結束具
【課題】高締付強度に好適なボールロック式で金属製の結束具の構造を工夫することにより、狭い場所や奥まった場所等の条件の悪い場合でもバンド先端の差込作業が容易に行えるといった具合に、結束ヘッドのバンド挿通孔へのバンド先端の差込み操作の容易化が図られた改善されたものとして提供する。
【解決手段】ボール案内面5aを持つロック壁1A、ロック壁1Aと対向する底壁1C、ロック壁1Aと底壁1Cとを繋ぐ左右の側壁1B,1Bで囲まれて成るバンド挿通孔6を有する扁平筒状の結束ヘッド1と、バンド入口6A側で折り返されて底壁1Cに係止されるバンド基端部2Aを有する結束バンド2と、ロック用のボール3とを有し、ロック壁1Aのバンド入口6A側の端が、対応する底壁1Cの端よりも外方に突出するよう延長形成される。ロック壁1Aのバンド入口6A側端の部分に、バンド挿通方向に対する左右方向に長い横長形状に隆起形成される補強用膨出部10が設けられている。
【解決手段】ボール案内面5aを持つロック壁1A、ロック壁1Aと対向する底壁1C、ロック壁1Aと底壁1Cとを繋ぐ左右の側壁1B,1Bで囲まれて成るバンド挿通孔6を有する扁平筒状の結束ヘッド1と、バンド入口6A側で折り返されて底壁1Cに係止されるバンド基端部2Aを有する結束バンド2と、ロック用のボール3とを有し、ロック壁1Aのバンド入口6A側の端が、対応する底壁1Cの端よりも外方に突出するよう延長形成される。ロック壁1Aのバンド入口6A側端の部分に、バンド挿通方向に対する左右方向に長い横長形状に隆起形成される補強用膨出部10が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製の結束ヘッドと、金属製の結束バンドと、結束ヘッドに内装されるロック用ボールと、を有して成る結束具、いわゆるボールロック式スチール結束具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の結束具は、図12に示すように、結束対象に巻き付けて結束ヘッド1に挿通されている結束バンド2が結束ヘッド1から引抜かれようとする方向である抜出し方向(矢印イ方向)に移動しようとする挙動が生じると、それに伴って連れ動きするロック用のボール3が結束ヘッド1の天井壁であるロック壁1aの湾曲傾斜したガイド内面5aにガイドされて結束バンド2に食い込むセルフロック作用が生じ、結束バンド2の引き抜き移動が不能になって結束できる構造のものである。結束ヘッド1、結束バンド2、及びボール3のそれぞれが金属製であって、金属パイプ群や多数のワイヤー等の結束対象を強固に結束及び維持可能な結束具Aである。
【0003】
ボールロック式でスチール製の結束具は、合成樹脂製の結束具に比べて結束力が大きく取れるので、よりきつく引き締めて結束する必要がある場合や、より耐久性が要求される結束対象の結束に好適なものである。このような結束具の例としては、特許文献1において開示されたものが知られている。
【0004】
ところで、ボールロック式でスチール製の結束バンドは、その厚みが樹脂製のもに比べて著しく薄いとともに、当然ながら結束ヘッドのバンド挿通孔の厚さ方向寸法も樹脂製のものに比べて明確に小さい。従って、ワイヤーハーネスやパイプ群等の結束対象に結束バンドを巻き付けてからバンド先端をバンド挿通孔に挿入すること(バンド先端のバンド挿通孔への差込み操作)がやり難い面がある。
【0005】
つまり、結束ヘッドのバンド挿通孔の厚み方向幅は非常に狭く、ただでさえバンド先端が入れ難い上に、例えばボンネット内部の奥の隅といった狭い場所や手指の届き難い箇所での結束作業では、なかなかバンド先端をバンド挿通孔に入れられず、面倒で煩わしい作業になるとともに、いきおい作業効率が非常に悪くなる。従って、結束具としては作業性の点で改善の余地が残されているものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−104466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、高締付強度に好適なボールロック式で金属製の結束具の構造を工夫することにより、狭い場所や奥まった場所等の条件の悪い場合でもバンド先端の差込作業が容易に行えるといった具合に、結束ヘッドのバンド挿通孔へのバンド先端の差込み操作の容易化が図られた改善されたものとして提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、結束具において、ボール案内用のガイド内面5aを持つ膨出壁部5が隆起形成されるロック壁1A、前記ロック壁1Aと対向する底壁1C、及び前記ロック壁1Aと前記底壁1Cとを繋ぐ左右の側壁1B,1Bで囲まれて成るバンド挿通孔6を有する扁平筒状の結束ヘッド1と、
前記バンド挿通孔6に挿通される内通部分2aと、前記内通部分2aから続いて前記膨出壁部5が閉口するばバンド入口6A側で折り返されて前記底壁1Cの外面1cに沿う外端部分2bと、を有して前記底壁1Cに係止されるバンド基端部2A、及び前記内通部分2aに続いて前記バンド挿通孔6における前記膨出壁部5が開口するバンド出口6B側から延出されるバンド本体部2Bを備えて形成される可撓性を有する結束バンド2と、
前記膨出壁部5の内側に位置して前記バンド出口6B側からの抜出しが規制される状態で前記結束ヘッド1に内装されるロック用のボール3とを有し、
前記ロック壁1Aの前記バンド入口6A側の端が、対応する前記底壁1Cの端よりも外方に突出するように延長形成されていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の結束具において、前記ロック壁1Aにおける前記膨出壁部5よりもバンド入口6A側の部分に、バンド挿通方向に対する左右方向に長い横長形状に隆起形成される補強用膨出部10が設けられていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の結束具において、前記ロック壁1Aにおける前記底壁1Cの端よりも外方に突出する延長壁部9の突出量Dが、前記バンド挿通孔6の厚み方向寸法d以上に、好ましくは前記バンド挿通孔6の厚み方向寸法dの√3倍以上に設定されていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3の何れか一項において、前記延長壁部9の幅が先窄まり状となるように左右端が傾斜形成又は湾曲形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、詳しくは実施形態の項にて説明するが、ロック壁がバンド入口側から延長形成されているので、バンド先端部を延長形成されている部分の内面に当て付けるようにして押し込めば、その延長形成部分の内面が案内誘導面となってバンド先端部をバンド入口からバンド挿通孔に簡単で円滑に差込み挿入できるようになる。つまり、実質的にバンド入口の上下幅が拡大されることに相当し、バンド先端部の挿入操作が非常にやり易いように改善される。その結果、高締付強度に好適なボールロック式で金属製の結束具の構造を工夫することにより、狭い場所や奥まった場所等の条件の悪い場合でもバンド先端の差込作業が容易に行えるといった具合に、結束ヘッドのバンド挿通孔へのバンド先端の差込み操作の容易化が図られた改善されたものとして提供することができる。
【0013】
請求項2の発明によれば、詳しくは実施形態の項にて説明するが、ロック壁における膨出壁部の前側の部分に左右に長い補強用膨出部が形成されるので、ロック壁の前端部の曲げ強度や剛性が効率よく改善され、セルフロック時のボールによる強大な押し拡げ力に、より高次元で耐え得る結束ヘッドを有する改善された結束具を提供することができる。
【0014】
請求項3の発明によれば、延長壁部の突出量をバンド挿通孔の厚み方向寸法以上に形成すれば、バンド先端部のバンド挿通孔への入れ難さが問題とならないレベルにほぼ解消され、√3倍以上に形成すれば非常に入れ易くなり、狭い結束場所であるとか視認し難い場所であるといった不利があっても良好で円滑な結束操作が行える利点がある。
【0015】
請求項4の発明によれば、延長壁部が先窄まり状となるように左右端が傾斜形成又は湾曲形成されているから、底壁より前方突出する大型化が図られている割には、その延長壁部が邪魔とはなり難く、バンド先端部のバンド挿通孔への入れ易さが際立つ結束ヘッドを有する結束具が実現されている。また、傾斜側面であるから、手指やその他のものが延長壁部の角に引っ掛かったり、傷付けたりのおそれが解消又は軽減され、取り扱い性が良好となる点も好ましい
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】結束具の上方から見下ろした全体斜視図
【図2】結束具の下方から見上げた全体斜視図
【図3】図1の結束ヘッド部分の拡大図
【図4】図2の結束ヘッド部分の拡大図
【図5】結束状態における結束ヘッド部分の断面図
【図6】結束対象を締め込んでいる状態を示す結束ヘッド部分の断面図
【図7】ボールによるセルフロック作用を示す結束ヘッド部分の断面図
【図8】結束バンドの基端部分を示す斜視図
【図9】結束ヘッドの下方から見上げた斜視図
【図10】結束ヘッドの底面図
【図11】実施例2による結束具の要部を示す断面図
【図12】従来の結束具を示す要部の断面図
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明による結束具、即ちボールロック式スチール結束具の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0018】
〔実施例1〕
実施例1による結束具Aは、図1〜図5に示すように、ステンレス鋼(金属の一例)製の結束ヘッド1と、ステンレス鋼(金属の一例)製の結束バンド2と、結束ヘッド1に内装される金属製のボール(スチールボール)3とから構成されている。例えば、多数の金属パイプの束や金属ワイヤーの束といった比較的強い引締め力を必要とする結束対象Tに好適なボールロック式でスチール製の結束具Aである(図7参照)。
【0019】
結束ヘッド1は、図3,4,9,10に示すように、金属板片を折り曲げて端面どうしが突合せ配置されて成る扁平筒状のものであって、ボール3を案内するガイド内面5aを持つ膨出壁部5が隆起形成されるロック壁1Aと、ロック壁1Aの左右から折り曲げられて形成される左右側壁1B,1Bと、左右側壁1B,1Bから折り曲げられてそれぞれの端である折り曲げ端1t、1tどうしが付き合わせられて形成される底壁1Cとで囲まれて成るバンド挿通孔6を有している。尚、本明細書においては、結束ヘッド1における膨出壁部5側を上、底壁1C側を下とし、バンド挿通孔6のバンド入口6A側を前、バンド出口6B側を後、バンド出口6Bからバンド入口6Aを見た場合の右を右、左を左とする(図1を参照)。
【0020】
ロック壁1Aは、平らな天井壁部7と、その左右中央部で、かつ、バンド出口6Bに続く膨出開口部5bが形成されるように後方に偏る部分を上方に隆起形成して成る膨出壁部5とを有して構成されている。膨出壁部5は、左右方向から見た断面(縦断面)が、前下がりする傾斜が付けられた上方に凸となる湾曲形状(図5参照)を呈し、かつ、前後方向から見た断面(横断面)が、ほぼ半円形を呈する形状を呈する状態のガイド内面5aを有している。そして、膨出壁部5の後端から続く小幅部分を下方に折り曲げて成るボール抜け出し阻止用のストップ片8が一体形成されている。
【0021】
ロック壁1Aには、天井壁7に続いて前方突出する延長壁部9が一体形成されている。延長壁部9は、前方に行くほど左右幅が狭くなるように平面視で台形状を為すように左右の傾斜側面9a,9aを有する先窄まり状庇として形成されている。延長壁部9の底壁1Cの前端(左右側壁1Bの前端)から前方への突出量Dは、バンド挿通孔6の上下高さ(厚み方向幅)dの約2倍(D=2d)に設定されている。延長壁部9を設けてあるので、、上下幅の狭いバンド入口6Aの縦方向の幅が実質的に増幅されることになり、かつ、延長壁部9の内面(下面)がガイド面となってバンド先端2tのバンド挿通孔6への差込操作が大変行いやすいものとされている。
【0022】
延長壁部9を設けたことにより、バンド先端部2tをバンド入口6Aに挿入する操作が非常にやり易いように改善される。図12に示す従来の結束具では、ロック壁1Aと内通部分2aとの上下間隙に正確に位置合せしてからバンド挿通孔6に差込む、という操作になるが、現場において結束対象に巻回されて宙に浮いているような状態のバンド先端部2tを狭いバンド入口6Aに位置合せする操作が難しく、面倒で煩わしいものとなることが多かった。そこで、庇となる延長壁部9を設ければ、バンド先端部2tを延長壁部9の庇状内面9bに当て付けるようにして押し込めば、その庇状内面9bが案内誘導面となってバンド先端部2tをバンド入口6Aからバンド挿通孔6に簡単で円滑に差込み挿入できるようになる。つまり、実質的にバンド入口6Aの上下幅が拡大されたことに相当し、入れ易くなるのである。
【0023】
これは手指の動かし難い狭い場所であるとか、視認し難い場所での結束作業において非常に有効な手段であり、バンド先端部2tのバンド挿通孔6への挿入操作が実質的に非常にやり易いものとなり、明確な改善効果が得られる。延長壁部9の長さを種々に変えて試してみたところ、延長壁部9は、底壁1Cの前端より少しでも前方突出していれば入れ易さの効果が生じ、D=d又はd以上(D≧d)になると結束バンド2の通し易さの問題がほぼ解消されうる。そして、底壁1Cの前端上縁と延長壁部9の前端下縁との間隔がバンド挿通孔6の上下寸法dの2倍以上、即ち延長壁部9の前方突出量Dが1.732倍(√3倍)以上あると非常に入れ易くなることが知見された。
【0024】
但し、前方突出量Dが大きくなり過ぎると、バンド先端部2tを内面9bに当て付けてからバンド入口6Aに移動する距離が長くなり、内面9bによるガイド機能が実質的に無いのと変わらないことになる場合があることも判ってきた。従って、前方突出量Dは、バンド挿通孔6の上下寸法dの4倍以下、好ましくは3倍以下に設定するのが、バンド先端部2tのバンド挿通孔6への入れ易さを維持する点で望ましい。つまり、延長壁部9の前方突出量Dは、d≦D≦4dであり、好ましくは√3d≦D≦4d、より好ましくは√3d≦D≦3dに設定するのが良いと考えられる。
【0025】
また、延長壁部9が、先窄まり状となるように左右端が傾斜側面9a,9aに形成されているから、底壁1Cよりも前方突出する長さ増大化(要するに大型化)が図られている割には、その延長壁部9が邪魔とはなり難く、従って、バンド先端部2tのバンド挿通孔6への入れ易さが際立つ結束ヘッドが実現されている。加えて、傾斜側面9aであるから、手指やその他のものが延長壁部9の角に引っ掛かったり、傷付けたりのおそれが解消又は軽減されるので、取り扱い性が良好となる点も好ましい。尚、上記は延長壁部9の左右端が傾斜形成されている例であるが、外方に向けて凸となるように湾曲形成すれば、より一層好ましい。
【0026】
図9,図10に示すように、底壁1Cにおける前後中央からやや後方寄りの位置(「バンド挿通方向の中央領域」の一例)には、左右の折り曲げ端(突合せ端部)1t、1tに跨る状態で矩形形状を呈する係合孔4が形成されている。これは、詳しくは後述するが、バンド基端部2Aに形成されている切起し爪11を係入させて結束バンド2の結束ヘッド1からの抜け出しを規制するためのものである。尚、左右の側壁1B,1Bは、共に前後方向視で半円形を呈する湾曲壁に形成されており、それらの前後長さは底壁1Cと同じである。
【0027】
また、天井壁部7における膨出壁部5と延長壁部9との前後間に、より詳しくは、底壁1Cの前端と膨出壁部5との前後間に位置させて、バンド挿通方向に対する左右方向に長い横長形状に隆起形成される補強用膨出部10が形成されている。補強用膨出部10は、膨出壁部5と同様にプレス成形によって天井壁部7に一体形成されており、ロック壁1としてのバンド入口6A側の強度や剛性を向上させる手段として有効に機能する。尚、図3に示すように、補強用膨出部10は、その前後幅Sよりも左右幅Wが長い関係(W>S)に設定されている。実施例1において補強用膨出部10は左右に長く縦で断面が円弧状を呈するように湾曲形状のものに形成されているが、形状としてはその限りではない。
【0028】
結束ヘッド1内に挿通されているバンド本体部2Bとガイド内面5aとの間にボール3が食い込むセルフロック時には、結束ヘッド1を上下に押し開こうとする強い力が作用する。底壁1Cには、2枚重なる結束バンド2を介してボール3による力が作用するので、比較的広い範囲にその力が分散されることになるのに対して、ロック壁部1A直にボール3で押されるロック壁1Aには一点に応力集中し、変形し易い条件下にある。従って、天井壁部7における膨出壁部5の前側の部分に補強用膨出部10を形成することにより、ロック壁1Aの前端部の曲げ強度や剛性が改善されるので、セルフロック時のボール3による強大な押し拡げ力に、より高次元で耐え得る結束ヘッド1が実現可能となっている。
【0029】
結束バンド2は、図1,2,4〜8に示すように、結束ヘッド1に係止されるバンド基端部2Aとバンド本体部2Bとバンド先端部2tとをそなえて長尺帯鋼製で可撓性を有するバンドである。詳述すると、バンド基端部2Aは、バンド挿通孔6に挿通される内通部分2aと、内通部分2nから続いてバンド入口6A側(膨出壁部5が閉口する入口側)で折り返されて底壁1Cの外面1cに沿うとともに、底壁1Cにおける左右の折り曲げ端(突合せ端部)1t、1tに跨る状態で形成される係合孔4に係入する切起し爪11を有して結束ヘッド1に係止される外端部分2bとで成る部分である。バンド本体部2Bは、内通部分2aに続いてバンド挿通孔6におけるバンド出口6B側(膨出壁部5が開口する出口側)から延出される部分であり、結束バンドの大部分を占める。バンド先端部2tはバンド挿通孔6に差込み易いように先細り形状に形成されている。
【0030】
バンド基端部2Aは、要するにバンド端を180度折り曲げて成る部分のことであり、外端部分2bに形成されている切起し爪11と底壁1Cの係合孔4との係合、及び底壁1Cの前端を巻回して180度折り曲げる構造により、結束バンド2が結束ヘッド1に係止及び保持されている。内通部分2aには、底壁1Cの係合孔4に入り込み可能な円形凹み12が形成されており、その凹み12にはボール3が嵌り込み可能でもある。そして、その凹み12と切起し爪11とは、バンド端部2Aを結束ヘッド1に装着して係止させる状態において、それら両者11,12が丁度係合孔4に係入されるように設定されている。
【0031】
加えて、図6に示すように、バンド本体部2Bがバンド挿通孔6に通されて結束ループP(図7参照)が作成されている状態におけるバンド本体部2Bのバンド入口6Aから抜き出そうとする方向(矢印イ方向)の移動に伴い、ボール3が連れ移動してバンド本体部2Bとガイド内面5aとの間に押し込まれてバンド本体部2Bを強く圧迫するセルフロック作用が生じる。そして尚もバンド本体部2Bが抜き出し方向に(矢印イ方向)に引っ張られると、凹み12上のバンド本体部2Bに位置しているボール3が連れ動きによって前方下方に移動し、図7に示すように、バンド本体部2Bを下方に強く押して凹み12に入り込むように凹み変形させてロックする挙動を示す。
【0032】
つまり、内通部分2aに係合孔4へ迫出すように屈曲形成された凹み12が設けられており、バンド入口(入口側の一例)6Aからバンド挿通孔6に通されているバンド本体部2Bがバンド入口6Aから抜出す方向に移動しようとする際にガイド内面5aに沿って案内移動されるボール3が、バンド本体部2Bを凹み12に向けて押圧可能となるように、膨出壁部5と係合孔4とが関係付けられて形成されている。
【0033】
ところで、球体であるボール3を結束ヘッド1内に抜け出し防止状態で装填するには、まず、ストッパ片8を下方に折り曲げていない状態のときに、バンド出口6Bに続けて形成されている膨出開口部5bから膨出壁部5内にボール3を入れ込み、それからストッパ片8を下方に折り曲げる(図5に示す状態)のである。つまり、結束ヘッド1に内装されているボール3は、膨出壁部5が開口する側であるバンド出口6B側からの抜出しが規制されている。
【0034】
さて、ここで結束具Aによる一連の結束動作を簡単に説明すると、結束対象Tにバンド本体部2Bを巻回させて結束ループP(図7参照)を作るべく、バンド先端部2tをバンド入口6Aからバンド挿通孔6に通す。バンド出口6Bから出ているバンド先端部2tを引張って結束対象を引締めてゆき、所定の結束力になったら結束バンド2の引締めを解除する、という具合である。つまり、所定の結束力になった際の結束バンドの引締め解除時には、図6のようにボールがセルフロック動作し、バンド本体部2Bの矢印イ方向への移動が阻止され、有効な結束状態が維持される。
【0035】
但し、多数の金属パイプ群といった重量物の結束では結束バンド2に作用する張力が相当に大きくなり、引締めを解除したときの結束バンド2の引張り戻し力も相当に大となる。従って、そのような場合は、バンド本体部2Bが強く引っ張り戻されて、図6に示す状態からさらにボール3が食い込み移動し、図7に示すように、内通部分2aの上に重なっているバンド本体部2Bに、凹み12に入り込む凹み変形部13を生じさせるほど凹ませてのセルフロック作用により、バンド本体部2Bの引っ張戻り移動が止まる。換言すれば、それほど強い引締め力が必要となる結束にも耐え得る結束具が実現できている。
【0036】
本発明による結束具では、底壁1Cの係合孔4を従来のバンド入口6A付近の位置から前後中央領域に変更してあるので、底壁1Cにおける係合孔4のバンド入口6A側の部分である保持部分1h,1hの前後長さが長くなり、切起し爪11によって係合孔4が強く押されても保持部分1h,1hがまず潰れ変形しないように改善されている。従って、バンド基端部2Aの外端部分2bに強い引張り力が作用しても切起し爪11によって係合孔4が押し拡げられて保持部分1h,1hが潰れ変形する不都合が生じないようになり、その分引締め力向上に寄与できるようになる。
【0037】
そして、内通部分2aに係合孔4に入り込む凹み12を形成し、しかもガイド内面5aとバンド本体部2Bとで案内されるボール3が凹み12の上に導かれてバンド本体部2Bに凹み12に迫り出す凹み変形部13を生じさせてセルフロック機能が発揮されるように、係合孔4と膨出壁部5とが関係付けられて構成されている。これは、係合孔4の位置が従来より後方に移動させて配置してあることによって可能となっている。凹み12が係合孔4に入り込んでいることと保持部分1hの前後長の長大化との相乗により、バンド基端部2Aの結束ヘッド1への保持力が大きく改善され、それによって引締め力向上に寄与できている。
【0038】
加えて、ボール3によるセルフロック時には、バンド本体部2Bをその下方に位置する凹み12を利用してそこに迫り出すように凹ませ変形するように設定されているから、バンド本体部2Bにボール3を食い込ませてのより大なる制動作用(セルフロック作用)が生じ、従来よりも結束バンド2の緩みが少なく、かつ、強固に係止保持できるように改善されている。
【0039】
〔実施例2〕
実施例2による結束具Aは、図11に示すように、ロック壁1Aの前方長さが短く、かつ、補強用膨出部10が省略されている例である。即ち、延長壁部9の前方突出量Dが実施例1の場合に比べて短くされており、例えば、前方突出量Dがバンド挿通孔6の厚さ方向幅dと同じ(D=d)に設定されている。その他は実施例1による結束具Aと同じであり、対応する箇所には対応する符号を記すものとする。
【0040】
〔別実施例〕
ロック壁1Aの底壁1Cに対する前方突出量Dは上記実施例1,2に限定されるものではなく、種々に変更が可能である。また、補強用膨出部10の縦横比も種々に変更可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 結束ヘッド
1A ロック壁
1B 左右側壁
1C 底壁
1c 底壁の外面
2 結束バンド
2A バンド基端部
2B バンド本体部
2a 内通部分
2b 外端部分
3 ボール
5 膨出壁部
5a ガイド内面
6 バンド挿通孔
6A バンド入口
6B バンド出口
9 延長壁部
10 補強用膨出部
D 延長壁部の突出量
d バンド挿通孔の厚み方向寸法
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製の結束ヘッドと、金属製の結束バンドと、結束ヘッドに内装されるロック用ボールと、を有して成る結束具、いわゆるボールロック式スチール結束具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の結束具は、図12に示すように、結束対象に巻き付けて結束ヘッド1に挿通されている結束バンド2が結束ヘッド1から引抜かれようとする方向である抜出し方向(矢印イ方向)に移動しようとする挙動が生じると、それに伴って連れ動きするロック用のボール3が結束ヘッド1の天井壁であるロック壁1aの湾曲傾斜したガイド内面5aにガイドされて結束バンド2に食い込むセルフロック作用が生じ、結束バンド2の引き抜き移動が不能になって結束できる構造のものである。結束ヘッド1、結束バンド2、及びボール3のそれぞれが金属製であって、金属パイプ群や多数のワイヤー等の結束対象を強固に結束及び維持可能な結束具Aである。
【0003】
ボールロック式でスチール製の結束具は、合成樹脂製の結束具に比べて結束力が大きく取れるので、よりきつく引き締めて結束する必要がある場合や、より耐久性が要求される結束対象の結束に好適なものである。このような結束具の例としては、特許文献1において開示されたものが知られている。
【0004】
ところで、ボールロック式でスチール製の結束バンドは、その厚みが樹脂製のもに比べて著しく薄いとともに、当然ながら結束ヘッドのバンド挿通孔の厚さ方向寸法も樹脂製のものに比べて明確に小さい。従って、ワイヤーハーネスやパイプ群等の結束対象に結束バンドを巻き付けてからバンド先端をバンド挿通孔に挿入すること(バンド先端のバンド挿通孔への差込み操作)がやり難い面がある。
【0005】
つまり、結束ヘッドのバンド挿通孔の厚み方向幅は非常に狭く、ただでさえバンド先端が入れ難い上に、例えばボンネット内部の奥の隅といった狭い場所や手指の届き難い箇所での結束作業では、なかなかバンド先端をバンド挿通孔に入れられず、面倒で煩わしい作業になるとともに、いきおい作業効率が非常に悪くなる。従って、結束具としては作業性の点で改善の余地が残されているものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−104466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、高締付強度に好適なボールロック式で金属製の結束具の構造を工夫することにより、狭い場所や奥まった場所等の条件の悪い場合でもバンド先端の差込作業が容易に行えるといった具合に、結束ヘッドのバンド挿通孔へのバンド先端の差込み操作の容易化が図られた改善されたものとして提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、結束具において、ボール案内用のガイド内面5aを持つ膨出壁部5が隆起形成されるロック壁1A、前記ロック壁1Aと対向する底壁1C、及び前記ロック壁1Aと前記底壁1Cとを繋ぐ左右の側壁1B,1Bで囲まれて成るバンド挿通孔6を有する扁平筒状の結束ヘッド1と、
前記バンド挿通孔6に挿通される内通部分2aと、前記内通部分2aから続いて前記膨出壁部5が閉口するばバンド入口6A側で折り返されて前記底壁1Cの外面1cに沿う外端部分2bと、を有して前記底壁1Cに係止されるバンド基端部2A、及び前記内通部分2aに続いて前記バンド挿通孔6における前記膨出壁部5が開口するバンド出口6B側から延出されるバンド本体部2Bを備えて形成される可撓性を有する結束バンド2と、
前記膨出壁部5の内側に位置して前記バンド出口6B側からの抜出しが規制される状態で前記結束ヘッド1に内装されるロック用のボール3とを有し、
前記ロック壁1Aの前記バンド入口6A側の端が、対応する前記底壁1Cの端よりも外方に突出するように延長形成されていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の結束具において、前記ロック壁1Aにおける前記膨出壁部5よりもバンド入口6A側の部分に、バンド挿通方向に対する左右方向に長い横長形状に隆起形成される補強用膨出部10が設けられていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の結束具において、前記ロック壁1Aにおける前記底壁1Cの端よりも外方に突出する延長壁部9の突出量Dが、前記バンド挿通孔6の厚み方向寸法d以上に、好ましくは前記バンド挿通孔6の厚み方向寸法dの√3倍以上に設定されていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3の何れか一項において、前記延長壁部9の幅が先窄まり状となるように左右端が傾斜形成又は湾曲形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、詳しくは実施形態の項にて説明するが、ロック壁がバンド入口側から延長形成されているので、バンド先端部を延長形成されている部分の内面に当て付けるようにして押し込めば、その延長形成部分の内面が案内誘導面となってバンド先端部をバンド入口からバンド挿通孔に簡単で円滑に差込み挿入できるようになる。つまり、実質的にバンド入口の上下幅が拡大されることに相当し、バンド先端部の挿入操作が非常にやり易いように改善される。その結果、高締付強度に好適なボールロック式で金属製の結束具の構造を工夫することにより、狭い場所や奥まった場所等の条件の悪い場合でもバンド先端の差込作業が容易に行えるといった具合に、結束ヘッドのバンド挿通孔へのバンド先端の差込み操作の容易化が図られた改善されたものとして提供することができる。
【0013】
請求項2の発明によれば、詳しくは実施形態の項にて説明するが、ロック壁における膨出壁部の前側の部分に左右に長い補強用膨出部が形成されるので、ロック壁の前端部の曲げ強度や剛性が効率よく改善され、セルフロック時のボールによる強大な押し拡げ力に、より高次元で耐え得る結束ヘッドを有する改善された結束具を提供することができる。
【0014】
請求項3の発明によれば、延長壁部の突出量をバンド挿通孔の厚み方向寸法以上に形成すれば、バンド先端部のバンド挿通孔への入れ難さが問題とならないレベルにほぼ解消され、√3倍以上に形成すれば非常に入れ易くなり、狭い結束場所であるとか視認し難い場所であるといった不利があっても良好で円滑な結束操作が行える利点がある。
【0015】
請求項4の発明によれば、延長壁部が先窄まり状となるように左右端が傾斜形成又は湾曲形成されているから、底壁より前方突出する大型化が図られている割には、その延長壁部が邪魔とはなり難く、バンド先端部のバンド挿通孔への入れ易さが際立つ結束ヘッドを有する結束具が実現されている。また、傾斜側面であるから、手指やその他のものが延長壁部の角に引っ掛かったり、傷付けたりのおそれが解消又は軽減され、取り扱い性が良好となる点も好ましい
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】結束具の上方から見下ろした全体斜視図
【図2】結束具の下方から見上げた全体斜視図
【図3】図1の結束ヘッド部分の拡大図
【図4】図2の結束ヘッド部分の拡大図
【図5】結束状態における結束ヘッド部分の断面図
【図6】結束対象を締め込んでいる状態を示す結束ヘッド部分の断面図
【図7】ボールによるセルフロック作用を示す結束ヘッド部分の断面図
【図8】結束バンドの基端部分を示す斜視図
【図9】結束ヘッドの下方から見上げた斜視図
【図10】結束ヘッドの底面図
【図11】実施例2による結束具の要部を示す断面図
【図12】従来の結束具を示す要部の断面図
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明による結束具、即ちボールロック式スチール結束具の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0018】
〔実施例1〕
実施例1による結束具Aは、図1〜図5に示すように、ステンレス鋼(金属の一例)製の結束ヘッド1と、ステンレス鋼(金属の一例)製の結束バンド2と、結束ヘッド1に内装される金属製のボール(スチールボール)3とから構成されている。例えば、多数の金属パイプの束や金属ワイヤーの束といった比較的強い引締め力を必要とする結束対象Tに好適なボールロック式でスチール製の結束具Aである(図7参照)。
【0019】
結束ヘッド1は、図3,4,9,10に示すように、金属板片を折り曲げて端面どうしが突合せ配置されて成る扁平筒状のものであって、ボール3を案内するガイド内面5aを持つ膨出壁部5が隆起形成されるロック壁1Aと、ロック壁1Aの左右から折り曲げられて形成される左右側壁1B,1Bと、左右側壁1B,1Bから折り曲げられてそれぞれの端である折り曲げ端1t、1tどうしが付き合わせられて形成される底壁1Cとで囲まれて成るバンド挿通孔6を有している。尚、本明細書においては、結束ヘッド1における膨出壁部5側を上、底壁1C側を下とし、バンド挿通孔6のバンド入口6A側を前、バンド出口6B側を後、バンド出口6Bからバンド入口6Aを見た場合の右を右、左を左とする(図1を参照)。
【0020】
ロック壁1Aは、平らな天井壁部7と、その左右中央部で、かつ、バンド出口6Bに続く膨出開口部5bが形成されるように後方に偏る部分を上方に隆起形成して成る膨出壁部5とを有して構成されている。膨出壁部5は、左右方向から見た断面(縦断面)が、前下がりする傾斜が付けられた上方に凸となる湾曲形状(図5参照)を呈し、かつ、前後方向から見た断面(横断面)が、ほぼ半円形を呈する形状を呈する状態のガイド内面5aを有している。そして、膨出壁部5の後端から続く小幅部分を下方に折り曲げて成るボール抜け出し阻止用のストップ片8が一体形成されている。
【0021】
ロック壁1Aには、天井壁7に続いて前方突出する延長壁部9が一体形成されている。延長壁部9は、前方に行くほど左右幅が狭くなるように平面視で台形状を為すように左右の傾斜側面9a,9aを有する先窄まり状庇として形成されている。延長壁部9の底壁1Cの前端(左右側壁1Bの前端)から前方への突出量Dは、バンド挿通孔6の上下高さ(厚み方向幅)dの約2倍(D=2d)に設定されている。延長壁部9を設けてあるので、、上下幅の狭いバンド入口6Aの縦方向の幅が実質的に増幅されることになり、かつ、延長壁部9の内面(下面)がガイド面となってバンド先端2tのバンド挿通孔6への差込操作が大変行いやすいものとされている。
【0022】
延長壁部9を設けたことにより、バンド先端部2tをバンド入口6Aに挿入する操作が非常にやり易いように改善される。図12に示す従来の結束具では、ロック壁1Aと内通部分2aとの上下間隙に正確に位置合せしてからバンド挿通孔6に差込む、という操作になるが、現場において結束対象に巻回されて宙に浮いているような状態のバンド先端部2tを狭いバンド入口6Aに位置合せする操作が難しく、面倒で煩わしいものとなることが多かった。そこで、庇となる延長壁部9を設ければ、バンド先端部2tを延長壁部9の庇状内面9bに当て付けるようにして押し込めば、その庇状内面9bが案内誘導面となってバンド先端部2tをバンド入口6Aからバンド挿通孔6に簡単で円滑に差込み挿入できるようになる。つまり、実質的にバンド入口6Aの上下幅が拡大されたことに相当し、入れ易くなるのである。
【0023】
これは手指の動かし難い狭い場所であるとか、視認し難い場所での結束作業において非常に有効な手段であり、バンド先端部2tのバンド挿通孔6への挿入操作が実質的に非常にやり易いものとなり、明確な改善効果が得られる。延長壁部9の長さを種々に変えて試してみたところ、延長壁部9は、底壁1Cの前端より少しでも前方突出していれば入れ易さの効果が生じ、D=d又はd以上(D≧d)になると結束バンド2の通し易さの問題がほぼ解消されうる。そして、底壁1Cの前端上縁と延長壁部9の前端下縁との間隔がバンド挿通孔6の上下寸法dの2倍以上、即ち延長壁部9の前方突出量Dが1.732倍(√3倍)以上あると非常に入れ易くなることが知見された。
【0024】
但し、前方突出量Dが大きくなり過ぎると、バンド先端部2tを内面9bに当て付けてからバンド入口6Aに移動する距離が長くなり、内面9bによるガイド機能が実質的に無いのと変わらないことになる場合があることも判ってきた。従って、前方突出量Dは、バンド挿通孔6の上下寸法dの4倍以下、好ましくは3倍以下に設定するのが、バンド先端部2tのバンド挿通孔6への入れ易さを維持する点で望ましい。つまり、延長壁部9の前方突出量Dは、d≦D≦4dであり、好ましくは√3d≦D≦4d、より好ましくは√3d≦D≦3dに設定するのが良いと考えられる。
【0025】
また、延長壁部9が、先窄まり状となるように左右端が傾斜側面9a,9aに形成されているから、底壁1Cよりも前方突出する長さ増大化(要するに大型化)が図られている割には、その延長壁部9が邪魔とはなり難く、従って、バンド先端部2tのバンド挿通孔6への入れ易さが際立つ結束ヘッドが実現されている。加えて、傾斜側面9aであるから、手指やその他のものが延長壁部9の角に引っ掛かったり、傷付けたりのおそれが解消又は軽減されるので、取り扱い性が良好となる点も好ましい。尚、上記は延長壁部9の左右端が傾斜形成されている例であるが、外方に向けて凸となるように湾曲形成すれば、より一層好ましい。
【0026】
図9,図10に示すように、底壁1Cにおける前後中央からやや後方寄りの位置(「バンド挿通方向の中央領域」の一例)には、左右の折り曲げ端(突合せ端部)1t、1tに跨る状態で矩形形状を呈する係合孔4が形成されている。これは、詳しくは後述するが、バンド基端部2Aに形成されている切起し爪11を係入させて結束バンド2の結束ヘッド1からの抜け出しを規制するためのものである。尚、左右の側壁1B,1Bは、共に前後方向視で半円形を呈する湾曲壁に形成されており、それらの前後長さは底壁1Cと同じである。
【0027】
また、天井壁部7における膨出壁部5と延長壁部9との前後間に、より詳しくは、底壁1Cの前端と膨出壁部5との前後間に位置させて、バンド挿通方向に対する左右方向に長い横長形状に隆起形成される補強用膨出部10が形成されている。補強用膨出部10は、膨出壁部5と同様にプレス成形によって天井壁部7に一体形成されており、ロック壁1としてのバンド入口6A側の強度や剛性を向上させる手段として有効に機能する。尚、図3に示すように、補強用膨出部10は、その前後幅Sよりも左右幅Wが長い関係(W>S)に設定されている。実施例1において補強用膨出部10は左右に長く縦で断面が円弧状を呈するように湾曲形状のものに形成されているが、形状としてはその限りではない。
【0028】
結束ヘッド1内に挿通されているバンド本体部2Bとガイド内面5aとの間にボール3が食い込むセルフロック時には、結束ヘッド1を上下に押し開こうとする強い力が作用する。底壁1Cには、2枚重なる結束バンド2を介してボール3による力が作用するので、比較的広い範囲にその力が分散されることになるのに対して、ロック壁部1A直にボール3で押されるロック壁1Aには一点に応力集中し、変形し易い条件下にある。従って、天井壁部7における膨出壁部5の前側の部分に補強用膨出部10を形成することにより、ロック壁1Aの前端部の曲げ強度や剛性が改善されるので、セルフロック時のボール3による強大な押し拡げ力に、より高次元で耐え得る結束ヘッド1が実現可能となっている。
【0029】
結束バンド2は、図1,2,4〜8に示すように、結束ヘッド1に係止されるバンド基端部2Aとバンド本体部2Bとバンド先端部2tとをそなえて長尺帯鋼製で可撓性を有するバンドである。詳述すると、バンド基端部2Aは、バンド挿通孔6に挿通される内通部分2aと、内通部分2nから続いてバンド入口6A側(膨出壁部5が閉口する入口側)で折り返されて底壁1Cの外面1cに沿うとともに、底壁1Cにおける左右の折り曲げ端(突合せ端部)1t、1tに跨る状態で形成される係合孔4に係入する切起し爪11を有して結束ヘッド1に係止される外端部分2bとで成る部分である。バンド本体部2Bは、内通部分2aに続いてバンド挿通孔6におけるバンド出口6B側(膨出壁部5が開口する出口側)から延出される部分であり、結束バンドの大部分を占める。バンド先端部2tはバンド挿通孔6に差込み易いように先細り形状に形成されている。
【0030】
バンド基端部2Aは、要するにバンド端を180度折り曲げて成る部分のことであり、外端部分2bに形成されている切起し爪11と底壁1Cの係合孔4との係合、及び底壁1Cの前端を巻回して180度折り曲げる構造により、結束バンド2が結束ヘッド1に係止及び保持されている。内通部分2aには、底壁1Cの係合孔4に入り込み可能な円形凹み12が形成されており、その凹み12にはボール3が嵌り込み可能でもある。そして、その凹み12と切起し爪11とは、バンド端部2Aを結束ヘッド1に装着して係止させる状態において、それら両者11,12が丁度係合孔4に係入されるように設定されている。
【0031】
加えて、図6に示すように、バンド本体部2Bがバンド挿通孔6に通されて結束ループP(図7参照)が作成されている状態におけるバンド本体部2Bのバンド入口6Aから抜き出そうとする方向(矢印イ方向)の移動に伴い、ボール3が連れ移動してバンド本体部2Bとガイド内面5aとの間に押し込まれてバンド本体部2Bを強く圧迫するセルフロック作用が生じる。そして尚もバンド本体部2Bが抜き出し方向に(矢印イ方向)に引っ張られると、凹み12上のバンド本体部2Bに位置しているボール3が連れ動きによって前方下方に移動し、図7に示すように、バンド本体部2Bを下方に強く押して凹み12に入り込むように凹み変形させてロックする挙動を示す。
【0032】
つまり、内通部分2aに係合孔4へ迫出すように屈曲形成された凹み12が設けられており、バンド入口(入口側の一例)6Aからバンド挿通孔6に通されているバンド本体部2Bがバンド入口6Aから抜出す方向に移動しようとする際にガイド内面5aに沿って案内移動されるボール3が、バンド本体部2Bを凹み12に向けて押圧可能となるように、膨出壁部5と係合孔4とが関係付けられて形成されている。
【0033】
ところで、球体であるボール3を結束ヘッド1内に抜け出し防止状態で装填するには、まず、ストッパ片8を下方に折り曲げていない状態のときに、バンド出口6Bに続けて形成されている膨出開口部5bから膨出壁部5内にボール3を入れ込み、それからストッパ片8を下方に折り曲げる(図5に示す状態)のである。つまり、結束ヘッド1に内装されているボール3は、膨出壁部5が開口する側であるバンド出口6B側からの抜出しが規制されている。
【0034】
さて、ここで結束具Aによる一連の結束動作を簡単に説明すると、結束対象Tにバンド本体部2Bを巻回させて結束ループP(図7参照)を作るべく、バンド先端部2tをバンド入口6Aからバンド挿通孔6に通す。バンド出口6Bから出ているバンド先端部2tを引張って結束対象を引締めてゆき、所定の結束力になったら結束バンド2の引締めを解除する、という具合である。つまり、所定の結束力になった際の結束バンドの引締め解除時には、図6のようにボールがセルフロック動作し、バンド本体部2Bの矢印イ方向への移動が阻止され、有効な結束状態が維持される。
【0035】
但し、多数の金属パイプ群といった重量物の結束では結束バンド2に作用する張力が相当に大きくなり、引締めを解除したときの結束バンド2の引張り戻し力も相当に大となる。従って、そのような場合は、バンド本体部2Bが強く引っ張り戻されて、図6に示す状態からさらにボール3が食い込み移動し、図7に示すように、内通部分2aの上に重なっているバンド本体部2Bに、凹み12に入り込む凹み変形部13を生じさせるほど凹ませてのセルフロック作用により、バンド本体部2Bの引っ張戻り移動が止まる。換言すれば、それほど強い引締め力が必要となる結束にも耐え得る結束具が実現できている。
【0036】
本発明による結束具では、底壁1Cの係合孔4を従来のバンド入口6A付近の位置から前後中央領域に変更してあるので、底壁1Cにおける係合孔4のバンド入口6A側の部分である保持部分1h,1hの前後長さが長くなり、切起し爪11によって係合孔4が強く押されても保持部分1h,1hがまず潰れ変形しないように改善されている。従って、バンド基端部2Aの外端部分2bに強い引張り力が作用しても切起し爪11によって係合孔4が押し拡げられて保持部分1h,1hが潰れ変形する不都合が生じないようになり、その分引締め力向上に寄与できるようになる。
【0037】
そして、内通部分2aに係合孔4に入り込む凹み12を形成し、しかもガイド内面5aとバンド本体部2Bとで案内されるボール3が凹み12の上に導かれてバンド本体部2Bに凹み12に迫り出す凹み変形部13を生じさせてセルフロック機能が発揮されるように、係合孔4と膨出壁部5とが関係付けられて構成されている。これは、係合孔4の位置が従来より後方に移動させて配置してあることによって可能となっている。凹み12が係合孔4に入り込んでいることと保持部分1hの前後長の長大化との相乗により、バンド基端部2Aの結束ヘッド1への保持力が大きく改善され、それによって引締め力向上に寄与できている。
【0038】
加えて、ボール3によるセルフロック時には、バンド本体部2Bをその下方に位置する凹み12を利用してそこに迫り出すように凹ませ変形するように設定されているから、バンド本体部2Bにボール3を食い込ませてのより大なる制動作用(セルフロック作用)が生じ、従来よりも結束バンド2の緩みが少なく、かつ、強固に係止保持できるように改善されている。
【0039】
〔実施例2〕
実施例2による結束具Aは、図11に示すように、ロック壁1Aの前方長さが短く、かつ、補強用膨出部10が省略されている例である。即ち、延長壁部9の前方突出量Dが実施例1の場合に比べて短くされており、例えば、前方突出量Dがバンド挿通孔6の厚さ方向幅dと同じ(D=d)に設定されている。その他は実施例1による結束具Aと同じであり、対応する箇所には対応する符号を記すものとする。
【0040】
〔別実施例〕
ロック壁1Aの底壁1Cに対する前方突出量Dは上記実施例1,2に限定されるものではなく、種々に変更が可能である。また、補強用膨出部10の縦横比も種々に変更可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 結束ヘッド
1A ロック壁
1B 左右側壁
1C 底壁
1c 底壁の外面
2 結束バンド
2A バンド基端部
2B バンド本体部
2a 内通部分
2b 外端部分
3 ボール
5 膨出壁部
5a ガイド内面
6 バンド挿通孔
6A バンド入口
6B バンド出口
9 延長壁部
10 補強用膨出部
D 延長壁部の突出量
d バンド挿通孔の厚み方向寸法
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボール案内用のガイド内面を持つ膨出壁部が隆起形成されるロック壁、前記ロック壁と対向する底壁、及び前記ロック壁と前記底壁とを繋ぐ左右の側壁で囲まれて成るバンド挿通孔を有する扁平筒状の結束ヘッドと、
前記バンド挿通孔に挿通される内通部分と、前記内通部分から続いて前記膨出壁部が閉口するばバンド入口側で折り返されて前記底壁の外面に沿う外端部分と、を有して前記底壁に係止されるバンド基端部、及び前記内通部分に続いて前記バンド挿通孔における前記膨出壁部が開口するバンド出口側から延出されるバンド本体部を備えて形成される可撓性を有する結束バンドと、
前記膨出壁部の内側に位置して前記バンド出口側からの抜出しが規制される状態で前記結束ヘッドに内装されるロック用のボールとを有し、
前記ロック壁の前記バンド入口側の端が、対応する前記底壁の端よりも外方に突出するように延長形成されている結束具。
【請求項2】
前記ロック壁における前記膨出壁部よりもバンド入口側の部分に、バンド挿通方向に対する左右方向に長い横長形状に隆起形成される補強用膨出部が設けられている請求項1に記載の結束具。
【請求項3】
前記ロック壁における前記底壁の端よりも外方に突出する延長壁部の突出量が、前記バンド挿通孔の厚み方向寸法以上に、好ましくは前記バンド挿通孔の厚み方向寸法の√3倍以上に設定されている請求項1又は2に記載の結束具。
【請求項4】
前記延長壁部の幅が先窄まり状となるように左右端が傾斜形成又は湾曲形成されている請求項1〜3の何れか一項に記載の結束具。
【請求項1】
ボール案内用のガイド内面を持つ膨出壁部が隆起形成されるロック壁、前記ロック壁と対向する底壁、及び前記ロック壁と前記底壁とを繋ぐ左右の側壁で囲まれて成るバンド挿通孔を有する扁平筒状の結束ヘッドと、
前記バンド挿通孔に挿通される内通部分と、前記内通部分から続いて前記膨出壁部が閉口するばバンド入口側で折り返されて前記底壁の外面に沿う外端部分と、を有して前記底壁に係止されるバンド基端部、及び前記内通部分に続いて前記バンド挿通孔における前記膨出壁部が開口するバンド出口側から延出されるバンド本体部を備えて形成される可撓性を有する結束バンドと、
前記膨出壁部の内側に位置して前記バンド出口側からの抜出しが規制される状態で前記結束ヘッドに内装されるロック用のボールとを有し、
前記ロック壁の前記バンド入口側の端が、対応する前記底壁の端よりも外方に突出するように延長形成されている結束具。
【請求項2】
前記ロック壁における前記膨出壁部よりもバンド入口側の部分に、バンド挿通方向に対する左右方向に長い横長形状に隆起形成される補強用膨出部が設けられている請求項1に記載の結束具。
【請求項3】
前記ロック壁における前記底壁の端よりも外方に突出する延長壁部の突出量が、前記バンド挿通孔の厚み方向寸法以上に、好ましくは前記バンド挿通孔の厚み方向寸法の√3倍以上に設定されている請求項1又は2に記載の結束具。
【請求項4】
前記延長壁部の幅が先窄まり状となるように左右端が傾斜形成又は湾曲形成されている請求項1〜3の何れか一項に記載の結束具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−11799(P2011−11799A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−158021(P2009−158021)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(000108524)ヘラマンタイトン株式会社 (57)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(000108524)ヘラマンタイトン株式会社 (57)
【Fターム(参考)】
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