説明

結晶性銅カルコゲニドナノ粒子の水性製造方法、そのように製造されたナノ粒子、ならびにこれらのナノ粒子を組み込んだインクおよびコーテッド基板

本発明は、銅亜鉛スズ硫化物/セレン化物および銅スズ硫化物/セレン化物の有用な前駆体である金属カルコゲニドナノ粒子の水性製造方法に関する。さらに、本発明は、金属カルコゲニドナノ粒子からの結晶性粒子の製造方法、ならびに金属カルコゲニドナノ粒子および結晶性粒子の両方からのインクの調製方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、それらのそれぞれが2009年11月25日に出願された、そしてそれらのそれぞれがあらゆる目的のために本明細書の一部として全体をこの参照により援用される、米国仮特許出願第61/264,383号明細書、同第61/264,387号明細書、同第61/264,389号明細書、同第61/264,393号明細書、および同第61/264,404号明細書の、米国特許法第119条(e)項の下での優先権、および利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、銅亜鉛スズ硫化物/セレン化物および銅スズ硫化物/セレン化物の有用な前駆体である金属カルコゲニドナノ粒子の水性製造方法に関する。さらに、本発明は、金属カルコゲニドナノ粒子からの結晶性粒子の製造方法、ならびに金属カルコゲニドナノ粒子および結晶性粒子の両方からのインクの調製方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
粒子および層を含む、結晶性多元−金属カルコゲニド組成物は、半導体、導体、および熱電体としての使用を含む、触媒作用およびエレクトロニクスにおいて用途を有する、有用な材料である。
【0004】
非毒性の、かつ、豊富な元素のみを含有する結晶性多元−金属カルコゲニド組成物は、環境上持続可能な方法およびデバイスを開発する上で特に興味深い。銅スズ硫化物(Cu2SnS3または「CTS」)および銅亜鉛スズ硫化物(Cu2ZnSnS4または「CZTS」)は、このクラスの材料の特に有用な例である。CTSは、小バンドギャップ半導体としての、非線形材料としての、および光起電力セル材料の好適な候補としてのそれらの潜在的な用途のために興味深い、一般式IB2−IVA−VIA3で表される、化合物の群に属する。
【0005】
薄膜光起電力セルは、CdTeまたは銅インジウムガリウム硫化物/セレン化物(CIGS)などの半導体をエネルギー吸収体材料として典型的には使用する。カドミウムの毒性およびインジウムの制限された入手可能性のために、代替品が求められている。CZTSは、約1.5eVのバンドギャップエネルギーおよび大きい吸収係数(約104cm-1)を有し、有望なCIGS代替品となっている。
【0006】
CZTS薄膜の製造における課題は、結晶性多元−金属カルコゲニド組成物のフィルムを製造する際に克服されなければならない一般的な課題を例示するものである。CZTS薄膜を製造するための現行技法(たとえば、熱蒸着、スパッタリング、ハイブリッドスパッタ法、パルスレーザー堆積および電子ビーム蒸着)は、複雑な設備を必要とし、それ故高くつく傾向がある。電気化学析出は費用のかからない方法であるが、組成の非一様性および/または二次相の存在により、この方法で高品質CZTS薄膜を生み出すのが妨げられる。CZTS薄膜はまた、チオウレアを硫黄源として使用して、金属塩、典型的にはCuCl、ZnCl2、およびSnCl4を含有する溶液の噴霧熱分解によって製造することができる。この方法は、不十分なモルフォロジ、密度および粒度のフィルムをもたらす傾向がある。光化学堆積はまた、p−型CZTS薄膜を生み出すことが示されている。しかし、生成物の組成が十分には制御されず、水酸化物などの不純物の形成を回避することが困難である。
【0007】
有機アミンで安定化され、そして有機溶媒で処理されたCZTSナノ粒子の合成もまた開示されている。これらのナノ粒子の層は、標準コーティング技法によって基板上に堆積させられた。窒素および硫黄雰囲気中でのその後のアニーリングは、CZTSフィルムの形成につながる。しかし、CZTS薄膜の究極的な性能に影響を及ぼす、CZTS粉体中の元素のモル比を調整することは困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
調整可能な組成、サイズ、およびモルフォロジの、高品質の結晶性多元−金属カルコゲニド粒子およびフィルムを提供する方法が依然として必要とされている。水を溶媒として使用してこれらの粒子を製造することができる、低コストの環境にやさしい方法を開発することが望ましい。豊富なおよび非毒性の元素に基づくCTSおよびCZTSなどの組成物の粒子の形成方法が特に興味深い。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、銅塩、スズ塩、任意選択的に亜鉛塩、1つ以上の配位子、およびカルコゲニド源を反応させて結晶性銅スズ硫化物/セレン化物または結晶性銅亜鉛スズ硫化物/セレン化物組成物の有用な前駆体である金属カルコゲニドナノ粒子を製造するための水性方法を提供する。
【0010】
本発明の別の態様は、金属カルコゲニドナノ粒子からの結晶性多元−金属カルコゲニド粒子の製造方法を提供する。これらの粒子は、高い百分率の結晶性銅スズ硫化物/セレン化物または結晶性銅亜鉛スズ硫化物/セレン化物画分を含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】熱処理前の、例1におけるように製造された、合成されたままの銅カルコゲニドナノ粒子のTEM画像を描く。
【図2】例2に記載されるように、熱処理によって得られた結晶性銅亜鉛スズ硫化物粒子のTEM画像を描く。
【図3】図2の詳細を描く。
【図4】例1B、実験2におけるように製造された、熱処理によって得られたサブミクロン範囲平均最長寸法の結晶性銅亜鉛スズ硫化物粒子のTEM画像を描く。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書においては、用語「太陽電池」および「光起電力セル」は、そうでないと具体的に定義されない限り同意語である。これらの用語は、可視および近可視光エネルギーを使用に適した電気エネルギーに変換するための半導体を使用するデバイスを意味する。用語「バンドギャップエネルギー」、「光学バンドギャップ」、および「バンドギャップ」は、そうでないと具体的に定義されない限り同意語である。これらの用語は、一般に、電子を価電子帯から伝導帯に励起するために必要な最小エネルギーである、半導体材料中に電子−正孔ペアを生み出すために必要なエネルギーを意味する。
【0013】
本明細書においては、元素族はCAS表記法を用いて表される。本明細書において使用される場合、用語「カルコゲン」は、族VIA元素を意味し、用語「金属カルコゲニド」または「カルコゲニド」は、金属と族VIA元素とを含む材料を意味する。好適な族VIA元素としては、硫黄、セレンおよびテルルが挙げられる。金属カルコゲニドは、これらの化合物の多くが十分に地球太陽スペクトル内の光学バンドギャップ値を有するので、光起電用途向けの重要な候補材料である。
【0014】
本明細書においては用語「二元金属カルコゲニド」は、1つの金属を含むカルコゲニド組成物を意味する。用語「三元金属カルコゲニド」は、2つの金属を含むカルコゲニド組成物を意味する。用語「四元金属カルコゲニド」は3つの金属を含むカルコゲニド組成物を意味する。用語「多元−金属カルコゲニド」は、2つ以上の金属を含む組成物を意味し、三元および四元金属カルコゲニド組成物を包含する。
【0015】
本明細書においては用語「単一式の結晶性多元−金属カルコゲニド」は、具体的な多元−金属組成物の硫黄、セレンおよびテルルのカルコゲニドのすべての可能な組み合わせを包含する。たとえば、式IB2−IVA−VIA3は、Cu2SnS3、および(Cu,Ag)2SnTe3を含む、(Cu,Ag,Au)2(C,Si,Ge,Sn,Pb)(S,Se,Te)3のすべての可能な組み合わせを包含する単一式の結晶性多元−金属カルコゲニドを表す。(Cu,Ag)2SnTe3は、Cu2SnTe3、Ag2SnTe3、および(CuxAg1-x2SnTe3(ここで、0≦x≦1)を包含する。元素は、金属カルコゲニドナノ粒子前駆体混合物を製造するための反応混合物に使用される具体的な金属塩およびカルコゲン源によって決定されるであろう。(Cu,Ag,Au)1.80(C,Si,Ge,Sn,Pb)1.05(S,Se,Te)3などの端数の化学量論は、この用語によってさらに包含される。これらの材料はまた、少量のその他の元素を含有することができる。これは、銅スズ硫化物/セレン化物および銅亜鉛スズ硫化物/セレン化物について下により具体的に例示される。
【0016】
本明細書においては、用語「銅スズ硫化物」および「CTS」はCu2SnS3を意味し;「銅スズセレン化物」および「CTSe」はCu2SnSe3を意味し;「銅スズ硫化物/セレン化物」および「CTS/Se」は、Cu2SnS3、Cu2SnSe3、およびCu2SnSxSe3-x(ここで、0≦x≦3)を含む、Cu2Sn(S,Se)3のすべての可能な組み合わせを包含する。これらの用語「銅スズ硫化物」、「銅スズセレン化物」、「銅スズ硫化物/セレン化物」、「CTS」、「CTSe」および「CTS/Se」は、端数の化学量論、たとえば、Cu1.80Sn1.053をさらに包含する。すなわち、元素の化学量論は、厳密に2:1:3モル比から異なることができる。
【0017】
本明細書においては、用語銅亜鉛スズ硫化物および「CZTS」はCu2ZnSnS4を意味し、銅亜鉛スズセレン化物および「CZTSe」はCu2ZnSnSe4を意味し、銅亜鉛スズ硫化物/セレン化物および「CZTS/Se」は、Cu2ZnSnS4、Cu2ZnSnSe4、およびCu2ZnSnSxSe4-x(ここで、0≦x≦4)を含む、Cu2ZnSn(S,Se)4のすべての可能な組み合わせを包含する。用語「CZTS」、「CZTSe」、および「CZTS/Se」は、端数の化学量論の銅亜鉛スズ硫化物/セレン化物半導体、たとえば、Cu1.94Zn0.63Sn1.34をさらに包含する。すなわち、元素の化学量論は、厳密には2:1:1:4モル比から異なり得る。CTS/SeおよびCZTS/Seと表される材料はまた、ナトリウムなどの少量のその他の元素を含有してもよい。CZTSは、ケステライト構造で結晶化し、本明細書において使用される場合、用語「ケステライト」はこの結晶構造を意味する。
【0018】
用語「ナノ粒子」は、約1nm〜約1000nm、または約5nm〜約500nm、または約10nm〜約100nm、または約1nm〜約200nm、または約1nm〜約100nm、または約1nm〜約50nm、または約1nm〜約25nmの平均最長寸法で特徴付けられるカルコゲニド含有粒子を含むことを意図される。ナノ粒子は、多面体、球体、棒、ワイヤー、チューブ、フレーク、ウィスカー、リング、ディスク、またはプリズムを含む、様々な形状を有することができる。そうでないと明記されない限り、ナノ粒子は、分散助剤としての機能を果たすことができる「表面コーティング」を有することができる。本明細書においては「キャッピング基」または「キャッピング剤」と言われてもよい、表面コーティングは、ナノ粒子に物理的に吸着され得るかまたはナノ粒子に化学的に結合することができる。この表面コーティングはまた溶媒であることができるか、または反応混合物に添加される1つ以上の配位子を含むことがきる。無機ナノ粒子の表面コーティング方法は、当該技術分野においてよく知られている。本明細書の全体にわたって、ナノ粒子の重量%についてのすべての言及は、この表面コーティングを含むことを意図される。
【0019】
本明細書において用語「インク」、「ペースト」、および「分散系」は、そうでないと具体的に定義されない限り、同義語である。
【0020】
金属カルコゲニドナノ粒子前駆体混合物
結晶性多元−金属カルコゲニド組成物の製造方法が本明細書に記載される。本方法は、一般に入手可能な前駆体を使用し、適度の温度および拡張可能な濃度で動作し、化学量論の調整を可能にする。
【0021】
本発明の一態様は、
(a)2つ以上の金属塩および1つ以上の配位子を含む第1水性溶液を提供する工程と;
(b)任意選択的に、pH調整物質を添加して第2水性溶液を形成する工程と;
(c)第1または第2水性溶液をカルコゲン源と組み合わせて反応混合物を提供する工程と;
(d)反応混合物を撹拌しておよび任意選択的に加熱して金属カルコゲニドナノ粒子を生成する工程と
を含む方法である。
【0022】
一実施形態においては、本方法は、金属カルコゲニドナノ粒子を反応混合物から分離する工程をさらに含む。別の実施形態においては、本方法は、ナノ粒子の表面を清浄にする工程をさらに含む。別の実施形態においては、本方法は、ナノ粒子の表面をキャッピング基と反応させる工程をさらに含む。
【0023】
金属塩。好適な金属塩は、族VIII、IB、IIB、IIIA、IVA、およびVA元素からなる群から選択される金属を含む。特に、好適な金属塩は、Cu、Ag、Zn、Cd、Al、Ga、In、Si、Ge、およびSnからなる群から選択される金属を含む。所望の結晶性多元−金属カルコゲニド組成物における金属のモル比は、金属塩のモル比を決定するための手引きを提供する。しかし、反応剤化学量論のある範囲は同じ結晶性多元−金属カルコゲニド組成物の生成につながり得るので、反応剤の化学量論には典型的には柔軟性がある。たとえば、結晶性IB2−IIB−IVA−VIA4およびIB2−IVA−VIA3組成物の前駆体であるナノ粒子混合物の合成において、有用なモル比としては、約0.4〜約5、または約1〜約3、または約1.5〜約2.75の金属IB対金属IVAが挙げられる。金属IIBが存在する場合、金属IB対金属IIBのモル比は、約0.4〜約5、または約1〜約3、およびまたは約1.5〜約2.75であり;金属IIB対金属IVAのモル比は、約0.3〜約5、または約0.5〜約3、または約0.75〜約2である。
【0024】
好適な金属塩は、水および/または酸に可溶である。広範囲の金属塩に関する溶解性情報は、CRC Handbook of Chemistry and Physics,90th Edition;Lide,David R.,Ed;CRC Press:Florida,2009−2010;Chapter 4;43−101ページにおいて利用可能である。これらの金属塩の対イオンは、金属にイオン結合または共有結合することができる。たとえば、有用な対イオンとしては、ハライド、スルフェート、ナイトレート、アセテート、アセチルアセトネート、パークロレート、ハイポクロライト、シアニド、ヒドロキシド、オキサレート、およびホスフェート対イオンが挙げられる。
【0025】
配位子。理論に制約されることなく、反応混合物中に存在する1つ以上の配位子は、金属塩と錯体を形成するのに役割を果たし、そしてまた生じた金属カルコゲニドナノ粒子のための分散剤またはキャッピング基としての機能を果たす可能性があると考えられる。好適な配位子としては、アミン、チオール、セレノール、有機酸、およびそれらのイオンが挙げられる。特に、好適な配位子としては、アンモニア、メルカプト酢酸、エタノールアミン(EA)、ジエタノールアミン(DEA)、トリエタノールアミン(TEA)、トリメタノールアミン(TMA)、ヘキサメチレンテトラミン(HMT)、エチレンジアミン(ED)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ニトリロトリアセテート、およびクエン酸ナトリウムが挙げられる。アンモニアの有用な源としては、アンモニウム塩、たとえば、硝酸アンモニウムが挙げられる。アンモニア(またはアンモニウム塩)は、メルカプト酢酸、エタノールアミン(EA)、ジエタノールアミン(DEA)、トリエタノールアミン(TEA)、トリメタノールアミン(TMA)、ヘキサメチレンテトラミン(HMT)、エチレンジアミン(ED)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ニトリロトリアセテート、およびクエン酸ナトリウムなどの、1つ以上の追加の配位子と組み合わせて使用することができる。
【0026】
pH調整物質。pH調整物質を、pHを約4〜約0に;または約2〜約0に調整するために反応混合物に任意選択的に添加することができる。有用なpH調整物質は酸および塩基である。好適なpH調整物質としては、プロトン酸、たとえば、硫酸、硝酸および塩酸が挙げられる。あるいは、pH調整物質を、pHを約10〜約14に;または約12〜約14に調整するために使用することができる。この方式のために、好適なpH調整物質としては、塩基が挙げられる。
【0027】
カルコゲン源。理論に制約されることなく、本合成に使用されるカルコゲンまたはカルコゲニド源は反応混合物中で硫化物またはセレン化物イオンをゆっくり発生させると考えられる。好適なカルコゲン源としては、硫化物−およびチオン−含有化合物ならびにそれらのセレン化物およびセレノン相当品が挙げられる。チオン−およびセレノン−含有化合物は、塩基性または酸性条件下にカルコゲニドを放出する能力を有する。特に、好適なカルコゲン源としては、アルカリ金属の硫化物およびセレン化物、ならびにチオン−およびセレノン−含有化合物、たとえば、硫化ナトリウム、セレン化ナトリウム、チオアセトアミド、セレノアセトアミド、チオ尿素およびセレノ尿素が挙げられる。カルコゲン源対金属塩の総モル数のモル比は、少なくとも約1;または少なくとも約2;または少なくとも約4;または少なくとも約8である。
【0028】
濃度。金属カルコゲニドナノ粒子を製造するための本明細書に記載される製造は、比較的高い濃度で行うことができる。反応混合物中の総合金属塩の有用な濃度は、約0.01超;または約0.02超;または約0.03超;または約0.04超;または約0.05モル濃度超である。
【0029】
撹拌および加熱。反応混合物を撹拌するおよび任意選択的に加熱すると、金属カルコゲニドナノ粒子を与える。好適な加熱温度は、約40℃〜約100℃、または約50℃〜約100℃;または約60〜約90℃;または約65〜約85℃である。撹拌は、かき混ぜ、超音波処理、および振盪を含む、標準方法によって達成することができる。有用な加熱時間は、約10分から約48時間まで;または約24時間まで;または約12時間まで;または約8時間まで;または約4時間までである。
【0030】
副生物からの分離。生じた金属カルコゲニドナノ粒子は、単離金属カルコゲニドナノ粒子を与えるために反応副生物から分離することができる。この分離は、遠心分離、洗浄、溶媒分離、濾過、およびそれらの組み合わせを含む、標準方法によって達成することができる。分離の有用な方法は、遠心分離、引き続く洗浄である。粒子は、任意選択的に乾燥させることができる。乾燥のための有用な温度範囲は、約20℃〜約200℃である。乾燥プロセスのための好適な雰囲気としては、不活性雰囲気、空気、または真空が挙げられる。
【0031】
ナノ粒子キャラクタリゼーションおよび組成物。金属カルコゲニドナノ粒子は、約1nm〜約1000nm、または約5nm〜約500nm、または約10nm〜約100nm、または約1nm〜約200nm、または約1nm〜約100nm、または約1nm〜約50nm、または約1nm〜約25nmの平均最長寸法で特徴付けられる。金属カルコゲニドナノ粒子は、各金属の二元金属カルコゲニドおよび各金属の多元−金属カルコゲニドからなる群から選択される2つ以上の組成物を含む。たとえば、金属1および金属2として本明細書において表される、2つの金属を含む反応混合物については、生じた金属カルコゲニドナノ粒子は、金属1カルコゲニド、金属2カルコゲニド、および金属1金属2カルコゲニドからなる群から選択される2つ以上の組成物を含むことができる。金属1、金属2および金属3として本明細書において表される、3つの金属を含む反応混合物については、生じた金属カルコゲニドナノ粒子は、金属1カルコゲニド、金属2カルコゲニド、金属3カルコゲニド、金属1金属2カルコゲニド、金属1金属3カルコゲニド、金属2金属3カルコゲニド、および金属1金属2金属3カルコゲニドからなる群から選択される2つ以上の組成物を含むことができる。類似の説明は、より高次の多元−金属カルコゲニド組成物の金属カルコゲニドナノ粒子前駆体に対しても適用される。金属は、2つ以上の酸化状態で存在することができる。また、硫化物とセレン化物との組み合わせなどの、2つ以上のカルコゲニドも存在することができる。
【0032】
結晶性多元−金属カルコゲニド粒子
本発明の別の態様は、
(a)2つ以上の金属塩および1つ以上の配位子を含む第1水性溶液を提供する工程と;
(b)任意選択的に、pH調整物質を添加して第2水性溶液を形成する工程と;
(c)第1または第2水性溶液をカルコゲン源と組み合わせて反応混合物を提供する工程と;
(d)反応混合物を撹拌しておよび任意選択的に加熱して金属カルコゲニドナノ粒子を生成する工程と;
(e)金属カルコゲニドナノ粒子を反応副生物から分離する工程と;
(f)金属カルコゲニドナノ粒子を加熱して、粒子の重量を基準として、約80重量%〜100重量%の単一式の結晶性多元−金属カルコゲニド画分を含む結晶性多元−金属カルコゲニド粒子を提供する工程と
を含む方法である。
【0033】
本発明の別の態様は、粒子の重量を基準として、約80重量%〜100重量%の単一式の結晶性多元−金属カルコゲニド画分を含む結晶性多元−金属カルコゲニド粒子であって、
(a)2つ以上の金属塩および1つ以上の配位子を含む第1水性溶液を提供する工程と;
(b)任意選択的に、pH調整物質を添加して第2水性溶液を形成する工程と;
(c)第1または第2水性溶液をカルコゲン源と組み合わせて反応混合物を提供する工程と;
(d)反応混合物を撹拌しておよび任意選択的に加熱して金属カルコゲニドナノ粒子を生成する工程と;
(e)金属カルコゲニドナノ粒子を反応副生物から分離する工程と;
(f)金属カルコゲニドナノ粒子を加熱して結晶性多元−金属カルコゲニド粒子を提供する工程と
を含む方法によって製造される結晶性多元−金属粒子に関する。
【0034】
工程(a)〜(e)ならびに組成物およびそれらの成分に関する説明および好ましさは、上にリストされたのと同じものである。
【0035】
一実施形態は、金属カルコゲニドナノ粒子の表面を清浄にする工程をさらに含む。別の実施形態は、金属カルコゲニドナノ粒子の表面をキャッピング基と反応させる工程をさらに含む。さらに別の実施形態は、結晶性多元−金属カルコゲニド粒子の表面を清浄にする工程を含む。別の実施形態は、結晶性多元−金属カルコゲニド粒子の表面をキャッピング基と反応させる工程を含む。
【0036】
加熱。工程(f)において、金属カルコゲニドナノ粒子は、粒子の重量を基準として、約80重量%〜100重量%の単一式の結晶性多元−金属カルコゲニド画分を含む結晶性多元−金属カルコゲニド粒子を与えるために約300℃〜約800℃、または約350℃〜約650℃、または約375℃〜約525℃の温度に典型的には加熱される。この加熱工程は、粒子中に存在するあらゆる水および/または有機種の実質的にすべてを除去するために役立つ。この加熱工程はまた、金属カルコゲニドナノ粒子の固体状態反応による単一式の結晶性多元−金属カルコゲニド画分の形成を容易にする。
【0037】
工程(f)の加熱は、熱処理を含む当該技術分野において公知の標準方法によって達成することができる。加熱は、不活性雰囲気、たとえば、N2またはArガスの雰囲気中で実施されてもよい。あるいは、この雰囲気は、ガルコゲン源をさらに含むことができる。一実施形態においては、フィルムは、硫黄に富む環境、たとえば、硫黄/N2環境中で加熱される。たとえば、加熱がチューブ炉で実施される場合、硫黄に富む雰囲気を作り出すために、窒素を、硫黄上方を流れるキャリアガスとして使用することができる。一実施形態においては、フィルムは、セレンに富む環境、たとえば、Se/N2環境中で加熱される。たとえば、加熱がチューブ炉で実施される場合、セレンに富む雰囲気を作り出すために、窒素を、セレン上方を流れるキャリアガスとして使用することができる。別の実施形態においては、フィルムは、硫化水素に富む雰囲気中で加熱される。たとえば、H2Sおよび窒素は、H2Sに富む雰囲気を作り出すために1:9の容積比で混合される。
【0038】
組成物。結晶性多元−金属カルコゲニド粒子の純度は、それらが単一式の結晶性多元−金属カルコゲニド画分から大部分はなるので高い。存在する場合、不純物は、幾らかの非晶質組成物および少量のその他の結晶性画分を含む。たとえば、TEMによって、幾つかの粒子は、表面上に非晶質カーボンの非常に薄い層がある結晶性画分から本質的になることが観察された。様々な実施形態においては、結晶性多元−金属カルコゲニド粒子は、粒子の重量を基準として、約80重量%〜100重量%;または約85重量%〜100重量%;または約90重量%〜100重量%;または約95重量%〜100重量%;または約98重量%〜100重量%;または約99重量%〜100重量%の、単一式の結晶性多元−金属カルコゲニド画分を含む。幾つかの実施形態においては、結晶性多元−金属カルコゲニド粒子は、単一式の結晶性多元−金属カルコゲニド画分から本質的になる。
【0039】
様々な実施形態においては、単一式の結晶性多元−金属カルコゲニド画分は、族VIII、IB、IIB、IIIA、IVA、およびVA元素からなる群から選択される金属を含む。特に、好適な金属塩は、Cu、Ag、Zn、Cd、Al、Ga、In、Si、Ge、およびSnからなる群から選択される金属を含む。
【0040】
結晶性多元−金属カルコゲニド粒子は、電気的に、磁気的に、触媒的におよび/または光学的に機能性の粒子を含む。粒子は、半導性;抵抗性;誘電性;導電性;発光性;電子生成性;正孔生成性;強誘電性;熱電性、圧電性;フェライト性;電気−光学性;磁性;光吸収性、光反射性、光回折性、光散乱性、光分散性、光屈折性、または光拡散性であっても;および/または屈折率を修正できるものであってもよい。触媒活性、熱電気特性、半導体特性および導電特性が特に興味深い。特に興味深い単一式の結晶性多元−金属カルコゲニドとしては、結晶性IB−IIIA−VIA、IB−IIB−IVA−VIAおよびIB−IVA−VIA組成物、ならびに結晶性IB−IIIA−VIA2、IB2−IIB−IVA−VIA4およびIB2−IVA−VIA3組成物からなる群から選択されるものが挙げられる。
【0041】
キャラクタリゼーション。結晶性多元−金属カルコゲニド粒子は、約1nm〜約10ミクロン;または約1nm〜約2000nm;または約1nm〜約1000nm;または約1nm〜約500nm;または約5nm〜約400nm;または約5nm〜約200nmの平均最長寸法で特徴付けられる。この平均最長寸法は多くの場合、金属カルコゲニドナノ粒子が工程(f)において加熱される時間に依存する。典型的には、より長い加熱時間は、より大きい平均最長寸法をもたらす。結晶性多元−金属カルコゲニド粒子は、形状およびアスペクト比でさらに特徴付けられる。これらの粒子は多くの場合、約4未満;または約3未満;または約2未満のアスペクト比の多面体形状で特徴付けられる。幾つかの実施形態においては、結晶性多元−金属カルコゲニド粒子は、約1nm〜約2000nm;または約1nm〜約1000nm;または約1nm〜約500nm;または約5nm〜約400nm;または約5nm〜約200nmのサイズ分布でさらに特徴付けられる。
【0042】
別の実施形態は、結晶性多元−金属カルコゲニド粒子を流体媒体と組み合わせてインクを提供する工程をさらに含む。
【0043】
金属カルコゲニドナノ粒子のおよび多元−金属粒子のインク
本発明の別の態様は、
(1)粒子の重量を基準として、約80重量%〜100重量%の単一式の結晶性多元−金属カルコゲニド画分を含む約2重量%〜約80重量%の結晶性多元−金属カルコゲニド粒子であって、
(a)2つ以上の金属塩および1つ以上の配位子を含む第1水性溶液を提供する工程と;
(b)任意選択的に、pH調整物質を添加して第2水性溶液を形成する工程と;
(c)第1または第2水性溶液をカルコゲン源と組み合わせて反応混合物を提供する工程と;
(d)反応混合物を撹拌しておよび任意選択的に加熱して金属カルコゲニドナノ粒子を生成する工程と;
(e)金属カルコゲニドナノ粒子を反応副生物から分離する工程と;
(f)金属カルコゲニドナノ粒子を加熱して結晶性多元−金属カルコゲニド粒子を提供する工程と
を含む方法によって製造される結晶性粒子
を含み、そして
(2)約20〜約98重量%の流体媒体
を含むインクに関する。
【0044】
工程(a)〜(f)ならびに組成およびそれらの成分に関する説明は、上にリストされたのと同じものである。
【0045】
一実施形態は、金属カルコゲニドナノ粒子の表面を清浄にする工程をさらに含む。別の実施形態は、金属カルコゲニドナノ粒子の表面をキャッピング基と反応させる工程をさらに含む。さらに別の実施形態は、結晶性多元−金属カルコゲニド粒子の表面を清浄にする工程を含む。別の実施形態は、結晶性多元−金属カルコゲニド粒子の表面をキャッピング基と反応させる工程を含む。
【0046】
本発明の別の実施形態は、金属カルコゲニドナノ粒子を流体媒体と組み合わせてインクを提供する工程を含む。本発明のさらに別の実施形態は、結晶性多元−金属カルコゲニド粒子を流体媒体と組み合わせてインクを提供する工程を含む。
【0047】
流体媒体。流体媒体は、金属カルコゲニドナノ粒子および/または結晶性多元−金属カルコゲニド粒子のためのキャリアビヒクルとしての機能を果たす。インクは、約2重量%〜約80重量%;または約5重量%〜約50重量%;または約5重量%〜約30重量%;または約5重量%〜約20重量%の金属カルコゲニドナノ粒子および/または結晶性多元−金属カルコゲニド粒子、ならびに約20重量%〜約98重量%;または約50重量%〜約95重量%;または約70重量%〜約95重量%;または約80重量%〜約95重量%の流体媒体を含む。
【0048】
流体媒体は、水、芳香族化合物、複素環式芳香族化合物、アルカン、ニトリル、エーテル、ケトン、エステル、アセテート、アミド、アミン、チオール、カルボン酸、有機ハロゲン化物、およびアルコールからなる群から選択される1つ以上の液体を含む。好適な液体としては、水、トルエン、キシレン、メシチレン、ピリジン、2−ピコリン、3−ピコリン、3,5−ルチジン、5−t−ブチルピリジン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、2,2,4−トリメチルペンタン、アセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、ジメトキシエタン、エチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、アセトン、2−ペンタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、テトラメチルエチレンジアミン、3−メトキシプロピルアミン、ジメチルアミノエタノール、オレイルアミン、トリエチルアミン、1−オクタンチオール、1−デカンチオール、1−ドデカンチオール、メルカプトエタノール、チオグリコール酸、オレイン酸、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、モノテルペンアルコール(アルファ−、ベータ−テルピネオール、または異性体アルファ、ベータ、およびガンマ−テルピネオールの組み合わせ)ならびに2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート(Texanol)が挙げられる。
【0049】
ピリジン、2−ピコリン、3−ピコリン、3,5−ルチジン、5−t−ブチルピリジン、アセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、テトラメチルエチレンジアミン、3−メトキシプロピルアミン、ジメチルアミノエタノール、オレイルアミン、トリエチルアミン、1−オクタンチオール、1−デカンチオール、1−ドデカンチオール、メルカプトエタノール、チオグリコール酸、オレイン酸、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、および2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート(Texanol)などの化合物は、粒子のためのキャリアビヒクルであるだけでなく、分散剤またはキャッピング基としての機能を果たすことができる。
【0050】
添加剤。インクは、約20重量%以下;または約10重量%以下;または約5重量%以下;または約2重量%以下;または約1重量%以下の分散剤、界面活性剤、バインダー、架橋剤、乳化剤、消泡剤、可塑剤、乾燥剤、充填剤、増量剤、増粘剤、フィルム調整剤、酸化防止剤、フロー剤、均染剤、配位子、キャッピング基、元素カルコゲン、ドーパント、および腐食防止剤を含む1つ以上の添加剤をさらに含んでもよい。
【0051】
好適なバインダーとしては、線状、分岐、櫛/ブラシ、星形、超分岐または樹木状構造のポリマーおよびオリゴマー、そして約400℃;または約350℃;または約250℃;または約200℃より下の分解温度のものが挙げられる。好適なポリマーおよびオリゴマーとしては、ポリエーテル;ポリラクチド;ポリカーボネート;ポリ[3−ヒドロキシ酪酸];ポリメタクリレート;ポリ(メタクリル)コポリマー;ポリ(メタクリル酸);ポリ(エチレングリコール);ポリ(乳酸);ポリ(DL−ラクチド/グリコリド);ポリ(プロピレンカーボネート);およびポリ(エチレンカーボネート)のホモポリマーおよびコポリマーが挙げられる。存在する場合、ポリマーまたはオリゴマーバインダーは、インクの20重量%未満、または10重量%未満、または5重量%未満、または2重量%未満、または1重量%未満である。
【0052】
好適な界面活性剤としては、シロキシ−、フルオリル−、アルキル−、およびアルキニル−置換界面活性剤が挙げられる。選択は、観察されるコーティングおよび分散系品質ならびに基板への所望の接着性に典型的には基づく。好適な界面活性剤としては、Byk(登録商標)(Byk Chemie)、Zonyl(登録商標)(DuPont)、Triton(登録商標)(Dow)、Surynol(登録商標)(Air Products)、およびDynol(登録商標)(Air Products)界面活性剤が挙げられる。
【0053】
好適なドーパントとしては、金属カチオン(たとえば、ナトリウムイオン)および2成分半導体が挙げられる。存在する場合、ドーパントは典型的には、インクの0.1重量%〜10重量%である。
【0054】
存在する場合、元素カルコゲン添加物は典型的には、インクの0.1重量%〜10重量%である。
【0055】
好適な配位子は、上にリストされたものから選択される。好適な分散剤としては、ポリビニルピロリドン、ポリカルボキシレート、ポリホスフェート、ポリアミン、ポリエチレングリコール、ならびにシステインおよび/またヒスチジン残基を含むペプチドが挙げられる。好適なキャッピング基としては、ホスフィンオキシド;アミン;チオール;セレノール;有機酸、およびそれらのイオンが挙げられる。
【0056】
ナノ粒子のおよび結晶性粒子の層
本発明の一態様は、
(a)2つ以上の金属塩および1つ以上の配位子を含む第1水性溶液を提供する工程と;
(b)任意選択的に、pH調整物質を添加して第2水性溶液を形成する工程と;
(c)第1または第2水性溶液をカルコゲン源と組み合わせて反応混合物を提供する工程と;
(d)反応混合物を撹拌しておよび任意選択的に加熱して金属カルコゲニドナノ粒子を生成する工程と;
(e)金属カルコゲニドナノ粒子を反応副生物から分離する工程と;
(f)任意選択的に、金属カルコゲニドナノ粒子を流体媒体と組み合わせてインクを提供する工程と;
(g)金属カルコゲニドナノ粒子を基板上に堆積させて金属カルコゲニドナノ粒子層を基板上に提供する工程と;
(h)金属カルコゲニドナノ粒子層をアニール処理して結晶性多元−金属カルコゲニド層を提供する工程と
を含む方法である。
【0057】
本発明の別の態様は、層状並びで:
(1)ベースフィルム;
(2)任意選択的に、導電性コーティング;および
(3)1つ以上の層を含むフィルムであって、1つ以上の層が、層の重量を基準として、約80重量%〜100重量%の、
(a)2つ以上の金属塩および1つ以上の配位子を含む第1水性溶液を提供する工程と;
(b)任意選択的に、pH調整物質を添加して第2水性溶液を形成する工程と;
(c)第1または第2水性溶液をカルコゲン源と組み合わせて反応混合物を提供する工程と;
(d)反応混合物を撹拌しておよび任意選択的に加熱して金属カルコゲニドナノ粒子を生成する工程と;
(e)金属カルコゲニドナノ粒子を反応副生物から分離する工程と;
(f)任意選択的に、金属カルコゲニドナノ粒子を流体媒体と組み合わせてインクを提供する工程と;
(g)金属カルコゲニドナノ粒子を基板上に堆積させて金属カルコゲニドナノ粒子層を基板上に提供する工程と;
(h)金属カルコゲニドナノ粒子層をアニール処理する工程と
を含む方法によって製造される単一式の結晶性多元−金属カルコゲニド画分を含むフィルム
を含む多層構造である。
【0058】
工程(a)〜(f)ならびに組成物およびそれらの成分に関する説明は、上にリストされたのと同じものである。
【0059】
一実施形態は、金属カルコゲニドナノ粒子の表面を清浄にする工程をさらに含む。別の実施形態は、金属カルコゲニドナノ粒子の表面をキャッピング基と反応させる工程をさらに含む。さらに別の実施形態は、結晶性多元−金属カルコゲニド粒子の表面を清浄にする工程を含む。別の実施形態は、結晶性多元−金属カルコゲニド粒子の表面をキャッピング基と反応させる工程を含む。別の実施形態は、金属カルコゲニドナノ粒子層の表面を清浄にする工程を含む。
【0060】
金属カルコゲニドナノ粒子は、表面上に粉体として堆積させることができるが、一様な厚さの薄膜を形成するという目的のためには、好ましい方式は、工程(f)におけるように金属カルコゲニドナノ粒子を流体媒体と組み合わせてインクを提供することである。
【0061】
本発明の別の実施形態は、
(a)結晶性多元−金属カルコゲニド粒子のインクを基板上に堆積させる工程と;
(b)流体媒体を除去して粒子−コーテッド基板を提供する工程であって;基板が層状並びで:
(i)ベースフィルム;および
(ii)任意選択的に、導電性コーティング
を含む工程と
を含む方法である。
【0062】
一実施形態においては、この方法は、粒子−コーテッド基板を加熱して基板にアニール処理コーティングを提供する工程であって、アニール処理コーティングが結晶性単一式の多元−金属カルコゲニド画分から本質的になる工程をさらに含む。
【0063】
堆積。金属カルコゲニドナノ粒子のおよび結晶性多元−金属カルコゲニド粒子のインクは、幾つかの従来型コーティング技法、たとえば、スピン−コーティング、ドクターブレードコーティング、吹き付け、浸漬コーティング、ロッド−コーティング、ドロップ−キャストコーティング、湿式コーティング、印刷、ローラーコーティング、スロット−ダイコーティング、マイヤーバー(meyerbar)コーティング、キャピラリーコーティング、インクジェット印刷、またはドローダウンコーティングのいずれかによって基板の表面上に堆積させられる。約30重量%より上の固形分の濃度では、分散系(インク)の粘度およびレオロジー特性はペースト様である。それ故、スクリーン印刷などのペースト−コーティング法を利用することができる。流体媒体は、コーテッド基板を形成するために空気中または真空中で乾燥させることによって除去することができる。乾燥工程は、別個の異なった工程であることができるか、または基板および前駆体インクがアニーリング工程で加熱されるときに起こることができる。
【0064】
基板。基板は剛性または可撓性であることができる。一実施形態においては、基板は、層状並びで(i)ベースフィルム;および(ii)任意選択的に、導電性コーティングを含む。ベースフィルムは、ガラス、金属、およびポリマーフィルムからなる群から選択される。好適な導電性コーティングとしては、金属導体、透明な導電性酸化物、および有機導体が挙げられる。モリブデン−コーテッドソーダ石灰ガラス、モリブデン−コーテッドポリイミドフィルム、またはナトリウム化合物(たとえば、NaF、Na2S、またはNa2Se)の薄層付きのモリブデン−コーテッドポリイミドフィルムの基板が特に興味深い。その他の好適な基板としては、ソーラーガラス、低鉄ガラス、グリーンガラス、スチール、ステンレススチール、アルミニウム、セラミックス、金属化セラミックプレート、金属化ポリマープレート、および金属化ガラスプレートが挙げられる。
【0065】
アニーリング。金属カルコゲニドナノ粒子層および結晶性多元−金属カルコゲニド粒子層は、層の重量を基準として、約80重量%〜100重量%の単一式の結晶性多元−金属カルコゲニド画分を含む結晶性多元−金属カルコゲニド層を提供するためにアニール処理される。ナノ粒子の層は、微小粒子の相当する層より低い温度で固体層を典型的には加熱する。これは、一つには、粒子間のより大きい表面積接触のためである。幾つかの実施形態においては、コーテッド基板は、結晶性多元−金属カルコゲニド層を基板上に得るために約300℃〜約800℃、または約350℃〜約650℃、または約375℃〜約525℃の温度で加熱される。アニーリング工程は、層中に存在するあらゆる水および/または有機種の実質的にすべてを除去するのに役立つ。アニーリング工程はまた、金属カルコゲニドナノ粒子の固体状態反応によって結晶性多元−金属カルコゲニド薄層の形成を容易にする。
【0066】
アニーリング工程としては、熱処理、パルス熱処理、レーザービーム露光、IRランプによる加熱、電子ビーム露光、およびそれらの組み合わせを挙げることができる。アニーリング温度は、ある特定の平坦域温度に維持されることなくある温度範囲内で振動するように調節することができる。この技法は時々、「迅速熱アニーリング」または「RTA」と言われる。
【0067】
アニーリングは、不活性雰囲気、たとえば、N2またはArガスの雰囲気中で実施することができる。あるいは、この雰囲気は、カルコゲン源をさらに含むことができる。
【0068】
一実施形態においては、金属カルコゲニドナノ粒子前駆体インクでのコーティングとアニーリングとの多重サイクルが、より厚い結晶性多元−金属カルコゲニド層を基板上に形成するために実施される。
【0069】
フィルム厚さ。アニール処理フィルムは、流体媒体およびその他の有機材料が処理中に除去されてしまうので、湿潤前駆体層のそれに対して増加した密度および/または減少した厚さを典型的には有する。一実施形態においては、フィルムは、厚さが約0.1ミクロン〜約5ミクロン、または約0.3ミクロン〜約3ミクロン、または約0.5ミクロン〜約2ミクロンである。
【0070】
組成物。結晶性多元−金属カルコゲニド層の純度は、それが単一式の結晶性多元−金属カルコゲニド画分から大部分はなるので高い。存在する場合、不純物は、幾らかの非晶質組成物および少量のその他の結晶性画分を含む。組成物は、XRD、XAFS、およびESCAを含む、様々な分析技法によって測定されてもよい。様々な実施形態においては、結晶性多元−金属カルコゲニド層の組成物は、層の重量を基準として、約80重量%〜100重量%;または約85重量%〜100重量%;または約90重量%〜100重量%;または約95重量%〜100重量%;または約99重量%〜100重量%の、単一式の結晶性多元−金属カルコゲニド画分を含む。別の実施形態においては、結晶性多元−金属カルコゲニド層は、単一式の結晶性多元−金属カルコゲニド画分から本質的になる。
【0071】
様々な実施形態においては、単一式の結晶性多元−金属カルコゲニド画分は、族VIII、IB、IIB、IIIA、IVA、およびVA元素からなる群から選択される金属を含む。単一式の結晶性多元−金属カルコゲニド画分のための好適な金属としては、Cu、Ag、Zn、Cd、Al、Ga、In、Si、Ge、およびSnが挙げられる。
【0072】
結晶性多元−金属カルコゲニド層は、半導性;抵抗性;誘電性;導電性;発光性;電子生成性;正孔生成性;強誘電性;熱電性、圧電性;フェライト性;電気−光学性;磁性;光吸収性、光反射性、光回折性、光散乱性、光分散性、光屈折性、または光拡散性;および屈折率修正性の結晶性多元−金属カルコゲニド画分を含む、電気的に、磁気的に、触媒的にまたは光学的に機能性の結晶性多元−金属カルコゲニド画分を含む。半導性および導電性画分においては、単一式の結晶性多元−金属カルコゲニド画分は、結晶性IB−IIIA−VIA2、IB2−IIB−IVA−VIA4およびIB2−IVA−VIA3組成物の群を含む、結晶性IB−IIIA−VIA、IB−IIB−IVA−VIAおよびIB−IVA−VIA組成物からなる群から選択される。
【0073】
表面クリーニングおよびキャッピング基
表面クリーニング。幾つかの実施形態においては、金属カルコゲニドナノ粒子、結晶性多元カルコゲニド粒子、および/または結晶性多元カルコゲニド層の表面は清浄にされる。好適なクリーニング試薬としては、水;過酸化水素;酸;塩基;チオン−およびセレノン−含有化合物;それらの溶液;およびそれらの混合物が挙げられる。具体的な例としては、脱イオン水;水酸化ナトリウム;過酸化水素;チオ尿素;およびチオアセトアミドが挙げられる。これらの試薬の希薄溶液をまた使用することができる。好適なクリーニング方法としては、浸漬または洗浄が挙げられる。たとえば、ナノ粒子、粒子、および層は、チオ尿素の5%溶液に30分間;または1mLの30%過酸化水素および40mLの水中の1gの水酸化ナトリウムの溶液に1分間浸漬することができる。
【0074】
キャッピング基。幾つかの実施形態においては、金属カルコゲニドナノ粒子の表面および結晶性多元−金属カルコゲニド粒子の表面は、キャッピング基と反応させられる。この方法は、多くの目的のために用いることができる。キャッピング基は、ナノ粒子および粒子表面からの配位子および反応の副生物に取って代わることができる。キャッピング基は、分散促進剤として働くことができ、インクにおける様々な流体媒体の使用を可能にする。揮発性キャッピング基は、それらが分解するよりもむしろ揮発し、それによってキャッピング基でコートされたナノ粒子および粒子の加熱によって生成する生成物中へのかなりの不純物(たとえば、カーボン)の導入を回避するので、追加の利点を提供する。そのような不純物は性能に必ずしも致命的であるわけではないが、それらは、たとえば、半導体フィルムの電子特性を悪化させ得る。対照的に、揮発性キャッピング剤は揮発して離れ、それによってより高純度の生成物を作り出す。
【0075】
好適なキャッピング基としては、ホスフィンオキシド;アミン;チオール;セレノール;有機酸;およびそれらのイオンが挙げられる。より具体的には、好適なキャッピング基としては、アルキルアミン、アルキルチオール、トリアルキルホスフィンオキシド、トリアルキルホスフィン、アルキルホスホン酸、ピリジン、アルキルピリジン、エタノールアミン、クエン酸塩、チオグリコール酸、およびオレイン酸が挙げられる。
【0076】
本明細書に記載される方法の利点は、金属カルコゲニドナノ粒子を合成するために用いられる比較的低い反応温度により、それらの合成中にナノ粒子の表面上に比較的高い揮発度の配位子の組み込みが可能となることである。これらの配位子はキャッピング基としての機能を果たす。あるいは、さらにより高い揮発度のキャッピング基を、配位子交換によって組み込むことができる。一実施形態においては、合成中に組み込まれた配位子によって安定化された湿潤ナノ粒子ペレットは、コロイド状懸濁液を生成するために揮発性キャッピング剤に懸濁される。懸濁液からの金属カルコゲニドナノ粒子の分離は、ナノ粒子を配位子から分離して揮発性キャッピング基付きの金属カルコゲニドナノ粒子を生成する。キャッピング基付きの結晶性多元−金属カルコゲニド粒子は、類似の方法で製造することができる。
【0077】
別の実施形態においては、キャッピング剤の交換は、フィルム形成後に起こる。アニール処理されていないフィルムは、揮発性キャッピング剤に浸漬され、それは次に、金属カルコゲニドナノ粒子または結晶性多元−金属カルコゲニド粒子のより揮発性が低い配位子またはキャッピング基と交換する。非揮発性キャッピング剤は次に、過剰の揮発性キャッピング剤と一緒に除去される。この方法の利点としては、向上したフィルム緻密化およびアニール処理フィルム中のより低レベルのカーボンベース不純物が挙げられる。
【0078】
本発明に使用される「揮発性キャッピング剤」は、分解しそして不純物をフィルム中へ導入する代わりに、それがフィルム堆積中に揮発するように十分に揮発性である、当該技術分野において公知のあらゆるキャッピング剤(時々、安定剤とも言われる)であることができる。本明細書において使用される場合、用語「揮発性」は、周囲圧力で約200℃未満、または約150℃未満、または約120℃未満、または約100℃未満の沸点を有すると定義される。キャッピング剤の目的は、ナノ粒子の相互作用および凝集を防ぎ、それによって、分散媒体の全体にわたって、コロイド状物質(金属カルコゲニドナノ粒子または結晶性金属カルコゲニド粒子)の一様な分布、分散相を維持することである。本発明における使用に好適な揮発性キャッピング剤は、少なくとも1つの電子対−供与体基またはそのような電子対−供与体基へ変換することができる基を含有する揮発性化合物である。電子対−供与体基は、電気的に中性かまたは負であることができ、通常はO、N、PまたはSなどの原子を含有する。好適な揮発性キャッピング剤の具体的な例としては、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、アセトニトリル、ブタノール、ピリジン、エタンチオール、テトラヒドロフラン、およびジエチルエーテルが挙げられる。
【0079】
薄膜光起電力セルを含む、デバイスの製造
本明細書に記載される材料の使用によって、少なくとも一部は、形成することができる様々な電気素子としては、電子回路、レジスタ、キャパシタ、ダイオード、整流器、エレクトロルミネセント・ランプ、記憶素子、電界効果トランジスタ、バイポーラトランジスタ、単接トランジスタ、薄膜トランジスタ、金属−絶縁体−半導体積み重ね、電荷結合素子、絶縁体−金属−絶縁体積み重ね、有機導体−金属−有機導体積み重ね、集積回路、光検出器、レーザー、レンズ、導波管、回折格子、ホログラフィック素子、フィルタ(たとえば、アドドロップフィルタ、利得平坦化フィルタ、および遮断フィルタ)、ミラー、スプリッター、連結器、結合器、モジュレータ、センサ(たとえば、一過性センサ、位相変調センサ、および干渉センサ)、光キャビティ、圧電素子、強誘電体デバイス、薄膜バッテリー、ならびに光起電装置が挙げられる。組み合わせ、たとえば、光学ディスプレイ用の活性マトリックス配列としての電界効果トランジスタと有機エレクトロルミネセント・ランプとの組み合わせもまた有用であることができる。
【0080】
典型的な光起電力セルは、基板、バックコンタクト層(たとえば、モリブデン)、吸収体層(第1半導体層とも言われる)、緩衝層(第2半導体層とも言われる)、およびトップコンタクト層を含む。光起電力セルはまた、トップコンタクト層上の電極パッドの電気接触、および半導体層への光の透過を高めるための基板の前(光対向)面上の反射防止(AR)コーティングを含むことができる。
【0081】
本発明の一態様は、1つ以上の層を、層状配列で基板のアニール処理結晶性多元−金属カルコゲニドコーティング上へ堆積させる工程を含む方法である。層は、導体、半導体、および誘電体からなる群から選択することができる。一実施形態においては、本方法は、光起電装置を提供し、次の層:(i)緩衝層;(ii)透明なトップ接触層、および(iii)任意選択的に、反射防止層を、存在する導電性層を有する基板のアニール処理コーティング上へ、層状配列で堆積させる工程を含む。
【0082】
本発明の別の態様は、層状並びで1つ以上の層を、基板のアニール処理結晶性多元−金属カルコゲニドコーティング上へ堆積させる工程を含む方法によって製造されるデバイスである。
【0083】
光起電力セル基板用の好適な基板材料は、上および下に記載される通りである。光起電力セル基板はまた、基板材料と金属層との接着を促進するための界面層を含むことができる。好適な界面層は、金属(たとえば、V、W、Cr)、ガラス、または窒化物、酸化物、および/または炭化物の化合物を含むことができる。
【0084】
典型的な光起電力セル基板は、一面を導電性材料、たとえば、金属でコートされた、ガラスまたはプラスチックである。一実施形態においては、基板はモリブデン−コーテッドガラスである。
【0085】
光起電力セル基板上に結晶性多元−金属カルコゲニド層を堆積させそしてアニール処理して吸収体層を形成する工程は、上記の通り実施することができる。光起電力セルのための好適な結晶性多元−金属カルコゲニド層は、結晶性IB−IIIA−VIAおよびIB−IIB−IVA−VIA組成物または結晶性IB−IIIA−VIA2およびIB2−IIB−IVA−VIA4組成物からなる群から選択される単一式の結晶性多元−金属カルコゲニド画分を含む。好ましい組成物としては、Cu2(In,Ga)(S,Se)2およびCu2ZnSn(S,Se)4が挙げられる。
【0086】
緩衝層は、CdS、ZnS、水酸化亜鉛、Zn(S,O,OH)、カドミウム亜鉛硫化物、In(OH)3、In23、ZnSe、亜鉛インジウムセレン化物、インジウムセレン化物、亜鉛マグネシウム酸化物などの無機材料、もしくはn−型有機材料、またはそれらの組み合わせを典型的には含む。これらの材料の層は、化学浴堆積、原子層堆積、同時蒸着、スパッタリングまたは化学的表面堆積によって約2nm〜約1000nm、または約5nm〜約500nm、または約10nm〜約300nm、または40nm〜100nm、または50nm〜80nmの厚さに堆積させることができる。
【0087】
トップ接触層は典型的には、透明な導電性酸化物、たとえば、酸化亜鉛、アルミニウムドープ酸化亜鉛、インジウムスズ酸化物、またはスズ酸カドミウムである。好適な堆積技法としては、スパッタリング、蒸着、化学浴堆積、電気めっき、化学蒸着、物理蒸着、および原子層堆積が挙げられる。あるいは、トップ接触層は、スピンコーティング、浸漬コーティングまたは吹き付けコーティングを含む、標準方法によって堆積させることができる、透明の導電性ポリマー層、たとえば、ポリ(スチレンスルホネート)(PSS)でドープされたポリ−3,4−エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)を含むことができる。幾つかの実施形態においては、PEDOTは、酸成分を除去して光起電力セル構成要素の酸誘発分解の可能性を低減するために処理される。
【0088】
一実施形態においては、結晶性多元−金属カルコゲニドフィルムでコートされた光起電力セル基板は、CdSの層を堆積させるために硫化カドミウム浴に入れられる。あるいは、CdSは、コーテッド基板を、チオ尿素を含有するヨウ化カドミウム浴に入れることによって結晶性多元−金属カルコゲニドフィルム上に堆積させることができる。
【0089】
一実施形態においては、光起電力セルは、CdSの代わりに絶縁性酸化亜鉛のスパッタード層を使用して製造される。幾つかの実施形態においては、CdSおよびZnO層は両方とも光起電力セル中に存在し;その他の実施形態においては、CdSおよびZnOの1つのみが存在する。
【0090】
幾つかの実施形態においては、ナトリウム化合物(たとえば、NaF、Na2S、またはNa2Se)の層が、結晶性多元−金属カルコゲニド層の上および/または下に形成される。ナトリウム化合物の層は、スパッタリング、蒸着、化学浴堆積、電気めっき、ゾル−ゲルベースコーティング、吹き付けコーティング、化学蒸着、物理蒸着、または原子層堆積によって適用することができる。
【0091】
キャラクタリゼーション
本発明の金属カルコゲニドナノ粒子、結晶性多元−金属カルコゲニド粒子および層の組成、サイズ、サイズ分布、密度、および結晶化度を特徴付けるための有用な分析技法としては、XRD、XAFS、EDAX、ICP−MS、DLS、AFM、SEM、ESC、およびSAXが挙げられる。
【0092】
次のものは、上におよび実施例に用いられる省略形および商品名のリストである。
【0093】
【表1】

【実施例】
【0094】
原材料
硫酸銅(CuSO4)、塩化インジウム(InCl3)、硫酸亜鉛七水和物(ZnSO4・7H2O)、塩化スズ(IV)五水和物(SnCl4・5H2O)、チオアセトアミド(CH3CSNH2、TAA)、トリエタノールアミン(C615NO3、TEA)、チオ尿素((NH22CS)、硝酸アンモニウム(NH4NO3)、硫酸(H2SO4)、クエン酸三ナトリウム(C687Na3・2H2O)、水酸化アンモニウム(NH4OH、水酸化ナトリウム(NaOH)およびポリビニルピロリドン(MW 30,000)は、Sigma−Aldrich Co.(St.Louis,MO)から購入した。これらの化学薬品は、さらなる精製なしで使用した。ナノピュア水をすべての実験のために使用した。
【0095】
チューブ炉におけるコーテッド基板のアニーリング。アニーリングは、不活性雰囲気(窒素またはアルゴン)下か硫黄を含む不活性雰囲気下かのどちらかで実施した。不活性雰囲気下でのアニーリングは、外部温度制御器および1インチ石英管を備えた単一ゾーンLindberg/Blue(Ashville,NC)チューブ炉においてか、3インチ石英管を備えたLindberg/Blue 3ゾーンチューブ炉(Model STF55346C)においてかのどちらかで実施した。ガス入口および出口をチューブの反対端に配置し、チューブを、加熱および冷却しながら不活性ガスでパージした。コーテッド基板を、チューブ内部の石英プレートまたはボート上に置いた。
【0096】
硫黄雰囲気下でのアニーリングは、1インチチューブ中で単一ゾーン炉において実施した。3インチ長さのセラミックボートを2.5gの元素硫黄で装填し、直接加熱ゾーンの外側で、窒素入口の近くに置いた。コーテッド基板を、チューブ内部の石英プレート上に置いた。
【0097】
XAS分析。Cu、ZnおよびSn K−エッジでのXANES分光法は、Argonne National LaboratoryにおいてAdvanced Photon Sourceで実施された。データは、ビームライン5BMD、DND−CATで蛍光ジオメトリーにおいて収集された。薄膜試料は、生じたままの入射X線ビームに呈された。Oxford分光法グレード・イオンチャンバーが、X線入射強度(I0)を測定するために用いられた。I0検出器は、570トルのN2および20トルのArで満たされた。蛍光検出器は、ビーム伝搬方向と垂直に設置されたXeで満たされたLytle Cellであった。データは、Cuエッジについては8879eV〜9954eVで収集された。高い最終エネルギーが、Znエッジの一部を同じデータセットに捕捉し、フィルムにおけるCu:Zn比の推定値としてのエッジステップ比測定を可能にするために用いられた。Znエッジデータは、範囲9557eV〜10,404eVにわたって収集された。Snエッジデータは、29,000eV〜29,750eVの範囲をカバーした。データエネルギー尺度は、試料データ収集前に収集された金属対照フォイルからのデータに基づいて較正された。二次バックグランドが差し引かれ、スペクトルが標準化された。幾つかのCu、ZnおよびSn硫化物および酸化物標準(Cu2ZnSnS4、Cu2SnS3、CuS、Cu2S、CuO、Cu2O、ZnS、ZnO、SnS、SnOおよびSnO2)からのデータが同じ条件下に得られた。試料から得られたスペクトルへの適切な標準の線形結合の非線形最小二乗フィッティングが、各元素についての相分布をもたらした。
【0098】
XRD分析。粉体X線回折を結晶相の同定に用いた。データは、Philips X’PERT自動化粉体回折計、Model 3040で得た。この回折計は、自動可変アンチ−スキャッターおよび発散スリット、X’Celerator RTMS検出器、ならびにNiフィルタを備えていた。放射線は、CuK(アルファ)(45kV、40mA)であった。データは、0.02°の等価ステップサイズで連続走査;およびシータ−シータジオメトリでの1ステップ当たり80秒〜240秒のカウント時間を用いて;4から120°まで、2−シータで室温で収集した。薄膜試料を、生じたままのX線ビームに呈した。MDI/Jadeソフトウェアバージョン9.1を、相同定およびデータ解析のためのInternational Committee for Diffraction DataデータベースPDF4+2008と共に用いた。
【0099】
粒度分布(PSD)。PSDは、ある領域の粒子の体積分布を測定するためのレーザー回折を用いるBeckman Coulter LS13320で測定した。粉体のアリコート(約0.1g)を、1滴のsurfynol(湿潤を促進するための界面活性剤)および20mLの脱イオン水と混合し、1分間超音波プローブによって超音波処理した。この一部を、脱イオン水で同様に満たされたこの機器に加えた。2つの繰り返し運転を、試料安定性に関するおよび機器再現性に関するチェックとして行った。
【0100】
SAXS分析。SAXSによる粒度および分布の測定は、Rigaku製の、USAXS複結晶、Bonse−Hartを使用して実施した。試料を、粘着テープ上の結晶子の単一層(約50μm厚さ)として分析した。デスミア処理および分析を、IGORのための標準パッケージに含有されるように行った。
【0101】
CZTS結晶の合成。硫化銅(II)(4.35g、0.0455モル)、硫化亜鉛(II)(2.22g、0.0228モル)、および硫化スズ(IV)(4.16g、0.0228モル)を、15分間振盪することによって一緒に混合した。この混合物をアルミナボートに20mL入れ、それを次に、窒素が流れるチューブ炉中へ入れた。ボートを15分で周囲温度から800℃まで加熱し、この温度に1日間保った。試料を周囲温度まで冷却し、すり潰し、次にボートと窒素流れ下のチューブ炉とに戻した。加熱サイクルを次に繰り返した。この手順を4回繰り返し、5日の総加熱時間を与えた。試料をXRDによって分析してCZTS結晶の存在を確認した。この結晶を媒体ミルにかけて1.0078ミクロンのD50および2.1573ミクロンのD95の微小粒子を与えた。
【0102】
実施例1A〜1K
CZTS、CTS、CISおよびCuS粒子の水性合成
実施例1の手順においては、CuSO4、ZnSO4、NH4NO3、SnCl4、トリエタノールアミン(TEA)およびチオアセトアミド(TAA)の水性原液をナノピュア水中で調製し、表1に示される量で使用した。
【0103】
実施例1A
本実施例は、CZTSの前駆体である「合成されたままの」ナノ粒子の合成を実証する。
【0104】
実験1〜6については、CuSO4(0.4M)、ZnSO4(0.8M)、およびSnCl4(0.7M)の溶液を、撹拌棒を備えた丸底フラスコ中で一緒に混合した。次に、NH4NO3(0.4M)およびトリエタノールアミン(TEA、3.7M)の溶液を順次反応混合物に加えた。硫酸を使用してpHを1に調整し、反応混合物を30分間撹拌し、これに水性チオアセトアミド(TAA、0.4M)の添加が続いた。フラスコを磁気撹拌しながら熱水浴中に入れ、反応温度を80℃に2.5時間維持して黒色懸濁液を与えた。次に、水浴を取り除き、フラスコを室温に放冷した。生じた沈澱をデカンテーション/遠心分離によって集めた。固形分を水で3回洗浄した。材料の一部を、45、60または200℃の真空オーブン中で一晩乾燥させて合成されたままのナノ粒子(Cu、Zn、およびSn硫化物の混合物)の黒色粉体を与えた。3つの異なる温度で乾燥させた粉体は組成的に似ており、これらの乾燥温度をさらなる実験において区別しないで用いた。
【0105】
実施例1B
本実施例は、高純度CZTS粒子を形成するための「合成されたままの」ナノ粒子の熱処理を実証する。
【0106】
実施例1Aの実験1〜6において得られたナノ粒子を、2時間窒素下におよび硫黄に富む雰囲気中550℃で熱処理して、XRD、HR−TEM、XASおよびXRFによって確認されるように、ケステライト構造の高純度CZTSナノ粒子を与えた。HR−TEMおよびXRDから測定されるような粒度は、より大きい、ミクロンサイズの粒子と混ざり合った40〜80nmの範囲にあった。二峰性分布がまたSAXSによって確認された。
【0107】
実施例1C
本実施例は、より大きい規模でのCZTSナノ粒子の再現性のある合成を実証する。
【0108】
実験6については、0.4MのZnSO4および0.4MのSnCl4溶液ならびにより大量の試薬を使用して実施例1Aおよび1Bの手順に従った。黒色粉体を単離した。この実験を20回繰り返した。XRDデータは、試料調製の高い再現性を示した。
【0109】
実施例1D
本実施例は、出発試薬の比およびアニーリング雰囲気を変えることによる様々な組成のCZTSの製造を実証する。
【0110】
実験7〜9については、実施例1Aの手順に従った。洗浄後に、固形分を200℃の真空オーブン中で一晩乾燥させて黒色粉体(合成されたままのナノ粒子)を与えた。各材料の一部を窒素下に550℃で熱処理し(表2、実験7−N、8−Nおよび9−N)、別の部分を硫黄に富む雰囲気中で2時間処理して(表2、実験7−S、8−S、および9−S)表2に示されるような範囲の組成を有する、XRDによって示されるようにケステライト構造の高純度CZTSナノ粒子を与えた。
【0111】
実施例1E
本実施例は、硫黄試薬対金属イオンのより低い比を使用するときにより低純度CZTSの形成を実証する。
【0112】
実施例1Aの実験5の黒色粉体試料を、2時間窒素および硫黄の雰囲気中550℃で加熱した。本実施例においては、合成に使用されるカルコゲンのモルと金属イオンの総モルとの比は1である。幾つかのCZTSがこの方法によって製造されたが、熱処理ナノ粒子はその他の金属硫化物を同様に含有するとXRDによって測定された。
【0113】
実施例1F
本実施例は、比較的高濃度のセットの試薬溶液を使用するCZTS粒子の製造を実証する。
【0114】
実験10〜11においては、0.8MのCuSO4(水性)、1.6MのZnSO4(水性)、ならびに1.4MのSnCl4(水性)、0.8Mの硝酸アンモニウムおよび0.8MのTAA溶液を使用して実施例1Aおよび1Bの手順に従った。XRDおよびHR−TEMによって確認されるように、ケステライト構造の高純度CZTSナノ粒子が得られた。HR−TEMおよびXRDから測定されるような粒度は、より大きい、ミクロンおよびサブミクロンサイズの粒子と混ざり合った40〜80nmの範囲にあった。二峰性分布がまたSAXSによって確認された。
【0115】
実施例1G
本実施例は、熱処理の継続時間による粒度の変動を実証する。
【0116】
実施例1Cの実験6の合成されたままのナノ粒子を3時間窒素下に550℃で加熱して、X線粉体回折によって示されるように、ケステライト構造の高純度CZTS粒子を与えた。HR−TEMによって測定されるような、粒度は、0.2〜0.6マイクロメートルの範囲にあり、機器検出限界外である、おそらくミクロンサイズの粒子であった。
【0117】
実施例1H
本実施例は、銅スズ硫化物粒子の合成を実証する。
【0118】
実験12においては、実施例1Aおよび1Bに記載された手順を繰り返したが;硫酸亜鉛溶液を使用しなかった。水洗した固形分を45℃の真空オーブン中で一晩乾燥させて黒色粉体(合成されたままのナノ粒子)を与えた。このナノ粒子を3時間窒素下に550℃で加熱して、XRDによって示されるように、銅スズ硫化物粒子(Cu2SnS3)を与えた。
【0119】
実施例1I
本実施例は、銅インジウム硫化物粒子の合成を実証する。
【0120】
実験13においては、実施例1Aおよび1Bに記載された手順を繰り返したが;硫酸亜鉛および塩化スズ溶液を使用しなかった。その代わりに、1.0ミリモルの0.4MのInCl3(水性)を使用した。水洗した固形分を45℃の真空オーブン中で一晩乾燥させて黒色粉体(合成されたままのナノ粒子)を与えた。このナノ粒子を3時間窒素下に550℃で加熱して、XRDによって示されるように、高純度銅インジウム硫化物粒子(CuInS2)を与えた。
【0121】
実施例1J
本実施例は、硫化銅粒子の合成を実証する。
【0122】
実験14においては、実施例1Aおよび1Bに記載された手順を繰り返したが;硫酸亜鉛および塩化スズ溶液を使用しなかった。水洗した固形分を45℃の真空オーブン中で一晩乾燥させて平均サイズ20nm(XRDによるFWHM)の黒色粉体(合成されたままのナノ粒子)を与えた。この材料は高い結晶化度を示した。硫黄に富む、窒素雰囲気中550℃で加熱すると、XRDで100nm超のより大きい結晶を与えた。
【0123】
実施例1K
本実施例は、CZTSナノ粒子の大規模合成を実証する。
【0124】
実験15においては、実施例1Fに記載された手順を、より大規模で繰り返した。水で3回洗浄した後、固形分を45℃の真空オーブン中で一晩乾燥させて黒色粉体(合成されたままのナノ粒子)を与えた。この材料を、2時間窒素および硫黄雰囲気下に550℃で熱処理して、XRDおよびHR−TEMによって確認されるように、ケステライト構造の高純度構造の高純度CZTS粒子を与えた。粒度分布は、31nmの小粒子の中央値と333nmのより大きい粒子についての中央値とを有する、SAXSによって測定されるように、二峰性である。
【0125】
実施例1L
本実施例は、CZTS粒子の表面分析およびこれらの粒子の粒度分布を実証する。
【0126】
実施例1Kの手順を約0.4倍の規模で行った。ケステライト構造の高純度CZTS粒子の形成を24nmのFWHMでXRDによって確認した。PSD分析は、0.98ミクロンのD50および1.88ミクロンのD90の二峰性分布を示した。ESCA分析は、上記の通り製造された、類似の粒度分布を有する媒体ミルにかけたCZTS微結晶より高いSOx-2対S-2比の表面スルフェート基の存在を示す。ToF−SIMSによる分析は、媒体ミルにかけたCZTS微結晶中より低いレベルの痕跡FeおよびCrを示した。
【0127】
【表2】

【0128】
【表3】

【0129】
実施例2A〜2C
合成されたままのナノ粒子から誘導されるインクおよびフィルム
これらの実施例は、CZTSのアニール処理フィルムを製造するための「合成されたままの」粒子の使用を実証する。
【0130】
実施例1Aの実験4に記載されたように得られた合成されたままのナノ粒子(0.5g)を、10重量%固形分のインクを与えるために4.5gのアルファ−テルピネオールと混合した。このインクを、3/0棒で3通りにMo−コーテッドソーダ石灰ガラス基板上へロッド−コートして3つの薄膜試料を生成した。これらの薄膜試料を50℃のホットプレート上で乾燥させた。
【0131】
実施例2A
第1薄膜試料は、550℃の不活性雰囲気中で熱処理した。このフィルムのXRDは、高結晶化度ケステライトの存在を示した。
【0132】
実施例2B
第2薄膜試料は、2gの硫黄入りボートを炉チューブ中に導入することによって硫黄に富むようにされた不活性雰囲気中550℃で熱処理した。このフィルムのXRDは、ICP−MSおよびXRF分析によって測定されるように、実施例2Aのフィルムより多くの硫黄を保有する、高結晶化度ケステライトの存在を示した。
【0133】
実施例2C
第3薄膜試料は、550℃で熱処理しなかった。ケステライトは、XRDによって観察されなかった。
【0134】
実施例3
CZTS粒子から誘導されるインクおよびフィルム
これらの実施例は、CZTSのアニール処理フィルムを製造するためのCZTS粒子の使用を実証する。
【0135】
実施例1Cに記載されたように得られた、CZTS粒子(0.5g)を、10重量%固形分のインクを与えるために4.5gのアルファ−テルピネオールと混合した。このインクを、3/0棒を用いてMo−コーテッドソーダ石灰ガラス基板上へロッド−コートした。このフィルムをホットプレート上で50℃で乾燥させた。乾燥すると、第1フィルムを550℃の不活性雰囲気中で熱処理した。このフィルムのX線粉体回折分析は、ケステライト構造を確認した。
【0136】
実施例4
キャッピング剤でのCZTS粉体の処理
これらの実施例は、キャッピング剤でのCZTS粒子の処理およびコーテッドCZTS粒子からのアニール処理CZTSフィルムの形成を実証する。
【0137】
実施例1Cに記載されたように製造された、各100mgのCZTSナノ粒子の2つのアリコートを、1gのオレイルアミンか1gのドデカンチオールかのどちらかと混合し、2分間ホーン超音波処理し、次に不活性雰囲気下に一晩保った。次の日、各混合物を、激しく撹拌しながらトルエンにさらに溶解させ、5分間超音波発生装置浴に保ち、次に追加の5分間磁気撹拌してCZTSインクを生み出した。各インクを、ソーダ石灰ガラスまたはモリブデン−コーテッドソーダ石灰ガラス上へ棒コートした。フィルムを、窒素雰囲気下に2時間550℃の炉中でアニール処理した。
【0138】
実施例5
フィルムの吹き付けコーティング
これらの実施例は、CZTS粒子の吹き付けコーティングおよびより高密度CZTSフィルムを生み出すための予熱基板の使用を実証する。
【0139】
実施例1Cにより製造された、CZTSナノ粒子(1g)を9gメタノールに懸濁させ、10分間ホーン超音波処理した。メタノール(10g)中の2重量%PVPの溶液をCZTS−メタノール液と混合した。生じた混合物を5分間超音波処理し、次に追加の5分間磁気撹拌してCZTSインクを生み出した。このインクを、それぞれ、室温、64.7℃および100℃である3つのガラス基板上へ改良エアブラシ系で吹き付けた。フィルムを窒素雰囲気下に6時間550℃の炉中でアニール処理した。フィルム緻密化および単分散ミクロンサイズ粒子が、室温より上の温度で吹き付けられた試料についてSEMによって観察された。
【0140】
実施例6
高結晶性CZTSから誘導されるインクおよびフィルム
本実施例は超高純度CZTS組成を提供し;この組成のすべての粒子は結晶性であり、ケステライト構造で特徴付けられる。
【0141】
実施例1Kにおいて製造された粒子の0.20g試料を、0.8gの1重量%PVPのメタノール溶液に加えて20重量%固形分インクを与えた。このインクを15分間チップ超音波処理し(tip−sonicate)、次に1分間浴超音波処理した(bath−sonicate)。インクを清浄な顕微鏡スライド上へ棒コートし、5分間60℃のホットプレート上で乾燥させた。(棒コーティングの前に、顕微鏡スライドを、アセトン、水、次にメタノールでリンスすることによって清浄にし、空気中で乾燥させ、次に2分間Arプラズマで処理した)。コーテッドスライドを、2時間550℃のN2/硫黄雰囲気中で熱アニール処理した。XRDは、一結晶相において試料中に存在する高結晶化度ケステライトを示した。XAS分析は、フィルム中に99%超のCZTSからなる、超高純度材料組成を明らかにした。組み合わせXRDおよびXAS分析は、フィルムのすべての粒子が結晶性であり、ケステライト構造で特徴付けられることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)2つ以上の金属塩および1つ以上の配位子を含む第1水性溶液を提供する工程と;
(b)任意選択的に、pH調整物質を添加して第2水性溶液を形成する工程と;
(c)前記第1または第2水性溶液をカルコゲン源と組み合わせて反応混合物を提供する工程と;
(d)前記反応混合物を撹拌しておよび任意選択的に加熱して金属カルコゲニドナノ粒子を生成する工程と;
(e)前記金属カルコゲニドナノ粒子を前記反応混合物から任意選択的に単離する工程と;
(f)前記単離された金属カルコゲニドナノ粒子を約350℃〜800℃の温度に任意選択的に加熱して結晶性金属カルコゲニドナノ粒子を提供する工程と
を含む方法。
【請求項2】
前記2つ以上の金属塩が銅塩、スズ塩、および任意選択的に亜鉛塩を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記2つ以上の金属塩が銅塩、インジウム塩および任意選択的にガリウム塩を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記反応混合物が約100℃以下の温度に加熱される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記カルコゲン源が、硫化水素、セレン化水素、アルカリ金属硫化物、アルカリ金属セレン化物、チオン含有化合物、およびセレノン含有化合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記配位子が、アミン、アンモニア、アンモニウム塩、チオール、セレノール、有機酸、有機酸の塩、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
pH調整物質が存在し、前記pHが約4〜約0であるように調整される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法によって製造される金属カルコゲニドナノ粒子。
【請求項9】
請求項1に記載の方法によって製造される結晶性金属カルコゲニドナノ粒子。
【請求項10】
銅スズ硫化物/セレン化物、銅亜鉛スズ硫化物/セレン化物、銅インジウムガリウム硫化物/セレン化物、銅インジウム硫化物/セレン化物、またはそれらの混合物を含む請求項8に記載の金属カルコゲニドナノ粒子。
【請求項11】
(a)約2重量%〜約80重量%の請求項8に記載の金属カルコゲニドナノ粒子;および
(b)約20〜約98重量%の流体媒体
を含むインク。
【請求項12】
分散剤、界面活性剤、バインダー、配位子、キャッピング基、界面活性剤、消泡剤、元素カルコゲン、およびドーパントからなる群から選択される約10重量%以下の1つ以上の添加剤をさらに含む、請求項11に記載のインク。
【請求項13】
前記流体媒体が、水、芳香族化合物、複素環式芳香族化合物、アルカン、ニトリル、エーテル、ケトン、エステル、アセテート、アミド、アミン、チオール、カルボン酸、有機ハロゲン化物、およびアルコールからなる群から選択される1つ以上の液体を含む、請求項11に記載のインク。
【請求項14】
前記結晶性金属カルコゲニドナノ粒子が、銅スズ硫化物/セレン化物、銅亜鉛スス硫化物/セレン化物、銅インジウムガリウム硫化物/セレン化物、銅インジウム硫化物/セレン化物、またはそれらの混合物を含む、請求項11に記載のインク。
【請求項15】
(a)請求項11に記載の前記インクを基板上に堆積させる工程であって、前記基板が、
(i)ベースフィルム;および
(ii)任意選択的に、前記ベースフィルム上に配置された導電性コーティング
を含む工程と;
(b)前記流体媒体を除去して粒子コーテッド基板を提供する工程と;
(c)前記粒子コーテッド基板を加熱してアニール処理コーティングを前記基板上に提供する工程と;
(d)1つ以上の層を、層状配列で前記アニール処理コーティング上へ堆積させる工程であって、前記層が、緩衝層、トップ接触層、電極パッドおよび任意選択の反射防止コーティング層からなる群から選択される工程と
を含む方法。
【請求項16】
前記トップ接触層が透明な導電性酸化物である、請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−512311(P2013−512311A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541134(P2012−541134)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【国際出願番号】PCT/US2010/057566
【国際公開番号】WO2011/066205
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】