説明

絞り機構及び光学機器

【課題】部品点数を削減し、省スペース化を実現した絞り機構及びそれを備えた光学機器を提供する。
【解決手段】絞り部材31は中央に円形状の絞り孔35を形成し、光を通過させる。また、絞り部材31は外周に複数の通し孔36を均等な間隔に形成している。金属線33は、複数の固定ピン32への掛止と複数の通し孔36への挿通とを交互に繰り返して星型形状に配し、絞り部材31を固定ピン32に固定している。また、金属線33は両端が通電回路へ接続され通電可能になっている。非通電時において、絞り部材31は殆ど応力が生じていない自然長であり、絞り孔35の大きさは最も小さい。金属線33に対して通電することで、金属線33は通電量に比例して収縮する。金属線33が収縮することで、絞り部材31は径方向外側に伸張し、絞り孔35の大きさは大きくなる。金属線33への通電量を制御することで、絞り孔35の大きさを変化させ、通過光量を調節する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絞り機構及びそれを用いた光学機器に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラは、通過光量を調節する絞り機構を備えている。従来の絞り機構は、複数の絞り羽根によって絞り開口を形成して、その複数の絞り羽根をモータの回転制御によって駆動させて絞り開口の大きさを変化させ、通過光量を調節している。このため、部品点数は多くなり、絞り機構は一定のスペースを必要とし、カメラの小型化には限界があった。
【0003】
そこで、カメラの小型化を目的とした絞り機構として、形状記憶合金の通電による伸縮によって小さい絞り開口を形成した絞り部材を大きい絞り開口を形成した絞り部材に重なるように移動させ、通過光量を調節する絞り機構や(例えば、特許文献1参照)、形状記憶合金の通電による伸縮によって2種類の大きさの絞り開口を形成した絞り部材を移動させて絞り開口を切り換え、通過光量を調節する絞り機構が知られている(例えば、特許文献2参照)。また、形状記憶合金の通電による伸縮によって絞り開口を形成する2枚の絞り羽根を移動させて絞り開口の大きさを変化させ、通過光量を調節する絞り機構が提案されている(例えば、特許文献3及び4参照)。これらの絞り機構によれば、絞り羽根の枚数その他の部品点数の削減及び絞り羽根の動力源の変更によって、必要となるスペースを小さくすることができる。
【特許文献1】特開平10−68979号公報
【特許文献2】特開平11−38468号公報
【特許文献3】特開2005−128450号公報
【特許文献4】特開2006−10723号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年カメラは、携帯電話にも搭載されるようになっている。携帯電話は、携帯性の向上を図るために小型化が進んでいる。これに伴いカメラの更なる小型化が要望されている。このため、絞り機構についても更に省スペース化することが必須課題となっていた。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためのものであり、部品点数を削減し、省スペース化を実現した絞り機構及びそれを備えた光学機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の絞り機構は、絞り孔の大きさを変化させ、通過光量を調節する絞り機構であって、絞り孔が中央に形成された柔軟性シートと、この柔軟性シートを囲むように間隔を均等にして設けられた複数の固定部材と、この複数の固定部材への掛止と柔軟性シートの外周に間隔を均等にして形成された複数の通し孔への挿通とを交互に繰り返すことで星型形状に配された、通電によって収縮する線状又は帯状の伸縮性部材とを備え、伸縮性部材が収縮することによって柔軟性シートは伸張して絞り孔を大きくすることを特徴とする。
【0007】
なお、柔軟性シートは厚みが径方向で異なり、径方向外側の方が内側より厚いことが好ましい。
【0008】
また、伸縮性部材は形状記憶合金であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の絞り機構によれば、絞り孔が中央に形成された柔軟性シートと、この柔軟性シートを囲むように間隔を均等にして設けられた複数の固定部材と、この複数の固定部材への掛止と柔軟性シートの外周に間隔を均等にして形成された複数の通し孔への挿通とを交互に繰り返すことで星型形状に配された、通電によって収縮する線状又は帯状の伸縮性部材とから構成されるので、部品点数は削減され、省スペース化を実現することができる。
【0010】
また、柔軟性シートは厚みが径方向で異なり、径方向外側の方が内側より厚いことより、絞り孔近傍に生じる応力を均等にすることができ、伸張された際に、より真円に近い絞り孔を作り出すことが可能となる。
【0011】
さらに、伸縮性部材は形状記憶合金であるので、耐久性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を適用した第1実施形態のカメラ付き携帯電話機(以下、単に「携帯電話機」という)11について図面を参照しながら説明する。図1に示すように、携帯電話機11は、ヒンジ部12により折り畳み自在に連結された受話部13と送話部14とからなる電話部15と、受話部13内に組み込まれているカメラモジュール16とから構成されている。受話部13の外面側にはカメラモジュール16が設けられ、カメラモジュール16は透明な保護板17によって保護されている。
【0013】
受話部13の内面側には、撮影した画像等が表示される液晶表示パネル18と、受話スピーカ19とが設けられている。送話部14の内面側には、送話マイク20のほか、送話時のダイヤル操作を行うためのダイヤルボタンや各種の設定ボタン、撮影時に操作されるシャッタボタンや絞り調節ボタン等からなる操作部21が設けられている。
【0014】
カメラモジュール16の電気的構成を示すブロック図を図2に示す。カメラモジュール16は、撮影レンズ22、絞り機構23、CCDイメージセンサ24、アンプ25、A/D変換器26、画像入力コントローラ27、CCDドライバ28及び通電回路29から構成され、CPU30によって総括的に制御されている。
【0015】
撮影レンズ22の後方には、CCDイメージセンサ24が配置されている。CCDイメージセンサ24は、CCDドライバ28に接続されており、CCDドライバ28を介してCPU30によって駆動が制御される。また、CCDイメージセンサ28は、光学的な被写体画像を電気的な撮像信号に変換して出力する。撮像信号はアンプ25で適当なレベルに増幅された後、A/D変換器26によってデジタル変換されて画像入力コントローラ27に画像データとして出力される。CPU30は、画像入力コントローラ27を制御して、画像データを液晶表示パネル18に表示させる。なお、本発明の特徴的部分である絞り機構23は、CCDイメージセンサ24の前方に配置されている。絞り機構23は、詳しくは後述するように、通電回路29からの通電によってF値(絞り値)が切り替えられ、通過光量を調節してCCDイメージセンサ24に受光させる。通電回路29は、操作部21の操作に応じてCPU30から信号を受け、絞り機構23への通電量を調節する。
【0016】
以下、本発明の特徴的部分である絞り機構23について図面を参照しながら詳しく説明する。絞り機構23は、図3(a)及び図3(b)に示すように、例えば、ゴムといった柔軟性素材からなる円形状の絞り部材(柔軟性シート)31と、この絞り部材31を囲むように間隔を均等にして設けられた固定ピン(固定部材)32と、絞り部材31を固定ピン32に固定するための、例えばチタン−ニッケル合金といった形状記憶合金からなる金属線(伸縮性部材)33と、この金属線33を固定するための固定ブロック34とから構成される。なお、形状記憶合金は、通電すると通電量に比例して収縮し、通電を止めると伸張して元の状態に戻る性質を有している。その性質から、人工筋肉とも称される。
【0017】
絞り部材31は、中央に円形状の絞り孔35を形成し、光を通過させる。また、絞り部材31は、外周に複数の通し孔36を均等な間隔に形成し、金属線33を挿通させることができる。金属線33は、複数の固定ピン32への掛止と複数の通し孔36への挿通とを交互に繰り返して星型形状に配し、絞り部材31を固定ピン32に固定している。固定ブロック34は、絞り部材31の近傍に設けられ、金属線33の両側を一つに束ねて固定する。
【0018】
金属線33は、両端が通電回路29へ接続され、通電可能になっている。非通電時において絞り機構23は、図3(a)に示す基準状態にある。この時、絞り部材31は殆ど応力が生じていない自然長であり、絞り孔35の大きさは最も小さく、F値は最も大きい。金属線33に対して通電することで、金属線33は通電量に比例して収縮する。固定ピン32に掛止された金属線33が収縮することで、金属線33が通し孔36を挿通する絞り部材31は径方向外側に伸張し、絞り機構23は図3(b)に示す伸張状態となる。この時、絞り孔35の大きさは基準状態のときと比べて大きくなり、F値は小さくなる。つまり、通電量を調節することでF値を切り替え、通過光量を調節することができる。このように、上記構成の絞り機構23は部品点数が少ないので、カメラモジュール16を小さくすることができ、携帯電話機11の小型化を実現することができる。
【0019】
以下、上記構成の絞り機構23の作用について説明する。絞り機構23を用いて通過光量を調節するときは、操作部21を操作して通電回路29に信号を送り、金属線33に対する通電量を調節する。絞り機構23は、通電量に応じて基準状態(図3(a))と伸張状態(図3(b))との間を駆動するので、F値を切り替えて通過光量を調節することができる。
【0020】
なお、上記第1実施形態の携帯電話機において、本発明の特徴的部分である絞り機構23は、柔軟性素材からなる絞り部材31を伸張させて、F値を切り替えて通過光量を調節している。このため、絞り部材31の伸張の際に、絞り部材31の絞り孔35近傍に生じる応力に偏りがあると、絞り孔35に歪み(ゆがみ)が生じてしまう。そこで、第2実施形態の携帯電話機11においては、絞り機構37を用いて、絞り孔35に歪み(ゆがみ)が生じにくい工夫がなされている。
【0021】
以下、第2実施形態を適用した携帯電話機11の特徴的部分である絞り機構37について図面を参照しながら説明する。図4(a)及び図4(b)に示すように、絞り機構37は、例えば、ゴムといった柔軟性素材からなる円形状の絞り部材(柔軟性シート)38を含む構成となっている。絞り部材38は、厚みが径方向で異なり、複数の通し孔36を含む径方向外側の引張部39の方が、絞り孔35を含む内側の絞り形成部40より厚くなっている。これにより、複数の通し孔36に挿通する金属線33によって絞り部材38が径方向外側に伸張された場合に、絞り孔35近傍に生じる応力を均等にすることができ、より真円に近い絞り孔35を作り出すことが可能となる。また、上記構成の絞り機構37は部品点数が少ないので、カメラモジュール16を小さくすることができ、携帯電話機11の小型化を実現することができる。なお、その他の構成は、第1実施形態の携帯電話機の特徴的部分である絞り機構23と同様であり、同じ部品については同一の符号を付して説明を省略する。
【0022】
以下、上記構成の絞り機構37の作用について説明する。絞り機構37を用いて通過光量を調節するときは、操作部21を操作して通電回路29に信号を送り、金属線33に対する通電量を調節する。絞り機構37は、通電量に応じて基準状態(図4(a))と伸張状態(図4(b))との間を駆動するので、F値を切り替えて通過光量を調節することができる。なお、絞り部材38は厚みが径方向で異なり、複数の通し孔36を含む径方向外側の引張部39の方が絞り孔35を含む内側の絞り形成部40より厚くなっているので、絞り孔35近傍に生じる応力を均等にすることができ、より真円に近い絞り孔35を作り出すことが可能である。
【0023】
なお、上記第1及び第2実施形態において、本発明の特徴的部分である絞り機構23、37は、金属線33の収縮を利用して柔軟性素材からなる円形状の絞り部材31、38を径方向外側に伸張させることで、その中央に形成された円形状の絞り孔35を大きくして通過光量を調節する構造であるが、本発明は、これに限定されるのではない。以下、第3実施形態を適用した携帯電話機11の特徴的部分である絞り機構41について図面を参照しながら説明する。図5(a)及び図5(b)に示すように、絞り機構41は、例えば、ゴムといった柔軟性素材からなる円形状の絞り部材42と、例えば、チタン−ニッケル合金といった形状記憶合金からなる金属線43と、この金属線(伸縮性部材)43を固定するための固定ブロック44とから構成される。
【0024】
絞り部材42は、中央に円形状の絞り孔45を形成し、光を通過させる。図5(a)に示すように、この絞り部材42には、通電によって収縮した状態にある3本の金属線43が正三角形状をなすように埋め込まれている。その3本の金属線43のそれぞれの両側は、絞り部材42の外周近傍から飛び出している。固定ブロック44は、絞り部材42の近傍に設けられ、絞り部材42から飛び出した金属線43を束ねて固定する。
【0025】
金属線43は、両端が通電回路29へ接続され、通電可能になっている。非通電時において絞り機構41は、図5(b)に示す伸張状態にある。この時、金属線43は収縮せずに、絞り部材42を径方向外側に伸張しており、絞り孔45の大きさは最も大きく、F値は最も小さい。金属線43に対して通電することで、金属線43は通電量に比例して収縮する。絞り部材42に埋め込まれた金属線43が収縮することで、絞り部材42は径方向外側への伸張が解除され、絞り機構41は図5(a)に示す基準状態となる。この時、絞り孔35の大きさは伸張状態のときと比べて小さくなり、F値は大きくなる。つまり、通電量を調節することでF値を切り替え、通過光量を調節することができる。このように、上記構成の絞り機構41は部品点数が少ないので、カメラモジュール16を小さくすることができ、携帯電話機11の小型化を実現することができる。なお、その他の構成は、第1実施形態の携帯電話機と同様であり、同じ部品については説明を省略する。
【0026】
以下、上記構成の絞り機構41の作用について説明する。絞り機構41を用いて通過光量を調節するときは、操作部21を操作して通電回路29に信号を送り、金属線43に対する通電量を調節する。絞り機構41は、通電量に応じて伸張状態(図5(a))と基準状態(図5(b))との間を駆動するので、F値を切り替えて通過光量を調節することができる。
【0027】
なお、上記各実施形態において、絞り機構23、37、41が携帯電話機11のカメラモジュール16に用いられる場合を例に説明したが、これに限定されるのではなく、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラなどの各種光学機器にも適用することができる。
【0028】
また、上記各実施形態において、伸縮性部材33、43の素材として形状記憶合金が用いられる場合を例に説明したが、これに限定されるのではなく、例えば、通電量に比例して収縮する高分子材料を用いても良い。
【0029】
また、上記各実施形態において、絞り部材31、38、42が円形状である場合を例に説明したが、この形状が最適であるだけであり、この形状に限定されるのではない。
【0030】
また、上記各実施形態において、伸縮性部材33、43の形状が線状(金属線)である場合を例に説明したが、これに限定されるのではない。第1及び第2実施形態においては、固定ピン32への掛止と絞り部材31、38に形成された通し孔36への挿通とができれば良く、第3実施形態においては、絞り部材42への埋め込みができれば良い。例えば、伸縮性部材33、43の形状は帯状であっても良い。
【0031】
なお、上記第3実施形態において、3本の金属線43が正三角形状をなすように埋め込まれている場合を例に説明したが、これに限定されるのではなく、4本以上の金属線43が正多角形状をなすように埋め込まれているのであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明を適用したカメラ付き携帯電話機の外観斜視図である。
【図2】カメラモジュールの電気的構成を示すブロック図である。
【図3】第1実施形態の携帯電話機の特徴的部分である絞り機構を示す構成図である。
【図4】第2実施形態の携帯電話機の特徴的部分である絞り機構を示す構成図である。
【図5】第3実施形態の携帯電話機の特徴的部分である絞り機構を示す構成図である。
【符号の説明】
【0033】
11 カメラ付き携帯電話機
12 ヒンジ部
13 受話部
14 送話部
15 電話部
16 カメラモジュール
17 保護板
18 液晶表示パネル
19 受話スピーカ
20 送話マイク
21 操作部
22 撮影レンズ
23、37、41 絞り機構
24 CCDイメージセンサ
25 アンプ
26 A/D変換器
27 画像入力コントローラ
28 CCDドライバ
29 通電回路
30 CPU
31、38、42 絞り部材
32 固定ピン
33、43 金属線
34、44 固定ブロック
35、45 絞り孔
36 通し孔
39 引張部
40 絞り形成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絞り孔の大きさを変化させ、通過光量を調節する絞り機構において、
前記絞り孔が中央に形成された柔軟性シートと、
この柔軟性シートを囲むように間隔を均等にして設けられた複数の固定部材と、
この複数の固定部材への掛止と前記柔軟性シートの外周に間隔を均等にして形成された複数の通し孔への挿通とを交互に繰り返すことで星型形状に配された、通電によって収縮する線状又は帯状の伸縮性部材とを備え、
前記伸縮性部材が収縮することによって前記柔軟性シートは伸張して前記絞り孔を大きくすることを特徴とする絞り機構。
【請求項2】
前記柔軟性シートは厚みが径方向で異なり、径方向外側の方が内側より厚いことを特徴とする請求項1記載の絞り機構。
【請求項3】
前記伸縮性部材は、形状記憶合金であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の絞り機構。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3いずれか記載の絞り機構を備えた光学機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−256847(P2007−256847A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−83982(P2006−83982)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】