説明

絞り機構

【課題】簡単な駆動機構により開口径を変化させることが可能な絞り機構を提供する。
【解決手段】絞り板1a、1b、1cの周りにベアリング(図示を省略)で滑らかに回転するように支持された回転円板8が配置され、回転円板8面上には120°間隔でピン8a、8b、8cが立てられている。回転円板8の回転中心は、前述の中心Oに一致している。直線運動軸受7a、7b、7cの可動部から腕9a、9b、9cが伸びており、それぞれ前記ピン8a、8b、8cに接している。腕9a、9b、9cとピン8a、8b、8cの間は、バネ10a、10b、10cによる付勢力で離れないようにされている。回転円板8が回転すると、ピン8a、8b、8cにより腕9a、9b、9cが押し引きされて直線運動軸受7a、7b、7cの可動部に取り付けられた絞り板1a、1b、1cが同時に同量動く。これにより、正六角形の穴6の大きさが変化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絞り機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光学装置等に用いられる絞り機構としては、種々のものが公知であるが、代表的なものが、実開平5−61735号公報(特許文献1)に記載されている。これは、複数枚の絞り羽根に固定軸、可動軸が植立されており、固定板の光軸を中心とする円周上に開けられた穴で固定軸が回転し、駆動板に設けられた溝を可動軸がスライドして、絞り径を調整するものである。
【0003】
また、特開平9−159935号公報(特許文献2)には、正方形、又は菱形の一頂点を有する孔を持つ絞り板を2枚重ね合わせ、正方形又は菱形の絞り機構を構成する方法が記載されている。
【0004】
さらには、特開2003−15043号公報(特許文献3)には、2枚の絞り羽根とカムを用い開口量を可変する機構が示されている。
【特許文献1】実開平5−61735号公報
【特許文献2】特開平9−159935号公報
【特許文献3】特開2003−15043号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、レーザ共焦点顕微鏡のような光学機器に用いられる絞り機構においては、絞り径を0.1mm程度にする必要があり、かつ、高い再現性が求められる。特許文献1に記載されるような、複数枚の羽根が駆動される絞り機構では、駆動板に設けられた溝をピンがスライドして駆動板を駆動するようになっているので、摺動部のクリアランスに起因してガタが生じてしまう。このガタのため、絞り径を大きくする場合と小さくする場合とでは、絞り径の大きさに10μm程度の差が生じ、再現性が悪いという問題点がある。又、これらのガタを除去するために、駆動機構を一方向に付勢する付勢機構を設けたとしても、部材同士の接触により摩耗し、経時変化が起こるという問題点がある。
【0006】
また、特許文献2、特許文献3に記載される方法では、絞りの形状が正方形又は菱形であり、円形に近くないという問題点がある。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、絞り形状が円形に近く、再現性が良く、かつ、経時変化の少ない絞り機構を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための第1の手段は、以下の(1)〜(4)を全て充足することを特徴とする絞り機構である。
【0009】
(1)絞り中心を中心として放射状に伸びるn(nは3以上の整数)本の中心線を含むような切り欠き部(穴)を有するn個の絞り板が放射状に、等角度間隔で重ね合わせて配置され、前記切り欠き部は、前記絞り中心を包含し、かつ、その周の少なくとも一部は2n角形の隣り合う2辺の形状を有し、前記隣り合う2辺は、前記中心線に対して対称とされ、その結果、これらの絞り板により、前記絞り中心を中心とする2n角形の穴が形成されていること。
【0010】
(2)前記絞り板は、前記2n角形に平行な面上で前記n本の中心線にそれぞれ平行に配置されたn個の直線運動機構上に取り付けられ、前記直線運動機構の可動部はn個が同時に同量動くようにその外側に設けられた回転運動→直線運動変換機構により駆動され、その結果、前記2n角形の穴は前記直線運動機構の可動部の動き量に伴い大きさが変化すること。
【0011】
(3)前記回転運動→直線運動変換機構は、前記n個の直線運動機構の周りに配置された回転円板上に角度n等分の位置に立てられたピンにより、前記直線運動機構の可動部より伸ばした腕を押し引きすることにより回転運動を直線運動に変換するものであり、かつ、前記ピンと前記腕は互いが密接するように付勢機構により付勢されていること。
【0012】
(4)前記回転円板がアクチェータにより駆動されること。
【0013】
前記課題を解決するための第2の手段は、以下の(1)〜(4)を全て充足することを特徴とする絞り機構である。
【0014】
(1)絞り中心を中心として放射状に伸びるn(nは3以上の整数)本の中心線を含むような切り欠き部(穴)を有するn個の絞り板が放射状に、等角度間隔で重ね合わせて配置され、前記切り欠き部は、前記絞り中心を包含し、かつ、その周の少なくとも一部は2n角形の隣り合う2辺の形状を有し、前記隣り合う2辺は、前記中心線に対して対称とされ、その結果、これらの絞り板により、前記絞り中心を中心とする2n角形の穴が形成されていること。
【0015】
(2)前記絞り板は、前記2n角形に平行な面上で前記n本の中心線にそれぞれ平行に配置されたn個の直線運動機構上に取り付けられ、前記直線運動機構の可動部はn個が同時に同量動くようにその外側に設けられた回転運動→直線運動変換機構により駆動され、その結果、前記2n角形の穴は前記直線運動機構の可動部の動き量に伴い大きさが変化すること。
【0016】
(3)前記回転運動→直線運動変換機構は、前記n個の直線運動機構の周りに配置された回転円板上に角度n等分の位置に立てられたピンにより、前記直線運動機構の可動部より伸ばした腕を押し引きすることにより回転運動を直線運動に変換するものであり、かつ、前記ピンと前記腕は互いが密接するように付勢機構により付勢されていること。
【0017】
(4)前記直線運動機構の可動部の1つがアクチェータにより駆動されること。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、絞り形状が円形に近く、再現性が良く、かつ、経時変化の少ない絞り機構を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態の例を図を用いて説明する。なお、以下の図においては、前出の図に示された構成要素と同じ構成要素には、同じ符号を付してその説明を省略することがある。
【0020】
図1は、本発明の実施の形態の1例である絞り機構に用いられる絞り板の概要を示す図である。絞り板1には切り欠き部(穴)2が形成されている。切り欠き部2の辺の一部は正六角形の2辺3、4となるように、中心線5に対し60度傾いている。
【0021】
このような絞り板1a、1b、1cを3枚、120度の間隔で重ね合わせたものを図2に示す。絞り板1aの2辺3a、4aと絞り板1bの2辺3b、4bと、絞り板1cの2辺3c、4cとで正六角形の穴6が形成される。
【0022】
正六角形の各辺は絞り板一枚の厚さ分ずつ光軸方向にずれて配置されることになり、板厚を0.03mmとすると最大0.18mm光軸方向のずれが生じる。しかし、コンフォーカル顕微鏡のピンホールにこの機構を用いる場合、ピンホール位置での焦点深度はこれより十分大きくなるので、このずれは問題にならない。
【0023】
この正六角形の穴6の中心をOとし、この点を絞り中心とする。そして、絞り中心Oと正六角形の2つの辺3a、4aの交点Aとを結ぶ線を中心線X、絞り中心Oと正六角形の2つの辺3b、4bの交点Bとを結ぶ線を中心線Y、絞り中心Oと正六角形の2つの辺3c、4cの交点Cとを結ぶ線を中心線Zとする。2つの辺3aと4aは、中心線Xに対して対称の関係にあり、2つの辺3b、4bは、中心線Yに対して対称の関係にある。同様、2つの辺3c、4cは、中心線Zに対して対称の関係にある。
【0024】
OA=OB=OCの関係を保ちながら、絞り板1a、1b、1cを、それぞれ中心線X、Y、Zに沿ってスライドさせることにより、正六角形の穴6の中心Oの位置を変えないで、正六角形の穴6の大きさを変えることができる。よって、正六角形の穴6を絞りとして用いれば、開口の大きさを連続的に変化可能な絞り機構が実現できる。
【0025】
同様のことは、絞り板の枚数を増やしても成り立つ。則ち、絞り中心を中心として等間隔で放射状に伸びるn(nは3以上の整数)本の中心線を含むように、切り欠き部を有するn個の絞り板を放射状に、等角度間隔で重ね合わせて配置し、切り欠き部を、絞り中心を包含し、少なくともその一部は正2n角形の隣り合う2辺の形状を有し、隣り合う2辺は、中心線に対して対称となるような構造とし、この隣り合う2辺の交点が、全ての絞り板について、絞り中心から等しい距離にあるように、絞り板を配置すれば、その結果、これら絞り板により、絞り中心を中心とする正2n角形の穴が形成される。そして、これら絞り板を、この正2n角形の頂点が、絞り中心から等距離にあるように、揃って、前記中心線に沿って移動することにより、絞り中心の位置を変えないで絞りの開口を可変することができる。絞り板の数が多くなるほど、正多角形の変数が増え、円に近くなるので好ましいが、その分、機構が複雑になる。
【0026】
以下、絞り板に前述のような動きをさせるメカニズムの例を図3を使用して説明する。図3において、絞り板1a、1b、1cの構成は図2に示すものと同じであり、それぞれ、X軸、Y軸、Z軸に平行な方向にスライドが可能なように直線運動軸受7a、7b、7cが配置され、これらの可動部に絞り板1a、1b、1cが取り付けられている。
【0027】
これら絞り板1a、1b、1cの周りにベアリング(図示を省略)で滑らかに回転するように支持された回転円板8が配置され、回転円板8面上には120°間隔でピン8a、8b、8cが立てられている。回転円板8の回転中心は、前述の中心Oに一致している。直線運動軸受7a、7b、7cの可動部から腕9a、9b、9cが伸びており、それぞれ前記ピン8a、8b、8cに接している。腕9a、9b、9cとピン8a、8b、8cの間は、バネ10a、10b、10cによる付勢力で離れないようにされている。回転円板8が回転すると、ピン8a、8b、8cにより腕9a、9b、9cが押し引きされて直線運動軸受7a、7b、7cの可動部に取り付けられた絞り板1a、1b、1cが同時に同量動く。直線運動軸受7a、7b、7cの可動部に必要なストロークは1mmであり、それによるピンと腕の接触点の横ずれ量は0.05mm程度であって問題となる量ではない。
【0028】
駆動は、図3に示すように、ステッピングモータ11によりボールネジ12を回転させ、ボールネジ12に螺合されたスクリューナット13(送り方向に対して直角方向の自由度のあるもの)を介して回転円板8を回転させることによってなされる。回転円板8に刻まれたネジ部に、ボールネジ12を螺合させるようにしてもよい。この場合、ピン8a、8b、8cが腕9a、9b、9cを押しながら回転することにより、回転円板8の回転運動が、直線運動軸受7a、7b、7cの可動部に取り付けられた絞り板1a、1b、1cを直線的に摺動させる直線運動に変換される。
【0029】
又は、図示しないが、直線駆動機構により、直線運動軸受7a、7b、7cの可動部の1つを、対応する固定部に沿って摺動させるようにしてもよい。それに伴い、腕9a、9b、9cのうちの1つがピン8a、8b、8cのうちの1つを押すことになり、この直線運動が回転円板8の回転運動に変換されて、駆動されていない直線運動軸受の可動部と絞り板をも同時に同量だけ駆動する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態の1例である絞り機構に用いられる絞り板の概要を示す図である。
【図2】図1に示すような絞り板を3枚、120度の間隔で重ね合わせたものを示す図である。
【図3】絞り板を駆動するメカニズムの例を示す図である。
【符号の説明】
【0031】
1…絞り板、1a,1b,1c…絞り板、2…切り欠き部、3…正六角形の1辺、3a,3b,3c…正六角形の1辺、4…正六角形の1辺、4a,4b,4c…正六角形の1辺、5…中心線、6…正六角形の穴、7a,7b,7c…直線運動軸受、8…回転円板、8a,8b,8c…ピン、9a,9b,9c…腕、10a,10b,10c…バネ、11…ステッピングモータ、12…ボールネジ、13…スクリューナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(1)〜(4)を全て充足することを特徴とする絞り機構。
(1)絞り中心を中心として放射状に伸びるn(nは3以上の整数)本の中心線を含むような切り欠き部(穴)を有するn個の絞り板が放射状に、等角度間隔で重ね合わせて配置され、前記切り欠き部は、前記絞り中心を包含し、かつ、その周の少なくとも一部は2n角形の隣り合う2辺の形状を有し、前記隣り合う2辺は、前記中心線に対して対称とされ、その結果、これらの絞り板により、前記絞り中心を中心とする2n角形の穴が形成されていること。
(2)前記絞り板は、前記2n角形に平行な面上で前記n本の中心線にそれぞれ平行に配置されたn個の直線運動機構上に取り付けられ、前記直線運動機構の可動部はn個が同時に同量動くようにその外側に設けられた回転運動→直線運動変換機構により駆動され、その結果、前記2n角形の穴は前記直線運動機構の可動部の動き量に伴い大きさが変化すること。
(3)前記回転運動→直線運動変換機構は、前記n個の直線運動機構の周りに配置された回転円板上に角度n等分の位置に立てられたピンにより、前記直線運動機構の可動部より伸ばした腕を押し引きすることにより回転運動を直線運動に変換するものであり、かつ、前記ピンと前記腕は互いが密接するように付勢機構により付勢されていること。
(4)前記回転円板がアクチェータにより駆動されること。
【請求項2】
以下の(1)〜(4)を全て充足することを特徴とする絞り機構。
(1)絞り中心を中心として放射状に伸びるn(nは3以上の整数)本の中心線を含むような切り欠き部(穴)を有するn個の絞り板が放射状に、等角度間隔で重ね合わせて配置され、前記切り欠き部は、前記絞り中心を包含し、かつ、その周の少なくとも一部は2n角形の隣り合う2辺の形状を有し、前記隣り合う2辺は、前記中心線に対して対称とされ、その結果、これらの絞り板により、前記絞り中心を中心とする2n角形の穴が形成されていること。
(2)前記絞り板は、前記2n角形に平行な面上で前記n本の中心線にそれぞれ平行に配置されたn個の直線運動機構上に取り付けられ、前記直線運動機構の可動部はn個が同時に同量動くようにその外側に設けられた回転運動→直線運動変換機構により駆動され、その結果、前記2n角形の穴は前記直線運動機構の可動部の動き量に伴い大きさが変化すること。
(3)前記回転運動→直線運動変換機構は、前記n個の直線運動機構の周りに配置された回転円板上に角度n等分の位置に立てられたピンにより、前記直線運動機構の可動部より伸ばした腕を押し引きすることにより回転運動を直線運動に変換するものであり、かつ、前記ピンと前記腕は互いが密接するように付勢機構により付勢されていること。
(4)前記直線運動機構の可動部の1つがアクチェータにより駆動されること。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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