説明

結晶質または半結晶質ポリウレタンポリマーに基づく水性処方物

本発明は、結晶質または半結晶質ポリウレタンポリマーに基づく水性組成物、その製造方法およびこれらの水性組成物を含む接着剤系およびその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶質または半結晶質ポリウレタンポリマーに基づく水性組成物、その製造方法およびこれらの水性組成物を含む接着剤系およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水性分散体接着剤の使用は、良好な環境適合性のため、重要性が増している。とりわけ、結晶質または部分結晶質ポリエステルセグメントを有するポリウレタンポリマーに基づく分散体接着剤は、多くの工業的使用において溶媒含有接着剤の代わりとなることができた。
【0003】
通常、水性分散体ポリマーは、主に脂肪族の親水性的変性液体ポリイソシアネートを併用して処理される(いわゆる2成分処理)。しかしながら、2成分処理の間に、二酸化炭素に基づくアミンへ解離する不安定なカルバミン酸の形成が、ポリイソシアネートと分散体の水性相の間で起こる。そして、放出されるアミンは、遊離イソシアネートと自発的に反応してウレアを与える。分散体ポリマーのポリマー鎖の架橋に必要なイソシアネートは、この方法で水との反応により徐々に消費される。ポットライフ、すなわち、ポリウレタン分散体および主に脂肪族の親水性的変性イソシアネートの2成分接着剤分散体の最大処理時間は、とりわけ処方物のpHに依存し、典型的には1〜12時間である。
【0004】
2成分分散体接着剤を、ポットライフが経過した後に処理する場合、イソシアネート基の量は、ポリウレタンポリマーを完全に架橋するのに十分ではない。この場合、耐熱性について必要な品質が得られない接着接合が生じる。
【0005】
従って、水性接着剤分散体中のポリイソシアネートの反応性は、長い処理時間を確保するために可能な限り低くあるべきである。
【0006】
しかしながら、同時に、最も高い可能な反応性、すなわち、接合工程後の接着剤層における急速な架橋反応についての要求が存在する。これは、接着接合が接合後直ぐに更に処理されるべき場合に特に重要である。接合工程後直ぐに接着接合の品質試験を行うことができることは、これにより、製造工程における欠陥をより早く発見することができ、工業的製造法における不良率を著しく減少させることができるので更に有利である。
【0007】
市販のポリウレタン分散体および主に脂肪族の親水性的変性イソシアネートの2成分接着剤分散体の場合、接着接合の製造者は、上記の品質試験が可能となるまで2〜3日待たなければならない。
【0008】
接着剤層における架橋反応を加速するための1つの可能性は、高温(熱硬化性)における接着接合の保管である。しかしながら、これは、熱の生成のために高い費用を伴う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明は、可能な限り長いポットライフを得ることを可能とし、同時に接着接合の製造およびこうして接着した基材の保管後24時間で高強度の接着接合を既にもたらす水性処方物に基づく接着剤系を提供する課題に基づくものであった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、本発明の主題により解消される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、
(a)少なくとも1つの結晶質または半結晶質ポリウレタンポリマー、
(b)20℃〜25℃の範囲の温度において液体である脂肪族的に結合したイソシアネート基を有する少なくとも1つのポリイソシアネート、
(c)少なくとも1以上の、特定の元素が少なくとも+4の酸化水準を有する周期表の亜属5および6の元素の化合物、
(d)必要に応じて、更なる補助物質および添加剤
を含む水性組成物を提供する。
【0012】
好ましくは、(a)+(b)の量は、20〜99.9999重量部であり、(c)の量は、0.0001〜5重量部であり、(d)の量は、0〜75重量部であり、個々の成分(a)〜(d)の重量部の合計は、100となる。
【0013】
特に好ましくは、(a)+(b)の量は、40〜99.999重量部であり、(c)の量は、0.001〜5重量部であり、(d)の量は、0〜59重量部であり、個々の成分(a)〜(d)の重量部の合計は、100である。
【0014】
好ましくは、(a)+(b)の量の合計は、70〜99.5重量部の(a)および0.5〜30重量部の(b)、特に好ましくは80〜98重量部の(a)および2〜20重量部の(b)を含む。
【0015】
好ましくは、本発明の水性処方物は、2成分系である。
【0016】
本発明における2成分系とは、成分a)およびb)が、その反応性のために、分かれた容器に貯蔵されなければならない系を意味すると理解される。2成分は、塗布直前にのみ混合され、次いで、通常、更なる活性を伴わずに反応する。
【0017】
好ましくは、結晶質または半結晶質ポリウレタンポリマーa)は、42℃および100℃の間の範囲、特に好ましくは42℃および60℃の範囲、極めて特に好ましくは45℃および52℃の間の範囲の融点を有する。
【0018】
好ましくは、結晶質または半結晶質ポリウレタンポリマーa)は、DIN 65467に従って10K/分の加熱速度でDSCにより計測した−100℃および−10℃の間の範囲、特に好ましくは−60℃および−40℃の間の範囲のガラス転移温度を有する。
【0019】
好ましくは、結晶質または半結晶質ポリウレタンポリマーa)は、20000および250000g/モルの間、特に好ましくは30000および220000g/モルの間、極めて特に好ましくは50000および200000g/モルの間の範囲の重量平均分子量Mwを有する。
【0020】
重量平均分子量は、移動相としてジメチルアセトアミドを用いるゲル浸透クロマトグラフィー(GPC/SEC)により決定する。
【0021】
本発明では、半結晶質または結晶質は、ポリウレタンポリマーが、DIN 65467に従う20K/分の加熱速度でのDSC測定において、106J/g〜45/gの範囲、好ましくは101J/g〜54J/gの範囲、極めて特に好ましくは99J/g〜63J/gの範囲の溶融エンタルピーに対応する溶融ピークを有することを意味する。
【0022】
意外にも、特定の元素が少なくとも+4の酸化水準を有する周期表の亜属5および6の元素の化合物のみが、化合物a)が結晶質または部分結晶質ポリマー鎖から構成される場合に化合物a)およびb)の架橋反応の適切な促進の効果を有することを見出した。
【0023】
従って、結晶質または部分結晶質ポリウレタンポリマーa)は、構成成分として、
A)400〜5000ダルトン、好ましくは1000〜3000ダルトン、特に好ましくは1500〜2500ダルトンの数平均分子量を有する1以上の2官能性以上のポリエステルポリオール、
B)必要に応じて、62〜399ダルトンの数平均分子量を有する1以上の2官能性以上のポリオール成分、
C)スルホネート基および/またはカルボキシレート基を含有し、少なくとも1つのイソシアネート反応性ヒドロキシル基および/またはアミノ基を更に有し、従ってそれぞれ末端または側部スルホネート構造単位またはカルボキシレート構造単位をもたらす少なくとも1つの成分、
D)1以上のジ−またはポリイソシアネート成分、および
E)必要に応じて、1以上のジアミノおよび/またはモノアミノ化合物、
F)必要に応じて、他のイソシアネート反応性化合物
を含有する。
【0024】
好ましい2官能性以上のポリエステルポリオールA)は、直鎖状ジカルボン酸および/またはその誘導体、例えば無水物、エステルまたは酸塩化物等、および脂肪族または脂環式の直鎖または分枝状ポリオール等に基づく。アジピン酸、コハク酸、セバシン酸およびドデカン二酸からなる群から選択されるジカルボン酸は、特に好ましく、アジピン酸は、成分A)として極めて特に好ましい。これらは、全てのカルボン酸の合計量を基準に少なくとも80モル%、好ましくは85〜100モル%、特に好ましくは90〜100モル%の量で使用される。
【0025】
他の脂肪族、脂環式または芳香族ジカルボン酸を、必要に応じて併用することができる。このようなジカルボン酸の例は、グルタル酸、アゼライン酸、1,4−または1,3−または1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸またはイソフタル酸である。これらは、全てのカルボン酸の合計量を基準に20モル%、好ましくは0〜15モル%、特に好ましくは0〜10モル%までの量で用いる。
【0026】
ポリエステルA)のための好ましいポリオール成分は、モノエチレングリコール、プロパン−1,3−ジオール、ブタン−1,4−ジオール、ペンタン−1,5−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオールおよびネオペンチルグリコールからなる群から選択され、ブタン−1,4−ジオールおよびヘキサン−1,6−ジオールは、ポリオール成分として特に好ましく、ブタン−1,4−ジオールは、極めて特に好ましい。これらは、全てのポリオールの合計量を基準に少なくとも80モル%、好ましくは90〜100モル%の量で用いる。
【0027】
他の脂肪族または脂環式直鎖または分枝状ポリオールを必要に応じて併用することができる。このようなポリオールの例は、ジエチレングリコール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ペンタン−1,5−ジオール、ペンタン−1,2−ジオール、ノナン−1,9−ジオール、トリメチロールプロパン、グリセロールまたはペンタエリトリトールである。これらは、全てのポリオールの総量を基準に最大20モル%、好ましくは0〜10モル%の量で用いる。
【0028】
2以上の上記ポリエステルA)の混合物も可能である。
【0029】
アジピン酸および1,4−ブタンジオールまたはアジピン酸および1,6−ヘキサンジオールまたはアジピン酸および1,6−ヘキサンジオールおよびネオペンチルグリコールの混合物に基づくポリエステルA)を好ましく用いる。
【0030】
62〜399ダルトンの数平均分子量を有する2官能性以上のポリオール成分、例えばポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリラクトンまたはポリアミドは、成分B)として適当である。
【0031】
更なる適当な成分B)は、A)として記載の脂肪族または脂環式直鎖または分枝状ポリオールである。好ましい成分B)は、モノエチレングリコール、ブタン−1,4−ジオールまたはヘキサン−1,6−ジオールである。ブタン−1,4−ジオールは、特に好ましい。
【0032】
スルホネート基またはカルボキシレート基を含有する適当な成分C)は、例えばスルホネート基および/またはカルボキシレート基を更に有するジアミノ化合物またはジヒドロキシ化合物、例えばN−(2−アミノエチル)−2−アミノエタンスルホン酸、N−(3−アミノプロピル)−2−アミノエタンスルホン酸、N−(3−アミノプロピル)−3−アミノプロパンスルホ酸、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロパンスルホン酸、類似カルボン酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸または1モルのジアミン、例えば1,2−エタンジアミンまたはイソホロンジアミン等の、2モルのアクリル酸またはマレイン酸によるマイケル付加物の意味での反応生成物のナトリウム、リチウム、カリウムおよび第3級アミン塩等である。
【0033】
好ましい成分C)は、N−(2−アミノエチル)−2−アミノエタンスルホネートまたはジメチロールプロピオネートである。
【0034】
好ましくは、酸は、その塩形態でスルホネートまたはカルボキシレートとして直接用いる。しかしながら、塩形成に必要な中和剤の一部または全部を、ポリウレタンの製造中または製造後に最初に添加することも可能である。
【0035】
塩形成に特に適当でありおよび好ましい第3級アミンは、トリエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミンおよびエイチルジイソプロピルアミンである。
【0036】
他のアミン、例えばアンモニア、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、アミノメチルプロパノールおよび記載のアミンの混合物および他のアミンの混合物等を、塩形成に用いることもできる。これらのアミンは、イソシアネート基を大部分反応させた後にのみ適切に添加する。
【0037】
中和のために他の中和剤、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムまたは水酸化カルシウム等を用いることも可能である。
【0038】
1分子当たり少なくとも2つの遊離イソシアネート基を有する有機化合物は、好ましくは構成成分D)として適当である。ジイソシアネートY(NCO)(式中、Yは、4〜12個の炭素原子を有する2価脂肪族炭化水素基、6〜15個の炭素原子を有する2価脂環式炭化水素基、6〜15個の炭素原子を有する2価芳香族炭化水素基または7〜15個の炭素原子を有する2価芳香族脂肪族炭化水素基を表す)を好ましく用いる。ジイソシアネートは、特に好ましくは、テトラメチレンジイソシアネート、メチルペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチル−シクロヘキサン、4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、4,4’−ジイソシアナト−2,2−ジシクロヘキシルプロパン、1,4−ジイソシアナトベンゼン、2,4−ジイソシアナトトルエン、2,6−ジイソシアナトトルエン、4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、2,2’−および2,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネートおよびp−イソプロピリデンジイソシアネートならびにこれらの化合物からなる混合物からなる群から選択される。
【0039】
また、当然のことながら、例えばカルボジイミド基、アロファネート基、イソシアヌレート基、ウレタン基および/またはビウレット基を含有する、ポリウレタン化学においてそれ自体既知のより高い官能性のポリイソシアネートまたはそれ自体既知の変性ポリイソシアネートの一部を併用することも可能である。
【0040】
ジイソシアネートD)は、極めて特に好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン、4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタンおよび4,4’−ジイソシアナト−2,2−ジシクロヘキシルプロパンおよびこれらの化合物からなる混合物からなる群から選択される。
【0041】
2,4−ジイソシアナトトルエンおよび2,6−ジイソシアナトトルエンおよびこれらの混合物は、同様に、成分D)として更に好ましい。
【0042】
更に好ましい構成成分D)は、ヘキサメチレン−ジイソシアネートおよび1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサンの混合物である。
【0043】
第1級および/または第2級モノアミノ化合物および/または第1級および/または第2級ジアミノ化合物は、構成成分E)として可能である。
【0044】
脂肪族および/または脂環式第1級および/または第2級モノアミン、例えばエチルアミン、ジエチルアミン、異性体プロピル−およびブチルアミン、高級直鎖脂肪族モノアミンおよび脂環式モノアミン、例えばシクロヘキシルアミン等は、成分E)として好ましい。成分E)の更なる例は、アミノアルコール、アミノ基およびヒドロキシル基を1分子中に含有する化合物、例えばエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、ジエタノールアミンおよび2−プロパノールアミン等である。当然のことながら、幾つかのモノアミノ化合物の混合物を用いることもできる。
【0045】
特に好ましいモノアミノ化合物は、ジエチルアミン、エタノールアミンおよびジエタノールアミンからなる群から選択される。ジエタノールアミンは、極めて特に好ましい。
【0046】
特に好ましいジアミノ化合物は、1,2−エタンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1−アミノ−3,3,5−トリメチル−5−アミノメチルシクロヘキサン(イソホロンジアミン)、ピペラジン、1,4−ジアミノシクロヘキサンおよびビス−(4−アミノシクロヘキシル)−メタンからなる群から選択される。更に特に好ましいジアミノ化合物は、アミノ化合物、例えば1,3−ジアミノ−2−プロパノール、N−(2−ヒドロキシルエチル)−エチレンジアミンおよびN,N−ビス(2−ヒドロキシルエチル)エチレンジアミン等である。アジピン酸ジヒドラジド、ヒドラジンおよびヒドラジン水和物は、成分E)として更に可能である。ポリアミン、例えばジエチレントリアミンは、ジアミノ化合物の代わりに成分E)として用いることもできる。
【0047】
必要に応じて併用する好ましい成分F)は、例えば2〜22個の炭素原子を有する脂肪族、脂環式または芳香族モノアルコール、例えばエタノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、イソブタノール、ベンジルアルコール、ステアリルアルコールおよび2−エチルエタノール等;アルコールまたはアミンについて出発のエチレンオキシドポリマーまたはエチレンオキシド/プロピレンオキシドコポリマーに基づき、および親水性化作用を有する単官能性または二官能性ポリエーテル、例えばpolyether LB 25(Bayer Material Science AG、ドイツ)またはMPEG 750:メトキシポリエチレングリコール、分子量750g/mol(例えばPluriol(登録商標) 750、BASF AG、ドイツ)等;イソシアネート基に対して通常使用され、および高温にて再び分離することができるブロック剤、例えばブタノンオキシム、ジメチルピラゾール、カプロラクタム、マロネート、トリアゾール、ジメチルトリアゾール、tert−ブチルベンジルアミンおよびシクロペンタノンカルボキシエチルエステル等;重合反応に利用可能な基を含有する不飽和化合物、例えばヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ペンタエリスリトールトリスアクリレートおよびモノエポキシド、ビスエポキシドおよび/またはポリエポキシドとアクリル酸またはメタクリル酸とのヒドロキシ官能性反応生成物である。
【0048】
本発明のポリウレタンは、成分F)を、0〜20、好ましくは0〜10重量%の量で含有することができる。
【0049】
イオン基の含有量は、固体1kg当たり2および600ミリモルの間、好ましくは固体1kg当たり10および400ミリモルの間、特に好ましくは40および300ミリモルの間である。
【0050】
さらに、本発明は、成分A)、必要に応じてB)、C)、D)および必要に応じてF)を一段階反応または多段階反応で反応させてイソシアネート官能性プレポリマーを与え、次いで、該プレポリマーを必要に応じて成分E)、C)および必要に応じてF)と、一段階反応または二段階反応で反応させ、次いで水中に分散させるかまたは水で分散させ、必要に応じて併用した溶媒の一部または全部を分散中または分散後に蒸留により除去することが可能であることを特徴とする、本発明のポリウレタン水性分散体またはポリウレタン−ウレア水性分散体の製造方法を提供する。
【0051】
本発明のポリウレタン水性分散体またはポリウレタン−ウレア水性分散体の製造方法は、一段階以上で均質に、または多段階反応の場合は分散相中で部分的に行うことができる。重付加を完全にまたは部分的に行った後、分散、乳化または溶解化工程を行う。次いで、必要に応じて、分散相において更なる重付加または変性を行う。従来技術から知られている全ての方法、例えば乳化機剪断力法、アセトン法、プレポリマー混合法、溶融乳化法、ケチミン法および固体自然分散法またはこれらの変法を製造に使用することができる。これらの方法の概要は、Methoden der organischen Chemie(Houben−Weyl、Erweiterungs−und Folgebaende zur 4. Auflage、第E20巻、H.BartlおよびJ.Falbe、Stuttgart、New York、Thieme 1987年、第1671〜1682頁)に見られる。溶融乳化法、プレポリマー混合法およびアセトン法が好ましい。アセトン法が特に好ましい。
【0052】
原則として、全ヒドロキシ官能性成分、次いで全イソシアネート官能性成分を計量添加し、該混合物を反応させてイソシアネート官能性ポリウレタンを与え、次いでそれをアミノ官能性成分と反応させることができる。逆の製造手順、イソシアネート成分の反応容器中への初期導入、ヒドロキシ官能性成分の添加、ポリウレタンを与える反応および最終生成物を与える引き続きのアミノ官能性成分との反応も可能である。
【0053】
従来法により、ポリウレタンプレポリマーの製造のために、ヒドロキシ官能性成分A)、必要に応じてB)、必要に応じてC)および必要に応じてF)の全てまたは一部を、まず反応器中に導入し、該混合物を、必要に応じてイソシアネート基に対して不活性であるが水混和性の溶媒で希釈し、次いで均質化する。次いで成分D)を、室温〜120℃にて計量投入し、イソシアネート官能性ポリウレタンを調製する。この反応は、一段階反応および多段階反応として行うことができる。多段階反応は、例えば成分A)を反応容器中へまず導入し、イソシアネート官能性成分D)との反応後に第2成分B)を添加し、なお存在するイソシアネート基の一部と反応させることにより行うことができる。
【0054】
適当な溶媒は、例えばアセトン、メチルイソブチルケトン、ブタノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、ジプロピレングリコールジメチルエーテルおよび1−メチル−2−ピロリドンであり、これらは、製造の開始時に添加されるだけでなく、必要に応じて製造の開始後に一部添加することができる。アセトンおよびブタノンが好ましい。標準圧または高圧下で反応を行うことができる。
【0055】
プレポリマーの調製のために、使用されるヒドロキシ官能性および必要に応じてアミノ官能性成分の量は、1.05〜2.5、好ましくは1.15〜1.85のイソシアネート特性数が生じるような量である。
【0056】
イソシアネート官能性プレポリマーと、更なるヒドロキシ官能性および/またはアミノ官能性、好ましくは専らアミノ官能性の成分E)および必要に応じてC)および必要に応じてF)との更なる反応、いわゆる連鎖延長を、イソシアネート基100%を基準に25〜150%、好ましくは40〜85%のヒドロキシル基および/またはアミノ基の転化率が選択されるように行う。該方法は、成分C)を開始時および/または終了時に添加することにより行う。
【0057】
可能であるがあまり好ましくはない100%を超える転化率で、プレポリマーとのイソシアネート付加反応の意味での単官能性である全成分をまず反応させ、次いで可能な限り完全な全鎖延長分子の組み込みを得るために2官能性以上の鎖延長成分を用いることが適切である。
【0058】
転化率は通常、反応混合物のNCO含有量を追跡することによりモニターされる。この目的のために、分光測定、例えば赤外線スペクトルまたは近赤外線スペクトル、屈折率測定または化学分析、例えば採取した試料の滴定等のいずれも行うことができる。
【0059】
イソシアネート付加反応を促進するために、NCO−OH反応の促進のために当業者に既知の従来使用される触媒を用いることができる。その例は、トリエチルアミン、1,4−ジアザビシクロ−[2,2,2]−オクタン、ジブチル錫オキシド、ジオクタン酸錫またはジラウリン酸ジブチル錫、錫ビス−(2−エチルヘキサノエート)または他の有機金属化合物である。
【0060】
イソシアネート官能性プレポリマーと成分C)および必要に応じてE)および必要に応じてF)との鎖延長は、分散前、分散中または分散後に行うことができる。鎖延長は好ましくは、分散前に行う。成分C)を鎖延長成分として使用する場合、分散工程前のこの成分との鎖延長が必要である。
【0061】
鎖延長は通常10〜100℃、好ましくは25〜60℃の温度で従来法により行う。
【0062】
本発明では、用語「鎖延長」は、単官能性により連鎖停止剤として働き、従って分子量を上昇させるのではなく制限する、単官能性の成分E)またはF)の任意の反応をも包含する。
【0063】
鎖延長成分を、反応混合物へ有機溶媒および/または水での希釈形態で添加することができる。添加は、連続して、任意の所望の順序で、または混合物の添加により同時に行うことができる。
【0064】
ポリウレタン分散体を製造するために、プレポリマーを、必要に応じて高い剪断力、例えば激しい撹拌下で分散用水中に導入するか、または逆に分散用水をプレポリマーへ撹拌投入する。次いで鎖延長を、均質相中でまだ行っていない場合、行うことができる。
【0065】
必要に応じて用いる有機溶媒、例えばアセトンは、分散中および/または分散後に留去する。
【0066】
好ましい製造方法を以下に記載する:
OH官能性成分A)、必要に応じてB)、必要に応じてC)および必要に応じてF)および必要に応じて溶媒を計量添加し、20〜100℃に加熱する。成分D)を撹拌しながら可能な限り急速に計量投入する。発熱性を利用して、イソシアネート含有量が、理論値に達するかまたはこれよりわずかに下回るまで、反応混合物を40〜150℃にて撹拌する。触媒を必要に応じて添加することができる。次いで混合物を、溶媒の添加により25〜95重量%、好ましくは30〜80重量%の固形分へ希釈し、続いて連鎖延長を、水および/または溶媒、E)、必要に応じてC)および/または必要に応じてF)で希釈したアミノ官能性成分の添加により30〜120℃にて実施する。2〜60分の反応時間後、蒸留水の添加によって、または混合物を蒸留水に移すことによって、分散を行い、分散工程中または分散工程後に、使用した溶媒の一部または全部を留去する。該方法は、成分C)を開始時および/または終了時に添加することにより行う。
【0067】
スルホン酸またはカルボン酸のスルホネートまたはカルボキシレートへの転化は、鎖延長前、鎖延長中または鎖延長後に行うことができる。分散前または分散中に更に行うことができる。
【0068】
ポリイソシアネート成分(b)は、脂肪族的に結合した遊離イソシアネート基を有し、20℃〜25℃の範囲の温度において液体であるか、この目的のために溶媒で希釈された任意の所望の有機ポリイソシアネートである。ポリイソシアネート成分(b)は、23℃にて10〜15000、好ましくは10〜5000mPasの粘度を有する。粘度は、DIN 53019に従ってHaakeからのVT−500回転式粘度形で決定する。
【0069】
ポリイソシアネート成分(b)は、特に好ましくは2.0および5.0の間の(平均)NCO官能価および23℃にて10〜2000mPasの粘度を有する専ら脂肪族的に結合したイソシアネート基を有するポリイソシアネートまたはポリイソシアネート混合物である。
【0070】
イソホロンジイソシアネート(Desmodur I)、ヘキサメチレンジイソシアネート(Desmodur H)、ビス−(4−イソシアナトシクロヘキシル)−メタン(Desmodur W、ω,ω’−ジイソシアナト−1,3−ジメチルシクロヘキサン(H6XDI)、トリイソシアナトノナンおよびXDI(1,3−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン)からなる群から選択されるポリイソシアネートは、成分b)として特に好ましい。
【0071】
成分b)は、芳香族ポリイソシアネート、例えばトルエン−2,4−ジイソシアネート等との混合物として用いることもできる。
【0072】
記載のジイソシアネートをそれ自体、必要に応じて用いることができるが、通常、ジイソシアネートの誘導体を用いる。適当な誘導体は、ビウレット基、イソシアヌレート基、ウレットジオン基、ウレタン基、イミノオキサジアジンジオン基、オキサジアジントリオン基、カルボジイミド基、アシルウレア基およびアロファネート基を含有するポリイソシアネートである。
【0073】
ポリイソシアネート成分(b)は、必要に応じて親水性的に変性することができる。水溶性または水分散性ポリイソシアネートは、例えばカルボキシレート基、スルホネート基および/またはポリエチレンオキシド基および/またはポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシド基での変性により得られる。
【0074】
ポリイソシアネートの親水性化は、例えば不足量の単官能性親水性ポリエーテルアルコールとの反応により可能である。そのような親水性化ポリイソシアネートの製造は、例えばEP−A0540985の第3頁第55行〜第4頁第5行に記載されている。アロファネート基を含有し、および低モノマーポリイソシアネートとポリエチレンオキシドポリエーテルアルコールとのアロファネート化条件下での反応により調製されたEP−A−0 959 087、第3頁第39行〜51行に記載のポリイソシアネートも特に適当である。乳化剤の添加による外部親水性化も同様に可能である。
【0075】
例えばいわゆるポリエーテルアロファネート(ポリエーテルによる親水性化)の場合に用いるポリイソシアネート成分(b)のNCO含有量は、5〜25重量%の範囲であってよい。スルホン酸基での親水性化の場合には、4〜26重量%のNCO含有量が得られ、これらの数字は単なる例であると理解される。
【0076】
一部、例えば用いるイソシアネート成分中に存在するイソシアネート基の3分の1までを、イソシアネートに対して反応性である成分によりブロックすることもできる。この場合には、ブロックトイソシアネート成分と更なるポリオールとの反応は、更なる架橋をもたらすために後の工程において起こすことができる。
【0077】
これらのポリイソシアネートのための適当なブロック剤は、例えば単官能性アルコール、例えばメタノール、エタノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノールまたはベンジルアルコール、オキシム、例えばアセトオキシム、メチルエチルケトキシムまたはシクロヘキサノンオキシム、ラクタム、例えばε−カプロラクタム、フェノール、アミン、例えばジイソプロピルアミンまたはジブチルアミン、ジメチルピラゾールまたはトリアゾールおよびマロン酸ジメチルエステル、マロン酸ジエチルエステルまたはマロン酸ジブチルエステル等である。
【0078】
意外にも、特定の元素が少なくとも+4の酸化水準を有する周期表の亜属5および6の元素の化合物が、>8時間の長いポットライフを維持しながら、化合物a)およびb)の間の架橋反応が室温にて24時間貯蔵後に既に終了するように化合物a)およびb)の間の反応を加速することを見出した。
【0079】
バナジウム、タンタル、モリブデンおよびタングステンからなる群から選択される元素の化合物は、化合物(c)として好ましく用いる。
【0080】
モリブデン酸、モリブデン酸リチウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、モリブデン酸ルビジウム、モリブデン酸セシウム、モリブデン酸テトラメチルアンモニウム、モリブデン酸テトラエチルアンモニウム、モリブデニルアセチルアセトン酸、二酸化モリブデンテトラメチルヘプタジオネート、タングステン酸ナトリウム、オルトバナジウム酸リチウム、メタバナジン酸リチウムおよびその変性物、オルトバナジウム酸ナトリウム、メタバナジン酸ナトリウムおよびヘプタモリブデン酸アンモニウムからなる群から選択される化合物は、化合物(c)として特に好ましく用いる。
【0081】
モリブデン酸リチウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、モリブデン酸ルビジウム、モリブデン酸セシウムおよび1価、2価または3価カチオンの他のモリブデン酸塩および有機カチオン、例えばアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルホスホニウム等を有するモリブデン酸塩からなる群から選択される化合物c)は、極めて特に好ましい。
【0082】
モリブデン酸リチウム、モリブデン酸ナトリウムおよびモリブデン酸からなる群から選択される化合物c)は更に好ましい。
【0083】
化合物c)に用いる触媒の量は、極めて少ない。一般に、1〜50000ppmの活性化合物の量を用いることができ、水性組成物の全ての成分を基準に1〜30000ppmの範囲が好ましい。触媒の活性は、添加の性質から独立している。従って、添加する水へ直接添加することができる。あるいは、成分(a)および/または(b)中へ組み込むこともできる。
【0084】
分散体は、好ましくは10〜60重量%、特に好ましくは25〜60重量%、極めて特に好ましくは35〜55重量%の固形分を有する。
【0085】
成分(a)の分子量およびアニオン性基または遊離酸基、特にスルホネート基および/またはカルボキシル基の含有量に応じて、ポリマーを含む水性系は、真分散体、コロイド的分散または分子状分散分散体であるが、一般に、いわゆる「部分分散体」、すなわち部分的に分子状分散および部分的にコロイド分散である水性系である。
【0086】
好ましくは、本発明の水性処方物は、10mPasおよび20000mPasの間の範囲、特に好ましくは1000mPasおよび5000mPasの間の範囲、極めて特に好ましくは1500mPasおよび2500mPasの間の範囲の粘度を有する。
【0087】
好ましくは、本発明の水性処方物は、5および12の間の範囲、特に好ましくは6および11の間の範囲、極めて特に好ましくは6および9の間の範囲のpHを有する。
【0088】
成分b)〜成分a)のイソシアネート基とヒドロキシル基の割合(NCO−OH比)は、広範囲に広げることができる。イソシアネート基は、好ましくは過剰に添加する。
【0089】
本発明はまた、接着剤系および補助物質(a)〜(d)の成分の添加の順序を要望通りに変更することができる本発明の水性処方物の製造方法を提供する。
【0090】
本発明はまた、本発明の水性処方物を含む接着剤系を提供する。
【0091】
本発明の接着剤系は、単独で、または被覆技術および接着剤技術で知られているバインダー、補助物質および添加剤、特に乳化剤または光安定剤、例えば紫外線吸収剤または立体障害アミン(HALS)、更に酸化防止剤、充填剤、助剤、例えば沈降防止剤、脱泡剤および/または湿潤剤、流れ制御剤、反応性希釈剤、可塑剤、触媒、補助溶剤および/または増粘剤並びに添加剤、例えば顔料、染料または艶消剤と共に使用することができる。粘着付与性樹脂(「粘着付与剤」)を添加することもできる。粘着付与性樹脂は、添加剤として、粘着性、すなわち穏やかに短く押し付けた後に表面へ固く接着する特性を増加させる全ての天然または剛性樹脂またはポリマーを意味するものと理解される。これを達成するために、接着剤樹脂は、とりわけポリマーとの適切な相溶性を有さなければならない。粘着付与剤それ自体は、粘着性を有する必要はない。広く用いられる粘着付与剤は、テルペンオリゴマー、脂肪族石油化学樹脂およびコロフォニー樹脂である。
【0092】
添加剤は、処理する前に直接、本発明の接着剤系に添加することができる。しかしながら、バインダーの分散前、分散中または分散後に、添加剤の少なくとも一部を添加することも可能である。
【0093】
本発明の接着剤系は、任意の所望の基材、例えば紙、厚紙、木材、編織布、金属、皮革または鉱物物質等を接着するために適している。本発明の接着剤組成物はさらに、ゴム材料、例えば天然ゴムおよび合成ゴム、種々のプラスチック、例えばポリウレタン、ポリ酢酸ビニルまたはポリ塩化ビニル、および熱可塑性ポリマー、例えばポリカーボネート、ポリアミド、アクリル/ブタジエン/スチレンおよびこれらの混合物等を接着するために適している。
【0094】
本発明の接着剤は、例えば靴、特に運動靴の製造に用いる合成または天然物質を接着するのに特に好適である。このような物質は、例えば皮革、EVAソール(下塗りおよび非下塗り)、ゴム、ポリウレタン、ポリアミドおよびポリエーテル−ポリアミド(Pebax)である。
【0095】
本発明を、以下の実施例により説明する。
【実施例】
【0096】
〔Dispercoll(登録商標) U 54〕
Bayer MaterialScience AG(51368 レーバークーゼン)からのポリウレタン分散体;固形分約50重量%;イソシアネート成分としてHDI/IPDIを有するアジピン酸/ブタンジオールポリエステルに基づく直鎖状ポリウレタン鎖のイソシアネート反応性ポリマー。該分散体ポリマーのガラス転移温度は、−50℃である。測定は、DSCによるものである。DSC測定によれば、脱結晶化温度は、約48℃である。
【0097】
〔Dispercoll(登録商標) U 42〕
Bayer MaterialScience AG(51368 レーバークーゼン)からのポリウレタン分散体;固形分約50重量%;イソシアネート成分としてHDIを有するフタル酸/ヘキサンジオールポリエステルに基づく直鎖ポリウレタン鎖のイソシアネート反応性ポリマー。分散体ポリマーのガラス転移温度は、約−10℃である。測定は、DSCによるものである。
【0098】
親水性的変性ポリイソシアネートの分散体:
〔Desmodur DN〕
HDIトリマーに基づく親水性的変性架橋剤イソシアネート。イソシアネート含有量約20%。
【0099】
〔Desmodur D XP 2725〕
HDIトリマー/TDIトリマーに基づく親水性的変性架橋剤イソシアネート、活性化合物含有量=85%、イソシアネート含有量約15.5%。
【0100】
〔Tanemul FD−liquid〕
Tanatex Chemicals B.V.製:水中でのステアリルアルコールポリグリコールエーテルの13〜17重量%の溶液、CAS番号:68439―49―6。
【0101】
水性処方物:
1. 100重量部のDispercoll U 54
5重量部のDesmodur DN
2. 100重量部のDispercoll U 54
3重量部のTanemul FD−liquid中の10%モリブデン酸リチウム
5重量部のDesmodur DN
3. Dispercoll U 54の100重量部
Desmodur D XP 2725の5重量部
4. 100重量部のDispercoll U 54
3重量部のTanemul FD−liquid中の10%モリブデン酸リチウム
5重量部のDesmodur D XP 2725
5. 100重量部のDispercoll U 42
3重量部のTanemul FD−liquid中の10%モリブデン酸リチウム
5重量部のDesmodur DN
6. 100重量部のDispercoll U 42
3重量部のTanemul FD−liquid中の10%モリブデン酸リチウム
5重量部のDesmodur D XP 2725
【0102】
調査
試験手段:
ブナノキ木材試験片5cm×14cm
PVCフィルム型Benelite(5cm幅)
【0103】
試料調製
接着剤分散体を、ブナノキ試験片(面積5cm×8cm)上へ200μm波状ドクターブレードにより塗布する。1時間後、標準気候(23℃/50%相対大気湿気)において、接着剤層を完全に乾燥させる。
【0104】
その後、PVCフィルムを、接着剤で塗布したブナノキ木材試験試料上に置き、試料を加熱膜プレス中に置く。複合材料を4バールの圧力下で63℃および103℃のホットプレート温度にて10秒間プレスする。この時間中に、接着剤層における温度は、それぞれ最大55℃および最大77℃へ上昇する。次いで複合材料は、膜プレスを取り除き、標準気候において24時間貯蔵する。
【0105】
耐熱性のための試験
複合材料は、70℃にて温度制御された加熱棚中につり下げる。2.5kgの重りを、PVCフィルム上につり下げ、フィルムを180度の角度にてブナノキ木材表面から剥離する。1時間後、試験試料を、加熱棚から取り出し、剥離した長さをmmにより決定する。
【0106】
結果:
剥離長さ[mm]を以下の表に示す。値≧80の場合には、該フィルムを、60分の試験時間内に完全に剥離する。
値は、いずれの場合にも2つの個々の測定の平均である。
【0107】
【表1】

【0108】
値は、部分結晶質ポリウレタン分散体ポリマーでの本発明の接着剤分散体の極めて急速な架橋を示す。架橋反応は、24時間後に終了した。
【0109】
モリブデン酸リチウムを有さない分散体接着剤での比較調査(番号1および3)は、適切な架橋反応を24時間後になお示さない。
【0110】
非晶質ポリウレタン分散体ポリマーでの比較(比較実施例5〜6)は、親水性的変性ポリイソアネートおよびモリブデン酸リチウムを有する非晶質ポリウレタンポリマーの間の反応の促進が、接着接合の製造後24時間内にポリマーの完全な架橋をもたらさないことを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1つの結晶質または半結晶質ポリウレタンポリマー、
(b)20℃〜25℃の範囲の温度にて液体である脂肪族的に結合したイソシアネート基を有する少なくとも1つのポリイソシアネート、
(c)少なくとも1以上の、特定の元素が少なくとも+4の酸化水準を有する周期表の亜属5および6の元素の化合物、
(d)必要に応じて、更なる補助物質および添加剤
を含む水性組成物。
【請求項2】
結晶質または半結晶質ポリウレタンポリマーは、42℃および100℃の間の範囲の融点を有することを特徴とする、請求項1に記載の水性組成物。
【請求項3】
結晶質または半結晶質ポリウレタンポリマーは、DSCによりDIN 65467に従って10K/分の加熱速度にて計測した−100℃および−10℃の間の範囲のガラス転移温度を有することを特徴とする、請求項1に記載の水性組成物。
【請求項4】
結晶質または半結晶質ポリウレタンポリマーは、20000g/モルおよび250000g/モルの間の範囲の重量平均分子量Mwを有することを特徴とする、請求項1に記載の水性組成物。
【請求項5】
結晶質または半結晶質ポリウレタンは、成分として、
A)400〜5000ダルトンの数平均分子量を有する1以上の2官能性以上のポリエステルポリオール、
B)必要に応じて、62〜399ダルトンの数平均分子量を有する1以上の2官能性以上のポリオール成分、
C)スルホネート基および/またはカルボキシレート基を含有し、少なくとも1つのイソシアネート反応性ヒドロキシル基および/またはアミノ基を更に有し、従ってそれぞれ末端または側部スルホネート構造単位またはカルボキシレート構造単位をもたらす少なくとも1つの成分、
D)1以上のジ−またはポリイソシアネート成分、および
E)必要に応じて、1以上のジアミノおよび/またはモノアミノ化合物、
F)必要に応じて、他のイソシアネート反応性化合物
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の水性組成物。
【請求項6】
成分b)は、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ビス−(4−イソシアナトシクロヘキシル)−メタン、ω,ω’−ジイソシアナト−1,3−ジメチルシクロヘキサン、トリイソシアナトノナンおよび1,3−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼンからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の水性組成物。
【請求項7】
バナジウム、タンタル、モリブデンおよびタングステンからなる群から選択される元素の化合物が、成分c)として用いられることを特徴とする、請求項1に記載の水性組成物。
【請求項8】
モリブデン酸、モリブデン酸リチウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、モリブデン酸ルビジウム、モリブデン酸セシウム、モリブデン酸テトラメチルアンモニウム、モリブデン酸テトラエチルアンモニウム、モリブデニルアセチルアセトン酸、二酸化モリブデンテトラメチルヘプタジオネート、タングステン酸ナトリウム、オルトバナジウム酸リチウム、メタバナジン酸リチウム、オルトバナジウム酸ナトリウム、メタバナジン酸ナトリウムおよびヘプタモリブデン酸アンモニウムからなる群から選択される化合物が、成分(c)として用いられることを特徴とする、請求項7に記載の水性組成物。
【請求項9】
モリブデン酸リチウムが成分c)として用いられることを特徴とする、請求項8に記載の水性組成物。
【請求項10】
接着剤系の製造のための、請求項1〜9のいずれかに記載の水性組成物の使用。
【請求項11】
成分a)またはb)の製造において、成分c)を、特定の成分中へ導入することを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の水性組成物の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれかに記載の水性組成物を含む接着剤系。
【請求項13】
皮革、エチル酢酸ビニル、ゴム、ポリウレタン、ポリアミドおよびポリエーテルアミドからなる群から選択される物質を接着するための請求項12に記載の接着剤系の使用。
【請求項14】
紙、厚紙、木材、繊維ボードおよびポリ塩化ビニルからなる群から選択される物質を接着するための、請求項12に記載の接着剤系の使用。
【請求項15】
請求項12に記載の接着剤系で接着された基材。

【公表番号】特表2013−509468(P2013−509468A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535757(P2012−535757)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【国際出願番号】PCT/EP2010/066014
【国際公開番号】WO2011/051199
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】