説明

結晶成長装置

【課題】Ga供給配管内にGaN(雑晶)が形成されることを抑制し、Ga供給配管の閉塞を抑制することが可能な結晶成長装置を提供する。
【解決手段】加熱加圧雰囲気下で第1原料と、第2原料及びフラックスからなる融液12と、を反応させて融液12に浸漬された種基板11上に結晶を成長させる反応容器10と、第1原料を反応容器10に供給する第1供給配管61と、第1供給配管61に第1原料を供給する第1供給源60と、第2原料を反応容器10に供給する第2供給配管51と、第2供給配管51に第2原料を供給する第2供給源50と、不活性ガスを反応容器10に供給する第3供給配管61と、第3供給配管61に不活性ガスを供給する第3供給源60と、を備え、第3供給源60は、融液12から蒸発したフラックスのガスが第2供給配管51に流入しないよう第3供給配管61を介して不活性ガスを反応容器10に供給することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶成長装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
次世代半導体材料として窒化ガリウム(GaN)が期待されている。GaNの製法の一つとしては、数MPaの高圧窒素雰囲気中、800℃〜900℃のNa/Ga融液に種基板を浸漬させ、その種基板上にGaN結晶を成長させる結晶成長法(いわゆるフラックス法)が知られている。
【0003】
GaN結晶の製造に用いるGaN結晶成長装置は、加熱加圧雰囲気下で窒素ガス(N2)と、ガリウム(Ga)の融液(液体Ga)及びフラックスとなるナトリクム(Na)の融液からなる融液と、を反応させて融液に浸漬された種基板上にGaN結晶を成長させる反応容器と、反応容器内へ窒素ガスを供給するための窒素ガス供給管と、を備えて構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
GaN結晶成長装置を用いてGaN結晶を製造する場合は、反応容器内へ窒素ガス供給管より窒素ガスを供給した状態でガリウムと窒素ガスを反応させてGaN結晶を成長させている。反応容器内の液体Gaは窒素ガスとの反応によって消費される。
【0005】
ところで、GaNを大きく成長させるためには、GaNの結晶成長を長時間に亘って行わせる必要がある。例えば、GaN結晶の成長期間中、液体Gaと液体Naの割合を維持することが重要となる。このため、GaN結晶の成長とともに消費される液体Gaを、GaN結晶の成長に伴う液体Gaの消費速度に対応した量となるよう調整して逐次反応容器内に供給し続ける技術が求められている。そこで、反応容器内へGaを逐次供給するためのGa供給配管を設けてなる構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−266099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、Ga供給配管を設けると、反応容器内の窒素ガス及び窒素雰囲気中に浮遊するナトリウムガス(融液から蒸発したナトリウムガス)がGa供給配管内に流入する場合がある。窒素ガス及びナトリウムガスがGa供給配管に流入すると、Ga供給配管内に残ったGaがナトリウムガスを介して窒素と反応する。これにより、Ga供給配管内にGaN(雑晶)が形成され、Ga供給配管を閉塞させてしまうおそれがある。
【0008】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、Ga供給配管内にGaN(雑晶)が形成されることを抑制し、Ga供給配管の閉塞を抑制することが可能な結晶成長装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、加熱加圧雰囲気下で第1原料と、第2原料及びフラックスからなる融液と、を反応させて前記融液に浸漬された種基板上に結晶を成長させる反応容器と、前記第1原料を前記反応容器に供給する第1供給配管と、前記第1供給配管に前記第1原料を供給する第1供給源と、前記第2原料を前記反応容器に供給する第2供給配管と、前記第2供給配管に前記第2原料を供給する第2供給源と、不活性ガスを前記反応容器に供給する第3供給配管と、前記第3供給配管に前記不活性ガスを供給する第3供給源と、を備え、前記第3供給源は、前記融液から蒸発した前記フラックスのガスが前記第2供給配管に流入しないよう前記第3供給配管を介して前記不活性ガスを前記反応容器に供給することを特徴とする結晶成長装置を採用する。
【0010】
このような構成を採用することによって、本発明では、第3供給源によって、融液から蒸発したフラックスのガスが第2供給配管に流入しないよう、不活性ガスが第3供給配管に供給される。このため、特許文献1のように融液から蒸発したフラックスのガスが第2供給配管に流入することはない。したがって、第2供給配管内に雑晶が形成されることを抑制し、第2供給配管の閉塞を抑制することが可能な結晶成長装置を提供することができる。
【0011】
また、本発明においては、前記第1供給配管と前記第2供給配管とが同じ配管からなり、かつ、前記第1供給源と前記第3供給源とが同じ供給源からなるという構成を採用する。
【0012】
また、本発明においては、前記第1原料及び前記不活性ガスとして窒素ガス、前記第2原料としてガリウム、前記フラックスとしてナトリウムを用いるという構成を採用する。
【0013】
また、本発明においては、前記第2供給配管は、前記反応容器の上部に挿通し、かつ、前記反応容器に対して垂直な垂直供給路と、前記反応容器に向かう下り傾斜を有する傾斜供給路と、の少なくとも一方を有するという構成を採用する。
【0014】
また、本発明においては、前記第2供給配管は、先端部が先細りのテーパー形状となっているという構成を採用する。
【0015】
また、本発明においては、前記第2供給配管と前記第3供給配管とで一重菅となっており、前記第2供給源が前記第2供給配管を介して前記第2原料を前記反応容器に供給した後に、前記第3供給源が前記第3供給配管を介して前記不活性ガスを前記反応容器に供給するという構成を採用する。
【0016】
また、本発明においては、前記第2供給配管と前記第3供給配管とで二重菅となっており、前記第2供給配管が内側に配置され、前記第3供給配管が外側に配置されており、前記第2供給源が前記第2供給配管を介して前記第2原料を前記反応容器に供給する際に、前記第3供給源が前記第3供給配管を介して前記不活性ガスを前記反応容器に供給するという構成を採用する。
【0017】
また、本発明においては、前記第3供給配管は、先端部が先細りのテーパー形状となっているという構成を採用する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、第3供給源によって、融液から蒸発したフラックスのガスが第2供給配管に流入しないよう、不活性ガスが第3供給配管に供給される。このため、特許文献1のように融液から蒸発したフラックスのガスが第2供給配管に流入することはない。
したがって、本発明では、第2供給配管内に雑晶が形成されることを抑制し、第2供給配管の閉塞を抑制することが可能な結晶成長装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態における結晶成長装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】本発明の第1実施形態における閉塞解除装置の概略構成を示す模式図である。
【図3】本発明の第2実施形態における第2供給配管及び第3供給配管を示す模式図である。
【図4】本発明の第3実施形態における第2供給配管及び第3供給配管を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。かかる実施の形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等が異なっている。
【0021】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態における結晶成長装置の概略構成を示す模式図である。なお、以下の説明では、本実施形態の結晶成長装置として、窒化ガリウム製造装置を例示して説明する。
【0022】
図1に示すように、窒化ガリウム製造装置1は、フラックス法により種基板11上にGaN結晶を成長させ製造するものである。窒化ガリウム製造装置1は、種基板11及び混合融液12を保持する反応容器10と、反応容器10の外側を囲う断熱容器20と、断熱容器20の外側を囲う圧力容器30と、混合融液12を攪拌する攪拌装置40と、圧力容器30の内部圧力を調整する不図示の圧力調整装置と、を備えている。なお、反応容器10、断熱容器20、圧力容器30の側部は、同心の円筒形状に形状されている。反応容器10、断熱容器20、圧力容器30は、同心の円筒形状の中心軸が鉛直方向となるように姿勢設定されている。
【0023】
窒化ガリウム製造装置1は、第1原料を反応容器10に供給する第1供給配管と、第1供給配管に第1原料を供給する第1供給源と、第2原料を反応容器10に供給する第2供給配管と、第2供給配管に第2原料を供給する第2供給源と、不活性ガスを反応容器10に供給する第3供給配管と、第3供給配管に不活性ガスを供給する第3供給源と、を備えて構成されている。さらに、窒化ガリウム製造装置1は、第2供給配管の閉塞を解除する閉塞解除装置100を備えている。なお、「不活性ガス」とは、第1原料と第2原料との反応により種基板11上に結晶を成長させるのに不活性なガスをいう。
【0024】
本実施形態では、第1供給配管と第3供給配管とが同じ配管からなり、かつ、第1供給源と第3供給源とが同じ供給源からなっている。これにより、第1供給配管と第2供給配管とが異なる配管からなり、かつ、第1供給源と第3供給源とが異なる供給源からなる場合に比べて、装置の簡素化及び小型化を図ることができる。
【0025】
本実施形態では、第1原料及び不活性ガスとして窒素ガス(N)、第2原料としてガリウム(Ga)、フラックスとしてナトリウム(Na)を用いることとする。以下の説明では、第1供給配管及び第3供給配管として窒素ガス供給配管(N供給配管)61、第1供給源及び第3供給源として窒素ガス供給源(Nボンベ)60、第2供給配管として液体ガリウム供給配管(Ga供給配管)51、第2供給源として液体ガリウム供給源(Gaタンク)50を例示して説明する。
【0026】
反応容器10は、内部にNa/Gaからなる混合融液12を保有する。反応容器10としては、例えばセラミックス製の坩堝からなる。これにより、反応容器10に不純物等の異物が混入することを防止することができる。反応容器10は、底部に種基板11を載置し、内部の混合融液12に浸漬させる構成となっている。反応容器10の内部圧力は、数MPa〜10MPaに設定されている。混合融液12の温度は、800℃〜900℃に設定されている。
【0027】
断熱容器20の断熱材としては、例えばグラスウールなどの繊維系断熱材が用いられる。断熱容器20の内側には、反応容器10の側方及び下方を囲んで反応容器10を加熱するヒーター21が設けられている。
【0028】
圧力容器30は、圧力状態が変化した場合であってもその圧力に耐えられるように略円筒形状に形状設定された真空容器からなる。圧力容器30には、内部の空気を真空排気する真空排気手段80が接続されている。真空排気手段80は、排気管81と、開閉弁82と、圧力調整弁83とを備えている。開閉弁82は、圧力容器30と圧力調整弁83との間を通る排気ガスの通路の開閉を行う。圧力調整弁83は、圧力容器30内部からの排気ガスの吐出圧を一定状態に調整したり減じたりする。
【0029】
攪拌装置40は、反応容器10に挿通して設けられた駆動軸41と、駆動軸41の一端に固定された攪拌体42と、駆動軸41を回転させる駆動部43とを備えている。駆動軸41は、一端部が反応容器10を挿通し、混合融液12中に至る構成となっている。駆動軸41は、一端部の先端に攪拌体42を備えている。攪拌体42は、略円板形状となっている。攪拌体42の径は、駆動軸41の径よりも大きくなっている。駆動部43は、圧力容器30の外部に固定して設けられている。駆動部43は、例えば内部にモーターやソレノイド等の駆動源を備えている。駆動部43により駆動軸41に固定された攪拌体42が回転し、反応容器10の内部の混合融液12を攪拌するようになっている。
【0030】
Gaタンク50の内部には、液体Gaが収容されている。Gaタンク50の外側には、Gaタンク50の側方を囲んでGaタンク50を加熱するヒーター56が設けられている。ヒーター56の加熱温度は、例えば50℃〜70℃程度に設定されている。
【0031】
Ga供給配管51は、Gaタンク50と反応容器10の間に設けられている。具体的には、Ga供給配管51は、一端がGaタンク50の下部に接続されており、他端が反応容器10の上部に挿通されている。Ga供給配管51は、反応容器10に対して垂直な垂直供給路51Raと、反応容器10に向かう下り傾斜を有する傾斜供給路51Rbと、を有している。これにより、液体ガリウムを、Ga供給配管51内に滞留させることなく、反応容器10の内部に流すことができる。
【0032】
Ga供給配管51は、反応容器10の内部に突出した先端部が先細りのテーパー形状となっている。これにより、Ga供給配管51に向かう混合融液12から蒸発したナトリウムガスは、Ga供給配管51の先端部のテーパー形状に沿って外向きに流れる。このため、混合融液12から蒸発したナトリウムガス(Naガス)がGa供給配管51内に流入することを抑制することができる。なお、Ga供給配管51は、不純物混入防止の観点から、例えばセラミックス系の材料で形成されている。
【0033】
Ga供給配管51には、Gaタンク50から反応容器10に至るまでの経路において、複数の開閉弁52a,52b,52c、ポンプ53、圧力調整弁54、逆止弁55が設けられている。
【0034】
開閉弁52aは、Gaタンク50とポンプ53との間を通る液体Gaの通路の開閉を行う。ポンプ53は、Gaタンク50から供給された液体Gaの圧力を高めたり減圧したりする。開閉弁52bは、ポンプ53と圧力調整弁54との間を通る液体Gaの通路の開閉を行う。圧力調整弁54は、ポンプ53からの液体Gaの吐出圧を一定状態に調整したり減じたりする。逆止弁55は、液体Gaの流れを常に一定に保ち、液体Gaの逆流を防止する。
【0035】
このような構成により、反応容器10の内部でGaN結晶の成長とともに消費される液体Gaを、GaN結晶の成長に伴う液体Gaの消費速度に対応した量となるよう調整して逐次反応容器10内に供給するようになっている。
【0036】
Ga供給配管51の外側には、ヒーター57が設けられている。ヒーター57は、Ga供給配管51(Gaタンク50と圧力容器30との間の通路)、複数の開閉弁52a,52b,52c、ポンプ53、圧力調整弁54、逆止弁55を加熱する。ヒーター57の加熱温度は、例えば50℃〜70℃程度に設定されている。
【0037】
ボンベ60の内部には、窒素ガス(N)が収容されている。本実施形態では、Nボンベ60が3本設けられている。なお、Nボンベ60の設置数については3本に限らず、1本又は2本、4本以上等、必要に応じて適宜変更することができる。
【0038】
供給配管61は、Nボンベ60と逆止弁55との間に設けられている。具体的には、N供給配管61は、一端がNボンベ60の上部に接続されており、他端がGa供給配管51の傾斜供給路51Rbに接続されている。なお、N供給配管61は、不純物混入防止の観点から、例えばセラミックス系の材料で形成されている。
【0039】
供給配管61には、Nボンベ60から逆止弁55に至るまでの経路において、複数の開閉弁62a,62b,圧力調整弁63,64が設けられている。
【0040】
開閉弁62aは、Nボンベ60と圧力調整弁63との間を通るNの通路の開閉を行う。圧力調整弁63は、Nボンベ60から供給されたNの圧力を高めたり減圧したりする。圧力調整弁64は、圧力調整弁63からのNの吐出圧を一定状態に調整したり減じたりする。圧力調整弁64は、例えば、Nの圧力を数MPa〜10MPaに設定し、Nの流量を数10sccm〜数100sccmに設定する。開閉弁62bは、圧力調整弁64と逆止弁55との間を通るNの通路の開閉を行う。なお、逆止弁55は、Nの流れを常に一定に保ち、Nの逆流を防止する。
【0041】
このような構成により、反応容器10の内部でGaN結晶の成長とともに消費されるNを、GaN結晶の成長に伴うNの消費速度に対応した量となるよう調整して逐次反応容器10内に供給するようになっている。
【0042】
ボンベ60は、混合融液12から蒸発したNaガスがGa供給配管51に流入しないようN供給配管61を介してNを反応容器10に供給する。Nボンベ60によって供給されたNはN供給配管61を経由してGa供給配管51に供給される。Ga供給配管51に供給されたNは、傾斜供給路51Rb、垂直供給路51Raを経由して反応容器10の内部に流れる。
【0043】
本実施形態では、Ga供給配管51とN供給配管61とで一重管となっている。言い換えると、Ga供給配管51の垂直供給路51Ra(及び傾斜供給路51Rbの一部)において、液体Gaの供給路とNの供給路とが同じになっている。Gaタンク50がGa供給配管51を介して液体Gaを反応容器10に供給した後に、Nボンベ60がN供給配管61を介してNを反応容器10に供給する。
【0044】
これにより、混合融液12から蒸発したNaガスがGa供給配管51の垂直供給路51Raに流入することを抑制することができる。
【0045】
閉塞解除装置100は、閉塞解除配管71を介して、Ga供給配管51の垂直供給路51Raに接続されている。閉塞解除配管71には、開閉弁72が設けられている。開閉弁72は、閉塞解除装置100とGa供給配管51の垂直供給路51Raとの間を通る挿通部101(図2参照)の通路の開閉を行う。
【0046】
図2は、本発明の第1実施形態における閉塞解除装置の概略構成を示す模式図である。閉塞解除装置100は、窒化ガリウム製造装置1においてGaN結晶を製造していないとき等のメンテナンス時に用いられる。閉塞解除装置100は、Ga供給配管51内にGaNの雑晶が形成された場合に、Ga供給配管51の閉塞を解除するものである。
【0047】
図2に示すように、閉塞解除装置100は、Ga供給配管51に挿通される挿通部101と、挿通部101をガイドするガイド部110と、ガイド部110を支持するフランジ部111と、支持部120と、挿通部101をガイド部110に沿って移動させる第1駆動部130と、挿通部101を回転させる第2駆動部140と、を備えている。
【0048】
挿通部101は、一端部(−Z軸方向側)が先鋭形状となっている。これにより、Ga供給配管51内にGaNの雑晶が形成された場合に、Ga供給配管51の閉塞を確実に解除することができる。なお、挿通部101は、他端部(+Z軸方向側)に例えば金属等の第1磁性体を備えている。
【0049】
ガイド部110は、フランジ部111上に設けられている。ガイド部110は、一方向(Z軸方向)に延在する中空円筒形状となっている。ガイド部110の内径は、挿通部101の他端部の外径よりも大きく設定されている。
【0050】
フランジ部111は、円板形状となっている。フランジ部111の径は、ガイド部110の外径よりも大きく設定されている。フランジ部111は、閉塞解除装置100と閉塞解除配管71(図1参照)とを接続する接続部として機能する。
【0051】
支持部120は、挿通部101の他端部を磁気力で支持する第2磁性体121と、第2駆動部140を支持するベース部122と、を備えている。第2磁性体121としては、例えば磁石を用いることができる。これにより、第2磁性体121と第1磁性体との間には互いに引き合う力が作用する。ベース部122には、ガイド部110と重なる位置に平面視円形の開口部123aが形成されている。開口部123の径は、ガイド部110の外径よりも大きく設定されている。
【0052】
第1駆動部130は、第1モーター131と、小口径の円形歯車(ピニオン)132と歯切りをした棒(ラック)133と、を備えている。第1駆動部130は、いわゆるラックアンドピニオン機構を有している。第1モーター131で発生した回転力はラックアンドピニオン機構により直線の動きに変換される。第1駆動部130は、挿通部101をガイド部110に沿って上下に移動させる。
【0053】
第2駆動部140は、第2モーター141と、第2モーター141で発生した回転力を第2磁性体121に伝達する伝達部142と、を備えている。第2駆動部140は、挿通部101をZ軸回りに回転させる。
【0054】
このような構成により、Ga供給配管51内に形成されたGaNの雑晶が取り除かれる。閉塞解除装置100によって取り除かれたGaNの雑晶(削り粉)は、反応容器10の内部に落とされたり別の容器に落とされたりする。反応容器10は、メンテナンス時に削り粉が残らないよう洗浄される。
【0055】
したがって、本実施形態では、Nボンベ60によって、混合融液12から蒸発したNaガスがGa供給配管51に流入しないよう、NがN供給配管61に供給される。このため、特許文献1のように融液から蒸発したNaガスがGa供給配管に流入することはない。したがって、Ga供給配管51内にGaNの雑晶が形成されることを抑制し、Ga供給配管51の閉塞を抑制することが可能な窒化ガリウム製造装置1を提供することができる。
【0056】
また、本実施形態では、第1供給配管と第3供給配管とが同じ配管からなり、かつ、第1供給源と第3供給源とが同じ供給源からなっている。これにより、第1供給配管と第2供給配管とが異なる配管からなり、かつ、第1供給源と第3供給源とが異なる供給源からなる場合に比べて、装置の簡素化及び小型化を図ることができる。
【0057】
また、本実施形態では、第1原料及び不活性ガスとして窒素ガス、第2原料としてガリウム、フラックスとしてナトリウムを用いている。これにより、第1原料と不活性ガスとが異なるガスからなる場合に比べて、使用する原料を削減することができ、GaN結晶の製造を低コストで行うことが可能となる。
【0058】
また、本実施形態では、Ga供給配管51は、他端が反応容器10の上部に挿通されており、かつ、反応容器10に対して垂直な垂直供給路51Raと、反応容器10に向かう下り傾斜を有する傾斜供給路51Rbと、を有している。これにより、液体ガリウムを、Ga供給配管51内に滞留させることなく、反応容器10の内部に流すことができる。
【0059】
また、本実施形態では、Ga供給配管51の先端部が先細りのテーパー形状となっている。これにより、Ga供給配管51に向かう混合融液12から蒸発したナトリウムガスは、Ga供給配管51の先端部のテーパー形状に沿って外向きに流れる。このため、混合融液12から蒸発したNaガスがGa供給配管51内に流入することを抑制することができる。
【0060】
また、本実施形態では、Ga供給配管51とN供給配管61とで一重管となっており、Gaタンク50がGa供給配管51を介して液体Gaを反応容器10に供給した後に、Nボンベ60がN供給配管61を介してNを反応容器10に供給する。これにより、混合融液12から蒸発したNaガスがGa供給配管51の垂直供給路51Raに流入することを抑制することができる。
【0061】
なお、本実施形態では、不活性ガスとして窒素ガスを用いる場合を例示して説明したがこれに限らない。例えば、不活性ガスとしてアルゴンガス、ヘリウムガス、水素ガスを用いることもできる。この場合、窒化ガリウム製造装置は、第1供給配管と第2供給配管とが異なる配管からなり、かつ、第1供給源と第3供給源とが異なる供給源からなるように構成される。
【0062】
また、本実施形態では、第2原料としてガリウムを用いる場合を例示して説明したがこれに限らない。例えば、アルミニウム、インジウム、タリウム等の13族金属を用いることもできる。
【0063】
また、本実施形態では、フラックスとしてナトリウムを用いる場合を例示して説明したがこれに限らない。例えば、フラックスとしてリチウムやカリウム等のアルカリ金属やマグネシウムやカルシウム等のアルカリ土類金属、及びそれらの混合物を用いることもできる。
【0064】
また、本実施形態では、Ga供給配管51が反応容器10の上部に挿通する垂直供給路51Raと、傾斜供給路51Rbと、を有する構成を例示して説明したがこれに限らない。例えば、Ga供給配管が反応容器の上部に挿通する垂直供給路を有する構成であってもよいし、反応容器の上部に挿通する傾斜供給路を有する構成であってもよい。すなわち、Ga供給配管は、反応容器の上部に挿通し、かつ、垂直供給路と、傾斜供給路と、の少なくとも一方を有していればよい。
【0065】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る窒化ガリウム製造装置の構成について、図3を用いて説明する。図3は、本発明の第2実施形態における第2供給配管及び第3供給配管を示す模式図である。なお、図3においては、反応容器の内部に突出した第2供給配管及び第3供給配管以外の構成部品(図1参照)については、上述した窒化ガリウム製造装置1と同様であるため、便宜上、図示を省略している。図3に示すように、本実施形態の窒化ガリウム製造装置は、第2供給配管と第3供給配管とで二重管となっている点で、上述の第1実施形態で説明した窒化ガリウム製造装置1と異なる。なお、以下の説明では、第2供給配管として液体ガリウム供給配管(Ga供給配管)171、第3供給配管として窒素ガス供給配管(N供給配管)172を例示して説明する。
【0066】
本実施形態の窒化ガリウム製造装置は、Ga供給配管171とN供給配管172とで中心軸が同軸の二重管となっている。Ga供給配管171が内側に配置され、N供給配管172が外側に配置されている。Ga供給配管171の先端(−Z方向側)は、N供給配管172の先端(−Z方向側)よりも内側(+Z方向側)に配置されている。Gaタンク50(図1参照)がGa供給配管171を介して液体Gaを反応容器10(図1参照)に供給する際に、Nボンベ60(図1参照)がN供給配管172を介してNを反応容器10に供給する。
【0067】
したがって、本実施形態では、Ga供給配管171で液体Gaを反応容器10に供給中であってもN供給配管172でNを常時反応容器10に流し続けることができる。このため、Gaタンク50がGa供給配管171を介して液体Gaを反応容器10に供給した後に、Nボンベ60がN供給配管172を介してNを反応容器10に供給する場合に比べて、混合融液12から蒸発したNaガスがGa供給配管171の内部に流入することを抑制することができる。したがって、Ga供給配管171内にGaNの雑晶が形成されることを抑制し、Ga供給配管171の閉塞を抑制することが可能な窒化ガリウム製造装置を提供することができる。
【0068】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る窒化ガリウム製造装置の構成について、図4を用いて説明する。図4は、図3に対応した、本発明の第3実施形態における第2供給配管及び第3供給配管を示す模式図である。なお、図4においては、反応容器の内部に突出した第2供給配管及び第3供給配管以外の構成部品(図1参照)については、上述した窒化ガリウム製造装置1と同様であるため、便宜上、図示を省略している。図4に示すように、本実施形態の窒化ガリウム製造装置は、第3供給配管の先端部が先細りのテーパー形状となっている点で、上述の第2実施形態で説明した窒化ガリウム製造装置と異なる。なお、以下の説明では、第2供給配管として液体ガリウム供給配管(Ga供給配管)271、第3供給配管として窒素ガス供給配管(N供給配管)272を例示して説明する。
【0069】
本実施形態の窒化ガリウム製造装置は、Ga供給配管271とN供給配管272とで中心軸が同軸の二重管となっている。Ga供給配管271が内側に配置され、N供給配管272が外側に配置されている。Ga供給配管271の先端(−Z方向側)は、N供給配管272の先端(−Z方向側)よりも内側(+Z方向側)に配置されている。Gaタンク50(図1参照)がGa供給配管171を介して液体Gaを反応容器10(図1参照)に供給する際に、Nボンベ60(図1参照)がN供給配管172を介してNを反応容器10に供給する。
【0070】
供給配管272は、先端部が先細りのテーパー形状となっている。具体的には、N供給配管272の先端部の内部に、Ga供給配管271の長手方向に対して斜めの傾斜面273aを有する流路変換部273が設けられている。流路変換部273は、例えばねじ込み等によりN供給配管272の先端部に固定されている。流路変換部273は、N供給配管272に沿って−Z方向に直進して流れるNの進路を直進方向(−Z方向)から斜め方向(Z軸と交差する方向)に変換する。これにより、N供給配管272を通るNの流れは、内側のGa供給配管271の先端に向く流れとなる。
【0071】
したがって、本実施形態では、Ga供給配管271から流出する液体Gaの流れ方向とN供給配管272から流出するNの流れ方向とを交差させることができる。このため、流路変換部273を設けていない場合に比べて、混合融液12から蒸発したNaガスがGa供給配管271の内部に流入することを抑制することができる。したがって、Ga供給配管271内にGaNの雑晶が形成されることを抑制し、Ga供給配管271の閉塞を抑制することが可能な窒化ガリウム製造装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0072】
1…窒化ガリウム製造装置(結晶成長装置)、10…反応容器、11…種基板、12…融液、50…Ga供給源(第2供給源)、51,171,172…Ga供給配管(第2供給配管)、51Ra…垂直供給路、51Rb…傾斜供給路、60…N供給源(第1供給源、第3供給源)、61,172,272…N供給配管(第1供給配管、第3供給配管)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱加圧雰囲気下で第1原料と、第2原料及びフラックスからなる融液と、を反応させて前記融液に浸漬された種基板上に結晶を成長させる反応容器と、
前記第1原料を前記反応容器に供給する第1供給配管と、
前記第1供給配管に前記第1原料を供給する第1供給源と、
前記第2原料を前記反応容器に供給する第2供給配管と、
前記第2供給配管に前記第2原料を供給する第2供給源と、
不活性ガスを前記反応容器に供給する第3供給配管と、
前記第3供給配管に前記不活性ガスを供給する第3供給源と、を備え、
前記第3供給源は、前記融液から蒸発した前記フラックスのガスが前記第2供給配管に流入しないよう前記第3供給配管を介して前記不活性ガスを前記反応容器に供給することを特徴とする結晶成長装置。
【請求項2】
前記第1供給配管と前記第2供給配管とが同じ配管からなり、かつ、前記第1供給源と前記第3供給源とが同じ供給源からなることを特徴とする請求項1に記載の結晶成長装置。
【請求項3】
前記第1原料及び前記不活性ガスとして窒素ガス、前記第2原料としてガリウム、前記フラックスとしてナトリウムを用いることを特徴とする請求項1または2に記載の結晶成長装置。
【請求項4】
前記第2供給配管は、前記反応容器の上部に挿通し、かつ、前記反応容器に対して垂直な垂直供給路と、前記反応容器に向かう下り傾斜を有する傾斜供給路と、の少なくとも一方を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の結晶成長装置。
【請求項5】
前記第2供給配管は、先端部が先細りのテーパー形状となっていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の結晶成長装置。
【請求項6】
前記第2供給配管と前記第3供給配管とで一重菅となっており、
前記第2供給源が前記第2供給配管を介して前記第2原料を前記反応容器に供給した後に、前記第3供給源が前記第3供給配管を介して前記不活性ガスを前記反応容器に供給することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の結晶成長装置。
【請求項7】
前記第2供給配管と前記第3供給配管とで二重菅となっており、
前記第2供給配管が内側に配置され、前記第3供給配管が外側に配置されており、
前記第2供給源が前記第2供給配管を介して前記第2原料を前記反応容器に供給する際に、前記第3供給源が前記第3供給配管を介して前記不活性ガスを前記反応容器に供給することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の結晶成長装置。
【請求項8】
前記第3供給配管は、先端部が先細りのテーパー形状となっていることを特徴とする請求項7に記載の結晶成長装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−140282(P2012−140282A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293731(P2010−293731)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】