説明

絞り装置

【課題】菊座の製造コストを削減することのできる絞り装置を提供する。
【解決手段】絞り装置10は、保持環14と菊座16との間に複数枚の絞り羽根12が重ね合わされて保持され、絞り羽根12は保持環14に揺動自在に位置決めされるとともに、菊座16に形成されたガイド孔26を介してガイドされており、菊座16を揺動させることによって絞り羽根12がガイド孔26に従って揺動し、絞り口径が変化する。菊座16は、ガイド孔26が形成されたガイド部材32と、ガイド部材32を保持する台座34と、が別体で構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は絞り装置に係り、特にカメラやビデオカメラ等の光学機器に適用される絞り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の絞り装置は図13に示すように、複数枚の絞り羽根1(本図では1枚のみ図示)が保持環2と菊座3との間に干渉しないように重ね合わされて配置される。絞り羽根1の基端部には、回動ピン4が植設されており、この回動ピン4が保持環2に形成された軸受孔5に回動自在に取り付けられて、絞り羽根1が保持環2に揺動自在に位置決めされる。また、絞り羽根1には、ダボピン6が回動ピン4の反対側面に植設されており、このダボピン6が、菊座3に形成された長孔状のガイド孔7に係合される。
【0003】
菊座3を光軸8を中心として時計方向回り、又は反時計方向回りに揺動させると、絞り羽根1のダボピン6が前記ガイド孔7に沿って移動することにより、絞り羽根1が回動ピン4を揺動支点として光軸8方向、又は光軸8から遠ざかる方向に揺動する。これにより、絞り口径を拡大したり、縮小したりすることができる。
【0004】
ところで、菊座3は、レンズの仕様によってガイド孔7の軌跡が異なる。このため、レンズの仕様を変更する度に、ガイド孔7の軌跡が異なる菊座3を製作している。菊座3は通常、樹脂材を金型で成型加工することによって製作される。したがって、仕様を変更する度に、金型の製作と寸法補正を繰り返す必要があり、菊座3の製造コストが高いという問題があった。
【0005】
特許文献1は、形状を変更する部分の金型を他の部分の金型と別体とすることによって、成型加工する方法が記載されている。この特許文献1によれば、変更部分のみの金型を複数用意することによって、製造コストを削減することができる。
【特許文献1】特開2000−158492号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1であっても、仕様を変更する度に金型の製作と寸法補正を繰り返し行う必要があり、菊座の製造コストが高くなるという問題があった。特に小ロット品の場合には、製品における金型の製造コストの割合が大きくなるため、コストが非常に高くなるという問題があった。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、菊座の製造コストを削減することのできる絞り装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は前記目的を達成するために、保持環と菊座との間に複数枚の絞り羽根が重ね合わされて保持され、前記絞り羽根は前記保持環に揺動自在に位置決めされるとともに、前記菊座に形成されたガイド孔を介してガイドされ、前記菊座を揺動させることにより前記絞り羽根を前記ガイド孔に従って揺動させて絞り口径を変化させる絞り装置において、前記菊座は、前記ガイド孔が形成されたガイド部材と、前記ガイド部材を保持する台座と、が別体で構成されることを特徴とする。
【0009】
請求項1の発明によれば、レンズの仕様によってガイド孔の形状が異なるガイド部材を、台座と別体としたことによって、台座を共通部品とすることができ、菊座の製造コストを削減することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は請求項1の発明において、前記ガイド部材は、プレス加工により製造されることを特徴とする。したがって、請求項2の発明によれば、ガイド部材をプレス加工して製造するので、ガイド部材を金型で成型加工する場合に比べて、製造コストをさらに削減することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は請求項1又は2の発明において、前記ガイド部材及び前記台座には、該ガイド部材を前記台座に位置決めして固定するための位置決め手段が設けられることを特徴とする。したがって、請求項3の発明によれば、ガイド部材を台座に位置決めして取りつけることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、仕様に応じてガイド孔の形状が異なるガイド部材を台座と別体にすることによって、台座を共通部品とすることができ、菊座の製造コストを削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下添付図面に従って、本発明に係る絞り装置の好ましい実施の形態について詳述する。
【0014】
図1は本発明の実施の形態に係る絞り装置の組み立て斜視図である。同図に示す絞り装置10は、略三日月状に形成された複数枚の絞り羽根12(本図では1枚のみ図示)を有し、これらの絞り羽根12、12…はドーナツ状の保持環14と菊座16との間に重ね合わされて保持される。
【0015】
絞り羽根12の基端部には、回動ピン20が植設される。この回動ピン20は、保持環14に形成された軸受孔22に回動自在に取り付けられる。これにより、絞り羽根12は、保持環14に位置決めされた状態で揺動自在に支持される。
【0016】
なお、本実施の形態では、軸受孔22が保持環14に6箇所形成されており、6枚の絞り羽根12、12…が用いられる。
【0017】
絞り羽根12には、回動ピン20の反対側面にダボピン24が突設されており、このダボピン24は菊座16に形成された長孔状のガイド孔26に係合される。したがって、菊座16を光軸28を中心に反時計回り方向(矢印A方向)に揺動させると、絞り羽根12のダボピン24が菊座16のガイド孔26に沿って摺動し、絞り羽根12が回動ピン20を揺動支点として光軸28に近づく方向に揺動する。これにより、絞り口径が小さくなる。また、絞り口径を大きくする場合には、菊座16を光軸28を中心に時計回り方向(矢印B方向)に揺動させる。これにより、ダボピン24がガイド孔26に沿って摺動し、絞り羽根12が回動ピン20を揺動支点として光軸28から遠ざかる方向に揺動するので、絞り口径が大きくなる。
【0018】
ところで、本実施の形態では、菊座16が二つの部材によって構成されている。すなわち、菊座16は、ガイド孔26、26…を有するガイド部材32と、このガイド部材32を保持する台座34とから成り、ガイド部材32と台座34を組み合わせることによって菊座16が構成される。
【0019】
図2はガイド部材32の正面図であり、図3は台座34の正面図である。また、図4はガイド部材32と台座34を示す断面図である。
【0020】
これらの図に示すように、ガイド部材32は、薄い金属板によってリング状に形成されており、前述したガイド孔26、26…は貫通して形成されている。ガイド部材32の外周部には、台座34に対する位置決め手段となる二つのDカット部36、38が形成されている。二つのDカット部36、38は異なる大きさで形成されており、Dカット部36の長さL1がDカット部38の長さL2よりも大きく形成されている。
【0021】
このようなガイド部材32は、プレス加工することによって製造される。ガイド部材32の材質はプレス加工が可能なものであればよく、例えば、ステンレス、アルミ、黄銅等の金属の他、マイラー(ルミラー)等の樹脂が適宜選択される。
【0022】
台座34は、略筒状に形成されており、一方の端部には、ガイド部材32の形状に対応する凹部40が形成されている。すなわち、凹部40は、略円形に形成されるとともに、その側壁である曲面の一部が突出して平坦状になった二つのフラット部42、44を備えている。フラット部42、44はそれぞれ、ガイド部材32のDカット部36、38に対応して形成されている。すなわち、フラット部42が長さL1で形成され、フラット部44が長さL2で形成されている。
【0023】
台座34のもう一方の端部には、突出部46が外周面から突出して形成されている。この突出部46によって台座34の回転が行なわれる。このような台座34は、樹脂材を金型で成型加工することによって製造される。
【0024】
菊座16は、台座34の凹部40にガイド部材32を嵌め込むことによって組み立てられる。なお、台座34とガイド部材32の固定方法は嵌合に限定するものではなく、接着や螺子止めで固定してもよい。
【0025】
次に上記の如く構成された絞り装置10の作用について説明する。
【0026】
菊座16のガイド孔26、26…の軌跡は、レンズの仕様に応じて異なっている。したがって、開放径や最小絞り径が異なる場合には、それに応じた軌跡のガイド孔26、26…の菊座16を用意する必要がある。したがって、レンズの仕様に応じて、形状の異なる複数の菊座を製作する必要がある。
【0027】
従来は、レンズの仕様に応じて、菊座16全体を製作していた。このため、レンズの仕様を変更する度に、菊座16を製作するための金型が必要になり、金型の製作や寸法補正を繰り返す必要があった。したがって、従来は、菊座16のコストが非常に高くなるという問題があった。
【0028】
これに対して本実施の形態では、菊座16をガイド部材32と台座34に分割したので、ガイド孔26の軌跡を変更する場合には、ガイド孔26を有するガイド部材32のみを製作すればよい。すなわち、台座34を共通部品として用いることができるので、菊座16全体の製作コストを削減することができる。
【0029】
このように本実施の形態によれば、菊座16を、レンズ仕様に応じて交換部品となるガイド部材32と、共通部材となる台座34に分割したので、ガイド部材32のみをレンズ仕様に応じて製作すればよく、菊座16全体のコストを削減することができる。
【0030】
また、本実施の形態によれば、ガイド部材32をプレス加工によって製造するようにしたので、ガイド部材32を金型で成型加工した場合に比べて、ガイド部材32の製作コストを大幅に削減することができる。
【0031】
さらに、本実施の形態によれば、ガイド部材32に一対のDカット部36、38を設けるとともに、台座34の凹部40に一対のフラット部42、44を設けたので、ガイド部材32を台座34に位置決めした状態で組み付けることができる。特に本実施の形態では、二つのDカット部36、38、及び二つのフラット部42、44の大きさを変えるようにしたので、ガイド部材32が上下反対に組み付けられることを防止できる。
【0032】
なお、上述した実施形態は、ガイド孔26を有するガイド部材32を台座34に組み付けるようにしたが、ガイド部材32の代わりに、図5、図6に示す絞り板48を台座34に組み付けることによって固定絞りに対応することもできる。図5、図6に示す絞り板48は、ガイド部材32と同様に、薄い金属板によって略リング状に形成されており、外周部分に二つのDカット部36、38を備えている。絞り板48の中央部には、貫通孔48Aが所望の大きさで形成される。この絞り板48は、プレス加工によって製作され、台座34の凹部40に嵌め込まれる。このように、ガイド部材32の代わりに絞り板48を台座34に組み付けることによって、固定絞りとして使用することができる。
【0033】
なお、上述した実施の形態は、ガイド部材32を台座34に位置決め手段として、ガイド部材32にDカット部36、38を形成し、台座34にフラット部42、44を形成したが、位置決め手段はこれに限定するものではない。
【0034】
例えば図7〜図9は、位置決めピンを用いて位置決めを行なった菊座16の例である。図7は、ガイド部材32の正面図を示し、図8は、台座34の正面図を示し、図9は、ガイド部材32と台座34の縦断面図を示している。
【0035】
これらの図に示すように、台座34の凹部40には、二本の位置決めピン50、52が突設されており、ガイド部材32には、この位置決めピン50、52が嵌入される二つの貫通孔54、56が形成されている。したがって、台座34の凹部40にガイド部材32を嵌め込む際、位置決めピン50、52を貫通孔54、56に嵌入することによって、ガイド部材32を台座34に位置決めして組み込むことができる。
【0036】
なお、上記の如く位置決めピン50、52で位置決めを行う場合にも、ガイド部材32にDカット部38を一つ設けるとともに、そのDカット部38に対応するフラット部44を台座34の凹部40を形成するとよい。これにより、ガイド部材32を上下反対に組み付けることを防止することができる。
【0037】
また、二つの位置決めピン50、52を異なる太さで形成するようにしてもよく、この場合にも、ガイド部材32を上下反対に組み付けることを防止することができる。
【0038】
さらに、位置決めピン50、52の個数は二つに限定するものではなく、一個或いは三個以上としてもよい。
【0039】
図10〜図12は、他の方法で位置決めを行った菊座16の例であり、図10はガイド部材32の正面図を示し、図11は台座34の正面図を示し、図12はガイド部材32と台座34の縦断面図を示している。
【0040】
これらの図に示すように、ガイド部材32の外周面には二つの切欠部60、62が形成されている。この切欠部60、62はU状に形成されており、その一方の切欠部60は他方の切欠部62よりも大きく形成されている。台座34の凹部40には、ガイド部材32の二つの切欠部60、62に対応した突出部64、66が形成されている。すなわち、凹部40の側壁には、逆U状の二つの突出部64、66が突出して形成されており、この突出部64、66がガイド部材32の切欠部60、62に嵌め込まれるようになっている。したがって、台座34の凹部40にガイド部材32を嵌め込む際、突出部64、66を切欠部60、62に嵌入することによって、ガイド部材32を台座34に位置決めして取りつけることができる。また、二つの切欠部60、62、及び、二つの突出部64、66で大きさを変えるようにしたので、ガイド部材32を上下反対に組み付けることを防止することができる。
【0041】
なお、二つの切欠部60、62及び二つの突出部64、66で形状を変えるようにしてもよく、これにより、ガイド部材32を上下反対に組み付けることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係る絞り装置の構成を示す組み立て斜視図
【図2】ガイド部材を示す正面図
【図3】台座を示す正面図
【図4】組み立て前のガイド部材と台座を示す縦断面図
【図5】固定絞りに対応した菊座の正面図
【図6】図5の縦断面図
【図7】位置決めピンで位置決めを行う菊座のガイド部材を示す正面図
【図8】位置決めピンで位置決めを行う菊座の台座を示す正面図
【図9】位置決めピンで位置決めを行う菊座を示す縦断面図
【図10】他の位置決め手段で位置決めを行う菊座のガイド部材を示す正面図
【図11】他の位置決め手段で位置決めを行う菊座の台座を示す正面図
【図12】他の位置決め手段で位置決めを行う菊座を示す縦断面図
【図13】従来の絞り装置を示す組み立て斜視図
【符号の説明】
【0043】
10…絞り装置、12…絞り羽根、14…保持環、16…菊座、20…回動ピン、22…軸受孔、24…ダボピン、26…ガイド孔、28…光軸、32…ガイド部材、34…台座、36、38…Dカット部、40…凹部、42、44…フラット部、48…絞り板、50、52…位置決めピン、54、56…貫通孔、60、62…切欠部、64、66…突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持環と菊座との間に複数枚の絞り羽根が重ね合わされて保持され、前記絞り羽根は前記保持環に揺動自在に位置決めされるとともに、前記菊座に形成されたガイド孔を介してガイドされ、前記菊座を揺動させることにより前記絞り羽根を前記ガイド孔に従って揺動させて絞り口径を変化させる絞り装置において、
前記菊座は、前記ガイド孔が形成されたガイド部材と、前記ガイド部材を保持する台座と、が別体で構成されることを特徴とする絞り装置。
【請求項2】
前記ガイド部材は、プレス加工により製造されることを特徴とする請求項1に記載の絞り装置。
【請求項3】
前記ガイド部材及び前記台座には、該ガイド部材を前記台座に位置決めして固定するための位置決め手段が設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の絞り装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate