説明

結腸直腸癌における差次的発現の分析方法

コンデンシン複合体または関連タンパク質の一部を形成するタンパク質についてコードする遺伝子の発現レベルにおける変化に基づく、結腸直腸癌での差次的発現の分析方法であって、当該疾患の患者で生じ、当該癌の診断用並びにその予防および治療用のマーカーとして用いられる、分析方法。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、結腸直腸癌の診断のための基準として並びにその予防および治療に際して用いられる、該癌患者におけるコンデンシン複合体のタンパク質および関連タンパク質の過剰発現に基づく、差次的発現の分析のための方法に関する。
【発明の背景】
【0002】
実際のところ、癌はスペインで二番目に多い死因である。癌の多くのタイプの中で、結腸直腸癌は突出しており、1999年データによると、男性で癌死の11%および女性で15%に関与していた。スペインにおいて、両性の概算年間新症例数は約18,000であり、うち死亡は11,300例である。直腸S状結腸部分の腫瘍を分類する際に多い誤りに起因して、結腸および直腸腫瘍は分析目的の1つとして通常扱われている。結腸直腸癌による死亡率は非常に高く、これは男性および女性の双方において二番目に多い癌の形であり、その傾向は年齢と共に高まる(年毎に男性で2.2%および女性で0.7%)。今日では死亡率は男性のほうが高いが、1960年代ではそれは女性のほうが高かった。
【0003】
これらの腫瘍に関して、生存率が主に若年者で近年改善してきたことを考えると、死亡率データは該疾患の真の発生率を反映していない。問題の腫瘍が特定リスク群のスクリーニングに際してS状結腸鏡検査と完全結腸鏡検査の普遍的使用を正に受け入れやすいことから、死亡率の安定化に向けた傾向は早期診断で達成される治療改善を反映するかもしれない。
【0004】
該疾患に罹患する累積的生涯リスクは、ライフスタイルおよび遺伝因子に応じて、5〜6%である。最も多い結腸直腸癌は散発型(90%)であり、一部の症例では遺伝的素因の要素を有している:家族性腺腫ポリポーシス(0.01%)および遺伝性非ポリポーシス結腸直腸癌(5〜10%)。後者はわずか数個の遺伝子で定まる家族性症候群に起因している。しかしながら、散発性癌に関与する遺伝子はこれから特定されねばならない。結腸直腸腫瘍は、1以上の変異または後成的事象から生じて、遺伝および環境双方の因子が関与した進行現象で続く、一連の分子事象の結果として展開していく。
【0005】
一般的に言えば、結腸直腸癌に関して、症状は腸壁で進行した増殖段階になって通常やっと顕在化し、そのことから、このタイプの癌に関与するおよび/またはそれを示す新しい遺伝子および/または変異を特定し、該疾患の選択的および迅速分子診断を可能にして日常的臨床実務の一部を最終的に形成しうるような分析法の帰結的開発を促すことを要している。
【0006】
これは、ヘルスケアコストの削減および待ち時間の短縮、陽性症例で新たな予後基準および治療アプローチの採択、並びにこれら遺伝子に関連した選択的療法の設計にもつながるであろう。
【0007】
遺伝子SMC2L1(hCAP‐Eとも称される、S.cerevisiaeのSMC2のヒトオーソログ)によりコードされるタンパク質は、遺伝子転写の調節に関する機能を行なえる染色体凝縮およびコンパクション複合体において、重要なタンパク質である(Hagstrom and Meyer,2003;Hirano,2002;Legagneux et al.,2004)。
【0008】
このタンパク質は、1〜6と番号付けされた6タンパク質(SMC1、SMC2、SMC3、SMC4、SMC5およびSMC6)を含んでなる、いわゆるSMCタンパク質(“染色体の構造的維持”を意味する)のファミリーに属する。これらのタンパク質は、他のSMCタンパク質とダイマー、および他のいわゆる非SMCタンパク質(2つのファミリー、HEATおよびクライシン(kleisin)に分けられる)と活性複合体を形成する。全体として、それらは、ゲノム修復に伴い、3種の主要複合体:コンデンシン(ヒトでは、2種の別々な複合体、コンデンシンIおよびコンデンシンIIがある)、コヒーシンおよびhSMC5‐hSMC6複合体を形成する(Hagstrom and Meyer,2003;Hirano,2002)。タンパク質およびそれらが異なる種で形成する複合体が表1および2で記載されている。
【0009】
【表1】

【表2】

【0010】
SMC2L1はコンデンシンIおよびII複合体の一部を形成している。両複合体ともクロマチンコンパクションに関する機能を発揮する(Hirano et al.,1994;Ono et al.,2004;Ono et al.,2003)。
【0011】
コンデンシンI:ダイマーSMC2‐SMC4(hCAP‐E‐hCAP‐C)、HEATサブユニットhCAP‐D2/CNAP1およびhCAP‐G、およびクライシンサブユニットhCAP‐Hにより形成されている。ダイマーhCAP‐E‐hCAP‐Cは間期細胞の細胞質に存在している(有糸分裂時以外)。有糸分裂が生じると、非SMCサブユニットはリン酸化を受け、hCAP‐E‐hCAP‐Cダイマーと相互作用し、複合体を形成して、核へ運ばれ、そこでそれらはDNAと相互作用して、それをコンパクトにする(Hagstrom and Meyer,2003)。
【0012】
コンデンシンII:ダイマーSMC2‐SMC4(hCAP‐E‐hCAP‐C)、HEATサブユニットhCAP‐D3およびhCAP‐G、およびクライシンサブユニットhCAP‐H2により形成されている。該複合体は間期細胞の核に存在し(図1A)、遺伝子転写の調節に関与して、ある遺伝子のプロモーター領域をコンパクトにする上で役立つようである。このことが、内部核領域に相当する領域(図1Aおよび1B)および染色体Rバンドとして、アセチル化ヒストン(例えば、リシンK3におけるアセチル化ヒストンH3)のような他の調節因子(図2および3)と共に、転写活性領域(転写調節、即ち転写活性化または抑制の領域)と関連したユークロマチン領域にコンデンシンを置くことになる。
【0013】
これらのタンパク質をこのタイプの癌と関連づけた証拠は文献にない。しかしながら、コンデンシンと転写サイレント化および適正な染色体コンパクションとでリンクしている可能性は、それが癌で変わりうることを示唆している。ほとんどの癌は全体的高アセチル化と共に全体的ゲノム低メチル化を呈するが、CpGアイランドに富むある遺伝子プロモーター領域は高メチル化されて、該遺伝子がサイレント化される(転写されない)ことが示された。本発明では、これらのサイレント化プロセスにコンデンシンがどのように関与し、これらの複合体を形成するタンパク質および関連タンパク質がどのように過剰発現されるか、が記載されている。同様に、後成的変化の大部分が新生物化プロセスの非常に早い段階で生じると考えられるならば、この過剰発現も腺腫(adenomas)のような早期プロセスに特有であろう。
【発明の説明】
【0014】
患者から単離された生物学的サンプルにおいて、コンデンシン複合体の一部または該複合体と相互作用する他のタンパク質を形成する1以上のタンパク質コード遺伝子の発現レベルにおける変化を決定することを含んでなる、結腸直腸癌における差次的発現(differential expression)の分析方法であって、遺伝子発現レベルにおける変化が結腸直腸癌またはその前悪性状態の存在に関する診断に用いられる方法を提供することが、本発明の目的である。
【0015】
特に、分析される遺伝子はhCap‐E、hCap‐C、hCap‐D2、hCap‐D3、hCap‐G、hCap‐G2、hCap‐H、hCap‐H2およびKIF4Fからなる群の中から選択され、遺伝子の発現レベルにおける変化は発現レベルにおける増加である。
【0016】
特に、上記サンプルはDNAまたはRNAであり、バイオプシーまたはいずれか他の抽出法により得られた細胞から単離される。
【0017】
本発明の態様において、決定はPCR増幅、SDA増幅またはいずれか他の核酸増幅法により行なわれる。
【0018】
本発明の他の態様において、いずれかのメカニズムで付着されたオリゴヌクレオチドにより作製されたDNAバイオチップの手段により、あるいはフォトリソグラフィーまたはいずれか他のメカニズムでin situ合成されたオリゴヌクレオチドで作製されたDNAバイオチップの手段により、決定が行なわれる。
【0019】
本発明の他の態様において、いずれかの標識方法を用いて標識された特異的プローブを用いて、in situハイブリッド形成により決定が行なわれる。
【0020】
本発明の他の態様において、決定はゲル電気泳動により行なわれる。場合により、測定は膜への移動と特異的プローブとのハイブリッド形成により行なわれる。
【0021】
本発明の他の態様において、決定はNMRまたはいずれか他の診断画像技術により行なわれる。
【0022】
本発明の他の態様において、NMRまたはいずれか他の診断画像技術と、常磁性ナノ粒子または抗体もしくはいずれか他の手段で官能化されたいずれか他のタイプの検出可能ナノ粒子の使用により、決定が行なわれる。
【0023】
場合により、分析されるサンプルは遺伝子またはそのフラグメントによりコードされたタンパク質である。
【0024】
本発明の他の態様において、決定は特異的抗体とのインキュベーションにより行なわれる。場合により、決定はウエスタンブロットまたは免疫組織化学により行なわれる。
【0025】
本発明の他の態様において、決定はタンパク質ゲル電気泳動により行なわれる。
【0026】
本発明の他の態様において、決定はタンパク質チップを用いて行なわれる。
【0027】
本発明の他の態様において、決定はELISAまたはいずれか他の酵素法により行なわれる。
【0028】
記載された遺伝子の1以上の発現レベルにおける変化が、結腸直腸癌またはその前悪性状態の進行を予測するために、または該疾患の再発のリスクを予測するために用いられる、結腸直腸癌での差次的発現の分析のための方法を提供することも、本発明の目的である。
【0029】
遺伝子の発現のレベルにおける変化を決定する上で必要な試薬および添加物を含んでなる、差次的発現の分析のための方法を行なうためのキットを提供することも、本発明の目的である。
【0030】
記載された遺伝子の1以上の発現レベルを減少させうる化合物の能力の決定を含んでなり、化合物が配列情報に従い作製された化合物、例えばアンチセンスまたはRNA干渉オリゴヌクレオチド、またはmRNAの不安定化および除去またはタンパク質へのその翻訳の欠損に基づくその他化合物である、結腸直腸癌の治療ポテンシャルに関する化合物の分析のための方法を提供することも、本発明の追加目的である。
【0031】
記載された遺伝子の1以上の発現のレベルにおける変化に対抗しうる化合物の能力の決定を含んでなり、化合物が常磁性ナノ粒子または熱励起ナノ粒子である、結腸直腸癌の治療潜在力を有する化合物の分析のための方法を提供することも、本発明の追加目的である。
【0032】
記載された遺伝子の1以上の発現のレベルにおける変化に対抗しうる化合物の能力の決定を含んでなり、化合物が、悪性細胞へ向けて単純、二元的またはモジュラー的に運ばれる特異的抗体および毒性化合物で官能化されたナノ粒子である、結腸直腸癌の治療潜在力を有する化合物の分析のための方法を提供することも、本発明の追加目的である。
【0033】
上記の方法に従い特定された治療潜在力を有する化合物の有効量と1種以上の製薬上許容される賦形剤を含んでなる医薬製剤を提供することが、同様に本発明の目的である。
【0034】
加えて、結腸直腸癌またはその前悪性状態の治療または予防用の医薬品の製造のために、上記の方法に従い得られた治療潜在力を有する化合物を用いることも、本発明の目的である。
【0035】
本発明は、結腸直腸癌患者で観察されるコンデンシン複合体のタンパク質および関連タンパク質の過剰発現に基づいている。結腸直腸癌サンプルで特異的抗hCAP‐E抗体を用いたウエスタンブロット分析において、正常組織のサンプルと比較すると、その腫瘍段階にかかわらず、腫瘍過剰発現の発生率90%(18/20)というように、hCAP‐Eの過剰発現をデータが示した(図4)。この過剰発現は結腸直腸癌腫瘍組織の全免疫組織化学分析でも観察された(図5)。
【0036】
同様に、hCAP‐Eの発現は、結腸直腸腫瘍が由来する未分化細胞である、結腸陰窩(colon crypt)の多能性(幹)細胞でも特異的であることが観察された(図6)。多能性細胞が正常陰窩で上皮細胞(杯状細胞)へ変換されて上皮を形成すると、それは事実上消失し、そのためそれが細胞分化のマーカーとみなせることを、それらの発現パターンは示している。
【0037】
表3は、段階別による、結腸直腸癌でのhCAP‐Eの過剰発現のレベルを示している。
【表3】

【0038】
過剰発現の発生率(+)は90%(腫瘍20例中18例)であった。1症例のみは発現が正常以下(−)であると観察され、1症例では正常組織および腫瘍組織が同発現レベル(=)を示した。
【0039】
コンデンシン複合体を形成する他のタンパク質、例えばhCap‐C、hCap‐D2、hCap‐D3、hCap‐G、hCap‐G2およびhCap‐Hの発現レベルが、hCap‐Eの過剰発現が観察されたある腫瘍において、該複合体と相互作用する他の関連タンパク質、例えばKIF4Aと共に、リアルタイムPCRで同様に分析された。分析された全タンパク質が、正常組織のレベルと比較して、腫瘍組織で高い発現レベルを示すことを、結果は示した(図7)。したがって、コンデンシン複合体を構成する全タンパク質および該複合体と相互作用する他のタンパク質が腫瘍で過剰発現されている、と結論づけられる。
【0040】
このように、コンデンシン複合体を形成するタンパク質およびそれと相互作用する他の関連タンパク質は、結腸直腸癌またはその前悪性状態のマーカーとして用いられ、可能性として診断マーカーおよび/または推奨結腸鏡検査用のマーカーとして作用する。
【0041】
これらのタンパク質は、結腸陰窩の多能性幹細胞のマーカーとして、および細胞分化のマーカーとしても、双方で作用する。更に、これらのタンパク質は癌の組織学的マーカーにもなり、および/または画像分析システムでも有用となりうる。
【0042】
加えて、これらのタンパク質は直接または間接治療標的となり、腫瘍標的抗癌治療に際してこれらタンパク質のいずれかとの相互作用またはそれらの発現レベルの調節を介して腫瘍に命中させることができる。
【0043】
興味深いことに、コンデンシン複合体に存在する該タンパク質の発現レベルは細胞周期を通して変化せず、したがって有糸分裂時に変化しないことが、最近報告された(Takemoto et al.,2004)。そのため、高レベルでこれらのタンパク質が癌細胞でみられるという事実は、本発明で記載されているように、単純に腫瘍細胞の複製活性(有糸分裂)の増加に基づくというより、むしろ該疾患の進行による実際の相対的過剰発現に基づいている。
【0044】
したがって、コンデンシン複合体を構成するタンパク質および該複合体と関連した他のタンパク質の発現レベルと結腸直腸癌の存在とには、それがどのような進行段階であろうと、完全な関連性があり、このことが、現在利用可能な方法を用いたのでは不可能な、その最も早期の段階でも該疾患を診断しうる、新規の分子ツールが利用できることを意味する、と本発明は示している。
【0045】
参考文献
【表4】

【好ましい態様の説明】
【0046】
本発明の好ましい、但し排他的ではない態様が、以下で記載されている。
【0047】
患者サンプル
結腸直腸癌と診断された患者20例から正常および癌性組織のバイオプシーが行なわれた。外科的に得られたサンプルを液体窒素で直ちに凍結し、後におけるタンパク質およびRNAの抽出のために−80℃で保った。加えて、組織切片を免疫組織化学試験用に調製した。腫瘍の段階および分化度並びに早期の再発を調べる少なくとも3年間の追跡調査を含めた、臨床病理学的特徴を記録した。
【0048】
hCAP‐Eの発現レベルの分析
ウエスタンブロット:RIPA溶解用緩衝液を用いて、標準法により正常および結腸直腸組織のサンプルからタンパク質を抽出した。90μgのタンパク質を10%SDS‐PAGEゲルで分別し、ニトロセルロース膜(BioRAD,USA)へ移し、TBS‐T中5%ミルクで遮断し、遮断用溶液で1:2500希釈された一次抗hCAP‐E抗体(Abcam,UK)、次いで1:500希釈の二次抗ウサギ抗体(Dako Cytomation,Denmark)とハイブリッド形成させた。ECLキット(Amersham,USA)を用いて化学発光シグナルを検出し、腫瘍サンプルの発現レベルをそれらの正常対照物と比較した。最後に、付加コントロールとして用いられた抗アクチン抗体(Invitrogen,USA)とその膜を再ハイブリッド形成させた。図4からわかるように、すべての腫瘍サンプルが高いhCAP‐E発現レベルを呈した。
【0049】
免疫組織化学:結腸直腸癌患者の組織から採取された組織切片をキシレンで脱パラフィン化し、減量しながら連続的にエタノールおよび蒸留水でリンスした。各切片をpH6のクエン酸緩衝液(マイクロ波により800Wで5分間および450Wで10分間)で処理し、内在ペルオキシダーゼをHで遮断し、次いでそれらを一次抗hCAP‐E抗体(Abcam,UK)とハイブリッド形成させた。免疫組織化学のために、EnVision+Dual Link Systemキット(Dako Cytomation,Denmark)を製造業者の指示に従い用いた。最後に、正常および癌性組織の各部分におけるhCAP‐E発現レベルを比較した。図5は、hCAP‐E発現が正常組織よりも癌性組織で大きいことを示している。
【0050】
コンデンシン複合体の他のタンパク質および関連タンパク質の発現レベルの分析
リアルタイムPCR:コンデンシン複合体の他のタンパク質および関連タンパク質に相当するmRNAレベルをリアルタイムPCRで定量し、その際に−80℃で保たれた正常および結腸直腸組織のサンプルからTrizol(Invitrogen,USA)を用いて目的RNAを抽出した。High Capacity cDNA Archiveキット(Applied Biosystems,USA)を用いて10μgのRNAをレトロ転写し、hCAP‐C、hCAP‐D2、hCAP‐D3、hCAP‐G、hCAP‐G2、hCAP‐HおよびKIF4Fについて各々TaqMan Gene Expression Assays(Applied Biosystems,USA)で増幅させた。増幅反応は7500 Real-Time PCR SystemでTaqMan Universal PCR Master Mix(両方ともApplied Biosystems,USA)を用いて行なった。△△C法および該システム関連のプログラムを用いて各遺伝子の相対的mRNAを定量した。試験を三重に行い、18S rRNAを内在コントロールとして用い、同一患者からの正常組織および癌性組織の発現を比較した。図7が示しているように、分析されたすべての遺伝子について、コントロールサンプルと比較したときに、癌性サンプルは実質的に高いmRNAレベルを呈した。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1A】図1Aは、やや白いクラスターで表される、間期細胞に存在するhCAP‐Eを示す。
【図1B】図1Bは、ヘテロクロマチンおよびユークロマチンを別々に示す、細胞核の電子顕微鏡写真である。
【図2】図2は、ユークロマチンに相当する染色体領域(Rバンド)における、hCAP‐Eの共存を示す。hCAP‐Eで染色され、Gバンドに対して染色された、同染色体が示されている。ヘテロクロマチンは暗い部分で特定され、それは図面の各々において右側のものである。
【図3】図3は、hCAP‐Eとアセチル化ヒストン4(H4Ac)との共存、および中期染色体におけるRバンド(染色体で明色バンド)を示す。
【図4】図4は、正常サンプル(N)および結腸直腸癌腫瘍から採取されたサンプル(T)における、hCAP‐Eのウエスタンブロット分析の結果を示す。アクチンがローディングコントロールとして用いられた。
【図5】図5は、特異的抗hCAP‐E抗体を用いた、結腸直腸組織の免疫組織化学分析に関する。写真は、正常陰窩に相当する部分(N)と、hCAP‐Eの大きな発現を呈した、結腸腺癌に相当する部分(T)とを示している。
【図6】図6は特異的抗hCAP‐E抗体を用いた正常結腸陰窩における免疫組織化学分析に関し、そこでは多能性幹細胞が杯状細胞よりもhCAP‐Eに対して強い特異的染色を呈することが観察される。
【図7】図7は、コンデンシン複合体における他のタンパク質と関連タンパク質KIF4AのリアルタイムPCR分析の結果を示す。分析されたサンプルはサンプル67Tであり、これは、その対応正常サンプルと比較して、hCAP‐Eを過剰発現することが既に観察されている。分析は三重に行われ、リボソーム18Sが内部コントロールとして用いられた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者から単離された生物学的サンプルにおいて、コンデンシン複合体の一部または該複合体と相互作用する他のタンパク質を形成する1以上のタンパク質コード遺伝子の発現レベルにおける変化を決定することを含んでなる、結腸直腸癌における差次的発現の分析方法であって、遺伝子発現レベルにおける変化が結腸直腸癌またはその前悪性状態の存在に関する診断に用いられる、分析方法。
【請求項2】
遺伝子が、hCap‐E、hCap‐C、hCap‐D2、hCap‐D3、hCap‐G、hCap‐G2、hCap‐H、hCap‐H2およびKIF4Fからなる群から選択される、請求項1に記載の結腸直腸癌における差次的発現の分析方法。
【請求項3】
遺伝子の発現レベルにおける変化が発現レベルにおける増加である、請求項1または2に記載の結腸直腸癌における差次的発現の分析方法。
【請求項4】
サンプルが、バイオプシーまたはいずれか他の抽出法により得られた細胞から単離される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の結腸直腸癌における差次的発現の分析方法。
【請求項5】
分析されるサンプルがDNAである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の結腸直腸癌における差次的発現の分析方法。
【請求項6】
分析されるサンプルがRNAである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の結腸直腸癌における差次的発現の分析方法。
【請求項7】
決定がPCR増幅、SDA増幅またはいずれか他の核酸増幅法により行なわれる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の結腸直腸癌における差次的発現の分析方法。
【請求項8】
決定が、いずれかのメカニズムにより付着されたオリゴヌクレオチドで作製されたDNAバイオチップを用いて行なわれる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の結腸直腸癌における差次的発現の分析方法。
【請求項9】
決定が、フォトリソグラフィーまたはいずれか他のメカニズムによりin situ合成されたオリゴヌクレオチドで作製されたDNAチップを用いて行なわれる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の結腸直腸癌における差次的発現の分析方法。
【請求項10】
決定が、いずれかの標識方法を用いて標識された特異的プローブを用いてin situハイブリッド形成により行なわれる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の結腸直腸癌における差次的発現の分析方法。
【請求項11】
決定がゲル電気泳動により行なわれる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の結腸直腸癌における差次的発現の分析方法。
【請求項12】
決定が、膜への移動と特異的プローブとのハイブリッド形成により行なわれる、請求項11に記載の結腸直腸癌における差次的発現の分析方法。
【請求項13】
決定がNMRまたはいずれか他の診断画像技術により行なわれる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の結腸直腸癌における差次的発現の分析方法。
【請求項14】
決定が、常磁性ナノ粒子または抗体もしくはいずれか他の手段で官能化されたいずれか他のタイプの検出可能ナノ粒子を用いて、NMRまたはいずれか他の診断画像技術により行なわれる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の結腸直腸癌における差次的発現の分析方法。
【請求項15】
分析されるサンプルが、遺伝子またはそのフラグメントによりコードされたタンパク質である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の結腸直腸癌における差次的発現の分析方法。
【請求項16】
決定が特異的抗体とのインキュベーションにより行なわれる、請求項15に記載の結腸直腸癌における差次的発現の分析方法。
【請求項17】
決定がウエスタンブロットにより行なわれる、請求項16に記載の結腸直腸癌における差次的発現の分析方法。
【請求項18】
決定が免疫組織化学により行なわれる、請求項16に記載の結腸直腸癌における差次的発現の分析方法。
【請求項19】
決定がゲル電気泳動により行なわれる、請求項15に記載の結腸直腸癌における差次的発現の分析方法。
【請求項20】
決定がタンパク質チップの手段により行なわれる、請求項15に記載の結腸直腸癌における差次的発現の分析方法。
【請求項21】
決定がELISAまたはいずれか他の酵素的方法により行なわれる、請求項15に記載の結腸直腸癌における差次的発現の分析方法。
【請求項22】
決定がNMRまたはいずれか他の診断画像技術により行なわれる、請求項15に記載の結腸直腸癌における差次的発現の分析方法。
【請求項23】
決定が、常磁性ナノ粒子または抗体もしくはいずれか他の手段で官能化されたいずれか他のタイプの検出可能ナノ粒子を用いて、NMRまたはいずれか他の診断画像技術により行なわれる、請求項15に記載の結腸直腸癌における差次的発現の分析方法。
【請求項24】
1または複数の遺伝子の発現レベルにおける変化が、結腸直腸癌またはその前悪性状態の進行を予測するために、または該疾患の再発のリスクを予測するために用いられる、請求項1〜23のいずれか一項に記載の結腸直腸癌における差次的発現の分析方法。
【請求項25】
1または複数の遺伝子の発現レベルにおける変化を決定する上で必要な試薬および添加物を含んでなる、請求項1〜24のいずれか一項に記載された方法を行うためのキット。
【請求項26】
請求項1〜2のいずれか一項で記載されているような、1以上の遺伝子の発現レベルにおける変化に対抗しうる化合物の能力の決定を含んでなる、結腸直腸癌の治療潜在力を有する化合物の分析方法であって、化合物が配列情報に従い作製された化合物、例えばアンチセンスまたはRNA干渉オリゴヌクレオチド、またはmRNAの不安定化および除去またはタンパク質へのその翻訳の欠損に基づくその他化合物である、分析方法。
【請求項27】
請求項1〜2で記載されているような、1以上の遺伝子の発現レベルにおける変化に対抗しうる化合物の能力の決定を含んでなる、結腸直腸癌の治療潜在力を有する化合物の分析方法であって、化合物が常磁性ナノ粒子または熱励起ナノ粒子である、分析方法。
【請求項28】
請求項1〜2のいずれか一項で記載されているような、1以上の遺伝子の発現レベルにおける変化に対抗しうる化合物の能力の決定を含んでなる、結腸直腸癌の治療潜在力を有する化合物の分析方法であって、化合物が、悪性細胞へ向けて単純、二元的またはモジュラー的に運ばれる特異的抗体および毒性化合物で官能化されたナノ粒子である、分析方法。
【請求項29】
請求項26〜28のいずれか一項の方法で特定された治療潜在力を有する化合物の有効量と1種以上の製薬上許容される賦形剤を含んでなる、医薬製剤。
【請求項30】
結腸直腸癌またはそのいずれか前悪性状態の治療または予防用の医薬品の製造のための、請求項26〜28のいずれか一項の方法により特定された治療潜在力を有する化合物の使用。

【図2】
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【図5】
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【図7】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−520486(P2009−520486A)
【公表日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−546496(P2008−546496)
【出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【国際出願番号】PCT/ES2006/000704
【国際公開番号】WO2007/074193
【国際公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(506346923)オリソン、ヘノミクス、ソシエダッド、アノニマ (5)
【氏名又は名称原語表記】ORYZON GENOMICS, S.A.
【Fターム(参考)】