説明

結束具

【課題】 線材その他の束ねることが可能な長い部材を束ねたときその長い部材の軸方向へずれる可能性を低くする。
【解決手段】 結束具20は、帯状部70およびセレーション74を有するバンド部30と、バックル部34とを備える。セレーション74は帯状部70に設けられている。バックル部34は、バンド部30の一端に設けられる。バンド部30は、側壁部72をさらに備える。側壁部72は、セレーション74に沿うように帯状部70に設けられている。側壁部72は、バンド部30の他端側におけるセレーション74の端からバックル部34までの区間に設けられている。側壁部72の帯状部70からの高さが、セレーション74の帯状部70からの高さより低い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線材その他の束ねることが可能な長い部材を束ねたときその長い部材の軸方向へずれる可能性を低くできる結束具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ワイヤハーネスその他線材を束ねることは広く行われている。線材だけでなく、長い部材はしばしば束ねられる。
【0003】
長い部材を束ねる物として最も周知なものの1つは紐である。紐を用いて長い部材を束ねるとき、その紐をきつく縛っておかないと、その紐は長い部材の軸方向へ自由に移動できる状態となってしまう。
【0004】
この問題を解決するため、特許文献1ないし特許文献5は、次に述べる結束具を開示する。その結束具は、バンドと、筒形部とを備える。筒形部はバンドの一端に設けられている。筒形部には孔が設けられている。その孔の内周面には爪が設けられている。筒形部の孔をバンドが貫通する。そうすると爪がバンド表面の歯とかみ合う。バンド表面の歯と爪とがかみ合うと、バンドは筒形部の孔から抜けなくなる。このバンドの表面のうち長い部材を束ねたとき内周面となる側の表面に、突起が設けられている。この突起は、結束具が長い部材を束ねたとき、その長い部材の表面に押付けられる。これにより、長い部材の表面と突起との間の摩擦力によって、結束具は移動し難くなる。そのため、紐ほどきつく縛るための労力をかけなくても、結束具が移動しないように長い部材を束ねることが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭59 −136009号公報
【特許文献2】実開昭62 − 58361号公報
【特許文献3】特開平7 −279911号公報
【特許文献4】実開平5 − 77057号公報
【特許文献5】特開2000−226043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1ないし特許文献5に開示された発明には、結束具が移動する可能性を低くすることについて改善の余地がある。
【0007】
本発明の目的は、線材その他の束ねることが可能な長い部材を束ねたときその長い部材の軸方向へずれる可能性を低くできる結束具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明のある局面に従うと、結束具20は、バンド部30と、バックル部34とを備える。バンド部30は帯状部70およびセレーション74を有する。セレーション74は帯状部70に設けられている。バックル部34は、バンド部30の一端に設けられる。バックル部34は、バンド貫通孔40を有する。バンド貫通孔40をバンド部30の他端が貫通する。バンド貫通孔40の内周面に、バンド抜止爪42が設けられている。バンド抜止爪42は、バンド貫通孔40をいったん貫通したバンド部30がバンド貫通孔40から抜けることをセレーション74とかみ合うことにより防止する。バンド部30は、側壁部72をさらに備える。側壁部72は、セレーション74に沿うように帯状部70に設けられている。側壁部72は、バンド部30の他端側におけるセレーション74の端からバックル部34までの区間に設けられている。側壁部72の帯状部70からの高さが、セレーション74の帯状部70からの高さより低い。
【0009】
線材その他の束ねることが可能な長い部材100を結束具20で束ねるとき、セレーション74のうちバンド部30の他端に近い部分はバンド抜止爪42とかみ合う。セレーション74のうちバンド抜止爪42とかみ合っている部分よりバンド部30の一端側の部分は上述した長い部材100の間およびその表面に食い込む。つまり、セレーション74はバックル部34からの抜け止め機能と結束具20の横滑り防止機能とを有する。このとき、側壁部72は、バンド部30の他端側におけるセレーション74の端からバックル部34までの区間に設けられている。しかも側壁部72はセレーション74に沿うように帯状部70に設けられている。つまり多数の長い部材100を結束具20で束ねるとき、側壁部72は長い部材100の束を取囲む。側壁部72が長い部材100の束を取囲んでいない区間はない。このため、側壁部72が長い部材100の束を取囲んでいない区間がある場合に比べて、バンド部30の機械的強度は強くなる。機械的強度が強くなるので、側壁部72が長い部材100の束を取囲んでいない区間がある場合に比べて、バンド部30を強い力で引締めることが可能になる。その上、側壁部72の帯状部70からの高さが、セレーション74の帯状部70からの高さより低い。そのため、側壁部72は、長い部材100の間およびその表面にセレーション74が食い込むことを妨げない。側壁部72に妨げられないので、セレーション74は長い部材100の間およびその表面に十分食い込むことができる。その結果、上述した長い部材100の軸方向へ結束具20が移動する可能性を低くできる。
【0010】
また、上述した側壁部72が、セレーション74との間に隙間があるよう配置されていることが望ましい。
【0011】
上述した長い部材100の束をバンド部30で束ねると、側壁部72のうち帯状部70との付け根から見て先端にあたる部分が圧縮されることになる。側壁部72とセレーション74との間に隙間があると、側壁部72のうち帯状部70との付け根から見て先端にあたる部分が圧縮される際、側壁部72とセレーション74とが一体化している場合に比べ、その先端にあたる部分が屈曲しやすくなる。その先端にあたる部分が屈曲しやすくなるので、側壁部72とセレーション74とが一体化している場合に比べ、その先端にあたる部分がセレーション74の食い込みを妨げにくくなる。その結果、側壁部72とセレーション74とが一体化している場合に比べ、上述した長い部材100を束ねたときその長い部材100の軸方向へ結束具20がずれる可能性を低くできる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、線材その他の束ねることが可能な長い部材を束ねたときその長い部材の軸方向へずれる可能性を低くできる、結束具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施例にかかる結束具の斜視図である。
【図2】本発明の一実施例にかかるバンド部の断面図である。
【図3】本発明の一実施例にかかるバックル部付近の断面図である。
【図4】本発明の一実施例にかかる結束具が電線を束ねているときの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施例について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0015】
[結束具の構成]
図1は、本実施例にかかる結束具20の斜視図である。図2は、本実施例にかかるバンド部30の断面図である。図1と図2とを参照しつつ、本実施例にかかる結束具20の構成を説明する。
【0016】
本実施例にかかる結束具20は、バンド部30と、バックル部34とを備える。バンド部30は、線材その他の長い部材を束ねるためのものである。バックル部34は、バンド部30の一端に設けられている。バンド部30が上述した長い部材を束ねるとき、バックル部34をバンド部30の他端すなわちバンド部30の先端が貫通する。本実施例の場合、バンド部30とバックル部34とは一体になっている。本実施例にかかる結束具20は樹脂製である。
【0017】
[バンド部の構成]
本実施例にかかるバンド部30は、帯状部70と、側壁部72と、セレーション74とを有する。帯状部70は、上述した長い部材を束ねる際、引締められる。これにより、帯状部70は、その長い部材を締め付ける。図1および図2に示すとおり、側壁部72は、セレーション74に沿うように帯状部70に設けられている。また、図1に示すとおり、側壁部72は、バンド部30の他端側におけるセレーション74の端からバックル部34までの区間に設けられている。側壁部72は、帯状部70と一体となっている。このため、バンド部30の断面はカタカナでいう「コ」字型となっている。セレーション74も、帯状部70に設けられている。本実施例において「セレーション」とは歯が並ぶことで列となっているものを意味する。セレーション74を構成する1つ1つの歯は、後述する歯型部50を構成する1つ1つの歯とかみ合う。図2から明らかな通り、セレーション74は側壁部72より高い。つまり、側壁部72の帯状部70からの高さが、セレーション74を構成する歯の帯状部70からの高さより低い。
【0018】
[バックル部の構成]
図3は、本実施例にかかるバックル部34付近の断面図である。上述した図1と図3とを参照しつつ、本実施例にかかるバックル部34の構成を説明する。本実施例にかかるバックル部34は、バンド貫通孔40を有している。バンド貫通孔40の内周面にバンド抜止爪42が設けられている。バンド抜止爪42は歯型部50を有する。歯型部50は複数の歯によって構成されている。バンド貫通孔40に挿入されたセレーション74を構成する1つ1つの歯は、この歯型部50を構成する1つ1つの歯にかみあって抜けなくなる。
【0019】
[結束具の使用方法]
以下、多数の電線100を束ねる場合の、本実施例にかかる結束具20の使用方法を説明する。
【0020】
まず、電線100の束に結束具20のバンド部30を巻付ける。バンド部30を巻付けたら、バンド部30の先端をバックル部34のバンド貫通孔40に挿入する。バンド部30の先端がバンド貫通孔40を貫通すると、セレーション74を構成する1つ1つの歯にバンド抜止爪42の歯型部50を構成する1つ1つの歯がかみ合う。これにより、バンド部30はバンド貫通孔40から抜けなくなる。
【0021】
この状態で、バンド部30の先端をさらに引くと、電線100の束は次第に締め付けられる。このとき、セレーション74を構成する1つ1つの歯は電線100の間および電線100の表面に食い込んでいく。
【0022】
セレーション74を構成する1つ1つの歯が電線100の間および電線100の表面に食い込むと、バンド部30の先端をさらに引くことによって電線100の束をしっかりと締め付ける。その後、バンド部30のうちバックル部34から突出している部分を切り取る。これで結束具20による結束が完了する。
【0023】
[本実施例にかかる結束具の効果]
図4は本実施例にかかる結束具20が多数の電線100を束ねているときの結束具20の断面図である。図4を参照しつつ、本実施例にかかる結束具20の効果を説明する。多数の電線100を結束具20で締め付けるとき、セレーション74を構成する歯のうちバンド部30の先端に近いものはバンド抜止爪42の歯型部50を構成する歯とかみ合う。セレーション74を構成する歯のうち電線100を取囲んでいるものは電線100の間および電線100の表面に食い込む。つまり、セレーション74はバックル部34からの抜け止め機能と結束具20の横滑り防止機能とを有する。このとき、側壁部72は、バンド部30の先端側におけるセレーション74の端からバックル部34までの区間に設けられている。つまり多数の電線100を結束具20で束ねるとき、側壁部72は電線100の束を取囲む。側壁部72が電線100の束を取囲んでいない区間はない。このため、側壁部72が電線100の束を取囲んでいない区間がある場合に比べて、バンド部30の機械的強度は強くなる。機械的強度が強くなるので、側壁部72が電線100の束を取囲んでいない区間がある場合に比べて、バンド部30を強い力で引締めることが可能になる。その上、側壁部72の帯状部70からの高さが、セレーション74の帯状部70からの高さより低い。そのため、側壁部72は、電線100の間およびその表面にセレーション74が食い込むことを妨げない。側壁部72に妨げられないので、セレーション74は電線100の間およびその表面に十分食い込むことができる。その結果、電線100の軸方向へ移動する可能性を低くできる。
【0024】
また、側壁部72とセレーション74との間に隙間があると、電線100の束をバンド部30で束ねる際、側壁部72とセレーション74との間に隙間がなく一体化している場合に比べ、側壁部72の先端にあたる部分が屈曲しやすくなる。その先端にあたる部分が屈曲しやすくなるので、その先端にあたる部分がセレーション74の食い込みを妨げにくくなる。
【0025】
なお、今回開示された実施例はすべての点で例示である。本発明の範囲は上述した実施例に基づいて制限されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更をしてもよいのはもちろんである。
【0026】
例えば、結束具20は樹脂製で一体となっているものに限定されない。結束具20は、それを構成する各部分が別々に製作され互いに接続されたものであってもよい。
【符号の説明】
【0027】
20…結束具
30…バンド部
34…バックル部
40…バンド貫通孔
42…バンド抜止爪
50…歯型部
70…帯状部
72…側壁部
74…セレーション
100…電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状部および前記帯状部に設けられているセレーションを有するバンド部と、
前記バンド部の一端に設けられ、前記バンド部の他端が貫通するバンド貫通孔を有する、バックル部とを備え、
前記バンド貫通孔の内周面に、前記バンド貫通孔をいったん貫通した前記バンド部が前記バンド貫通孔から抜けることを前記セレーションとかみ合うことにより防止するバンド抜止爪が設けられている結束具において、
前記バンド部が、前記セレーションに沿うように前記帯状部に設けられている側壁部をさらに有しており、
前記側壁部は、前記バンド部の他端側における前記セレーションの端から前記バックル部までの区間に立っており、
前記側壁部の前記帯状部からの高さが、前記セレーションの前記帯状部からの高さより低いことを特徴とする、結束具。
【請求項2】
前記側壁部が、前記セレーションとの間に隙間があるよう配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の結束具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−116552(P2012−116552A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269932(P2010−269932)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000108524)ヘラマンタイトン株式会社 (57)
【Fターム(参考)】