説明

結束バンド

【目的】 バンド部の逆差し込みを防止する。
【構成】 表面2Aに鋸歯状凹凸部7が形成されたバンド部2と、該バンド部2の基端に形成され前記バンド部2の自由端2p側を挿通させる挿通孔3を有した筒部4とを備え、前記挿通孔3の内面に正方向(イ)から前記バンド部2の自由端2p側を挿通させたとき前記鋸歯状凹凸部7と係合してバンド部2の抜けを阻止するロックアーム5が形成された結束バンドにおいて、前記バンド部2の裏面2Bに、逆方向(ロ)から前記バンド部2の自由端2p側を前記挿通孔3に挿通させたとき前記ロックアーム5によって突き止められる段部28a,38aを設けた。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ワイヤーハーネス等の結束に用いられる結束バンドに関する。
【0002】
【従来の技術】結束バンドの従来例として、図5に示すものが知られている。この結束バンド1は、バンド部2の基端に、バンド部2の自由端2p側を挿通させる筒部4を有している。筒部4には挿通孔3が形成され、挿通孔3の壁面には、バンド部2の表面2Aに形成した鋸歯状凹凸部7と係合する可撓性のロックアーム5が突設されている。鋸歯状凹凸部7は、バンド部2の表面2Aにのみ形成され、バンド部2の裏面2Bは単なる平面になっている。
【0003】ロックアーム5は、正方向(イ)からバンド部2の自由端2p側を挿通孔3に挿入した場合の挿入方向先端側に向かって傾斜しており、ロックアーム5の先端面には、鋸歯状凹凸部7と噛み合う止歯6が形成されている。
【0004】バンド部2の表面に形成された鋸歯状凹凸部7は、その凸部が、バンド部2の基端方向を向いた係止壁面7aと、バンド部2の自由端2p方向を向いた傾斜壁面7bとからなる断面略直角三角形状をなしている。また、ロックアーム5の止歯6は、正方向(イ)から挿入されたバンド部2の鋸歯状凹凸部7と噛み合う形状をなしており、係止壁面6aがバンド部2の表面2Aと同じ方向を向き、傾斜壁面6bがバンド部2の裏面2Bと同じ方向を向いている。なお、止歯6は3歯分程度形成されている。
【0005】この結束バンド1で電線を結束する場合には、筒部4にバンド部2を正方向(イ)から通す。そうすることにより、バンド部2側の鋸歯状凹凸部7とロックアーム5が係合して、バンド部2の抜けが止まり、バンド部2がループ状になる。その際、バンド部2の挿入時に、鋸歯状凹凸部7の傾斜壁面7bと止歯6の傾斜壁面6bが摺接しあうことで、ロックアーム5がバンド部2の通路を広げる方向に撓み、挿通を容易にする。
【0006】一方、挿通方向と反対の引き抜き力が作用した場合は、鋸歯状凹凸部7の係止壁面7aと止歯6の係止壁面6aとが相互に衝合することで、ロックアーム5がバンド部2の通路を絞る方向に撓み、ロックアーム5が鋸歯状凹凸部7に食い込んで、バンド部2の抜けを阻止する。
【0007】また、別の結束バンドとして、実開昭50−32377号公報に記載のものが知られている。図7はこの結束バンド11を示す。この結束バンド11は、バンド部2の裏面2Bにも鋸歯状凹凸部7を形成し、挿通孔3の対向壁面に一対のロックアーム15、15を設け、正方向(イ)からバンド部2を挿通させた際に、バンド部2の表裏面の鋸歯状凹凸部7、7に各ロックアーム15、15の先端の爪16、16を係合させるようにしたものである。この場合の鋸歯状凹凸部7は表面のものも裏面のものも、係止壁面7aと傾斜壁面7bとが同じ方向を向いている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】ところで、従来の結束バンド1は、通常と逆の方向(ロ)にも間違って差し込む可能性があり、作業途中で逆差し込みに気付かずに、通常の結束時の状態まで締めてしまうことがあった。そこまで締め付けた場合、ある程度の締め付け力は生じるものの、実際にはロックが効いていないわけであるから、緩みや外れを起こすことになっていた。
【0009】例えば、図5に示した結合バンド1を、図6R>6に示すように逆方向(ロ)から挿通孔3に挿通させた場合は、平坦な裏面2Bがロックアーム5に対向するので、ロックが効かない。従って、そのまま気付かずに放置してした場合、緩みや外れを起こすことになっていた。
【0010】また、図7に示した結合バンド11は、ロックアーム15、15の先端の爪16、16が狭い間隔で対向しているから、バンド2Bを逆方向に通しづらい。しかし、一旦挿入してしまうと、後は容易に締められるので、上記と同じ問題を生じることになっていた。
【0011】本発明は、上記事情を考慮し、逆差込みを防止できる結束バンドを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、表面に鋸歯状凹凸部が形成されたバンド部と、該バンド部の基端に形成され前記バンド部の自由端側を挿通させる挿通孔を有した筒部とを備え、前記挿通孔の壁面に、正方向から前記バンド部の自由端側を挿通させたとき前記鋸歯状凹凸部と係合してバンド部の抜けを阻止するロックアームが形成された結束バンドにおいて、前記バンド部の裏面に、逆方向から前記バンド部の自由端側を前記挿通孔に挿通させたとき前記ロックアームによって突き止められる段部を設けたことを特徴とする。
【0013】請求項2の発明は、請求項1記載の結束バンドであって、前記バンド部の裏面に凹部が設けられ、該凹部の内側壁によって前記段部が形成されていることを特徴とする。
【0014】請求項3の発明は、請求項1記載の結束バンドであって、前記バンド部の裏面に、前記段部として、前記自由端側が低く基端側が高くなった段差が設けられていることを特徴とする。
【0015】請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の結束バンドであって、前記段部は、ロックアームと突き当たった際にロックアームを段部に対して食い込む方向に変位させる壁面を有していることを特徴とする。
【0016】
【作用】請求項1の発明では、逆方向からバンド部の自由端側を筒部の挿通孔に挿通させると、バンド部の裏面に設けた段部がロックアームに突き当たることで、挿入が止められる。
【0017】請求項2の発明では、バンド部を逆差しした場合、凹部の内壁面からなる段部にロックアームが突き当たり、挿入が止められる。
【0018】請求項3の発明では、バンド部を逆差しした場合、段差によってできる壁にロックアームが突き当たり、挿入が止められる。
【0019】請求項4の発明では、バンド部を逆方向に差し込もうとすればする程、ロックアームが段部に食い込むので、差し込めなくなる。
【0020】
【実施例】以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
【0021】図1は本発明の一実施例の構成を示す。この結束バンド21は、図5に示した従来の結合バンド1とほとんど構成が同じであるが、結合バンド2の裏面2Bの先端付近に平面視矩形の凹部28を設け、この凹部28の自由端2p側を向いた内壁面(段部)28aに対し、ロックアーム5の先端が突き当たるようにした点が異なる。
【0022】この場合の自由端2p側を向いた内壁面28aは、ロックアーム5の止歯6の係止壁面6aと衝合した際に、ロックアーム5を凹部28に食い込む方向に変位させるようになっている。その条件は、係止壁面6aの傾斜と、ロックアーム5の回動支点の位置とで決まる。ここでは、内壁面6aは、鋸歯状凹凸部7の傾斜壁面7bと反対方向にわずかに傾斜しており、また、凹部28の大きさは、ロックアーム5の止歯6がちょうど入る程度に設定されている。
【0023】この結合バンド21において、バンド部2aを挿通孔3に対して逆差しした場合、バンド部2の裏面2Bに設けた凹部28の内壁面28aに、ロックアーム5が突き当たることで、挿入が止められる。バンド部2を逆方向に差し込もうとすればする程、ロックアーム5が凹部28に食い込むので、差し込めなくなる。従って、逆差し込みを有効に防止することができ、逆差し込みによる緩みや外れを未然に回避することができる。
【0024】なお、上記実施例のように、バンド部2の裏面2Bに局部的な凹部28を設けることで段部を設ける以外に、バンド部2の肉厚が少し大きい場合には、自由端2p側に薄肉にするための切欠38を設け、自由端2p側が低く基端側が高くなった段差38aを設けてもよい。この場合も、図4に示すように、段差38aの壁面が係止壁面の作用をなして、ロックアーム5により突き止められ、それ以上の挿入が阻止される。よって、逆差し込みを有効に防ぐことができる。
【0025】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1の発明によれば、バンド部を筒部に対して逆差しした場合、バンド部の裏面に設けた段部がロックアームに突き止められるので、それ以上差し込めなくなる。よって、確実に逆差しが防止でき、逆差しによる緩み、外れ等の不都合が未然に回避できる。
【0026】請求項2の発明によれば、段部を形成するために凹部を設けているだけであるから、裏面に突起物が生じず、邪魔にならない。
【0027】請求項3の発明によれば、バンド部の裏面に段差を設けた構成であるから、肉厚の大きいバンドの場合に形成しやすい。
【0028】請求項4の発明によれば、より確実に差し込みを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の構成図で、(a)は平面図、(b)は(a)図のB−B矢視断面図、(c)は(b)図のC部拡大図である。
【図2】本発明の一実施例における逆差し込み状態の要部断面図である。
【図3】本発明の他の実施例の構成図で、(a)は断面図、(b)は(a)図のB部拡大図である。
【図4】本発明の他の実施例における逆差し込み状態の要部断面図である。
【図5】従来例の構成図で、(a)は平面図、(b)は(a)図のB−B矢視断面図である。
【図6】従来例における逆差し込み状態の要部断面図である。
【図7】他の従来例の断面図である。
【図8】他の従来例における逆差し込み状態の要部断面図である。
【符号の説明】
21,31 結束バンド
2 バンド部
2A 表面
2B 裏面
2p 自由端
3 挿通孔
4 筒部
5 ロックアーム
7 鋸歯状凹凸部
28 凹部
28a 内壁面(段部)
38a 段差(段部)
(イ) 正方向
(ロ) 逆方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】 表面に鋸歯状凹凸部が形成されたバンド部と、該バンド部の基端に形成され前記バンド部の自由端側を挿通させる挿通孔を有した筒部とを備え、前記挿通孔の壁面に、正方向から前記バンド部の自由端側を挿通させたとき前記鋸歯状凹凸部と係合してバンド部の抜けを阻止するロックアームが形成された結束バンドにおいて、前記バンド部の裏面に、逆方向から前記バンド部の自由端側を前記挿通孔に挿通させたとき前記ロックアームによって突き止められる段部を設けたことを特徴とする結束バンド。
【請求項2】 請求項1記載の結束バンドであって、前記バンド部の裏面に凹部が設けられ、該凹部の内側壁によって前記段部が形成されていることを特徴とする結束バンド。
【請求項3】 請求項1記載の結束バンドであって、前記バンド部の裏面に、前記段部として、前記自由端側が低く基端側が高くなった段差が設けられていることを特徴とする結束バンド。
【請求項4】 請求項1〜3のいずれかに記載の結束バンドであって、前記段部は、ロックアームと突き当たった際にロックアームを段部に対して食い込む方向に変位させる壁面を有していることを特徴とする結束バンド。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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