説明

結核菌における薬剤感受性を検出するための試験片

【課題】サイレント変異を有する薬剤感受性結核菌についての、薬剤感受性に関する誤検出を防止するための手段を提供すること。
【解決手段】本発明は、結核菌における薬剤感受性を検出するための試験片を提供する。この試験片には結核治療用薬剤の作用に関連する遺伝子をコードする薬剤感受性遺伝子とハイブリダイズし得る種々のプローブが固定されており、少なくとも1つのプローブは、結核菌の薬剤感受性遺伝子のサイレント変異を有する塩基配列の領域とハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドからなり、他のプローブは、結核菌の薬剤感受性遺伝子の野生型塩基配列からなる任意の領域とハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結核菌における薬剤感受性を検出するための試験片に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、日本では年間数千人が、地球規模では年間数百万人が結核により死亡しているといわれている。結核の治療は、基本的には化学療法を中心とする内科的療法であり、内科的療法では治療の目的を達成することが不可能な場合に外科療法が考慮される。
【0003】
内科的療法で使用される結核治療の薬剤としては、イソニアジド(INH)、リファンピシン(RFP)、ストレプトマイシン(SM)、エタンブトール(EB)、ニューキノロン(NQ)などの多くの種類の薬剤が知られている。しかし、薬剤を患者に投与した場合、突然変異によって、投与した薬剤に対する耐性を有する耐性菌が生じることが問題となっている。1996年より使用が開始されたピラジナミド(以下、「PZA」ともいう)についても、その耐性菌の出現が危惧されている。
【0004】
結核患者が保有する結核菌の薬剤耐性について情報を得るために、結核菌の薬剤感受性試験が行われている。薬剤感受性試験は、所定の薬剤を含有する薬剤感受性試験用培地における菌体の増殖の有無により、該所定の薬剤に対する耐性の有無を検査する方法が一般的に行われている。例えば、薬剤感受性試験用培地としては、バクテックMGITTM960(日本ベクトン・ディッキンソン株式会社)、結核感受性PZA液体培地(極東製薬株式会社)などが挙げられる。しかし、結核菌は増殖が遅く、結核菌の増殖の有無を確かめて耐性の有無を判断するまでに数週間を要するという問題がある。
【0005】
薬剤耐性菌は、特定遺伝子が変異することにより薬剤耐性を獲得することが報告されている。そのため、特定遺伝子の変異を検出することによる薬剤耐性菌の検出法が開発されている。例えば、結核治療用薬剤に感受性である野生型結核菌およびいずれかの薬剤に耐性を有する変異型結核菌における結核菌ゲノム上の結核治療用薬剤耐性関連遺伝子の塩基配列に基づいて合成されたオリゴヌクレオチドを固定化した基板を含む結核菌診断キットが開示されている(特許文献1)。現在開発されているDNAマイクロアレイキット「Oligo Array」(日清紡績株式会社)は、INH、RFP、SM、カナマイシン(KM)、およびEBの5薬剤に対する耐性に関与する遺伝子変異を検出し得るキットである。
【0006】
ピラジナミド(PZA)に対する耐性菌は、ピラジナミダーゼ(pyrazinamidase)をコードするpncA遺伝子の変異により耐性となることが報告されている(特許文献2、および非特許文献1〜5)。しかし、PZA薬剤耐性に関連する遺伝子の変異はpncA遺伝子の全領域にわたって数多く存在することが知られており、またそのうちのいずれか1つの変異によりPZA耐性を獲得するといわれている。つまり、PZA耐性菌を適切に検出するためには、いずれか1つの変異を漏らすことなく検出できなければならない。PZA耐性に関連するpncA遺伝子変異には、さらに未知のものが存在する可能性があり、PZA耐性菌検出のために早急にこれらの変異を突き止める必要がある。
【0007】
そこで、本発明者らは、pncA遺伝子の全領域にわたって存在する変異を確実に検出するために、pncA遺伝子の全領域を網羅可能な検出用プローブセットを開発した(特許文献3および4)。この検出用プローブセットは、各プローブが、野生型のpncA遺伝子とハイブリダイズ可能であるように設計されている。詳細には、この検出用プローブセットでは、pncA遺伝子がプローブに結合すると発色するので、セット中の全てのプローブの発色は変異がないことを示し、したがってPZA感受性であると判定される。一方、pncA遺伝子に変異がある場合は、pncA遺伝子がその変異箇所に対応するプローブに結合しないため、発色しない。したがって、発色しないプローブがあれば、変異が存在すること、すなわち、PZA耐性菌であることがわかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−103981号公報
【特許文献2】特表2000−512493号公報
【特許文献3】特開2006−180746号公報
【特許文献4】特開2006−180753号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】J. Korean Med Sci., 16巻, p.537-543 (2001)
【非特許文献2】Epidemiol. Infect., 128巻, p.337-342 (2002)
【非特許文献3】J. Clin. Microbiol., 40巻, 2号, p.501-507 (2002)
【非特許文献4】Microbiol. Drug, 3巻, 7号, p.223-228 (2001)
【非特許文献5】Scorpioら、Nat. Med., 2巻, 6号, p.662-667 (1996)
【非特許文献6】Siddiqiら、Antimicrob. Agents Chemother., 46巻, p.443-450 (2002)
【非特許文献7】Giannoniら、Antimicrob. Agents Chemother., 49巻, p.2928-2933 (2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
遺伝子変異には、塩基が置換しているが、コードするアミノ酸が変化しない、サイレント変異がある。また、塩基が置換し、コードするアミノ酸が変化しているが、薬剤感受性に影響を及ぼさない遺伝子多型(一塩基多型:SNP)もある。例えば、プローブを用いる遺伝子の変異の検出において、タンパク質に影響を及ぼす(例えば、酵素活性を変化させる)変異とサイレント変異またはSNPとが離れた位置に存在する場合には、タンパク質に影響を及ぼす変異のみを検出するようにプローブを設計し、サイレント変異またはSNPについては考慮する必要がない。しかし、タンパク質に影響を及ぼす変異とサイレント変異またはSNPとが非常に近い位置に存在する場合には、プローブによる検出範囲がこれらの変異またはSNPの位置と重複し、それぞれの変異を確実に区別可能なプローブを設計することは困難である。そのため、タンパク質に影響を及ぼす変異の検出を目的としたプローブは、いずれか一方の変異またはSNPが存在すれば検出される。このように、サイレント変異またはSNPのみが存在する場合には、タンパク質に影響がないにもかかわらず、タンパク質に影響を及ぼす変異があるとの誤った検出結果を得るという問題がある。
【0011】
本発明者らは、pncA遺伝子においてもサイレント変異が存在し、このサイレント変異がPZA耐性に関連する変異の位置に非常に近い位置に存在することを見出した。さらに、REP感受性遺伝子であるRNAポリメラーゼサブユニットBをコードするrpoB遺伝子にもサイレント変異が存在し、REP耐性に関連する変異の位置に非常に近い位置に存在することが報告されている(非特許文献6)。また、NQ感受性遺伝子であるDNAジャイレースAをコードするgyrA遺伝子には、NQ耐性に関連する変異の位置に非常に近い位置にSNPが存在することが報告されている(非特許文献7)。このような薬剤感受性遺伝子において新たなサイレント変異またはSNPが見出された場合に、薬剤耐性に関連する変異の位置に非常に近い位置に存在する可能性がある。そのため、例えば、上記のpncA遺伝子検出用プローブセットでは、サイレント変異のみを有しPZA感受性である結核菌を、PZA耐性菌であると誤って判断し、その結果、このようなサイレント変異菌を保有する結核患者に対して、本来有効であるべきPZA投与による治療が施されないという問題を生じる。このように、薬剤感受性菌についての誤検出を防止するための手段が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、サイレント変異またはSNPに対応するプローブと野生型に対応するプローブとの両方を用いることによって、薬剤感受性についてより確実に判定できることを見出した。
【0013】
本発明は、結核菌における薬剤感受性を検出するための試験片を提供し、
該試験片には、少なくとも2つのプローブが固定されており、
該プローブのうちの少なくとも1つのプローブが、結核菌の薬剤感受性遺伝子のサイレント変異または遺伝子多型を有する塩基配列の領域とハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドからなり、そして該サイレント変異を有する塩基配列の領域において、該サイレント変異以外の塩基の配列が野生型であり、
該プローブのうちの他のプローブが、結核菌の薬剤感受性遺伝子の野生型塩基配列からなる任意の領域とハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドからなり、そして該他のプローブが、それぞれ該試験片の異なる位置に固定され、そして
該サイレント変異を有する塩基配列の領域が、該野生型塩基配列の任意の領域のうちの1つとほぼ同じ領域である。
【0014】
好適な実施態様では、上記野生型塩基配列の任意の領域とハイブリダイズし得る複数のオリゴヌクレオチドは、上記薬剤感受性遺伝子の塩基配列のそれぞれ異なる領域とハイブリダイズし、そして該異なる領域によって該薬剤感受性遺伝子のコード配列またはその相補配列のほぼ全体が網羅される。
【0015】
さらなる実施態様では、上記サイレント変異または遺伝子多型を有する塩基配列の領域とハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドおよび該領域とほぼ同じ領域の野生型塩基配列の領域とハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドは、上記試験片の同じ位置に固定される。
【0016】
ある実施態様では、上記薬剤感受性遺伝子は、ピラジナミド感受性遺伝子、リファンピシン感受性遺伝子、またはニューキノロン感受性遺伝子である。
【0017】
1つの実施態様では、上記ピラジナミド感受性遺伝子は、pncA遺伝子である。
【0018】
他の1つの実施態様では、上記リファンピシン感受性遺伝子は、rpoB遺伝子である。
【0019】
さらに他の1つの実施態様では、上記ニューキノロン感受性遺伝子は、gyrA遺伝子である。
【0020】
本発明はまた、上記いずれかの試験片を含む、結核菌における薬剤感受性の検出用キットを提供する。
【0021】
1つの実施態様では、上記キットは、さらに、発色用試薬および薬剤感受性遺伝子増幅用プライマー対を含む。
【0022】
本発明はさらに、結核菌における薬剤感受性を検出する方法を提供し、該方法は、
試料中の結核菌の薬剤感受性遺伝子を抽出する工程、
該抽出した薬剤感受性遺伝子を上記のいずれかの試験片と接触させて、該試験片に固定されたプローブに結合させる工程、および
該プローブに結合した薬剤感受性遺伝子を発色させる工程
を含む。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、新たにサイレント変異またはSNPが見出された場合には、その変異に対応するプローブを設計し、野生型に対応するプローブとともに試験片に配置すればよい。本発明の結核菌における薬剤感受性を検出するための試験片は、このようなプローブを有するので、この試験片を用いると、サイレント変異またはSNPのみを有する薬剤感受性菌を薬剤耐性であると誤検出することなく、より確実に薬剤感受性を検出することができる。その結果、薬剤感受性結核菌を保有する結核患者に対して、適切な治療を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】結核菌のpncA遺伝子の塩基配列および設計したプローブの位置の関係を示す図である。
【図2】本発明の試験片(混合型試験片)および従来型試験片を用いた、野生型、S65Sサイレント変異型、およびP62L変異型の各結核菌のPZA感受性検出の結果を示す写真である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明において、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)の薬剤感受性遺伝子とは、結核治療用薬剤の作用に関連する遺伝子をいう。薬剤耐性菌では、この野生型の薬剤感受性遺伝子に変異が生じ、結核治療用薬剤の作用に対する薬剤耐性が獲得される。具体的には、変異を持つ薬剤感受性遺伝子から発現した酵素では、構成するアミノ酸配列において置換、挿入および/または欠落が生じているため、酵素活性の低下や薬剤結合部位の構造変化が生じ、結核治療用薬剤の効果が抑制される。
【0026】
このような薬剤感受性遺伝子としては、イソニアジド(INH)、リファンピシン(RFP)、ストレプトマイシン(SM)、エタンブトール(EB)、ニューキノロン(NQ)、ピラジナミド(PZA)などの作用に関連する遺伝子が挙げられる。具体的には、rpoB(RNAポリメラーゼBサブユニットをコードする)、katG(カタラーゼペルオキシダーゼをコードする)、inhA(エノイルCoAレダクターゼをコードする)、gyrAおよびgyrB(DNAジャイレースAおよびBをコードする)、rpsL(リボソームタンパク質S12をコードする)、rrs(16S rRNAをコードする)、pncA(ピラジナミダーゼをコードする)などが挙げられる。
【0027】
以下、具体的にpncA、rpoB、およびgyrAを例に挙げて、本発明を詳細に説明する。
【0028】
(ピラジナミダーゼをコードするpncA遺伝子)
結核菌のPZA耐性は、ピラジナミダーゼをコードするpncA遺伝子の変異により生じ得る。野生型の結核菌が保有するpncA遺伝子の塩基配列は、配列表の配列番号1に記載の塩基配列またはその相補的な配列である。配列番号1に記載の塩基配列81位〜83位の塩基ATGはタンパク質合成の開始コドンに該当し、559位〜561位は終止コドンに該当する。すなわち、この81〜561位はピラミナミダーゼのコード配列であり、ピラミナミダーゼのアミノ酸配列は、配列表の配列番号2に示すとおりである。−80位〜−1位の塩基は、タンパク質合成の上流部分に該当する。
【0029】
(pncA遺伝子の変異)
本発明におけるPZA耐性菌となり得るpncA遺伝子の変異の位置は、配列表の配列番号1に記載の塩基配列のコード配列中(1位から561位まで)に、さらには−20位から561位までに存在し得るpncA遺伝子の変異が挙げられる。PZA耐性を誘導するpncA遺伝子の変異は既知のものが多数存在しており、これらは、例えば、特許文献3および4ならびに非特許文献1〜5に開示されている。これらの変異のうち、いずれか1つの変異があれば、PZA耐性結核菌となり得る。
【0030】
pncA遺伝子には、上記の変異以外に、サイレント変異も存在することを新たに見出した。サイレント変異とは、上記のように、野生型の塩基が変異(置換)されているが、コードするアミノ酸は変化しないため、酵素活性に影響を及ぼさない変異をいう。具体的には、配列表の配列番号1に記載の塩基配列またはその相補配列の275位の塩基CからTへの変異、ならびに260位の塩基CからTへの変異が挙げられる(図1の白抜き矢印の位置)。これらのサイレント変異の位置は、いずれも上記のPZA耐性に関連する変異(図1の細い矢印および太い矢印の位置)に非常に近い位置に存在する。
【0031】
上記のpncA遺伝子のサイレント変異は次のようにして見出された。まず、結核患者から喀痰を採取し、雑菌除去し、培養をする。雑菌除去法として、N−アセチル−L−システイン(NALC)・水酸化ナトリウム法が挙げられる。具体的には、NALC−NaOH(4%NaOH(ml):2.9%クエン酸ナトリウム水溶液(mL):NALC(g)=100:100:1)の雑菌処理溶液を喀痰に2倍量加え、5〜20秒間混和した。その後、時々混和しながら15分間室温に放置し、さらにリン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH6.8)を加え混和した。遠心分離後、上清を捨て、沈渣をPBSに懸濁させ、得られた結核菌をミドルブルック7H9液体培地(ベクトン・ディッキンソン社)の結核菌分離培地で培養し、分離された結核菌を最終濃度100mg/LのPZAを含むミドルブルック7H12液体培地(ベクトン・ディッキンソン社)でPZA感受性試験を行った。具体的には、結核菌にPZAを加えて数日間培養後、硫酸鉄アンモニウムを加えてピラジナミダーゼ活性の有無を測定した。以上のような検査から、PZA感受性であると判別された結核菌からゲノムDNAを、フェノール抽出法で抽出し、シークエンサーで塩基配列を解析した。
【0032】
pncA遺伝子上の上記変異を検出する方法としては、Nollauら, Clin. Chem., 43, 1114-1120 (1997)、「突然変異検出のための研究室プロトコル」(Landegren, U.ら, Oxford University Press (1996))、および「PCR」第2版(Newtonら, BIOS Scientific Publishers Limited (1997))などに記載されている通常用いられる手段が適用できる。具体的には、例えば、PCR断片シークエンシング法、一本鎖高次構造多型法(SSCP法:Orita, M.ら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 86(8), 2766-2770 (1989))、ヘテロ二本鎖変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法(DGGE法:Sheffield, V. C.ら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 86(1), 232-236 (1989))、インベーダー法(Griffin, T. J.ら, Trend Biotech, 18, 77 (2000))、SniPerTM法(Amersham pharmacia biotech)、タックマンPCR法(Livak, K. J., Genel. Anal., 14, 143 (1999);Morris, T.ら, J. Clin. Microbiol., 34, 2933(1996))、MALDI−TOF/MS法(Griffin, T. J.ら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 96(11), 6301-6 (1999))、制限酵素長多型解析法(RFLP:Murray, J. C.ら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 80(19), 5951-5955 (1983))、DNAチップハイブリダイゼーション法(Kokoris, K.ら, J. Med. Genet., 36, 730 (1999))、MasscodeTM法(Qiagen Genomics)などに例示される公知の方法から選択され得るが、これらに限定されるものではない。遺伝子変異を検出する方法であれば、あらゆる手段を適用することができる。例えば、PCR−配列特異的オリゴプローブ(SSOP:sequence-specific oligonucleotide probes)法を用いることもできる。PCR−SSOP法とは、変異部位を含む約10〜約30塩基の、一方の対立遺伝子配列に完全相補的なプローブを作製し、変異部位を含むDNAをPCR法によりで増幅した後、ハイブリダイゼーションを行い、ハイブリッド形成の有無により遺伝子多型を判別する方法である。
【0033】
(RNAポリメラーゼBサブユニットをコードするrpoB遺伝子)
結核菌のREP耐性は、RNAポリメラーゼBサブユニットをコードするrpoB遺伝子の変異により生じ得る。野生型の結核菌が保有するrpoB遺伝子の塩基配列は、配列表の配列番号57に記載の塩基配列またはその相補的な配列である。配列番号57に記載の塩基配列1位〜3位の塩基GTGはタンパク質合成の開始コドンに該当し、3532位〜3534位は終止コドンに該当する。すなわち、この1〜3534位はRNAポリメラーゼBサブユニットのコード配列であり、RNAポリメラーゼBサブユニットのアミノ酸配列は、配列表の配列番号58に示すとおりである。
【0034】
(rpoB遺伝子の変異)
本発明におけるREP耐性菌となり得るrpoB遺伝子の変異の位置は、配列表の配列番号57に記載の塩基配列のコード配列中(1位から3534位まで)に存在し得るrpoB遺伝子の変異が挙げられる。REP耐性を誘導するrpoB遺伝子の変異は既知のものが多数存在しており、これらは、例えば、非特許文献6に開示されている。これらの変異のうち、いずれか1つの変異があれば、REP耐性結核菌となり得る。
【0035】
rpoB遺伝子には、上記のようにサイレント変異も存在する。具体的には、配列表の配列番号57に記載の塩基配列またはその相補配列の1306位の塩基CからTへの変異、ならびに1338位の塩基GからAへの変異が挙げられる。これらのサイレント変異の位置は、いずれも上記のREP耐性に関連する変異、具体的には、配列表の配列番号57に記載の塩基配列またはその相補配列の1302位のCからAへの変異、1305位のGからTへの変異、1328位のAからCへの変異、ならびに1339〜1340位のTCからCAへの変異に非常に近い位置に存在する。
【0036】
(DNAジャイレースをコードするgyrA遺伝子)
結核菌のNQ耐性は、DNAジャイレースをコードするgyrA遺伝子の変異により生じ得る。野生型の結核菌が保有するgyrA遺伝子の塩基配列は、配列表の配列番号63に記載の塩基配列またはその相補的な配列である。配列番号63に記載の塩基配列1位〜2517位の塩基ATGはタンパク質合成の開始コドンに該当し、2515位〜2517位は終止コドンに該当する。すなわち、この1〜2517位はDNAジャイレースのコード配列であり、DNAジャイレースのアミノ酸配列は、配列表の配列番号64に示すとおりである。
【0037】
(gyrA遺伝子の変異)
本発明におけるNQ耐性菌となり得るgyrA遺伝子の変異の位置は、配列表の配列番号63に記載の塩基配列のコード配列中(1位から2517位まで)に存在し得るgyrA遺伝子の変異が挙げられる。NQ耐性を誘導するgyrA遺伝子の変異は既知のものが多数存在しており、これらは、例えば、非特許文献7に開示されている。これらの変異のうち、いずれか1つの変異があれば、NQ耐性結核菌となり得る。
【0038】
gyrA遺伝子には、SNPが存在する。具体的には、配列表の配列番号63に記載の塩基配列またはその相補配列の284位の塩基GからCへの変異であり、コードするアミノ酸はセリンからトレオニンに変異している。このSNPの位置は、上記のNQ耐性に関連する変異、具体的には、配列表の配列番号63に記載の塩基配列またはその相補配列の280位のGからAへの変異、ならびに281位のAからCまたはGへの変異に非常に近い位置に存在する。
【0039】
(プローブ)
本発明の結核菌における薬剤感受性を検出するための試験片に用いられるプローブとしては、薬剤感受性遺伝子のサイレント変異またはSNPを有する領域に結合し得るオリゴヌクレオチドプローブ(以下、「サイレント変異プローブ」または「SNPプローブ」という場合がある)、ならびに野生型の薬剤感受性遺伝子の任意の領域と結合し得るオリゴヌクレオチドプローブ(以下、「野生型プローブ」という場合がある)が挙げられる。各プローブの長さは、結合(ハイブリダイズ)させる時の温度にもよるが、一般的には10〜30ヌクレオチド長、好ましくは12〜26ヌクレオチド長である。
【0040】
本発明において、サイレント変異プローブまたはSNPプローブは、サイレント変異またはSNPのみを有する領域に結合(ハイブリダイズ)可能であり、このようなサイレント変異またはSNPのみを有する領域は、サイレント変異またはSNP以外の塩基の配列が野生型である。この領域が野生型である場合ならびに他の変異を含む場合には、サイレント変異プローブまたはSNPプローブはこの領域に結合できない。例えば、pncA遺伝子の場合、サイレント変異としては、例えば、配列表の配列番号1に記載の塩基配列またはその相補配列の275位の塩基CからTへの変異;および配列表の配列番号1に記載の塩基配列またはその相補配列の260位の塩基CからTへの変異が挙げられる。また、確実にサイレント変異を認識するために、サイレント変異プローブを構成するオリゴヌクレオチドの中程にサイレント変異の位置が存在するように設計することが好ましい。
【0041】
本発明において、野生型プローブは、野生型の薬剤感受性遺伝子の任意の領域と結合し得る。薬剤感受性を検出するためには、少なくとも薬剤耐性菌に関連する上記の変異をもれなく検出することが重要である。そこで、本発明において、好適には、野生型プローブは、薬剤感受性遺伝子のほぼ全体を網羅するように設計される。例えば、pncA遺伝子については、配列表の配列番号1に記載の塩基配列またはこれに相補的な塩基配列のコード配列のほぼ全体を網羅するように、例えば、−20位から560位までの塩基、つまり合計580塩基に結合(ハイブリダイズ)可能なように設計される。
【0042】
例えば、pncA遺伝子の上流側または下流側から順にプローブを設計し、隣接するプローブと約4〜7塩基重なるように配置すれば、その配置する領域の境界位置に変異が存在したとしても、どちらかのプローブが結合することができるので、好ましい。したがって、例えば、−20位から560位までの合計580塩基を検出するための全プローブ数は、全てのプローブの長さを30に統一し、各プローブが隣接するプローブと4塩基ずつ重なると想定すれば、少なくとも22個以上であり、好ましくは30個以上、より好ましくは35個以上、さらに好ましくは40個以上である。
【0043】
本発明においては、野生型プローブとして、上記の各サイレント変異プローブまたはSNPプローブの結合可能領域とほぼ同じ領域に結合し得るように設計された野生型プローブ(以下、「サイレント対応野生型プローブ」または「SNP対応野生型プローブ」という場合がある)が必要である。pncA遺伝子を例に挙げると、例えば、配列表の配列番号1に記載の塩基配列またはその相補配列の275位または260位の変異を含む領域に結合可能なサイレント変異プローブに対して、ほぼ同じ領域に結合可能な野生型プローブが設計される。ほぼ同じ領域とは、全く同じ領域であっても、1〜2塩基長い/短い範囲の領域であってもよい。そのため、これらの領域においては、サイレント変異が存在する場合ならびに野生型の(変異がない)場合のいずれにおいても、少なくとも一方のプローブが結合し得、そしてサイレント変異以外の変異が存在する場合には両プローブとも結合しない。
【0044】
上記の各プローブは、標準的なプログラムおよびプライマー解析ソフトウェア、例えばPrimer Express(Perkin Elmer社)を用いることにより得ることができ、自動化オリゴヌクレオチドシンセサイザーなどの標準的な方法を用いて合成することができる。
【0045】
さらに、各プローブは、以下で詳述するように、試験片に固定するために5’または3’末端のいずれか一方が修飾されていてもよい。
【0046】
(試験片)
本発明の、結核菌における薬剤感受性を検出するための試験片は、少なくとも2つのプローブが固定されている。固定されているプローブのうちの少なくとも1つのプローブは、上記サイレント変異プローブまたはSNPプローブであり、そして他のプローブは、試験片のそれぞれ異なる位置に固定された野生型プローブであり、サイレント対応野生型プローブまたはSNP対応野生型プローブを含む。
【0047】
上記のように、好適には、試験片に固定された野生型プローブは、薬剤感受性遺伝子のコード配列またはその相補配列のほぼ全体を網羅するように設計されており、より好適には、プローブは、結合する塩基配列の順に上流側または下流側から一定の間隔で配置されている。さらに、発色を確認するためのコントロールまたはマーカーが固定されていてもよい。
【0048】
さらに好適には、サイレント変異プローブとサイレント対応野生型プローブとは、あるいはSNPプローブとSNP対応野生型プローブとは、試験片の同じ位置に固定される。サイレント変異プローブとサイレント対応野生型プローブとは、あるいはSNPプローブとSNP対応野生型プローブとは、それぞれを別々に同じ位置に重ねて固定してもよく(順序は問わない)、あるいはこれらのプローブを混合して固定してもよい。この位置では、これらのプローブが結合する領域に、サイレント変異またはSNP以外の変異が存在する場合には薬剤感受性遺伝子が結合せず、変異がないまたはサイレント変異またはSNPのみが存在する場合には薬剤感受性遺伝子が結合する。したがって、薬剤耐性の場合は結合せず、薬剤感受性の場合は結合する。
【0049】
本発明の試験片は、上記プローブを担体表面上に物理的または化学的に固定して作成することができる。担体としては、ビニル系ポリマー、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ニトロセルロースなどの有機材料;ガラス、シリカなどの無機材料;金、銀などの金属材料などが挙げられ、特に限定されない。成形加工性が容易である点で、有機材料が好ましく、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル類がより好ましい。これらの担体は、発色法での検知において、その発色を視認しやすくするために白色であることが好ましい。
【0050】
上記プローブは、種類ごとに一定間隔で上記担体に配置される。これらの担体表面にプローブを物理的に固定化する方法としては、公知の種々の方法が用いられる。例えば、担体表面をポリリジンなどのポリカチオン性の高分子で被覆する方法があり、この方法によれば、ポリアニオンであるプローブとの静電相互作用により、固定化の効率を上げることができる。プローブの末端に無関係な塩基配列(ポリチミン鎖など)を付加し、固定されるプローブ自体の分子量を増大させることによって、固定化の効率を上げる方法もある。例えば、ポリチミン付加オリゴヌクレオチドプローブを含む溶液をディスペンサからニトロセルロース膜上に吐出して、紫外線を照射することによって、比較的容易に種々のプローブを固定化することができる。具体的には、各プローブをそれぞれ24ゲージの針を備えたディスペンサに入れ、0.5〜1.0μL/分の量を吐出させながら2.5〜8.5mm/秒の塗布速度で、それぞれ一定の間隔をあけてニトロセルロース膜上に塗布すると、各プローブが、一定の間隔で並んだ約1〜2mmの幅のストライプとして塗布される。このプローブのストライプが塗布された担体に紫外線を照射することによって、プローブが担体上に固定される。さらに、必要に応じて、これらのストライプを横断するように細く切断すると、各プローブが順に配置された多数の試験片を一挙に得ることができる。
【0051】
担体表面が金などの金属材料である場合には、2−アミノエタンチオールなどのアミノ基を有するチオールもしくはジスルフィド化合物などで担体表面を処理することにより、ポリアニオンであるプローブとの静電相互作用を介して固定化の効率がよくなることも知られている。
【0052】
プローブに官能基を導入して化学的に固定化する方法としては、公知の種々の方法が用いられる。例えば、担体の材料がガラス、シリコンなどの無機材料の場合には、プローブの末端をトリメトキシシラン、トリエトキシシランなどのシランカップリング反応が可能な官能基で修飾する方法があり、修飾プローブを含む溶液に担体を24〜48時間浸漬し、取り出した後、洗浄することにより試験片が得られる。あるいは、ガラス、シリコンなどの無機材料担体をアミノエトキシシランなどのアミノ基を有するシランカップリング剤で処理することにより、担体の表面をアミノ化し、次いで、末端にカルボン酸を導入したプローブとアミノカップリング反応させることにより、プローブを固定化する方法もある。さらに、担体の材料が金、銀などの金属材料の場合には、プローブの末端をチオール基、ジスルフィド基などの金属と結合可能な官能基で修飾し、この修飾プローブを含む溶液に担体を24〜48時間浸漬し、取り出した後、洗浄することにより固定化することができる。
【0053】
また、合成されたプローブを固定するのでなく、リソグラフィー技術を利用して、所望の配列を有するプローブを担体表面上で直接合成する方法も知られている。
【0054】
(試験片を用いた薬剤感受性検出方法)
1.検体
本発明において、「検体」は、通常、結核菌検査に必要な検体であればよい。例えば、喀痰、咽頭ぬぐい液、胃液、気管支肺胞洗浄液、気管内吸引物、喉からの拭取物および/または組織生検物などの体液、ならびにこれらから培養して得られた結核菌自体が挙げられる。
【0055】
2.検体の前処理(DNAの抽出)
上記検体からのDNAの抽出は、公知の方法で行うことができる。例えば、フェノール抽出法、グアニジンチオシナネート抽出法、バナジルリボヌクレオシド複合抽出法などが挙げられる。検体を前処理したものを本明細書において「試料」という。
【0056】
3.核酸の増幅
PCR法で核酸を増幅する場合、例えば、以下の工程で行われる:(1)2本鎖ゲノムDNAを約92〜95℃、約30秒〜1分間の反応条件で熱処理することにより1本鎖にする変性工程;(2)該1本鎖DNAのそれぞれに約50〜65℃を約20秒〜1分間の反応条件で、少なくとも2種類の増幅プライマーを結合させることによりPCRの反応開始点となる2本鎖部分を作製するアニール工程;(3)約70〜75℃を約20秒〜5分間の反応条件でDNAポリメラーゼを用いて反応させる鎖伸張工程;ならびに(1)〜(3)の工程を通常の方法により20〜40回繰り返す工程。例えば、pncA遺伝子をPCRで増幅するために用いられるプライマー対として、全ての変異部位を含むpncA遺伝子を増幅し得るように、全ての変異部位を含む配列部位よりも上流の配列と、多型部位よりも下流の配列と同一または相補的な塩基配列を有するオリゴヌクレオチドが挙げられる。好ましいプライマー対の例としては、配列表の配列番号53および54のオリゴヌクレオチドまたはその相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0057】
また、測定の感度を向上させるために、例えば、検体から直接DNAを増幅させる場合、上記PCR反応の前にさらにNestedPCR法(特公平6−81600号公報)などで核酸を増幅してもよい。NestedPCR法におけるプライマーは、上記PCR反応において用いたプライマーよりも外側の配列を選択することができる。例えば、pncA遺伝子の増幅の場合には、配列表の配列番号55および56のオリゴヌクレオチドまたはその相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0058】
上記のプローブおよびプライマーの配列は、標準的なプログラムおよびプライマー解析ソフトウェア、例えばPrimer Express(Perkin Elmer社製)を用いることにより得ることができ、自動化オリゴヌクレオチドシンセサイザーなどの標準的な方法を用いて合成することができる。
【0059】
4.結核菌の薬剤感受性検出方法
本発明において、結核菌の薬剤感受性は、PCR−SSOP法によって検出することができる。より簡便には、固定されたプローブの数と、PCR−SSOP法において検出されたスポットの数を比較することにより検出することもできる。例えば、上記のプローブが固定された試験片を使用する場合、PCR−SSOP法におけるハイブリダイズは、非特異吸着反応が起きにくい点で、約60〜65℃の温度で行うことが好ましい。検出されたスポットの数が、固定されたプローブの数と同数であれば、結核菌は変異を有さない、すなわち薬剤感受性であり、検出スポット数が固定プローブ数より少なければ結核菌は薬剤耐性であると判断することができる。
【0060】
PCR−SSOP法において検出されたスポットの数を容易にカウントするためには、放射性同位体、蛍光物質、化学発光物質などの標識物質を修飾したプライマー対を用いて遺伝子を増幅することが好ましい。上記標識物質を用いた検出方法のうち、比較的安価で容易に実施できる点で、ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)/5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルホスファターゼp−トルイジニル塩(BCIP)発色法が好ましい。具体的には、以下のとおりに行われる。まず、上記プライマーの3’または5’末端にビオチンを修飾したプライマー対を用いて、末端にビオチンを有する遺伝子を増幅する。次いで、増幅した遺伝子と試験片に固定されたプローブとのハイブリダイゼーションによってプローブに結合させ、さらにアルカリホスファターゼ標識ストレプトアビジンに接触させて、プローブと結合している遺伝子の末端に存在するビオチンに結合させる。さらに、NBT/BCIPを加えてアルカリホスファターゼと反応させることにより、プローブに結合しているアルカリホスファターゼが存在する位置で発色させる。この発色は視認可能である。
【0061】
(試験片を含む検出用キット)
本発明の検出用キットは、上記の試験片を含む。好適には、結核菌の薬剤感受性を検出するために適切な任意の試薬類を含み得る。例えば、上記のDNAの抽出のための試薬、遺伝子増幅用試薬、プローブへの遺伝子の結合を検出するための試薬などが挙げられる。具体的なキットとして、上記のPCR−SSOP法を実施するためのキットを例示する。
【0062】
本発明のキットに含まれ得るDNAの抽出のための試薬は、上記の任意の手法で用いられる試薬である。
【0063】
薬剤感受性遺伝子をPCRで増幅するためのプライマー対も、本発明のキットに含まれ得る。プライマー対は、全ての変異部位を含む薬剤感受性遺伝子を増幅し得るように、全ての変異部位を含む配列部位よりも上流の配列と、多型部位よりも下流の配列と同一または相補的な塩基配列を有するオリゴヌクレオチドである。例えば、PZA感受性の検出には、好ましいプライマー対の例としては、配列表の配列番号53および54のオリゴヌクレオチドまたはその相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが挙げられる。測定の感度を向上させるためのNestedPCR法におけるプライマー対はとしては、例えば、上記の配列表の配列番号55および56のオリゴヌクレオチドまたはその相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0064】
さらに、上記プライマー対は、PCR−SSOP法において検出を容易にするために、放射性同位体、蛍光物質、化学発光物質などで修飾されていることが好ましい。
【0065】
また、遺伝子の増幅は、PCR法以外にも、LAMP法、ICAN法などの公知の技術が挙げられる。本発明においては、これらのいずれかの手法を用いてもよく、本発明にはこれらの手法で用いられる任意の試薬を含むキットも含まれる。
【0066】
さらに、本発明のキットは、検出のための試薬類を含み得る。例えば、NBT/BCIP発色法を採用する場合は、ストレプトアビジン修飾アルカリホスファターゼ、NBT、およびBCIPが挙げられる。
【実施例】
【0067】
(実施例1:ピラジナミド感受性試験)
1.試験用溶液の調製
ミドルブック液体培地(ベクトン・ディッキンソン社)に、最終濃度100mg/Lのピラジナミドおよび蛍光発色基質であるトリス−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン塩化ルテニウム五水和物を溶解して試験用培地を調製した。
【0068】
2.ピラジナミド感受性試験
結核患者255名の喀痰から精製培養した結核菌を上記試験用溶液に添加し、37℃で4日間から21日間培養した。PZAが添加されていないチューブで発育が観察され、PZAが添加されたチューブで発育が認められない場合を感受性とした。発育の確認は発育とともに増加する蛍光発色の有無により行った。その結果、227検体がPZAに感受性を有することが明らかとなった。
【0069】
(実施例2:ピラジナミド感受性結核菌の遺伝子解析)
1.pncA遺伝子の抽出
実施例1でピラジナミド感受性結核菌と判定された227検体からフェノール抽出法によりゲノムDNAを抽出精製した。
【0070】
2.pncA遺伝子の増幅
次に、以下に示すプライマーを用いてpncA遺伝子を増幅した。PCRの反応条件は、変性過程を94℃、30秒、アニール過程を55℃、20秒、鎖伸長過程を72℃、20秒とし、この工程を30サイクルにより、増幅を行った。
【0071】
プライマー1 ggcagtttgc ctaccgacgc (配列番号53)
プライマー2 ccaacagttc atcccggttc g (配列番号54)
【0072】
3.ピラジナミド感受性結核菌の遺伝子解析
増幅された227例のpncA遺伝子の塩基配列をシークエンサーで調べた。その結果、新たな変異:Ser65Ser[tcC→tcT](図1のプローブ17上の白抜き矢印)が227例中6例において発見された。この変異は、塩基が置換されているにもかかわらずコードされるアミノ酸が変化しないサイレント変異であった。
【0073】
(実施例3:試験片の作製)
1.野生型プローブの設計
特許文献3および4に記載の塩基の変異(図1の細い矢印の位置)ならびに新たに見出された変異Pro62Leu[cCg→cTg](図1の太い矢印の位置)のいずれかを検出し得るプローブとして、以下に示すプローブ1〜47(それぞれ、配列番号3〜18、21、および23〜52に対応)を構築した。図1に、これらのプローブの位置関係を示す。
【0074】
プローブ1 cgcatacgtc caccatacgt tcgg(配列番号3)
プローブ2 atgatcaacg cccgcatac(配列番号4)
プローブ3 cacgtcgacg atgatcaacg(配列番号5)
プローブ4 gtcgttctgc acgtcgac(配列番号6)
プローブ5 ccaccctcgc agaagtcgtt(配列番号7)
プローブ6 cgagccaccc tcgcagaag(配列番号8)
プローブ7 gttaccgcca gcgagccacc(配列番号9)
プローブ8 agcgcggcgc caccggttac cg(配列番号10)
プローブ9 gtagtcgctg atggcgcggg ccagcgcg(配列番号11)
プローブ10 gccaggtagt cgctgatggc gc(配列番号12)
プローブ11 tggtagtccg ccgcttcggc caggta(配列番号13)
プローブ12 ggttgccacg acgtgatggt ag(配列番号14)
プローブ13 gatgtggaag tccttggttg c(配列番号15)
プローブ14 cgggtcgatg tggaagtc(配列番号16)
プローブ15 tggtcacccg ggtcgatgt(配列番号17)
プローブ16 cggtgtgccg gagaagtggt ca(配列番号18)
プローブ17 cgacgaggaa tagtccggtg t(配列番号21)
プローブ18 tgcggtggcc acgacga(配列番号23)
プローブ19 cgctgacgca atgcggtg(配列番号24)
プローブ20 cgccgggagt accgctg(配列番号25)
プローブ21 aagtccgcgc cgggagta(配列番号26)
プローブ22 gtccagactg ggatggaagt cc(配列番号27)
プローブ23 cctcgattgc cgacgtgtcc ag(配列番号28)
プローブ24 ccttgtagaa caccgcctcg a(配列番号29)
プローブ25 tccggtgtag gcacccttgt ag(配列番号30)
プローブ26 aagccgctgt acgctccggt(配列番号31)
プローブ27 ctcgtcgact ccttcgaagc cg(配列番号32)
プローブ28 tggcgtgccg ttctcgtcga(配列番号33)
プローブ29 gcagccaatt cagcagtggc gt(配列番号34)
プローブ30 cgccgcgttg ccgcagccaa(配列番号35)
プローブ31 atcgacctca tcgacgccgc(配列番号36)
プローブ32 tggcaatacc gaccacatcg ac(配列番号37)
プローブ33 cacacaatga tcggtggcaa ta(配列番号38)
プローブ34 ggccgtctgg cgcacacaat(配列番号39)
プローブ35 cgtaccgcgt cctcggccgt(配列番号40)
プローブ36 aagccattgc gtaccgcgtc(配列番号41)
プローブ37 ccagcaccct ggtggccaag ccat(配列番号42)
プローブ38 gtcaggtcca ccagcaccct gg(配列番号43)
プローブ39 cacccgctgt caggtccacc ag(配列番号44)
プローブ40 tcggccgaca cacccgct(配列番号45)
プローブ41 ggtggtatcg gccgacac(配列番号46)
プローブ42 cggcgacggt ggtatcgg(配列番号47)
プローブ43 ccagcgcggc gacggt(配列番号48)
プローブ44 cgcatctcct ccagcgcggc(配列番号49)
プローブ45 cggtgcgcat ctcctccag(配列番号50)
プローブ46 actcgacgct ggcggtgc(配列番号51)
プローブ47 gagctgcaaa ccaactcgac(配列番号52)
【0075】
2.サイレント変異プローブの設計
上記実施例2の解析により見出されたサイレント変異は、上記プローブ17が結合し得る領域に存在する。したがって、以下のサイレント変異プローブ(プローブ17S:配列番号22)を構築した(図1を参照のこと)。
【0076】
プローブ17S acgacgaaga atagtccggt gt(配列番号22)
【0077】
3.プローブの固定化
上記プローブ1〜47(配列番号3〜18、21、および23〜52に記載の塩基配列)ならびにプローブ17S(配列番号22に記載の塩基配列)のそれぞれの5’末端にターミナルトランスフェラーゼ(Promega社)を用いて、ポリチミンの付加を行った。具体的には、ターミナルトランスフェラーゼ(30unit/μL)を0.4μL、チミジン三リン酸(10pmol/μL)を2μL、オリゴヌクレオチドプローブ(50mM)を2μL、製品添付の反応緩衝液を2μL、および精製水3.6μLを混合して反応溶液を調製し、37℃で4時間反応させた後、10×SSC緩衝液90μLを加えることにより、ポリチミン付加されたオリゴヌクレオチドプローブ1pmol/μLを得た。
【0078】
次いで、ポリチミン付加された野生型プローブ(プローブ1〜47)をそれぞれ24ゲージの針を備えたディスペンサに入れ、0.7μL/分の量を吐出させながら2.5mm/秒の塗布速度で、2mmの幅のストライプになるようにニトロセルロース膜(縦75mm×横150mm:Whatman社)上に2mm間隔で縦方向に塗布した。さらに、サイレント変異プローブ(プローブ17S)もディスペンサに入れ、プローブ17の塗布位置に重ねて同様に塗布した。その後、これらのニトロセルロース膜に312nmの紫外線を2分間照射して、プローブを固定化した。次いで、ニトロセルロース膜を、全てのストライプを含むように切断して、5mm×150mmの試験片(混合型試験片という)を作成した。
【0079】
(比較例1:従来型試験片の作製)
サイレント変異プローブ(プローブ17S)を塗布しなかったこと以外は、上記実施例3の3.と同様に操作して、野生型プローブ(プローブ1〜47)のみを固定した試験片(従来型試験片という)を作成した。
【0080】
(実施例4:試験片を用いたpncA遺伝子のPZA感受性の検出)
1.pncA遺伝子の増幅
本実施例では、結核菌自体を検体とし、pncA遺伝子のPZA感受性の検出を行った。用いた検体の結核菌は、野生型、S65Sサイレント変異型、およびP62L変異型であった。PZA耐性菌を検出するために、検体中に存在し得るPZase関連遺伝子であるpncA遺伝子を増幅する必要がある。そこで、まず、NestedPCR法によって、検体からpncA遺伝子を増幅した。Nestedプライマーとして、以下のものを使用した(図1を参照のこと)。
【0081】
Nestedプライマー1 cagatatagg gccatgacgc c(配列番号55)
Nestedプライマー2 cttgcggcga gcgctc(配列番号56)
【0082】
NestedPCRの反応条件は、変性工程を90℃、60秒、アニール工程を55℃、60秒、鎖伸長工程を27℃、60秒とし、これらの工程を30サイクル行って、pncA遺伝子のより上流部分からより下流部分までのやや広い範囲の遺伝子を増幅した。
【0083】
次いで、上記NestedPCR法で増幅した遺伝子をテンプレートとして、以下のプライマーを用いて(図1を参照のこと)、PCR法でさらにpncA遺伝子を増幅し、DNA溶液を得た。配列表の配列番号53に記載の塩基配列からなるプライマー1、配列番号54に記載の塩基配列からなりかつ5’末端にビオチンを結合させたプライマー2、およびTaq DNAポリメラーゼ(ロシュ・ダイアグノスティクス社)を用いたPCR法により、pncA遺伝子の増幅を行った。各プライマーの塩基配列は以下に示すとおりである。
【0084】
プライマー1 ggcagtttgc ctaccgacgc(配列番号53)
プライマー2 ccaacagttc atcccggttc g(配列番号54)
【0085】
PCRの反応条件は、変性工程を94℃、30秒、アニール工程を55℃、20秒、鎖伸長工程を72℃、20秒とし、これらの工程を30サイクル行って、pncA遺伝子を増幅した。これにより増幅されたDNAには、末端にビオチンが結合している。
【0086】
2.プローブを用いた検出
増幅したDNA溶液10μLに、水酸化ナトリウム(5M)、エチレンジアミン四酢酸(0.05M)の溶液(10μL)を加えてよく攪拌し、5分間放置して、増幅したDNAを1本鎖に変性した。この試料溶液中に、ドデシル硫酸ナトリウム(0.01w/v%)、塩化ナトリウム(1.8w/v%)、クエン酸ナトリウム(1.0w/v%)の溶液(1mL)、および上記実施例3で作成した混合型試験片を加え、反応温度62℃の下で30分間振とうして反応させた。その後、アルカリホスファターゼ標識ストレプトアビジンを加え、試験片上の各プローブと結合している遺伝子の末端に存在するビオチンに結合させた。さらに、ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)および5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルホスファターゼp−トルイジニル塩(BCIP)を加えて、試験片上の各プローブに結合したアルカリホスファターゼが存在する位置で発色させた。結果を図2に示す。
【0087】
混合型試験片においては、野生型結核菌およびS65Sサイレント変異型結核菌の両方とも、全てのプローブ位置で発色が確認され、PZA感受性であると判定され、そしてP62L変異型結核菌は、プローブ17の位置(図2において黒矢尻で示す位置)での発色が見られず、PZA耐性と判定された。このように、混合型試験片を用いることにより、S65Sサイレント変異型結核菌について、PZA感受性であるという正しい判定を行うことができた。
【0088】
(比較例2:従来型試験片を用いたpncA遺伝子のPZA感受性の検出)
混合型試験片の代わりに上記比較例1で作成した従来型試験片を用いたこと以外は、上記実施例4と同様に操作して、各結核菌についてのPZA感受性の検出を行った。結果を図2にまとめて示す。
【0089】
従来型試験片においては、野生型結核菌のみが全てのプローブ位置で発色が確認され、PZA感受性であると判定された。S65Sサイレント変異型結核菌およびP62L変異型結核菌はともに、プローブ17の位置(図2において黒矢尻で示す位置)での発色が見られず、PZA耐性との判定となった。このように、従来型試験片によれば、PZA感受性であるS65Sサイレント変異型結核菌について、誤った判定となった。
【0090】
(実施例5:ピラジナミド感受性結核菌の遺伝子解析およびプローブの設計)
上記実施例2と同様に、増幅された227例のpncA遺伝子の塩基配列をシークエンサーでさらに調べた。その結果、さらに新たな変異:Gly60Gly[ggC→ggT](図1のプローブ16上の白抜き矢印の位置)が227例中2例において発見された。この変異も、サイレント変異であった。
【0091】
上記の解析により見出された新たなサイレント変異は、上記プローブ16が結合し得る領域に存在する。したがって、以下のサイレント変異プローブ(プローブ16S:配列番号20)を構築した(図1を参照のこと)。さらに、プローブ17Sと併用することを考慮して、これらの領域における検出をより確実にする目的で、野生型プローブ16よりも2塩基短い野生型プローブ16’(配列番号19)を新たに設計した(図1を参照のこと)。
【0092】
プローブ16S ggtgtaccgg agaagtggtc a(配列番号20)
プローブ16’ gtgtgccgga gaagtggtca(配列番号19)
【0093】
(実施例16:リファンピシン感受性結核菌用のプローブの設計)
rpoBで見出されているサイレント変異は、Lys436Lys[Ctg→Ttg 1306]およびLys446Lys[ctG→ctA 1338]である(非特許文献6)。そこで、それぞれのサイレント変異に対して、以下の野生型プローブR1とサイレント変異プローブR1S、ならびに野生型プローブR2とサイレント変異プローブR2Sを設計した。
Lys436Lys[Ctg→Ttg 1306]用:
プローブR1 cagccagCtg agccaattca tg(配列番号59)
プローブR1S cagccagTtg agccaattca tg(配列番号60)
Lys446Lys[ctG→ctA 1338]用:
プローブR2 aacccgctGt cggggttgac c(配列番号61)
プローブR2S aacccgctAt cggggttgac c(配列番号62)
【0094】
(実施例17:ニューキノロン感受性結核菌用のプローブの設計)
gyrAで見出されているSNPは、Ser95Thr[aGc→aCc 284]である(非特許文献7)。そこで、このSNPに対して、以下の野生型プローブN1とSNPプローブN1Sを設計した。
【0095】
プローブN1 cgatctacga caGcctggtg c(配列番号65)
プローブN1S cgatctacga caCcctggtg c(配列番号66)
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の結核菌における薬剤感受性を検出するための試験片を用いると、サイレント変異またはSNPのみを有する薬剤感受性菌を薬剤耐性であると誤検出することなく、より確実に薬剤感受性を検出することができる。特に、サイレント変異またはSNPのみを有する薬剤感受性結核菌を保有する患者は、従来は薬剤耐性であると誤診されていたため、直ちに対象薬剤での治療が選択されなかったが、このような患者に対しても、対象薬剤で治療可能であることが容易に診断され得る。その結果、このような患者に、適切な治療を提供することができる。したがって、不要な薬剤投与や検査を防ぐことができ、患者の負担が軽減化され、さらに無駄な医療費を削減することができる。
【図1−1】

【図1−2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
結核菌における薬剤感受性の検出用キットであって:
結核菌における薬剤感受性を検出するための試験片;
発色用試薬;および
薬剤感受性遺伝子増幅用プライマー対;
を含み、
該試験片において、少なくとも2つのプローブが固定されており、
該プローブのうちの少なくとも1つのプローブが、結核菌の薬剤感受性遺伝子のサイレント変異を有する塩基配列の領域とハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドからなり、そして該サイレント変異を有する塩基配列の領域において、該サイレント変異以外の塩基の配列が野生型であり、
該プローブのうちの他のプローブが、結核菌の薬剤感受性遺伝子の野生型塩基配列からなる任意の領域とハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドからなり、そして該他のプローブが、それぞれ該試験片の異なる位置に固定され、そして
該サイレント変異を有する塩基配列の領域が、該野生型塩基配列の任意の領域のうちの1つとほぼ同じ領域であり、
該サイレント変異を有する塩基配列の領域とハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドおよび該領域とほぼ同じ領域の野生型塩基配列の領域とハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドが、該試験片の同じ位置に固定され、
該位置は、野生型またはサイレント変異を有する結核菌の遺伝子を薬剤感受性遺伝子増幅用プライマー対で増幅し、発色用試薬を用いて試験片で検出した場合は発色し、
サイレント変異を有する塩基配列の領域に結核菌の薬剤感受性の変異を有する結核菌の遺伝子を薬剤感受性遺伝子増幅用プライマー対で増幅し、発色用試薬を用いて試験片で検出した場合は発色しない、
キット。
【請求項2】
結核菌における薬剤感受性の検出用キットであって:
結核菌における薬剤感受性を検出するための試験片;
発色用試薬;および
薬剤感受性遺伝子増幅用プライマー対;
を含み、
該試験片において、少なくとも2つのプローブが固定されており、
該プローブのうちの少なくとも1つのプローブが、結核菌の薬剤感受性遺伝子のサイレント変異を有する塩基配列の領域とハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドからなり、そして該サイレント変異を有する塩基配列の領域において、該サイレント変異以外の塩基の配列が野生型であり、
該プローブのうちの他のプローブが、結核菌の薬剤感受性遺伝子の野生型塩基配列からなる任意の領域とハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドからなり、そして該他のプローブが、それぞれ該試験片の異なる位置に固定され、そして
該サイレント変異を有する塩基配列の領域が、該野生型塩基配列の任意の領域のうちの1つとほぼ同じ領域であり、
該サイレント変異を有する塩基配列の領域とハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドおよび該領域とほぼ同じ領域の野生型塩基配列の領域とハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドが、該試験片の同じ位置に固定され、
該試験片に、該プライマー対によって増幅された野生型またはサイレント変異を有する結核菌の遺伝子あるいは該プライマー対によって増幅された該サイレント変異を有する塩基配列の領域に結核菌の薬剤感受性の変異を有する結核菌の遺伝子のうち、該プライマー対によって増幅された野生型またはサイレント変異を有する結核菌の遺伝子のみが結合する、
キット。
【請求項3】
前記野生型塩基配列の任意の領域とハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドが複数あり、該オリゴヌクレオチドが、前記薬剤感受性遺伝子の塩基配列のそれぞれ異なる領域とハイブリダイズし、そして該異なる領域によって該薬剤感受性遺伝子のコード配列またはその相補配列のほぼ全体が網羅される、請求項1または2に記載のキット。

【図2】
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【公開番号】特開2013−59354(P2013−59354A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−740(P2013−740)
【出願日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【分割の表示】特願2007−216770(P2007−216770)の分割
【原出願日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(000135036)ニプロ株式会社 (583)
【Fターム(参考)】