説明

結腸癌の予防及び治療用のフルクタン含有組成物

【課題】非ウシ哺乳類、特にヒトにおける結腸癌の予防及び/又は治療用組成物の製造のための、フルクタンの使用が提供される。
【解決手段】非ウシ哺乳類、特にヒトにおける結腸癌の予防及び治療方法であって、前記哺乳類にフルクタンを有効量含む組成物を投与することを含む方法。前記組成物は、医薬だけでなく機能性食品でもよい。好ましい形態において、フルクタンはイヌリンであり、より好ましくは少なくとも20の平均重合度を有するイヌリンである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の属する技術分野
本発明は一定のフルクタン、好ましくは一定のイヌリンの、非ウシ哺乳類の結腸癌の予防及び/又は治療用組成物の製造のための使用に関する。
【0002】
本発明はまた、一定のフルクタン、好ましくは一定のイヌリンを含有する組成物の、非ウシ哺乳類の結腸癌の予防及び/又は治療のための使用並びに非ウシ哺乳類の結腸癌の予防及び/又は治療方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
哺乳類の癌は、既に古代から知られていた疾患である。今日では、癌、特に肺癌、乳癌及び結腸癌は、工業化された世界においては、非ウシ哺乳類の、特にヒトの主な死因の一つである。
【0004】
癌疾病は、いくつかの段階を経て進行することが知られているが、当該段階には、悪性細胞の形成を引き起こす変異ゲノム及び機能を有する細胞の発生;悪性細胞の抑制されない局所的増殖及び近接の正常な体構造への侵入;及び転移が含まれる。転移の間、悪性細胞は、血流及び/又はリンパ液を介して体腔内及び/又は全身に広がり、様々な正常な体構造ヘの侵入を伴う。正常な細胞への侵入は、それらの細胞の機能不全及び/又は破壊を引き起こし、最終的には冒された哺乳類を死に至らしめる。
【0005】
癌発生及び癌を引き起こす様々な要因が既に同定されている、それらの要因には、一定のウイルス感染、イオン化放射線への曝露、一定の鉱物繊維への曝露、化学変異原ヘの曝露、及び不適当な常食が含まれる。
【0006】
それらの結果として、様々な予防手段が紹介され、それらは一定の癌の発生の予防又は減少に成功することがわかった。
【0007】
さらに、癌の治療用の様々な外科的方法及び化学療法が開発された。これらの方法の有効性は、癌のタイプ、疾病の段階及び冒された哺乳類の特質により、高くも低くもなることが示された。
【0008】
現在では、様々な癌の発生及び進化の研究のための多くの信頼できる動物モデルを入手することができ、それにより、雑多な化学薬品及び食物製品の予防及び治療特性の評価が可能となっている。
【0009】
疫学と動物モデルでの研究との組み合わせにより、食物繊維が、哺乳類の一定の癌の予防及び抑制における重要な要因であると同定するに至った。
【0010】
食物繊維は、広く植物細胞の成分として定義されていて、ヒトの栄養作用の酵素による加水分解に対し耐性がある。食物繊維には、セルロース、へミセルロース、ポリサッカライド、ペクチン、ゴム、ワックス及びリグニンが包含される。この定義によると、可溶性で食用に適したポリサッカライドであるフルクタンは食物繊維である。フルクタンは、主にフルクトース単位からなる炭水化物の鎖からなり、その中の結合の大部分はフルクトシル−フルクトース結合である。フルクタンは、一般に多分散系の炭水化物として生じる。それらは、植物中で生じるが、微生物活動由来のものもあり、また酵素的に合成することもできる。これら全てのフルクタンは、典型的な食物繊維の特性を呈する;これらは、本発明に包含され、本明細書中で、フルクタン(複数の場合もある)という。
【0011】
フルクタンは、レバン及びイヌリン炭水化物を含む公知の化合物である。レバンは一般的にフルクトース単位の鎖からなるD−フルクタンであって、本質的にβ(2−6)結合により互いに結合している。イヌリンもまた一般的にフルクトース単位の鎖からなるD−フルクタンであるが、本質的に、β(2−1)結合により互いに結合している。ほとんどのイヌリン鎖は、一つのグルコース単位で終わっている。
【0012】
レバンは直鎖炭水化物として生じ得るが、ほとんど枝分かれフルクトース鎖からなり、一方イヌリンは一般的に直鎖炭水化物からなるが、多かれ少なかれ枝分かれしたフルクトース単位の鎖としても生じ得る。本発明に適しているレバンとイヌリンには、直鎖及び枝分かれ鎖炭水化物だけでなく、上記直鎖及び枝分かれ鎖の混合物も含まれる。
【0013】
イヌリンは、多くの植物及び作物において生じ、チコリー、ダリア塊茎及びイスラエル アーチチョーク中に約10から20%の濃度で存在し得る。イヌリンはこれらの植物から単離され、精製され(purified)、不純物及び望ましくない炭水化物画分を取り除くため、公知の技術に従って、任意に精製される(refined)。
【0014】
イヌリンは一般式GF及びFによって表され、そのうち、Gはグルコース単位を表し、Fはフルクトース単位を表し、nは末端グルコース単位に結合したフルクトース単位数を表し、mは炭水化物鎖中の互いに結合したフルクトース単位数を表す。
【0015】
フルクタン1分子中のサッカライド単位(フルクトース及びグルコース単位)の数は、即ち、上記式中のn+1及びmの値は、重合度と言われ、(DP)として表される。しばしば、平均重合度


というパラメーターもまた用いられ、それは、サッカライド単位の総数を、特定の(ポリ)サッカライド組成物中に存在するサッカライド分子の総数で割った値に相当する。
【0016】
植物由来のイヌリンは、重合度(DP)が2から約100の範囲にある、多分散系のフルクトース鎖組成物であり、一方微生物由来のイヌリンは、通常それより高い重合度を有す。
【0017】
一般式GF及びFのイヌリンを含むフルクタンであって、通常(DP)<10と定められている重合度が低いものは、通常、オリゴフルクトースと名付けられ、本明細書中においてもそれに従う。
【0018】
イヌリンは、商業的に入手できる。例えば、チコリー由来のイヌリンは、オラフティ(ORAFTI)(Tienen、ベルギー)からラフティライン(RAFTILINE)(登録商標)として、様々なグレードのものが入手できる。典型的なラフティライン(登録商標)のグレードは、例えば、ST、ST−Gel及びGR(平均重合度


が10であり、合計で約8重量%のグルコース、フルクトース及びスクロースを含有する)、LS(これもまた平均重合度10を有するが、合計で約1重量%以下のグルコース、フルクトース及びスクロースを含有する)及びHP(高性能イヌリン)及びHP−Gel(23以上の平均重合度(通常25)を有し、実質的にグルコース、フルクトース及びスクロースを含有しない)である。
【0019】
オリゴフルクトースは通常、イヌリンの部分的、酸性、又は酵素的加水分解により得られ、また、当該技術分野において公知の方法により、スクロースからの酵素的合成によっても得られる。オリゴフルクトースは商業的に入手できる。いくつかのグレードのオリゴフルクトースがあるが、例えば、オラフティ(ORAFTI)(Tienen、ベルギー)からラフティロース(RAFTILOSE)(登録商標)として入手でき、例えば、95重量%のオリゴフルクトースを含有し、重合度が2から7の範囲にあり、グルコース、フルクトース及びスクロースが合計でが約5重量%である、ラフティロース(RAFTILOSE)(登録商標)P95がある。
【0020】
従来技術
食物繊維、特にフルクタンは、哺乳類の様々な生理学的機能及びメカニズムに効果を有することが知られている。
【0021】
非ウシ哺乳類において、これらの繊維は、口、胃及び小腸においてほとんど代謝されず、従ってほとんど定量的に大腸へと入り、そこで結腸の微生物叢により完全に発酵される。この現象は、非ウシ哺乳類の健康への様々な有益な効果を生じ、例えば、腸通過時間の削減、腸内pHの低下、結腸におけるビフィズズ菌ヘの刺激、便の重量(嵩)及びその頻度の増加が生じる。
【0022】
フルクタン、特にイヌリンはまた脂質代謝に有益な効果を与えると知られており、前記効果には血中コレステロール及び血清トリグリセリドを下げる効果並びにHDL/LDL比を上げる効果が含まれる。
【0023】
P.D.クーパー(Cooper)ら著、Molecul.Immunol.、23(8)、895、(1986年)には、ガンマ−イヌリン(ダリア イヌリンの特定の多形性形態)による補体の第二経路の活性化が記載されており、補体の第二経路の活性物質は、非特異的な抗腫瘍効果を有し得ることが知られている。
【0024】
さらに、フルクタン、特にイヌリンは癌を予防及び抑制する可能性があると記載されている。
【0025】
P.D.クーパー(Molecul.Immunol.、23(8)、903、(1986年))らは、腹腔内注射されたガンマ−イヌリンにより黒色腫を有するマウスの生存が長引くということを証明した。
【0026】
また、ビフィドバクテリア培養が、ラットにおける、2−アミノ−3−メチル−イミダゾール[4,5−f]キノリンにより誘起された結腸癌、肝臓癌及び乳癌の発生を抑制すること(B.S.レディ(Reddy)ら著、Cancer Res.、53、3914−3918,(1993年))及びアゾキシメタン誘起の結腸癌を抑制すること(N.クルカルニ(Kulkarni)ら著,Proc.Soc.Exptl.Biol.Med.、207、278−283、(1994年))が開示された。
欧州特許出願第EP 0692252 A1号には、ラフティロース(RAFTILOSE)(登録商標)P95(オラフティ(ORAFTI)(ベルギー)から;2から7の間の重合度(DP)を有する95%のオリゴフルクトース鎖からなる)及びイヌリンであるラフティライン(RAFTILINE)(登録商標)ST、GR及びLS(前記定義のとおりであり、約10の重合度を有する)の、ラットにおけるN−メチルニトロソウレア(MNU)の注射に誘起された乳癌の発生及びマウスにおける移植可能なTLT腫瘍(テーパー肝臓腫瘍)(Taper Liver Tumour)の成長に対する抑制効果を開示している。研究されたオリゴフルクトース及びイヌリンは、ほぼ同等の発癌予防及び癌抑制効果を示した。
【0027】
さらに、食物繊維の摂取及び結腸癌のリスクの減少の関係が、いくつかの刊行物、例えばJ.ポッター(Potter)ら著、「プリンシプルズ オブ ケモプレベンション(Principles of Chemoprevention)」、IARC Scientific Publication No139,第61−90頁(1996年)、G.R.ホウェ(Howe)ら著、J.Natl.Cancer Inst.,84,第1887−1896頁(1992年);及びB.S.レディ(Reddy)ら著、Gastoenterol.,102,第1475−1482、(1992年)により開示されている。
【0028】
しかしながら、癌疾病、特に結腸癌との戦いにおける幾多の努力にも関わらず、いまだ、結腸癌の予防及び好結果の抑制及び治療が常に可能であるわけではない。従って、医学においては、いまだ結腸癌の予防、抑制及び治療の改良を探求している。患者への快適性等の様々な理由により、化学療法が最も好まれている。従って、結腸癌の抑制及び/又は治療において有益な効果を与え、並びに/又は公知の組成物及び療法に比べ、望ましくない副作用が少ない、改良された及び/又は代替の組成物及び療法が継続して探されている。
【特許文献1】欧州特許出願第EP 0692252 A1号
【非特許文献1】P.D.クーパー(Cooper)ら著、Molecul.Immunol.、23(8)、895、(1986年)
【非特許文献2】P.D.クーパー(Molecul.Immunol.、23(8)、903、(1986年))
【非特許文献3】B.S.レディ(Reddy)ら著、Cancer Res.、53、3914−3918,(1993年)
【非特許文献4】N.クルカルニ(Kulkarni)ら著,Proc.Soc.Exptl.Biol.Med.、207、278−283、(1994年)
【非特許文献5】J.ポッター(Potter)ら著、「プリンシプルズ オブ ケモプレベンション(Principles of Chemoprevention)」、IARC Scientific Publication No139,第61−90頁(1996年)
【非特許文献6】G.R.ホウェ(Howe)ら著、J.Natl.Cancer Inst.,84,第1887−1896頁(1992年)
【非特許文献7】B.S.レディ(Reddy)ら著、Gastoenterol.,102,第1475−1482、(1992年)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0029】
発明の説明
本出願人は、本発明により、上記の複数の課題のうち一つ又はそれより多くの解決法であって、付加的な利点すら有し得るものを提供する。
【0030】
本明細書中、結腸癌という用語により、結腸癌発生、結腸での悪性細胞の形成、前記悪性細胞の増殖及び/又は前記悪性細胞による正常な結腸構造への侵入を含む、いかなる段階の結腸癌疾病をも意味する。
【0031】
本発明は、高い重合度を有するフルクタン、特に平均重合度が15又はそれより高いものが、低い重合度を有するフルクタンと比較して、非ウシ哺乳類において改良された予防及び抑制する特性を示すという大規模な研究の間に発明者によりされた発見に基づいている。
【0032】
先行技術の観点から、高い重合度を有するフルクタンが、低い重合度を有する一定のフルクタンと同様に、結腸癌に対して予防及び/又は抑制する特性を有すことは予期することができた。しかしながら、発明者の、高い重合度を有するフルクタン、特にイヌリンが、重合度の低いフルクタンに比べ、非ウシ哺乳類の結腸癌に対する有意に増大した予防及び抑制の特性を呈するという驚くべき発見は、当該技術に鑑みても全く予測できなかった。
【0033】
従って、一つの側面においては、本発明は、非ウシ哺乳類、特にヒトにおける結腸癌の予防及び/又は治療用組成物の製造のための、少なくとも15の平均重合度を有するフルクタンの使用に関する。
【0034】
もう一つの側面において、本発明は、非ウシ哺乳類、特にヒトにおける結腸癌の予防及び/又は治療のための、少なくとも15の平均重合度を有するフルクタンを含有する組成物の使用に関する。
【0035】
更なる側面として、本発明は非ウシ哺乳類、特にヒトにおける結腸癌の予防及び/又は治療方法であって、結腸癌に冒され易く、そのような予防又は治療を必要とする前記哺乳類に、少なくとも15の平均重合度を有するフルクタンを有効量含有する組成物を投与することによる上記方法に関する。
【0036】
好ましい一態様において、フルクタンは、好ましくは少なくとも20の平均重合度を有するレバンであり、より好ましくは平均重合度が20から50の範囲にあるレバンである。
【0037】
もう一つの好ましい態様において、フルクタンは、好ましくは少なくとも20の平均重合度を有するイヌリンであり、さらにより好ましくは平均重合度が20から70の範囲にあるイヌリンである。さらなる好ましい態様において、イヌリンは、20から40の範囲の平均重合度を有する。典型的に好ましいイヌリンは、約25の平均重合度を有する。
【0038】
実質的に直鎖ポリサッカライドからなるイヌリン又は、約2重量%まで枝分かれポリサッカライド鎖を含有するイヌリンが本発明に適しているが、より高い割合で枝分かれ鎖を含有するイヌリン及び枝分かれポリサッカライド鎖から本質的になるイヌリンでさえ、さらに上記直鎖及び枝分かれイヌリンの混合物でさえまた、本願に適している。本発明に適した典型的なイヌリンは、約25の平均重合度を有するチコリー イヌリンであり、例えばラフティライン(RAFTIINE)(登録商標)HP及びラフティライン(登録商標)HP-Gel(どちらも高性能イヌリン[要するにHPイヌリン]、オラフティ(ORAFTI)(ベルギー)から)がある。
【0039】
本発明による組成物という用語は、本明細書中では薬剤(即ち、それを投与された哺乳類において予防及び/又は治療効果を有する組成物)だけでなく機能性食品(即ち、ヒト又は非ヒト哺乳類のための食物製品であって、付加的な機能性成分を含み、その栄養特性のほかに、当該生物に付加的に一つ又はそれより多くの生理学的に有益な効果を提供するもの)も意味する。本発明による機能性食品組成物において、上記付加的な機能性成分は、本明細書中で上記に定義したように、レバン及びイヌリンを包含するフルクタンを意味する。典型的な生理学的に有益な効果は、例えば、消化管への有益な効果、脂質代謝への効果及び癌、特に結腸癌に対する予防効果である。
【0040】
本発明に従って、組成物が薬剤である時は、それは、定義されたフルクタンからなることができ、又は上記フルクタンを調剤上許容されるどのような担体と組み合わせて、及び任意に一つ又はそれより多くの生理学的に活性な化合物、薬剤又はプロドラッグと組み合わせて含んでもよい。上記薬剤は当該技術分野において知られた、どのような型であってもよく、公知の方法に従って投与され得る。好ましくは、薬剤は、粉末、錠剤、ソフトゲルカプセル、シロップ、溶液又は懸濁液であり、経口投与される。しかしながら、適当なガレヌス形態であれば、組成物はまた非経口的に、チューブ供給を通じて、又は直腸的に投与され得る。
【0041】
本発明による組成物が機能性食品である時は、それは経口投与され、公知の食物のどのような形態であってもよく、例えば、テーブルスプレッド、乳製品(例えばミルク、乳製デザート、ヨーグルト又はチーズ等)、アルコール飲料、ノンアルコール飲料、パン製品、チョコレート、アイスクリーム、肉製品、果物調理食品、菓子製品、穀物製品、ソース、スープ、スナック、乾物ミックス、食事代替品、ペットフード等がある。
【0042】
結腸癌に対する予防を提供するのに有効な1日あたりの用量は、哺乳類の種及びフルクタンの種に依存し、好ましくは、体重1kgあたり0.01gから2gの範囲であり、より好ましくは、体重1kgあたり0.05gから0.5gである。
【0043】
結腸癌に対する抑制及び/又は治療効果を提供するのに有効な1日あたりの用量は、哺乳類の種、フルクタンの種及び結腸癌の進行の度合いに依存し、好ましくは体重1kgあたり0.2gから3gの範囲であり、より好ましくは、体重1kgあたり0.5gから1.5gである。
【0044】
非ウシ哺乳類、好ましくはヒトの結腸癌の抑制及び/又は治療を含む、予防及び/又は治療方法において、本明細書に前述の本発明による組成物の1日あたりの用量は、組成物により提供される効果の強さの関数として、短期又は長期間にわたり一又はそれより多くの単位用量で公知の方法に従い、結腸癌に冒され易くそのような治療を必要とする上記哺乳類に投与され得る。組成物が機能性食品であり、予防効果が目的とされている時、当該機能性食品は一又はそれより多くの形態で、より長期にわたり、最も好ましくは哺乳類の一生の間、有利に投与され得る。
【0045】
高い重合度を有するフルクタンの、低い重合度を有すフルクタンに比較して改良された生理学的、予防及び/又は治療効果の他にも、本発明による組成物及び治療方法は、有意に複数の付加的な利点を有する。組成物は、例えば、摂取又は投与が容易であり、治療方法は施用し易く、関する哺乳類に有意な不快を与えることがない。さらに、より高い重合度を有するフルクタン鎖の存在は、消化不能な炭水化物の摂取により時々生じる一定の不快、例えば軟便、下痢、放屁、鼓脹及び腸痙攣等を減少させる。
【0046】
本発明に関するフルクタン、特にチコリー イヌリンにより与えられるさらなる重要な利点は、それらが毒性の無い、天然に産生される生物分解性製品であること及び、妊娠中及び老齢を含む成熟した哺乳類のみでなく、新生のものも摂取することができ、またそれらの乳類に対し投与できることである。多くの公知の化学療法組成物と比較し、本発明による上記定義のフルクタン含有組成物の摂取、投与及びそれによる治療は、通常、哺乳類により十二分に耐えられ、哺乳類に対し、有意な望ましくない副作用又は有意な不快を全く引き起こさない。さらに、本発明に適したフルクタンは、ほとんどが、認容できる費用で商業的に入手可能である。
【実施例】
【0047】
実験の部
本発明を支持するため、オリゴフルクトース及びHPイヌリンの、ラットにおける発癌性物質起因の結腸の異常型陰窩病巣(abberant crypt focci,ACF)の形成に対する効果を測定するために行われた研究に関する、以下に記載の例証実験データを提供する。
【0048】
異常型陰窩病巣(ACF)は、結腸における初期の前腫瘍性病変であると認識されていて、実験動物における実験的に誘起された結腸癌発生において一様に観察されている(マクレラン(McLellan)E.A.ら著、Cancer Res.,51,第5270−5274頁(1991年)及びワルゴビッチ(Wargovich),M.H.ら著、Cancer Epidemiol Biomakers&Prev.,5,第355−360頁(1996年))。
【0049】
プレトロウ(Pretlow),T.P.ら著、J. Cell. Biochem.,16G,(Suppl.),第55−62頁(1992年)は、またこれらの病変は結腸癌患者の結腸粘膜に存在することを示し、さらに異常型陰窩が、そこから結腸中の腺腫及び癌腫が発展する、推定上の前駆病変であると示唆している。ACFはapc遺伝子及びras腫瘍ゲンにおける変異を発現し、それらは結腸癌の進行のバイオマーカーのようである(ビボナ(Vivona),A.A.,ら著、Carcinogenesis(Lond.)14,第1777−1781頁(1993年))。
【0050】
ACF形成の阻害剤の幾つかが、実験動物において結腸腫瘍の発生率を削減することを示すいくつかの証拠があり(ワルゴビッチ(Wargovich),M.H.ら著,Cancer Epidemiol Biomarkers&Prev.,5,第355−360頁(1996年)、それはACFの誘発が、新規薬剤の結腸癌に対する可能性のある化学予防的特性を評価するために用いることができるということを示唆する。
【0051】
材料と方法
動物、飼料、発ガン性物質及び化学予防薬剤。
【0052】
アゾキシメタン(AOM)はアッシュ スティーブンス(Ash Stevens)(デトロイト、MI、米国)から入手した。乾燥状態で主にオリゴフルクトース(95%)及びイヌリン(99.5%)をそれぞれ含有する、ラフティロース(登録商標)P95及びラフティライン(登録商標)HPはORAFTI(Tienen、ベルギー)から入手した。チコリー イヌリンの部分的な酵素加水分解により製造されたラフティロース(登録商標)は、(DP)が2から7の範囲にあり、


が4.5である、多分散β[2−1]フルクタンである。ラフティライン(登録商標)HP(即ち、高性能イヌリン及び本明細書中でHPと省略されている)は、低い(DP)の分画が取り除かれたチコリー イヌリンである。その(DP)は10から60の範囲にあり、


は25である。このテスト用基質の選択により、重合度の影響を観察することができる。
【0053】
離乳したばかりのオスのF344ラットは、チャールズ リバー ブリーディング ラボラトリーズ(Charles River Breeding Laboratories)(キングストン、NY、米国)から入手した。AIN-76A半精製飼料の全ての成分はディエッツ(Dyets)社(ベツレヘム、PA、米国)から入手し、実験用飼料が調整されるまで4℃で貯蔵した。半精製飼料の組成割合は以下のとおりである:カゼイン、20;D,L-メチオニン、0.3;コーンスターチ、52;デキストロース、13;コーン油、5;アルファセル(alphacel)、5;ミネラルミックス(AIN−76A)、3.5;ビタミンミックス(AIN-76A)、1;及びコリンビタルタラート、0.2(レディ(Reddy),B.S.ら著、Cancer Res.,48,第6642−6647頁(1988年))。ラットは1週間隔離され、改変AIN-76A半精製対照飼料を得ていた。それらは、不作為に体重ごとに様々な飼料のグループに分配し、動物飼育室に移し、そこで、12時間の光/12時間の暗闇のサイクルで、比湿度50%、そして21℃の室温という制御された条件下で、プラスチックの籠一つに3匹づつ入れて飼育した。ラフティロース(RAFTILOSE)(登録商標)及びラフティライン(RAFTILINE)(登録商標)は対照飼料に10%の標準でスターチに代えて加えられた。
【0054】
実験方法。年齢が5週になった時から、動物のグループは対照又は実験飼料を与えられた。ビヒクル処理のラットを除いて全ての動物は、AOM s.c.を週1回、年齢が7週及び8週にあたる時、1週間あたり体重1kgに対し15mgの用量で受けた。ビヒクル処理のためのラットには等しい量の通常の食塩水を与えた。ラットには、年齢が16週になる、研究の終了時まで、対照又は実験飼料を与え続けた。全ての動物はCOにより安楽死させた。結腸は、取り出され、クレブス−リンガー液で流し、盲腸から肛門へと開き、10%の緩衝ホルマリン中の二枚の濾紙の間に平らに固定した。少なくとも24時間緩衝ホルマリン中においた後、結腸は2cm片に切り分けられ、クレブス−リンガー液中0.2%のメチレンブルーを含む溶液を含むぺトリ皿中に置かれ、5−10分間放置された。次に、それらを顕微鏡のスライド上に粘膜面を上にして置き、光学顕微鏡を通じて観察した。ACFは、標準の方法(マクレラン(McLellan)E.A.ら著、Cancer Res.,51,第5270−5274頁(1991年))に従って記録された。
【0055】
異常型陰窩は回りの正常陰窩とは、その増大したサイズ、層から細胞の基底表面までの有意に増加した距離、及び容易に認識できる陰窩周辺の領域により、区別された。陰窩の多数性はそれぞれの病巣中の陰窩の数により定められ、一病巣あたりに異常型陰窩を3つまで含むもの、又は4つ若しくは4つより多く含むものに分類された。全ての結腸は、研究にかかる薬剤の正体を知らない一人の観察者により記録され;記録は第二の観察者により非作為的にチェックされた。
【0056】
統計的分析。全ての結果は、平均値±SDとして表現され、片側スチューデント式tテストにより分析された。差異は、p<0.05において統計的に有意であると考えた。
【0057】
結果
一般的観察。対照及び10%イヌリン又はオリゴフルクトースを含有する実験飼料を与えられたAOM及びビヒクル処理動物の体重は、研究の間互いに匹敵していた(表1、この先)。イヌリン又はオリゴフルクトースを与えられた動物の肝臓、腎臓、胃、腸、又は肺には、有害な効果の徴候はなかった。
【0058】
異常型陰窩病巣。この先の表2には、対照及び実験飼料を与えられたラットの結腸中のAOM−起因のACFを要約してある。食塩水(ビヒクル)を投与された動物で対照及びイヌリン又はオリゴフルクトースを含有する実験飼料を与えられたものは、結腸中でのACF形成の証拠を示さなかった(データ記載せず)。対照飼料を食べさせられた動物においては、AOM処理は平均で、一つの結腸につき約120個のACFを誘発した。ACFは主に遠位結腸で観察された。本研究で用いられた効力終点は一結腸ごとのACFの総数の抑制、並びに一病巣あたりの異常型陰窩の多陰窩集団(二つ又はそれより多い)の数の減少とした。飼料中のオリゴフルクトース又はHPイヌリンの投与は、対照飼料に対して、有意に一結腸中のACFの総数を抑制した;HPイヌリンを与えられた動物(p<0.006)における抑制の度合いは、オリゴフルクトースを与えられた動物(p<0.02)に比べ、有意に、より明らかであった。
【0059】
一病巣中の2又は3の異常型陰窩による陰窩の多数性もまた、HPイヌリン(p<0.02−0.0001)又はオリゴフルクトース(p<0.04−0.01)を与えられた動物において、有意に抑制された。異常型陰窩の多数性は、結腸癌という結果の蓋然的なプレディクターであるので(プレトロウ(Pretlow),T.P.ら著、Carcinogenesis(Lond.),13.第1509−1512頁(1992年))、本研究は、オリゴフルクトース及びHPイヌリンの可能な抑制効果を評価するのに、この基準を用いた。
【0060】
本研究の結果は、経口摂取されたオリゴフルクトース及びHPイヌリンが、ラットにおけるAOM起因の結腸ACF形成を抑制することを示し、チコリー フルクタンの可能性のある結腸癌抑制特性を支持する。実験結果は、より高い平均重合度を有するフルクタン(HPイヌリン)により与えられる予防的及びACF抑制特性は、より低い平均重合度を有するフルクタン(オリゴフルクトース)に比べ、相当に増大していることを明らかに立証している。
【0061】
【表1】

【0062】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
非ウシ哺乳類における結腸癌の予防及び/又は治療用の組成物の製造のための、フルクタンの使用。


【公開番号】特開2009−275028(P2009−275028A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−23494(P2009−23494)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【分割の表示】特願平10−549922の分割
【原出願日】平成10年5月14日(1998.5.14)
【出願人】(500562363)テイエンセ スイケラフイナデリユ ナムローゼ フェンノートシャップ (4)
【Fターム(参考)】