説明

結露防止シート

【課題】従来の結露防止シートよりも採光性を高めることができる結露防止シートを提供する。
【解決手段】窓ガラスに貼着される結露防止シート10は、粘着層17を有して窓ガラスに貼り付け可能なガラス側透光性シート12と、このガラス側透光性シート12の粘着層17とは反対側の面に設けられた編組ネット13と、この編組ネット13に重ねられてガラス側透光性シート12との間に編組ネット13の網目毎に断熱空間16を形成する室内側透光性シート11とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窓ガラス等の結露を防止するための結露防止シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冬季に建物の外気温と室内温度との差により発生する窓ガラスの結露を防止するための様々な工夫がなされている。その中でも、簡単かつ安価に施工可能な方法のひとつとして、窓ガラスに貼り付ける結露防止シートが提案されている。このものは、窓ガラスと室内との間に断熱空間を設けることにより、部屋の内外の温度差に起因する窓ガラスへの結露を防止しようとするものである。
【0003】
例えば特開平11−348169号では、2枚のシートの間に、断面矩形波状の円筒状突起を所定の間隔をもって形成したスペーサシートを挟むことにより多数の断熱空間を形成した結露防止シートが示されている。
【0004】
あるいは、例えば特開2009−144376号公報では、多数の貫通孔を有する樹脂板の一方の面をカバーシートで覆って貫通孔を断熱空間とした構成が開示されている。
また、特開2000−154600号公報では、多数の円形凹部を形成した第1シートに平坦な第2シートを重ねて円形凹部内に空気を封入した断熱空間を形成した空気封入シートを利用した結露防止シートが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−348169号公報
【0006】
【特許文献2】特開2009−144376号公報
【0007】
【特許文献3】特開2000−154600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上述したような従来の結露防止シートは、いずれも断熱空間を形成するためにシートや樹脂板等を複数枚重ねる構成であるから、光の透過率が低下しがちになり、窓ガラスからの採光性に劣り、また人目につく窓に貼り付ける場合に、見栄えがよくないという問題があった。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされてものであって、従来の結露防止シートよりも採光性を高めることができる結露防止シートを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するためになされた本発明は、窓ガラスに貼着される結露防止シートであって、粘着層を有して前記窓ガラスに貼り付け可能なガラス側透光性シートと、このガラス側透光性シートの前記粘着層とは反対側の面に設けられた編組ネットと、この編組ネットに重ねられて前記ガラス側透光性シートとの間に前記編組ネットの網目毎に断熱空間を形成する室内側透光性シートとを備えるところに特徴を有する。
【0011】
また、結露防止シートは、粘着層を有して前記窓ガラスに貼り付け可能な編組ネットと、この編組ネットに重ねられて前記窓ガラスとの間に前記編組ネットの網目毎に断熱空間を形成する室内側透光性シートとを備える構成としてもよい。
【0012】
さらに前記編組ネットは、所定間隔を隔てて横方向に並ぶ縦糸および所定間隔を隔てて縦方向に並ぶ横糸を縦横に組み合わせて矩形の網目を構成する格子状ネットであり、前記横糸が複数の糸を組み合わせてなる紐状であり、前記縦糸が複数本の糸が非組み合わせ状態のまま前記編組ネットが構成されているようにしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
上述した本発明の結露防止シートによれば、断熱空間は編組ネットにより形成される構成であるから、従来のようにシート等によって断熱空間を形成する場合と比較して積層させるシート数を減らすことができ、ひいては透光性が改善される。また、網目を比較的大きく形成することにより、より透光性を高めることができる。さらに、編組ネットの糸として透光性のものを使用することによっても、より透光性を高めることができる。
【0014】
さらに、編組ネットをガラス側透光性シートを介することなく直接窓ガラスに貼着する場合には、積層されるシート数がさらに減るので、より透光性をよくすることができる。
【0015】
上記編組ネットが縦糸および横糸からなる格子状ネットとされており、横糸が複数の糸を組み合わせてなる紐状とされ、縦糸が複数本の糸が非組み合わせ状態とされている場合には、横糸の太さ(直径)分の断熱空間が形成される。従って、横糸の組み合わせ方や使用する糸の本数を調整することにより、所望の厚みを有する断熱空間を形成することができる。
【0016】
また、横糸を複数の糸を組み合わせてなる紐状として、断熱空間を複数の横方向にのびる空間に分断する本発明の構成によれば、断熱空間内の空気のうち温かい空気が上昇したり、冷たい空気が下降しようとする空気の流れが横糸により遮られ、分断された各空間内での対流に制限されることとなる。従って、窓ガラス全体(結露防止シート全体)をほぼ均一な温度状態とすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態1の結露防止シートの平面図
【図2】同じく図1のA−A断面図
【図3】本発明の実施形態2の結露防止シートの断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1および図2によって説明する。
図1は本実施形態の結露防止シート10の平面図、図2は図1のA−A断面図である。この結露防止シート10は窓ガラスの内側(室内側)に貼着されるものであって、図2に示すように、屋内側に位置する屋内側透光性シート11と、窓側に位置するガラス側透光性シート12と、屋内側透光性シート11およびガラス側透光性シート12の間に介在して両シート11,12間に断熱空間16を形成する編組ネット13とを具備している。屋内側透光性シート11およびガラス側透光性シート12はいずれも無色透明なPET製であり、編組ネット13は接着材19により両シート11,12間に固着されている。
【0019】
上記編組ネット13は、合成樹脂製の透明な8本の細糸から構成されている。具体的には、細糸を2本ずつ撚ってなる4組の撚糸を図1中水平方向に一定の長さ(本実施形態では2cm)クロスロープ法で組み合わせた(以下横糸15とする)後、そのうち2組をそれぞれ図1中互いに異なる垂直方向(上下方向)に分岐するとともに、同じく互いに異なる垂直方向から伸ばされた新たな2組の撚糸を水平方向に伸びる残りの2組の撚糸と併せて再び水平方向に一定の長さ組み合わせる構成を繰り返すことにより、全体として約2cm単位四方の格子状の編組ネット13を形成している。なお本実施形態では、垂直方向に伸びる2組の撚糸(以下縦糸14とする)は組み合わされることなく、横糸15との間を単に架け渡す状態とされている。そして、この編組ネット13が屋内側透光性シート11およびガラス側透光性シート12の間に挟まれるとともに、接着材19により両シート11,12間に固着されることにより、両シート11,12間に、横糸15の直径に相当する厚みを有する断熱空間16が形成されている(図2参照)。
【0020】
また、上記ガラス側透光性シート12の外表面には例えばシリコン等の粘着層17および剥離シート18が積層されており、剥離シート18を剥離して粘着層17を露出させることにより、結露防止シート10を窓ガラスに貼付可能としている。
【0021】
上述した本実施形態の結露防止シート10によれば、透明な屋内側透光性シート11およびガラス側透光性シート12の間に、透明な糸からなる編組ネット13を挟む構成であるから、窓ガラスに貼着した場合でも従来のものと比較して透光性に優れる。
【0022】
次に、上記結露防止シート10を用いた実施例1〜5によって、結露防止効果がどの程度であるかを実験により確認した。
室内側透光性シート11およびガラス側透光性シート12の厚みがともに0.05mm、断熱空間16の厚み(横糸15の直径)が1.5mm、粘着層17の厚みが25ミクロンである上記構成の結露防止シート10を作製し、実験サンプルとしてこれを窓ガラスの内側(室内側)に貼着したもの(実施例2)、外側(室外側)に貼着したもの(実施例4)、両側に貼着したもの(実施例3)の3種類を用意した。また、断熱空間16の厚みが異なる2種類(厚み1mmおよび2mm)の結露防止シート10を作製し、これらのものについては窓ガラスの内側(室内側)に貼着したサンプルのみを用意した(実施例1および実施例5)。さらに比較用として、結露防止シート10を貼着していない窓ガラスも用意した(比較例)。
【0023】
上記実施例1〜5および比較例の各サンプルに対し、室内の環境を室温24度、湿度40%RHに固定したまま、室外の温度を5度〜−10度と変化させて、室外温度が5度、0度、−3度、−5度、−10度の点における窓ガラスの結露発生状況を目視により観察した。
実験結果を表1に示す。
【0024】
【表1】

【0025】
上記実験結果からわかるように、本発明の結露防止シート10を貼着した窓ガラスでは、室外温度や断熱空間の厚みによるものの、結露防止シート10を使用しなかった比較例のものと比較して全体として結露し難い良好な結果が得られている。
【0026】
より詳細には、結露防止シート10を例えば室内側に貼着したサンプルのうち、断熱空間16の厚みが1.5mm以上のもの(実施例2、5)では、室外温度が−3度でも部分的に結露するだけで、液だれ等は起こさない。また、窓ガラスの両面に貼着したサンプル(実施例3)では、室外温度が−3でも結露を起こさず、−10度であっても、液だれを起こさない。
【0027】
このように、断熱空間16を編組ネット13により形成する本発明の結露防止シート10は、優れた結露防止効果を示す。
【0028】
<実施形態2>
本実施形態の結露防止シート20は、上記実施形態1で使用したガラス側透光性シート12が省略された形態のものである。図3に示すように、結露防止シート20は、無色透明なPETシート11の一方の面に上記実施形態1と同様の編組ネット13が接着材19により固定されているとともに、この編組ネット13の反対側の面に剥離シート18が直接積層されている。なお、編組ネット13のうち剥離シート18に対向する部分にも接着材19が塗布されているが、編組ネット13の剥離シート18に対する接着力は、屋内側透光性シート11に対する接着力よりも小さくなるよう、接着材19の量を予め調整してある。
【0029】
本実施形態の結露防止シート20は、剥離シート18を剥離して露出された編組ネット13を窓ガラスに押しつけることにより、編組ネット13表面の粘着剤19により窓ガラス表面に貼り付けられる。この場合も、編組ネット13の厚さ分(横糸15の直径分)の断熱空間16が屋内側透光性シート11と窓ガラスとの間に形成されるから、この断熱空間16が断熱効果を発揮し、窓ガラスの結露を防止することができる。
【0030】
このような本実施形態の結露防止シート20は、上述した実施形態1の結露防止シート10よりも積層されるシート数が少ないため、より透光性に優れる。
<他の実施形態>
【0031】
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0032】
(1)上記実施形態では、8本の撚糸を組み合わせるクロスロープにより横糸を構成する例を示したが、撚りロープや編みロープ等としてもよい。
【0033】
(2)上記実施形態で使用した編組ネット13の糸の太さ、使用する糸の本数は上記実施形態のものに限らず、適宜変更することができる。糸の太さや本数を変更することにより、断熱空間16の厚みを変更することができる。
【0034】
(3)また、網目の大きさについても、適宜変更可能であることはもちろんである。
【0035】
(4)上記実施形態では、編組ネット13に合成樹脂製の糸を使用したが、材質はこれに限るものではない。さらに、編組ネット自体は開口率が大きいため透光性に優れるから、編組ネットを構成する糸を必ずしも透明のものを使用しなくても結露防止シート全体としての透光性を高くできる。また、透光性シートについても、材質はPETに限るものではなく、例えばレーヨン紙や和紙等を使用することができる。和紙はそれ自体が水分を吸水・発散することができるので、PET製のシート11を使用する場合と比較して、より確実に結露を防止することができるという効果を奏する。
【0036】
(5)さらに、編組ネット13や透光性シート11,12の色についても無色透明に限るものではない。
【0037】
(6)上記実施形態では、水平方向に伸びる撚糸を組み合わせ状態とするとともに、垂直方向に伸びる撚糸は非組み合わせ状態とする例を示したが、逆でもよいし、両方を組み合わせ状態、あるいは、両方を非組み合わせ状態としてもよい。さらに、斜め方向に伸びる編組ネットや、種々の模様を有する編組ネット等を使用することもできる。
【0038】
(7)上記実施形態2では、編組ネット13の屋内側透光性シート11に対する接着と、剥離シート18に対する接着で同じ接着剤19を使用したが、接着力が異なる別の種類の接着剤を使用してもよい。
【0039】
(8)上記実施形態2では、編組ネット13のうち剥離シート18に対向する部分全体に接着剤19を塗布する構成としたが、例えば横糸15だけに接着剤19を塗布し、縦糸14には塗布しない構成としてもよい。
【符号の説明】
【0040】
10、20...結露防止シート
11...屋内側透光性シート
12...ガラス側透光性シート
13...編組ネット
14...縦糸
15...横糸
16...断熱空間
17...粘着層
18...剥離紙
19...接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窓ガラスに貼着される結露防止シートであって、粘着層を有して前記窓ガラスに貼り付け可能なガラス側透光性シートと、このガラス側透光性シートの前記粘着層とは反対側の面に設けられた編組ネットと、この編組ネットに重ねられて前記ガラス側透光性シートとの間に前記編組ネットの網目毎に断熱空間を形成する室内側透光性シートとを備える結露防止シート。
【請求項2】
窓ガラスに貼着される結露防止シートであって、粘着層を有して前記窓ガラスに貼り付け可能な編組ネットと、この編組ネットに重ねられて前記窓ガラスとの間に前記編組ネットの網目毎に断熱空間を形成する室内側透光性シートとを備える結露防止シート。
【請求項3】
前記編組ネットは所定間隔を隔てて横方向に並ぶ縦糸および所定間隔を隔てて縦方向に並ぶ横糸を縦横に組み合わせて矩形の網目を構成する格子状ネットであり、前記横糸が複数の糸を組み合わせてなる紐状であり、前記縦糸が複数本の糸が非組み合わせ状態のまま前記編組ネットが構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の結露防止シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−26146(P2012−26146A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−165052(P2010−165052)
【出願日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(501244200)株式会社KALBAS (48)
【Fターム(参考)】