説明

絞り装置、駆動モータおよびカメラ

【課題】軸受部材等を用いずに、固定子ユニットに回転子ユニットを回転可能にする。
【解決手段】本発明の絞り装置が備える絞り駆動モータ6は、固定子ユニット37と回転子ユニット38を有する。固定子ユニット37はボビン41を有し、回転子ユニット38は永久磁石51と作動部材52を有する。ボビン41は、軸受孔45が設けられた収容空間44と、先端部に軸受孔49が形成された可動アーム48とを一体に有する。作動部材52は、永久磁石51を収納する収納枠53と、一対の回転軸部54a,54bとを有する。可動アーム48は、永久磁石51を収容空間44に収容する際に、回転軸部54bに押し上げられて弾性変形することにより、回転軸部54bが軸受孔49に嵌合することを許容する。回転子ユニット38は、回転軸部54aを軸受孔45に嵌合させ、回転軸部54bを軸受孔49に嵌合させることにより、固定子ユニット37に回転可能に支持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絞り開口を調整する絞り装置と、これに用いられる駆動モータ、およびカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
監視カメラを含む各種のカメラには、外部から入射する光の量(以下、「入射光量」と記す)を調整するための絞り装置が組み込まれている。絞り装置は、入射光の光路上に存在する絞り開口の大きさを変えることによって入射光量を調整(適正化)するものである。絞り装置の仕組みとして、絞り部材の移動によって光量調整を行うものがある。具体的には、絞り部材として、一対の絞り羽根を用いるとともに、当該一対の絞り羽根を駆動する駆動モータとして、永久磁石を用いたものが公知となっている(たとえば、特許文献1〜3を参照)。
【0003】
図12は従来の絞り装置に用いられている駆動モータの概略的な構成例を示す分解斜視図である。また、図13は駆動モータの回転子ユニットの構成を示す分解斜視図であり、図14は駆動モータの組み立て状態を示す断面図である。駆動モータ101は、図12に示すように、回転子ユニット102と、固定子ユニット103と、軸受部材104と、ヨーク105とを備えた構成になっている。
【0004】
回転子ユニット102は、図13に示すように、永久磁石106と、作動部材107とを備えている。永久磁石106は、ヨーク105の外形(円筒形)にあわせて全体に円柱形に形成されている。永久磁石106は、円形断面の一方の半月部分をN極側とし、他方の半月部分をS極側として磁化されている。永久磁石106の中心軸には、当該中心軸に沿って軸孔108が形成されている。また、永久磁石106の外周面の一部には、切り欠き部109が形成されている。切り欠き部109は、永久磁石106の直径方向の一方と他方に対をなして形成されている。
【0005】
作動部材107は、たとえば、樹脂の一体成型品によって構成されている。作動部材107は、基部110と、一対のレバー部111と、軸部112とを一体に有している。基部110は、永久磁石106の外形に対応して板状に形成されている。基部110には、永久磁石106の切り欠き部109に対応して一対の立ち上がり部113が形成されている。一対のレバー部111は、基部110の外縁部から一方と他方に延びるように形成されている。また、一対のレバー部111は、それぞれクランク形状に曲げて形成されている。各々のレバー部111の先端部には爪部114が形成されている。爪部114は、図示しない絞り羽根の係合孔に差し込んで引っ掛けられる部分である。軸部112は、基部110の中心部から垂直に起立する状態で形成されている。軸部112は、基部110の上方に大きく突出するとともに、基部110の下方にも少し突出している。軸部112の一端と他端には、それぞれ小径部115が形成されている。軸部112の外径(小径部115を除く)は、上述した永久磁石106の軸孔108の孔径に対応している。
【0006】
上記構成からなる永久磁石106と作動部材107とを用いて回転子ユニット102を組み立てる場合は、まず、作動部材107の軸部112に永久磁石106の軸孔108を嵌合させた状態で、作動部材107に永久磁石106を実装する。このとき、永久磁石106の切り欠き部109を作動部材107の立ち上がり部113に嵌め入れる。この状態で、たとえば接着剤等を用いて永久磁石106と作動部材107を相互に固定する。これにより、永久磁石106と作動部材107を一体化した構成の回転子ユニット102が得られる。
【0007】
固定子ユニット103は、ボビン117と、2つのコイル118,119とを備えている。ボビン117は、たとえば、樹脂の一体成型によって得られるものである。ボビン117の内部には収容空間120が形成されている。収容空間120に面するボビン117の底部上面には軸受孔121が形成されている。コイル118,119は、ボビン117に巻かれている。コイル118,119の巻線位置は、両コイル間に介在するセパレータ122によって区切られている。セパレータ122は、ボビン117に一体に形成されている。また、ボビン117の上部には、左右に対をなして2つの凹状部123が形成されている。
【0008】
軸受部材104は、たとえば、樹脂の一体成型によって得られるものである。軸受部材104には、上述した2つの凹状部123に対応して2つ(図では1つのみ表示)の凸状部125が形成されている。また、軸受部材104には、軸受片126と保護片127とが一体に形成されている。軸受片126には軸受孔128が形成されている。
【0009】
ヨーク105は、全体に円筒形に形成されている。ヨーク105の内部空間は、上述した回転子ユニット102、固定子ユニット103および軸受部材104を収容し得る大きさになっている。
【0010】
上記構成からなる回転子ユニット102、固定子ユニット103、軸受部材104およびヨーク105を用いて、駆動モータ101を組み立てる場合は、まず、コイル118,119を巻線済みのボビン117を用意する。次に、軸受部材104の軸受片126の軸受孔128を、回転子ユニット102の軸部112上端の小径部115に嵌合させた状態で、回転子ユニット102に軸受部材104を装着する。
【0011】
次に、軸受部材104を装着した状態の回転子ユニット102を、ボビン117の収容空間120に挿入する。このとき、一対のレバー部111の先端部(爪部114)は、ボビン117の外側に若干突出した状態となる。また、ボビン117の内部では、当該ボビン117の軸受孔121に、回転子ユニット102の軸部112下端の小径部115を嵌め入れる。
【0012】
また、軸受部材104の保護片127は、ボビン117に巻かれたコイル118,119の上方を覆うように配置する。さらに、ボビン117に対して軸受部材104を横方向から押し付けることにより、ボビン117の2つの凹状部123に、軸受部材104の2つの凸状部125をそれぞれ嵌め入れる。これにより、図14に示すように、回転子ユニット102、固定子ユニット103および軸受部材104が一体的に組み付けられた状態となる。この状態でボビン117の外側にヨーク105を被せるとともに、図示しない中継基板と、各コイル118,119に導通する複数の端子129とを電気的に接続することにより、駆動モータ101が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第3746150号公報
【特許文献2】特開平10−333206号公報
【特許文献3】特開平11−183962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記従来の駆動モータ101においては、ボビン117の横方向から回転子ユニット102を挿入できるように、収容空間120の高さ寸法を軸部112の長さ寸法よりも十分に大きく設定している。また、ボビン117の収容空間120では、軸部112の上下端の小径部115を、それぞれに対応する軸受孔121,128に嵌合させることにより、回転子ユニット102を回転可能に支持している。このため、ボビン117に回転子ユニット102を取り付けるための部材として軸受部材104が必要とされていた。
【0015】
しかしながら、軸受部材104を用いた構成では、単に部品点数が増加するだけでなく、駆動モータ101の組み立てが面倒になる。特に、固定子ユニット103に回転子ユニット102を組み付ける工程では、回転子ユニット102の軸部112と軸受部材104の軸受孔128との嵌合状態を維持しながら、これらをボビン117の収納空間120に組み込むという煩雑な作業が必要になる。
【0016】
本発明の主な目的は、従来必要とされていた軸受部材等を用いなくても、固定子ユニットに回転子ユニットを回転可能に取り付けることができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の第1の態様は、
入射光を通過させる絞り開口を形成する絞り部材と、前記絞り部材を駆動する駆動モータとを備える絞り装置であって、
前記駆動モータは、
ボビンを有する固定子ユニットと、
前記ボビンに収容される永久磁石と、前記永久磁石が実装されるとともに、前記永久磁石の内部を通るように設定された仮想軸上で上方および下方に突出する一対の回転軸部が設けられた作動部材とを有し、前記仮想軸を中心に回転する回転子ユニットとを備え、
前記ボビンは、前記永久磁石を収容するとともに、第1の軸受孔が底部に設けられた収容空間と、前記収容空間の上部に前記第1の軸受孔と対向する状態で第2の軸受孔が形成され、かつ前記第2の軸受孔の形成部位側が上下方向に弾性変形可能とされた可動アームとを一体に有し、
前記可動アームは、前記永久磁石を前記ボビンの収容空間に収容する際に、前記一対の回転軸部のうち、上方に突出する回転軸部に押し上げられて弾性変形することにより、当該回転軸部が前記第2の軸受孔に嵌合することを許容するものであり、
前記回転子ユニットは、前記一対の回転軸部のうち、下方に突出する回転軸部を前記第1の軸受孔に嵌合させるとともに、前記上方に突出する回転軸部を前記第2の軸受孔に嵌合させることにより、前記仮想軸を中心として前記固定子ユニットに回転可能に支持されるものである
ことを特徴とする絞り装置である。
【0018】
本発明の第2の態様は、
前記ボビンの収容空間の底部に、当該収容空間の入口部分から前記第1の軸受孔の形成部位に向かって徐々に高くなる傾斜を有する案内面が形成されている
ことを特徴とする上記第1の態様に記載の絞り装置である。
【0019】
本発明の第3の態様は、
前記第2の軸受孔は、前記可動アームの先端部に形成され、
前記ボビンには、前記可動アームの先端部の上方を経由するようにコイルが巻線され、
前記可動アームの先端部とこれに対向する前記コイルの巻線位置との間には、前記可動アームの最大の押し上げ量以上の空隙が確保されている
ことを特徴とする上記第1または第2の態様に記載の絞り装置である。
【0020】
本発明の第4の態様は、
入射光を通過させる絞り開口を調整する絞り装置に用いられる駆動モータであって、
ボビンを有する固定子ユニットと、
前記ボビンに収容される永久磁石と、前記永久磁石が実装されるとともに、前記永久磁石の内部を通るように設定された仮想軸上で上方および下方に突出する一対の回転軸部が設けられた作動部材とを有し、前記仮想軸を中心に回転する回転子ユニットとを備え、
前記ボビンは、前記永久磁石を収容するとともに、第1の軸受孔が底部に設けられた収容空間と、前記収容空間の上部に前記第1の軸受孔と対向する状態で第2の軸受孔が形成され、かつ前記第2の軸受孔の形成部位側が上下方向に弾性変形可能とされた可動アームとを一体に有し、
前記可動アームは、前記永久磁石を前記ボビンの収容空間に収容する際に、前記一対の回転軸部のうち、上方に突出する回転軸部に押し上げられて弾性変形することにより、当該回転軸部が前記第2の軸受孔に嵌合することを許容するものであり、
前記回転子ユニットは、前記一対の回転軸部のうち、下方に突出する回転軸部を前記第1の軸受孔に嵌合させるとともに、前記上方に突出する回転軸部を前記第2の軸受孔に嵌合させることにより、前記仮想軸を中心として前記固定子ユニットに回転可能に支持されるものである
ことを特徴とする駆動モータである。
【0021】
本発明の第5の態様は、
上記第1〜第3の態様のいずれか一つに記載の絞り装置と、
前記絞り開口を通して入射する光を電気信号に変換する光電変換素子と、
を備えることを特徴とするカメラである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、絞り装置に用いられる駆動モータについて、従来必要とされていた軸受部材等を用いなくても、固定子ユニットに回転子ユニットを回転可能に取り付けることが可能となる。これにより、駆動モータの部品点数の削減と組み立て工数の削減を同時に図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明が適用されるカメラの構成例を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る絞り装置の平面図である。
【図3】図2のP矢視図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る絞り装置の底面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る絞り装置の分解斜視図である。
【図6】絞り駆動モータを斜め上方から見たときの分解斜視図である。
【図7】絞り駆動モータを斜め下方から見たときの分解斜視図である。
【図8】絞り駆動モータの回転子ユニットの断面図である。
【図9】絞り駆動モータの回転子ユニットの分解斜視図である。
【図10】絞り駆動モータの断面図である。
【図11】絞り駆動モータの各構成部分の相対的な位置関係を模式的に示す平面図である。
【図12】従来の絞り装置に用いられている駆動モータの概略的な構成例を示す分解斜視図である。
【図13】駆動モータの回転子ユニットの構成を示す分解斜視図である。
【図14】駆動モータの組み立て状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
本発明の実施の形態においては、次の順序で説明を行う。
1.カメラの構成
2.絞り装置の構成
3.絞り装置の動作
4.絞り駆動モータの詳細構成
5.実施の形態に係る効果
6.変形例等
【0025】
<1.カメラの構成>
図1は本発明が適用されるカメラの構成例を示すもので、(A)はカメラ全体の外観図、(B)は鏡筒内部の概略図である。図示したカメラ150は、たとえば、防犯目的に建物の天井部分(又は壁など)に設置される監視カメラである。このカメラ150は、取り付け台座151と、カメラ本体152とを備えている。取り付け台座151は、たとえば、ねじ止めによって建物の天井部分に固定される構造になっている。
【0026】
カメラ本体152は、鏡筒部153と、対物レンズ154とを備えている。鏡筒部153の内部には、対物レンズ154を含む光学系が組み込まれている。対物レンズ154は、鏡筒部153の先端に取り付けられている。また、カメラ本体152には、光学系の一機能部として、絞り装置1と撮像素子155とが組み込まれている。絞り装置1については、後段で詳しく説明する。
【0027】
撮像素子155は、カラー撮影が可能な撮像素子であって、たとえば、CCD(Charge Coupled Device)撮像素子、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)撮像素子などで構成される。撮像素子155は、たとえば、複数(多数)の画素を行列状に配置した撮像面を有する。撮像素子155は、絞り装置1の絞り開口を通して撮像面に入射する光を電気信号に変換する光電変換素子の一例として組み込まれている。
【0028】
なお、本発明は、ここで例示したカメラ150に限らず、絞り装置1を備える他の構成のカメラにも適用可能である。また、光学系の構成としても、レンズの種類・枚数・配置や、絞り装置1の配置等、種々の変更が可能である。
【0029】
<2.絞り装置の構成>
図2は本発明の実施の形態に係る絞り装置の平面図、図3は図2のP矢視図、図4はこの絞り装置の底面図である。また、図5は本発明の実施の形態に係る絞り装置の分解斜視図である。図示した絞り装置1は、大きくは、絞り基板2と、一対(2つ)の絞り羽根3,4と、フィルタユニット5と、絞り開口の調整を行うための駆動モータ(以下、「絞り駆動モータ」と記す)6と、光学フィルタの切り替えを行うための駆動モータ(以下、「フィルタ駆動モータ」と記す)7と、カバー部材8と、配線ユニット9とを備えた構成となっている。ただし、図5においては、絞り駆動モータ6とフィルタ駆動モータ7の表記を省略している。
【0030】
(絞り基板:図2〜図5)
絞り基板2は、絞り装置1のベースとなる部材である。絞り基板2は、たとえば、樹脂を用いて構成されている。絞り基板2は、図5に示すように、主に3つの基板部分11,12,13に分かれている。ただし、3つの基板部分11,12,13は一体構造になっている。基板部分11は、一対の絞り羽根3,4およびフィルタユニット5が取り付けられる部分である。基板部分12は、絞り駆動モータ6が搭載される部分であり、基板部分13は、フィルタ駆動モータ7が搭載される部分である。このうち、基板部分11には開口部14が形成されている。また。基板部分12には凹部15が形成され、基板部分13には凹部16が形成されている。開口部14は、絞り基板2の板厚方向に入射光を通過させるためのものである。凹部15は、絞り駆動モータ6を受け入れる部分であり、凹部16は、フィルタ駆動モータ7を受け入れる部分である。
【0031】
(絞り羽根、図2、図5)
一対の絞り羽根3,4は、入射光を通過させる絞り開口を形成する絞り部材の一例として設けられたものである。一対の絞り羽根3,4は、互いに重なり合った状態で絞り開口を形成する。絞り開口とは、カメラに入射する光の光路(入射光路)上に位置し、そこを通過する光の量を制限する開口をいう。このため、絞り開口の大きさが相対的に大きくなると、そこを通過する光の量(入射光量)が相対的に増大し、絞り開口の大きさが相対的に小さくなると、そこを通過する光の量が相対的に減少する。一対の絞り羽根3,4は、たとえば、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなる板状素材の表面をカーボンの膜で被覆したものを用いて構成されている。各々の絞り羽根3,4は、全体的に薄板状に形成されている。
【0032】
一方の絞り羽根3には、1つの孔部17と、3つの案内溝18a,18b,18cと、1つの係合孔19とが設けられている。孔部17は、真円またはそれに近い円形状をなし、この円形状の一部をV字形に切り欠いた形態の平面形状を有している。孔部17の一部(V字形の切り欠き部分)には、ND(Neutral Density)フィルタ20が取り付けられている。3つの案内溝18a,18b,18cは、絞り羽根3の長手方向に沿って互いに平行に形成されている。3つの案内溝18a,18b,18cのうち、2つの案内溝18b,18cは、同一直線上に形成されている。そして、これら2つの案内溝18b,18cに対して、孔部17を挟んだ反対側の縁部に、残り1つの案内溝18aが形成されている。係合孔19は、上記2つの案内溝18b,18cの延長線上に形成されている。また、係合孔19は、絞り羽根3の短手方向に沿って平面視長孔状に形成されている。
【0033】
他方の絞り羽根4には、1つの切り欠き部21と、3つの案内溝22a,22b,22cと、1つの係合孔23とが設けられている。切り欠き部21は、U字形に切り欠いた形態の平面形状を有している。切り欠き部21の底部はV字形に形成され、このV字形の部分にNDフィルタ24が取り付けられている。切り欠き部21は、先述した孔部17との重なりによって絞り開口を形成する部分である。3つの案内溝22a,22b,22cは、絞り羽根4の長手方向に沿って互いに平行に形成されている。3つの案内溝22a,22b,22cのうち、2つの案内溝22a,22bは、同一直線上に形成されている。そして、これら2つの案内溝22a,22bに対して、切り欠き部21を挟んだ反対側の縁部に、残り1つの案内溝22cが形成されている。係合孔23は、上記2つの案内溝22a,22bの延長線上に形成されている。また、係合孔23は、絞り羽根4の短手方向に沿って平面視長孔状に形成されている。
【0034】
(フィルタユニット:図4、図5)
フィルタユニット5は、光学的なフィルタ機能を果たすものである。フィルタユニット5は、2つの光学フィルタ26,27と、これら2つの光学フィルタ26,27を平面的に並べた状態で支持するフィルタ支持部材28とを用いて構成されている。
【0035】
2つの光学フィルタ26,27は、たとえば、次のようなフィルタを組み合わせた構成になっている。すなわち、一方の光学フィルタ26は、赤外線カットフィルタによって構成され、他方の光学フィルタ27は、ダミーフィルタによって構成されている。赤外線カットフィルタは、たとえば、赤外線を吸収することによって当該赤外線の通過を遮断する特性を有する光学フィルタである。ダミーフィルタは、赤外線カットフィルタと等しい屈折率を有する光学フィルタである。
【0036】
フィルタユニット5に赤外線カットフィルタとダミーフィルタを設ける理由は、光学フィルタの配置状態を切り替えたときに、その切り替えの前後で焦点距離(光学系の主点から焦点までの距離)にずれが生じないようにするためである。さらに詳述すると、ダミーフィルタがない場合は、赤外線カットフィルタを入射光路上に配置した状態と配置しない状態で、そこを通過する光の屈折率の差によって焦点距離にずれが生じる。これに対して、赤外線カットフィルタと差し替えるかたちでダミーフィルタを入射光路上に配置すれば、光の屈折率差による焦点距離のずれが解消される。以上の理由でフィルタユニット5にダミーフィルタを設けている。ただし、2つの光学フィルタ26,27を設ける理由は、これ以外の理由であってもかまわない。
【0037】
(絞り駆動モータ:図2、図3)
絞り駆動モータ6は、絞り装置1において絞り部材を駆動するための駆動モータである。より具体的には、絞り駆動モータ6は、一対の絞り羽根3,4が形成する絞り開口を調整するために、一対の絞り羽根3,4を相対的に移動させる駆動源となるモータである。
【0038】
(フィルタ駆動モータ:図2、図3)
フィルタ駆動モータ7は、絞り装置1において光学フィルタを駆動するための駆動モータである。より具体的には、フィルタ駆動モータ7は、光学フィルタ26,27の配置状態を切り替えるために、フィルタユニット5を移動させる駆動源となるモータである。
【0039】
(カバー部材:図4、図5)
カバー部材8は、絞り基板2の基板部分12,13の裏側に取り付けられる板状の部材である。カバー部材8には2つの取付片8a(図5を参照)が一体に形成されている。これらの取付片8aは、絞り基板2にカバー部材8を取り付けるためのものである。カバー部材8は、絞り基板2に搭載される絞り駆動モータ6およびフィルタ駆動モータ7の各動力伝達機構部分を外部から遮蔽して保護する部材である。
【0040】
(配線ユニット:図2〜図4)
配線ユニット9は、絞り駆動モータ6およびフィルタ駆動モータ7を図示しないモータ制御回路に電気的に接続するためのものである。配線ユニット9は、絞り駆動モータ6の中継基板34に接続される4本の配線35aと、フィルタ駆動モータ7の中継基板36に接続される2本の配線35bとを備えている。4本の配線35aの端部にはコネクタ40aが装着され、2本の配線35bの端部にはコネクタ40bが装着されている。
【0041】
<3.絞り装置の動作>
(絞り動作)
次に、絞り装置の絞り動作について説明する。
絞り動作とは、一対の絞り羽根3,4が形成する絞り開口の大きさを変える動作をいう。より具体的に記述すると、絞り動作とは、一対の絞り羽根2,3を相対的に移動させることにより、絞り開口を調整する動作をいう。絞り装置において絞り開口を調整する動作は、絞り装置を備えるカメラにおいて入射光量を調整する動作と実質的に同一である。
【0042】
実際に絞り装置1で絞り開口を調整する場合は、絞り駆動モータ6を駆動する。具体的には、絞り駆動モータ6が備えるコイルへの通電によって磁界を形成する。そうすると、コイルへの通電によって形成される磁界の向きおよび強さに応じて、一対の絞り羽根3,4が絞り基板2の長手方向(図5のX方向)に移動する。このとき、一方の絞り羽根3が移動する方向と他方の絞り羽根4が移動する方向とは、互いに逆方向になる。このように一対の絞り羽根3,4を相対的に移動させると、絞り羽根3,4の重なり合いによって形成される絞り開口の大きさが変化する。このため、絞り駆動モータ6の駆動によって絞り開口を調整することが可能となる。
【0043】
(フィルタ切り替え動作)
次に、絞り装置のフィルタ切り替え動作について説明する。
フィルタ切り替え動作とは、光学フィルタ26,27の配置状態を切り替える動作をいう。より具体的に記述すると、フィルタ切り替え動作とは、上記の絞り開口を通る光路に一方の光学フィルタ26を配置した第1の配置状態と、当該光路に他方の光学フィルタ27を配置した第2の配置状態との間で、光学フィルタ26,27の配置を切り替える動作をいう。一方の光学フィルタ26を光路に配置した場合は、他方の光学フィルタ27が光路から退避した状態となり、他方の光学フィルタ27を光路に配置した場合は、一方の光学フィルタ26が光路から退避した状態となる。
【0044】
実際に絞り装置1で光学フィルタ26,27の配置状態を切り替える場合は、フィルタ駆動モータ7を駆動する。具体的には、フィルタ駆動モータ7が備えるコイルへの通電によって磁界を形成する。そうすると、コイルへの通電によって形成される磁界の向きおよび強さに応じて、フィルタユニット5が絞り基板2の長手方向(図5のX方向)に移動する。このとき、たとえば、フィルタユニット5がX方向の一方に移動すると上記第1の配置状態となり、フィルタユニット5がX方向の他方に移動すると上記第2の配置状態となる。このため、フィルタ駆動モータ7の駆動によって光学フィルタ26,27の配置状態を切り替えることが可能となる。
【0045】
<4.絞り駆動モータの詳細構成>
次に、絞り駆動モータの詳細な構成について説明する。
図6は絞り駆動モータを斜め上方から見たときの分解斜視図であり、図7は絞り駆動モータを斜め下方から見たときの分解斜視図である。また、図8は絞り駆動モータの回転子ユニットの断面図であり、図9は回転子ユニットの分解斜視図である。さらに、図10は絞り駆動モータの断面図である。図示のように、絞り駆動モータ6は、上述した中継基板34等の他に、固定子ユニット37と、回転子ユニット38と、ヨーク39とを備えた構成になっている。
【0046】
(固定子ユニット:図6、図7、図10)
固定子ユニット37は、ボビン41と、2つのコイル42,43とを備えている。ボビン41は、たとえば、樹脂の一体成型によって得られるものである。ボビン41の内部には収容空間44が形成されている。収容空間44は、回転子ユニット38を収容するための空間となる。収容空間44に面するボビン41の底部上面には、軸受孔(第1の軸受孔)45と案内面46が形成されている。軸受孔45は、ボビン41の底部上面の中央部に設けられている。案内面46は、収容空間44の入口部分から軸受孔45の形成部分に向かって徐々に高くなる傾斜を有している。ボビン41の外周部には、収容空間44に通じる通孔41a(図6を参照)が形成されている。
【0047】
コイル42,43は、いずれも空芯コイルであって、互いに隣り合う状態でボビン41に巻かれている。また、各々のコイル42,43は、上記の収容空間44を取り囲むようにボビン41に縦に巻かれている。2つのコイル42,43のうち、一方のコイルは駆動用のコイルであり、他方のコイルは位置検出用のコイルである。駆動用のコイルとは、回転子ユニット38を回転動作させるための磁界(磁気駆動力)を発生するコイルをいう。位置検出用のコイルとは、回転子ユニット38の回転方向の位置(向き)を検出するためのコイルをいう。ここでは一例として、コイル42を駆動用のコイルとし、コイル43を位置検出用のコイルとする。
【0048】
そうした場合、駆動用のコイル42は、図示しないモータ制御回路の電流供給部から電流を供給することにより、回転子ユニット38を回転動作させるための磁界を発生する。このとき、コイル42が発生する磁界の向きは、コイル42に流れる電流の方向によって決まる。また、コイル42が発生する磁界の強さは、コイル42に流れる電流の量によって決まる。一方、位置検出用のコイル43は、後述する永久磁石51が回転したときの磁場の変化によってコイル43に流れる電流を、図示しないモータ制御回路の電流検出部で検出することにより、回転子ユニット38の回転方向の位置を検出可能とするものである。コイル42,43の巻線位置は、両コイル間に介在するセパレータ47によって区切られている。セパレータ47は、ボビン41に一体に形成されている。
【0049】
上述のようにコイル42,43が巻かれるボビン41には、可動アーム48(図10を参照)が一体に形成されている。可動アーム48の基端部は、収容空間44の入口部分の上端に位置している。可動アーム48の基端部の位置は固定されている。可動アーム48は、収容空間44の入口部分から収容空間44の奥側(中心部側)に向かって斜め下方に延びている。このため、可動アーム48の先端側は、可動アーム48自身の撓みによって上下方向に弾性変形可能になっている。可動アーム48の先端部には軸受孔(第2の軸受孔)49が形成されている。また、可動アーム48の先端部は収容空間44の上部に位置し、そこに形成された軸受孔49は、先述した軸受孔45と上下方向で対向する状態に配置されている。また、2つの軸受孔45,49は、ほぼ同一の軸線上に配置されている。
【0050】
さらに、ボビン41には4つの端子50が設けられている。端子50は、金属等の導電材料によって構成されている。ボビン41の上部において、コイル42の隣に配置された2つの端子50は、上述した中継基板34とコイル42とを電気的に接続するものである。一方、コイル43の隣に配置された2つの端子50は、中継基板34とコイル43とを電気的に接続するものである。4つの端子50は、上述した4本の配線35a(図2〜図4を参照)と1:1の関係で対応している。
【0051】
(回転子ユニット、図6〜図10)
回転子ユニット38は、永久磁石51と、作動部材52とを備えている。永久磁石51は、回転子ユニット38自身に回転力を発生させるコアとなる磁石である。永久磁石51は、たとえば、ネオジウム磁石、サマリウムコバルト磁石などの希土類磁石によって構成されている。
【0052】
永久磁石51は、角柱形に形成されている。さらに詳述すると、永久磁石51は、図9に示すように、3次元方向の磁石の寸法をそれぞれD×W×Hと規定すると、次に記述する6つの矩形の面(以下、「矩形面」という)で構成される六面体(直方体)になっている。すなわち、永久磁石51は、縦横寸法がW×Hで規定される2つの矩形面51aと、縦横寸法がD×Hで規定される2つの矩形面51bと、縦横寸法がD×Wで規定される2つの矩形面51cとを組み合わせた六面体になっている。ここで記述する矩形とは、長方形(正方形を含む)を意味する。永久磁石51の2つの矩形面(たとえば、矩形面51aと矩形面51b)がなす角(カド)の部分は、ラウンド形状またはC面取り形状に形成されている。永久磁石51は、上記寸法Dの半分の位置を境にして、一方の半体部分をN極側とし、他方の半体部分をS極側として磁化されている。
【0053】
作動部材52は、永久磁石51を実装するとともに、一対の絞り羽根3,4を移動動作させる部材である。作動部材52は、たとえば、樹脂の一体成型品によって構成されている。作動部材52は、永久磁石51を収納する収納枠53と、この収納枠53の上面部および下面部にそれぞれ設けられた回転軸部54a,54bと、収納枠53の左右両側に突出する一対のレバー部55とを一体に有している。
【0054】
収納枠53は、永久磁石51の外形に対応した矩形の枠形状に形成されている。収納枠53の内部は、永久磁石51の外形寸法(D,W,H)に対応した収納空間56になっている。収納枠53は、底板部57と、この底板部57から起立する一対の側板部58と、各々の側板部58の上端部間に掛け渡された天板部59とによって形成されている。そして、底板部57、一対の側板部58および天板部59に囲まれた空間が収納空間56になっている。
【0055】
底板部57は、平面視略円形に形成されている。底板部57の上面には、可撓性を有するラッチ部60が形成されている。ラッチ部60は、収納空間56の入口部分(永久磁石51の挿入口部分)の開口縁に設けられている。ラッチ部60は、収納枠53に収納される永久磁石51の抜けを防止するものである。これに対して、収納空間56の奥側には、突き当て部61(図7を参照)が設けられている。突き当て部61は、当該突き当て部61に永久磁石51を突き当てることにより、収納空間56で永久磁石51が規定の位置に配置されるように、永久磁石51を位置決めするものである。突き当て部61は、底板部57と天板部59との間に掛け渡すように棒状に2本並んで形成されている。
【0056】
一対の側板部58は、左右に対をなして配置されている。これらの側板部58は、互いに対向する状態で配置されている。各々の側板部58は、側面視矩形に形成されている。また、各々の側板部58の内面には、それぞれ凸部62が設けられている。凸部62は、収納枠53に永久磁石51を収納する際に、永久磁石51が移動する方向に沿って一直線上に形成されている。また、凸部62は、一つの側板部58に2つずつ設けられている。各々の凸部62は、断面三角形に形成されている。各側板部58に設けられた2つの凸部62は、上下に適度な間隔をあけて配置されている。また、一方の側板部58に設けられた2つの凸部62と、他方の側板部58に設けられた2つの凸部62は、底板部57の上面を基準にして、同じ高さ位置に配置されている。このため、各側板部58に設けられた凸部62は、収納空間56を介して互いに対向している。また、各々の凸部62は、底板部57の上面と平行に形成されている。天板部59は、平面視略小判形に形成されている。天板部59は、底板部57と上下に対向する状態で配置されている。
【0057】
回転軸部54aは、底板部57の下面中央部に設けられている。回転軸部54aは、底板部57の下面から下方に突出する状態で形成されている。回転軸部54aは、平面視円形の軸構造を有するものである。回転軸部54aの端面は、部分的に斜めに切り欠かれている。
【0058】
回転軸部54bは、天板部59の上面中央部に設けられている。回転軸部54bは、天板部59の上面から上方に突出する状態で形成されている。回転軸部54bの中心軸と回転軸部54aの中心軸とは、同軸の状態に配置されている。回転軸部54bは、平面視円形の軸構造を有するものである。回転軸部54bの端面は、部分的に斜めに切り欠かれている。ただし、回転軸部54aと回転軸部54bの各端面の切り欠き部分は、互いに反対向きになっている。
【0059】
なお、凸部62は、一つの側板部58に一つ設けた構成であってもよいが、収納枠53の収納空間56内に永久磁石51を安定的に保持するうえでは一つの側板部58に上下に位置をずらして2つ以上の凸部62を設けることが好ましい。
【0060】
一対のレバー部55は、底板部57の外周縁から一方と他方に延びるように形成されている。一対のレバー部55は、それぞれクランク形状に曲げて形成されている。各々のレバー部55の先端部には爪部63が形成されている。一方のレバー部55の爪部63は、前述した絞り羽根3の係合孔19(図5を参照)に差し込んで引っ掛けられる部分である。他方のレバー部55の爪部63は、前述した絞り羽根4の係合孔23(図5を参照)に差し込んで引っ掛けられる部分である。
【0061】
(ヨーク:図6、図7、図10)
ヨーク39は、外部への磁力線の漏洩を抑制するものである。ヨーク39は、全体に円筒形に形成されている。ヨーク39の内部空間は、上述した固定子ユニット37、回転子ユニット38を収容し得る大きさになっている。ただし、ボビン41の下部と作動部材52の下部(主にレバー部55)は、ヨーク39の下端部よりも下方にはみ出した状態で配置される。
【0062】
(絞り駆動モータの動作)
図11は絞り駆動モータの各構成部分の相対的な位置関係を模式的に示す平面図である。図示のように、永久磁石51は、N極とS極に分極されている。回転軸部54a,54bの軸芯は、永久磁石51の矩形面51cのほぼ中心に位置している。一対のレバー部55は、作動部材52の底板部57の外周縁から外向きに延びている。永久磁石51の外側には、駆動用のコイル42と位置検出用のコイル43に加えて、付勢用の磁石64が配置されている。この磁石64は、回転軸部54a,54bを中心とした回転子ユニット38の回転方向において、回転子ユニット38を一方向に付勢するものである。磁石64の構造的な形態は、たとえば、平らな板状、円弧状の板状、角柱形、円柱形、半円の柱状など、いずれの形態であってもよい。磁石64は、上述したボビン41の外周部に取り付けられる。磁石64は、たとえば図示のようにS極を永久磁石51側に向けた状態で配置される。また、磁石64は、回転軸部54a,54bを中心とした回転子ユニット38の回転方向において、たとえば、駆動用のコイル42と略90度位相をずらした位置に配置されている。
【0063】
上記の配置において、駆動用のコイル42に電流を供給していないときは、永久磁石51のN極と付勢用の磁石64のS極との間に働く磁気吸引力(以下、「第1の磁気吸引力」とも記す)により、回転子ユニット38が反時計回り方向(CCW方向)に付勢される。このように回転子ユニット38を反時計回り方向に付勢すると、回転子ユニット38は反時計回り方向の終端位置まで回転した状態となる。
【0064】
これに対して、駆動用のコイル42に電流を供給して図示のような磁極(N極、S極)を形成すると、永久磁石51のN極とコイル42のS極との間に磁気吸引力(以下、「第2の磁気吸引力」とも記す)が働く。このため、回転子ユニット38は、第2の磁気吸引力によって時計回り方向(CW方向に)に回転する。このとき、回転子ユニット38は、第1の磁気吸引力と第2の磁気吸引力を同時に受ける。このため、回転子ユニット38は、回転軸部54a,54bを中心とした回転方向において、磁石64から受ける第1の磁気吸引力とコイル42から受ける第2の磁気吸引力とが平衡状態となる位置に保持される。また、第1の磁気吸引力に比較して第2の磁気吸引力が十分に大きくなるように、駆動用のコイル42に電流を供給すると、回転子ユニット38は時計回り方向の終端位置まで回転した状態となる。
【0065】
その後、駆動用のコイル42への電流供給を停止すると、第2の磁気吸引力が消滅する。このため、回転子ユニット38は、付勢用の磁石64から受ける第1の磁気吸引力により、反時計回り方向の終端位置まで回転した状態になる。
【0066】
以上のことから、駆動用のコイル42に供給する電流の量を図示しないモータ制御回路の電流供給部で調整(増減)することにより、回転子ユニット38の回転方向の位置を制御することができる。回転子ユニット38の回転方向の位置は、一対の絞り羽根3,4が形成する絞り開口の大きさを決定する要素となる。このため、回転子ユニット38の回転方向の位置を制御することにより、絞り開口の大きさを調整することが可能となる。
【0067】
また、一対の絞り羽根3,4の動作と絞り駆動モータ6の動作との関係は、次に述べる第1の関係および第2の関係のいずれで設定してもよい。第1の関係は、回転子ユニット38を反時計回り方向の終端位置まで回転させたときに、一対の絞り羽根3,4が形成する絞り開口が最大になり、回転子ユニット38を時計回り方向の終端位置まで回転させたときに、一対の絞り羽根3,4が形成する絞り開口が最小になる関係である。これに対して、第2の関係は、回転子ユニット38を反時計回り方向の終端位置まで回転させたときに、一対の絞り羽根3,4が形成する絞り開口が最小になり、回転子ユニット38を時計回り方向の終端位置まで回転させたとき、一対の絞り羽根3,4が形成する絞り開口が最大になる関係である。
【0068】
ちなみに、回転子ユニット38が反時計回り方向に回転するときの終端位置は、たとえば、永久磁石51と一体に回転する作動部材52の一方のレバー部55が、絞り基板2の一部に突き当てられることで規制される。また、回転子ユニット38が時計回り方向に回転するときの終端位置は、たとえば、作動部材52の他方のレバー部55が、絞り基板2の他部に突き当てられることで規制される。
【0069】
また、永久磁石51が回転すると、これに伴う磁場の変化によって位置検出用のコイル43に電流が流れる。このとき、コイル43に流れる電流の量および方向は、永久磁石51の回転量および回転方向によって変わる。このため、コイル43に流れる電流の量および方向を図示しないモータ制御回路の電流検出部で検出することにより、回転子ユニット38(永久磁石51、作動部材52)の回転方向の位置、ひいては絞り開口の大きさを検出することが可能となる。
【0070】
(回転子ユニットの組み立て手順)
次に、回転子ユニット38の組み立て手順について説明する。回転子ユニット38の組み立ては、永久磁石51と作動部材52とを用いて行う。まず、作動部材52の収納枠53内に横方向から永久磁石51を挿入する。そうすると、収納枠53の収納空間56の入口部分では、永久磁石51がラッチ部60に接触するとともに、永久磁石51の下面(下側の矩形面51c)に押されてラッチ部60が撓んだ状態となる。
【0071】
次に、永久磁石51の一方の矩形面51aが、収納空間56の奥側で突き当て部61に突き当たるまで永久磁石51を押し込む。そうすると、ラッチ部60の上を永久磁石51が完全に通過した状態となる。また、永久磁石51は、収納空間56の規定の位置に収納された状態となる。この状態になると、永久磁石51の通過に伴って、それまで撓んでいたラッチ部60が元の状態に復帰する。これにより、ラッチ部60は、永久磁石51の一方の矩形面51aに接触または近接した状態となる。この状態では、永久磁石51を収納空間56から引き抜こうとしても、永久磁石51がラッチ部60に引っ掛かるため、ラッチ部60によって永久磁石51の抜けが防止される。
【0072】
また、収納枠53の収納空間56においては、永久磁石51が次のように配置される。すなわち、永久磁石51の外面を構成する6つの矩形面のうち、2つの矩形面51bは、一対の側板部58の内面に対面した状態となり、他の2つの矩形面51cは、底板部57と天板部59にそれぞれ対面した状態となる。また、永久磁石51の2つの矩形面51bに対しては、それぞれに対応する側板部58内面の2つの凸部62が接触した状態となる。このため、収納枠53内においては、各々の側板部58の内面に2つずつ設けられた凸部62により永久磁石51が両側から挟み込まれ、この状態で永久磁石51が収納枠51内に保持される(図8を参照)。これにより、永久磁石51が作動部材52に実装されるとともに、永久磁石51と作動部材52を一体化した構成の回転子ユニット38が得られる。
【0073】
このように組み立てられた回転子ユニット38においては、収納枠53から上方および下方に突出する一対の回転軸部54a,54bが、共通の仮想軸J(図6〜図9を参照)上に位置する。この仮想軸Jは、回転子ユニット38の回転中心軸に相当するものである。仮想軸Jは、収納枠53に収納された永久磁石51の内部を通るように設定されている。
【0074】
上記の仮想軸Jは、永久磁石51の重心部分を通るように設定されていることが好ましい。その理由は、次のとおりである。すなわち、回転子ユニット38を構成する永久磁石51および作動部材52のうち、永久磁石51は金属であるのに対して、作動部材52は樹脂である。このため、回転子ユニット38全体に占める永久磁石51の質量の割合は高い。また、回転子ユニット38は、固定子ユニット37に取り付けられた状態で仮想軸Jを中心に回転する。したがって、仮想軸Jを中心に永久磁石51が回転したときの回転子ユニット38全体の質量バランスを考慮すると、上記の仮想軸Jは、永久磁石51の重心部分を通るように設定されていることが好ましい。
【0075】
(絞り駆動モータの組み立て手順)
次に、絞り駆動モータ6の組み立て手順について説明する。絞り駆動モータ6の組み立ては、固定子ユニット37、回転子ユニット38およびヨーク39を用いて行う。まず、コイル42,43を巻線済みのボビン41を用意する。ボビン41にコイル42,43を巻線する場合は、可動アーム48の先端部の上方を経由するように、ボビン41のセパレータ47で区切られた溝部分に、それぞれコイル42,43を巻線する。
【0076】
次に、ボビン41の収容空間44に回転子ユニット38を挿入することにより、収納枠53に収納された状態の永久磁石51をボビン41の収容空間44に収容する。その際、可動アーム38は、回転軸部54bに押し上げられて弾性変形する。これにより、可動アーム38は、回転軸部54bが軸受孔49に嵌合することを許容する状態となる。以下、詳しく説明する。
【0077】
まず、回転子ユニット38の一方のレバー部55をボビン41の収容空間44の入口部分から挿入した後、当該一方のレバー部55をボビン41の通孔41a(図6を参照)に通す。これにより、一対のレバー部55の先端部(爪部63)は、いずれもボビン41の外側に突出した状態となる。
【0078】
また、上述のようにボビン41に回転子ユニット38を挿入する場合は、収容空間44の底部の軸受孔45に回転軸部54aを嵌合させるとともに、可動アーム48の先端部の軸受孔49に回転軸部54bを嵌合させる。具体的な組み付け順序としては、まず、収納枠53の下方に突出する回転軸部54aをボビン41の軸受孔45に嵌合させる。このとき、ボビン41の案内面46に回転軸部54aの下端を接触させ、その状態で回転軸部54aを案内面46に沿ってスライドさせることにより、回転軸部54aを軸受孔45へと導くようにする。
【0079】
次に、回転軸部54aと軸受孔45の嵌合状態を維持しつつ、収納枠53の上方に突出する回転軸部54bを可動アーム48の軸受孔49に嵌合させる。このとき、回転軸部54bが可動アーム48の軸受孔49に嵌り込む前に、回転軸部54bの上端が可動アーム48に接触する。このため、可動アーム48の先端側(軸受孔49の形成部位側)は、回転軸部54bに押し上げられて弾性変形する。そして、回転軸部54bが可動アーム48の先端部に達すると、そこに形成されている軸受孔49に回転軸部54bが嵌り込む。このとき、回転軸部54bと軸受孔49との嵌合状態は、それまで回転軸部54bに押し上げられていた可動アーム48自身の撓み反力(弾性変形による反力)によって得られる。これにより、仮想軸Jを中心として回転子ユニット38が固定子ユニット37に回転可能に取り付けられた状態となる。この状態では回転子ユニット38の回転動作が双方向に許容される。また、回転子ユニット38の回転動作は、180度未満の角度範囲内(たとえば、60度程度)に制限される。
【0080】
ここで、上述のように可動アーム48の先端側が回転軸部54bによって押し上げられた場合の押し上げ量は、回転軸部54bが軸受孔49に嵌合する直前に最大となる。本実施の形態においては、可動アーム48が回転軸部54bによって最大に押し上げられた状態でも、可動アーム48がコイル42,43の巻線位置(最内周のコイル巻線部分)に干渉しないように、可動アーム48の先端部とこれに対向するコイル42,43の巻線位置との間に、可動アーム48の最大の押し上げ量以上の空隙G(図10を参照)が確保されている。
【0081】
こうして固定子ユニット37に回転子ユニット38を一体的に組み付けたら、その状態で固定子ユニット37の外側にヨーク39を被せる。次に、ヨーク39の上端部に中継基板34を配置する。このとき、中継基板34に設けられている4つの孔34a(図7を参照)にそれぞれボビン41の端子50を挿入し、両者を電気的に接続する。以上で絞り駆動モータ6の組み立てが完了する。
【0082】
<5.実施の形態に係る効果>
本発明の実施の形態に係る絞り装置1においては、固定子ユニット37のボビン14に可動アーム38を一体に形成し、この可動アーム38の先端部の軸受孔54bを利用して、固定子ユニット37に回転子ユニット38を回転可能に取り付けることができる。このため、固定子ユニット37に回転子ユニット38を取り付ける場合に、従来必要とされていた軸受部材等を用いなくても済む。これにより、部品点数の削減や組み立て工数の削減を図ることができる。
【0083】
また、永久磁石51をボビン41の収容空間44に収容する際に、可動アーム38が回転軸部54bに押し上げられて弾性変形することにより、回転軸部54bが軸受孔49に嵌合することを許容する構成となっている。このため、回転軸部54aを軸受孔45に嵌合させた後、回転軸部54bを軸受孔49に位置合わせするだけで両者を嵌合させることができる。したがって、固定子ユニット37に回転子ユニット38を簡単かつ迅速に組み付けることができる。また、可動アーム38を弾性変形させたときの反力を利用して回転軸部54bを軸受孔49に嵌合させ、その状態を保持することができる。
【0084】
また、ボビン41の構成として、収容空間44の底部に案内面46を形成している。このため、固定子ユニット37に回転子ユニット38を組み付ける場合に、案内面46に沿って回転軸部54aをスライドさせることにより、回転軸部54aを軸受孔45にスムーズに嵌合させることができる。
【0085】
また、可動アーム48の先端部とこれに対向するコイル42,43の巻線位置との間に、可動アーム48の最大の押し上げ量以上の空隙Gを確保している。このため、回転軸部48bによって可動アーム48が押し上げられた場合でも、可動アーム48がコイル42,43の巻線位置に干渉することがない。したがって、ボビン41にコイル42,43が巻線されているかどうかに関係なく、固定子ユニット37に回転子ユニット38を組み付けることができる。
<6.変形例等>
なお、本発明の技術的範囲は上述した実施の形態に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
【0086】
たとえば、上記実施の形態においては、角柱形の永久磁石51をコアとして回転子ユニット38を構成したが、本発明はこれに限らず、たとえば、円柱形の永久磁石をコアとして回転子ユニットを構成した場合にも適用可能である。
【0087】
また、上記実施の形態においては、作動部材52の構成として、左右一対の側板部58にそれぞれ凸部62を設けているが、本発明はこれに限らず、いずれか一方の側板部58だけに凸部62を設けた構成を採用してもよい。
【0088】
また、上記実施の形態においては、回転子ユニット38の回転方向の位置を、ボビン41に巻線したコイル43を用いて検出する構成としたが、これに限らず、たとえば、コイル43に代えてホール素子(不図示)を用いた構成であってもよい。
【0089】
また、上記実施の形態においては、絞り装置1に用いられる絞り駆動モータ6およびフィルタ駆動モータ7のうち、絞り駆動モータ6についてのみ詳細に説明したが、これに限らず、フィルタ駆動モータ7に絞り駆動モータ6と同様の構成(図6〜図10に示す構成)を採用してもよい。ただし、フィルタ駆動モータ7が備える作動部材(不図示)のレバー部の構造は、最終的にフィルタユニット5に動力を伝達する動力伝達機構に適合した構造とする必要がある。
【符号の説明】
【0090】
1…絞り装置
2…絞り基板
3,4…絞り羽根(絞り部材)
5…フィルタユニット
6…絞り駆動モータ
7…フィルタ駆動モータ
37…固定子ユニット
38…回転子ユニット
39…ヨーク
41…ボビン
42,43…コイル
44…収容空間
45…軸受孔(第1の軸受孔)
46…案内面
48…可動アーム
49…軸受孔(第2の軸受孔)
51…永久磁石
52…作動部材
54a,54b…回転軸部
150…カメラ
155…撮像素子(光電変換素子)
G…空隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光を通過させる絞り開口を形成する絞り部材と、前記絞り部材を駆動する駆動モータとを備える絞り装置であって、
前記駆動モータは、
ボビンを有する固定子ユニットと、
前記ボビンに収容される永久磁石と、前記永久磁石が実装されるとともに、前記永久磁石の内部を通るように設定された仮想軸上で上方および下方に突出する一対の回転軸部が設けられた作動部材とを有し、前記仮想軸を中心に回転する回転子ユニットとを備え、
前記ボビンは、前記永久磁石を収容するとともに、第1の軸受孔が底部に設けられた収容空間と、前記収容空間の上部に前記第1の軸受孔と対向する状態で第2の軸受孔が形成され、かつ前記第2の軸受孔の形成部位側が上下方向に弾性変形可能とされた可動アームとを一体に有し、
前記可動アームは、前記永久磁石を前記ボビンの収容空間に収容する際に、前記一対の回転軸部のうち、上方に突出する回転軸部に押し上げられて弾性変形することにより、当該回転軸部が前記第2の軸受孔に嵌合することを許容するものであり、
前記回転子ユニットは、前記一対の回転軸部のうち、下方に突出する回転軸部を前記第1の軸受孔に嵌合させるとともに、前記上方に突出する回転軸部を前記第2の軸受孔に嵌合させることにより、前記仮想軸を中心として前記固定子ユニットに回転可能に支持されるものである
ことを特徴とする絞り装置。
【請求項2】
前記ボビンの収容空間の底部に、当該収容空間の入口部分から前記第1の軸受孔の形成部位に向かって徐々に高くなる傾斜を有する案内面が形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の絞り装置。
【請求項3】
前記第2の軸受孔は、前記可動アームの先端部に形成され、
前記ボビンには、前記可動アームの先端部の上方を経由するようにコイルが巻線され、
前記可動アームの先端部とこれに対向する前記コイルの巻線位置との間には、前記可動アームの最大の押し上げ量以上の空隙が確保されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の絞り装置。
【請求項4】
入射光を通過させる絞り開口を調整する絞り装置に用いられる駆動モータであって、
ボビンを有する固定子ユニットと、
前記ボビンに収容される永久磁石と、前記永久磁石が実装されるとともに、前記永久磁石の内部を通るように設定された仮想軸上で上方および下方に突出する一対の回転軸部が設けられた作動部材とを有し、前記仮想軸を中心に回転する回転子ユニットとを備え、
前記ボビンは、前記永久磁石を収容するとともに、第1の軸受孔が底部に設けられた収容空間と、前記収容空間の上部に前記第1の軸受孔と対向する状態で第2の軸受孔が形成され、かつ前記第2の軸受孔の形成部位側が上下方向に弾性変形可能とされた可動アームとを一体に有し、
前記可動アームは、前記永久磁石を前記ボビンの収容空間に収容する際に、前記一対の回転軸部のうち、上方に突出する回転軸部に押し上げられて弾性変形することにより、当該回転軸部が前記第2の軸受孔に嵌合することを許容するものであり、
前記回転子ユニットは、前記一対の回転軸部のうち、下方に突出する回転軸部を前記第1の軸受孔に嵌合させるとともに、前記上方に突出する回転軸部を前記第2の軸受孔に嵌合させることにより、前記仮想軸を中心として前記固定子ユニットに回転可能に支持されるものである
ことを特徴とする駆動モータ。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の絞り装置と、
前記絞り開口を通して入射する光を電気信号に変換する光電変換素子と、
を備えることを特徴とするカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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