説明

結晶成長装置

【課題】反応容器を挿通する攪拌用の駆動軸を設けても、融液の金属蒸気の漏出を防ぎつつ原料ガスを反応容器内に供給できる結晶成長装置の提供。
【解決手段】加熱加圧雰囲気下で窒素ガスとNa/Ga混合融液3とを反応させて該混合融液3に浸漬された種基板2上にGaN結晶を成長させる坩堝11と、坩堝11を挿通して設けられた駆動軸41を軸周りに回転させて混合融液3を攪拌する攪拌装置40と、を有する窒化ガリウム製造装置1であって、駆動軸41の挿通により坩堝11に形成される隙間をガス流路とし、該ガス流路から坩堝11内部に窒素ガスを供給する窒素ガス供給ポート17を有するという構成を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶成長装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
次世代半導体材料として期待されている窒化ガリウム(GaN)の製法の一つとしては、数MPaの高圧窒素雰囲気中、800℃〜900℃のNa/Ga融液に種基板を浸漬させ、その種基板上にGaN結晶を成長させる結晶成長方法(所謂、フラックス法)が知られている。
下記特許文献1には、フラックス法において、余分な核発生を抑え、大型で高品質のGaN結晶を得るべく、融液を攪拌する攪拌装置を備える結晶成長装置が開示されている。また、下記特許文献2には、融液を保持する反応容器に、その内部のNa蒸気が外部へ漏出するのを防ぎながら窒素ガスを導入するため、該反応容器の蓋部の隙間を管理してガス流路を形成する結晶成長装置が開示されている(段落0045〜段落0047参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−247615号公報
【特許文献2】特許第3966682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来技術を組み合わせた場合には、以下のような問題が存在する。
攪拌用の駆動軸を反応容器に挿通して設ける場合、駆動軸を挿通させる孔部を形成しなければならない。そうすると、反応容器内部が高温であるために、その孔部をガスシール材等で封止することが難しく、孔部と駆動軸との間に隙間が生じ、必要以上のガス流路が形成されてしまう。このため、反応容器の蓋部の隙間から窒素ガスを供給しても、駆動軸の挿通により形成される隙間から窒素ガスが漏出し、また、Na蒸気も合わせて漏出してしまい、窒素ガス供給、Na蒸気の漏出の面で問題がある。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、反応容器を挿通する攪拌用の駆動軸を設けても、融液の金属蒸気の漏出を防ぎつつ原料ガスを反応容器内に供給できる結晶成長装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、加熱加圧雰囲気下で原料ガスと融液とを反応させて該融液に浸漬された種基板上に結晶を成長させる反応容器と、上記反応容器を挿通して設けられた駆動軸を軸周りに回転させて上記融液を攪拌する攪拌装置と、を有する結晶成長装置であって、上記駆動軸の挿通により上記反応容器に形成される隙間をガス流路とし、該ガス流路から上記反応容器内部に上記原料ガスを供給する原料ガス供給装置を有するという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、攪拌装置の駆動軸の挿通により反応容器に形成される隙間をガス流路とし、原料ガスを供給すれば、ガス流路を必要限にすることができ、融液の金属蒸気の漏出を防ぎつつ原料ガスを反応容器内に供給することができる。
【0007】
また、本発明においては、上記反応容器には、上記挿通して設けられた上記駆動軸を軸支する軸受スリーブが設けられており、上記ガス流路は、上記駆動軸と上記軸受スリーブとの間の隙間、及び、上記軸受スリーブと上記反応容器との間の隙間の少なくともいずれか一方に形成されているという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、反応容器に駆動軸を軸支する軸受スリーブを設ける場合、駆動軸と軸受スリーブとの隙間や軸受スリーブと反応容器との隙間を管理することで適切なガス流路を形成することができる。
【0008】
また、本発明においては、上記駆動軸、上記軸受スリーブ、上記反応容器の少なくともいずれかには、上記隙間の大きさを調節する溝部が形成されているという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、駆動軸、軸受スリーブ、反応容器に溝部を設け、隙間を適切な大きさに調節することができる。
【0009】
また、本発明においては、上記軸受スリーブは、窒化ホウ素材から形成されているという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、窒化ホウ素材は、耐熱性、固体潤滑性を有するため、高温雰囲気下に耐えて駆動軸を軸支することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、加熱加圧雰囲気下で原料ガスと融液とを反応させて該融液に浸漬された種基板上に結晶を成長させる反応容器と、上記反応容器を挿通して設けられた駆動軸を軸周りに回転させて上記融液を攪拌する攪拌装置と、を有する結晶成長装置であって、上記駆動軸の挿通により上記反応容器に形成される隙間をガス流路とし、該ガス流路から上記反応容器内部に上記原料ガスを供給する原料ガス供給装置を有するという構成を採用することによって、ガス流路を必要限にし、融液の金属蒸気の漏出を防ぎつつ原料ガスを反応容器内に供給する。
したがって、本発明では、反応容器を挿通する攪拌用の駆動軸を設けても、融液の金属蒸気の漏出を防ぎつつ原料ガスを反応容器内に供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態における窒化ガリウム製造装置を示す構成図である。
【図2】本発明の実施形態における坩堝の軸受け構造を示す断面図である。
【図3】本発明の別実施形態における坩堝の軸受け構造を示す平面図及び断面図である。
【図4】本発明の別実施形態における坩堝の軸受け構造を示す断面図である。
【図5】本発明の一実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明では、本実施形態の結晶成長装置として、窒化ガリウム製造装置を例示して説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態における窒化ガリウム製造装置1を示す構成図である。
窒化ガリウム製造装置1は、フラックス法により種基板2上にGaN結晶を成長させ製造するものであり、種基板2及び混合融液3を保持する坩堝(反応容器)11とその外側を囲う外容器13からなる反応部10と、反応部10の外側を囲う断熱容器20と、断熱容器20の外側を囲う圧力容器30と、混合融液3を攪拌する攪拌装置40と、を有する。
【0014】
坩堝11は、内部にNa/Gaからなる混合融液3を保有する。本実施形態の坩堝11は、その底部に種基板2を載置し、内部の混合融液3に浸漬させる構成となっている。また、坩堝11の外側を囲う外容器13には、外部からGaN結晶の原料となる窒素ガス(N)を導入する窒素ガス供給ポート(原料ガス供給装置)17が接続されており、外容器13内に窒素ガスが充填されるようになっている。
【0015】
断熱容器20の断熱材には、例えばグラスウール等の繊維系断熱材が用いられる。断熱容器20の内側には、外容器13の四方及び下方を囲んで加熱するヒーター21が設けられる。
圧力容器30は、圧力状態が変化した場合であってもその圧力に耐えられるように略円筒形状に形状設定された真空容器からなり、この円筒形の中心軸が鉛直方向となるように姿勢設定されている。また、圧力容器30には、内部の空気を真空排気する不図示の真空排気ポートが接続されている。
【0016】
攪拌装置40は、磁気結合式の攪拌機であり、駆動軸41と、軸ケース42と、回転駆動装置43と、を有する。駆動軸41の一端側には、永久磁石(磁性体)44を外周面周方向おいて所定間隔を空けて複数備える内筒45が装着されている。軸ケース42は、駆動軸41の一端側を収容する収容空間S1を有する。収容空間S1には、内筒45の周面と接して、駆動軸41を軸周りに回転自在に支持する軸受46が設けられている。この軸ケース42は、非磁性体のステンレス鋼から形成され、圧力容器30に気密に密着固定されている。なお、駆動軸41もステンレス鋼から形成されている。
【0017】
回転駆動装置43は、軸ケース42の外側に、永久磁石47を内周面周方向において所定間隔を空けて複数備える外筒48を備える。外筒48は、軸ケース42の外側に取り付けられた軸受49により軸周りに回転自在に支持されている。また、回転駆動装置43は、外筒48を軸周りに回転させるモーター50を備える。モーター50の回転軸と外筒48とはベルト51で接続されている。上記構成によれば、モーター50の駆動により外筒48が軸周りに回転すると、外筒48に固定された永久磁石47と内筒45に固定された永久磁石44とが軸ケース42を介して磁気的に作用し、駆動軸41が軸周りに回転する。
【0018】
軸ケース42から下方に延びる駆動軸41の他端側は、圧力容器30、断熱容器20、外容器13及び坩堝11を挿通され、混合融液3中に至る構成となっている。駆動軸41は、その他端側先端部に攪拌翼52を備えており、混合融液3中で攪拌翼52が軸周りに回転することで、混合融液3を攪拌する。
本実施形態の駆動軸41は、第1駆動軸41Aと第2駆動軸41Bとが軸継手60により係合して構成されている。なお、第1駆動軸41Aは、軸ケース42によって回転自在に支持され、第2駆動軸41Bは、坩堝11に設けられた軸受スリーブ70Aにより回転自在に支持され、また、外容器13に設けられた軸受スリーブ70Bにより回転自在に支持されている。
【0019】
図2は、本発明の実施形態における坩堝11の軸受け構造を示す断面図である。なお、図2中、符号41B1は、第2駆動軸41Bに一体的に固定されたピンまたは止め輪からなるスラスト受けを示す。
軸受スリーブ70Aは、坩堝11に形成された孔部11aに固定される。そして、軸受スリーブ70Aは、その内周面で駆動軸41を軸支する構成となっている。坩堝11は、高温雰囲気下におかれるため、本実施形態の軸受スリーブ70Aは、耐熱性、固体潤滑性を併せ持つ窒化ホウ素(BN)材から形成されている。
【0020】
軸受スリーブ70Aと駆動軸41との間には隙間Gが形成されている。この隙間Gは、軸受スリーブ70Aの内周径を、駆動軸41の外周径より大きく設計することにより形成される。隙間Gは、Na蒸気の漏出を防ぎつつ窒素ガスを坩堝11内に供給することができる大きさに管理されている。この機能を十分に発揮できる隙間Gの大きさは、実験結果や経験則から、1mm以下が適当であるとされている。本実施形態では、加熱による熱膨張率を考慮して、隙間Gの大きさが0.2mmとなるように、製作時に軸受スリーブ70Aの内周径及び駆動軸41の外周径を精度管理している。
なお、軸受スリーブ70Bは、同じく耐熱性、固体潤滑性を併せ持つ窒化ホウ素(BN)材から形成されているが、軸受スリーブ70Aのような隙間Gの管理はされていない。
【0021】
図1に戻り、断熱容器20及び圧力容器30には、駆動軸41が挿通する挿通孔(以下、断熱容器20の挿通孔を第1孔部(孔部)22、圧力容器30の挿通孔を第2孔部31と称する)が形成されている。第1孔部22と第2孔部31との間には、軸方向に伸縮自在で、且つ、軸方向と直交する方向に偏心自在なベローズ管(伸縮管)53が設けられている。ベローズ管53は、断熱容器20と圧力容器30との間において駆動軸41を囲うと共に、その一端側で第1孔部22を気密に囲うように取り付けられ、その他端側で第2孔部31を気密に囲うように取り付けられている。なお、第2孔部31は軸ケース42の収容空間S1と気密に連通しており、第1孔部22より外側には、ベローズ管53、第2孔部31及び収容空間S1が連通した気密空間が形成される構成となっている。この構成によれば、断熱容器20からの高温ガスの流出を抑制することができる。
【0022】
続いて、上記構成の窒化ガリウム製造装置1の動作及び作用について説明する。なお、本実施形態の窒化ガリウム製造装置1は、不図示の制御部を備えている。そして、特に断りが無い限り、当該制御部が、主体者として以下の動作を制御する。
先ず、圧力容器30内部の空気を真空排気ポートから真空排気する。真空状態となった後、窒素ガス供給ポート17から窒素ガスを供給して反応部10内を充填させる。この際、窒素ガス供給ポート17から供給された窒素ガスは、先ず外容器13内に充填される。外容器13内が充填されて加圧されると、軸受スリーブ70Aと駆動軸41との間の隙間Gが必要限のガス流路として機能し、外容器13内の窒素ガスが、坩堝11内に供給される。そして、内部圧力を、数MPaまで加圧する。また、ヒーター21を駆動させて、内部温度を800℃〜900℃まで加熱し、高温高圧雰囲気を形成する。
【0023】
そして、この高温高圧状態を所定時間維持し、坩堝11の混合融液3中で、Ga(ガリウム)とN(窒素)とを反応させて、種基板2上にGaN結晶を成長させる。また、この結晶成長過程において余分な核発生を抑え、大型で高品質のGaN結晶を得るべく、攪拌装置40で混合融液3を攪拌させる。具体的には、モーター50の駆動により外筒48を軸周りに回転させて、磁気的作用により攪拌翼52を有する駆動軸41を軸周りに回転させ、攪拌翼52で混合融液3を攪拌する。
この過程において、坩堝11内のNa蒸気は拡散現象により外部に漏出しようとするが、本実施形態ではガス流路が、軸受スリーブ70Aと駆動軸41との間の隙間Gのみに限定されている。このため、Na蒸気は隙間Gを介して外部に漏出しようとするが、隙間Gは、0.2mmの適切な大きさに管理され、また、隙間Gからは窒素ガスが所定圧で順次供給されるので、Na蒸気は隙間Gから漏出できず、坩堝11内で滞留することとなる。
【0024】
したがって、上述した本実施形態によれば、加熱加圧雰囲気下で窒素ガスとNa/Ga混合融液3とを反応させて該混合融液3に浸漬された種基板2上にGaN結晶を成長させる坩堝11と、坩堝11を挿通して設けられた駆動軸41を軸周りに回転させて混合融液3を攪拌する攪拌装置40と、を有する窒化ガリウム製造装置1であって、駆動軸41の挿通により坩堝11に形成される隙間Gをガス流路とし、該ガス流路から坩堝11内部に窒素ガスを供給する窒素ガス供給ポート17を有するという構成を採用することによって、ガス流路を必要限にし、Na蒸気の漏出を防ぎつつ窒素ガスを坩堝11内に供給することができる。
したがって、本実施形態では、坩堝11を挿通する攪拌用の駆動軸41を設けても、Na蒸気の漏出を防ぎつつ窒素ガスを坩堝11内に供給でき、また、攪拌により余分な核発生を抑え、大型で高品質のGaN結晶を得ることができる。
【0025】
以上、図面を参照しながら本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0026】
例えば、上述した実施形態では、軸受スリーブ70Aの内周面と駆動軸41の外周面との間の隙間Gの大きさを管理すると説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、以下の構成で管理しても良い。
図3は、本発明の別実施形態における坩堝11の軸受け構造を示す図である。なお、図3(a)は平面図を示し、図3(b)は断面図を示す。図3においては、隙間Gを、軸受スリーブ70Aの内周面に形成された溝部71と、駆動軸41に設けた溝部41bとにより管理している。
図4は、本発明の別実施形態における坩堝11の軸受け構造を示す断面図である。図4においては隙間Gを、坩堝11に形成された孔部11aと軸受スリーブ70Aとの間で管理している。
【0027】
(実施例)
以下、図5に示す実施例により、窒化ガリウム製造装置の具体的な装置構成について説明する。図5(a)は攪拌装置40の平面図を、図5(b)は窒化ガリウム製造装置1の全体図を示す。なお、以下説明する実施例では、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0028】
窒化ガリウム製造装置1は、種基板2及び混合融液3を保持する反応部10と、反応部10の外側を囲う断熱容器20と、断熱容器20の外側を囲う圧力容器30と、混合融液3を攪拌する攪拌装置40と、を有する。
【0029】
反応部10は、坩堝11、内容器12、外容器13の三層構造となっている。坩堝11内には、複数の種基板2を保持するホルダ14が設けられている。ホルダ14は、種基板2を斜めの姿勢で保持し、複数の種基板2を攪拌翼52の周りに等間隔で配置する構成となっている。坩堝11と内容器12との間には、坩堝取外治具15が設けられている。坩堝取外治具15は、坩堝11を囲うように設けられており、坩堝取外治具15を引き上げることで、坩堝11が内容器12に対して取り外される。外容器13は、内容器12の四方及び上方を覆う蓋形状を有する。外容器13は、その開口端縁が当接する支持台16の支持面と協働して内容器12を囲うと共に、内容器12を固定する構成となっている。
【0030】
外容器13の天部には、窒素ガス供給ポート17が接続されている。窒素ガス供給ポート17は、不図示の窒素ガス供給装置に接続されており、外容器13の内部に窒素ガスが充填されるよう構成されている。窒素ガスは、駆動軸41を坩堝11及び内容器12を挿通して設けることで形成される隙間から坩堝11内に供給される。具体的には、図2に示す構造と同様の構造を備える軸受スリーブ70A1と駆動軸41との間の隙間により形成される、坩堝11と内容器12との間のガス流通経路を窒素ガスが流通する。また、同様に、図2に示す構造と同様の構造を備える軸受スリーブ70A2と駆動軸41との間の隙間により形成される、内容器12と外容器13との間のガス流通経路を窒素ガスが流通する。また、外容器13の天部には、余分な窒素ガスを断熱容器20側に抜き出す窒素ガス排出ポート18が接続されている。
【0031】
断熱容器20は、圧力容器30の底部に接地固定される脚部23を有する。支持台16は、断熱容器20の底部を支える支持板24上に固定される。断熱容器20は、外容器13を支持台16に向けて付勢する蓋押さえ機構25を有する。蓋押さえ機構25は、断熱容器20の天部に固定された天板26上に固定される。蓋押さえ機構25は、一端側にバネ機構を有して他端側で外容器13の天部と接触するシャフト27を備え、攪拌による反応部10の振動やズレを抑制する。なお、シャフト27が挿通する断熱容器20に形成された孔部は、バネ機構を収容するケース28により覆われた気密空間と連通する構成となっている。
【0032】
圧力容器30の側部には、真空排気ポート33が接続されている。真空排気ポート33は、不図示の真空ポンプと接続されている。圧力容器30の天部は、断熱容器20の天部と、連結具35により一体的に固定されており、圧力容器30の天部及び断熱容器20の天部は一体で取り外し可能な構成となっている。なお、圧力容器30の胴部と天部との間は、シール材34により気密にシールされる構成となっている。
【0033】
軸ケース42から延びる駆動軸41の他端側は、圧力容器30、断熱容器20及び反応部10の各層を挿通され、混合融液3中に至る構成となっている。駆動軸41は、第1駆動軸41Aと第2駆動軸41Bとが軸継手60Aにより係合して構成され、第2駆動軸41Bと第3駆動軸41Cとが軸継手60Bにより係合して構成されている。なお、第1駆動軸41Aは、軸ケース42によって回転自在に支持され、第2駆動軸41Bは、断熱容器20に設けられた軸受70Cにより回転自在に支持され、第3駆動軸41Cは、反応部10に設けられた軸受スリーブ70A1,70A2,70Bにより回転自在に支持されている。
【0034】
ベローズ管53は、断熱容器20と軸ケース42との間において駆動軸41を囲う構成となっている。ベローズ管53は、その一端側が、軸受70Cを断熱容器20に固定する固定具29に螺着して第1孔部22を気密に囲い、その他端側が、軸ケース42を圧力容器30に固定する固定具36に螺着して収容空間S1(図1参照)と気密に連通する構成となっている。したがって、第1孔部22より外側には、ベローズ管53、収容空間S1が連通した気密空間が形成される。
【0035】
上述した実施例によれば、軸受スリーブ70A1,70A2と駆動軸41との隙間G(図2参照)により、Na蒸気の漏出を防ぎつつ窒素ガスを坩堝11内に供給することができる。
したがって、本実施例では、坩堝11を挿通する攪拌用の駆動軸41を設けても、Na蒸気の漏出を防ぎつつ窒素ガスを坩堝11内に供給でき、また、攪拌により余分な核発生を抑え、大型で高品質のGaN結晶を得ることができる。
【符号の説明】
【0036】
1…窒化ガリウム製造装置(結晶成長装置)、2…種基板、3…混合融液、11…坩堝(反応容器)、17…窒素ガス供給ポート(原料ガス供給装置)、40…攪拌装置、41…駆動軸、41b…溝部、70A,70A1,70A2…軸受スリーブ、71…溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱加圧雰囲気下で原料ガスと融液とを反応させて該融液に浸漬された種基板上に結晶を成長させる反応容器と、前記反応容器を挿通して設けられた駆動軸を軸周りに回転させて前記融液を攪拌する攪拌装置と、を有する結晶成長装置であって、
前記駆動軸の挿通により前記反応容器に形成される隙間をガス流路とし、該ガス流路から前記反応容器内部に前記原料ガスを供給する原料ガス供給装置を有することを特徴とする結晶成長装置。
【請求項2】
前記反応容器には、前記挿通して設けられた前記駆動軸を軸支する軸受スリーブが設けられており、
前記ガス流路は、前記駆動軸と前記軸受スリーブとの間の隙間、及び、前記軸受スリーブと前記反応容器との間の隙間の少なくともいずれか一方に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の結晶成長装置。
【請求項3】
前記駆動軸、前記軸受スリーブ、前記反応容器の少なくともいずれかには、前記隙間の大きさを調節する溝部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の結晶成長装置。
【請求項4】
前記軸受スリーブは、窒化ホウ素材から形成されていることを特徴とする請求項2または3に記載の結晶成長装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−173771(P2011−173771A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−40322(P2010−40322)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】