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結晶性酸化チタンの製造方法
説明

結晶性酸化チタンの製造方法

【課題】結晶子サイズを小さくした結晶性酸化チタンを得ることのできる結晶性酸化チタンの製造方法を提供する。
【解決手段】結晶性酸化チタンの製造方法は、結晶性酸化チタン原料に、300〜380nmの波長領域において光量子束密度が1×1017個/s/cm以上となる紫外線が含まれた光を照射する。これにより、結晶性酸化チタン原料の結晶子サイズを小さくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば光触媒として用いられる結晶性酸化チタンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
結晶性酸化チタンは、酸化チタン光触媒として、例えば有機物の酸化分解力、超親水化機能等を発現することが知られている。こうした酸化チタン光触媒の酸化分解力は、抗菌に対して有効であるとともに、超親水化機能は、例えば防汚に対して有効である。このため、酸化チタン光触媒は、抗菌材料及び防汚材料としての利用価値は高い。ここで、各種物品の外面において超親水化機能を発現させる場合では、酸化チタン光触媒は、バインダー又は基材を利用して各種物品に固定される。このとき、バインダー又は基材を有機材料から構成すると、上記酸化チタンの酸化分解力により、有機材料が分解されることがある。この点、酸化チタン光触媒に含まれる結晶の結晶子径を特定範囲とすることで、光触媒活性に基づいて発現する酸化分解力が抑制されるようになる(特許文献1参照)。特許文献1では、非晶質酸化チタン膜を加熱処理することで酸化チタン光触媒を得ている。
【0003】
ところで、結晶性酸化チタンは半導体の一種である。一般に、光に不安定な半導体では、紫外線を含む光を照射することで金属イオンが溶け出すことが知られている(特許文献2参照)。このように光に不安定な半導体が溶け出す現象は、光溶解(フォトコロージョン)と呼ばれている。光溶解する半導体としては、例えば酸化亜鉛及び硫化亜鉛が挙げられる(非特許文献1参照)。これに対して、結晶性酸化チタンは、非特許文献1に記載されるように光溶解を起こさないことを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−208062号公報
【特許文献2】特開平08−243551号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】橋本和仁、藤嶋昭編集「酸化チタン光触媒の研究動向1991−1997」株式会社シーエムシー出版、1998年、p.29
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように結晶性酸化チタンは、酸化亜鉛等の半導体とは異なり、光に対して極めて安定である特異な半導体として知られている。こうした技術常識の下、本発明は、紫外線の照射であっても、結晶性酸化チタンの結晶子が小さくなる現象を発見することでなされたものである。
【0007】
本発明の目的は、結晶子サイズを小さくした結晶性酸化チタンを得ることのできる結晶性酸化チタンの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために請求項1に記載の発明は、結晶性酸化チタン原料に、300〜380nmの波長領域において光量子束密度が1×1017個/s/cm以上となる紫外線が含まれた光を照射することで前記結晶性酸化チタン原料の結晶子サイズを小さくすることを要旨とする。この発明では、上記紫外線が含まれた光の照射により、結晶性酸化チタンの結晶が光溶解(フォトコロージョン)されるようになる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、結晶子サイズを小さくした結晶性酸化チタンを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】光源の放射スペクトルの一例を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体化した実施形態について詳細に説明する。
結晶性酸化チタンの製造方法は、結晶性酸化チタン原料に、300〜380nmの波長領域において光量子束密度が1×1017個/s/cm以上となる紫外線が含まれた光を照射する。
【0012】
結晶性酸化チタン原料としては、結晶構造によりアナターゼ型、ルチル型、及びブルッカイト型に分類される。結晶性酸化チタン原料としては、単独種の結晶構造からなるものであってもよいし、複数種の結晶構造を含むものであってもよい。なお、結晶性酸化チタン原料は、非晶質部分を含んでいてもよい。結晶性酸化チタン原料の形状は、特に限定されず、例えば粉末状、繊維状、膜状等が挙げられる。
【0013】
結晶性酸化チタン原料に上記紫外線が含まれた光を照射するに際しては、結晶性酸化チタン原料のみに上記紫外線が含まれた光を照射してもよいし、結晶性酸化チタン原料と、その他の成分とを含む結晶性酸化チタン材料に上記紫外線が含まれた光を照射してもよい。結晶性酸化チタン材料に含有させる成分としては、例えばバインダー、分散媒及び充填剤が挙げられる。バインダーとしては、上記紫外線の透過性が高いとともに紫外線に対する耐久性が得られるものを適宜選択することができる。バインダーとしては、例えば金属酸化物、金属窒化物、各種樹脂材料等から適宜選択される。分散媒としては、例えば水、水性有機溶媒、及び油性有機溶媒の少なくとも一種が挙げられる。充填剤としては、微粒子状物であって、例えばコロイダルシリカ、アルミナ、ジルコニア、非晶質のチタニア、水酸化マグネシウム、及び活性炭が挙げられる。その他、結晶性酸化チタン材料には、必要に応じて、抗菌剤、防菌剤、耐電防止剤、着色剤、耐候剤、磁性剤、断熱剤、遮熱剤、熱安定剤、光安定剤、離形剤、アンチブロッキング剤の機能性材料を含有させることもできる。なお、バインダーを含む結晶性酸化チタン材料に対する上記紫外線が含まれた光の照射は、バインダーの硬化前、及びバインダーの硬化後のいずれであってもよい。
【0014】
結晶性酸化チタン原料に300〜380nmの波長領域において光量子束密度が1×1017個/s/cm以上となる紫外線が含まれた光を照射することで、結晶性酸化チタン原料に含まれる結晶が光溶解(フォトコロージョン)される。
【0015】
上記の光量子束密度は、次のように求められる。まず、光源の放射スペクトルから全波長領域の放射強度の積算値Aを求める。詳述すると、積算値Aは、放射スペクトルのグラフから1nm単位の放射強度Bを読み取り、各波長(1nm単位)における放射強度を積算する。下記式(1)に示されるように、実測した全波長の光量から、放射強度の積算値Aと各波長の放射強度との比率C(比率C=放射強度B/積算値A)を用いて波長1nm毎の光量を計算する。
【0016】
各波長(1nm単位)の光量(kW/m)=実測した全波長の光量(kW/m)×比率C・・・(1)
続いて、各波長(1nm単位)の光量を、波長毎にその波長における光子1個の持つエネルギーで除することで、各波長(1nm単位)の放射光子数を求める。そして、300〜380nmの領域の放射光子数を積算することで、300〜380nmの波長領域における光量子束密度が求められる。
【0017】
こうした紫外線が含まれた光を照射することで、結晶性酸化チタン原料に含まれる結晶子サイズは小さくなる。すなわち、結晶性酸化チタン原料よりも、結晶子サイズを小さくした結晶性酸化チタンが得られる。
【0018】
ここで、光溶解は、金属元素がイオンとして溶出する現象である。このように金属元素の溶出を促進するため、上記紫外線が含まれた光の照射は、湿度環境下(相対湿度0%を超える環境下)で実施されることが好ましい。紫外線が含まれた光を照射する環境の相対湿度は、好ましくは30%以上であり、より好ましくは50%以上である。また、紫外線が含まれた光を照射する環境の温度は、0℃を超えることが好ましい。
【0019】
光溶解は、結晶性酸化チタン原料が光を吸収することで結晶内に生じる正孔が自身を酸化させる反応であるため、反応系内を結晶性酸化チタン原料が酸化されやすい環境にすることで、より効率的に光溶解が進行することになる。したがって、上記紫外線が含まれた光を照射する条件としては、例えば高酸素濃度下、アノード分極下、及び酸性条件下であることが好ましい。
【0020】
紫外線が含まれた光の照射に用いられる光源としては、特に限定されないが、上記の光量子束密度を有する紫外線が含まれた光が得られ易いという観点から、高輝度放電ランプが好ましい。高輝度放電ランプとしては、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、及び高圧ナトリウムランプが挙げられる。光源から照射する紫外線が含まれた光の放射照度は、300〜380nmの波長領域において0.7(kW/m)以上であることが好ましい。
【0021】
結晶性酸化チタン原料に含まれる結晶が光溶解(フォトコロージョン)する現象は、上記の条件の紫外線が含まれた光であれば、その照射時間に関わらず進行するようになる。上記紫外線が含まれた光の照射時間は、例えば5分以上であることが好ましい。
【0022】
得られる結晶性酸化チタンでは、バンドギャップエネルギーが増大する現象、すなわち量子サイズ効果が発現させることができる。こうした量子サイズ効果により、結晶性酸化チタンに吸収される光の最長波長は、結晶性酸化チタン原料に吸収される光の最長波長よりも短波長側にシフト(ブルーシフト)されるようになる。
【0023】
ここで、結晶性酸化チタンは、酸化チタン光触媒として、例えば有機物の酸化分解力、超親水化機能等を発現することが知られている。こうした酸化チタン光触媒を有機材料の基材と接触させて用いる場合、酸化分解力が過剰に発現すると、有機材料が酸化分解されることで耐久性が得られないことがある。また、酸化チタン光触媒の屋外の使用において、NO又はSOの酸化分解により生じた硝酸イオン又は硫酸イオンが生成される。硝酸イオン又は硫酸イオンは、大気中の煤煙等に含まれるナトリウムイオンやカルシウムイオンと塩を生成する。この点、酸化分解力の過剰な発現は、生成した硝酸塩又は硫酸塩は、結晶性酸化チタンの適用箇所において白色の汚れとなる結果、適用箇所では美観が損なわれるといった問題がある。
【0024】
このように、超親水化機能を利用した場合等では、酸化チタン光触媒の酸化分解力の過剰な発現を抑えることが要求されることがある。この点、本実施形態の結晶性酸化チタンの製造方法によれば、量子サイズ効果により、本実施形態の結晶性酸化チタンに吸収される光の最長波長は、結晶性酸化チタン原料に吸収される光の最長波長よりも短波長側にシフト(ブルーシフト)されるようになる。こうした本実施形態の結晶性酸化チタンは、例えば地表面での太陽光を利用すると、その光の波長分布の影響によって、過剰な光触媒の酸化分解力が発現されることを抑制した酸化チタン光触媒としての利用価値が高い。
【0025】
なお、上記最長波長は、光触媒に照射される光の波長と、その照射により発現した機能性との関係から求めることができる。ここで、酸化チタン光触媒は、光の波長が短いほど吸光度が高く、短波長の光ほどエネルギーが高くなる。すなわち、光触媒はバンドギャップ以上のエネルギーを持つ光を吸収し、光触媒機能を発現するものであるから、前記エネルギーを持つ光よりも短い波長の光を吸収することで光触媒機能を発現することになる。この点、上記最長波長は、所定の機能性を発現する波長のうち、最もエネルギーの低い波長を示している。こうした最長波長は、光触媒としての機能性の発現において、光照射に対する応答性を示している。最長波長は、光触媒が発現する機能について閾値を決定した後、その閾値以上の機能性を発現する波長のうち、最も長い波長を測定することで求められる。光触媒が発現する機能の指標としては、酸化分解力を光触媒活性の評価対象(分解最長波長)とする場合であれば、例えばメチレンブルー溶液の経時的な退色が挙げられ、親水化機能を光触媒活性の評価対象とする場合(親水化最長波長)であれば、例えば水接触角の経時的な角度低下が挙げられる。
【0026】
本実施形態の結晶性酸化チタンは、周知の酸化チタン光触媒と同様に利用することができる。結晶性酸化チタンが固定される基材としては、特に限定されず、例えば有機系基材、金属系基材、ガラス系基材、及びセラミックス系基材が挙げられる。基材に固定する方法としては、周知の塗布方法を利用することができる。塗布方法としては、例えばディップコート法、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、及びグラビアコート法が挙げられる。酸化チタン光触媒の固定に用いられるバインダーとしては、上述した無機系バインダーの他に、有機系バインダーを用いてもよい。なお、結晶性酸化チタン原料を基材に固定した後に、上記紫外線が含まれた光を照射する方法とすることで、バインダーを省略することもできる。
【0027】
ここで、本実施形態の製造方法では、過剰な酸化分解力を抑制した結晶性酸化チタンを得ることができるため、例えば有機系基材及び有機系バインダーといった有機系材料に、結晶性酸化チタンが接触した状態とされても、太陽光下において、結晶性酸化チタンの光触媒活性を要因として有機系材料が酸化分解されることが抑制又は防止される。また、有機系材料に含まれる各種有機系添加剤についても、結晶性酸化チタンの光触媒活性を要因として酸化分解されることを抑制又は防止することができる。このように酸化分解力を低減させた結晶性酸化チタンは、例えば屋外(太陽光下)など、紫外領域の光が得られる環境下で親水性を発現させる用途において好適である。
【0028】
なお、有機系材料としては、例えば樹脂材料、及び樹脂材料と無機系材料との複合材料が挙げられる。樹脂材料としては、例えばアクリル系樹脂、スチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリイミド系樹脂、及びセルロース系樹脂が挙げられる。
【0029】
本実施形態の結晶性酸化チタンが適用される物品としては、特に限定されず、結晶性酸化チタンを光触媒として利用する際には、例えば防音壁、反射体、道路標識、街路灯、車両(ボディ、ウィンドウガラス、サイドミラー等)、建材、看板、冷凍・冷蔵用ショーケース、各種レンズ類、センサー類、及び農業用資材が挙げられる。このように結晶性酸化チタンを適用した物品では、酸化分解力を抑制しつつも、適度な親水化機能を発現させることができるようになる。親水化機能としては、例えば防曇、防滴、防汚、防霜、及び滑雪が挙げられる。
【0030】
以上詳述した本実施形態によれば、次のような効果が発揮される。
(1)本実施形態の結晶性酸化チタンの製造方法は、結晶性酸化チタン原料に、300〜380nmの波長領域において光量子束密度が1×1017個/s/cm以上となる紫外線が含まれた光を照射することで結晶性酸化チタン原料の結晶子サイズを小さくしている。こうした製造方法は、結晶性酸化チタン原料に対して、光量子束密度の高い紫外線が含まれた光を照射することで、結晶性酸化チタン原料の結晶子サイズよりも小さい結晶子を有する結晶性酸化チタンが得られることを見出したことに基づいている。これにより、結晶子サイズを小さくした結晶性酸化チタンを得ることのできる製造方法が提供される。
【0031】
(2)上述した製造方法により得られた結晶性酸化チタンは、例えば、過剰な光触媒活性が発現されることを抑制した酸化チタン光触媒としての利用価値が高い。
なお、前記実施形態を次のように変更して構成してもよい。
【0032】
・前記紫外線が含まれた光の照射において、光量子束密度を経時的に変更してもよい。
・前記紫外線が含まれた光の照射において、結晶性酸化チタンの配置される環境湿度を適宜変更してもよい。
【0033】
・前記紫外線が含まれた光の照射においては、紫外線のみからなる光を照射してもよいし、紫外線と例えば可視光線とが含まれる光を照射してもよい。
・前記実施形態の製造方法を、物品又は基材に固定されている結晶性酸化チタン原料に対して適用してもよい。
【0034】
・前記実施形態の製造方法により得られた結晶性酸化チタンを、酸化チタン光触媒以外の用途に用いてもよい。例えば、前記結晶性酸化チタンを顔料として用いた場合、バインダーとなる合成樹脂や共存させる染料等が結晶性酸化チタンの光触媒活性に基づいて分解されることを抑制することもできるようになる。
【0035】
上記実施形態から把握できる技術的思想について以下に記載する。
(イ)上記結晶性酸化チタンの製造方法において、バインダーにより固定した前記結晶性酸化チタン原料に前記紫外線が含まれた光を照射する結晶性酸化チタンの製造方法。
【0036】
(ロ)上記結晶性酸化チタンの製造方法において、前記結晶性酸化チタン原料からなる膜に前記紫外線が含まれた光を照射する結晶性酸化チタンの製造方法。
(ハ)上記結晶性酸化チタンの製造方法において、前記紫外線が含まれた光を照射は、相対湿度が0%を超えるとともに温度が0℃を超える環境下で実施される結晶性酸化チタンの製造方法。
【0037】
(ニ)結晶性酸化チタン原料に、300〜380nmの波長領域において光量子束密度が1×1017個/s/cm以上となる紫外線が含まれた光を照射することで前記結晶性酸化チタン原料の結晶子を光溶解させることを特徴とする結晶子サイズの調整方法。
【実施例】
【0038】
次に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。
<結晶性酸化チタン原料膜(膜1)の製造>
エチルセロソルブ10容量部、チタンテトライソプロポキシド5.07容量部を50ccのガラス容器に入れ、30℃に温度を保持しながらマグネティックスターラーで10分間攪拌した。次に、蒸留水0.31容量部、60質量%硝酸0.85容量部、及びエチルセロソルブ3.91gからなる混合液を滴下し、液温を30℃に保持しながら4時間攪拌することにより、焼成用溶液を調製した。この焼成用溶液には、チタンアルコキシドの加水分解物がTiOに換算して7.1質量%含まれている。
【0039】
続いて、焼成用溶液10容量部をエチルセロソルブ10容量部と混合及び攪拌することで希釈液を調製した。希釈液の固形分濃度は、TiOに換算して3.55質量%である。この希釈液をドライ厚みが50nmになるように、耐熱ガラス(商品名:パイレックスガラス、厚さ1mm、アセトン及びメタノールで脱脂したもの)上にスピンコートした後、400℃で2時間焼成することで、表2及び表3に示される結晶性酸化チタン原料膜(膜1)を得た。この結晶性酸化チタン原料膜(膜1)は、XRDによる分析の結果、アナターゼ型の結晶構造であった。
【0040】
(実施例1−1)
結晶性酸化チタン原料膜(膜1)に紫外線が含まれる光を照射した。光の照射に用いた機器の詳細は、以下のとおりである。
【0041】
使用機器名:スガ試験機株式会社製、(商品名)メタリングウェザーメーターM6T
光源:メタルハライドランプ
光学フィルター:石英ガラス/#500
照射光の波長領域:300〜400nm
実測した全波長の光量:1kW/m
表1には、300〜380nmにおける光量子束密度の算出例を一部省略して示している。図1には、上記光源の放射強度のスペクトルを示している。
【0042】
【表1】

放射強度Bは、図1に光源の放射スペクトルのグラフから読み取った値である。全波長(300〜400nm)における放射強度Bを積算し、放射強度の積算値Aを算出した結果、4364であった。この放射強度の積算値Aに対する各波長の放射強度の比率Cを表1に示している。
【0043】
上記の実測した全波長の光量と、比率Cとを上記式(1)に代入することで各波長の光量を算出した。
例えば、波長300nmでは、1(kW/m)×0.001833=0.001833(kW/m)となる。
【0044】
ここで、各波長の光子1個の持つエネルギー(J/個)は、以下の式(2)を用いて算出される。
E=hν=hc/λ ・・・(2)
E:各波長の光子1個の持つエネルギー(J)
h:プランク定数(6.626×10−34J・s)
ν:振動数(s−1
c:光速(299792458m/s)
λ:各波長(m)
例えば、波長300nmでは、6.626×10−34(J・s)×299792458(m/s)/300×10−9(m)=6.621×10−19(J)となる。
【0045】
更に、1nm単位の各波長の放射光子数は、以下の式(3)を用いて算出される。
各波長の放射光子数(個/s/cm)=各波長の光量(kW/m)/E(J/個) ・・・(3)
例えば、波長300nmにおける放射光子数は、0.001833(kW/m)/(6.621×10−19(J/個))=2.77×1014(個/s/cm)となる。
【0046】
表1に示される各波長の放射光子数を300〜380nmの波長領域において積算した結果、光量子束密度は、1.34×1017であった。
表2には、実施例1における光の照射条件を示している。
【0047】
(実施例1−2〜実施例1−6)
表2に示されるように、照射条件を変更した以外は、実施例1−1と同様にして結晶性酸化チタン原料膜(膜1)に紫外線を含む光を照射した。
【0048】
【表2】

(比較例1−1)
比較例1−1の結晶性酸化チタン膜(膜1)は、表3に示される温度及び湿度の環境下に24時間静置したものである。
【0049】
(比較例1−2)
表3に示されるように、比較例1−2では、結晶性酸化チタン膜(膜1)に、高圧水銀灯を用いて紫外線を含む光を照射した。
【0050】
(比較例1−3)
表3に示される条件で、結晶性酸化チタン膜(膜1)に紫外線を含む光を照射した。光の照射に用いた機器は、以下のとおりである。
【0051】
使用機器名:スガ試験機株式会社製、(商品名)メタリングウェザーメーターS300
光源:カーボンアーク放電
(比較例1−4)
表3に示される条件で、結晶性酸化チタン膜(膜1)に紫外線を含む光を照射した。光の照射に用いた光源は、ブラックライトブルー蛍光ランプ(BLB)である。
【0052】
【表3】

(結果)
表2及び表3には、各例における結晶性酸化チタンの平均結晶子径A2を示している。表2の“平均結晶子径の差”欄に示されるように、各実施例においては、結晶性酸化チタンの平均結晶子径A2は、結晶性酸化チタン原料の平均結晶子径A1よりも小さくなっていることが分かる。表3の“平均結晶子径の差”欄に示されるように、各比較例においては、結晶性酸化チタンの平均結晶子径A2は、結晶性酸化チタン原料の平均結晶子径A1と同じである。
【0053】
なお、本明細書でいう平均結晶子径は、透過型電子顕微鏡を用いた以下の方法により測定される。
<平均結晶子径の測定方法>
測定対象の結晶性酸化チタン原料又は結晶性酸化チタンの含まれる膜を切り出し、エポキシ樹脂を用いてダミー基板及び補強リングと接着、研磨、及びディンプリングし、最後にArイオンミリングを行い、透過型電子顕微鏡用の試料を作成した。透過型電子顕微鏡としては、日本電子株式会社製の電界放射型透過電子顕微鏡(JEM−2010F型、加速電圧200kV)を用いて、膜の断面を倍率400万倍、写真範囲(解析範囲)50nm×65nmの条件で撮影した。その写真範囲(解析範囲)に存在する結晶子の数(N)、及びそれら結晶子の輪郭における最長径の総和(S)を観測し、最長径の総和(S)を結晶子の数(N)で除した値を平均結晶子径(平均結晶子径=S/N)とした。
【0054】
<結晶性酸化チタン原料膜(膜2)の製造>
結晶性酸化チタン原料膜(膜2)は、アナターゼ型の結晶構造を有する結晶性酸化チタン原料の微粒子を非晶質シリカからなるバインダーを用いて膜状に形成したものである。
【0055】
まず、バインダーの原料となるシリコンアルコキシド加水分解縮合液の合成方法について説明する。
メチルアルコール223.5容量部、エチルシリケート40(コルコート製、エチルシリケート5量体相当品)の30容量部を500ccのPP容器に入れ、30℃に温度を保ちながらマグネティックスターラーで攪拌した。ここに、蒸留水45容量部と60質量%硝酸1.5容量部との混合液を添加し、液温を30℃に保持しながら6時間加水分解することで、シリコンアルコキシド加水分解縮合液を得た。シリコンアルコキシド加水分解縮合液の固形分濃度は、SiOに換算した濃度において4質量%であった。
【0056】
次に、得られたシリコンアルコキシド加水分解縮合液25容量部、及びイソプロピルアルコール67.5容量部を200ccPP容器に入れ、30℃に保持してマグネティックスターラーで均一に攪拌した。これに、結晶性酸化チタン原料としてのアナターゼ型酸化チタンゾル(石原産業製、STS−100、固形分濃度20質量%、硝酸分散型、pH1.2、平均粒径32nm、平均結晶子径5.0nm)を7.5容量部加えて、30℃に保持した状態で約1時間攪拌した。このようにして調製した結晶性酸化チタン原料とシリコンアルコキシド加水分解縮合液との混合液における固形分濃度は2.5質量%であり,TiO/SiOの質量比は60/40である。
【0057】
結晶性酸化チタン原料とシリコンアルコキシド加水分解縮合液との混合液をアセトン及びメタノールで脱脂した3mm厚の石英ガラス上に塗布した後、ドライ厚みが100nmになるようにスピンコートすることで、表4及び表5に示される結晶性酸化チタン原料膜(膜2)を得た。
【0058】
(実施例2−1〜実施例2−6)
表4に示される条件で、結晶性酸化チタン原料膜(膜2)に紫外線を含む光を照射した。光の照射に用いた機器は、実施例1−1と同じである。
【0059】
【表4】

(比較例2−1〜比較例2−4)
表5に示されるように、比較例2−1〜比較例2−4は、結晶性酸化チタン膜(膜1)を結晶性酸化チタン膜(膜2)に変更した以外は、それぞれ比較例1−1〜比較例1−4と同じである。
【0060】
【表5】

(結果)
表4及び表5には、各例における結晶性酸化チタンの平均結晶子径A2を示している。表4の“平均結晶子径の差”欄に示されるように、各実施例においては、結晶性酸化チタンの平均結晶子径A2は、結晶性酸化チタン原料の平均結晶子径A1よりも小さくなっていることが分かる。表5の“平均結晶子径の差”欄に示されるように、各比較例においては、結晶性酸化チタンの平均結晶子径A2は、結晶性酸化チタン原料の平均結晶子径A1と同じである。
【0061】
<結晶性酸化チタン原料膜(膜3)の製造>
結晶性酸化チタン原料膜(膜3)は、アナターゼ型の結晶構造を有する結晶性酸化チタン原料の微粒子を非晶質シリカからなるバインダーを用いて膜状に形成したものである。
【0062】
この結晶性酸化チタン原料膜(膜3)は、結晶性酸化チタン原料としてアナターゼ型酸化チタンゾル(住友化学株式会社製、PC−201、固形分濃度20質量%,硝酸分散型、pH1.0,平均粒径38nm,平均結晶子径6.9nm)を用いた。このようにアナターゼ型酸化チタンゾルを変更した以外は、上記結晶性酸化チタン原料膜(膜2)と同様にして表6及び表7に示される結晶性酸化チタン原料膜(膜3)を得た。
【0063】
(実施例3−1〜実施例3−7)
表6に示される条件で、結晶性酸化チタン原料膜(膜3)に紫外線を含む光を照射した。光の照射に用いた機器は、実施例1−1と同じである。
【0064】
【表6】

(比較例3−1〜比較例3−4)
表7に示されるように、比較例3−1〜比較例3−4は、結晶性酸化チタン膜(膜1)を結晶性酸化チタン膜(膜3)に変更した以外は、それぞれ比較例1−1〜比較例1−4と同じである。
【0065】
【表7】

(結果)
表6及び表7には、各例における結晶性酸化チタンの平均結晶子径A2を示している。表6の“平均結晶子径の差”欄に示されるように、各実施例においては、結晶性酸化チタンの平均結晶子径A2は、結晶性酸化チタン原料の平均結晶子径A1よりも小さくなっていることが分かる。表7の“平均結晶子径の差”欄に示されるように、各比較例においては、結晶性酸化チタンの平均結晶子径A2は、結晶性酸化チタン原料の平均結晶子径A1と同じである。
【0066】
<結晶性酸化チタン原料膜(膜4)の製造>
結晶性酸化チタン原料膜(膜4)は、ブルッカイト型の結晶構造を有する結晶性酸化チタン原料の微粒子を非晶質シリカからなるバインダーを用いて膜状に形成したものである。
【0067】
バインダーの原料となるシリコンアルコキシド加水分解縮合液は、<結晶性酸化チタン原料膜(膜2)の製造>に記載の方法と同様に合成した。
次に、得られたシリコンアルコキシド加水分解縮合液25容量部、及びイソプロピルアルコール65.0容量部を200ccPP容器に入れ、30℃に保持してマグネティックスターラーで均一に攪拌した。これに、結晶性酸化チタン原料としてのブルッカイト型酸化チタンゾル(昭和電工株式会社製、NTB−01、固形分濃度15質量%、塩酸分散型、pH4、平均粒径35nm、平均結晶子径8.7nm)を10容量部加えて、30℃に保持した状態で約1時間攪拌した。このようにして調製した結晶性酸化チタン原料とシリコンアルコキシド加水分解縮合液との混合液における固形分濃度は2.5質量%であり,TiO/SiOの質量比は60/40である。
【0068】
結晶性酸化チタン原料とシリコンアルコキシド加水分解縮合液との混合液をアセトン及びメタノールで脱脂した3mm厚の石英ガラス上に塗布した後、ドライ厚みが100nmになるようにスピンコートすることで、表8に示される結晶性酸化チタン原料膜(膜4)を得た。
【0069】
(実施例4−1及び実施例4−2)
表8に示される条件で、結晶性酸化チタン原料膜(膜4)に紫外線を含む光を照射した。光の照射に用いた機器は、実施例1−1と同じである。
【0070】
<結晶性酸化チタン原料膜(膜5)の製造>
表8に示される結晶性酸化チタン原料膜(膜5)は、焼成温度を500℃に変更した以外は、<結晶性酸化チタン原料膜(膜1)の製造>に記載の方法と同様に製造したものである。この結晶性酸化チタン原料膜(膜5)は、XRDによる分析の結果、アナターゼ型の結晶構造であった。
【0071】
(実施例5−1)
表8に示される条件で、結晶性酸化チタン原料膜(膜5)に紫外線を含む光を照射した。光の照射に用いた機器は、実施例1−1と同じである。
【0072】
【表8】

(結果)
表8には、各例における結晶性酸化チタンの平均結晶子径A2を示している。表8の“平均結晶子径の差”欄に示されるように、各実施例においては、結晶性酸化チタンの平均結晶子径A2は、結晶性酸化チタン原料の平均結晶子径A1よりも小さくなっていることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性酸化チタン原料に、300〜380nmの波長領域において光量子束密度が1×1017個/s/cm以上となる紫外線が含まれた光を照射することで前記結晶性酸化チタン原料の結晶子サイズを小さくすることを特徴とする結晶性酸化チタンの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−5999(P2012−5999A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−146541(P2010−146541)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【出願人】(000120010)宇部日東化成株式会社 (203)
【Fターム(参考)】