説明

絞り装置及び光学機器

【課題】 輝度の高い光源を光学系で直視すると集光された光束は、一度絞り近傍で集光されることになり、軽量の樹脂絞り羽根においては、高温化されることになり、羽根表面の変形や溶解が発生し、絞り羽根の不作動を発生されることになる。
【解決手段】 第1の絞り羽根の前に、第1の絞り羽根よりも耐熱性の高い材料の第2の絞り羽根を配置する。第1の絞り羽根を輝度の強い光線から保護する様に、第2の絞り羽根の口径を制御することで、第1の絞り羽根への光線の照射を遮断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビデオカメラやデジタルカメラ等の撮像装置に用いられる絞り装置及び光学装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ビデオカメラやフィルムカメラなどの光学機器に用いられているレンズ鏡筒にあっては、一般に、光学系で一番径の大きな第1レンズ群を最前部に配置しその後、変倍用(ズーミング用)又はフォーカス用の移動レンズ群、及び固定レンズ群が配置されている。また、光学系の途中に露出制御を行う為の絞りが設けられている。(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−231049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光学系の前玉は、ズーム倍率が増すごとに大口径化する傾向に有り、光線の集光能力も高い状態と成っている。
【0005】
ここで、輝度の高い光源、例えば太陽等を直視すると集光された光束は、特にテレ側においては一度絞り近傍で集光されることになる。
【0006】
絞りも高輝度被写体の為、小絞り状態と成る。
【0007】
したがって、黒色の絞り羽根面は可視光を含み、熱線によって高温化されることになる。
【0008】
この時、羽根の材料の耐熱温度以上に熱せられると、羽根表面の変形や溶解が発生し、絞り羽根の不作動を発生されることになる。
【0009】
耐熱性の高い材料として金属羽根を正規光量制御に用いた場合、駆動力の小さい小型のアクチュエータを用いて駆動すると、金属羽根の重量負荷と摺動抵抗の増加により制御性の問題を持ち、羽根の作動にリップル(ピクツキ)を起こすことに成る。
【0010】
業務用カムコーダ用のレンズには、絞り羽根に金属羽根を用いている。
【0011】
しかしアクチュエータには、高トルク高消費電力を必要としている為、大型の減速ギヤード付きのコアレスDCモータが用いられている。
【0012】
この業務用カムコーダ用の絞りアクチュエータを小型カムコーダに用いることは現実的では無い。
【0013】
その為に特に小型の絞り駆動用のアクチュエータを用いている民生用のカムコーダカメラでは、絞り羽根の自重の軽減による摺動抵抗の軽減と、消費電力の軽減から、樹脂羽根が用いられている。
【0014】
その結果、業務用カムコーダ用のレンズの金属羽根を用いた虹彩絞りに対して、羽根駆動用のアクチュエータを小型化出来、省エネ駆動を可能としており、カメラの小型省エネ化を可能としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
第1の絞り羽根の前に、第1の絞り羽根よりも耐熱性の高い材料の第2の絞り羽根を配置する。第1の絞り羽根を輝度の強い光線から保護する様に、第2の絞り羽根の口径を制御することで、第1の絞り羽根への光線の照射を遮断する。
【発明の効果】
【0016】
前玉から入射した太陽光を、第1の絞り羽根への光線の照射を遮断することで、第1の絞り羽根表面の高温化を防ぐことが出来る。結果、第1の絞り羽根の変形や溶解の発生を防止することで、第1の絞り羽根の不作動を防ぐ事が出来る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例1のレンズ鏡筒断面図
【図2】本発明の実施例1の分解斜視図
【図3】本発明の実施例1の第1絞り手段の図
【図4】本発明の実施例1の第2絞り手段の図
【図5】本発明の実施例1のブロック図
【発明を実施するための形態】
【0018】
[実施例1]
図1には、本発明の実施例であるビデオカメラやデジタルカメラ等の撮像装置(以下、カメラという)の構成を示している。
【0019】
図1において、撮影光学系は、物体側(各図の左側)から順に、凸,凹,凸,凸の4つのレンズユニットにより構成された変倍光学系(ズームレンズ系)である。
【0020】
図1において、L1は第1レンズユニット、L2は光軸方向に移動することにより変倍作用を行なう第2レンズユニット、L3はアフォーカルレンズ群である。L4は光軸方向に移動することにより焦点調節作用を行う第4レンズユニットである。
【0021】
1は第1群レンズL1を保持した固定鏡筒、2はローパスフィルタ3を保持した後部鏡筒であり、さらにローパスフィルタ3の後方には図示しない撮像素子センサが取り付けられる。
【0022】
4はブレ補正のため光軸と直角方向に駆動される補正レンズである第3群レンズL3を保持したブレ補正ユニットを示し、固定鏡筒1と後部鏡筒2に挟持され、ビスによって固定されている。
【0023】
5は第2群鏡筒を示し、ズーミングを行う第2群レンズL2を保持している。第2群鏡筒5は前後を固定鏡筒1と後部鏡筒2に保持されている2本のガイドバー6a,6bによって光軸方向へ移動自在に保持されている。
【0024】
7はフォーカス調節を行う第4群レンズL4を保持した第4群鏡筒を示し、第2群鏡筒5と同様にガイドバー6a,6bによって光軸方向へ移動自在に保持されている。
【0025】
ガイドバー6a,6bは光軸をはさんで設けられており、これら2本のガイドバー6a,6bによって第2群鏡筒5と第4群鏡筒7の光軸方向の案内と光軸周りの回り止めとを行っている。
【0026】
8は電磁アクチュエータによって第1の絞り手段を構成する絞り羽根820を駆動するIGメータ(IGメータユニット)を示し、固定鏡筒1とブレ補正ユニット4によって挟持されている。
【0027】
第1の絞り手段の絞り開口径は撮像素子に入射する光量に対応して可変としている。
【0028】
尚、この第1の絞り手段は、Fナンバーを実質的に決定する、本実施形態では6枚の樹脂羽根より成る。
【0029】
803は第2の絞り手段を構成する絞り羽根であり、本実施形態では2枚の金属羽根より成る。
【0030】
9はズームモータを示し、コの字形をした板金に駆動部と出力ネジ部が一体に保持されている。ズームモータ9は固定鏡筒1にビスで固定されている。
【0031】
一方、第2群鏡筒5にはラック10が取付けられており、ラック10がズームモータ9のネジ部と噛合することによって光軸方向に駆動される。この際ラック10は、ばね11によって噛合方向と、光軸方向に付勢されており、噛合いガタとスラストガタを取り除くようにしている。
【0032】
12はフォーカスモータを示し、ズームモータ9と同様な構造であり後部鏡筒2にビスで固定されている。
【0033】
第4群鏡筒7にも第2群鏡筒5と同様にラック13、及びばね14が取り付けられ、ラック13がフォーカスモータ12のネジ部に噛合することで光軸方向に駆動されるよう構成されている。
【0034】
ラック10,13はそれぞれ、第2群鏡筒5と第4群鏡筒7に光軸方向に延びるよう形成された穴部5a,7aに軸部10a,13aを嵌合させて取り付けられ、第2群鏡筒5、第4群鏡筒7に対して上部軸部10a,13aを中心に揺動可能となっている。
【0035】
このため、ガイドバー6a,6bとモータ出力軸との平行度にズレがあっても第2群鏡筒5、第4群鏡筒7のスムーズな移動が確保できる。
【0036】
又、ラック10,13はそれぞればね11,14によって揺動方向に付勢され、ラック10,13の噛合部はモータ出力ネジに圧接している。
【0037】
このためラック10,13の噛合部とモータ出力軸の雄ネジとを確実に噛合させることができる。本実施例では、ズームモータ9、フォーカスモータ12はステッピングモータを使用している。
【0038】
15はインタラプタを示し、基板16に端子を半田付けした後、固定鏡筒1にビスで固定されている。フォトインタラプタ15は投光部と受光部の間を第2群鏡筒に一体的に設けた遮光壁部5bが通過することで第2群鏡筒5の基準位置を検出し、ズームモータ9に入力するパルス数によって各ズーム位置へ駆動するよう構成されている。
【0039】
フォーカス調節も同様に、第4群鏡筒7に設けた遮光壁部7bを後部鏡筒2に取付けたフォトインタラプタ17、基板18によって基準位置として検出しステップ駆動するよう構成している。
【0040】
図5は本発明に関わる第1の絞り手段の構成を説明する図であり、同図において、820は6枚の羽根を示し、穴部820aが固定枠801上に設けたボス801cに係合し回転自在に保持されている。又、羽根820には長穴820bが設けられており、光軸回りに回転自在に保持されたリング821に設けたボス821aに係合している。
【0041】
リング821は外周に伸びた部分に長穴821bを有しており、固定枠801に取り付けられた第2の絞り駆動用メータ822の回転軸に一体に取り付けられたアーム823のボス823aに係合している。
【0042】
従ってメータ822の回転トルクは、アーム823を介してリング821に伝えられ、リング821の回転により6枚の羽根820がそれぞれ穴820a回りに回転し開口径を変化させている。
【0043】
第1の絞り手段は、撮影時の露出制御の為の絞り径を決めるものである為に、動画時の絞り羽根の動きには、精度良く滑らかに動く必要が有る。
【0044】
仮に羽根の作動時に羽根同士の端面での引っ掛かりや、羽根表面の摺動抵抗変化による作動のピクツキなどのリップル現象を起こすと、撮影画像に輝度ショックが発生する事になり、大きな問題と成る。
【0045】
耐熱性の高い材料として金属羽根を正規光量制御に用いた場合、駆動力の小さい小型のアクチュエータを用いて駆動すると、金属羽根の重量負荷と摺動抵抗の増加により制御性の問題が発生し、羽根の作動にリップル(ピクツキ)を起こすことに成る。
【0046】
業務用カムコーダ用のレンズには、絞り羽根に金属羽根を用いている。
【0047】
しかしアクチュエータには、高トルク高消費電力を必要としている為、大型の減速ギヤード付きのコアレスDCモータが用いられている。
【0048】
この業務用カムコーダ用の絞りアクチュエータを小型カムコーダに用いることは現実的では無い。
【0049】
その為に特に小型の絞り駆動用のアクチュエータを用いている民生用のカムコーダカメラでは、絞り羽根の自重の軽減による摺動抵抗の軽減と、消費電力の軽減から、ポリエチベースの樹脂羽根が用いられている。
【0050】
その結果、業務用カムコーダ用のレンズの金属羽根を用いた虹彩絞りに対して、羽根駆動用のアクチュエータを小型化出来、省エネ駆動を可能としている。
【0051】
図4には上記制御システムを示している。
【0052】
70は本システム全体の制御を司るマイコンである。71は振動ジャイロ等によって構成されるブレセンサであり、カメラのブレを角速度や角度として検出する。
【0053】
マイコン70は、ブレセンサからの検出信号に基づいてカメラブレ量を演算し、このカメラブレによって生ずる像ブレをキャンセルするよう補正レンズL3の目標位置を演算する。
【0054】
そして、この移動量の演算結果に応じて、電磁アクチュエータのコイル45a,45bに通電し、補正レンズL3を駆動する。その際、補正レンズL3の位置を補正レンズ位置センサ(50,51)により検出し、マイコン70にフィードバックすることで演算された目標位置に制度良く駆動される。ズームレンズにおいては、焦点距離によって同一ブレ量であってもこれをキャンセルさせる補正レンズL3の移動量(目標位置)が変化する。
【0055】
そのため、第2群レンズL2の駆動パルス数を計測し、ズーム位置センサ72により焦点距離を検出し、それに応じて補正レンズL3の駆動量を変化させるよう構成している。
【0056】
73は撮像素子から得られた映像信号から光量を検出するための光量センサである。
【0057】
マイコン70は光量センサ73からの検出信号に基づき所定の光量となるように第1絞り駆動メータ822に通電し羽根820を駆動する。
【0058】
ここで高輝度被写体の判定は、露出オート時の絞り値から行なうことが出来る。
【0059】
加えてその時の撮像素子からの明るさの信号からも判定を行なうことは出来る。
【0060】
マニュアル絞りの時は、撮像素子からの明るさの信号によって判定を行なうことに成る。
【0061】
別手段としては、別途高輝度被写体検出光学系を撮影系とは別に設けて判定を行なうことも出来る。
【0062】
また、絞り羽根表面の照度を別途センサー部を設けて測定&判定することも出来る。
【0063】
絞り羽根表面の照度測定の変わりに非接触で温度を検知することでも可能である。
【0064】
温度測定に放射赤外線量を測定することでも構わない。
【0065】
高輝度被写体の判定が行なわれると第2絞り羽根によって、第1絞り羽根の表面を覆うような絞り状態を形成する。
【0066】
第4図は、第2の絞り手段を構成するユニットの羽根駆動図である。
【0067】
第2の絞り手段は、メータ800の作動によって、駆動アーム802を介して、803、804の2枚の羽根を駆動している。
【0068】
第4−d図は駆動アームと2枚の羽根の状態を光軸と垂直な方向から示した図である。
【0069】
第4−a図は開放状態を示す。
【0070】
第4−b図の光軸中央の6角形開口は、第1の絞り羽根の最小制御の小絞り状態である。
【0071】
通常第2の絞り手段は最小小絞り状態を除き、いかなる場合もこの第1の絞り羽根の6角形開口を覆わない口径に制御されている。
【0072】
第4−c図は前記判別手段によって、高輝度被写体にレンズが向けられている時の絞り開口の大きさの関係を示した図である。
【0073】
高輝度被写体の判定が行なわれると、第2絞り羽根が開放径近傍からシャッター動作を行ない、羽根が全作動域端の最小小絞り状態に成っている。
【0074】
または、第4−b図の第1絞り羽根の口径よう大きな第2絞り羽根の口径状態から、最小小絞り状態と成る。
【0075】
この第2絞り羽根の小絞り端の絞り径をNとするとこの時の第1絞り羽根は、前記絞り径Nより大きなMの状態を高輝度被写体の判定時のカメラ使用時におけるクローズ前の最小小絞り制御状態と成っている。
【0076】
したがって、第1絞り羽根が最小作動小絞り状態の時において、高輝度被写体からの光を、第2絞り羽根で覆うことが出来る。
【0077】
ここで、第2の絞り手段に用いるアクチュエータは,シャッター用の小型アクチュエータを使用することが出来る。
【0078】
なぜなら、決められた最小小絞り状態のみを再現すれば良く、光量制御の為に口径を絞り羽根で制御することが無くても構わない。
【符号の説明】
【0079】
1:固定鏡筒 2:後部鏡筒
3:光学ローパスフィルタ 4:ブレ補正ユニット
5:第2群鏡筒 6:ガイドバー
7:第4群鏡筒 8:絞りIGメータユニット
9:ズームモータ 10:ズームラック
11:ズームラックばね 12:フォーカスモータ
13:フォーカスラック 14:フォーカスラックばね
15:フォトインタラプタ(ズームセンサー) 16:基板
17:フォトインタラプタ(フォーカスセンサー) 18:基板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の絞り羽根を有した第1の絞り手段、第1の絞り羽根より耐熱性の高い第2の絞り羽根を有した第2の絞り手段、第1の絞り羽根の入射光方向の前側に第2の絞り羽根を配置され、高輝度被写体にレンズが向けられていることを判別する判別手段を設けた光学装置において、
高輝度被写体にレンズが向けられていることが判別された時に
H.第1の絞り羽根の絞り口径より第2の絞り羽根の口径をより小さく成るように絞り手段の制御を行なうことを特徴とした光学装置。
【請求項2】
第1の絞り羽根の材質に樹脂を用い、第2の絞り羽根の材質に金属を用いたことを特徴とした請求項1に記載の光学装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−113015(P2012−113015A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259806(P2010−259806)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】