエレメントの構造の一例を表す図である。
【図9】図9は、ハウジングと一体化された一般的なカプセル式のフィルターカートリッジの構造の一例を表す図である。
【図10】図10は、未加熱の結晶性ポリマーの一例を示すDSCチャートである。
【図11】図11は、加熱処理済の結晶性ポリマーの一例を示すDSCチャートである。
【図12】図12は、全焼成の結晶性ポリマーの一例を示すDSCチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法)
本発明の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法は、第1のペースト調製工程、第2のペースト調製工程、積層体形成工程、対称加熱工程、及び延伸工程を含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
【0013】
<第1のペースト調製工程>
前記第1のペースト調製工程は、未加熱の結晶性ポリマーと、更に必要に応じてその他の成分とを混合してなる第1のペーストを調製する工程である。
【0014】
−結晶性ポリマー−
前記結晶性ポリマーとは、分子構造の中に長い鎖状の分子が規則的に並んだ結晶性領域と、規則的に並んでいない非結晶領域が混在したポリマーを意味する。このようなポリマーは物理的な処理により、結晶性が発現する。例えば、ポリエチレンフィルムを外力により延伸すると、初めは透明なフィルムが白濁する現象が生じる。前記現象は、外力によりポリマー内の分子配列が一つの方向に揃えられ、結晶性が発現したことに由来する。
【0015】
前記結晶性ポリマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、シンジオタクチック・ポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、全芳香族ポリアミド、全芳香族ポリエステル、ポリエーテルニトリル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン共重合体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、ポリテトラフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン共重合体が、高結晶性を有するパウダー状の製品が入手しやすく、また、耐溶剤性及び耐熱性が高く、種々の用途に好適に利用できる点で、好ましい。
【0016】
前記ポリテトラフルオロエチレンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、乳化重合により得られた水性分散体を凝析することにより取得した微粉末状のポリテトラフルオロエチレンが挙げられる。
【0017】
前記ポリテトラフルオロエチレン共重合体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、テトラフルオロエチレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレンから選択される少なくとも2種を含む共重合体が挙げられる。
【0018】
前記結晶性ポリマーの形態としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粉末状の形態、粒子状の形態などが挙げられる。
前記結晶性ポリマーの粉末状の形態、粒子状の形態とする際の平均粒子径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.2μm〜0.4μmが好ましい。
【0019】
前記結晶性ポリマーのガラス転移温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、40℃〜400℃が好ましく、50℃〜350℃がより好ましい。
【0020】
前記結晶性ポリマーの重量平均分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1,000〜100,000,000が好ましい。
前記結晶性ポリマーの数平均分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、500〜50,000,000が好ましく、1,000〜25,000,000がより好ましい。
前記結晶性ポリマーの数平均分子量の測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。しかしながら、PTFEは、溶剤に不溶であるため、DSC測定による結晶化熱(ΔHc:cal/g)測定を行い、関係式:Mn=2.1×1010×ΔHc−5.16、を用いて算出することが好ましい。
【0021】
前記結晶性ポリマーとしては、特に制限はなく、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。前記市販品としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(ダイキン工業株式会社製、商品名「ポリフロン PTFE」、品番名「F−104」、「F−106」、「F−201」、「F−205」、「F−208」、「F−301」、「F−302」、商品名「ルブロン」、品番名「L−2」、「L−5」)、ポリテトラフルオロエチレン(旭硝子株式会社製、商品名「Fluon(登録商標)PTFE」、品種名「CD1」、「CD141」、「CD145」、「CD123」、「CD076」、「CD090」、「CD126」)、ポリテトラフルオロエチレン(三井デュポンフロロケミカル株式会社製、商品名「テフロン(登録商標)PTFE」、銘柄名「6−J」、「6C−J」、「62XT」、「640−J」)などが挙げられる。
これらの中でも、ポリテトラフルオロエチレン(ダイキン工業株式会社製、商品名「ポリフロン PTFE」、品番名「F−106」)が、比較的低い成型圧力で強度の優れた成型品を得やすい点で、好ましい。
【0022】
前記結晶性ポリマーの第1のペーストにおける含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、77質量%〜87質量%が好ましい。
【0023】
−その他の成分−
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、押出助剤を好適に挙げることができ、更に必要に応じて、着色剤などの添加剤を含有してもよい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0024】
前記押出助剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、液状潤滑剤が好ましく、例えば、ソルベントナフサ、ホワイトオイルなどの炭化水素油が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記押出助剤としては、特に制限はなく、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。前記市販品としては、例えば、炭化水素油(エッソ石油株式会社製、商品名「アイソパーH」)が挙げられる。
【0025】
前記その他の成分の前記第1のペーストにおける含有量としては、特に制限はなく、前記第1のペーストから結晶性ポリマーを除いた残量を、その他の成分の含有量とすることができ、例えば、結晶性ポリマー100質量部に対して、押出助剤を15質量部〜30質量部添加することが好ましい。
【0026】
−第1のペーストを調製する方法−
前記第1のペーストを調製する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記結晶性ポリマーと、前記その他の成分とを、混練機により混練して調製する方法、攪拌機により攪拌して調製する方法、分散機により分散して調製する方法などが挙げられる。
【0027】
<第2のペースト調製工程>
前記第2のペースト調製工程は、特定の条件(加熱温度、及び加熱時間)で加熱して得られる加熱処理済の結晶性ポリマーを粉砕して顆粒状にしたものと、更に必要に応じてその他の成分とを混合して第2のペーストを調製する工程である。
【0028】
−結晶性ポリマー−
前記結晶性ポリマーは、第1のペースト調製工程で用いた結晶性ポリマーと同様の結晶性ポリマーを用いる。前記第2のペースト調製工程において、前記結晶性ポリマーの粉末を特定の条件(加熱温度、及び加熱時間)で加熱することにより、前記加熱処理済の結晶性ポリマーを含む層の結晶性が下がり、対称加熱工程を経ることによって微小な孔径を有する層(緻密層)とすることができる。
【0029】
前記結晶性ポリマーの粉末を加熱する際の特定の条件とは、前記未加熱の結晶性ポリマーの示差走査熱量計を用いた測定で得られるDSCチャートにおける吸熱ピークの極大値(M)と、加熱処理済の結晶性ポリマーの示差走査熱量計を用いた測定で得られるDSCチャートにおいて未加熱時にMがあった位置の最も近傍に存在する吸熱ピークの極大値(M)との比(M/M)が0.5〜0.95となる加熱の条件をいう。前記比(M/M)が0.5〜0.95となると、成型性を損じることなく小孔径化を図ることができる。図10に、未加熱の結晶性ポリマーの一例を示すDSCチャートを、図11に、加熱処理済の結晶性ポリマーの一例を示すDSCチャートを、図12に、全焼成の結晶性ポリマーの一例を示すDSCチャートを示す。図10〜図12に示すY軸に平行な破線は、未加熱の結晶性ポリマーの吸熱ピークの極大値における温度を示しており、前記近傍に存在する吸熱ピークは、前記Y軸に平行な破線の最も近くに存在する吸熱ピークをいう。前記結晶性ポリマーにおける吸熱ピークの極大値(M)は、図10〜図12に示すように、結晶性ポリマーのDSCチャートにおける300℃の値と380℃の値とを結ぶ線(X軸に平行な破線)をベースラインとして、吸熱ピークの極大点からベースラインに下ろした垂線の高さ(h)として算出する。
【0030】
前記結晶性ポリマーの粉末を加熱する際の加熱の温度としては、前記比(M/M)が0.5〜0.95となる加熱の条件であれば、特に制限はなく、素材と目的に応じて適宜選択できる。例えば、本発明の実施例で用いられているポリテトラフルオロエチレンの粉末を加熱する際の加熱の温度としては、320℃超え、かつ、350℃以下が好ましく、325℃〜345℃がより好ましく、330℃〜340℃が特に好ましい。なお、前記ポリテトラフルオロエチレンは、融点に相当する吸熱ピークが、概ね、320℃超え、かつ、350℃以下の範囲にある。
前記ポリテトラフルオロエチレンの粉末を加熱する際の加熱の温度が、320℃以下である場合、物性変化が起こらないか、起きても極めて長時間の加熱を要するおそれがあり、350℃を超えると、吸熱ピークが消失するのに要する時間が短くなり、結晶性の制御が困難となり、加熱しすぎによる成型性の著しい悪化を招くおそれがある。一方、前記ポリテトラフルオロエチレンの粉末を加熱する際の加熱の温度が、前記特に好ましい範囲内であると、これらの時間上の問題を回避できる点で有利である。他の結晶性ポリマーを用いる場合の具体的数値の例示はしないが、加熱の温度が低すぎると変化が起こらず、加熱の温度が高すぎると結晶性制御が困難となる点においては、同様である。
【0031】
前記結晶性ポリマーの粉末を加熱する際の加熱の時間としては、前記比(M/M)が0.5〜0.95となる加熱の条件であれば、特に制限はなく、前記加熱の温度に応じて適宜選択することができるが、10秒間〜10分間が好ましく、20秒間〜5分間がより好ましく、30秒間〜3分間が特に好ましい。前記結晶性ポリマーの粉末の加熱の時間が、10秒間未満であると、処理操作の時間差が顕著になって結晶性の制御が困難となることがあり、10分間を超えると、処理可能な結晶性ポリマーの粉末の量が制限されることにより生産性を著しく損なうことがある。一方、前記結晶性ポリマーの粉末の加熱の時間が前記特に好ましい範囲内であると、これらの時間上の問題を防ぐ上で有利である。
【0032】
前記結晶性ポリマーの粉末の加熱を行う方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱風オーブンにより加熱を行う方法が挙げられる。
【0033】
前記加熱処理済の結晶性ポリマーを粉砕して顆粒状にする方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シェイカーミルにより粉砕する方法が挙げられる。
【0034】
前記加熱処理済の結晶性ポリマーの平均粒子径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1μm〜0.6μmが好ましく、0.2μm〜0.5μmが特に好ましい。
前記加熱処理済の結晶性ポリマーの平均粒子径が、0.1μm未満であると、ペースト粘度が上昇しすぎて押出しが困難となることがあり、0.6μmを超えると、ペーストが非常に脆くなって良好な押出し成型品が得られないことがある。一方、前記加熱処理済の結晶性ポリマーの平均粒子径が前記特に好ましい範囲内であると、成型性の点で有利である。
【0035】
前記加熱処理済の結晶性ポリマーの第2のペーストにおける含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、77質量%〜87質量%が好ましい。
【0036】
−その他の成分−
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、押出助剤を好適に挙げることができ、更に必要に応じて、着色剤などの添加剤を含有してもよい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0037】
前記押出助剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、液状潤滑剤が好ましく、例えば、第1のペースト調製工程における押出助剤と同様のものが挙げられる。
【0038】
前記その他の成分の前記第2のペーストにおける含有量としては、特に制限はなく、前記第2のペーストから前記加熱処理済の結晶性ポリマーを除いた残量を、その他の成分の含有量とすることができ、例えば、前記加熱処理済の結晶性ポリマー100質量部に対して、前記押出助剤を15質量部〜30質量部添加することが好ましい。
【0039】
−第2のペーストを調製する方法−
前記第2のペーストを調製する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記加熱処理済の結晶性ポリマーと、前記その他の成分とを、混練機により混練して調製する方法、攪拌機により攪拌して調製する方法、分散機により分散して調製する方法などが挙げられる。
【0040】
<積層予備形成体作製工程>
前記第1のペースト、及び前記第2のペーストを金型内で積層して、積層予備成形体を作製する工程である。
【0041】
前記積層予備成形体を作製する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、少なくとも、前記第1のペースト、及び前記第2のペーストを金型内で積層して、押圧し、圧縮することにより、積層予備成形体を作製する方法が挙げられる。
【0042】
前記積層予備成形体を作製する際のペーストを積層する順序としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、第1のペーストの上に第2のペーストを積層してもよいし、第2のペーストの上に第1のペーストを積層してもよい。
【0043】
前記積層予備形成体を作製する際に用いる金型としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、プラスチック用金型、プレス金型、ダイカスト金型、鋳造金型、鍛造金型などが挙げられる。
【0044】
前記積層予備成形体の構造としては、2層以上である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2層以上の第1のペーストを含む層と、1層の第2のペーストを含む層とを有する構造が好ましく、2層の第1のペーストを含む層と、該2層の第1のペーストを含む層間に介装された1層の第2のペーストを含む層とを有する3層構造がより好ましい。前記積層予備成形体の構造が、前記3層構造であると、捕捉粒径に最も影響する最大平均孔径が最も小さい第2のペーストを、摩擦、引っ掻き等の物理的破壊要因から保護することができ、捕捉性能の安定化を図ることができ、安定に製造することができる点で有利である。
【0045】
前記積層予備形成体の厚みは、後述する押出し方法あるいは圧延する方法に併せて設定される。つまり、押出し方法に併せて設定される場合は、押出し金型のペースト投入部の寸法に併せて作製され、圧延する方法に併せて設定される場合は、圧延装置の入口形状によって概ね形状が決定される。前記積層予備形成体の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、公知の例を示すならば、押出し方法に併せて設定される場合における前記積層予備形成体の厚みとしては、例えば、5cm〜10cmであり、圧延する方法に併せて設定される場合における前記積層予備形成体の厚みとしては、例えば、0.5cm〜5cmである。
【0046】
前記積層予備成形体が、前記第1のペーストを含む層と、前記第2のペーストを含む層との2層構造とする際の、前記第1のペーストを含む層の厚みと、前記第2のペーストを含む層の厚みとの比(第1のペーストを含む層の厚み:第2のペーストを含む層の厚み)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10,000:1〜1.2:1であることが好ましく、5,000:1〜1.25:1であることがより好ましく、1,000:1〜1.5:1であることが特に好ましい。前記比が、10,000超:1であると、前記第2のペーストを含む層の厚みを精密に制御できなくなるおそれがあり、1.2未満:1であると、前記第2のペーストを含む層が摩擦、引っ掻きの影響を受け、安定な微粒子捕捉性を保てないことがある。なお、前記比が前記特に好ましい範囲内であると、厚み制御及び微粒子捕捉性の点で有利である。
【0047】
前記積層予備成形体が、前記第1のペーストを含む層と、前記第2のペーストを含む層と、前記第1のペーストを含む層とをこの順に有してなる3層構造とする際の、前記第1のペーストを含む層の最大厚みと、前記第2のペーストを含む層の厚みとの比(第1のペーストを含む層の最大厚み:第2のペーストを含む層の厚み)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5,000:1〜1.2:1であることが好ましく、2,500:1〜1.25:1であることがより好ましく、1,000:1〜1.5:1であることが特に好ましい。前記比が、5,000超:1であると、前記第2のペーストを含む層の厚みを精密に制御できなくなるおそれがあり、1.2未満:1であると、前記第1のペーストを含む層が摩擦、引っ掻きの影響を受け、安定な微粒子捕捉性を保てないことがある。一方、前記比が前記特に好ましい範囲内であると、厚み制御及び微粒子捕捉性の点で有利である。
前記積層予備成形体が、前記第1のペーストを含む他の1層(最大厚みを有する層でない他方の層)の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記第2の結晶性ポリマーを含む層の厚み以上であることが好ましい。前記第1のペーストを含む他の1層(最大厚みを有する層でない他方の層)の厚みが、前記第2のペーストを含む層の厚みを超えると、流量が十分でない場合がある。一方、前記厚みが前記特に好ましい範囲内であると、流量の点で有利である。
【0048】
<積層体形成工程>
前記積層体形成工程は、前記積層予備成形体から、積層体(未加熱フィルム積層体)を形成する工程である。
前記積層体を形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記積層予備成形体を押出し、圧延した後、加熱により押出助剤を除去し、積層体(未加熱フィルム積層体)を形成する方法が挙げられ、「ポリフロンハンドブック」(ダイキン工業株式会社発行、1983年改訂版)に記載されている事項を適宜採用することができる。
【0049】
前記積層体を形成する際の押出し方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知のペースト押出装置を用いる方法が挙げられる。
前記積層体を形成する際の押出しに用いるペースト押出装置のシリンダー部の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、軸直角方向断面は50mm×100mmの矩形であり、出口部でシリンダー部の一方が絞られたノズル50mm×5mmで構成される形状が挙げられる。
前記積層体を形成する際の押出し温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、19℃〜200℃で行うことが好ましい。
前記積層体を形成する際の押出し形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、棒状が好ましく、シート状がより好ましい。
【0050】
前記積層体を形成する際の圧延する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記押出物をカレンダーロールにより、圧延する方法が挙げられる。
前記積層体を形成する際の圧延する速度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、5m/分の速度でカレンダー掛けを行うことができる。
前記積層体を形成する際の圧延する温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、19℃〜380℃の温度でカレンダー掛けを行うことができる。
【0051】
前記積層体を形成する際の加熱により押出助剤を除去する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記フィルムを熱風乾燥炉に通すことにより押出助剤を除去する方法が挙げられる。
前記積層体を形成する際の加熱の温度としては、特に制限はなく、押出助剤の種類に応じて適宜選択することができるが、40℃〜400℃が好ましく、60℃〜350℃がより好ましい。例えば、ポリテトラフルオロエチレンから、ソルベントナフサを除去する場合には、150℃〜280℃が好ましく、180℃〜260℃がより好ましい。
【0052】
前記積層体の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜調整することができるが、1μm〜300μmが好ましく、5μm〜200μmがより好ましく、10μm〜100μmが特に好ましい。
【0053】
<対称加熱工程>
前記対称加熱工程は、前記積層体(未加熱フィルム積層体)全体を、満遍なく均等に加熱することにより、対称加熱フィルムとする工程である。
前記対称加熱する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ソルトバスにより加熱する方法、熱風加熱機により熱風を吹き付ける方法、炉により加熱する方法、加熱ロールに接触させて加熱する方法、IRを照射することにより加熱する方法などが挙げられる。これらの中でも、ソルトバスによる加熱が、積層体全体を加熱する際に、加熱ばらつきを抑えることができる点で、好ましい。
前記対称加熱する際の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、343℃〜350℃であることが好ましい。
【0054】
<延伸工程>
前記延伸工程は、前記対称加熱フィルムを延伸する工程である。
前記延伸する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記対称加熱フィルム積層体を長手方向と幅方向の両方について延伸する方法であり、例えば、長手方向の延伸を行ってから幅方向の延伸を行う方法、同時に二軸延伸を行う方法などが挙げられる。
【0055】
前記延伸する際の長手方向の延伸倍率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1.2倍〜50倍が好ましく、1.5倍〜40倍がより好ましく、2.0倍〜10倍が特に好ましい。
前記延伸する際の長手方向の延伸温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、35℃〜330℃が好ましく、45℃〜320℃がより好ましく、55℃〜310℃が特に好ましい。
【0056】
前記延伸する際の幅方向の延伸倍率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1.2倍〜50倍が好ましく、1.5倍〜40倍がより好ましく、2.0倍〜30倍が更に好ましく、2.5倍〜10倍が特に好ましい。
前記延伸する際の幅方向の延伸温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、35℃〜330℃が好ましく、45℃〜320℃がより好ましく、60℃〜310℃が特に好ましい。
【0057】
前記延伸する際の面積延伸倍率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1.5倍〜2,500倍が好ましく、2倍〜2,000倍がより好ましく、2.5倍〜100倍が特に好ましい。延伸を行う際には、予め延伸温度以下の温度に結晶性ポリマーフィルムを予備加熱しておいてもよい。
なお、延伸後に、必要に応じて熱固定を行うことができる。前記熱固定の温度は、通常、延伸温度以上で結晶性ポリマーの融点未満で行うことが好ましく、前記結晶性ポリマーが、PTFE等のフッ素樹脂の場合は、融点以上で加熱することが好ましい。
【0058】
<その他の工程>
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、表面改質工程が挙げられる。
【0059】
前記表面改質工程は、結晶性ポリマー微孔性膜の少なくとも一部を表面改質する工程である。前記結晶性ポリマー微孔性膜の少なくとも一部には、結晶性ポリマー微孔性膜の露出している表面以外にも、孔部の周囲、孔部の内部も含まれる。
【0060】
前記表面改質する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、過酸化水素水又は水溶性溶剤の水溶液の含浸後、レーザー照射する方法(特開平7−304888号公報)、放射線、プラズマ等で照射する方法(特開2003−201571号公報)、化学的エッチング処理(特開2007−154153号公報)、架橋系材料で被覆する方法(特開平8−283447号公報)、重合系材料で被覆する方法(特開2000−235849号公報)などが挙げられる。
【0061】
ここで、図1〜図4を参照して、本発明の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法の一例について説明する。
【0062】
図1に示すように、箱形状の下金型8内に、前記第1のペーストを層状に下金型8上に載せ、上金型(不図示)を用いて矢印方向に押圧する。これにより圧縮されて、第1層4が形成される。
次に、図2に示すように、第1層4上に、第2層5を形成するためのPTFEのファインパウダーを含むペーストを載せ、同様に上金型(不図示)を用いて圧縮する。
以上により、図3に示すような、第1層4上に第2層5が積層された積層予備成形体10が得られる。
図4に示すようなペースト押出装置のシリンダー部に、得られた積層予備成形体10を収納した後、これを加圧手段(不図示)によって矢印方向に押圧する。このようにして第1層4及び第2層5が完全に一体化され、各層が均一な厚みを有する積層体(未加熱フィルム積層体)15が成形される。積層体15を対称加熱し、延伸することにより、結晶性ポリマー微孔製膜が製造される。
【0063】
(結晶性ポリマー微孔性膜)
本発明の結晶性ポリマー微孔性膜は、前記結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法により、製造された微孔性膜である。
【0064】
前記結晶性ポリマー微孔性膜の構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記第1のペーストを含む層と前記第2のペーストを含む層との間に境界を有する積層構造が挙げられる。
【0065】
前記結晶性ポリマー微孔性膜が積層構造であることを確認する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、結晶性ポリマー微孔性膜を厚み方向に凍結して切断した切断面を光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することにより検出する方法が挙げられる。
【0066】
前記結晶性ポリマー微孔性膜の孔部の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記結晶性ポリマー微孔性膜の厚み方向に貫通し、前記結晶性ポリマー微孔性膜における少なくとも1層が、前記結晶性ポリマー微孔性膜の厚み方向における少なくとも一部において、平均孔径が変化なく一定である複数の孔部の形状が挙げられる。前記形状とすることにより、微粒子を効率良く捕捉することができる。
ここで、前記結晶性ポリマー微孔性膜における少なくとも1層が、前記結晶性ポリマー微孔性膜の厚み方向における少なくとも一部において、平均孔径が変化なく一定である複数の孔部とは、横軸に結晶性ポリマー微孔性膜のおもて面からの厚み方向の距離t(おもて面からの深さに相当)をとり、縦軸に孔部の平均孔径Dをとったとき、(1)おもて面(d=0)からうら面(d=膜厚)に至るまでのグラフが、結晶性ポリマー層ごとに1本の連続線で描かれ(連続的)、グラフの傾き(dD/dt)は実質的に0(ゼロ)であることをいう。また、前記実質的に0(ゼロ)とは、平均値から±10%程度を含み、単調増加、単調減少は含まないことをいう。
【0067】
前記結晶性ポリマー微孔性膜の孔部の形状を確認する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することにより確認する方法が挙げられる。
【0068】
前記結晶性ポリマー微孔性膜の孔部の平均孔径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、第1のペーストを含む層における孔部の平均孔径と、第2のペーストを含む層における孔部の平均孔径とが、異なる平均孔径を有している。
前記結晶性ポリマー微孔性膜の第1のペーストを含む層における孔部の平均孔径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることがより好ましい。
前記結晶性ポリマー微孔性膜の第2のペーストを含む層における孔部の平均孔径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1nm〜200nmが好ましく、5nm〜150nmがより好ましく、10nm〜100nmが特に好ましい。
【0069】
前記結晶性ポリマー微孔性膜における孔部の平均孔径を測定する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、走査型電子顕微鏡で膜表面あるいは、膜断面の写真(SEM写真、倍率1,000倍〜100,000倍)をとり、得られた写真を画像処理装置(本体:日本アビオニクス株式会社製、商品名「TVイメージプロセッサTVIP−4100II」、制御ソフト:ラトックシステムエンジニアリング株式会社製、商品名「TVイメージプロセッサイメージコマンド4198」)に取り込んで結晶性ポリマー繊維のみからなる像を得て、その像を演算処理することにより平均孔径を測定する方法が挙げられる。
【0070】
前記結晶性ポリマー微孔性膜における平均流量孔径とは、乾燥状態時の1/2と湿潤状態時の空気流量との交点から求まる孔径をいう。
前記結晶性ポリマー微孔性膜の第1のペーストを含む層における孔部の平均流量孔径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることがより好ましい。
前記結晶性ポリマー微孔性膜の第2のペーストを含む層における孔部の平均流量孔径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1nm〜200nmが好ましく、5nm〜150nmがより好ましく、10nm〜100nmが特に好ましい。
【0071】
前記結晶性ポリマー微孔性膜の孔部の平均流量孔径を測定する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ハーフドライ法(ASTM E1294−89)により測定する方法が挙げられる。具体的には、15nmまでは500psiの高圧パームポロメーター(PMI社製)で測定でき、15nm以下はナノパームポロメーター(PMI社製)により測定することができる。
【0072】
前記結晶性ポリマー微孔性膜の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1μm〜300μmが好ましく、5μm〜200μmがより好ましく、10μm〜100μmが特に好ましい。
【0073】
前記結晶性ポリマー微孔性膜における前記第1のペーストを含む層の最大厚みを前記第2のペーストを含む層の最大厚みより厚くすると、結晶性ポリマー微孔性膜の流量を向上させることができる。
前記結晶性ポリマー微孔性膜における前記第2のペーストを含む層の厚みは、薄くすると、流量特性が向上する一方、微粒子捕捉率が低下する。逆に、前記結晶性ポリマー微孔性膜における第2のペーストを含む層の厚みを厚くすると、流量特性は低下するが、微粒子捕捉率は向上する。
ここで、前記最大厚みとは、各層の厚みの最大値を意味する。例えば、厚みが20μmの第1のペーストを含む層と、厚みが15μmの第1のペーストを含む層と、厚みが10μmの第1のペーストを含む層とを有する積層体の場合、第1のペーストを含む層の最大厚みは20μmとなり、また、厚みが20μmの第2のペーストを含む層と、厚みが15μmの第2のペーストを含む層と、厚みが10μmの第2のペーストを含む層とを有する積層体の場合、第2のペーストを含む層の最大厚みは20μmとなる。
【0074】
前記結晶性ポリマー微孔性膜の厚みを測定する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、結晶性ポリマー微孔性膜を凍結割断し、走査型電子顕微鏡(SEM)により各層の断面観察を行うことで、各層の厚みを測定する方法が挙げられる。
【0075】
ここで、図5及び図6を参照して、本発明の結晶性ポリマー微孔性膜の一例について説明する。
【0076】
図5に示すように、第1の結晶性ポリマーを含む層101、第2の結晶性ポリマーを含む層102を積層した2層構造の本発明の結晶性ポリマー微孔性膜における孔部101b、102bの平均孔径は、いずれも積層体の厚み方向に変化なく一定であり、結晶性ポリマー微孔性膜全体としては、平均孔径が厚み方向に変化(段階的に減少)している。
【0077】
図6に示すように、結晶性ポリマーを含む層101、102、103を積層した3層構造の本発明の結晶性ポリマー微孔性膜における孔部101b、102b、103bの平均孔径は、いずれも積層体の厚み方向に変化なく一定であり、結晶性ポリマー微孔性膜全体としては、平均孔径が厚み方向に段階的に変化している部分がある。また、前記孔部の最大平均孔径Lm1、Lm2、及びLm3のうち最も小さい孔部の最大平均孔径Lm2を有する第2の結晶性ポリマーを含む層102が結晶性ポリマー微孔性膜(積層体)の内部に存在している。
【0078】
本発明の結晶性ポリマー微孔性膜は、微小な孔径を有し、数十nmサイズの微粒子を効率良く捕捉することができ、高流量であるので、濾過が必要とされる様々な用途に用いることができるが、以下に説明する濾過用フィルタとして、特に好適に用いることができる。
【0079】
(濾過用フィルタ)
本発明の濾過用フィルタは、前記結晶性ポリマー微孔性膜を用いることを特徴とする。
また、本発明の濾過用フィルタは、前記結晶性ポリマー微孔性膜の比表面積が大きいため、その表面から導入された微細粒子が最小孔径部分に到達する以前に吸着又は付着によって除かれる。したがって、目詰まりを起こしにくく、長期間にわたって高い濾過効率を維持することができる。
【0080】
前記濾過用フィルタの形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、プリーツ状に加工成形することが好ましい。前記濾過用フィルタの形状が前記プリーツ状であると、カートリッジ当たりのフィルタの濾過に使用する有効表面積を増大させることができる点で、有利である。
【0081】
ここで、図7〜図9を参照して、本発明の濾過用フィルタの一例について説明する。
図7〜図9は、精密ろ過フィルターカートリッジの具体例であり、本発明はこれらの図面に限定されるわけではない。
【0082】
図7は、エレメント交換式のプリーツフィルターカートリッジエレメントの構造を示す展開図である。精密ろ過膜113は2枚の膜サポート112、及び114によってサンドイッチされた状態でひだ折りされ、集液口を多数有するコアー115の周りに巻き付けられている。その外側には外周カバー111があり、精密ろ過膜を保護している。円筒の両端にはエンドプレート116a、及び116bにより、精密ろ過膜がシールされている。エンドプレートはガスケット117を介してフィルターハウジング(不図示)のシール部と接する。ろ過された液体はコアーの集液口から集められ、流体出口118から排出される。
【0083】
図8は、カプセル式のフィルターカートリッジのハウジングに組込まれる前の精密ろ過膜フィルターエレメントの全体構造の展開図である。精密ろ過膜22は2枚のサポートである、一次側サポート21、及び二次側サポート23によってサンドイッチされた状態でひだ折りされ、集液口を多数有するフィルターエレメントコア27の周りに巻き付けられている。その外側にはフィルターエレメントカバー26があり、精密ろ過膜を保護している。円筒の両端には、上部エンドプレート24と下部エンドプレート25とにより、精密ろ過膜がシールされている。
図8は、下部エンドプレート25とハウジングベースとのシールを、Oリング28を介して行う事例を示しているが、下部エンドプレート25とハウジングベースとのシールは熱融着や接着剤によって行われることもある。又はハウジングベースとハウジングカバーとのシールも熱融着の他に、接着剤を用いる方法も可能である。
【0084】
図9は、フィルターエレメントがハウジングに組込まれて一体化されたカプセル式のプリーツフィルターカートリッジの構造を示す図である。フィルターエレメント30はハウジングベース32とハウジングカバー31よりなるハウジング内に組込まれている。下部エンドプレートはOリングを介してハウジングベース32中心部にある集水管(不図示)にシールされている。液体は液入口ノズル33からハウジング内に入り、フィルターメディア29を通過し、フィルターエレメントコア27の集液口から集められ、液出口ノズル34から排出される。ハウジングベース32とハウジングカバー31は、通常溶着部37で液密に熱融着される。
【0085】
本発明の結晶性ポリマー微孔性膜を用いた濾過用フィルタは、このように濾過機能が高くて長寿命であるため、濾過装置をコンパクトにまとめることができる。従来の濾過装置では、多数の濾過ユニットを直列的に使用して濾過寿命の短さに対処していたが、本発明の濾過用フィルタを用いれば直列的に使用する濾過ユニットの数を大幅に減らすことができる。また、濾過用フィルタの交換期間も大幅に延ばすことができるため、メンテナンスにかかる費用や時間を節減できる。
【0086】
本発明の濾過用フィルタは、気体、液体等の精密濾過に好適に用いられ、例えば、腐食性ガス、半導体工業で使用される各種ガス等の濾過、電子工業用洗浄水、医薬用水、医薬製造工程用水、食品水等の濾過、滅菌、高温濾過、反応性薬品の濾過、電線被覆材料、カテーテル、人工血管、癒着防止膜、細胞培養足場、絶縁膜、燃料電池用セパレータなどに幅広く用いることができる。
【実施例】
【0087】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0088】
(実施例1)
<結晶性ポリマー微孔性膜の作製>
−第1のペースト調製工程−
未加熱の結晶性ポリマーとして、ポリテトラフルオロエチレンのファインパウダー(ダイキン工業株式会社製、商品名「ポリフロン PTFE」、品番名「F−106」)100質量部に、押出助剤として、炭化水素油(エッソ石油株式会社製、商品名「アイソパーH」)23質量部を加え、第1のペーストを調製した。
【0089】
−第2のペースト調製工程−
結晶性ポリマーとして、ポリテトラフルオロエチレンのファインパウダー(ダイキン工業株式会社製、商品名「ポリフロン PTFE」、品番名「F−106」)を金属製のバット上に厚さ2mmとなるように均して置き、熱風オーブンに投入し、バットに設置した熱電対により、前記ファインパウダーの温度が340℃に到達してから30秒間静置し、その後、バットごと取り出して空気中にて空冷した。脆い板状になった前記ファインパウダーの熱処理物を容器の口を通る程度に割って容器に封入し、容器を振とうして粉砕し、顆粒状の加熱処理済の結晶性ポリマー1を得た。前記加熱処理済の結晶性ポリマー1を100質量部、押出助剤として、炭化水素油(エッソ石油株式会社製、商品名「アイソパーH」)を25質量部加え、第2のペーストを調製した。
【0090】
−積層予備成形体作製工程−
前記第1のペーストと、前記第2のペーストとの厚み比(ペースト1/ペースト2/ペースト1)が3/1/1となるように、敷き詰め加圧し、積層予備成形体を作製した。
【0091】
−積層体形成工程−
前記積層予備成形体を、ペースト押出し金型の角型シリンダー内に挿入し、シート状に複層ペースト押出しを行った。これを、60℃に加熱したカレンダーロールによりカレンダー掛けして、積層構造を有するポリテトラフルオロエチレンのフィルムを作製した。得られたポリテトラフルオロエチレンのフィルムを250℃の熱風乾燥炉に通して押出助剤を乾燥除去し、平均厚さ140μm、平均幅150mm、比重1.45の積層体(ポリテトラフルオロエチレンの未加熱フィルム積層体)を形成した。
【0092】
−対称加熱工程−
前記積層体を、344℃に保温したソルトバスで50秒加熱して、対称加熱フィルムを作製した。
【0093】
−延伸工程−
前記対称加熱フィルムを、300℃にて長手方向に3倍にロール間延伸し、一旦巻き取りロールに巻き取った。その後、両端をクリップで挟み、300℃で幅方向に3倍に延伸し、320℃で熱固定を行った。
以上により、実施例1の結晶性ポリマー微孔性膜を作製した。
【0094】
(実施例2)
<結晶性ポリマー微孔性膜の作製>
実施例1の第2のペースト調製工程において、ポリテトラフルオロエチレンのファインパウダーの到達温度を330℃として、加熱処理済の結晶性ポリマー2を得たこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2の結晶性ポリマー微孔性膜を作製した。
【0095】
(比較例1)
<結晶性ポリマー微孔性膜の作製>
実施例1の第2のペースト調製工程において、ポリテトラフルオロエチレンのファインパウダーの到達温度を320℃として、加熱処理済の結晶性ポリマー3を得たこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1の結晶性ポリマー微孔性膜を作製した。なお、前記加熱処理済の結晶性ポリマー3は、既に顆粒状であったため、前記第2のペースト調製工程において振とう粉砕することはせず、このままの状態で加熱処理済の結晶性ポリマー3とした。
【0096】
(比較例2)
<結晶性ポリマー微孔性膜の作製>
実施例1の第2のペースト調製工程において、ポリテトラフルオロエチレンのファインパウダーの到達温度を360℃として、加熱処理済の結晶性ポリマー4を得たこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2の結晶性ポリマー微孔性膜を作製した。
【0097】
(比較例3)
<結晶性ポリマー微孔性膜の作製>
実施例1の第2のペーストは用いずに、実施例1の第1のペーストのみを用いて、予備成型体を作製したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例3の結晶性ポリマー微孔性膜を作製した。
【0098】
(比較例4)
<結晶性ポリマー微孔性膜の作製>
実施例1の第1のペーストは用いずに、実施例1の第2のペーストのみを用いて、予備成型体を作製したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例4の結晶性ポリマー微孔性膜の作製を試みたが、押出しの際に得られたシート状の成型体は非常に脆く、カレンダー掛けすることができなかった。
【0099】
(評価)
<DSCチャートにおける吸熱ピークの比(M/M)>
まず、実施例1及び2、並びに比較例1〜3の第1のペースト調製工程で用いた未加熱の結晶性ポリマーを示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ製、商品名「DSC7200」)を用いて、10℃/minの昇温速度で測定を行い、DSCチャートにおける吸熱ピークの高さ(h)を特定した。
また、実施例1及び2、並びに比較例1、2、及び4の第2のペースト調製工程で用いた加熱処理済の結晶性ポリマーを、前記示差走査熱量計を用いて、DSCチャートにおける吸熱ピークの高さ(h)を特定した。
次に、第1のペースト調製工程、及び第2のペースト調製工程で用いた結晶性ポリマーであるポリテトラフルオロエチレンのファインパウダー(ダイキン工業株式会社製、商品名「ポリフロン PTFE」、品番名「F−106」)を融点以上の温度(360℃)にて10分間加熱した後に冷却して、全焼成の結晶性ポリマーとした。
前記全焼成の結晶性ポリマーを、前記示差走査熱量計を用いて、DSCチャートを作成し、各々の300℃の値と380℃の値とを結ぶ線をベースラインとして、前記吸熱ピークの高さ(h及びh)をもとに極大値(M及びM)を求め、吸熱ピークの比(M/M)を算出した。結果を表1に示す。
【0100】
<平均流量孔径>
実施例1及び2、並びに比較例1〜3で作製した結晶性ポリマー微孔性膜を用いて、高圧パームポロメーター(PMI社製)により平均流量孔径の測定を行った。なお、比較例4については、結晶性ポリマー微孔性膜を作製することができなかったため、平均流量孔径の測定を行っていない。結果を表1に示す。
【0101】
<流量テスト>
実施例1及び2、並びに比較例1〜3で作製した結晶性ポリマー微孔性膜を用いて、イソプロピルアルコール(IPA)を差圧100kPaで流した時の単位面積(m)、及び単位時間(min)あたりの透過量を流量(L・m−2・min−1)として、測定し、流量テストを行った。なお、比較例4については、結晶性ポリマー微孔性膜を作製することができなかったため、流量テストを行っていない。結果を表1に示す。
【0102】
【表1】

【0103】
実施例1及び2では、前記比(M/M)が0.5〜0.95であるため、前記第2のペースト調製工程における加熱条件が適正な条件となり、成型性を損じることなく、微小な孔径を有し、高流量である結晶性ポリマー微孔性膜を作製することができた。
一方、比較例1及び2では、前記比(M/M)が0.5〜0.95から外れる範囲であるため、前記第2のペースト調製工程における加熱条件が不適切な条件となり、目的とする結晶性ポリマー微孔性膜を作製することができなかった。比較例3では、第2のペーストを用いずに結晶性ポリマー微孔性膜を作製したため、平均孔径が大きい値となった。比較例4では、第1のペーストを用いずに結晶性ポリマー微孔性膜を作製したため、押出しの際に得られたシート状の成型体は非常に脆く、カレンダー掛けすることができず、結晶性ポリマー微孔性膜を作製することができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明の結晶性ポリマー微孔性膜及びこれを用いた濾過用フィルタは、濾過が必要とされる様々な状況において使用することができ、気体、液体等の精密濾過に好適に用いられ、例えば、腐食性ガス、半導体工業で使用される各種ガス等の濾過、電子工業用洗浄水、医薬用水、医薬製造工程用水、食品水等の濾過、滅菌、高温濾過、反応性薬品の濾過、電線被覆材料、カテーテル、人工血管、癒着防止膜、細胞培養足場、絶縁膜、燃料電池用セパレータなどに幅広く用いることができる。
【符号の説明】
【0105】
4 第1層
5 第2層
8 下金型
10 積層予備成形体
15 積層体(未加熱フィルム積層体)
21 一次側サポート
22 精密ろ過膜
23 二次側サポート
24 上部エンドプレート
25 下部エンドプレート
26 フィルターエレメントカバー
27 フィルターエレメントコア
28 Oリング
29 フィルターメディア
30 フィルターエレメント
31 ハウジングカバー
32 ハウジングベース
33 液入口ノズル
34 液出口ノズル
37 溶着部
101 結晶性ポリマーを含む層
102 結晶性ポリマーを含む層
103 結晶性ポリマーを含む層
101b 孔部
102b 孔部
103b 孔部
111 外周カバー
112 膜サポート
113 精密ろ過膜
114 膜サポート
115 コアー
116a エンドプレート
116b エンドプレート
117 ガスケット
118 液体出口
Lm1 孔部の最大平均孔径
Lm2 孔部の最大平均孔径
Lm3 孔部の最大平均孔径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
未加熱の結晶性ポリマーを含む第1のペーストを調製する第1のペースト調製工程と、
前記未加熱の結晶性ポリマーの示差走査熱量計を用いた測定で得られるDSCチャートにおける吸熱ピークの極大値(M)と、加熱処理済の結晶性ポリマーの示差走査熱量計を用いた測定で得られるDSCチャートにおける吸熱ピークの極大値(M)との比(M/M)が0.5〜0.95となる加熱条件で加熱された結晶性ポリマーを含む第2のペーストを調製する第2のペースト調製工程と、
前記第1のペースト、及び前記第2のペーストを金型内で積層して、積層予備成形体を作製する積層予備成形体作製工程と、
前記積層予備成形体を押出し、圧延して積層体を形成する積層体形成工程と、
前記積層体を対称加熱する対称加熱工程と、
前記積層体を延伸する延伸工程と、
をこの順に含むことを特徴とする結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法。
【請求項2】
第2のペースト調製工程における加熱条件における加熱の温度が、320℃超え、かつ、350℃以下で行われる請求項1に記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法。
【請求項3】
第2のペースト調製工程における加熱処理済の結晶性ポリマーの平均粒子径が、0.1μm〜0.6μmである請求項1から2のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法。
【請求項4】
結晶性ポリマーが、ポリテトラフルオロエチレン及びポリテトラフルオロエチレン共重合体の少なくともいずれかである請求項1から3のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法。
【請求項5】
ポリテトラフルオロエチレン共重合体が、テトラフルオロエチレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、ヘキサフルオロプロピレン、及びクロロトリフルオロエチレンから選択される少なくとも2種を含む請求項4に記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法により製造されたことを特徴とする結晶性ポリマー微孔性膜。
【請求項7】
請求項6に記載の結晶性ポリマー微孔性膜を用いたことを特徴とする濾過用フィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−139624(P2012−139624A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292904(P2010−292904)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】