説明

結核の治療のための化合物

結核菌の治療に使用の、(5R)−3−[4−[1−[(2S)−2,3−ジヒドロキシプロパノイル]−3,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−4−イル]−3,5−ジフルオロ−フェニル]−5−(イソオキサゾール−3−イルオキシメチル)オキサゾリジン−2−オン又はその医薬的に許容される塩、又はその in vivo 加水分解可能エステル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結核の治療におけるAZD2563の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
結核は、結核菌(Mtu)によって引き起こされる疾患であり、1990年には、世界保健機構(WHO)によって、世界的流行病であると宣言された。これには、世界の人口の1/3より多くが罹患して、毎年800万人の新患者と200万件の死亡例をもたらす。また、病原菌が無活動状態であるが個体の健康に対して明らかな影響を及ぼさずに体内に残るときに生じる、「潜伏結核(TB)」と呼ばれるシナリオも存在する。多くの症例では、このステージが数年又は数十年続く場合がある。普通のヒトの症例において、活性化の見込みは、生涯で2〜23%である。しかしながら、免疫不全患者(HIVのような)の症例では、活性化の見込みが毎年10%へ上昇する。
【0003】
薬剤感受性結核の現行の治療法は、少なくとも6ヶ月の長さであり、最初の2ヶ月はイソニアジド、リファンピシン、ピラジナミド、及びエタンブトールの組合せを必要として、4ヶ月の期間は、イソニアジドとリファンピシンを続ける。ここ数年、これら薬剤に対する薬剤耐性が高まってきたが、最後の結核用医薬品が臨床現場へ導入されたのは1960年代の後期である。耐性の進化は、現行で利用可能な抗結核剤が無効になる菌株をもたらす可能性があり、そのような症例での治療は、治癒の保証がないままに2年続くかもしれない。そこで、高まりつつある薬剤耐性を克服するだけでなく、全体の治療期間を改善するために、新薬、特に、新規の作用機序がある、及び/又は新たな薬理作用基(pharmacophoric groups)と新たな治療レジメンを含有するものを導入することへの焦眉の急がある。
【0004】
R. Sood et al(Infectious Disorders - Drug Targets 2006, 343-354)は、「オキサゾリジノンは、臨床的に重要で多様な感受性及び耐性細菌に抗する広い活性スペクトルを有する、新しいクラスの完全合成抗菌剤である。これらの化合物は、タンパク質合成の開始期で翻訳を阻害することが示された。最初のオキサゾリジノンであるDuP−721は、実験動物へ経口又は非経口で投与するときに、結核菌に抗する良好な活性を示したが、動物モデルでの致死性の毒性のためにさらに開発されなかった。後に、2種のオキサゾリジノン、PNU−100480とリネゾリドは、マウスモデルにおいて有望な抗マイコバクテリウム活性を示した。リネゾリドが広いスペクトル領域での臨床使用を承認されたのに対して、PNU−100840は、さらに開発されなかった。DA−7867は、良好な in vitro 効力とリネゾリドより優れた in vivo 効力を示したが、ラット毒性試験では、忍容性に乏しかった。AZD2563の抗マイコバクテリウム活性は探究されたことがない。RBx7644がわずかな抗マイコバクテリウム活性を有したのに対して、RBx8700は、すべての遅成長性マイコバクテリウムに抗する強力な抗菌活性と濃度依存性の活性を有する。それは、細胞内の活性とともに、結核菌のMDR株に抗して、RBx7644より優れた活性を示した」と報告している。
【0005】
我々の公開特許出願WO−99/64417において、我々は、化合物:
【0006】
【化1】

【0007】
即ち、AZD2563としても知られる(5R)−3−[4−[1−[(2S)−2,3−ジヒドロキシプロパノイル]−3,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−4−イル]−3,5−ジフルオロ−フェニル]−5−(イソオキサゾール−3−イルオキシメチル)オキサゾリジン−2−オンを開示する。R. Sood et al(前掲書)によって報告されているように、AZD2563の抗マイコバクテリウム活性は、探究されたことがない。
【発明の概要】
【0008】
本発明の第一の側面において、我々は、今回、(5R)−3−[4−[1−[(2S)−2,3−ジヒドロキシプロパノイル]−3,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−4−イル]−3,5−ジフルオロ−フェニル]−5−(イソオキサゾール−3−イルオキシメチル)オキサゾリジン−2−オン又はその医薬的に許容される塩、又はその in vivo 加水分解可能エステルを結核菌の治療における使用に提供する。
【0009】
該化合物は、安定した酸性又は塩基性の塩を形成し得て、そのような場合、化合物の塩としての投与が適正であり得て、以下に記載のような慣用法によって医薬的に許容される塩を作製してよい。
【0010】
好適な医薬的に許容される塩には、メタンスルホン酸塩、トシラート、α−グリセロリン酸塩、フマル酸塩、塩酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、及び臭化水素酸塩のような酸付加塩が含まれる。また適しているのは、リン酸や硫酸とともに形成される塩である。別の側面において、好適な塩は、アルカリ金属(例えば、ナトリウム)塩、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム又はマグネシウム)塩、有機アミン(例えば、トリエチルアミン、モルホリン、N−メチルピペリジン、N−エチルピペリジン、プロカイン、ジベンジルアミン、N,N−ジベンジルエチルアミン、トリス−(2−ヒドロキシエチル)アミン、N−メチルd−グルカミン、及びリジンのようなアミノ酸)塩のような塩基性塩である。荷電官能基の数とカチオン又はアニオンの原子価に依存して、1より多いカチオン又はアニオンがあり得る。本発明の1つの側面において、医薬的に許容される塩は、ナトリウム塩である。
【0011】
しかしながら、製造の間で塩の単離を容易にするには、医薬的に許容されるかどうかにかかわらず、選択した溶媒にさほど溶けない塩を利用してよい。
本発明では、該化合物又はその塩が互変異性の現象を明示する場合があって、本明細書内の式図がその可能な互変異性型の1つだけを表し得ると理解されたい。本発明にはどの互変異性型も含まれて、式図内で利用されるどの1つの互変異性型だけにも限定されないと理解されたい。本明細書内の式図は、その可能な互変異性型の1つだけを表し得るのであって、本明細書には、本明細書で描いて示すことが可能である形態だけでない、引用される化合物のすべての可能な互変異性型が含まれると理解されたい。
【0012】
本発明には、抗結核特性を保有する、あらゆる追加の不斉置換炭素及びイオウ原子(複数)での、あらゆるラセミ型、光学活性型、多形又は立体異性型、又はこれらの混合物が含まれると理解されたい。
【0013】
光学活性型は、当該技術分野で知られた手順によって、例えば、再結晶化技術によるラセミ型の分割によって、光学活性のある出発材料からの合成によって、キラル合成によって、酵素分割によって、生物学的転換によって、又はキラル定常相を使用するクロマトグラフィー分離によって製造し得る。
【0014】
該化合物は、多形性を示す場合がある。本発明には、抗結核特性を保有する、あらゆる多形型、又はその混合物が含まれると理解されたい。
また、本発明の化合物とその塩は、非溶媒和型だけでなく、例えば、水和型のような溶媒和型でも存在し得ると理解されたい。本発明には、抗結核特性を保有する、すべてのそのような溶媒和型の使用が含まれると理解されたい。
【0015】
我々の研究は、AZD2563が、リネゾリドと比較するときに、より低い曝露でより長い時間の間、抗結核剤として作用し得ることを示した。これにより、リネゾリドが1日2回投薬されるのに対して、1日1回の投薬が可能になるかもしれない。理論上の考察によって束縛されることを望まないが、これにより、改善された安全性プロフィールが提供される可能性がある。
【0016】
本発明のさらなる側面において、我々は、AZD2563又はその医薬的に許容される塩、又はその in vivo 加水分解可能エステルの、結核菌の治療に使用の医薬品の製造における使用を提供する。
【0017】
本発明のさらなる側面において、我々は、結核菌の弱毒化の方法を提供し、該方法は、結核菌により感染された細胞を、AZD2563又はその医薬的に許容される塩、又はその in vivo 加水分解可能エステルの医薬有効量と接触させて、それにより該細胞を弱毒化することを含む。
【0018】
本発明のさらなる側面において、我々は、結核菌の治療のための方法を提供し、該方法は、抗結核療法を必要とする患者へAZD2563又はその医薬的に許容される塩、又はその in vivo 加水分解可能エステルの治療有効量を投与することを含む。
【0019】
本発明のさらなる側面では、(5R)−3−[4−[1−[(2S)−2,3−ジヒドロキシプロパノイル]−3,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−4−イル]−3,5−ジフルオロ−フェニル]−5−(イソオキサゾール−3−イルオキシメチル)オキサゾリジン−2−オン又はその医薬的に許容される塩、又はその in vivo 加水分解可能エステルを1日1回以内投与する。
【0020】
本発明のさらなる側面において、我々は、(5R)−3−[4−[1−[(2S)−2,3−ジヒドロキシプロパノイル]−3,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−4−イル]−3,5−ジフルオロ−フェニル]−5−(イソオキサゾール−3−イルオキシメチル)オキサゾリジン−2−オン又はその医薬的に許容される塩、又はその in vivo 加水分解可能エステルを含んでなる医薬製剤を1日1回以内の投与のために提供する。
【0021】
AZD2563は、ヒトと動物の両方の療法に使用し得ると理解されよう。それぞれが本発明の独立した側面を表す。
組合せ
本明細書に記載する本発明の化合物は、単独療法として適用しても、本発明の化合物に加えて、1以上の他の物質及び/又は治療薬を伴ってもよい。そのような併用治療は、治療の個別成分の同時、連続、又は分離投与により達成され得る。投与が連続的又は分離的である場合、第二の成分を投与することにおける遅れは、この組合せの有益な効果を失わせるようなものであってはならない。
【0022】
好適な群及び物質は、以下の1以上より選択してよい:
i)他の抗菌剤、例えば、マクロライド(例、エリスロマイシン、アジスロマイシン、カプレオマイシン、又はクラリスロマイシン);キノロン(例、シプロフロキサシン又はレボフロキサシン);β−ラクタム(例、ペニシリン、アモキシシリン、又はピペラシリン);セファロスポリン(例、セフトリアキソン又はセフタジジム);カルバペネム(例、メロペネム又はイミペネム、等);アミノグリコシド(例、ゲンタマイシン又はトブラマイシン);又はオキサゾリジノン;及び/又は
ii)抗感染症剤、例えば、抗真菌性のトリアゾール(例、アンホテリシン);及び/又は
iii)生体タンパク治療薬、例えば、抗体、サイトカイン、殺菌性/透過性亢進タンパク質(BPI)産物;及び/又は
iv)リファンピシン、イソニアジド、ピラジナミド、エタンブトール、キノロン(例、モキシフロキサシン又はガチフロキサシン)、ストレプトマイシン、シクロセリン、エチオナミド、チアセタゾン、p−アミノサリチル酸(PAS)、アミカシン、カナマイシン、クロファジミンの1以上といった、結核の治療に有用な1以上の抗菌剤、
v)薬剤排出ポンプ阻害剤。
【0023】
故に、本発明のさらなる側面において、我々は、(5R)−3−[4−[1−[(2S)−2,3−ジヒドロキシプロパノイル]−3,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−4−イル]−3,5−ジフルオロ−フェニル]−5−(イソオキサゾール−3−イルオキシメチル)オキサゾリジン−2−オン、又はその医薬的に許容される塩を:
i)1以上の追加の抗菌剤;及び/又はii)1以上の抗感染症剤;及び/又はiii)生体タンパク治療薬、例えば、抗体、サイトカイン、殺菌性/透過性亢進タンパク質(BPI)産物;iv)結核の治療に有用な1以上の抗菌剤、及び/又はv)1以上の薬剤排出ポンプ阻害剤より選択される化学療法剤との組合せにおいて含んでなる、組合せ療法を提供する。
【0024】
本発明のさらなる側面において、組合せ療法は、1日1回以内の投与のために提供される。
これから本発明について例解するが、本発明は、以下の具体的な記載に限定されるものではない。
【0025】
(5R)−3−[4−[1−[(2S)−2,3−ジヒドロキシプロパノイル]−3,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−4−イル]−3,5−ジフルオロ−フェニル]−5−(イソオキサゾール−3−イルオキシメチル)オキサゾリジン−2−オン(AZD2563)の合成については、我々の公開特許出願:WO99/64417に開示されている。
【0026】
比較対照薬として、我々は、N−[(S)−3−(3−フルオロ−4−モルホリン−4−イル−フェニル)−2−オキソ−オキサゾリジン−5−イルメチル]−アセトアミドである、リネゾリド(Zyvox(登録商標)として市販されている)について概説した。
【0027】
生物学的試験の手順
細菌感受性試験法
化合物について、液体培地中の感受性試験によって抗微生物活性を試験することができる。化合物をジメチルスルホキシドに溶かして、10回の倍々希釈液において、感受性アッセイで試験してよい。アッセイに使用する微生物を好適な寒天培地上で一晩増殖させてから、その微生物の増殖に適した液体培地に懸濁してよい。この懸濁液は、0.5マクファーランド(McFarland)であり得て、同じ液体培地でさらに10倍希釈して、最終の微生物懸濁液を100μLで調製することができる。プレートを適切な条件下に37℃で24時間インキュベートしてから読み取ることができる。増殖を90%以上抑えることが可能な最低の薬物濃度として最小阻止濃度(MIC)を決定してよい。
【0028】
in vitro マイコバクテリウム感受性試験法
MIC検査用プロトコール:Microplate Alamar Blue アッセイ(Franzblau et al, 1998. J. Clin. Microbiol. 36: 362-366)。細菌培養物:Mtu H37Rv(ATCC27294)を−70℃で保存して、感染に使用した。
【0029】
滅菌96ウェルプレートのすべての外周ウェルへ200マイクロリットルの滅菌脱イオン水を加えて、試験ウェル中の培地のインキュベーションの間の蒸発を最少化した。別の96ウェルプレートにおいて、64μg/mlより始めて0.5μg/mlへ至る、化合物のDMSOでの連続2倍希釈液を作製した。このうちの4μl容量を、マルチチャネルピペットを使用することによって、B〜G行、2〜10列の試験ウェルへ分配した。このすべてのウェルへ約5x10cfu/mlの細胞数へ希釈した200μLのMtu培養液を加えて、このウェルの内容物をよく混合した。11列中の3つのウェルは、薬物フリー(接種物のみ)の対照として役立てた。そして、3つのウェルを薬物フリー培地の対照として役立てた。このプレートを37℃で5日間インキュベートした。Alamar Blue(Accumed International,オハイオ州ウェストレーク)試薬と10% Tween80の用時調製した1:1混合物の50マイクロリットルをB11ウェルへ加えた。このプレートを37℃で24時間再インキュベートした。B11ウェルがピンク色になったならば、この試薬混合物をマイクロプレート中の全ウェルへ加えた(このウェルが青色のままであれば、試薬混合物を別の対照ウェルへ加えて、この結果を翌日読み取ることにした)。マイクロプレートを37℃でさらに24時間再インキュベートして、すべてのウェルの色を記録した。ウェル中の青色は「増殖なし」と解釈して、ピンク色は、「増殖あり」と記録した。
【0030】
MICは、青色からピンク色への色変化を妨げる最低の薬物濃度と定義した。
上記の実験からの結果が得られたらすぐに、最小殺菌濃度(MBC)の定量のために反復MICアッセイを同一2検体で設定する。上記に詳述したようなインキュベーションの後で、第二のプレートからの対応するMICウェルより、並びに最高濃度までのウェルより100μlを7H10寒天プレートに蒔く。これらのプレートを37℃で15〜20日間インキュベートする。陽性対照ウェルからのアリコートを増殖対照として役立てて、培地ウェルからの100μlアリコートを陰性対照として役立てる。21日後、各プレートについて、目視により、又はコロニーカウンターでコロニー形成単位(CFU)を記録する。50未満のコロニーが得られる濃度をMBCと呼ぶ。
【0031】
骨髄由来マクロファージ(BMDM)の培養及び感染
BALB/cマウスより骨髄由来マクロファージを入手した。COへの曝露によってマウスを安楽死させて、大腿骨と脛骨を切り取った。骨を両端でトリミングして、26ゲージ針を使用して、冷たいRPMI1640培地とともに骨髄を流出させた。次いで、この細胞懸濁液を培地で2回洗浄して、24ウェルプレート中の10%胎仔ウシ血清(FBS)とL929(マウス線維芽細胞系)の20%培養上清を補充したRPMI 1640培地に2x10細胞/mlで蒔いた。この細胞を、培地を2回交換して、5% COにおいて37℃で7日間インキュベートした。
【0032】
培養8日目に、マクロファージをMtuでの感染に使用した。それらを定型の培養条件で2時間、1:10のMOI(マクロファージ:細菌)で感染させた。2時間後、その単層を予温したリン酸緩衝化生理食塩水で2回徹底的に洗浄して余分の細菌を除去して、異なる濃度(0.5〜8mg/L)の薬物を含有するすべての上清を含むRPMI1640と交換した。細胞を含有するプレートについて定期的に観察して、細胞形態のあらゆる変化(薬物の毒性による)又は単層の溶解に注目した。(感染後の)薬物曝露の10日後に単層を穏やかに洗浄して、0.04% SDSで溶解させて、栄養のある7H11寒天上へ蒔いた。加湿雰囲気において37℃、5% COで21日間のプレートのインキュベーションの後で、細菌のコロニー形成を計数した。各薬物濃度についての平均Log10平均CFUとしてデータを表して、この実験全体を2回繰り返した。
【0033】
in vivo 用量−応答試験(効力検査法)
少数の結核菌での呼吸器感染に続いて薬物の効果を評価するエアゾール感染モデルを使用した。バイオセイフティーレベル3の施設において、エアゾール感染チャンバ内でマウスを吸入経路より感染させた。感染の日に、BALB/cマウス(8〜10週齢)を呼吸経路より感染させて、100〜200結核菌/動物を達成した。感染から4週後、マウスに体重1kgにつき100〜125mgを1日1回経口で投薬して、この療法を週6日、4週間施した。治療の開始時とその完了後24時間目にマウスの群をCOへの曝露によって殺して、両肺を無菌的に取り出して、Wheaton テフロンガラス組織粉砕器(型番W012576)を使用することによる、最終容量3mlのホモジェナイゼーションへ処した。それぞれの懸濁液を10倍ステップで連続希釈して、少なくとも3つの希釈液を、10%アルブミンデキストロースカタラーゼ(Difco Laboratories)を補充した Middlebrook 7H11寒天上へ蒔いて、5% COとともに37℃で3週間インキュベートした。このプレートについてコロニー形成単位(CFU)を計数して、その効果を無処置対照に対して比較する。
【0034】
統計解析
プレーティングより得られるコロニーカウント数をLog10(x+1)[ここでxは、所与の試料に存在する生存結核菌の全数に等しい]へ変換した。統計評価には Prism ソフトウェア(バージョン3;Graph Pad Software 社、カリフォルニア州サンディエゴ)を使用した。
【0035】
薬物動態(PK)変数の評価
BALB/cマウス(8〜10週齢)に、適正な担体中の特定用量の化合物を10mL/Kgの投薬容量で投薬した。この用量は、経口又は非経口のいずれかで投与した。投薬後0.08時間〜50時間に及ぶ様々な時点で血液試料を採取して、沈降又は抽出のような許容される方法によって血漿を採取した。HPLC及び/又はLC−MSのような標準分析装置によって、化合物の血漿濃度を定量した。
【0036】
PK分析:
血漿濃度−時間の関係についてのPK分析を WinNonLin ソフトウェア(又は他の好適なソフトウェアプログラム)で実施した。ノンコンパートメント分析プログラムを使用して、薬物の最高血中濃度(Cmax)、Cmaxへの時間(tmax)、消失速度定数、消失半減期、及び0〜無限の時間の(AUC0−inf)といったPK変数を計算した。
【0037】
上記のアッセイにおいてAZD2563を試験して、以下の結果を得た:
表1:AZD2563及びリネゾリドの微生物学的活性の比較
【0038】
【表1】

【0039】
我々の研究は、細胞内感染モデル(BMDM)において、AZD2563がリネゾリドに比較してより大きい殺菌活性を有することを示した。効力実験においてPK/PD指標を比較すると、AZD2563が、リネゾリドと比較するとき、最小有効用量でずっとより低い曝露を示して、より低いfAUC/MICを必要としても、同等の効力をもたらすことがわかる。
【0040】
表2:様々な種におけるAZD2563及びリネゾリドのPK特性の比較
【0041】
【表2】

【0042】
該化合物を動物へ様々な用量(25mg/kgを超えない)で投薬して、様々な時点での該化合物の濃度を評価した。データを解析して、AUC、t1/2、及びfAUC/MICのようなPK変数を評価して、そのデータを上記の表に示した。このデータより、より長いt1/2とより低い曝露といったPK変数がすべての種で適用されるように見えるので、様々な種において毒性や投与間隔に関して同様の結論を下すことができよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結核菌(Mycobacterium tuberculosis)の治療に使用の、(5R)−3−[4−[1−[(2S)−2,3−ジヒドロキシプロパノイル]−3,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−4−イル]−3,5−ジフルオロ−フェニル]−5−(イソオキサゾール−3−イルオキシメチル)オキサゾリジン−2−オン又はその医薬的に許容される塩、又はその in vivo 加水分解可能エステル。
【請求項2】
結核菌の治療に使用の医薬品の製造における、(5R)−3−[4−[1−[(2S)−2,3−ジヒドロキシプロパノイル]−3,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−4−イル]−3,5−ジフルオロ−フェニル]−5−(イソオキサゾール−3−イルオキシメチル)オキサゾリジン−2−オン又はその医薬的に許容される塩、又はその in vivo 加水分解可能エステルの使用。
【請求項3】
結核菌の弱毒化の方法であって、医薬有効量の(5R)−3−[4−[1−[(2S)−2,3−ジヒドロキシプロパノイル]−3,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−4−イル]−3,5−ジフルオロ−フェニル]−5−(イソオキサゾール−3−イルオキシメチル)オキサゾリジン−2−オンと結核性細胞を接触させて、それにより該細胞を弱毒化することを含む、前記方法。
【請求項4】
結核菌の治療のための方法であって、抗結核療法を必要とする患者へ(5R)−3−[4−[1−[(2S)−2,3−ジヒドロキシプロパノイル]−3,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−4−イル]−3,5−ジフルオロ−フェニル]−5−(イソオキサゾール−3−イルオキシメチル)オキサゾリジン−2−オン又はその医薬的に許容される塩、又はその in vivo 加水分解可能エステルの治療有効量を投与することを含む、前記方法。
【請求項5】
(5R)−3−[4−[1−[(2S)−2,3−ジヒドロキシプロパノイル]−3,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−4−イル]−3,5−ジフルオロ−フェニル]−5−(イソオキサゾール−3−イルオキシメチル)オキサゾリジン−2−オン又はその医薬的に許容される塩、又はその in vivo 加水分解可能エステルを1日1回以下投与する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
1日1回以下の投与のための(5R)−3−[4−[1−[(2S)−2,3−ジヒドロキシプロパノイル]−3,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−4−イル]−3,5−ジフルオロ−フェニル]−5−(イソオキサゾール−3−イルオキシメチル)オキサゾリジン−2−オン又はその医薬的に許容される塩、又はその in vivo 加水分解可能エステルを含んでなる医薬製剤。
【請求項7】
(5R)−3−[4−[1−[(2S)−2,3−ジヒドロキシプロパノイル]−3,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−4−イル]−3,5−ジフルオロ−フェニル]−5−(イソオキサゾール−3−イルオキシメチル)オキサゾリジン−2−オン又はその医薬的に許容される塩を:i)1以上の追加の抗菌剤;及び/又はii)1以上の抗感染症剤;及び/又はiii)生体タンパク治療薬、例えば、抗体、サイトカイン、殺菌性/透過性亢進タンパク質(BPI)産物;iv)結核の治療に有用な1以上の抗菌剤、及び/又はv)1以上の薬剤排出ポンプ阻害剤より選択される化学療法剤との組合せにおいて含んでなる、組合せ療法。
【請求項8】
1日1回以内の投与のための、請求項7に記載の組合せ療法。

【公表番号】特表2012−520864(P2012−520864A)
【公表日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500313(P2012−500313)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【国際出願番号】PCT/GB2010/050445
【国際公開番号】WO2010/106355
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(300022641)アストラゼネカ アクチボラグ (581)
【Fターム(参考)】