説明

結束バンド

【課題】電源、通信設備等にて多用される結束バンドを、その表面に、識別や保守点検に役立つ文字が長期に亘って解読可能に保持されるように改善し、より便利に使用することができるようにして提供する。
【解決手段】結束バンドAが挿通されるバンド挿通孔12を備えた結束本体11に、バンド挿通孔12に挿通されてくる結束バンドAによって逃がし揺動され、かつ、抜出し力が加わった結束バンドに食込み係合することでその結束バンドAを抜止めする係止爪13が装備されて成る結束ヘッドHとの協働により、結束対象の結束を行うための結束バンドAにおいて、バンド表面1が凹凸状面に形成され、凹凸状面1にインクの噴射による文字9が形成されている合成樹脂製のものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結束ヘッドと協働して結束するための結束バンドに係り、詳しくは、結束バンドが挿通されるバンド挿通孔を備えた結束本体に、前記バンド挿通孔に挿通されてくる結束バンドによって逃がし揺動され、かつ、抜出し力が加わった結束バンドに食込み係合することでその結束バンドを抜止めする係止爪が装備されて成る結束ヘッドとの協働により、結束対象の結束を行うための結束バンドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の結束バンドとして、結束ヘッドと対を為して結束具を構成するための合成樹脂製の結束バンドが知られている。結束ヘッドは1対の挿通孔又は1つの挿通孔を設け、その挿通孔内に係止爪を突設して成る、という構成のものである。つまり、電線やケーブル等の結束対象を束ねるには、所要長さの結束バンドで結束対象を束ね、その結束バンドの両端を結束ヘッドの挿通孔に挿通した後、結束バンドの両端を指や工具でつかんで引き締め、結束バンドを挿通孔内の係止爪に食い込ませて抜け止め状態に食込み係合させることにより、結束対象を引締めた状態で結束並びに保持することができる。従って、結束バンドは結束ヘッドと対を為して結束を行うに欠くことのできない構成要素である。このような技術としては、例えば特許文献1において開示されるものが知られている。
【0003】
ところで、上述のように電線やケーブル等の結束対象を結束保持するに便利な結束具において、その結束バンドに文字を印しておくことが試されている。つまり、山間地等を含む屋外に設置される電源設備、電信設備等においては多数の結束具が使用されるので、例えば、何という企業の製品であるかとか、管理上の仕分、製造年月日、その他といった種々の文字を印字しておくと、後々の保守点検、管理において有益であると考えられる。この場合、結束ヘッドには物理的に印字スペースが無いので、印字する対象としては必然的に結束バンドになる。
【0004】
そこで、まずは前述した特許文献1において開示される一般的な合成樹脂製の結束バンドに文字を印字してテストしてみた。テストは屋外に晒す曝露状態を所定期間続けるという一般的な耐候試験(耐候テスト)である。ところが、目標とする時間(期間)持たずして印字が消滅してしまい、実用に耐える状態にはならないことが判明〔図6(c)参照〕した。この点について、詳しくは後述する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3548600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、電源、通信設備等にて多用される結束バンドを、その表面に、識別や保守点検に役立つ文字が長期に亘って解読可能に保持されるように改善し、より便利に使用することができるようにして提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、結束バンドが挿通されるバンド挿通孔12を備えた結束本体11に、前記バンド挿通孔12に挿通されてくる結束バンドによって逃がし揺動され、かつ、抜出し力が加わった結束バンドに食込み係合することでその結束バンドを抜止めする係止爪13が装備されて成る結束ヘッドHとの協働により、結束対象の結束を行うための結束バンドにおいて、
バンド表面1が凹凸状面に形成され、前記凹凸状面1にインクの噴射による文字9が形成されている合成樹脂製のものとすることを特徴とするものである。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の結束バンドにおいて、前記凹凸状面1が、基準面1Aから厚み方向で内側に凹入する凹み5が多数形成されることによって構成されていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載の結束バンドにおいて、前記凹凸状面1が、斜めの目を交差させて薄肉になる部分が幅方向に断続的に形成されるあや目状のローレット目5を施すことで構成されていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載の結束バンドにおいて、前記凹凸状面1が、前記結束ヘッドHによる係止作用面に設定されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、詳しくは実施形態の項にて述べるが、印字される面に凹凸が形成されて凹凸状面とされているから、平らな面を持つ従来の結束バンドに比べて、太陽光による平均照射角度が小さく、即ち照射面積が拡大されるようになり、太陽光による劣化の進行速度が遅められるようになる。加えて、風雨に晒される場合でも、凹凸状面を持つ結束バンドでは、その凹凸によって風雨が遮られる余地があるに対して、平らな面をもつ従来の結束バンドでは、自身によって遮られる余地が無く直に風雨に晒されるので、この点に関しても本発明による場合の方が有利になる。その結果、電源、通信設備等にて多用される結束バンドを、その表面に、識別や保守点検に役立つ文字が長期に亘って解読可能に保持されるように改善し、より便利に使用することができるようにし得た。
【0012】
請求項2の発明によれば、結束ヘッドのバンド挿通孔の大きさを変更することなく、結束バンドに凹凸を施すことが可能となり、結束具としての変更を行う必要がなく簡便に請求項1による前記効果を得ることができる。
【0013】
請求項3の発明によれば、バンド表面の凹凸を、一般に多用されるあや目状のローレット目とすることであり、凹凸形成ようの新たな手段を投じることなく現行の生産設備でもって廉価に構成することができる、という利点がある。
【0014】
請求項4の発明によれば、結束対象に巻回されて結束された結束状態において、印字された文字は外周面側に存在することとなり、結束後において容易に文字確認することができて便利な結束バンドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】結束バンドの巻きロール及びそのケースを示す斜視図
【図2】結束バンドの要部を示す拡大平面図
【図3】図2の結束バンドの部分斜視図
【図4】図2の結束バンドの形状を示す縦断面図
【図5】図2の結束バンドの形状を示す横断面図
【図6】結束バンド印字面の表面状況を示し、(a)は耐候試験開始時、(b)は750時間経過後、(c)は1500時間経過後
【図7】従来の結束バンド印字面の表面状況を示し、(a)は耐候試験開始時、(b)は750時間経過後、(c)は1500時間経過後
【図8】結束ヘッドを用いて被結束物を結束した状態の要部を示す断面図
【図9】印地面の太陽光の照射角度を示し、(a)は本発明の結束バンド、(b)は従来の結束バンド
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明による結束バンドの実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、便宜上、本発明による結束バンドをA、従来の結束バンドをAJと符記するものとする。
【0017】
〔実施例1〕
実施例1による結束バンドAは、図2〜図6に示すように、ポリアセタール(合成樹脂の一例)製であって、一対の表面1,2、及び側面3,4を有する断面が扁平な略矩形形状を呈する帯状のものに形成されている。表面(バンド表面の一例)1及び裏面(バンド表面の一例)2は共に凹凸状面に形成され、表面1にはインクの噴射による文字9が形成されている。
【0018】
凹凸状面である表面1が、基準面1Aから厚み方向で内側に凹入する凹み5が多数形成されることによって構成されている。具体的には、図3〜図5に示すように、斜めの目を交差させて薄肉になる部分が幅方向に断続的に形成されるあや目状のローレット目5を施すことで構成されている。即ち、結束バンドAは帯状に押出成形されてなり、その表裏両面1,2には、押出成形工程上であや目を外周面につけたローレットギヤ間に通されて刻印されることにより、図3,図4,図5に示すように、斜めの目を交差させたあや目状のローレット目5が形成されている。
【0019】
結束バンドAは、長大な長さに製造されて巻取り収容される、いわゆる「エンドレスタイ」と呼ばれる連続帯状のものであり、図1に示すように、扁平箱状の収容ケース6内に渦巻状に巻回されて収容されている。つまり、収容ケース6の出口6aから取り出されている結束バンドAを引っ張って引き出し、所定長さに切断して順次結束ヘッドH(図8参照)と対を為して結束具Kとして用いられる。
【0020】
ここで、結束具Kとしての使用例について簡単に説明する。図8は、多数の電線(結束対象の一例)rを束ねて巻回される結束バンドAが、結束ヘッドHに両端部7,8が通されて引き締め結束された結束保持状態を示している。この結束保持状態では、結束ヘッドHの一対のバンド挿通孔12,12にバンド端部7,8が通され、かつ、係止爪13,13がバンド端部7,8に食込み係合して抜け止めされている。係止爪13,13が食込み係合する側が表面1であるように設定されており、印字されたた文字9が外部から容易に視認できるようにされている。
【0021】
結束ヘッドHは、結束バンドAが挿通されるバンド挿通孔12,12を備えた合成樹脂(ポリアセタール等)製の結束本体11に、バンド挿通孔12,12に挿通されてくる結束バンドAによって逃がし揺動され、かつ、抜出し力が加わった結束バンドAに食込み係合することでその結束バンドAを抜止めする金属製で一対の係止爪13,13が装備されて構成されている。バンド挿通孔12,12は、それらの間に形成される仕切り壁14によって独立した孔に区切られている。結束ヘッドHは、その側面視形状が鞍形を呈するように形成されている。
【0022】
さて、結束バンドAには、この結束バンド及び結束ヘッドHによって結束される電線を所有する会社を示す文字、具体的にはローマ字、英字等による商号、商標等がバンド長手方向に一定間隔(例えば15cm毎)を空けて印字されている。即ち、バンド表面1が凹凸状面に形成され、凹凸状面1にインクの噴射による文字9が形成されているのであり、一例として図2に示すように、「abcdef」(文字9)を意匠的に配置して成る文字がインク・ジェットによってプリントされている。
【0023】
ここで、ローレット目(凹凸)5が形成されている表面1を有する本発明品の結束バンドAと、表面が平らな従来の結束バンドAJとを用いての耐候テスト結果を図6,7に示す。結束バンドAの表面1には、インクジェットによって形成された文字、例えば「d」9が印字されており、図7(a)はその印字直後の状態、即ち経過時間0のときの文字9の識別状態をイメージ化したものである。当然ながらくっきりと「d」が読み取れる。なお、耐候テストとは、例えば、屋根の上といった屋外の一定場所に、試験対象となる結束バンドAを所定時間置き続ける試験のことである。
【0024】
次に、図7(b)は、印字後750時間経過したときの印字状態をイメージ化したものである。多少全体的に色落ちが認められるものの、くっきりとした文字「d」9として読み取れることが理解できる。そして、図7(c)は、印字後1500時間が経過したときの印字状態をイメージ化したものである。かなり色落ちが進んではいるが、依然として文字「d」9が十分読み取れる程度の色褪せであり、十分な耐久性(耐候性)を有していることが理解できる。これは、平らな面に印字された従来の結束バンドのテスト結果(後述)に比べて、圧倒的に印字が長持ちすることがデータ的に証明されている。
【0025】
図6(a)は、従来の結束バンドAJの平らな表面1に文字「d」9が印字された直後の状態、即ち経過時間0のときの文字の識別状態をイメージ化したものである。これも図7(a)と同様、当然ながらくっきりと「d」9が読み取れる状態である。図6(a)に示す状態から750時間経過後の状態が図6(b)にイメージ化して示されており、かなり色落ち及び色褪せが進行していてかろうじて文字「d」9と読み取れる程度であることが理解できる。そして、1500時間経過後においては、図6(c)に示すイメージ図のように、殆ど印字部分が無くなる状態に風化されており、もはや「d」の読取は不可能であるばかりか、印字されていた箇所であるか否かの判別すら困難な状態であることが理解できる。
【0026】
上記のように、凹凸が施された面への印字が、平らな面への印字よりも長持ちする理由は以下のように考えられる。例として太陽光が結束バンドA,AJの直上から照っている状況の比較で検討する。まず、図9(b)に示す従来の結束バンドAJの場合、印字文字9には照射角β、即ち印字面に直交する方向の太陽光が一様に照射されている状態であることが理解できる。つまり、まともに太陽光を受ける状態であるとする。
【0027】
そして、そ本発明による結束バンドAにおいては、上述の場合と同様な状態であるときの凹凸部分での照射角はα、即ち、90度からローレット目5の形成角γを減じた値であるから(α=β−γ)、これは図9(b)の場合よりも明らかに小さい。換言すれば、太陽光を受ける面積が本発明による結束バンドAの方が従来の結束バンドAJよりも大きいことである。従って、太陽光の照射による色落ちや色褪せの進行度合いが、全体として従来の結束バンドAJよりも遅くなることとなり、これが本発明による結束バンドAの耐久性(耐候性)が優れる要因であると考えられる。
【0028】
つまり、印字面にローレット目5等の凹凸5が形成されていれば、平らな面を持つ従来の結束バンドに比べて、平均照射角度が小さく、即ち照射面積が拡大され、太陽光による劣化の進行速度が遅められるようになる。また、風雨に晒される場合を考えると、凹凸状面1を持つ本発明による結束バンドAでは、その凹凸5によって風雨が遮られる余地があるに対して、平らな面1をもつ従来の結束バンドAJでは、遮られる余地無く直に風雨に晒されるので、この点に関しても本発明による場合の方が有利である。
【0029】
インクジェット方式による印字、即ちインクの噴射によって印字する手段は、被印字面に多少の凹凸や起伏があっても問題無く文字が印字できるので、凹凸5が形成されている検束バンドAへの文字形成手段として好適なものである。
【0030】
〔別実施例〕
凹凸5は碁盤の目状(市松模様)で凹凸する構造や、ゴルフボールのように多数のディンプルが設けられる構成、或いは成形型のシボ加工によって為される種々の凹凸を伴う模様が施されたもの等、種々の変更設定が可能である。実施例1の結束バンドAは、裏表の両面1,2が、共に基準面1A,2Aから凹んだ構造の凹凸5を持っているが、凹凸5が片面にのみ形成される検束バンドでも良い。
【符号の説明】
【0031】
1 バンド表面、凹凸状面
1A 基準面
5 凹み、ローレット目
9 文字
11 結束本体
12 バンド挿通孔
13 係止爪
A 結束バンド
H 結束ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結束バンドが挿通されるバンド挿通孔を備えた結束本体に、前記バンド挿通孔に挿通されてくる結束バンドによって逃がし揺動され、かつ、抜出し力が加わった結束バンドに食込み係合することでその結束バンドを抜止めする係止爪が装備されて成る結束ヘッドとの協働により、結束対象の結束を行うための結束バンドであって、
バンド表面が凹凸状面に形成され、前記凹凸状面にインクの噴射による文字が形成されている合成樹脂製の結束バンド。
【請求項2】
前記凹凸状面が、基準面から厚み方向で内側に凹入する凹みが多数形成されることによって構成されている請求項1に記載の結束バンド。
【請求項3】
前記凹凸状面が、斜めの目を交差させて薄肉になる部分が幅方向に断続的に形成されるあや目状のローレット目を施すことで構成されている請求項1に記載の結束バンド。
【請求項4】
前記凹凸状面が、前記結束ヘッドによる係止作用面に設定されている請求項1〜3の何れか一項に記載の結束バンド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−246163(P2011−246163A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−121278(P2010−121278)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(000108524)ヘラマンタイトン株式会社 (57)
【Fターム(参考)】