説明

結晶質メタロシリケートの製造方法

【課題】内側部分(コア)および外側部分(シェル)とを有し、Si/金属の比が内側部分より外側部分の方が高いクリスタライトから成り、このクリスタライトの結晶横断面で金属および珪素が連続的に分布している結晶メタロシリケート組成物の製造方法。
【解決手段】:(a) OH-アニオンと金属源とを含む水溶性媒体を用意し、(b) 無機珪素源と、任意成分のテンプレート剤とから成る水溶性媒体を用意し、(c) 任意成分の有機珪素源を含む任意成分の非水溶性媒体を用意し、(d) 所望の結晶質メタロシリケートを結晶させるのに有効な条件下で上記水溶性媒体(a)と(b)と任意成分の(c)とを混合し、(e) 所望のメタロシリケートを回収する段階から成り、結晶化前の上記混合物(a)+(b)+(c)中のSi有機/Si無機の比が<0.3で、OH-/SiO2のモル比が少なくとも0.3で、結晶化前の上記混合物(a)+(b)+(c)のpHが13以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶質メタロシリケート(またはゼオライト)の製造方法に関するものである。
【0002】
ゼオライトは各種タイプの炭化水素変換(conversion)に対して触媒特性を有することが示されている。さらに、ゼオライトは吸着剤および各種タイプの炭化水素転換プロセスの触媒担体としても使用されている。
【0003】
本発明方法で得られる結晶質メタロシリケートは、クリスタライトの内側部分より外側表面上および外側表面に近い部分の方が金属に対する珪素の比が高いクリスタライトから成る。以下の説明で、外側表面および外側表面に近い部分は「シェル」とよび、内側部は「コア」とよぶことにする。
【背景技術】
【0004】
結晶質(crystalline)メタロシリケートは気孔を介して互いに接続した多数の小さな空洞を有する、X線回折で規定される所定結晶構造を有する多孔性結晶材料である。気孔またはチャネルの寸法は例えば所定寸法の分子は吸着し、それより大きな寸法の分子は拒絶するようになっている。ゼオライトはこの結晶質の網目から成る間隙またはチャネルによって分離方法でモレキュラーシーブとして使用でき、各種の炭化水素転換プロセスの触媒および担体として使用できる。
【0005】
ゼオライトまたはメタロシリケートは酸化珪素の格子を有し、さらに金属酸化物の格子を有し、必要に応じて交換可能なカチオン、例えばアルカリ金属またはアルカリ土類金属のイオンと組み合わされている。
【0006】
「ゼオライト」という用語はシリカを含み、任意成分としてのアルミナを含む材料を意味する。シリカの部分およびアルミナの部分の全部または一部が他の参加物で置換されたものと認識することもできる。例えば、シリカ部分を酸化ゲルマニウムで置換することができる。メタロシリケートのオキサイド骨格の中の珪素以外の金属カチオンは鉄、アルミニウム、チタン、ガリウムおよび硼素にすることができる。
【0007】
従って、本明細書で「ゼオライト」という用語は微細な気孔を有する(microporous)結晶質メタロシリケート材料を意味する。メタロシリケートの触媒特性はゼオライト骨格中の珪素よりも各種元素の存在によるものである。酸化物骨格中の珪素を金属カチオンで置換することが触媒活性サイトを作ることになる。
【0008】
最も良く知られたメタロシリケートは結晶の気孔中に酸基を示すアルミノ珪酸塩である。珪素をそれより少ない価電子状態を有するアルミナのような元素で置換すると正電荷欠陥ができ、それをヒドロニウムイオンのようなカチオンが補償する。このゼオライトの酸性度はゼオライト表面上およびゼオライトチャネル内にある。パラフィン異性化、オレフィン骨格または二重結合の異性化、オリゴマー化、比率変更(disproportionate)、アルキル化や芳香族のトランスアルキル化のような炭化水素の変換反応はゼオライトの気孔内でモレキュラーシーブのチャネル寸法に起因する規制によって制御できる。気孔内部に存在する酸性プロトンは形状選択規制を受ける。この「形状選択」触媒原則は例えば非特許文献1に記載のように広く研究されている。
【0009】
しかし、酸基はメタロシリケート結晶の外側表面上にも存在できる。この酸基は結晶性多孔構造によって規定される上記の形状選択規制を受けない。この外側表面上の酸性度を「外側表面酸性度」とよぶことにする。この外側表面酸性度は望ましくない反応を触媒し、生成物の選択性を低下させる。結晶性多孔構造によって決まる規制を受けない非選択性表面触媒反応の典型例には (1) オレフィンの大規模オリゴーマー化/重合、(2)多孔質規制構造内部でのアルキル芳香族の選択的オリゴーマー化、(3)多環芳香族化合物の製造、(4)芳香族の多重アルキル化、(5)オレフィンおよび/またはパラフィンの多重分岐、(6)望ましくないカーボン沈着の原因となる高分子量のコークス先駆体の生成等がある。
【0010】
外側表面の酸度の相対量は結晶寸法で決まり、小さい結晶は大きい結晶より多くの外側表面酸性度を有する。プロセス性能を良くするためにはゼオライトまたはメタロシリケートの外側表面酸性度の存在量を減らすのが有利であることが多い。このプロセス性能は生成物の選択性、製品の品質および触媒安定性等を含めて測定される。
【0011】
多くの従来文献には金属に対する珪素の比がクリスタライトの内側部分より外側表面上および外側表面の近くの方が高いクリスタライトが記載されている。従来技術には第1のタイプの製造プロセスが記載されており、この製造プロセスではクリスタライトを作った後に、そのクリスタライトをシリカまたはシリカリッチな組成物で被覆する。第2のタイプの製造プロセスでは製造したクリスタライトを処理して表層から金属の一部を除去し、それによって表層での金属に対する珪素の比をクリスタライトの内側部分より高くする。第3のタイプのプロセスでは、外側層の金属サイトへのアクセスをじゃま(hinder)するように製造したクリスタライトを処理する。これらの従来技術は特許文献1(欧州特許第EP 1661859 A1号公報)に記載されている。
【0012】
特許文献1(欧州特許第EP 1661859 A1号公報)および特許文献2(国際特許第WO2006092657号公報)には金属に対する珪素の比がクリスタライトの内側部分より高いクリスタライトを外側表面上に直接作る方法が記載されている。
【0013】
特許文献1(欧州特許第EP 1661859 A1号公報)には外側表面から下に約10ナノメートルの深さの結晶質外側表面層と、約50ナノメートルの深さで外側表面から内側へ延びた内側部分とを有するクリスタライトを含む結晶質メタロシリケート組成物が記載されている。このメタロシリケート組成物の金属に対する珪素の原子比は結晶質の外側表面層の方が内側部分と比べて少なくとも1.5倍大きい。この結晶メタロシリケート組成物の製造方法は下記段階から成る:
【0014】
(a) 水相と非水相とから成る二相液体媒体を作り、この二相液体媒体中に少なくとも一種の珪素含有化合物と、少なくとも一種の金属含有とをさらに入れる。
(b) 上記の二相液体媒体から結晶質メタロシリケート組成物を結晶させる。
【0015】
特許文献2(国際特許第WO2006092657号公報)には外側表面から下に約10ナノメートルの深さの結晶質外側表面層と、約50ナノメートルの深さで外側表面から内側へ延びた内側部分とを有する結晶質クリスタライトが記載されている。このメタロシリケート組成物の金属に対する珪素の原子比は結晶質の外側表面層の方が内側部分と比べて少なくとも1.75倍大きい。この結晶メタロシリケート組成物の製造方法は下記段階から成る:
【0016】
(a) 少なくとも一種の珪素含有化合物と少なくとも一種の金属含有化合物とを含む水相を作り、
(b) 水相から結晶質メタロシリケート組成物を結晶化させる。この結晶化段階は第1段階に続いて第2の段階を実施し、水相中の少なくとも一種の珪素含有化合物の濃度を第2段階で増加させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】欧州特許第EP 1661859 A1号公報
【特許文献2】国際特許第WO2006092657号公報
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】N.Y. Chen, W.E. Garwood and F. G. Dwyer in "Shape selective catalysis in industrial applications", 36, Marcel Dekker, Inc., 1989
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明者は、金属に対する珪素の比がクリスタライトの内側部分よりも外側表面上および外側表面の近くの方が大きいクリスタライトを作るための新しい方法を発見した。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、内側部分(コア)および外側部分(シェルまたは外側層)とを有し、Si/金属の比が内側部分より外側部分の方が高いクリスタライトから成り、このクリスタライトの結晶横断面で金属および珪素が連続的に分布している結晶メタロシリケート組成物の製造方法において、
下記(a)〜(e)の段階:
(a) OH-アニオンと金属源とを含む水溶性媒体を用意し、
(b) 無機珪素源と、任意成分のテンプレート剤(templating agent)とから成る水溶性媒体を用意し、
(c) 任意成分の有機珪素源を含む任意成分の非水溶性媒体を用意し、
(d) 所望の結晶質メタロシリケートを結晶させるのに有効な条件下で上記水溶性媒体(a)と(b)と任意成分の(c)とを混合し、
(e) 所望のメタロシリケートを回収する、
から成り、結晶化前の上記混合物(a)+(b)+(c)中のSi有機/Si無機の比が<0.3、好ましくは<0.2、さらに好ましくは0で、OH-/SiO2のモル比が少なくとも0.3、好ましい0.3〜0.62、さらに好ましくは0.31〜0.61、より好ましくは0.33〜0.6で、結晶化前の上記混合物(a)+(b)+(c)のpHが13以上であることを特徴とする方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例1〜4のSi/Al比を表す図(実施例1は100%Ludox、時差2は95%Ludox、実施例3は85%Ludox、実施例4は75%Ludox)。
【図2】実施例5〜7のSi/Al比を表す図。
【図3】実施例8、9のSi/Al比を表す図(実施例8は比較例)。
【図4】実施例11〜13のSi/Al比を表す図。
【図5】実施例10のSi/Al比を表す図。
【図6】実施例14のSi/Al比を表す図。
【図7】実施例1のサンプルのXRDパターン。
【図8】実施例1のサンプルのSEM像
【図9】トルエンの変換率(重量%)を関数としたパラキシレンの選択性の変化を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明のメタロシリケートは、気孔−構造の形状−選択性規制 (shape-selective constraints) を受ける内部気孔に比べて表面活性が低い。本発明方法はワンポット(one-pot)プロセスとしても好ましい。
【0023】
結晶化前の上記混合物(a)+(b)+(c)のpHは13.1以上、好ましくは13.2以上、より好ましくは13.3以上、最も好ましくは13.4以上であるのが好ましい。
【0024】
無機珪素源は沈殿シリカ、火成シリカ(pyrogenic silica)(またはヒュームドシリカ)およびシリカの水溶性コロイド懸濁液の少なくとも一つの中から選択するのが好ましい。この無機珪素源はアルカリ媒体中へ添加する前の水中への溶解度が制限されているのが好ましい。
【0025】
有機珪素源はテトラアルキルおるとシエケートであるのが好ましい。
【0026】
金属源は金属酸化物、金属塩および金属アルコキシドの少なくとも一つから選択するのが好ましい。
【0027】
メタロシリケートはアルミノ珪酸塩であるのが好ましく、アルミニウム源はアルカリ性溶液中に溶解した水和アルミナ、アルミニウム金属、水溶性アルミニウム塩、例えば硫酸アルミニウムまたは硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、アルミン酸ナトリウムおよびアルコキシド、例えばアルミニウムイソプロポキシドの少なくとも一つの中から選択するのが好ましい。
【0028】
メタロシリケートは硼珪酸塩で、硼素源はアルカリ性溶液中に溶解した少なくとも一種の水和酸化硼素、水溶性硼素塩、例えば塩化硼素およびアルコキシド中から選択するのが好ましい。
【0029】
メタロシリケートはフェロシリケート(ferrosilicate)で、鉄源は水溶解性鉄塩であるのが好ましい。
【0030】
メタロシリケートはガロシリケート(gallosilicate)で、ガリウム源は水溶性ガリウム塩であるのが好ましい。
【0031】
メタロシリケートはチタノシリケート(titanosilicate)で、チタン源は水溶性ハロゲン化チタン、チタンオキシハイドレート、硫酸チタンおよびチタンアルコキシドの少なくとも一つの中から選択するのが好ましい。
【0032】
非水溶性媒体は水に実質的に不溶か、水不溶性の有機溶剤から成る。この有機溶剤は少なくとも5つの炭素原子を有するアルコールまたは少なくとも5つの炭素原子を有するメルカプタンの少なくとも一つから成るのが好ましい。アルコールは18個以下の炭素原子を有し、メルカプタンは18個以下の炭素原子を有するのが好ましい。
【0033】
OH-アニオン源は水酸化ナトリウムにするのが好ましい。
【0034】
本発明はさらに、内側部分(コア)と外側部分(シェル)とを有し、Si/金属の比が内側部分より外側部分の方が高いクリスタライトから成り、このクリスタライトの結晶横断面で金属および珪素が連続的に分布している結晶メタロシリケート組成物の、トルエンをメタノールでアルキル化してキシレンを作る触媒としての使用にある。
【0035】
本発明はさらに、外側表面から下に約10ナノメートルの深さの結晶質外側表面層と、約100〜200ナノメートルの深さで外側表面から内側へ延びた内側部分とを有するクリスタライトから成る結晶質メタロシリケート組成物であって、この結晶質メタロシリケート組成物中の金属に対する珪素の原子比が内側部分と比較して外側表面層の方が好ましくは少なくとも1.3倍である結晶質メタロシリケート組成物にある。メタロシリケート組成物中での金属に対する珪素の原子比は結晶外側層が内側部分と比較して1.3〜15倍、好ましくは2〜10倍、より好ましくは3〜5倍である。内側部分の珪素/金属の原子比は11〜1000、好ましくは20〜500で、結晶表面の珪素/金属の原子比は216〜15000、好ましくは26〜5000である。内側部分の珪素/金属の原子比はほぼ一定であるのが好ましい。
【0036】
本発明はさらに、結晶質メタロシリケート組成物のトルエンをメタノールでアルキル化してキシレンを作る触媒としての使用にある。すなわち、外側表面から下に約10ナノメートルの深さの結晶質外側表面層と、約100〜200ナノメートルの深さで外側表面から内側へ延びた内側部分とを有するクリスタライトから成る結晶質メタロシリケート組成物であって、この結晶質メタロシリケート組成物中の金属に対する珪素の原子比が内側部分と比較して外側表面層の方が好ましくは少なくとも1.3倍である結晶質メタロシリケート組成物の、トルエンをメタノールでアルキル化してキシレンを作る触媒としての使用にある。
【0037】
本発明はさらに、本発明方法で得られる結晶メタロシリケート組成物の、炭化水素変換プロセスの触媒成分として使用にある。
【0038】
先ず最初に(b)と(c)の水溶性媒体を混合し、その後に(b)+(c)の混合物中にヒドロゲルが得られるまで(a)の水溶性媒体をゆっくり加える。それから好ましくは攪拌条件下で加熱して結晶を得る。結晶化後、通常のゼオライト合成と同様に冷却、濾過、洗浄、乾燥し、最後にか焼する。
【0039】
本発明方法で得られるメタロシリケートは構成元素の空間分布を特徴とし且つ表面の珪素濃度が高いことを特徴とする。このメタロシリケートは塩基性媒体中で合成可能な任意の結晶質ゼオライトにすることができる。
【0040】
本発明のゼオライトは、MFI(ZSM−5、シリカライト、TS−1)、MEL(ZSM−11、シリカライト−2、TS−2)、MTT(ZSM−23、EU−13、ISI−4、KZ−1)、MFS(ZSM−57)、HEU(クリノプチロライト)、FER(ZSM−35、フェリエライト(Ferrierite)、FU−9、ISI−6、NU−23、Sr−D)、TON(ZSM−22、Theta−1、ISM、KZ−2およびNU−10)、LTL(L)、MAZ(マザイト(mazzite)、オメガ(Omega)、ZSM−4)からなる群の中から選択するのが好ましい。これらのゼオライトとそのアイソタイプは非特許文献2に記載されている。その内容は本願明細書に引用したものとする。
【非特許文献2】"Atlas of Zeolite Structure Types", eds. W. H. Meier, D. H. Olson and Ch. Baerlocher, Elsevier, Fourth Edition, 1996
【0041】
構造タイプは「IUPAC Commission of Zeolite Nomenclature」によって与えられる。ゼオライトの合成方法は非特許文献3に記載されている。
【非特許文献3】"Verified synthesis of zeolytic materials, eds H. Robson, Elsevier 2001
【0042】
本発明方法で得られるメタロシリケートは水素、アンモニウム、一価、二価および三価のカチオンおよびこれらの混合物から成る群の中から選択される電荷バランスカチオンMを有することができる。
【0043】
メタロシリケートの各種元素の源は商業的に入手でき、また、必要に応じて調製できる。例えば、珪素源はシリケート、例えばテトラアルキルオルトシリケート、沈澱シリカまたは火成(ヒュームド)シリカにすることができる。無機珪素源はアルカリ媒体添加前の溶解が一定のものであるのが好ましい。
【0044】
メタロシリケートがアルミノ珪酸塩のゼオライトの場合、アルミニウム源はアルカリ性溶液に溶かした水和アルミナまたはアルミニウム金属、水可溶性アルミニウム塩、例えば硫酸アルミニウムまたは塩化アルミニウム、アルミン酸ナトリウムまたはアルコキシド、例えばアルミニウム・イソプロポキシドにすることができる。メタロシリケートが硼珪酸塩ゼオライトの場合、硼素源はアルカリ性溶液に溶かした水和酸化硼素または水溶性の硼素塩、例えば塩化硼素またはアルコキシドにすることができる。メタロシリケートがフェロシリケートまたはガロシリケートの場合、鉄源またはガリウム源は水に容易に可溶な任意の鉄源またはガリウム源にすることができる。メタロシリケートがチタノシリケートの場合、チタン源はハロゲン化チタン、チタンオキシハイドレート、硫酸チタンまたはチタンアルコキシドにすることができる。
【0045】
金属に対する珪素の原子比は使用する金属とメタロシリケートとに依存し、少なくとも2/1約10000/1である、好ましくは5/1から約5000/1であり、より好ましくは10/1から1000/1である。
【0046】
合成媒体中には必要に応じて一種または複数のテンプレート(templating)剤(または誘導剤)、例えば窒素、酸素、硫黄または燐を含む有機または無機の化合物を入れることができる。この誘導剤がカチオンの場合には水酸化物と塩、例えばハロゲン化物との混合物の形で導入できる。使用する試剤は本発明で製造するメタロシリケートに依存し、誘導剤の量も本発明で製造するメタロシリケートに依存する。
【0047】
Mカチオン源はアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物または塩にすることができる。また、Mは水酸化アンモニウムまたは塩にすることができる。Mカチオンおよび誘導剤は結晶化媒体のpHに影響を与える。水溶媒体(a)中のOH-1源の比率はテンプレート剤とMカチオンとに応じて決定し、混合物(a)+(b)+(c)中のOH-/SiO2のモル比が少なくとも0.3、好ましくは0.3〜0.6となるようにしなければならない。
【0048】
有機溶剤媒体は基本的に水不溶性または水非相溶性であるのが好ましい。有機溶剤媒体は少なくとも一種のアルコールまたはメルカプタンを含み、基本的に水不溶性であるのが好ましい。基本的に水不溶性であアルコールまたはメルカプタンの例は少なくとも5から約18個の炭素原子を有するアルコールまたはメルカプタンである。有機溶剤媒体はさらに、アルコール基またはメルカプタン基を有するしていない他の水不溶性有機化合物を含むことができる。各メタロシリケート合成手の必要に応じて有機媒体の疎水性を変更する方法は当業者に公知である。所定量の水不溶性アルコールまたはメルカプタンと一緒に使用可能な有機化合物はハロー炭化水と、パラフィン、シクロパラフィン、芳香族炭化水素またはこれらの混合物である。
【0049】
(a)、(b)および(c)の混合の順番は重要でなく、製造するゼオライトに依存する。結晶媒体(a)+(b)+(c)はこの結晶化が起きない温度でエージングすることができ、必要に応じて核形成(nucleation)を開始させることができる。本発明のゼオライト結晶を製造する装置は当業者に公知である。一般に、メタロシリケートはオートクレーブを使用して製造でき、加熱中に混合物が有効に核形成し、結晶化する温度まで結晶混合物を充分に攪拌して十分に均質化する。
結晶化容器は結晶化条件に耐えられる金属または金属合金から作ることができ、必要に応じてテフロン(登録商標)のようなフルオロカーボンで被覆することもできる。また、合成混合物をオートクレーブの一つの部分からかの部部へポンプ輸送する等の当業者に公知の他の攪拌手段を使用することもできる。
【0050】
本発明の好ましい実施例では(a)、(b)および(c)を混合して得られる結晶化媒体を室温で10分〜2時間、攪拌条件下に維持する。その後、結晶化媒体は自発的圧力下かつ高温度下に置かれる。反応混合物は約12O℃〜25O℃、好ましくは130℃〜23O℃、さらに好ましくは160℃〜220℃の結晶化温度に加熱される。結晶化温度までの加熱は一般に約0.5〜約30時間、好ましくは約1〜12時間、さらに好ましくは約2〜9時間である。温度は段階的または連続的に上昇できるが、連続的に上昇させるのが好ましい。結晶化媒体は静止させておくか、熱水処理中に反応容器を攪拌するか揺動させて攪拌することもできる。反応混合物は揺動または攪拌し、好ましくは攪拌する。それから温度を2〜200時間、結晶化温度に維持する。加熱および攪拌は結晶質生成物が形成されるのに有効な時間の間続ける。本発明の特定実施例では反応混合物を16〜96時間、結晶化温度維持する。通常のオーブンや電子レンジを使用できる。
【0051】
一般に、結晶質メタロシリケートはスラリーの形でえられ、それから標準的な手段、例えば沈降、遠心分離または濾過によって回収できる。分離した結晶質メタロシリケートを蒸留水で洗浄し、沈降、遠心分離または濾過して回収し、一般に約25〜約250℃、好ましくは約80℃〜約120℃の温度で乾燥する。メタロシリケートのか焼方法も基本的に公知である。メタロシリケート晶析プロセスの結果として、回収されたメタロシリケートはその気孔中に使用したテンプレート(ひな型)の少なくとも一部を含んでいる。好ましい実施例ではメタロシリケートからこのテンプレートを除去し、活性触媒部位を残し、供給原料と接触するためのメタロシリケートのミクロポーラスチャネルができるように賦活処理を実行する。この賦活プロセスは一般に酸素含有ガスの存在下で200〜800℃の温度でテンプレートを含むメタロシリケートか焼、加熱して行う。場合によっては、低酸素濃度の環境下でメタロシリケートを加熱するのが望ましい。この種プロセスで結晶の気孔系からテンプレートの一部または全部を除去することができる。
【0052】
得られた結晶質メタロシリケートはそのまま触媒として使用できる。本発明の他の実施例では最終触媒生成物に追加の強度または触媒活性を与える他の原料を結晶質メタロシリケートと組み合わせて触媒にすることができる。
【0053】
本発明で調製された結晶は種々の形に形成できる。本発明で作ったメタロシリケートから触媒を作る場合、触媒は工業的反応装置で使用できるような形にする必要がある。結晶は乾燥前または部分的に乾燥してから成形でき、また、結晶は有機テンプレートを除去するためにか焼し、その後に成形することができる。
【0054】
多くの触媒の場合、本発明方法で製造した結晶質ゼオライトと有機変換プロセスでの温度、その他の条件に耐えることができるバインダ材料とを組合わせるのが望ましい。このバインダ材料は、構成元素の空間分布と表面での珪素濃度が高いという特徴を有する上記メタロシリケートの骨格に組み込まれる金属元素を含まないということは当業者は容易に理解できよう。さらに、バインダ材料はメタロシリケートの構成元素の空間分布とメタロシリケート表面での高い珪素濃度とを破壊する元素は含まない。
【0055】
バインダ材料は例えばシリカ、ジルコニア、マグネシア、チタニア、シリカ−マグネシア、シリカ−ジルコニア、シリカ−トリアおよびシリカ−チタニア等の多孔性マトリックス物質や、シリカ−マグネシア−ジルコニアのような三元組成物で構成できる。メタロシリケート成分とバインダ材料の相対割合は広範囲に変えることができ、メタロシリケートの含有量は約1〜約99重量パーセントであり、より好ましくはメタロシリケート成分が約10〜約85の重量パーセント、より好ましくは約20〜約80パーセントである。
【0056】
本発明方法で製造したメタロシリケートは、有機テンプレートを除去するためにか焼した後に周知の方法でイオン交換して、メタロシリケート中に存在する元の電荷バランス用カチオンの少なくとも一部を別のカチオン、例えば周期律表のIB〜VIII族金属、例えばタングステン、モリブデン、ニッケル、銅、亜鉛、パラジウム、白金、カルシウムまたは希土類金属で置換することができ、あるいは、元の電荷バランスカチオンをアンモニウムカチオンと交換し、得られたアンモニウム型をか焼して酸性水素形して、ゼオライトをより酸性の形にすることができる。酸性の形は適当な試薬、例えば硝安、炭酸アンモニウムまたはプロトン酸、例えばHCI、HNO3およびH3PO4を用いたイオン交換によって容易に調製できる。それからメタロシリケートを400〜550℃の温度でか焼してアンモニアを外し、水素形にする。特に好ましいカチオンは使用するメタロシリケートに依存し、水素、希土類金属、周期律表のIIA、IIIA、IVA、IB、IIB、IIIB、IVBおよびVIII族金属が含まれる。本発明方法で製造したメタロシリケートはさらに、公知の前処理後に触媒活性を有する金属の少なくとも一つの別の先駆体、例えば周期律表のIIA、IIIA〜VIIIA、IB、IIB、IIIB〜VIBの金属、例えばタングステン、モリブデン、ニッケル、銅、亜鉛、パラジウム、白金、ガリウム、錫および/またはテルリウムの金属先駆体によって支持されていてもよい。
【0057】
本発明のメタロシリケートは構成元素の空間分布と表面珪素の濃度が高いという特徴を有するので、制御された触媒活性を有し、メタロシリケート結晶の主として内側部分に触媒活性サイトを有し、メタロシリケート結晶の外側表面近くには望ましくない副作用が起こる原因となる非選択的な触媒活性サイトは存在しないためであり、本発明のメタロシリケートはそれ自体でまたは触媒活性物質と一緒になって炭化水素変換プロセスで触媒として使用した時に高い活性、高い選択性、高い安定性またはこれらを合わせた特性を示す。
【0058】
「本発明のメタロシリケート」とは本発明の方法で作ったメタロシリケートおよび/または上記で生成物自体として記載したメタロシリケートを意味する。この種の方法の例としては下記が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0059】
1.軽質オレフィンで芳香族炭化水素をアルキル化して短鎖のアルキル芳香族化合物にする、例えばベンゼンをプロピレンでアルキル化してクメンにしたり、ベンゼンをエチレンでアルキル化してエチルベンゼンにする方法。代表的な反応条件は約100℃〜約450℃の温度、約5〜約80バールの圧力、約1hr-1〜約100hr-1の芳香族炭化水素重量空間速度である。
【0060】
2.軽オレフィンで多環式芳香族炭化水素をアルキル化して短鎖のアルキル多核芳香族化合物、例えばプロピレンでナフタリンをアルキル化してモノまたはジイソプロピルナフタレンにする方法。代表的な反応条件は約100℃〜約400℃の温度、約2〜約80バールの圧力、約1hr-1〜約100hr-1の芳香族炭化水素重量空間速度である。
【0061】
3.アルキル化剤、例えば約1〜20の炭素原子を有するハロゲン化アルキルおよびアルコールの存在下での芳香族炭化水素、例えばベンゼンおよびアルキルベンゼンのアルキル化。代表的な反応条件は約100℃〜約550℃の温度、大気圧から約50バールの圧力、約1hr-1〜約1000hr-1の芳香族炭化水素重量空間速度、約1/1から約20/1の芳香族炭化水素/アルキル化剤モル比である。例としてはトルエンをメタノールでアルキル化してキシレンにする方法がある。これはトルエンのメチル化として知られている。
【0062】
4.芳香族炭化水素、例えばベンゼンの長鎖オレフィン、例えばC14オレフィンによるアルキル化。代表的な反応条件は約50℃〜約300℃の温度、大気圧から約200バールの圧力、約2hr-1〜約1000hr-1の芳香族炭化水素重量空間速度、約1/1から約20/1の芳香族炭化水素/オレフィンモル比。
【0063】
5.オレフィンまたは対応アルコールでフェノール類をアルキル化して長鎖アルキルフェノール類にする方法。代表的な反応条件は約100℃〜約250℃の温度、約1〜50バールの圧力、約2hr-1〜約10hr-1の芳香族炭化水素重量空間速度である。
【0064】
6.ポリアルキル芳香族炭化水素の存在下での芳香族炭化水素のトランスアルキル化。代表的な反応条件は約150℃〜約550℃の温度、大気圧から約100バールの圧力、約1hr-1〜約500hr-1の芳香族炭化水素重量空間速度、約1/1から約20/1の芳香族炭化水素/ポリアルキル芳香族炭化水素モル比である。
【0065】
7. 芳香族供給原料成分、例えばキシレンの異性化。代表的な反応条件は約200℃〜約550℃の温度、約1〜約50バールの圧力、約0.1hr-1〜約200hr-1の芳香族炭化水素重量空間速度、約0〜約100の水素/炭化水素モル比である。
【0066】
8. トルエンのジスプロポーショネーションによるベンゼンおよびパラキシレンの製造。代表的な反応条件は約200℃〜約600℃の温度、大気圧から約60バールの圧力、約0.1hr-1〜約30hr-1の芳香族炭化水素重量空間速度である。
【0067】
9. ナフサ・フィードの接触分解による軽質オレフィンの生産。代表的な反応条件は約450℃〜約650℃の温度、大気圧から約8バールの圧力、約5hr-1〜約50hr-1の芳香族炭化水素重量空間速度である。
【0068】
10. ブテンフィードの接触分解による軽質オレフィン、例えばプロピレンの生産。
代表的な反応条件は約450℃〜約650℃の温度と、大気圧から約8バールの圧力と、約5hr-1〜約50hr-1の重量空間速度である。
【0069】
11. 高分子量炭化水素の低質量炭化水素への接触分解。本発明のメタロシリケートは従来の触媒と一緒に流動接触分解装置で使用できる。この接触分解の代表的な反応条件は約450℃〜約650℃の温度と、約0.1〜約10バールの圧力と、約1hr-1〜約300hr-1の重量空間速度である。
【0070】
12. 直鎖パラフィン系炭水素の選択的除去による炭化水素の脱蝋。代表的な反応条件は約200℃〜450℃の温度と、10〜100バールの圧力と、約0.1〜約10バールの圧力と、約1hr-1〜約20hr-1の重量空間速度である。
【0071】
13. 重質石油供給原料の水素化分解。メタロシリケート触媒は水素化分解触媒で使用するタイプの少なくとも一種の水素化成分の有効量を含む。
【0072】
14. 水素化分解/脱蝋プロセスの組合せ。一種または複数のメタロシリケートを用いるか、メタロシリケートと他のゼオライトまたはモレキュラーシーブとを組み合わせる。
【0073】
15. オレフィンおよび/または芳香族化合物の軽質パラフィン系炭水素への変換。代表的な反応条件は約425℃〜約750℃の温度と、約1〜約60バールの圧力である。
【0074】
16. 軽質オレフィンのガソリン、留出分およびラブレンジ炭化水素への変換。代表的な反応条件は約175℃〜約450の温度は、約3〜約100バールの圧力。
【0075】
17. ナフサ(例えばC6-C10)の高オクタン化芳香族含有量の多い生成物への変換。炭化水素フィードを触媒と接触させる。温度範囲は約400℃〜600℃、好ましくは480℃〜550℃で、圧力範囲は大気圧から40のバールで、重量空間速度は約0.1hr-1〜約35hr-1である。
【0076】
18. オレフィンをアルコールと反応させて混合エーテルにする。例えば、メタノールまたはエタノールをイソブテンおよび/またはイソペンテンと反応させて、メチル-t- ブチルエーテル(MTBE)またはエチル-t-ブチルエーテル(ETBE)および/またはt-アミルメチルエーテル(TAME)またはt-アミル−エチル−エーテル(TAEE)にする。代表的な変換条件は約20℃〜約250℃の温度と、約2〜約100バールの圧力と、約0.1hr-1〜約200hr-1で約0.1の液体空間速度と、約0.2/1〜約3/1のアルコール対オレフィンモル・フィード比である。
【0077】
19. エーテル、例えばMTB、ETBE、TAMEまたはTAEEのイソブテンおよびイソペンテンおよび対応アルコールへの分解。代表的な変換条件は約20℃〜約300℃の温度と、約0.5〜約10バールの圧力と、約0.1hr-1〜約200hr-1の液体空間速度である。
【0078】
20. 酸素化物、例えばアルコール(例えばメタノール)またはエーテル(例えばジメチルエーテル)またはその混合物のオレフィンおよび芳香族を含む炭化水素への変換。反応条件は約275℃〜約600℃の温度と、約0.5〜約60バールの圧力と、約0.1hr-1〜約100hr-1での液体空間速度である。
【0079】
21. 約2〜約10個の炭素原子を有する直鎖または分岐オレフィンのオリゴマー化。このプロセスの生成物は約6〜50の炭素原子を有するオリゴマーで、溶剤、潤滑油、アルキル化剤として燃料混合供給原料および各種酸素含有化学品の製造反応物として有用である。このオリゴマー化法は一般に約150℃〜約350℃の範囲の温度と、約5〜約100バールの圧力と、約0.2hr-1〜約70hr-1の液体空間速度で実行される。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0080】
以下の実施例で得られる材料の製造方法および特徴付け装置は以下の通り:
X−線回折で回折パターンを得て、所望の結晶構造を確認し、また、未知の結晶相の存在を検出し、基準ゼオライトと比較して結晶化度を決定した。回折計はフィリップスPW1830(Co Ka)である。
【0081】
構成元素の空間分布は「二次イオン質量分析」またはSIMSで測定した。使用した器械はCAMECA TOF-SIMS IVであった。ゼオライトは不導体であるので、チャージ効果を避けるために低エネルギー電子フルードガン(floodgun)を使用した。深さ方向の組成プロフィルを得るためにスパッターリングガンを使用し、それと同時に解析ガンも使用した。両方のガンでは一次イオンとしてアルゴンを使用し、スパッターリングガンのイオンビームのエネルギは20nAの電流密度で3keVであり、解析ガンは1pAの電流で10keVのエネルギを有する。スパッターリングガンで200×200ミクロンの表面積を浸食し、表面解析ガンで約5×5ミクロンの表面積を走査した。プロフィルはノンインタレースモードで実行した。すなわち、サンプルの解析とスパッターリングとは完全に分離した。サイクルは30秒間解析−30秒間スパッターリング−2秒間休止のシーケンスである。ゼオライト粉末を圧密し、ウエハース中へ押込み、ウエハースを支持体に固定し、10-6〜10-7トールに減圧下に置いた。24時間脱ガスした後に解析を実行した。濃度断面プロフィルではアルミニウムと珪素の単原子種だけを考慮し、定量測定(Si2+/Al2+)では二重荷電カチオンだけを考慮した。較正は周知のSi/Al比を有するゼオライトで行った。この解析条件下での検量線は次の式に応答する:
フレーム中のSi/Al= SIMSによる2.1008Si2+/Al2+
エロージョン速度はプロフィルメータで測定し、それは0.17ナノメートル/秒に対応した。
【0082】
溶液(a)、(b)および(c)を混合してMFIアルミノ珪酸塩を調製した。
溶液(a)
xxx mlの蒸留水中にxxx gの水酸化ナトリウムと、xxx gのAI(NO33.9H2O([表2])
溶液(b)
xxx mlの蒸留水中にxxx gのテンプレート(ひな型)と、40重量%のSiO2(Ludox AS−40)を含んだxxx mlのコロイドシリカ溶液([表2])。
溶液(c)
xxx mlの抽出剤と、xxx mlのテトラエチルオルト珪酸(TEOS)([表2])
【0083】
溶液(b)と(c)をオートクレーブ中で15分間混合し、溶液(a)をゆっくり加えてヒドロゲルを得た。室温で30分間撹拌した後、結晶化反応を自己発生圧力下に電子レンジ中で170℃で5.5時間(実施例1〜9)および通常のオーブン中で24時間(実施例10〜14)行った。
【0084】
電子レンジでは約50回転数/分の速度で撹拌。
通常のオーブンではテフロン(登録商標)の攪拌ボールで50回転/分で撹拌。
【0085】
生成物は冷却し、0.75リットルの蒸留水で洗浄し、110℃で16時間乾燥し、有機材料を除去するために600℃で5時間か焼した。
【0086】
各化合物の正確な量および合成条件は[表2]に示した。量は20mlの全容積を基礎として計算した。テンプレートを除去する前後で全ての実施例でXRDパターンを測定した。各ケースともゼオライトの純粋相が形成されたことを示し、不純物はない([表2])。
【0087】
Si/Al比
Si/Alは下記の図に示した。
[図1](実施例1は100%Ludox、実施例2は95%Ludox、実施例3は85%Ludox、実施例4は75%Ludox)、
[図2](実施例5〜7)、
[図3](実施例3は比較例、実施例9)
[図4](実施例11〜13)
[図5](実施例10)
[図6](実施例14)
実施例1のサンプルのXRDパターンを[図7]に示す。
実施例1のサンプルのSEM像を[図8]に示す。
【0088】
【表1】

【0089】
【表2】

【0090】
メタノールによるトルエンのアルキル化
三つの異なるゼオライトサンプルでトルエン反応のメチル化を評価した。
各サンプルの特性は下記の[表3]にまとめて示した。
サンプルAおよびサンプルBは酸部位が均一に分布した標準的なMFIゼオライトである(結晶のコアと外側層で珪素/アルミニウム比が同じ)。
サンプルCは本発明の実施例1で合成したもので、結晶に沿って優れた珪素/アルミニウム比分布プロフィルを示している(結晶コアでの珪素/アルミニウム比は87、外側層では265)
【0091】
全ての触媒で下記の運転条件を使用した:
トルエンのメチル化を50mgの触媒を用いて300℃で実行した。N2/試薬のモル比は4.50を使用し、トルエン/メタノール比は2を使用し、WHSVは変化させた(1〜16h-1)。
CP−WAX 52CB 25mカラムを使用し、下記の昇温プログラムを用いて解析した:
60から85まで5℃/分で加熱、その後、175℃まで15℃/分で加熱。
【0092】

【0093】
[図9]はトルエンの変換率(重量%)を関数としたパラキシレンの選択性の変化を示す。
サンプルCはサンプルAおよびBと比較してトルエン変換率が高い時にパラキシレン選択性が高い。これはパラキシレンの選択においてアルミニウムの濃度勾配が遊離な影響を与えることを明確に示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側部分(コア)および外側部分(シェルまたは外側層)とを有し、Si/金属の比が内側部分より外側部分の方が高いクリスタライトから成り、このクリスタライトの結晶横断面で金属および珪素が連続的に分布している結晶メタロシリケート組成物の製造方法において、
下記(a)〜(e)の段階:
(a) OH-アニオンと金属源とを含む水溶性媒体を用意し、
(b) 有機珪素源と、任意成分のテンプレート剤とから成る水溶性媒体を用意し、
(c) 任意成分の有機珪素源を含む任意成分の非水溶性媒体を用意し、
(d) 所望の結晶質メタロシリケートを結晶させるのに有効な条件下で上記水溶性媒体(a)と(b)と任意成分の(c)とを混合し、
(e) 所望のメタロシリケートを回収する、
から成り、結晶化前の上記混合物(a)+(b)+(c)中のSi有機/Si無機の比が<0.3で、OH-/SiO2のモル比が少なくとも0.3で、結晶化前の上記混合物(a)+(b)+(c)のpHが13以上であることを特徴とする方法。
【請求項2】
Si有機/Si無機の比が<0.2である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Si有機/Si無機の比が0である請求項2に記載の方法。
【請求項4】
OH-/SiO2のモル比が0.31〜0.61である請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
メタロシリケートがアルミノ珪酸塩である請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
メタロシリケートがMFIである請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
メタロシリケートがMEL、MTT、MFS、HEU、FER、TON、LTLおよびMAZの中から選択される請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
結晶化の前に(a)+(b)+(c)の混合物のpHを13.1以上にする請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
pHを13.2以上にする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
pHが13.3以上にする請求項8に記載の方法。
【請求項11】
無機珪素源を沈殿シリカ、火成シリカ(またはヒュームドシリカ)およびシリカの水溶性コロイド懸濁液の少なくとも一つの中から選択する請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
先ず最初に(b)と(c)の水溶性媒体を混合し、その後に(b)+(c)の混合物中にヒドロゲルが得られるまで(a)の水溶性媒体をゆっくり加える請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法で得られた結晶質メタロシリケート組成物の、炭化水素転換プロセスでの触媒成分としての使用。
【請求項14】
炭化水素転換プロセスがトルエンをメタノールでアルキル化してキシレンを作る方法である請求項13に記載の使用。
【請求項15】
内側部分(コア)および外側部分(シェルまたは外側層)とを有し、Si/金属の比が内側部分より外側部分の方が高いクリスタライトから成り、このクリスタライトの結晶横断面で金属および珪素が連続的に分布している結晶メタロシリケート組成物の、トルエンをメタノールでアルキル化してキシレンを作る触媒としての使用。
【請求項16】
外側表面から下に約10ナノメートルの深さの結晶質外側表面層と、約100〜200ナノメートルの深さで外側表面から内側へ延びた内側部分とを有するクリスタライトから成る結晶質メタロシリケート組成物であって、この結晶質メタロシリケート組成物中の金属に対する珪素の原子比が内側部分と比較して外側表面層の方が好ましくは少なくとも1.3倍である結晶質メタロシリケート組成物の、トルエンをメタノールでアルキル化してキシレンを作る触媒としての使用。
【請求項17】
外側表面から下に約10ナノメートルの深さの結晶質外側表面層と、約100〜200ナノメートルの深さで外側表面から内側へ延びた内側部分とを有するクリスタライトから成る結晶質メタロシリケート組成物であって、この結晶質メタロシリケート組成物中の金属に対する珪素の原子比が内側部分と比較して外側表面層の方が好ましくは少なくとも1.3倍である結晶質メタロシリケート組成物。
【請求項18】
結晶質メタロシリケート組成物中の金属に対する珪素の原子比が内側部分と比較して外側表面層の方が1.3〜15倍である請求項17に記載の結晶メタロシリケート組成物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

image rotate

【図6】
image rotate

image rotate

【図7】
image rotate

【図9】
image rotate

【図8】
image rotate


【公表番号】特表2011−523618(P2011−523618A)
【公表日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512039(P2011−512039)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【国際出願番号】PCT/EP2009/052168
【国際公開番号】WO2009/146953
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(504469606)トータル・ペトロケミカルズ・リサーチ・フエリユイ (180)
【Fターム(参考)】