説明

絞り制御装置および絞り制御プログラム

【課題】レリーズ操作前に絞り込む仮絞り値を適正絞り値に応じて決定すると、被写体の輝度が大きく変動する場合、例えばシーンを屋内から屋外へ変更した場合、変動前の測光値に基づく適正絞り値で決定した仮絞り値と変動後の適正絞り値との差が大きくなってしまう。そのため、絞り機構の駆動量が大きくなり、目標とする適正絞り値まで絞りの開口部を駆動する時間がかかってしまう。
【解決手段】絞り制御装置は、撮影レンズの絞りの開放絞り値と最小絞り値とに基づいて絞りを絞り込む仮絞り値を決定する決定部と、決定部により決定された仮絞り値に従って絞りを絞り込む駆動信号を、撮影動作に先立って、絞りへ送信する送信部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絞り制御装置および絞り制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カメラにおいて、ステッピングモータを用いた電磁絞り機構等の、絞り値の大小両方向への開閉駆動が可能な絞り機構が採用されている。このような絞り値の大小両方向への開閉駆動が可能な絞り機構に対して、レリーズ操作前に適正絞り値に応じた仮絞り値に対応する絞り状態にさせ、レリーズ操作に応じて仮絞り値に対応する絞り状態から適正絞り値に対応する絞り状態まで移行させる制御が提案されている。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1]特開昭60−211438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
レリーズ操作前に絞り込む仮絞り値を適正絞り値に応じて決定すると、被写体の輝度が大きく変動する場合、例えばシーンを屋内から屋外へ変更した場合、変動前の測光値に基づく適正絞り値で決定した仮絞り値と変動後の適正絞り値との差が大きくなってしまう。そのため、絞り機構の駆動量が大きくなり、目標とする適正絞り値まで絞りの開口部を駆動する時間がかかってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様における絞り制御装置は、撮影レンズの絞りの開放絞り値と最小絞り値とに基づいて絞りを絞り込む仮絞り値を決定する決定部と、決定部により決定された仮絞り値に従って絞りを絞り込む駆動信号を、撮影動作に先立って、絞りへ送信する送信部とを備える。
【0005】
また、本発明の第2の態様における絞り制御装置は、撮影レンズの絞りの駆動速度能力に基づいて絞りを絞り込む仮絞り値を決定する決定部と、決定部により決定された仮絞り値に従って絞りを絞り込む駆動信号を、撮影動作に先立って、絞りへ送信する送信部とを備える。
【0006】
また、本発明の第3の態様における絞り制御プログラムは、撮影レンズの絞りの開放絞り値と最小絞り値とに基づいて絞りを絞り込む仮絞り値を決定する決定ステップと、決定ステップにより決定された仮絞り値に従って絞りを絞り込む駆動信号を、撮影動作に先立って、絞りへ送信する送信ステップとをコンピュータに実行させる。
【0007】
また、本発明の第4の態様における絞り制御プログラムは、撮影レンズの絞りの駆動速度能力に基づいて絞りを絞り込む仮絞り値を決定する決定ステップと、決定ステップにより決定された仮絞り値に従って絞りを絞り込む駆動信号を、撮影動作に先立って、絞りへ送信する送信ステップとをコンピュータに実行させる。
【0008】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態に係る一眼レフカメラの要部断面図である。
【図2】本実施形態に係る一眼レフカメラのシステム構成図である。
【図3】第1実施例を説明する図である。
【図4】第2実施例を説明する図である。
【図5】第3実施例を説明する図である。
【図6】第4実施例を説明する図である。
【図7】風景モードにおけるプログラム線図である。
【図8】絞り制御の処理フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0011】
図1は、本実施形態に係る一眼レフカメラ10の要部断面図である。一眼レフカメラ10は、レンズユニット20とカメラユニット30が組み合わされて撮像装置として機能する。
【0012】
レンズユニット20は、光軸11に沿って配列された光学系を備える。光学系には、フォーカスレンズ21、ズームレンズ22、絞り23が含まれる。絞り23は、ステッピングモータ24および複数枚の絞り羽根25を備える。また、絞り23には、駆動信号に応じてステッピングモータ24を回転駆動する駆動回路が搭載されている。ステッピングモータ24の回転に伴い各絞り羽根25が回転し、複数枚の絞り羽根25で形成される開口部26の大きさが調整される。本実施形態において、開口部26の開き具合を絞り状態という。
【0013】
レンズユニット20は、カメラユニット30との接続部にレンズマウント27を備え、カメラユニット30が備えるカメラマウント45と係合して、カメラユニット30と一体化する。レンズマウント27およびカメラマウント45はそれぞれ、機械的な係合部の他に電気的な接続部も備え、カメラユニット30からレンズユニット20への電力の供給および相互の通信を実現している。
【0014】
カメラユニット30は、レンズユニット20から入射される被写体像を反射するメインミラー31と、メインミラー31で反射された被写体像が結像するピント板33を備える。メインミラー31は、回転軸32周りに回転して、光軸11を中心とする被写体光束中に斜設される斜設状態と、被写体光束から退避する退避状態を取り得る。ピント板33側へ被写体像を導く場合には、メインミラー31は斜設状態を取る。撮像素子42側へ被写体像を導く場合には、メインミラー31は退避状態を取る。
【0015】
ピント板33は、後述する撮像素子42の受光面と共役の位置に配置されている。ピント板33で結像した被写体像は、ペンタプリズム34で正立像に変換され、接眼光学系35を介してユーザに観察される。本実施形態において、ピント板33、ペンタプリズム34および接眼光学系35は、ファインダ光学系を形成する。ペンタプリズム34の射出面上方に配置された測光センサ36は、被写体の明るさを検出する。
【0016】
斜設状態におけるメインミラー31の光軸11の近傍領域は、ハーフミラーとして形成されており、入射される光束の一部が透過する。透過した光束は、メインミラー31と連動して動作するサブミラー37で反射されて、AF光学系38へ導かれる。AF光学系38を通過した被写体光束は、AFセンサ39へ入射される。AFセンサ39は、受光した被写体光束から位相差信号を検出する。なお、サブミラー37は、メインミラー31が被写体光束から退避する場合は、メインミラー31に連動して被写体光束から退避する。
【0017】
斜設されたメインミラー31の後方には、光軸11に沿って、フォーカルプレーンシャッタ40、光学ローパスフィルタ41、撮像素子42が配列されている。フォーカルプレーンシャッタ40は、先幕と後幕の2つの幕で構成される。そして、フォーカルプレーンシャッタ40は、撮像素子42へ被写体光束を導くときに、まず先幕を開いて開放状態を取り、指定された時間だけ遅れて後幕を動かして遮蔽状態を取る。先幕と後幕の幅であるスリットにより撮像素子42に届く光の量を調整する。フォーカルプレーンシャッタ40は、撮像素子42へ被写体光束を導くとき以外の場合には遮蔽状態を取る。
【0018】
光学ローパスフィルタ41は、撮像素子42の画素ピッチに対する被写体像の空間周波数を調整する役割を担う。そして、撮像素子42は、例えばCCD、CMOSセンサなどの光電変換素子であり、受光面で結像した被写体像を電気信号に変換する。
【0019】
撮像素子42の後方には、メイン基板43が配設されている。メイン基板43には、撮像素子42で光電変換された電気信号を画像データに処理する画像処理部、カメラユニット30のシステムを統合的に制御するカメラシステム制御部などが搭載される。カメラユニット30の背面には液晶モニタ等による表示部44が配設されており、メイン基板43上の画像処理部で処理された被写体画像が表示される。表示部44は、撮影後の静止画像に限らず、ビューファインダとしてのEVF画像、各種メニュー情報、撮影情報等を表示する。
【0020】
図2は、本実施形態に係る一眼レフカメラのシステム構成図である。なお、図1と重複する構成の説明は省略する。レンズユニット20内の光学系は、レンズシステム制御部120によって制御される。レンズシステム制御部120は、レンズシステムメモリ121を備える。レンズシステム制御部120は、例えば、モータ駆動回路122を介してフォーカスレンズ21を移動させるモータおよびズームレンズ22を移動させるモータを制御する。また、レンズシステム制御部120は、後述するカメラシステム制御部130から送信された絞り23を駆動するための駆動信号を絞り23へ中継する。
【0021】
レンズシステムメモリ121は、電気的に消去・記録可能な不揮発性メモリであり、例えばEEPROM(登録商標)等により構成される。レンズシステムメモリ121は、レンズユニット20の動作時に必要な定数、変数、プログラム等を、レンズユニット20の非動作時にも失われないように記録している。また、レンズシステムメモリ121は、絞り23の開放絞り値、最小絞り値の情報を絞り情報として記録している。開放絞り値は、開口部26の大きさが最大である状態の絞り値であり、最小絞り値は、開口部26の大きさが最小である状態の絞り値である。
【0022】
さらに、レンズシステムメモリ121は、絞り23の駆動速度に関する能力である駆動速度能力の情報を絞り情報として記録している。絞り23の駆動速度能力は、ステッピングモータ24、絞り羽根25、駆動回路等で構成されるユニットとして、起点の絞り値から終点の絞り値まで最小時間で移行させる能力である。絞り23の駆動速度能力の情報は、起点の絞り値から終点の絞り値まで移行させる最小時間の情報を含む。
【0023】
具体的には、絞り23の駆動速度能力の情報は、各絞り値から開放絞り値まで移行させる最小時間情報と、各絞り値から最小絞り値まで移行させる最小時間情報と、を含む。
【0024】
撮像素子42で光電変換された被写体像は、A/D変換器132でアナログ信号からデジタル信号に変換される。デジタル信号に変換された被写体像は、画像データとして順次処理される。A/D変換器132によりデジタル信号に変換された画像データは、画像処理部133へ引き渡される。画像処理部133は、設定されている撮影モード、ユーザからの指示に従って、画像データを規格化された画像フォーマットの画像データに変換する。例えば、静止画像としてJPEGファイルを生成する場合、色変換処理、ガンマ処理、ホワイトバランス処理等の画像処理を行った後に適応離散コサイン変換等を施して圧縮処理を行う。また、動画像としてMPEGファイルを生成する場合、生成された連続する静止画としてのフレーム画像に対して、フレーム内符号化、フレーム間符号化を施して圧縮処理を行う。
【0025】
A/D変換器132から画像処理部133へ入力される画像データ量が、画像処理部133の処理能力を上回る場合は、未処理の画像データは、メモリ制御部134の制御により一旦内部メモリ135へ記憶される。つまり、内部メモリ135は、連写撮影、動画撮影において高速に連続して画像データが生成される場合に、画像処理の順番を待つバッファメモリとしての役割を担う。内部メモリ135は、高速で読み書きのできるランダムアクセスメモリであり、例えばDRAM、SRAMなどが用いられる。また、内部メモリ135は、画像処理部133が行う画像処理、圧縮処理において、ワークメモリとしての役割も担う。内部メモリ135は、これらの役割を担うに相当する十分なメモリ容量を備える。メモリ制御部134は、いかなる作業にどれくらいのメモリ容量を割り当てるかを制御する。
【0026】
画像処理部133によって処理された静止画像データ、動画像データは、メモリ制御部134の制御により、内部メモリ135から外部機器IF137を介して、記録媒体の記録部138に記録される。記録媒体は、フラッシュメモリ等により構成される、カメラユニット30に対して着脱可能な不揮発性メモリである。
【0027】
画像処理部133で処理された画像データは、記録用に処理される画像データに並行して、表示用の画像データを生成する。生成された表示用の画像データは、表示制御部136の制御に従って、表示部44に表示される。記録の有無に関わらず、逐次表示用の画像データを生成して表示部44に表示すれば、電子ファインダ機能としてライブビューを実現できる。また、画像の表示と共に、もしくは画像を表示することなく、一眼レフカメラ10の各種設定に関する様々なメニュー項目も、表示制御部136の制御により表示部44に表示することができる。
【0028】
一眼レフカメラ10は、上記の画像処理における各々の要素も含めて、カメラシステム制御部130により直接的または間接的に制御される。カメラシステム制御部130は、カメラシステムメモリ131を備える。カメラシステムメモリ131は、電気的に消去・記録可能な不揮発性メモリであり、例えばEEPROM(登録商標)等により構成される。カメラシステムメモリ131は、一眼レフカメラ10の動作時に必要な定数、変数、プログラム等を、一眼レフカメラ10の非動作時にも失われないように記録している。カメラシステム制御部130は、定数、変数、プログラム等を適宜内部メモリ135に展開して、一眼レフカメラ10の制御に利用する。
【0029】
また、カメラシステムメモリ131は、メインミラー31に関するミラー情報を記録している。ミラー情報には、レンズユニット20を透過する被写体光束を反射させてファインダ光学系へ導く斜設状態と被写体光束を撮像素子へ導く退避状態との間で動作するメインミラー31の動作時間に関する情報が含まれる。メインミラー31の動作時間に関する情報として、メインミラー31が上述の斜設状態から退避状態へ移行する退避動作時間の情報が挙げられる。なお、メインミラー31と連動するサブミラー37の動作時間も加味してもよい。さらに、カメラシステムメモリ131は、撮影モードに応じて撮影時における露出値を規定するプログラム線図を撮影モードごとに記録している。
【0030】
カメラユニット30は、電源140から電力供給を受ける。電源制御部139は、電源140と通信して残電力の検出、電力供給の監視、給電を行う。電源140は、2次電池、家庭用AC電源等により構成される。また、レンズユニット20への給電は、レンズマウント27、カメラマウント45を介して行われる。
【0031】
カメラユニット30は、ユーザからの操作を受け付けるレリーズボタン、十字キー等の操作部材141を複数備えている。カメラシステム制御部130は、ユーザによる操作部材141の操作を検知し、操作に応じた動作を実行する。
【0032】
また、カメラシステム制御部130は、レリーズボタンの1段階目の押下げであるSW1のオンを検知することにより、測光センサ36が検知した測光データと、撮影モードに応じたプログラム線図とを用いて露出値を算出する。露出値は、絞り値とシャッタ速度とISO感度との組み合わせで規定される。カメラシステム制御部130は、算出した露出値が示す適正絞り値に絞り込む駆動信号を、レンズシステム制御部120を介して絞り23へ送信する。また、カメラシステム制御部130は、算出した露出値に従ってISO感度に対応する読み出しゲインを設定する制御信号を撮像素子42へ出力する。さらに、カメラシステム制御部130は、算出した露出値が示すシャッタ速度の情報をシャッタ制御部143へ出力する。
【0033】
そして、カメラシステム制御部130は、レリーズボタンの2段階目の押下げであるSW2のオンを検知することにより撮像素子42による被写体像の取得動作を実行する。ミラー制御部142は、メインミラー31およびサブミラー37の動作を制御する。シャッタ制御部143は、フォーカルプレーンシャッタ40の動作を制御する。ミラー制御部142およびシャッタ制御部143の詳細については後述する。
【0034】
フォーカス制御部144は、レリーズボタンのSW1のオンに応じて、AFセンサ39から出力される位相差信号に応じてオートフォーカス機能を実行する。具体的には、フォーカス制御部144は、位相差信号を用いてピントのずれ量を検出し、ずれをなくす位置にフォーカスレンズ21を移動させる駆動信号を、カメラシステム制御部130を介してレンズシステム制御部120へ出力する。
【0035】
ここで、本実施形態における絞り23の仮絞り値と撮影動作の関係について説明する。まず、撮影前において、ミラー制御部142は、メインミラー31を上述の斜設状態にする制御信号をメインミラー31の駆動回路に送信する。そして、メインミラー31は、レンズユニット20の光学系を透過する被写体光束を反射して上述のファインダ光学系へ導く。したがって、ユーザは、撮影前に光学ファインダで被写体を観察することができる。また、メインミラー31が斜設状態にある場合、サブミラー37は、メインミラー31を透過した一部の光束を反射して上述のAF光学系38へ導く位置に配置される。
【0036】
レリーズボタンのSW1のオンに応じて撮影動作が開始される。上述のとおり、カメラシステム制御部130は、レリーズボタンのSW1のオンに応じて露出値を算出する。そして、レリーズボタンのSW2のオンに応じて、ミラー制御部142は、メインミラー31を斜設状態から上述の退避状態へ移行させる制御信号をメインミラー31の駆動回路に送信する。メインミラー31は、ミラー制御部142からの制御信号に応じて、斜設状態から退避状態へ移行する。また、サブミラー37も、メインミラー31に連動して、被写体光束から退避する。本実施形態において、メインミラー31による斜設状態から退避状態への移行をミラー退避動作という。また、メインミラー31による斜設状態から退避状態への移行にかかる時間をミラー退避動作時間という。
【0037】
ミラー退避動作と同時に、カメラシステム制御部130は、適正絞り値に絞り込む駆動信号を、レンズシステム制御部120を介して絞り23へ送信する。絞り23は、カメラシステム制御部130からの駆動信号に応じて、開口部26を適正絞り値に対応する大きさに変更する絞り動作を実行する。
【0038】
シャッタ制御部143は、上述したミラー退避動作と絞り23の絞り動作とが完了すると、フォーカルプレーンシャッタ40にシャッタ動作を実行させる。具体的には、シャッタ制御部143は、フォーカルプレーンシャッタ40の先幕を開き、かつカメラシステム制御部130から受信したシャッタ速度の情報が示す時間だけ遅らせて後幕を動かす制御信号をフォーカルプレーンシャッタ40へ出力する。このように、レリーズボタンのSW2のオンからフォーカルプレーンシャッタ40のシャッタ動作の開始までのシャッタタイムラグは、ミラー退避動作時間および絞り23の駆動時間のうち長い方の時間となる。
【0039】
絞り23の駆動時間は、撮影前の絞り状態および露出値が示す適正絞り値に対応する適正絞り状態に応じて変動する。適正絞り値は、開放絞り値から最小絞り値までの値を取り得る。したがって、撮影前の絞り状態から適正絞り状態まで駆動する最大の時間である絞り23の最大駆動時間は、撮影前の絞り状態から開放絞り値に対応する開放絞り状態まで駆動する時間および撮影前の絞り状態から最小絞り値に対応する最小絞り状態まで駆動する時間のうちの長い方の時間となる。
【0040】
開放絞り値および最小絞り値は、絞り23の機構等によりレンズユニット20ごとに異なる。また、ミラー退避動作時間は、ミラーの機構、ミラーの駆動モータの特性などによりカメラユニット30ごとに異なる。そのため、レンズユニット20とカメラユニット30との組み合わせによっては、絞り23の最大駆動時間がミラー退避動作時間より長くなって、絞り23の駆動がシャッタタイムラグの要因となりうる。
【0041】
上述した従来の絞り機構では、撮影前に適正絞り値に応じた仮絞り値を決定し、仮絞り値に対応する絞り状態まで絞り込ませる制御が用いられている。そのため、被写体の輝度が大きく変動する場合、変動前の測光値に基づく適正絞り値で決定した仮絞り値と変動後の適正絞り値との差が大きくなってしまう。したがって、絞り機構の駆動量が大きくなり、変動後の適正絞り値まで絞りの開口部を駆動する時間がかかってしまう。
【0042】
これに対し、本実施形態では、カメラシステム制御部130は、撮影動作に先立って、絞り23の開放絞り値と最小絞り値とに応じて仮絞り値を決定し、絞り23を仮絞り値に対応する絞り状態まで絞り込んでおく。具体的には、カメラシステム制御部130は、絞り23の開放絞り値および最小絞り値の間の絞り値、例えば中央値、を仮絞り値として決定する。このように絞り23が取り得る絞り値の範囲で仮絞り値を決定することにより、被写体の輝度が変動しても、目標とする絞り値までの駆動する時間が常に一定の時間以下であることが期待できる。
【0043】
また、絞り23の駆動時間は、上述の絞り23の駆動速度能力に応じて変動する。そこで、本実施形態では、カメラシステム制御部130は、撮影動作に先立って、絞り23の駆動速度能力に応じて仮絞り値を決定し、絞り23を仮絞り値に対応する絞り状態まで絞り込んでおく。具体的には、カメラシステム制御部130は、最小絞り方向への移行速度が開放絞り方向への移行速度より大きい場合には、開放絞り値と最小絞り値との間の中央値より開放絞り側の値を仮絞り値に決定する。このように絞り23の駆動速度能力を考慮して仮絞り値を決定することにより、被写体の輝度が変動しても、目標とする絞り値までの駆動する時間が常に一定の時間以下であることが期待できる。
【0044】
次に、本実施形態における仮絞り値の決定処理の例を説明する。図3は、第1実施例を説明する図である。第1実施例において、カメラシステム制御部130は、仮絞り値に対応する仮絞り状態から、開放絞り値に対応する開放絞り状態まで駆動する時間と、最小絞り値に対応する最小絞り状態まで駆動する時間とが等しくなるように仮絞り値を決定する。
【0045】
図3において、tは、レリーズボタンのSW2がオンになった時点を示す。tは、第1実施例において、上述した絞り23の最大駆動時間を生じさせる駆動である、絞り23の最大駆動の完了時点を示す。なお、第1実施例において、絞り23の最大駆動は、仮絞り状態から開放絞り状態までの駆動および仮絞り状態から最小絞り状態までの駆動である。tは、第1実施例におけるミラー退避動作の完了時点を示す。tは、撮影前の絞り23を開放絞り状態にした場合における、絞り23の最大駆動の完了時点を示す。図3における実線は第1実施例の動作を示し、図3における二点鎖線は撮影前の絞り23を開放絞り状態にした場合の動作を示す。
【0046】
具体的には、まず、カメラシステム制御部130は、絞り23の開放絞り値、最小絞り値および駆動速度能力の情報を含む絞り情報を、レンズシステム制御部120を介して取得する。次に、カメラシステム制御部130は、絞り23の駆動速度能力の情報として含まれる、各絞り値から開放絞り値まで移行させる最小時間情報と、各絞り値から最小絞り値まで移行させる最小時間情報とを取得する。そして、カメラシステム制御部130は、開放絞り値まで移行させる最小時間と最小絞り値まで移行させる最小時間とが等しい絞り値を、仮絞り値として決定する。
【0047】
また、カメラシステム制御部130は、絞り23を実際に駆動して駆動時間を計測し、計測結果に応じて仮絞り値を決定してもよい。具体的には、まず、カメラシステム制御部130は、開放絞り値および最小絞り値の中央値を第1値と決定し、絞り23を第1値に対応する絞り状態にする。次に、カメラシステム制御部130は、絞り23を開放して、第1値に対応する絞り状態から開放絞り状態までの駆動時間を計測する。また、カメラシステム制御部130は、絞り23を第1値に対応する絞り状態に戻し、絞り23を絞り込んで、第1値に対応する絞り状態から最小絞り状態までの駆動時間を計測する。
【0048】
カメラシステム制御部130は、開放絞り状態までの駆動時間と最小絞り状態までの駆動時間を比較する。開放絞り状態までの駆動時間が最小絞り状態までの駆動時間より長い場合、カメラシステム制御部130は、開放絞り値および第1値の中央値を第2値と決定する。反対に、開放絞り状態までの駆動時間が最小絞り状態までの駆動時間より短い場合、カメラシステム制御部130は、最小絞り値および第1値の中央値を第2値と決定する。
【0049】
そして、カメラシステム制御部130は、第1値の場合と同様に、第2値に対応する絞り状態から開放状態までの駆動時間および最小絞り状態までの駆動時間を計測して比較する。カメラシステム制御部130は、上述の計測を繰り返し、開放絞り状態までの駆動時間と最小絞り状態までの駆動時間とが等しい絞り値を仮絞り値として決定する。
【0050】
なお、第1実施例において、開放絞り状態までの駆動時間と最小絞り状態までの駆動時間とが等しいとは、完全に等しい場合だけでなく、差異が許容範囲内である場合も含む。例えば、開放絞り状態までの駆動時間および最小絞り状態までの駆動時間のいずれかの5%以内を許容範囲としてもよい。
【0051】
また、絞り23の絞り値が離散的に規定されている場合には、カメラシステム制御部130は、開放絞り状態までの駆動時間と最小絞り状態までの駆動時間との差が最も小さい絞り値を仮絞り値として決定するようにしてもよい。
【0052】
図4は、第2実施例を説明する図である。第2実施例の処理は、第1実施例での処理によって最小化した絞り23の最大駆動時間がミラー退避動作時間より短くなった場合の処理である。図4において、tは、レリーズボタンのSW2がオンになった時点を示す。tは、第1実施例における絞り23の最大駆動の完了時点を示す。tは、第2実施例における絞り23の最大駆動の完了時点および第2実施例におけるミラー退避動作の完了時点を示す。なお、第2実施例において、絞り23の最大駆動は、仮絞り状態から開放絞り状態までの駆動および仮絞り状態から最小絞り状態までの駆動である。図4における実線は第2実施例の動作を示し、図4における二点鎖線は第1実施例の動作を示す。
【0053】
絞り23の最大駆動時間(t−t)がミラー退避動作時間(t−t)より短い場合、シャッタ動作は、ミラー退避動作の完了時点tで開始する。そのため、絞り23は、最大駆動を実行した場合であっても、シャッタ動作が開始されるまで(t−t)分の時間的余裕を持つことになる。そこで、第2実施例において、カメラシステム制御部130は、絞り23の開放絞り状態になる時点および最小絞り状態になる時点と、ミラー退避動作の完了時点とが一致するように、絞り23の駆動速度を調整する。
【0054】
具体的には、まず、カメラシステム制御部130は、第1実施例の処理を実行して絞り23の仮絞り値、絞り23の最大駆動時間(t−t)およびミラー退避動作時間(t−t)を取得する。そして、第1実施例における絞り23の最大駆動時間(t−t)とミラー退避動作時間(t−t)との比および駆動速度能力を用いて、仮絞り状態から開放絞り状態までの駆動時間および仮絞り状態から最小絞り状態までの駆動時間がミラー退避動作時間(t−t)と等しくなる移行速度を算出する。また、第1実施例と同様の手法で、カメラシステム制御部130は、絞り23を実際に駆動して駆動時間を計測し、計測結果に応じて駆動速度を決定してもよい。
【0055】
第2実施例によれば、絞り23は、ステッピングモータ24の駆動力を最大にして動作する必要がないことから、絞り23の駆動機構の負荷を減らすことができる。なお、第2実施例において、仮絞り状態から開放絞り状態までの駆動時間および最小絞り時間までの駆動時間の双方をミラー退避動作時間と等しくなるようにしたがこれに限らない。カメラシステム制御部130は、仮絞り状態から開放絞り状態までの駆動時間をミラー退避動作時間と等しくなるようにしてもよい。また、カメラシステム制御部130は、仮絞り状態から最小絞り状態までの駆動時間をミラー退避動作時間と等しくなるようにしてもよい。
【0056】
なお、第2実施例において、絞り23の開放絞り状態になる時点および最小絞り状態になる時点と、ミラー退避動作の完了時点との一致は、完全一致の場合だけでなく、差異が許容範囲内である場合も含む。例えば、ミラー退避動作時間の5%以内を許容範囲としてもよい。
【0057】
図5は、第3実施例を説明する図である。第3実施例の処理も、第2実施例と同様に、第1実施例での処理によって最小化した絞り23の最大駆動時間がミラー退避動作時間より短くなった場合の処理である。図5において、tはレリーズボタンのSW2がオンになった時点を示す。tは第1実施例において絞り23の最大駆動の完了時点を示す。tは、第2実施例において絞り23の最大駆動の完了時点および第2実施例におけるミラー退避動作の完了時点を示す。なお、第3実施例において、絞り23の最大駆動は、仮絞り状態から最小絞り状態までの駆動である。図5における実線は第3実施例の動作を示し、図5における二点鎖線は第1実施例の動作を示す。
【0058】
第3実施例において、カメラシステム制御部130は、絞り23の最小絞り値に対応する最小絞り状態になる時点と、ミラー退避動作の完了時点とが一致するように仮絞り値を決定する。具体的には、まず、カメラシステム制御部130は、絞り23の開放絞り値、最小絞り値および駆動速度能力の情報を含む絞り情報を、レンズシステム制御部120を介して取得する。次に、カメラシステム制御部130は、絞り23の駆動速度能力の情報として含まれる、各絞り値から最小絞り値まで移行させる最小時間の情報とを取得する。そして、カメラシステム制御部130は、最小絞り値まで移行させる最小時間とミラー退避動作時間とを一致させる絞り値を、仮絞り値として決定する。また、カメラシステム制御部130は、第1実施例と同様の手法を用いて、絞り23を実際に駆動して駆動時間を計測し、計測結果に応じて仮絞り値を決定してもよい。
【0059】
なお、第3実施例において、絞り23の最小絞り状態になる時点と、ミラー退避動作の完了時点との一致は、完全一致の場合だけでなく、差異が許容範囲内である場合も含む。例えば、ミラー退避動作時間の5%以内を許容範囲としてもよい。
【0060】
また、絞り23の絞り値が離散的に規定されている場合には、カメラシステム制御部130は、最小絞り状態になる時点とミラー退避動作の完了時点との差を最も小さくする絞り値を仮絞り値として決定するようにしてもよい。
【0061】
図6は、第4実施例を説明する図である。上述の第1から第3実施例は、1枚の撮影動作のときの処理であったが、第4実施例は連写撮影動作の処理である。ユーザがメニュー画面で連写撮影を設定し、レリーズボタンを押下し続けることにより、連写撮影が実行される。
【0062】
は、レリーズボタンのSW2がオンになった時点、すなわち第4実施例の1枚目の撮影動作の開始時点を示す。tは、第4実施例の1枚目の撮影動作においてミラー退避動作の完了時点を示す。tは、第4実施例の1枚目の撮影動作において絞り23の最大駆動の完了時点を示す。なお、第4実施例の1枚目の撮影動作において、絞り23の最大駆動は、開放絞り状態から最小絞り状態までの駆動である。tは、第4実施例の1枚目の撮影動作の終了時点、かつ2枚目の撮影動作の開始時点を示す。
【0063】
は、第4実施例の2枚目の撮影動作において絞り23の最大駆動の完了時点を示す。なお、第4実施例の2枚目の撮影動作において、絞り23の最大駆動は、仮絞り状態から開放絞り状態までの駆動および仮絞り状態から最小絞り状態である。tは、第4実施例の2枚目の撮影動作においてミラー退避動作の完了時点を示す。tは、第4実施例の2枚目の撮影動作の終了時点を示す。
【0064】
カメラシステム制御部130は、連写撮影に設定されている場合、1枚目の撮影前の絞り23を開放絞り状態にする。1枚目のシャッタ動作を完了して絞り23の状態を戻すときに、カメラシステム制御部130は、絞り23を開放絞り状態まで戻さず、第1実施例と同様の処理で決定した仮絞り値に対応する仮絞り状態まで戻す。2枚目以降のシャッタ動作を完了して絞り23の状態を戻すときも、仮絞り状態まで戻す。
【0065】
このように、1枚目の撮影前において絞り23を開放絞り状態にすることにより、測光センサ36への光量を多くして連写撮影開始時の測光精度を上げることができる。また、光学ファインダを明るくしてユーザが光学ファインダを通して被写体を確認し易くすることができる。
【0066】
図6に示すとおり、1枚目の撮影において、絞り23の最大駆動時間(t−t)は、ミラー退避動作時間(t−t)より長い。そのため、適正絞り値が最小絞りの場合には1枚目の撮影開始時点からシャッタ動作を開始するまでに絞り23の駆動時間(t−t)が必要となる。
【0067】
2枚目以降の撮影前において、カメラシステム制御部130は、絞り23を仮絞り状態にする。1枚目の撮影動作におけるミラー退避動作時間(t−t)と2枚目の撮影動作におけるミラー退避動作時間(t−t)とは等しい。2枚目の撮影において、絞り23の最大駆動時間(t−t)は、ミラー退避動作時間(t−t)より短くなる。このように、適正絞り値が最小絞りの場合であっても2枚目の撮影開始時点からシャッタ動作を開始するまで時間はミラー退避動作時間(t−t)で済み、2枚目の撮影動作時間を1枚目よりも短くすることができる。3枚目以降も2枚目と同様となる。したがって、2枚目以降の連写撮影の速度を高めることができる。
【0068】
第5実施例について説明する。第5実施例において、カメラシステム制御部130は、 撮影モードの設定の有無に応じて仮絞り値を切り替えてもよい。具体的には、カメラシステム制御部130は、撮影モードが設定されていない場合には、上述の第1から第3実施例の仮絞り値の決定処理により仮絞り値を決定し、撮影モードが設定された場合に、上述の撮影モードに応じた仮絞り値に変更する。
【0069】
カメラシステム制御部130は、撮影モードが設定された場合、撮影モードに対応するプログラム線図で採用されうる絞り範囲に応じて仮絞り値を決定する。図7は、風景モードのプログラム線図を示す。風景モードは、近くから遠くまでピントが合うように、絞り値を大きく設定する撮影モードである。なお、本実施形態におけるプログラム線図はISO100の場合である。図7のグラフにおいて、縦軸は絞り値、横軸はシャッタ速度、斜線は被写体の明るさを示す値であるEVを指す。
【0070】
ユーザが風景モードを設定した場合、カメラシステム制御部130は、図7で示されるプログラム線図をカメラシステムメモリ131から読み出す。図7に示すように、風景モードで採用されうる絞り範囲は、2.8から16である。したがって、絞り23の開放絞り値および最小絞り値がそれぞれ1.4および22であっても、風景モードが設定されている場合には絞り値は2.8から16の間の値が用いられる。
【0071】
そこで、カメラシステム制御部130は、風景モードで採用されうる絞り範囲の2.8から16の間で仮絞り値を決定する。例えば、カメラシステム制御部130は、上述の第1から第3実施例の仮絞り値の決定処理において、開放絞り値および最小絞り値の代わりに、風景モードで採用されうる絞り範囲における開放側の絞り値2.8および最小絞り側の絞り値16をそれぞれ用いて仮絞り値を決定する。このように撮影モードで採用されうる絞り範囲に応じて仮絞り値を決定することにより、絞り23の最大駆動時間を短縮することができる。
【0072】
また、カメラシステム制御部130は、ユーザが絞り優先モードを設定した場合に、ユーザが指定した絞り値と絞り23の開放絞り値の間の絞り値を仮絞り値として決定してもよい。絞り優先モードは、ユーザが絞りを指定するとカメラ側で最適なシャッタ速度を決定するモードである。
【0073】
本実施例において、絞り23の駆動速度能力の情報は、各絞り値からユーザが指定しうる絞り値の各々まで移行させる最小時間情報をさらに含む。まず、カメラシステム制御部130は、絞り23の開放絞り値、最小絞り値および駆動速度能力の情報を含む絞り情報を、レンズシステム制御部120を介して取得する。次に、カメラシステム制御部130は、絞り23の駆動速度能力の情報として含まれる、各絞り値から開放絞り値まで移行させる最小時間の情報と、各絞り値からユーザが指定しうる絞り値の各々まで移行させる最小時間情報とを取得する。そして、カメラシステム制御部130は、開放絞り値まで移行させる最小時間とユーザが指定した絞り値まで移行させる最小時間とが等しい絞り値を、仮絞り値として決定する。このようにユーザが指定した絞り値より開放絞り側の絞り値を仮絞り値とすることにより、ユーザが指定した絞り値に固定した場合に比べ光学ファインダが明るくなり、ユーザが光学ファインダを通して被写体を確認し易くなる。
【0074】
第6実施例について説明する。第6実施例において、カメラシステム制御部130は、カメラユニット30に装着されたピント板33の特性を考慮して仮絞り値を決定する。ピント板33の特性として、拡散性が挙げられる。ピント板33によっては絞り23の絞り値がF1.4であってもF2.8程度のボケ味しか出せない拡散性を有するものがある。そこで、このようにボケ味を規定するピント板の拡散性に応じた絞り値の情報をカメラシステムメモリ131に予め記録しておく。
【0075】
光学ファインダの明るさは、ピント板33の拡散性に応じた絞り値に対応した明るさに制限される。そのため、絞り23の絞り値をピント板33の拡散性に応じた絞り値より小さくしても、光学ファインダの明るさはピント板33の拡散性を示す絞り値に対応した明るさになる。
【0076】
そこで、カメラシステム制御部130は、上述の実施例、特に第3実施例で決定された仮絞り値がピント板33の拡散性を示す絞り値より小さい場合に、ピント板33の拡散性を示す絞り値を仮絞り値に変更する。このようにピント板33の特性は、光学ファインダの明るさを高める場合の仮絞り値の決定に利用することができる。
【0077】
第7実施例について説明する。第7実施例において、カメラシステム制御部130は、オートフォーカス機能の制限の有無に応じて仮絞り値を決定する。上述のとおり、フォーカス制御部144は、AFセンサ39の出力に応じてオートフォーカス機能を実行する。AFセンサ39で位相差信号が検出できる絞り値の範囲は、AFセンサ39の特性等により、例えば開放絞り値からF5.6まで、のように予め決まっている。そのため、オートフォーカス機能を実行可能にする場合には、カメラシステム制御部130は、AFセンサ39で位相差信号が検出できる絞り値の範囲内で仮絞り値を決定する。
【0078】
一方、マニュアルフォーカス、フォーカスロック等の設定によりオートフォーカス機能が制限されている場合には、AFセンサ39の出力は必要ない。そのため、仮絞り値を決定する場合にAFセンサ39で位相差信号が検出できる絞り値の範囲を考慮する必要がない。したがって、カメラシステム制御部130は、オートフォーカス機能が制限されている場合には、上述の実施例の仮絞り値の決定処理を用いて仮絞り値を決定する。このようにオートフォーカス機能の制限の有無に応じて仮絞り値を決定することにより、オートフォーカス機能の状況にあわせて絞り23の最大駆動時間を短縮することができる。
【0079】
図8は、絞り制御の処理フローを示す図である。本フローは、上述の第3実施例の絞り制御処理に対応する。本フローは、例えば、カメラユニット30の電源がオンにされたときに開始される。本実施形態において、カメラシステム制御部130が本フローの処理を実行する。
【0080】
ステップS101では、カメラシステム制御部130は、カメラユニット30に装着されたレンズユニット20を検知する。具体的には、カメラシステム制御部130は、カメラマウント45およびレンズマウント27を介してレンズシステム制御部120と接続することにより、レンズユニット20を検知する。ステップS102では、カメラシステム制御部130は、ステップS101で検知したレンズユニット20の絞り23の絞り情報をレンズシステムメモリ121から取得する。絞り情報には、絞り23の開放絞り値、最小絞り値、駆動速度能力等の情報が含まれる。
【0081】
ステップS103では、カメラシステム制御部130は、カメラシステムメモリ131からメインミラー31およびサブミラー37の動作に関するミラー情報を取得する。ミラー情報には、上述のミラー退避動作時間の情報が含まれる。ステップS104では、カメラシステム制御部130は、ステップS102で取得した絞り情報およびステップS103で取得したミラー情報を用いて仮絞り値を決定する。具体的には、上述の実施例3で説明したように、カメラシステム制御部130は、絞り23の最小絞り値に対応する最小絞り状態になる時点と、ミラー退避動作の完了時点とが一致するように仮絞り値を決定する。
【0082】
ステップS105では、カメラシステム制御部130は、ステップS104で決定した仮絞り値に対応する仮絞り状態へ変更する駆動信号を、レンズシステム制御部120を介して絞り23へ送信する。絞り23は、駆動信号に応じて、開口部26を仮絞り値に対応する大きさに変更する。ステップS106では、カメラシステム制御部130は、レリーズボタンの1段階目の押下げであるSW1がオンになったか否かを検知する。SW1がオンになるまでステップS106で待機し、SW1のオンを検知した場合、ステップS107へ移行する。
【0083】
ステップS107では、カメラシステム制御部130は、測光センサ36が検出した測光データを取得する。そして、ステップS108では、カメラシステム制御部130は、測光データに応じて撮影時の露出値を決定する。
【0084】
ステップS109では、カメラシステム制御部130は、レリーズボタンの2段階目の押下げであるSW2がオンになったか否かを検知する。SW2のオンを検知した場合、ステップS110へ移行する。SW1のオンを検知してから一定時間内、例えば数秒以内にSW2のオンを検知しなかった場合にはステップS113へ移行する。
【0085】
ステップS110では、カメラシステム制御部130は、ステップS110で決定した露出値が示す適正絞り値に対応する適正絞り状態へ変更する駆動信号を、レンズシステム制御部120を介して絞り23へ送信する。絞り23は、駆動信号に応じて、開口部26を適正絞り値に対応する大きさに変更する。また、ミラー制御部142は、メインミラー31を斜設状態から退避状態へ移行させる制御信号をメインミラー31の駆動回路に送信する。メインミラー31は、ミラー制御部142からの制御信号に応じて、ミラー退避動作を実行する。また、サブミラー37も、メインミラー31と連動して被写体光束から退避する。
【0086】
ステップS111では、シャッタ制御部143は、絞り23の適正絞り状態への絞り動作とミラー退避動作とが完了すると、フォーカルプレーンシャッタ40に上述のシャッタ動作を実行させる。ステップS112では、画像処理部133は、撮像素子42の出力をA/D変換器132を介して取得し、規格化された画像フォーマットの画像データに変換する。そして、画像処理部133で処理された画像データは記録部138に記録される。
【0087】
ステップS113では、カメラシステム制御部130は、カメラユニット30の電源がオフになったか否かを判断する。カメラユニット30の電源がオンのままである場合にはステップS106へ移行し、カメラユニット30の電源がオフになった場合には本フローを終了する。
【0088】
上述の図8のフローのステップS105において、カメラシステム制御部130は、被写界環境の明るさに応じて仮絞り値に対応する仮絞り状態へ移行させる駆動信号を絞り23へ送信するようにしてもよい。被写体環境が暗い場合において、絞り23を開放絞り状態から適正絞り値に対応する絞り状態まで移行させる絞り23の駆動時間は、被写体環境が明るい場合に比べて長くなる。そこで、ステップS105において、カメラシステム制御部130は、被写界環境の明るさが予め定められた明るさよりも暗い場合に、仮絞り状態へ移行させる駆動信号を絞り23へ送信する。
【0089】
具体的には、カメラシステム制御部130は、ステップS101からステップS104の処理と並行して、ステップS107およびステップS108の処理を実行して露出値を決定する。そして、ステップS105において、カメラシステム制御部130は、露出値を用いて、被写体環境が予め定められた明るさよりも暗いか否かを判断する。
【0090】
被写体環境が予め定められた明るさよりも暗くない場合には、カメラシステム制御部130は、駆動信号を送信せずにステップS106へ移行する。一方、被写体環境が予め定められた明るさよりも暗い場合には、カメラシステム制御部130は、駆動信号を送信してステップS106へ移行する。
【0091】
上述の実施形態において、カメラシステム制御部130は、仮絞り値を決定する決定部と、仮絞り値に従って絞り23を絞り込む駆動信号を撮影動作に先立って絞り23へ送信する送信部とを備える絞り制御装置として機能する。しかし、これに限らず、レンズシステム制御部120が、当該決定部および当該送信部を備える絞り制御装置として機能してもよい。
【0092】
上述の実施形態において、絞り23の絞り情報、メインミラー31のミラー情報、仮絞り値テーブルおよびピント板33の特性の情報は個別に記録されているが、これら情報をまとめた一つの絞り制御テーブルを予め生成してもよい。絞り制御テーブルは、レンズユニット、カメラユニットおよびピント板を指標としたマトリクス形式で管理されてもよい。なお、レンズユニットごとに区分するのではなくレンズユニットのグループ単位で区分してもよい。同様に、カメラユニットのグループ単位、ピント板のグループ単位で区分してもよい。生成した絞り制御テーブルは、レンズシステムメモリ121またはカメラシステムメモリ131に記録させる。
【0093】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記の実施形態に記載の範囲には限定されない。上記の実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0094】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0095】
10 一眼レフカメラ、11 光軸、20 レンズユニット、21 フォーカスレンズ、22 ズームレンズ、23 絞り、24 ステッピングモータ、25 絞り羽根、26 開口部、27 レンズマウント、30 カメラユニット、31 メインミラー、32 回転軸、33 ピント板、34 ペンタプリズム、35 接眼光学系、36 測光センサ、37 サブミラー、38 AF光学系、39 AFセンサ、40 フォーカルプレーンシャッタ、41 光学ローパスフィルタ、42 撮像素子、43 メイン基板、44 表示部、45 カメラマウント、120 レンズシステム制御部、121 レンズシステムメモリ、122 モータ駆動回路、130 カメラシステム制御部、131 システムメモリ、132 A/D変換器、133 画像処理部、134 メモリ制御部、135 内部メモリ、136 表示制御部、137 外部機器IF、138 記録部、139 電源制御部、140 電源、141 操作部材、142 ミラー制御部、143 シャッタ制御部、144 フォーカス制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影レンズの絞りの開放絞り値と最小絞り値とに基づいて前記絞りを絞り込む仮絞り値を決定する決定部と、
前記決定部により決定された前記仮絞り値に従って前記絞りを絞り込む駆動信号を、撮影動作に先立って、前記絞りへ送信する送信部と
を備える絞り制御装置。
【請求項2】
前記決定部は、前記絞りの駆動速度能力を考慮して前記仮絞り値を決定する請求項1に記載の絞り制御装置。
【請求項3】
前記決定部は、前記仮絞り値に対応する仮絞り状態から、前記開放絞り値に対応する開放絞り状態まで移行させる時間と、前記最小絞り値に対応する最小絞り状態まで移行させる時間とが等しくなるように前記仮絞り値を決定する請求項2に記載の絞り制御装置。
【請求項4】
前記決定部は、前記撮影レンズを透過する被写体光束を反射させてファインダ光学系へ導く斜設状態と、前記被写体光束から退避して撮像素子へ導く退避状態との間で動作するミラー部の動作時間を考慮して前記仮絞り値を決定する請求項1から3のいずれか1項に記載の絞り制御装置。
【請求項5】
前記決定部は、前記絞りが前記最小絞り値に対応する最小絞り状態になる時点と、前記ミラー部が前記斜設状態から前記退避状態になる時点とが一致するように、前記仮絞り値を決定する請求項4に記載の絞り制御装置。
【請求項6】
前記送信部は、連写撮影時における2枚目以降の前記撮影動作に先立って前記駆動信号を送信する請求項1から5のいずれか1項に記載の絞り制御装置。
【請求項7】
前記決定部は、オートフォーカス機能の制限の有無に応じて、前記仮絞り値を変更する請求項1から6のいずれか1項に記載の絞り制御装置。
【請求項8】
前記決定部は、設定された撮影モードに応じて、前記仮絞り値を変更する請求項1から7のいずれか1項に記載の絞り制御装置。
【請求項9】
前記決定部は、設定された前記撮影モードにおいて採用されうる絞り範囲に基づいて前記仮絞り値を変更する請求項8に記載の絞り制御装置。
【請求項10】
前記決定部は、前記撮影モードとして絞り優先モードが設定されている場合には、前記仮絞り値を、ユーザに指定された絞り値と前記開放絞り値の間の絞り値に変更する請求項8に記載の絞り制御装置。
【請求項11】
前記送信部は、被写体環境が予め定められた明るさよりも暗くなった場合に、前記駆動信号を送信する請求項1から10のいずれか1項に記載の絞り制御装置。
【請求項12】
前記決定部は、装着されたピント板の特性を考慮して前記仮絞り値を決定する請求項1から11のいずれか1項に記載の絞り制御装置。
【請求項13】
撮影レンズの絞りの駆動速度能力に基づいて前記絞りを絞り込む仮絞り値を決定する決定部と、
前記決定部により決定された前記仮絞り値に従って前記絞りを絞り込む駆動信号を、撮影動作に先立って、前記絞りへ送信する送信部と
を備える絞り制御装置。
【請求項14】
前記決定部は、前記撮影レンズを透過する被写体光束を反射させてファインダ光学系へ導く斜設状態と、前記被写体光束から退避して撮像素子へ導く退避状態との間で動作するミラー部の動作時間を考慮して前記仮絞り値を決定する請求項13に記載の絞り制御装置。
【請求項15】
前記決定部は、前記絞りが最小絞り値に対応する最小絞り状態になる時点と、前記ミラー部が前記斜設状態から前記退避状態になる時点とが一致するように、前記仮絞り値を決定する請求項14に記載の絞り制御装置。
【請求項16】
前記送信部は、連写撮影時における2枚目以降の前記撮影動作に先立って前記駆動信号を送信する請求項13から15のいずれか1項に記載の絞り制御装置。
【請求項17】
前記決定部は、オートフォーカス機能の制限の有無に応じて、前記仮絞り値を変更する請求項13から16のいずれか1項に記載の絞り制御装置。
【請求項18】
前記決定部は、設定された撮影モードに応じて、前記仮絞り値を変更する請求項13から17のいずれか1項に記載の絞り制御装置。
【請求項19】
前記決定部は、設定された前記撮影モードにおいて採用されうる絞り範囲に基づいて前記仮絞り値を変更する請求項18に記載の絞り制御装置。
【請求項20】
前記決定部は、前記撮影モードとして絞り優先モードが設定されている場合には、前記仮絞り値を、ユーザに指定された絞り値と前記絞りの開放絞り値の間の絞り値に変更する請求項18に記載の絞り制御装置。
【請求項21】
前記送信部は、被写体環境が予め定められた明るさよりも暗くなった場合に、前記駆動信号を送信する請求項13から20のいずれか1項に記載の絞り制御装置。
【請求項22】
前記決定部は、装着されたピント板の特性を考慮して前記仮絞り値を決定する請求項13から21のいずれか1項に記載の絞り制御装置。
【請求項23】
撮影レンズの絞りの開放絞り値と最小絞り値とに基づいて前記絞りを絞り込む仮絞り値を決定する決定ステップと、
前記決定ステップにより決定された前記仮絞り値に従って前記絞りを絞り込む駆動信号を、撮影動作に先立って、前記絞りへ送信する送信ステップと
をコンピュータに実行させる絞り制御プログラム。
【請求項24】
撮影レンズの絞りの駆動速度能力に基づいて前記絞りを絞り込む仮絞り値を決定する決定ステップと、
前記決定ステップにより決定された前記仮絞り値に従って前記絞りを絞り込む駆動信号を、撮影動作に先立って、前記絞りへ送信する送信ステップと
をコンピュータに実行させる絞り制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−25183(P2013−25183A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161057(P2011−161057)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】