説明

結露防止性フィルムおよびこれを用いたラベル、並びにこのラベルを用いた包装容器

【課題】本発明の目的は、結露防止性に優れたフィルム、ラベルおよび包装容器を提供することにある。
【解決手段】前記課題を解決することのできた本発明の結露防止性フィルムは、吸湿性ポリマー層をベースフィルムの最表面に積層してなるフィルムであって、26℃、相対湿度50%の環境下で4℃の冷水と接触する時の結露量、および、4℃、相対湿度30%の環境下で4℃の冷水と接触した状態から26℃、相対湿度50%の環境に移動した時の結露量が、それぞれ0.15g/100cm2・10分以下、0.18g/100cm2・10分以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却内容物入り容器を常温環境で使用する際の結露による濡れを防止できるフィルムおよびこのフィルムを用いたラベル、並びにこのラベルを用いた包装容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロンなどを素材とした各種フィルムは、広範囲な用途で日常生活に使用されており、特に飲料ボトル用のラベルとして広く使用されている。代表的な用途として所謂「ペットボトル飲料」に使用されるボトルラベルが挙げられる。
【0003】
ペットボトル飲料はスーパーマーケットの他、自動販売機やコンビニエンスストアにおける24時間の購入が可能であり、その容器であるペットボトルは、軽量で使い捨てができ、持ち運びに便利であることから、今や水筒に変わる非常に一般的な飲料用包装容器と言える。
【0004】
ペットボトル飲料において、中身の飲料と使用環境とに温度差がある場合、例えば、冷蔵中のペットボトル飲料が外気環境(特に夏場などの湿度の高い環境)に取り出されたとき、ペットボトル飲料表面には結露が生じる。これにより、手が濡れたり、ペットボトル飲料を置いた机上などが濡れたり、ペットボトル飲料をかばんの中に入れた場合にかばんの内側や底、さらにはかばんに入れていた書類などが濡れたりするという事態が生じる。特に外回りのビジネスマンにとって、持参した書類などが濡れると大変なことになる場合もある。
【0005】
この結露による濡れの問題を低減するために、例えば、フィルム層の内側に断熱性の発泡樹脂層と吸水性のある不織布などの吸水材が順次に積層された容器用ラベル(特許文献1)や、フィルム層の内側に吸水性のある不織布などの吸水材が積層されており、さらにフィルム層に吸水材に通じる導水管としての細孔が複数形成された容器用ラベル(特許文献2)が提案されている。
【0006】
しかし、これらの発明では、通常のフィルムを使用したラベリング工程に比べ、吸水性のある不織布などの吸水材層などを設ける必要があるため、工程数の増加およびコストの上昇を招いてしまう。ペットボトル飲料は使い捨て用途が大半を占めるため、コストが上昇する手段は産業上望ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−125489号公報
【特許文献2】特許第4252484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる従来技術の問題を背景になされたものであり、その目的は、工程数とコストの上昇をそれほど招かずに、冷たい飲料などを入れたペットボトルなどの冷却内容物入り容器を常温環境へ取り出す際の表面結露を抑制することのできる結露防止性フィルムおよびこのフィルムを用いたラベル、並びにこのラベルを用いた包装容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意検討した結果、下記構成のフィルムを用いることにより、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明の結露防止性フィルムは、吸湿性ポリマー層をベースフィルムの最表面に積層してなるフィルムであって、26℃、相対湿度50%の環境下で4℃の冷水と接触する時の結露量、および、4℃、相対湿度30%の環境下で4℃の冷水と接触した状態から26℃、相対湿度50%の環境に移動した時の結露量が、それぞれ0.15g/100cm2・10分以下、0.18g/100cm2・10分以下であることを特徴とするものである。
【0011】
前記ベースフィルムは、熱収縮性フィルムであることが好ましい。
【0012】
前記吸湿性ポリマー層は、粒子状の吸湿性ポリマーをバインダー樹脂中に分散してなるものが好ましい。
【0013】
さらに、前記吸湿性ポリマー層に含まれる吸湿性ポリマーは、金属塩型カルボキシル基を1.0〜10.0meq/g含有し、且つ架橋構造を有するものが好ましい。
【0014】
なお、前記結露防止性フィルムを用いて得られたラベル、およびこのラベルを用いて得られた包装容器も本発明に含まれる。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、吸湿性ポリマー層をベースフィルムの最表面に積層するだけで、工程数とコストの上昇をほとんど招くことなく、冷たい飲料などを入れたペットボトルなどの冷却内容物入り容器を常温環境へ取り出した際の表面結露量を少なくすることができる、従来にはない結露防止性に優れるフィルムを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る結露防止性フィルムの構成を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明するが、本発明は、下記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0018】
本発明の結露防止性フィルムは、吸湿性ポリマー層をベースフィルムの最表面に積層してなるフィルムであって、26℃、相対湿度50%の環境下で4℃の冷水と接触する時の結露量、および、4℃、相対湿度30%の環境下で4℃の冷水と接触した状態から26℃、相対湿度50%の環境に移動した時の結露量が、それぞれ0.15g/100cm2・10分以下、0.18g/100cm2・10分以下であることを特徴とするものである。
【0019】
まず、前記吸湿性ポリマー層について詳細に説明する。
【0020】
前記吸湿性ポリマー層は、吸湿性ポリマーを含むものであり、ベースフィルムの最表面に積層されており、冷たい飲料を入れたペットボトルなどの冷却内容物入り容器を常温環境へ取り出す際のラベル表面での結露量を抑制するという役割を担うものである。
【0021】
<吸湿性ポリマーの素材>
前記吸湿性ポリマーは、本発明の目的を達成できるものであれば特に限定されないが、高い親水性を持つ金属塩型カルボキシル基を有しており、且つ架橋構造を有するものが好ましい。このような吸湿性ポリマーを用いることで、冷たい飲料を入れたペットボトルなどの冷却内容物入り容器を常温環境へ取り出す際に中身と使用環境との温度差によって発生した結露を吸収して、容器表面での結露量を抑制することができる。
【0022】
また、高い吸湿量と速い吸湿速度とするために、前記金属塩型カルボキシル基は架橋構造との割合において適当なバランスを取る必要がある。詳しくは、前記金属塩型カルボキシル基の量は、1.0meq/g以上が好ましく、4.0meq/g以上がより好ましく、10.0meq/g以下が好ましく、6.0meq/g以下がより好ましい。
【0023】
金属塩型カルボキシル基の量が前記範囲から外れると、充分な吸湿量や吸湿速度を確保できないおそれがあるので、好ましくない。即ち、金属塩型カルボキシル基の量が10.0meq/gを超えると、導入できる架橋構造の割合が少なくなりすぎるため、高吸水性樹脂に近いものとなり、粘着性が出たり、極端な吸湿速度の低下が起こったりするなどの問題が生じる場合がある。また、金属塩型カルボキシル基の量が1.0meq/gより少ないと、吸湿性が低下して、実用上の価値を失う場合がある。
【0024】
カルボキシル基と塩を形成する金属としては特に限定されず、例えばLi、Na、K、Rb、Csなどのアルカリ金属、Be、Mg、Ca、Sr、Baなどのアルカリ土類金属、Cu、Zn、Al、Mn、Ag、Fe、Co、Niなどのその他の金属が挙げられる。これらの中でもアルカリ金属が好ましく、NaまたはKがより好ましい。なお、吸湿性ポリマーは、金属塩型カルボキシル基の他に、NH4、アミンなどあるいはHをカウンターカチオンとしたカルボキシル基を有していてもよい。
【0025】
前記のような性質を持つ吸湿性ポリマーは市販のものを使用してもよく、また、合成してもよい。市販の吸湿性ポリマーとしては、例えば、アクリル酸とジビニルベンゼンとの架橋コポリマーからなる弱酸性陽イオン交換樹脂であるローム・アンド・ハース社製のアンバーライト(登録商標)IRC76を用いて、後述するようにイオン交換を行うことによって、その陽イオン交換基を金属塩型カルボキシル基に調整したものが挙げられる。
【0026】
前記吸湿性ポリマーの合成方法としては特に限定されず、上記特性を有する吸湿性ポリマーが得られる方法であればどのような方法も用いることができる。例えば、乳化重合、沈殿重合、マイクロエマルジョン重合などの重合方法を採用することができる。また、重合形態としては、順相重合であっても逆相重合であってもかまわない。中でも、乳化剤、開始剤の種類、量などの選択の幅があり、より様々な吸湿性ポリマーが得られる乳化重合法が好ましい。
【0027】
また、架橋構造の導入方法についても特に限定されず、モノマーの重合段階で架橋性モノマーを用いる方法や、ポリマーを得た後、化学的反応、あるいは物理的なエネルギーの付加により、ポリマー内に架橋構造を導入する方法(後架橋法)などが挙げられる。
【0028】
例えば、具体的な合成方法として、(1)カルボキシル基、カルボキシルエステル基又はニトリル基を有するビニル系モノマーを用いて重合反応を行っている段階で架橋性モノマーと共重合させることによって架橋構造を導入した架橋型ポリマーを、金属塩型カルボキシル基の量が1.0〜10.0meq/gとなるように調整したもの(以下、「吸湿性ポリマー1」と略称する場合がある)、(2)ニトリル基を有するビニル系モノマーを用いて重合反応を行った後にヒドラジン系化合物と反応させることによって架橋構造を導入した架橋型ポリマーを、金属塩型カルボキシル基の量が1.0〜10.0meq/gとなるように調整したもの(以下、「吸湿性ポリマー2」と略称する場合がある)の二つが挙げられる。これらの吸湿性ポリマーを粒子状で得るには、公知の乳化重合の採用が簡便である。
【0029】
(吸湿性ポリマー1)
前記吸湿性ポリマー1は、カルボキシル基、カルボキシルエステル基又はニトリル基を有するビニル系モノマーを用いて重合反応を行っている段階で架橋性モノマーと共重合させることによって架橋構造を導入した架橋型ポリマーを、金属塩型カルボキシル基の量が1.0〜10.0meq/gとなるように調整したものである。
【0030】
前記カルボキシル基又はカルボキシルエステル基を有するビニル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ビニルプロピオン酸などの酸型モノマー、これらの塩(塩型モノマー)、または(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどのエステル(エステル型モノマー)が挙げられる。また、前記ニトリル基を有するビニル系モノマーとしては、後記する吸湿性ポリマー2の合成に使用し得るものを使用することができる。なお、これらのモノマーは、単独で使用しても良く、2種以上を使用しても良く、その他のモノマーと共に使用することもできる。
【0031】
また、架橋性モノマーとしては、グリシジルメタクリレート、N−メチロールアクリルアミド、ヒドロキシエチルメタクリレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、メチレンビスアクリルアミドなどが挙げられる。これらの架橋性モノマーを前記ビニル系モノマーと共重合反応させることによって、吸湿性ポリマー1に共有結合に基づく架橋構造を導入することができる。
【0032】
架橋性モノマーの使用量は特に限定されないが、吸湿性ポリマー1を構成するモノマー成分100質量%中、10質量%以上とすることが好ましい。
【0033】
これらのビニル系モノマーおよび架橋性モノマーと共重合可能なその他のモノマーとしては、特に限定されず、塩化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニルなどのハロゲン化ビニル系化合物;塩化ビニリデン、臭化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどのビニリデン系化合物;メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、フェニルビニルケトン、メチルイソブテニルケトン、メチルイソプロペニルケトンなどの不飽和ケトン類;蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、ジクロロ酢酸ビニル、トリクロロ酢酸ビニル、モノフルオロ酢酸ビニル、ジフルオロ酢酸ビニル、トリフルオロ酢酸ビニルなどのビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;アクリルアミドおよびそのアルキル置換体;ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スルホプロピルメタクリレート、ビニルステアリン酸、ビニルスルフィン酸などのビニル基含有酸化合物、またはその塩、その無水物、その誘導体など;スチレン、メチルスチレン、クロロスチレンなどのスチレンおよびそのアルキルまたはハロゲン置換体;アリルアルコールおよびそのエステルまたはエーテル類;N−ビニルフタルイミド、N−ビニルサクシノイミドなどのビニルイミド類;ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、ジメチルアミノエチルメタクリレート、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、ビニルピリジン類などの塩基性ビニル化合物;アクロレイン、メタクリロレインなどの不飽和アルデヒド類が挙げられる。
【0034】
前記カルボキシル基を有するビニル系モノマーが金属塩型モノマーである場合、得られる架橋型ポリマーはそのまま吸湿性ポリマー1として使用することができる。
【0035】
前記カルボキシル基を有するビニル系モノマーが、酸型モノマーか金属塩型以外の他の塩型モノマーである場合、得られる架橋型ポリマーのカチオンを金属イオンとイオン交換することにより、金属塩型カルボキシル基の量を1.0〜10.0meq/gに調整することが好ましい。イオン交換の方法は特に限定されず、上記金属の水酸化物や塩化物の水溶液など、金属イオンを含む水溶液を架橋型ポリマーに接触させるなどの方法が挙げられる。
【0036】
なお、金属塩型カルボキシル基の量が1.0〜10.0meq/gとなる条件については、反応温度、濃度、時間などの反応因子と導入される金属塩型カルボキシル基の量との関係を実験で明らかにすることにより、決定することができる。
【0037】
架橋型ポリマーの合成時にカルボキシルエステル基又はニトリル基を有するビニル系モノマーを用いた場合、得られた架橋型ポリマーのエステル部分またはニトリル部分を加水分解反応によってカルボキシル基とした後、必要に応じて前記のように金属イオン交換すれば良い。
【0038】
前記加水分解反応の条件は特に限定されず、既知の加水分解反応の条件を利用することができる。例えば、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物やアンモニアなどの塩基性水溶液;硝酸、硫酸、塩酸などの鉱酸水溶液;または蟻酸、酢酸などの有機酸水溶液を添加し、加熱処理する手段などが挙げられる。
【0039】
(吸湿性ポリマー2)
前記吸湿性ポリマー2は、ニトリル基を有するビニル系モノマーを用いて重合反応を行った後にヒドラジン系化合物と反応させることによって架橋構造を導入した架橋型ポリマーを、金属塩型カルボキシル基の量が1.0〜10.0meq/gとなるように調整したものである。
【0040】
前記ニトリル基を有するビニル系モノマーとしては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−フルオロアクリロニトリル、シアン化ビニリデンなどが挙げられる。中でもコスト的に有利であり、また単位質量あたりのニトリル基量が多いアクリロニトリルが好ましい。これらは、吸湿性ポリマー1の合成に用いることのできる前記例示のモノマーと共重合させることができる。
【0041】
架橋構造を導入するには、前記ニトリル基を有するビニル系モノマーを50質量%以上用いた重合反応により得られたニトリル系ポリマーが含有するニトリル基をヒドラジン系化合物と反応させることによって、共有結合に基づく架橋構造をポリマー中に導入することができる。この後架橋による方法は、酸、アルカリに対しても安定で、しかも架橋構造自体が親水性であるので、吸湿性の向上に寄与でき、また多孔質などの形態を保持できる強固な架橋構造を導入できるといった点で極めて優れている。
【0042】
使用し得るヒドラジン系化合物としては、水加ヒドラジン、硫酸ヒドラジン、塩酸ヒドラジン、硝酸ヒドラジン、臭素酸ヒドラジン、ヒドラジンカーボネイトなどのヒドラジンの塩類、エチレンジアミン、硫酸グアニジン、塩酸グアニジン、硝酸グアニジン、リン酸グアニジン、メラミンなどのヒドラジンの誘導体が挙げられる。
【0043】
前記架橋構造を導入する際の反応条件は、特に限定されるものではなく、ニトリル系ポリマーとヒドラジン系化合物の濃度、溶媒、反応時間および温度などを、必要に応じて適宜選定することができる。通常、ヒドラジン系化合物を5〜60質量%含む水溶液とニトリル系ポリマーとを5時間以内接触させることが好ましい。また、低温では反応速度が遅くなりすぎ、高温ではニトリル系ポリマーの可塑化が起り、ポリマーが粒子状や繊維状である場合にその形状が破壊されるという問題が生じるおそれがあるので、好ましい反応温度は50〜150℃、より好ましくは80〜120℃である。
【0044】
ニトリル系ポリマーが粒子状や繊維状である場合、架橋構造を導入する部位は特に限定されず、ニトリル系ポリマーの表面のみ、全体にわたり芯部まで、又は特定の部位に導入することができる。
【0045】
また、前記架橋構造が導入された架橋型ポリマーには、ニトリル基を残存させておき、加水分解反応によってニトリル基をカルボキシル基に変性させ、必要に応じて前記と同様にして金属塩型カルボキシル基にイオン交換を行う。なお、この加水分解反応は架橋構造を導入すると同時に行うこともできる。加水分解反応の方法は、吸湿性ポリマー1のところの説明と同じである。
【0046】
<吸湿性ポリマーの形態>
吸湿性ポリマーの形態は特に制限されるものではなく、粒子状、繊維状、シート状などを適宜選択することができる。中でも、適応範囲が広い点で粒子状のものが好ましい。また、吸湿性ポリマーは、多孔質ポリマーであるのが好ましい。
【0047】
また、粒子状である場合、粒子の大きさは用途に応じて適宜選定することができ、特に限定されないが、実用的価値の大きなものとなる観点から、平均粒子径は1000μm以下が好ましく、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは0.01〜70μmである。平均粒子径100μm以下の吸湿性ポリマーは、公知の乳化重合で容易に得ることができる。
【0048】
<吸湿性ポリマー層>
吸湿性ポリマー層としては、特に限定されないが、吸湿性ポリマー粒子をバインダー樹脂中に分散してなるものが好ましい。
【0049】
前記バインダー樹脂としては、ベースフィルムとの接着性などを考慮して適宜選択することができる。例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、セルロース系樹脂などが挙げられる。
【0050】
吸湿性ポリマー層における吸湿性ポリマーの含有量は、本発明の目的とする結露量を達成できれば、特に限定されないが、2g/m2以上が好ましく、8.5g/m2以上がより好ましく、200g/m2以下が好ましく、120g/m2以下がより好ましい。
【0051】
吸湿性ポリマー層の厚みは、吸湿性ポリマーの含有量などに応じて適宜調整することができるが、0.5μm以上が好ましく、3μm以上がより好ましく、1000μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましい。
【0052】
次に、前記ベースフィルムについて説明する。
【0053】
<ベースフィルム>
前記ベースフィルムとしては、ラベルとして使用できるものであれば、特に限定されず、従来公知のものを使用することができ、非熱収縮性フィルムでも構わない。特にシュリンク包装が可能な熱収縮性フィルムが好ましく、その代表的な例として、ポリエステル系フィルム、ポリオレフィン系フィルム、ポリスチレン系フィルム、ポリ塩化ビニル系フィルムなどが挙げられる。中でも、収縮加工性の点でポリエステル系フィルムが好ましい。一例として、特開2004−339374号公報に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムが挙げられる。なお、フルラベルや変形容器用途に適する低温高収縮性ポリエステル系フィルムが特に好ましい。
【0054】
前記熱収縮性ポリエステル系フィルムは、多価カルボン酸成分と多価アルコール成分から形成されるエステルユニットを主たる構成ユニットとして有する。フィルムの耐破れ性、強度、耐熱性等を考慮すれば、熱収縮性ポリエステル系フィルムの構成ユニット100モル%中、エチレンテレフタレートユニットが50モル%以上となるように選択することが好ましい。従って、多価カルボン酸成分100モル%中、テレフタル酸成分(テレフタル酸またはそのエステルからなる成分)を50モル%以上、多価アルコール成分100モル%中、エチレングリコール成分を50モル%以上、とする。エチレンテレフタレートユニットは、55モル%以上がより好ましく、60モル%以上がさらに好ましい。
【0055】
他の多価アルコール成分としては、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール等の脂肪族ジオールや1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオールが好ましい。また、他の多価カルボン酸成分としては、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸や脂肪族ジカルボン酸等が利用可能である。
【0056】
前記熱収縮性ポリエステル系フィルムを構成するポリエステルは常法により溶融重合することによって製造できるが、ジカルボン酸類とグリコール類とを直接反応させ得られたオリゴマーを重縮合する、いわゆる直接重合法、ジカルボン酸のジメチルエステル体とグリコールとをエステル交換反応させたのちに重縮合する、いわゆるエステル交換法等が挙げられ、任意の製造法を適用することができる。
【0057】
前記熱収縮性ポリエステル系フィルムは、ポリエステル1種または2種以上を、押出機により溶融押し出しして未延伸フィルムを形成し、その未延伸フィルムを所定の方法により延伸することによって得ることができる。原料樹脂を溶融押し出しする際には、チップ状のPETボトル再生原料とそれ以外のポリエステル原料を用意し、これらをホッパードライヤー、パドルドライヤー等の乾燥機、または真空乾燥機を用いて乾燥するのが好ましい。そのようにポリエステル原料を乾燥させた後に、押出機を利用して、200〜300℃の温度で溶融し、フィルム状に押し出す方法を採用することができる。かかる押し出しに際しては、Tダイ法、チューブラー法等、既存の任意の方法を採用することができる。
【0058】
そして、押し出し後のシート状の溶融樹脂を急冷することによって未延伸フィルムを得ることができる。なお、溶融樹脂を急冷する方法としては、溶融樹脂を口金より回転ドラム(キャスティングロール)上にキャストして急冷固化することにより、実質的に未配向の樹脂シートを得る方法を好適に採用することができる。なお、回転ドラム上にキャストして急冷固化させる場合には、上記押出機と回転ドラムとの間に電極を配設し、電極と回転ドラムとの間に電圧を印加し、静電気的にフィルムを回転ドラムに密着させる方法を採用すると、フィルムの厚み斑が低減されるので好ましい。
【0059】
未延伸フィルムを形成した後は、延伸処理を行う。延伸は、Tg−20℃〜Tg+40℃の範囲内の所定温度で、2.3〜7.3倍、好ましくは2.5〜6.0倍にテンターで横方向に延伸する。その後、50℃〜110℃の範囲内の所定温度で、0〜15%の伸張あるいは0〜15%の緩和をさせながら熱処理し、必要に応じて40℃〜100℃の範囲内の所定温度で再度熱処理をするのが好ましい。また、フィルムの延伸の方法としては、テンターでの横1軸延伸ばかりでなく、縦方向に1.0倍〜4.0倍、好ましくは1.1倍〜2.0倍の延伸を施してもよい。このように2軸延伸を行う場合は、逐次2軸延伸、同時2軸延伸のいずれでもよく、必要に応じて、再延伸を行ってもよい。また、逐次2軸延伸においては、延伸の順序として、縦横、横縦、縦横縦、横縦横等のいずれの方式でもよい。
【0060】
前記ベースフィルムの厚みは、特に限定されず、10μm以上が好ましく、15μm以上がより好ましく、600μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましい。
【0061】
次に、本発明の結露防止性フィルムについて説明する。
【0062】
<結露防止性フィルム>
本発明の結露防止性フィルムは、前記吸湿性ポリマー層を前記ベースフィルムの最表面に積層してなるものである。図1は、本発明に係る結露防止性フィルムの構成を説明する概略図である。図1では、結露防止性フィルム1は、ベースフィルム3の片面に吸湿性ポリマー層5が積層されている。ベースフィルム3と吸湿性ポリマー層5の間に易接着層などの他の層を介在しても構わないが、結露防止機能を最大限に発揮させるためには、最表面を吸湿性ポリマー層5とする。なお、ここでいう「最表面」とは、最も外環境に面した部分であることを示す。
【0063】
吸湿性ポリマー層の積層方法としては、特に制限されず、従来公知の方法を採用することができる。例えば、吸湿性ポリマーをバインダー樹脂中に分散させた後、ベースフィルムの最表面に塗布する方法が挙げられる。塗布方法としては、バーコート方式、ドクターナイフ方式、リバースロール方式、エアナイフ方式、ファウンテン方式などが挙げられる。
【0064】
本発明の結露防止性フィルムの結露防止性は、使用実態を模して下記指標を用いて、後述する方法により評価したものである。
【0065】
即ち、26℃、相対湿度50%の環境下で4℃の冷水と接触する時の結露量は、0.15g/100cm2・10分以下であることが必要であり、好ましくは0.09g/100cm2・10分以下である。また、4℃、相対湿度30%の環境下(冷却環境)で4℃の冷水と接触した状態から26℃、相対湿度50%の環境に移動した時の結露量は、0.18g/100cm2・10分以下であることが必要であり、好ましくは0.11g/100cm2・10分以下である。
【0066】
フィルムの結露量をそれぞれ前記上限値に制御することによって、濡れ感のないラベルを得ることができる。
【0067】
以下、本発明のラベルおよび包装容器について説明する。
【0068】
<ラベル>
本発明のラベルは、前記結露防止性フィルムを用いて得られたものである。具体的な例として、前記結露防止性フィルムを適宜の大きさに裁断し、吸湿性ポリマー層が外側となるように、溶剤接着などの手段によりフィルムの左右端部を重ね合わせてシールして、筒状または袋状の形態に加工したものが挙げられる。
【0069】
また、本発明のラベルは、ボトル容器類などの全体を覆うフルラベルや、ボトル容器類などの胴体部分のみを覆う胴巻きラベルとして使用することができる。
【0070】
<包装容器>
本発明の包装容器は、前記ラベルを用いて得られたものである。具体的な例として、前記ラベルを用いて、従来の熱収縮手段により容器に密着させたものが挙げられる。
【0071】
また、前記ラベルを使用できる容器としては、表面結露を防止する必要のあるものであれば、特に限定されず、例えば、調味料、食品、飲料などが充填されるプラスチック製、ガラス製、アルミニウム製などのボトル容器類が挙げられる。
【実施例】
【0072】
次に、実施例および比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施をすることは、全て本発明の技術的範囲に含まれる。
【0073】
本発明の実施例および比較例の結露性評価は、使用実態を模して次の方法により行った。この方法により、官能評価と物性評価との対応関係を把握し、結露が感じられない結露量を具体的な物性値で表すことができた。
【0074】
<結露性の物性評価>
(1)26℃、相対湿度50%の環境下で4℃の冷水と接触する時の結露量の測定方法
26℃、相対湿度50%の環境下で、化学実験用秤量瓶(直径4.9cm、高さ7.5cm)の表面に試料フィルム(サイズ:15.4cm×6.5cm=約100cm2)を巻いた後(実施例5〜8および比較例6〜10では、巻いた試料フィルムをさらに90℃のスチーム処理で熱収縮させることによって、秤量瓶に密着させた)、3h以上置いて環境になじませた。その後、この秤量瓶に4℃の冷水100ccを注ぎ入れ、10分間静置した。続いて、吸水性の高い実験用ワイピング材(日本製紙クレシア株式会社製、商品名:キムワイプ(登録商標)S−2000、パルプ100%)にて、試料フィルムの表面全体を30秒間かけて丁寧に拭き取った後、ワイピング材の質量増加分(即ち、試料フィルムの表面結露量)を測定した。実験は3回行い、その平均値(単位:g/100cm2・10分)を採用した。
【0075】
(2)4℃の冷水と接触した状態で、冷却環境から26℃、相対湿度50%の環境に移動した時の結露量の測定方法
常温下で、化学実験用秤量瓶(直径4.9cm、高さ7.5cm)の表面に試料フィルム(サイズ:15.4cm×6.5cm=約100cm2)を巻いた後(実施例5〜8および比較例6〜10では、巻いた試料フィルムをさらに90℃のスチーム処理で熱収縮させることによって、秤量瓶に密着させた)、この秤量瓶に常温の水100ccを注ぎ入れた。その後、この秤量瓶を4℃、相対湿度30%の環境に移動させ、3h以上置いて環境になじませた後、26℃、相対湿度50%の環境に移動させ、10分間静置した。続いて、吸水性の高い実験用ワイピング材(日本製紙クレシア株式会社製、商品名:キムワイプ(登録商標)S−2000、パルプ100%)にて、試料フィルムの表面全体を30秒間かけて丁寧に拭き取った後、ワイピング材の質量増加分(即ち、試料の表面結露量)を測定した。実験は3回行い、その平均値(単位:g/100cm2・10分)を採用した。
【0076】
<結露性の官能評価>
10〜40歳台の健康被験者を10名(女子7名、男子3名)集めた。被験者は1名ずつ、26℃、相対湿度50%の試験室に入室させ、約30分間の安静をとった後、官能評価を開始した。官能評価試料としては、前記<結露性の物性評価>の(1)と同様に、試料フィルムを巻いた(実施例5〜8および比較例6〜10では、巻いた試料フィルムをさらに90℃のスチーム処理で熱収縮させることによって、秤量瓶に密着させた)秤量瓶に4℃の冷水100ccを注ぎ入れて10分間静置後のものを使用した。被験者に官能評価試料の表面を触らせて、表面を触った時に感じられる結露性について質問による調査を行った。被験者のうち最も回答頻度の高かった判定結果を各試料フィルムの評価結果とした。
【0077】
なお、判定は4段階評価とし、「結露が感じられない」を◎、「結露がほとんど感じられない」を○、「結露が感じられる」を△、「結露が強く感じられる」を×とした。
【0078】
また、本発明の実施例で使用した吸湿性ポリマーに含有される金属塩型カルボキシル基の量は、下記の方法により測定した。
【0079】
<金属塩型カルボキシル基の量>
十分乾燥した試料1gを精秤し(X(g))、これに200mlの水を加えた後、50℃に加温しながら1N塩酸水溶液を添加してpH2とすることで、試料に含まれるカルボキシル基を全てH型カルボキシル基とし、次いで0.1NNaOH水溶液で常法に従って滴定を行い、滴定曲線を求めた。該滴定曲線からH型カルボキシル基に消費されたNaOH水溶液消費量(Y(ml))を求め、次式によって試料中に含まれる全カルボキシル基の量を算出した。
全カルボキシル基の量(meq/g)=0.1Y/X
【0080】
別途、1N塩酸水溶液の添加によるpH2への調整を行わなかった以外は、上記測定操作と同様にして滴定曲線を求め、試料中に含まれるH型カルボキシル基の量を求めた。これらの結果から次式により金属塩型カルボキシル基の量を算出した。
金属塩型カルボキシル基の量(meq/g)=全カルボキシル基の量−H型カルボキシル基の量
【0081】
なお、本発明の実施例および比較例で使用した吸湿性ポリマーおよび非吸湿性ポリマーの平均粒子径は、下記の方法により測定した。
【0082】
<平均粒子径>
島津製作所製レーザー回折式粒度分布測定装置「SALD2000」を使用し、水を分散媒として測定した結果を、体積基準で表し、そのメディアン径をもって平均粒子径とした。
【0083】
実施例1
[吸湿性ポリマーの製造]
アクリロニトリル(AN)400質量部、アクリル酸メチル(MA)40質量部、ジビニルベンゼン(DVB)100質量部、p−スチレンスルホン酸ソーダ(SPSS)26質量部及び水1181質量部を、2000mlの容器のオートクレーブに仕込み、さらに重合開始剤としてジ−tert−ブチルパーオキシドを単量体総量に対して0.5質量%添加した後、密閉し、ついで攪拌下に於いて160℃の温度にて10分間重合せしめた。反応終了後、攪拌を継続しながら反応溶液を室温まで冷却した後、重合生成物をオートクレーブから取り出した。この生成物は、平均粒子径が0.06μm、重合体の濃度が27質量%の、きわめて微細な粒子径のエマルジョン状のポリアクリロニトリル系重合体であった。
【0084】
得られたエマルジョン状のポリアクリロニトリル系重合体370質量部に、45質量部の水酸化ナトリウムと590質量部の水を添加し、95℃で36時間反応を行うことにより、ニトリル基およびメチルエステル基を加水分解しカルボキシル基(加水分解反応終了時点ではナトリウム塩型)に変換した。得られた加水分解後溶液は、セルロース半透膜に入れ、脱イオン水中に浸し脱塩を行なうことによりエマルジョン状の吸湿性ポリマーを得た。かかるエマルジョン状の吸湿性ポリマーをスプレードライヤーで乾燥粉末化し、吸湿性ポリマー(1)を得た。該吸湿性ポリマー(1)は、1次粒子が凝集した多孔質状のものであり、その平均粒子径が3μmであった。
【0085】
[積層フィルムの製造]
得られた吸湿性ポリマー(1)と、ベースフィルムとして二軸配向透明PETフィルム(東洋紡績社製、コスモシャイン(登録商標)A4300、厚み50μm)とを用いて、吸湿性ポリマー層が最表面に積層されたフィルムを作製した。
【0086】
吸湿性ポリマー層は、1液硬化型溶剤系アクリルバインダー樹脂(東亜合成社製、「ARUFON UH−2140」:ガラス転移温度50℃、分子量14000、固形分100%)、吸湿性ポリマーおよび溶媒としてのメチルエチルケトンを100/30/100の配合比(質量比)にて混合した後、乾燥後の層厚が40μmとなるようにベースフィルムの最表面にバーコータ塗工し、乾燥して形成した。
【0087】
実施例2
[吸湿性ポリマーの製造]
2Lの重合槽に水1081質量部を入れ、60℃まで昇温を行い還元剤としてピロ亜硫酸ナトリウム6.2質量部を添加した。次に、アクリロニトリル450質量部およびアクリル酸メチル50質量部のモノマー混合溶液、及び過硫酸アンモニウム5部を水100質量部に溶解した酸化剤水溶液をそれぞれ2時間かけて滴下し重合を行い、さらに反応溶液を80℃に昇温した後2時間重合を行った。反応終了後、撹拌を継続しながら反応溶液を室温まで冷却し、平均粒子径が42μmの凝集体である多孔質重合体分散液を得た。この凝集体の1次粒子を電子顕微鏡で観察したところ平均粒子径は0.3μmであった。
【0088】
次に、得られた重合体100質量部に60質量%のヒドラジン50質量部および水850質量部を混合し、90℃、3時間の条件でヒドラジン処理を行うことにより重合体内に架橋構造を導入し、その後、100質量部の苛性ソーダを添加して、120℃、5時間反応を行うことにより、残存するニトリル基およびメチルエステル基を加水分解しカルボキシル基(加水分解反応終了時点ではナトリウム型)に変換した後、熱風乾燥することにより、吸湿性ポリマー(2)を得た。得られた凝集体状の吸湿性ポリマー(2)の平均粒子径は51μmであり、またその1次粒子の平均粒子径は0.4μmであった。
【0089】
[積層フィルムの製造]
吸湿性ポリマー(2)を用いた以外は、実施例1と同様にして、吸湿性ポリマー層が最表面に積層されたフィルムを作製した。
【0090】
実施例3
[吸湿性ポリマーの製造]
上記実施例2で製造した吸湿性ポリマー(2)を平均直径1mmのビーズミルで粉砕して平均粒子径4μmとしたものを吸湿性ポリマー(3)とした。
【0091】
[積層フィルムの製造]
吸湿性ポリマー(3)を用いた以外は、実施例1と同様にして、吸湿性ポリマー層が最表面に積層されたフィルムを作製した。
【0092】
実施例4
[吸湿性ポリマーの製造]
上記実施例1で製造したエマルジョン状の吸湿性ポリマー(1)を乾燥することなく、そのまま吸湿性ポリマー(4)とした(平均粒子径0.07μm)。
【0093】
[積層フィルムの製造]
吸湿性ポリマー(4)を用いた以外は、実施例1と同様にして、吸湿性ポリマー層が最表面に積層されたフィルムを作製した。
【0094】
比較例1
最表面に吸湿性ポリマー層を積層せずに、ベースフィルムである二軸配向透明PETフィルム(東洋紡績社製、コスモシャイン(登録商標)A4300、厚み50μm)のみを試料フィルムとした。
【0095】
比較例2
吸湿性ポリマーの代わりに平均粒子径5μmの架橋ポリメタクリル酸メチル系粒子(架橋PMMA系粒子)(東洋紡績社製、タフチック(登録商標)FH−Sシリーズ FH−S005)を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリマー層が最表面に積層されたフィルムを作製した。
【0096】
比較例3
吸湿性ポリマーの代わりに平均粒子径20μmの架橋PMMA系粒子(東洋紡績社製、タフチック(登録商標)FH−Sシリーズ FH−S020)を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリマー層が最表面に積層されたフィルムを作製した。
【0097】
比較例4
吸湿性ポリマーの代わりに平均粒子径5μmのポリアクリロニトリル系粒子(PAN系粒子)(東洋紡績社製、タフチック(登録商標)ASFシリーズ ASF−5)を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリマー層が最表面に積層されたフィルムを作製した。
【0098】
比較例5
吸湿性ポリマーの代わりに平均粒子径30μmのPAN系粒子(東洋紡績社製、タフチック(登録商標)YKシリーズ YK−30)を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリマー層が最表面に積層されたフィルムを作製した。
【0099】
実施例1〜4および比較例1〜5の結果を表1にまとめた。
【0100】
【表1】

【0101】
実施例5〜8
ベースフィルムとして熱収縮性ポリエステル系フィルム(東洋紡績社製、S7042、厚み50μm)を用いた以外は、それぞれ実施例1〜4と同様にして、吸湿性ポリマー層が最表面に積層されたフィルムを作製した。
【0102】
なお、このベースフィルムは、JIS Z 1709に基づく加熱収縮率(湯温95℃、10秒)が縦6.9%、横61.2%のフルラベルや変形容器用途に適する標準的な低温高収縮性フィルムであった。
【0103】
比較例6〜10
ベースフィルムとして熱収縮性ポリエステル系フィルム(東洋紡績社製、S7042、厚み50μm)を用いた以外は、それぞれ比較例1〜5と同様にして、試料フィルムを作製した。
【0104】
実施例5〜8および比較例6〜10の結果を表2にまとめた。
【0105】
【表2】

【0106】
表1および2の結果から分かるように、吸湿性ポリマー層をベースフィルムの最表面に積層した実施例1〜8のフィルムは、結露性の物性評価においては結露量が少なく、結露性の官能評価においては「結露が感じられない又はほとんど感じられない」という結果となり、結露の防止効果に優れるものであった。
【0107】
一方、吸湿性ポリマー層を設けなかった比較例1、6のフィルム、および、非吸湿性ポリマー層を設けた比較例2〜5、7〜10のフィルムは、結露性の物性評価では結露量が多く、結露性の官能評価では「結露が感じられる又は強く感じられる」という結果となり、結露の防止効果に劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明は、結露防止性に優れるフィルムを提供することができた。この様なフィルムを使用した製品は、冷たい飲料などを入れた状態で常温環境へ取り出される際の表面結露量が少ないので、使用時の利便性が向上し、産業界に大きく寄与することが期待できる。
【符号の説明】
【0109】
1:結露防止性フィルム、3:ベースフィルム、5:吸湿性ポリマー層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸湿性ポリマー層をベースフィルムの最表面に積層してなるフィルムであって、26℃、相対湿度50%の環境下で4℃の冷水と接触する時の結露量、および、4℃、相対湿度30%の環境下で4℃の冷水と接触した状態から26℃、相対湿度50%の環境に移動した時の結露量が、それぞれ0.15g/100cm2・10分以下、0.18g/100cm2・10分以下であることを特徴とする結露防止性フィルム。
【請求項2】
前記ベースフィルムが、熱収縮性フィルムである請求項1に記載の結露防止性フィルム。
【請求項3】
前記吸湿性ポリマー層が、粒子状の吸湿性ポリマーをバインダー樹脂中に分散してなるものである請求項1または2に記載の結露防止性フィルム。
【請求項4】
前記吸湿性ポリマー層に含まれる吸湿性ポリマーが、金属塩型カルボキシル基を1.0〜10.0meq/g含有し、且つ架橋構造を有するものである請求項1〜3のいずれかに記載の結露防止性フィルム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の結露防止性フィルムを用いて得られたものであることを特徴とするラベル。
【請求項6】
請求項5に記載のラベルを用いて得られたものであることを特徴とする包装容器。



【図1】
image rotate


【公開番号】特開2012−25127(P2012−25127A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−168636(P2010−168636)
【出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】