説明

結晶格子モアレパターン取得方法および走査型顕微鏡

【課題】高精度かつ短時間で結晶格子像と相似のモアレパターンを得ることを可能にする。
【解決手段】走査型顕微鏡を用いて、結晶構造の結晶格子モアレパターンを取得する方法であって、前記結晶構造の走査面において、前記結晶構造と方位に対応して、複数の仮想格子点を周期的に配置する工程と、入射プローブを用いて複数の前記仮想格子点からの信号を検出する工程と、検出した前記信号に基づいて、前記結晶構造の結晶格子モアレパターンを生成する工程と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶格子モアレパターン取得方法および走査型顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
透過型電子顕微鏡(以下、TEMとも云う)および走査透過型電子顕微鏡(以下、STEMとも云う)では原子レベルの高分解能化が達成されており、結晶の二次元格子像を観察可能になっている。結晶格子は結晶内部では周期的な構造であり、この周期性を利用した有用な測定方法が種々ある。
【0003】
特にSTEMはHAADF(高角度環状暗視野)検出法により原子列を直視する方法が確立されており、またこのHAADF信号を含めた多数の信号を同時に測定可能である利点がある。しかしSTEMは走査法のために結晶格子像を撮影可能な分解能で十分な信号強度を得るための撮影時間は50nm角程度の領域の像で数秒〜数分程度を要する。市販の装置で最も安定している場合でも1nm/分程度の位置安定性である。このため、ほとんどの格子距離は1nm以下であるので、求められる精度が像全体で格子ひとつ分であれば1分の取得時間では1nm程度動いてしまう計算になり、精度が満たせないことになる。
【0004】
さらに結晶格子像が観察可能な分解能を保ったまま広範囲の走査を必要とする大面積(低倍率)での像取得は、走査ステップが高分解能の条件のままであれば走査時間が走査範囲の面積に比例し、面積が1辺の2乗に比例するため、例えば走査領域のスケールが10倍であれば走査時間は100倍と膨大になることと、それに加え時間がかかることにより大幅な位置ずれが起こり高精度な測定が現状不可能であるという問題がある。
【0005】
一方、モアレ干渉は2つ以上の周期パターンの重ね合わせのよって新たな周期パターンが発生する現象であるので、完全な周期性からのわずかな変化を大きいスケールのモアレ干渉の測定によって検出可能である。自然の結晶の断面像は必ず二次元の規則配列であるので、これをビームの走査と測定対象とのモアレ干渉でかつ二次元で実現すればSTEMでは短時間で広い面積を測定可能になる。すなわち、モアレ干渉を用いれば、STEMの位置安定性の問題を短時間測定によって回避できる可能性がある。
【0006】
しかし従来の電子顕微鏡の分野では、例えば、特許文献1に開示されているように、単純な周期グリッドで発生する1次元モアレ縞を利用してフォトニック結晶やピクセルアレイーなどの材料における配列の乱れを検出する方法が知られている。しかし、自然の結晶断面で生じる様々な二次元結晶格子像に対して、二次元モアレパターンの取得および解析の具体的な実現手段がなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−315877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述したように、結晶格子像の周期性を利用した測定方法は、広範囲を高分解能条件で走査する場合に面積に比例した時間を要するという問題と、時間により位置ずれするという問題がある。
【0009】
本発明は、上記事情を考慮してなされたものであって、高精度かつ短時間で結晶格子像と相似のモアレパターンを得ることのできる結晶格子モアレパターン取得方法および走査型顕微鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様による結晶格子モアレパターン取得方法は、走査型顕微鏡を用いて、結晶構造の結晶格子モアレパターンを取得する方法であって、前記結晶構造の走査面において、前記結晶構造と方位に対応して、複数の仮想格子点を周期的に配置する工程と、入射プローブを用いて、複数の前記仮想格子点からの信号を検出する工程と、検出した前記信号に基づいて、前記結晶構造の結晶格子モアレパターンを生成する工程と、を備えていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の第2の態様による走査型顕微鏡は、荷電粒子のビームを発生するビーム発生部と、前記ビームを偏向させるビーム偏向部と、偏向された前記ビームを結晶構造の走査面に収束させる対物レンズと、前記ビームが前記結晶構造に照射された際に前記結晶構造からの信号を検出する検出部と、前記結晶構造の走査面において、前記結晶構造と方位に対応して、周期的に配置される複数の仮想格子点の位置を計算し、設定する計算/設定部と、設定された各仮想格子点の位置に、前記ビーム発生部から発生された荷電粒子のビームが照射されるように、前記ビーム偏向部に制御信号を送り制御する制御部と、前記ビームが前記仮想格子点に照射された際の前記結晶構造からの信号を、前記検出器を介して取得して処理する信号処理部と、前記信号処理部によって処理された信号に基づいて、前記結晶構造の結晶格子モアレパターンを生成するモアレパターン生成部と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高精度かつ短時間で結晶格子像と相似のモアレパターンを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】モアレ周期を説明する図。
【図2】周知のデジタル走査を説明する図。
【図3】一実施形態による二次元結晶格子モアレパターン取得方法の手順を示すフローチャート。
【図4】結晶格子像と結晶格子点との関係を示す図。
【図5】図5(a)乃至図5(c)は仮想格子点および走査を説明する図。
【図6】結晶格子点と仮想格子点を説明する。
【図7】実空間と逆格子空間との関係を説明する図。
【図8】モアレパターンが観察可能となる条件を説明する図。
【図9】図9(a)、9(b)は、結晶格子ベクトルと仮想格子ベクトルが相似の場合における検出信号を得る方法を説明する図。
【図10】図10(a)乃至図10(c)は、完全結晶領域と歪み領域におけるモアレパターンを説明する写真。
【図11】逆格子空間における正常領域および歪み領域のモアレ逆格子ベクトルを説明する図。
【図12】モアレパターンから歪みの算出を説明するための写真。
【図13】仮想格子点からの検出信号の処理を説明する模式図。
【図14】一実施形態による二次元結晶格子モアレパターン取得方法を実施する装置を示す図。
【図15】ビーム制御部を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下で、本発明の各実施形態について図面を参照して説明する。なお、各実施形態を通して共通の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また、各図は発明の説明とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の装置と異なる個所があるが、これらは以下の説明と公知の技術を参酌して適宜、設計変更することがで きる。
【0015】
本発明の実施形態を説明する前に本発明の概要および原理について説明する。
【0016】
(概要および原理)
本発明の一実施形態では、二次元仮想格子点を設定し、各点からの信号を取得することで二次元モアレ干渉パターンを発生させる。そこで、原理に関わる走査顕微鏡法とモアレ縞の発生について説明する。
【0017】
(走査顕微鏡法)
走査顕微鏡法は電子やイオン等の苛電粒子を含む粒子や素粒子等の入射プローブを測定対象に対して照射または作用させ、測定対象からの入射プローブの透過、反射、散乱、もしくは、入射プローブとの相互作用による発生する二次電子や光などの信号を各走査点で同期して検出、プロットし像を得る方法である。
【0018】
(走査範囲と時間)
結晶格子像のように分解能限界に近い高分解能像を得たい場合には、分解能より小さい走査ステップを設定する必要があり、例えば0.1nmの分解能のときに走査ステップが0.02nmとすると1000×1000画素の像では視野は20nm×20nmと非常に狭い領域となる。画像領域を広く取得するためには多数の画素が必要となり、画素数に比例した膨大な時間を要する。更に取得するために時間を要することで大幅な位置ずれが生じ測定精度を保つことができなくなる。
【0019】
(モアレ)
一方モアレ干渉の現象は周期の異なるグリッドパターンの重ね合わせなどの像でそれらの周期の差から新たな周期が発生する現象である。bの絶対値がtの値よりも遙かに小さい値としたとき、例えば一次元では図1に示すように周期tの構造と、この周期tに近い周期s(=t+b、(|b|<<t))の構造がある場合、これらの構造の重ね合わせによって、新たな大きな周期mのパターンが発生する。ここで、mは、下記の式を満たす。
1/m=1/t−1/s
m=st/(s−t)=t(t+b)/b
このような周期のパターンが像の中に見られる場合をモアレ縞と呼んでいる。
【0020】
走査型顕微鏡では走査の周期と測定対象の周期が近い場合に意図せずにモアレ縞が発生することがある。これは走査の周期が周期構造として働いた結果生じる。本発明の一実施形態は、小さい周期差が大きなモアレ周期として現れるこの現象をより効果的に走査型顕微鏡に用いた方法である。
【0021】
(走査方法とモアレ)
走査方法は大きくはアナログ走査法とデジタル走査法に分類される。アナログ走査法は走査線上を連続的に1列ずつ順次走査する方法で、ブラウン管などが典型例である。走査線に垂直方向は不連続のため周期があり、この周期sと、測定対象の周期aとが近い場合にsa/(s−a)の周期の1次元のモアレ縞を発生することは可能である。しかし、走査線方向は連続的に走査するため、二次元的なモアレパターンを発生することはできない。
【0022】
周知のデジタル走査法の場合は、図2に示すように所定のステップで走査するがアナログ走査の走査線に相当する列上を走査幅と走査ステップが多くの場合1:1で一定のピッチで順次走査する。これは表示装置やデジタル画像の画素(ピクセル)のアスペクト比が通常1:1の正方であることに対応している。
【0023】
走査ステップの設定は取得したい像の解像度と画像サイズや倍率で決定されることが多い。一般に中倍率または低倍率の像では分解能限界より、走査ステップが十分大きく問題にならない。このため、必要な解像度の走査ピッチを設定すればよく、この場合、走査ステップは画像の分解能となり、得たい画像サイズ分だけの領域に相当する点を走査する。
【0024】
(モアレの発生条件)
特許文献1に示されているように、分解能に対して1方向の周期のサイズが十分大きい人工グリット格子などは、アナログ走査でもデジタル走査でもモアレパターンを発生させることは可能である。この場合、二次元パターンのように見えるのはグリッドそのものの像と重なっているためで、真の二次元モアレパターンではないことに注意が必要である。
【0025】
しかし、自然界に存在する3次元結晶格子は多様であり、さらに切断する断面の方向によって様々な二次元格子となるため、所望の二次元モアレパターンの取得は様々な格子型に対応する必要がある。モアレパターンを取得するために本発明の一実施形態においては、走査型顕微鏡の中でも、結晶格子の観察可能な分解能を有するものを用い、結晶格子の周期に対応して二次元の仮想格子点を設定し、飛び石状のステップ走査にて上記仮想格子点の各点にビームを滞留させて各点の信号強度を取得し、結像することにより、周期の重ね合わせで発生するモアレパターンを意図的にかつ所望の周期で発生させることを可能にしている。
【0026】
(STEMと結晶格子像)
例えば、走査透過型電子顕微鏡では、原子間隔以下に電子ビームを収束することで原子分解能が達成されており、原子の周期構造である二次元結晶格子像を観測可能である。この場合、結晶格子の一方向の周期と走査の周期が近い場合にモアレパターンが発生することがある。アナログ走査法の場合は走査線の間隔と走査線垂直方向の結晶周期に対応したモアレ縞が発生する可能性があり、デジタル走査法の場合は走査方向にもモアレ縞が発生する可能性があり、条件がそろえば二次元モアレパターンが発生する。しかし前述したように、自然の結晶格子像のように様々な二次元結晶構造に対して意図的にかつ二次元モアレパターンを制御して発生させるためには、周知の走査方法および表示方法では不十分で、所望の二次元モアレ縞を具体的に発生させ解析する方法は無かった。
【0027】
(仮想格子点とステップ走査)
次に、本発明の一実施形態による二次元結晶格子モアレパターン取得方法について説明する。以下では二次元格子空間と二次元逆格子空間を用いて説明するが、3次元格子空間と3次元逆格子空間を用いても同様に説明可能である。
【0028】
周知のデジタル走査においては、走査ステップを決定することによって自然に決まる正方格子点を順次走査し画素を1:1に表示する。
【0029】
これに対して、本発明の一実施形態による二次元結晶格子モアレパターン取得方法においては、図3に示す手順に従って行う。
【0030】
まず、対象の結晶構造と大きさ、方位が未知か否かを判断し(図3の1)、未知の場合に図3の2に進み結晶格子像を取得する。この結晶格子像の取得には、STEMで高分解能の結晶格子像を取得するか、または電子線回折法やX線回折法などの他の方法で結晶構造と方向を把握することでも代替可能である。この手順においてSTEMを用いれば、完全な結晶領域で結晶格子の高分解能像を取得することが可能となり、後述の相似のモアレパターンと比較して、直感的に格子の歪などが把握可能となる。
【0031】
次に、実空間での対象とする結晶構造の原子列の基本的な周期を表す基本単位格子ベクトルの組を元に、それらの線形結合で、格子ベクトルの組a,aを決定する(図3の3)。この格子ベクトルの組a,aは結晶内のある周期を代表するものであって、基本単位ベクトルひとつ分でもよいし、数個分の線形結合であってもよい。例えばモアレパターンを取得したいスケールにおいて、取得時間が適切となる好ましい画素数に対応した画素サイズに近い大きさになるように格子ベクトルの組を決めることができる。格子ベクトルの組が決まると、格子ベクトルを繰り返した点から二次元結晶格子点を描くことができる。ここで、結晶格子点は周期構造を表す代表点であるので、原子の位置とは限らず、格子内のどの点であってもよい。
【0032】
結晶格子点の把握と決め方を、STEMを用いた場合を例にとって説明する。例えば図4に示す結晶格子像が得られた場合は、結晶格子像の周期構造から基本単位格子ベクトルが得られ、これを結晶格子ベクトルの組a,aとして決定する。結晶格子内の任意の点を始点として結晶格子ベクトルの分を繰り返し移動した位置が結晶格子点10になる。各結晶格子点10は、結晶内で等価な点となる。必要な測定領域は結晶の構造と方位を認識可能な数周期分の範囲でも十分である。このようにして、結晶情報、取得したいモアレパターン、および測定範囲を決定し、使用するSTEMの制御装置に入力する(図3の4)。図3の3、4においては、人が行ってもよいし、上記制御装置が自動的に行ってよい。
【0033】
結晶格子における基本格子ベクトルの大きさと方位を正確に把握するためには周期解析に用いられるフーリエ変換も有効である。実空間の格子像を二次元フーリエ変換することにより、結晶格子像の周期は逆格子空間(フーリエ空間の振幅成分)の点として表れる。この逆格子空間の点の中で原点に近い点の組は結晶の逆格子ベクトルに相当するため基本格子ベクトルの方位と大きさを把握することができる。
【0034】
次に、結晶格子ベクトルの組a,aと、結晶格子点10とを基に、対象となる結晶構造の走査面における二次元仮想格子点の位置を計算し、設定する(図3の5)。仮想格子点の設定方法は後述する。
【0035】
次に、仮想格子点ごとの信号を取得する(図3の6)。仮想格子点からの信号の取得は、入射プローブを測定対象の仮想格子点に対して照射または作用させ、測定対象の仮想格子点からの入射プローブの透過、反射、散乱、もしくは、入射プローブとの相互作用による発生する二次電子や光などの信号を検出することにより、取得する。仮想格子点から信号を取得する順番は、信号を取得する位置を信号強度との組で全て記録すれば全く不規則でも構わない。しかし、周知のデジタル走査法に相当するように隣接点を順次飛び石状に検出、結像してもよい。また、正方格子および長方格子以外の格子において、周知のデジタル走査法の延長では表現不可能な場合、例えば図5(a)に示すように仮想格子点15が配置されている場合は、図5(b)または図5(c)に示す方法によって走査してもよい。図5(b)に示す方法は、一方の仮想格子ベクトルsに平行な方向に走査し、もう一方の仮想格子ベクトルsひとつ分だけ始点を移動し、また仮想格子ベクトルsに平行に走査することで、仮想格子点15の走査を実現する方法である。また、図5(c)に示す方法は、仮想格子ベクトルs1、の組み合わせからある規則で走査を実現方法があり、これらの場合は取得する規則を信号と共に記録しておけば信号取得位置は後から計算可能である。
【0036】
次に、仮想格子点から取得した信号に基づいて、二次元結晶格子モアレパターンを生成し、表示する(図3の7)。
【0037】
(仮想格子点によるモアレ発生原理)
次に、仮想格子点を設定することで二次元モアレパターンを発生させる原理と仮想格子点を決定する方法について以下詳細に説明する。
【0038】
図6に示すように結晶格子10を表す結晶格子ベクトルの組としてa,aが決まっているときに信号取得位置を仮想格子点15として表す二次元周期ベクトルの組を(s,s)として設定すれば、それぞれの逆格子ベクトルa’,a’、s’,s’が決まる。また、空間分解能の値をrとし、逆格子空間での空間分解能の大きさはr’とする。
【0039】
実空間での周期の差で発生する二次元モアレパターンの周期m、mはそれらの逆格子空間での周期をm’、m’とすると、図1で説明した一次元の例でモアレの周期が2つの周期の逆数の差で表されることを拡張すれば二次元逆格子空間では2つの逆格子ベクトルの組の差で表すことができるので
’= a’−s
’= a’−s
として表すことができる。これらの逆格子空間のベクトルの組は、例えば図7に示すように結晶格子ベクトルの組(a,a)および仮想格子ベクトルの組(s,s)から逆格子ベクトルの組(a’,a’)および(s’,s’)が計算される。そして、これらの逆格子ベクトルの組から、さらに二次元モアレパターンの周期の逆格子空間における周期の組(m’,m’)が計算される。これらの逆格子空間における周期の組から実空間における周期の組(m、m)が求まる。このため、所望のモアレ周期ベクトルm、mとなるように仮想格子ベクトルs,sの仮想格子点を設定すればよい。したがって、結晶格子ベクトルの組(a,a)および仮想格子ベクトルの組が異なるように、仮想格子点を設定する必要がある。
【0040】
次に、モアレパターンの発生条件を説明する。
【0041】
逆格子空間における周期の組(m’,m’)が存在することによって実空間で生じる二次元モアレパターンの周期m、mが観察可能となるには、逆格子空間における周期m’、m’を構成する各逆格子ベクトルa’、a’が存在しなければならない。これはa’、a’に対応する周期的な結晶面間隔が観察可能と言い換えられる。またモアレパターンの結晶構造に相当する像を得るためには元々の実空間での像で格子ベクトルa、aに相当する周期構造での最小もの、つまり基本の結晶構造が観察可能であることが必要となる。ここで、観察可能とは言い換えると顕微鏡の空間分解能rより構造が大きいことである。よって最小の格子ベクトルa、aについて格子点間の距離、すなわち格子ベクトルa、aの大きさである|a|、|a|が空間分解能rより大きいことが必要条件となる。この条件は、下記の式で表される。
r<|a
r<|a
【0042】
仮想格子ベクトルs、sについても上記と同様に、仮想格子点間の距離、すなわち仮想格子ベクトルの大きさ|s|、|s|が空間分解能rより大きいことが必要条件となる。この条件は、下記の式で表される。
r<|s
r<|s
【0043】
また、逆格子空間では前記の実空間での格子点間隔の観察可能な条件と同様に、結晶面間隔を示す各逆格子ベクトルが空間分解能r’より小さいことが条件となるので下記の式となる。
r’>|a’|
r’>|a’|
r’>|s’|
r’>|s’|
【0044】
これらの条件を幾何学的に表現すると、図8に示すようになる。図8に示すように、半径r’の逆格子空間の円20の内部に、これらのベクトルa’、a’、s’、s’が存在することが条件となる。それらの差分ベクトルm’、m’のうち片方だけがモアレパターン観察可能条件を満たす場合は、モアレパターンは一方向へのいわゆるモアレ縞が観察される。
【0045】
さらに、実際の測定において、k、lを整数として測定範囲をs方向にk個の点、s方向にl個の点とすると、実空間ではベクトルk・s、l・sが張る面の内部が測定範囲となる。この測定範囲は逆格子空間ではs’/k、s’/lの張る面24の外側の領域で表される。モアレパターンの実空間での周期が認識可能であることは周期ベクトルm、mが上記測定範囲内にあることである。逆格子空間では差分ベクトルm’、m’のs’、s’方向の成分がそれぞれ|s’|/k、|s’|/lより大きい必要がある。
【0046】
また、周期ベクトルm、mが仮想格子点のプロットにより描くことができる条件として、周期ベクトルm、mの仮想格子ベクトルs、s方向の成分がそれぞれ仮想格子ベクトルs、sの大きさ|s|、|s|より大きいことが必要である。
【0047】
上述の条件を満たし、周期ベクトルm、mが観察可能で、かつ得たいモアレパターンの方向と周期の大きさに対応して仮想格子ベクトルs、sを決定する(図3の3)。次に、仮想格子ベクトルs、sの繰り返し点が、測定したい領域を覆うように仮想格子点を生成し(図3の4、5)、各点で信号を取得することでモアレパターンのデータを得ることができる(図3の6)。
【0048】
(仮想格子の種類)
二次元の周期格子は5種類のブラベ格子に分類される。このブラベ格子として、正方格子、長方格子、面心格子、六方格子、および斜方格子がある。仮想格子点も結晶格子と同様に分類することで、二次元モアレパターンの発生を2つの結晶の重ね合わせと同等に理解することも可能である。本発明の一実施形態における仮想格子点はブラベ格子上の内部構造を持たない格子点とみなすことができる。仮想格子点で取得した信号は正方格子ではアスペクト比が1:1となるように表示可能であるが、正方以外の格子では隣接点を順番に表示した場合に、長方格子では縦横のアスペクト比が、さらにそれ以外の格子は方位も歪んだ像になるため、そのままでは画像取得位置に1:1対応した像表示をすることができない。
【0049】
(表示、結晶格子像と相似な二次元モアレパターン)
次に、仮想格子点から取得した信号の表示について述べる。仮想格子点から取得したモアレパターンのデータを画像化し、視覚的に分かりやすくして画像上での解析を行うことによって、または取得データを直接計算することで各位置での二次元の格子のひずみの分布等が計測可能である。
【0050】
モアレパターンを画像化した場合、このモアレパターンは、仮想格子と結晶格子との組み合わせで変化するが、高分解能像と相似のモアレパターンが見られることが視覚的に最も理解しやすい。図9(a)に示すように、結晶格子ベクトルと仮想格子ベクトルが相似の場合には、図9(b)に示すように各仮想格子点15で得られる検出信号は、結晶格子12の単位格子内の点と同等の点を結晶格子12のベクトルに沿って得ることになるため、表示すると結晶格子像と全く同等なパターンが得られる。ここで、結晶格子像と同等のモアレパターンを実用的に認識可能なひとつの周期あたり5ピクセル程度は必要である。すなわち、
|s|<5×|m| (n=1,2、j=1,2)
が好ましい条件となる。
【0051】
図10(a)に示す正方格子の結晶格子像に対して、本発明の一実施形態による取得方法によってSTEMを用いて取得された相似なモアレパターンを図10(b)に示す。図10(c)に完全結晶領域40および歪んだ領域におけるモアレパターンを示し、図10(c)に示す完全結晶領域40の(A)で示す箇所から図10(a)に示す正方格子の結晶格子像を取得し、図10(c)に示す完全結晶領域40内の(B)で示す箇所から図10(b)に示すモアレパターンを取得した。図10(a)に示す結晶格子は、
|a|=0.39nm
|a|=0.39nm
の正方格子であって、仮想格子は、
=1.023a、|s|=0.40nm
=1.023a、|s|=0.40nm
となるように仮想格子点を設定し、モアレパターンを取得し、画像化したものである。図10(b)からわかるように、結晶格子像と相似の像が広い範囲で得られていることが分かる。相似な像のスケールは約44倍であり、計算により得られるm=44.5×aとほぼ一致している。走査に要する時間は取得条件にもよるが、およそスケールの二乗であるので、この場合高分解能像を同じ領域分取得した場合に比べ約2000分の1の時間で結晶格子に相当する像が取得できていることになる。
【0052】
(歪み観察実例)
上記取得方法で仮想格子点の周期方向での完全結晶からの乱れは視覚的に分かりやすく、後述するように、格子の歪み量を計算することも容易である。図10(c)において、右上の結晶内部に相当する領域40では完全結晶であるが、端では歪みによって結晶格子が少しずつずれているため、それを反映してモアレパターンで描かれた格子も曲がっていることが分かる。
【0053】
(歪み領域の解析)
歪み領域の結晶格子ベクトルをadn(n=1,2)、逆格子ベクトルをadn’(n=1,2)として、歪み領域で得られたモアレパターンの格子ベクトルをmdn、逆格子ベクトルをmdn‘とすると
dn’=s’−adn
となるため、歪み領域と、完全結晶領域とのモアレパターンの逆格子ベクトルとの差分は、歪み領域と完全結晶の結晶格子ベクトルの差分に等しく、
dn’−m’= −(adn’−a’)
となる。ここで、a’(n=1,2)は正常領域(完全結晶領域)結晶逆格子ベクトルを表し、m’(n=1,2)は正常領域におけるモアレ逆格子ベクトルを表す。この関係から、図11に示すように、歪み領域の結晶逆格子ベクトルが得られて、歪み領域の実空間で格子サイズが計算可能となる。
【0054】
また、図12に示すように、モアレパターン上の結晶格子像の歪みは上記の方法で解析できて、図中左下の結晶の端(歪み領域)ではモアレパターンのずれがm方向に11%見られる。この場合、この領域ではm=44×a、md1=1.11×m=44×1.11×aから計算すると、ad1=1.002aとなり、結晶内部の完全な領域(完全結晶領域)に比べa方向に0.2%の歪みがあることが示される。このように結晶格子の44倍という大きなスケールでの二次元モアレパターンのずれ量(約2nm相当)から1nm以下の結晶格子のさらに0.2%というわずかな歪み(0.00078nm相当)を算出することが可能である。
【0055】
(仮想格子点からの信号をアスペクト比を1:1に表示する方法)
次に、仮想格子点を設定して信号を取得した場合の信号の表示方法について説明する。前述のように通常の画像表示はアスペクト比1:1のラスター走査を前提とした表示となっている。1:1ラスター走査は、本発明の一実施形態の取得方法では、仮想格子点を正方格子に選ぶことに相当する。つまり仮想格子ベクトルs、sの大きさが等しく互いのなす角が90°の場合であり、その検出信号の表示を仮想格子ベクトルs、sに相似な画素に描くことである。よって、表示装置も格子点を持っているとみなすと、その格子点に対応するように検出信号が配置されて表示することがひとつの方法である。
【0056】
通常のアスペクト比が1:1の画像として表示する場合、長方格子ではアスペクト比を変更すればよい。さらにそれ以外の斜方、六方、面心は正方格子とは角度もひずんだ関係になる。このため、例えば図13(a)に示す斜方格子50の場合は、仮想格子点の位置から取得された信号を1:1の正方格子点の画素に表示するためには、一点の信号を多くの画素で描けばよい。すなわち、図13(a)、13(b)に示すように、仮想格子点よりも細かい画素を用いて描画する(単純拡大(伸張)表示に相当する処理)。しかし、実際には表示装置の画素数は限られているため、図13(c)に示すように、バイキュービック法などの周知の処理法で縮小処理を行うことで取得データの位置と強度の関係を損なわずに画像表示することが可能となる。すなわち、二次元結晶格子モアレパターンは、表示装置のアスペクト比に対応して伸縮、回転処理を行って表示される。
【0057】
(正方の仮想格子点の方法と表示、解析方法)
正方格子以外の結晶格子に対して、正方の仮想格子点を設定した場合には相似のパターンは得られないが、モアレ縞の交差したパターンを発生することは可能である。STEMのビームコントローラーは正方の周期走査もしくは、正方と長方の周期走査は可能なので、既存の装置を利用する場合には、有用である。この場合のモアレパターンデータは、視覚的には結晶格子内部がXY比、角度がひずんだ形となるが、前述のひずみ解析と同様に図11に示すように、仮想格子点の格子ベクトルとの関係に従って完全な周期結晶の場合との差を算出することで、測定領域の二次元的な周期のずれを検出することが可能である。
【0058】
以上説明したように、一実施形態の取得方法は、実空間で結晶格子を観察可能な走査顕微鏡において結晶格子の周期に対応し任意の二次元モアレパターンを発生させるように仮想格子点を計算して設定し、これらの仮想格子点を飛び石状にステップ走査し、信号検出を行う。特に正方格子以外は正常なドット画像は得られないので、長方や斜方の周期走査による像データを1:1画像にする、もしくは画像化せずにモアレパターンを逆解析する工程によって、結晶格子像の高分解能像と同等の情報を得ることが可能になる。
【0059】
また、一実施形態の取得方法によれば、結晶格子像の二次元モアレ干渉パターンを短い走査時間で発生させることで、超高分解能(例えば1000万倍)で得られる結晶格子を直接利用した測定と同等のパターンを二次元像として、結晶格子像と相似の像を広い面積の中低倍率(例えば50万倍)にて小面積と同等の時間で得ることができる。
【0060】
さらに、従来不可能だった大面積での結晶格子の二次元周期を利用した原子レベルの種々の計測方法が取得時間を増大させずに実現可能となる。測定領域の結晶周期を拡大した像が低倍率で表示可能であるので、二次元の格子歪の分布などが直感的に解釈可能でかつ定量的に分析可能となる。
【0061】
また高分解能像の撮影において微小領域にビームを集中させることによって生じる試料損傷や試料汚染を防ぐ効果もある。ビーム調整が低倍率で行える効果もある。
【0062】
(取得方法を実施する装置)
次に、本発明の一実施形態による二次元結晶格子モアレパターン取得方法を実施する走査型顕微鏡について説明する。
【0063】
まず、仮想格子点の走査を実施するための装置についてSTEMを用いた場合を例にとって説明する。この仮想格子点の走査を実現するための装置を図14に示す。STEM本体部100には、電子を始めとする荷電粒子を発生するビーム発生部101が設けられている。このビーム発生部101から発生された荷電粒子のビームは、ビーム偏向部102から発生される電磁界によって偏向され、対物レンズ103を介して薄片の試料(結晶構造)200の所定位置に収束されるように照射される。この試料200から発生する信号はADF(環状暗視野)検出器106またはBF(明視野)検出器108によって検出される。偏向のための電磁界は、制御装置120から送られてくる電流もしくは電圧によって制御される。
【0064】
本発明の一実施形態における仮想格子点の設定と仮想格子点での信号検出を実現するために、仮想格子点を設定するためのパラメータ(例えば図3に示すステップS3、S4におけるデータ)を入力する入力部110と、制御装置120と、データ出力部130とを備えている。制御装置120は、中央処理部122と、信号処理部124と、STEM制御部126と、ビーム制御部128と、を備えている。
【0065】
信号処理部124は、ADF検出器106またはBF検出器108によって検出された検出信号(例えば電流信号)を制御装置120内で処理可能となる信号に変換する処理、例えばAD変換処理を行う。
【0066】
中央処理部122は、入力部110から入力されたデータに基づいて、試料(結晶構造)の走査面における仮想格子点の位置を計算/設定部122aによって計算し、設定する。また、中央処理部122は、信号処理部124およびSTEM制御部126を介して得られた検出信号に基づいて、モアレパターン生成部122bによって二次元結晶格子モアレパターンを生成する。この生成された二次元結晶格子モアレパターンはデータ出力部130において画像として表示される。なお、仮想格子点を設定するためのパラメータの入力方法は、仮想格子点の座標を入力してもよいし、仮想格子ベクトルと取得領域を入力することで、中央処理部122内の計算/設定部122aによって仮想格子点の位置が計算されるようにしてもよい。仮想格子点の座標や仮想格子ベクトルの入力方法は、制御装置120側で使用される絶対座標を用いて入力してもよいし、試料200内の結晶格子に対する相対座標、または結晶格子ベクトルに対する相対ベクトルを用いて入力してもよい。この場合、結晶格子ベクトルの情報が中央処理部122において記憶されており、絶対座標に変化する必要がある。なお、結晶格子情報については、STEM本体100を用いて先に結晶格子像を取得することで結晶格子情報を得るか、もしくは結晶格子情報を事前に入力することにより得ておく。
【0067】
STEM制御部126は、中央処理部122の計算/設定部122aによって設定された仮想格子点の位置に基づいて、仮想格子点の上記位置にビームが照射されるように、ビーム制御部128にビーム位置制御信号を送るとともに、信号処理部124を介して得られた検出信号を同期して取得し、取得した検出信号を中央処理部122に送出する。この検出信号に基づいて、モアレパターン生成部122bによって二次元結晶格子モアレパターンが生成される。
【0068】
ビーム制御部128は、STEM制御部126からのビーム位置制御信号に基づいて、ビーム偏向部102に制御信号を送り、ビーム偏向部102から発生される電磁界を制御することでビーム位置を制御する。例えば、ビーム偏向部102が2組のコイル対を有し、これらのコイルによってX、Y方向の位置を制御する磁界を発生する場合には、ビーム制御部128からの制御信号はX、Y方向に対応する電流信号対に変換される。このビーム制御部の一具体例を図15に示す。この具体例のビーム制御部128は、X走査DAC(デジタル−アナログ変換器)128a、Y走査DAC128bと、回転制御部128cと、倍率設定部128dとを備えている。
【0069】
所望の仮想格子点の位置に正確に電子ビームを滞留させるためには、原子格子の間隔より細かい位置で偏向を制御できる必要がある。STEMのビーム位置の制御は、図15に示すように、ビーム制御部128において、X走査DAC128a、Y走査DAC128bおよび回転設定部c、倍率設定部128dによって行われる。すなわち、12ビットのDAC128a、128bを用いる場合は4096(=212)階調となる。原子格子の分解能より細かいビーム位置の制御では、例えば0.01nmの最小ステップ(刻み幅)となるように倍率設定部128dにおいて倍率を設定すれば0.01nm×4096=40.96nmの測定範囲が最大の振り幅となる。より広範囲の低倍像の測定には倍率設定部128dの倍率を変更して測定範囲を広げることになるが、倍率を上げた分だけ最小ピッチも大きくなるために、例えば100倍の広範囲の像では1nmが最小ピッチになるため0.1nm以下の原子レベル以下の細かいビームの制御は不可能である。本発明の一実施形態の取得方法の実施に当たっては、広い範囲の走査でかつ0.1nm以下のビーム制御が求められるため、例えばより出力階調の細かいDACを用いることが好ましい。またビーム位置制御を、DAC128aを出た制御信号対のX方向、Y方向のステップをそれぞれI,Iとして前記回転制御部128c、倍率設定部128dに加えて、もしくは替えて仮想格子点の位置に相当するように、信号ステップを
’=cI+dI
’=eI+fI
となるように変換させる変換部を付加することでも実現できる。ここで、c、d、e、fは変換係数である。通常はX走査とY走査が倍率設定と回転設定を同倍率、同回転で行うことに対して、この変換部はX走査、Y走査それぞれ独立に行うことに相当する。
【符号の説明】
【0070】
10 結晶格子点
15 仮想格子点
20 逆格子空間での分解能限界
40 完全結晶領域
50 斜方格子
100 STEM本体
101 ビーム発生部
102 ビーム偏向部
103 対物レンズ
106 ADF(環状暗視野)検出器
108 BF(明視野)検出器
120 制御部
122 中央処理部
200 試料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走査型顕微鏡を用いて、結晶構造の結晶格子モアレパターンを取得する方法であって、
前記結晶構造の走査面において、前記結晶構造と方位に対応して、複数の仮想格子点を周期的に配置する工程と、
入射プローブを用いて、複数の前記仮想格子点からの信号を検出する工程と、
検出した前記信号に基づいて、前記結晶構造の結晶格子モアレパターンを生成する工程と、
を備えていることを特徴とする結晶格子モアレパターン取得方法。
【請求項2】
隣接する前記仮想格子点間の距離は、前記走査型顕微鏡の分解能より大きいことを特徴とする請求項1記載の結晶格子モアレパターン取得方法。
【請求項3】
複数の前記仮想格子点の配置は、前記仮想格子点によって決まる仮想格子ベクトルが、前記結晶格子から決まる結晶格子ベクトルに相似となるように行うことを特徴とする請求項1記載の結晶格子モアレパターン取得方法。
【請求項4】
前記結晶格子モアレパターンは、表示装置のアスペクト比に対応して伸縮、回転処理を行って表示することを特徴とする請求項1記載の結晶格子モアレパターン取得方法。
【請求項5】
前記結晶格子モアレパターンのデータに基づいて、前記結晶格子の歪み量を算出する工程をさらに備えていることを特徴とする請求項1記載の結晶格子モアレパターン取得方法。
【請求項6】
荷電粒子のビームを発生するビーム発生部と、
前記ビームを偏向させるビーム偏向部と、
偏向された前記ビームを結晶構造の走査面に収束させる対物レンズと、
前記ビームが前記結晶構造に照射された際に前記結晶構造からの信号を検出する検出部と、
前記結晶構造の走査面において、前記結晶構造と方位に対応して、周期的に配置される複数の仮想格子点の位置を計算し、設定する計算/設定部と、
設定された各仮想格子点の位置に、前記ビーム発生部から発生された荷電粒子のビームが照射されるように、前記ビーム偏向部に制御信号を送り制御する制御部と、
前記ビームが前記仮想格子点に照射された際の前記結晶構造からの信号を、前記検出器を介して取得して処理する信号処理部と、
前記信号処理部によって処理された信号に基づいて、前記結晶構造の結晶格子モアレパターンを生成するモアレパターン生成部と、
を備えていることを特徴とする走査型顕微鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図14】
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【図15】
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【図4】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−69734(P2011−69734A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−221317(P2009−221317)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】