説明

絞り装置

【課題】円滑な作動が行われ、作動音の発生も抑制されるとともに、低コストで製作することのできる絞り装置を提供すること。
【解決手段】地板1に立設されている一方の支軸1cには、リング状の二つの間隔規制部材3,4が回転可能に取り付けられ、他方の支軸1dには、リング状の二つの間隔規制部材6,7が回転可能に取り付けられている。絞り羽根7は、地板1の開口部1aよりも大きな開口部7aと、開口部1aよりも小さな絞り開口部7bと、回転子10の出力ピン10aを嵌合させている円形の孔7cと、長孔7dとを有していている。そして、この絞り羽根7は、幅方向の一端側に形成された長孔7dを、間隔規制部材3,4の間で支軸1cに嵌合させているが、他端側は間隔規制部材6,7の間に配置されているだけで、支軸1dには接触していない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラやプロジェクタなどに用いることの可能な絞り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラやプロジェクタなどに用いる絞り装置の中には、地板が全体として細長い形状をしており、羽根室内に配置されている絞り羽根は、地板に形成されている光路用開口部よりも小さな絞り開口部を有していて、駆動手段によって地板の長手方向に沿って直線的に往復作動させられ、その絞り開口部を地板の光路用開口部に進退させるようにしたものが知られている。そのため、この種の絞り装置の場合には、一つの絞り開口しか選択することができない。下記の特許文献1には、その種の絞り装置であって、各種のプロジェクタに採用されるものとして構成したものが記載されているが、このように、1枚の絞り羽根(特許文献1においては、絞り板)を直線的に作動させることによって一つの絞り開口を選択するようにした絞り装置は、各種のカメラにも採用することが可能である。
【0003】
また、上記と同様に、光路用開口部を形成した地板が全体として細長い形状をしているが、羽根室内には絞り開口形成縁を有する2枚の絞り羽根が配置されており、駆動手段がそれらの絞り羽根を相反する方向へ直線的に作動させることによって、複数の絞り開口を連続的又は段階的に制御するようにした絞り装置も知られている。下記の特許文献2には、そのような絞り装置であって、主にビデオカメラに採用されるものとして構成したものが記載されているが、このような2枚の絞り羽根を直線的に作動させることによって複数の絞り開口を選択するようにした絞り装置は、スチルカメラ用の絞り装置やプロジェクタ用の絞り装置としても採用することが可能である。更に、この種の絞り装置は、一つの絞り開口だけを選択できるようにすることも可能である。
【0004】
また、このような特許文献1,2に記載されている絞り装置は、いずれも、絞り羽根が、ガイド手段に案内されて作動するように構成されている。そして、特許文献1に記載のガイド手段は、地板の幅方向の両端を折り曲げて形成した断面形状がU字状の溝であり、絞り羽根は、幅方向の両端がその溝の中で摺動するようになっている。そのため、絞り羽根自体には特別な形状が要求されるわけではない。また、特許文献2に記載のガイド手段は、地板の幅方向の両端近傍位置に立設されている複数のガイドピンである。そのため、2枚の絞り羽根は、いずれも、その幅方向の両端近傍位置に長孔を形成しており、それらの両端近傍位置に形成された長孔を、上記のガイドピンに嵌合させている。本発明は、このような、絞り羽根を地板の長手方向に往復作動させるようにした絞り装置における絞り羽根の支持構成に関するものである。
【0005】
【特許文献1】特開2005−164942号公報
【特許文献2】実公平6−37402号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
絞り装置の場合には、絞り羽根が迅速且つ円滑に作動することが要求されているが、被写体光の変化に対応して絞り開口の大きさを自動的に変化させるようにしたカメラ用の絞り装置や、画像条件の変化などに対応して絞り開口の大きさを自動的に変化させるようにしたプロジェクタ用の絞り装置の場合には、光量の変化に対応してスムーズな応答性が要求されるので、特に、そのような要求が大きい。しかしながら、絞り装置に対する要求はそれだけではなく、絞り羽根がそのような絞り開口の制御を長期にわたって正確に行えることについての要求も大きいし、ビデオカメラ用の絞り装置やプロジェクタ用の絞り装置の場合には、絞り羽根の作動音の大きさも抑制されることが要求されている。
【0007】
そのような観点から特許文献1に記載されている絞り装置を見てみると、絞り羽根は、その幅方向の両端がその全長にわたって常にガイド部に接触しているので、作動時に大きな摩擦抵抗力が働いた場合には、好適な応答性が得にくいし、作動音も発生し易いという問題点がある。また、特許文献2に記載されている絞り装置の場合には、2枚の絞り羽根同士や、羽根室を構成している地板と絞り羽根とが、殆ど面接触しないようにするために、地板に立設されているガイドピンと絞り羽根の長孔とを特殊な形状にしているため、製造が難しくなって大きなコストアップになってしまうという問題点がある。
【0008】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、特許文献2に記載されている絞り装置のように、地板に立設されているガイドピンの形状や絞り羽根に形成されている長孔の形状を複雑にすることなく、低コストで製作することができ、しかも、円滑に作動して作動音の発生も抑制できる絞り装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の絞り装置は、各々が光路用の開口部を有していて全体として細長い形状をしており両者の間に構成した羽根室内においていずれか一方の幅方向の両端近傍部に第1支軸と第2支軸を立設している二つの地板と、前記開口部よりも小さな絞り開口部を有していて幅方向の片側に形成された長孔を前記第1支軸に嵌合させており駆動手段によって前記地板の長手方向へ往復作動させられる絞り羽根と、各々がリング状をしていて前記二つの支軸に対して前記絞り羽根を間にして二つずつ回転可能に嵌合されている四つの間隔規制部材と、を備えていて、前記絞り羽根が作動するときには、少なくとも前記第2軸に嵌合されている前記二つの間隔規制部材が回転され得るようにする。
【0010】
その場合、前記駆動手段は、コイルを有する固定子と永久磁石を有する往復回転可能な回転子とからなっていて前記二つの地板の一方に取り付けられている電磁アクチュエータであり、該回転子には、径方向へ延伸した腕部が設けられていて、該腕部の先端に形成された出力ピンを、前記羽根室内において、前記絞り羽根に形成された孔に回転可能に嵌合させているようにすると、実用的な構成になる。
【0011】
また、上記の目的を達成するために、本発明の絞り装置は、各々が光路用の開口部を有していて全体として細長い形状をしており両者の間に構成した羽根室内においていずれか一方の幅方向の両端近傍部に第1支軸と第2支軸を立設している二つの地板と、絞り開口形成縁と幅方向の片側に形成された長孔とを有していて該長孔を前記第1支軸に嵌合させており駆動手段によって前記地板の長手方向へ往復作動させられる第1絞り羽根と、絞り開口形成縁と幅方向の片側に形成された長孔とを有していて該長孔を前記第2支軸に嵌合させており前記駆動手段によって前記第1絞り羽根とは相反する方向へ同時に往復作動させられ該絞り開口形成縁と前記第1絞り羽根の前記絞り開口形成縁とによって前記開口部よりも小さな絞り開口を形成する第2絞り羽根と、各々がリング状をしていて前記二つの支軸に対して三つずつ回転可能に嵌合されており前記二つの地板の一方に隣接して嵌合されているものは該地板と前記第1絞り羽根との間に配置され真中に嵌合されているものは前記二つの絞り羽根の間に配置され前記二つの地板の他方に隣接して嵌合されているものは該地板と前記第2絞り羽根との間に配置されているようにした六つの間隔規制部材と、を備えていて、前記二つの絞り羽根が作動するときには、少なくとも前記二つの絞り羽根の間に配置されている前記二つの間隔規制部材が回転され得るようにしてもよい。
【0012】
その場合、前記駆動手段は、コイルを有する固定子と永久磁石を有する往復回転可能な回転子とからなっていて前記二つの地板の一方に取り付けられている電磁アクチュエータであり、該回転子には、相反する径方向へ延伸した第1腕部と第2腕部とが設けられていて、それらの腕部の先端に形成された出力ピンを、各々、前記羽根室内において、前記各絞り羽根に形成されている孔に回転可能に嵌合させているようにすると、実用的な構成になる。
【0013】
また、本発明の絞り装置においては、前記出力ピンの先端は、前記二つの地板の他方に形成された円弧状の長孔に挿入されており、該出力ピンには、前記二つの地板の他方と前記絞り羽根との間に配置されるようにして、リング状をした間隔規制部材が回転可能に嵌合されているようにすると、駆動手段を電磁アクチュエータとした場合の有利な構成が得られる。更に、本発明の絞り装置においては、前記間隔規制部材が、フッ素樹脂で製作されているようにすると、絞り羽根を一層円滑に作動させることが可能になり、静音性にも優れたものになる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の絞り装置は、地板に立設されている二つの支軸に、リング状をした間隔規制部材を複数個ずつ回転可能に嵌合させておき、絞り羽根は、その幅方向の両端部が、各支軸に取り付けられている各々の二つの間隔規制部材の間に配置されていて、幅方向の一方の端部にだけ形成されている長孔を一方の支軸に嵌合させているようにしたので、その幅方向の長孔を形成していない方の端部が、作動中に間隔規制部材を回転させ得るようになり、従来よりも摩擦抵抗力が小さくて円滑に作動し、作動音の発生も抑制されるほか、コスト面でも極めて有利になるという特徴がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施の形態を、図示した二つの実施例によって説明する。本発明は、スチルカメラやビデオカメラなどのカメラ用絞り装置にも適用されるものであるが、実施例は、いずれも、プロジェクタ用の絞り装置として構成したものである。そして、図1〜図4は、実施例1を説明するためのものであり、図5〜図8は、実施例2を説明するためのものである。
【実施例1】
【0016】
初めに、図1〜図4を用いて実施例1を説明するが、この実施例は、絞り開口を一つだけ制御できるようにした絞り装置として構成したものである。そして、図1は、地板に形成されている開口部が光路を規制している状態を示した平面図であり、図2は、構成部材の重なり状態を理解し易く示した断面図であり、図3は、図1のA―A線断面図であり、図4は、絞り羽根に形成されている絞り開口部が光路を規制している状態を示した平面図である。
【0017】
そこで先ず、本実施例の構成を説明する。地板1は、耐熱性を有する合成樹脂製であって平面形状は細長い長方形をしており、図1において、その中央より若干右側に、円形をした光路用の開口部1aを有し、左端近傍部には、大きな異形の開口部1bを有している。その地板1には、補助地板2が適宜な手段によって取り付けられ、地板1との間に羽根室を構成しているが、図1においては、羽根室内を見やすくするために、右上方の一部だけが示されている(図4では省略)。この補助地板2は金属製であって地板1と略同じ外形形状をしているが、本実施例の場合には、この補助地板2を光源側にしてプロジェクタ内に配置されるようになっている。そして、この補助地板2にも、上記の開口部1aと対向するところに、図示していない同じ形状の開口部が形成されている。
【0018】
地板1の羽根室側の面には、その幅方向の両端近傍部に、二つの支軸1c,1dが立設されている。図3から分かるように、これらの支軸1c,1dは、全く同じ形状をしていて、地板1に形成された円形の肉厚部に立設されており、先端の小径部を補助地板2の孔に嵌合させている。また、支軸1cには、リング状をした間隔規制部材3,4が回転可能に取り付けられ、支軸1dにも、全く同じ形状をした二つの間隔規制部材5,6が回転可能に取り付けられているが、本実施例の場合には、これらの間隔規制部材3,4,5,6は、フッ素樹脂(例えば、商品名「テフロン(登録商標:イー・アイ・デユポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー)」)で製作されていて、軸方向へも可動になっている。
【0019】
また、支軸1cには、絞り羽根7も取り付けられている。図1に示されているように、本実施例の絞り羽根7は、地板1の開口部1aよりも直径の大きな開口部7aと、開口部1aよりも直径の小さな絞り開口部7bとを有しているほか、左端近傍部には円形の孔7cを有し、幅方向の片側には長孔7dを有していて、その長孔7dを支軸1cに嵌合させている。そのため、図3から分かるように、絞り羽根7は、上記の間隔規制部材3,4の間で、長孔7dを支軸1cに嵌合させているが、幅方向の他端側は、支軸1dに取り付けられている間隔規制部材5,6の間に配置されているだけである。
【0020】
このように、本実施例の絞り羽根7に形成されている長孔としては、長孔7dの一つだけであって、支軸1cに取り付けられている。しかも、その長孔7dと支軸1cも、特許文献2に記載されているもののように複雑な形状をしておらず、極めて単純な形状をしているだけである。また、間隔規制部材3,4,5,6は、単純な形状をした共通部品であって、支軸1c,1dには順に嵌め込むだけである。そのため、地板1に対する絞り羽根7の取付け構成は、関係部品の加工が容易であるうえに、組付け作業も簡単に行え、コスト面で極めて有利な構成になっている。
【0021】
地板1の羽根室外の面には、絞り羽根7の駆動手段として、電磁アクチュエータが取り付けられているが、この電磁アクチュエータは、例えば、特開2005−24638号公報の第1実施例に記載されているような周知の電流制御式のモータである。第1固定子枠8はコップを伏せた形状をしていて、第2固定子枠9との間に、回転子10の収容室を構成している。永久磁石を有する回転子10は、その収容室内において、それらの固定子枠8,9の両方に軸受けされている。固定子枠8,9の外側には、それらの軸受部を囲むようにして溝が形成されていて、そこにコイル11が巻回されており、円筒状のヨーク12が、そのコイル11の外側で、第1固定子枠8に嵌装されている。また、回転子10は、回転子軸が合成樹脂製であり、それと一体であって上記の収容室から径方向へ延伸している腕部の先端には、出力ピン10aが形成されている。尚、出力ピン10aを上記の腕部も含めて永久磁石製としたものも知られている。
【0022】
このように構成されている本実施例のモータは、その一部を地板1の開口部1bから羽根室側に挿入した状態にしておき、第2固定子枠9を二つのビス13,14で螺着することによって、地板1の羽根室外の面に取り付けられている。そして、その取付け状態においては、出力ピン10aは、絞り羽根7の孔7cと、図2に示されている間隔規制部材15に対して回転可能に嵌合し、その先端を、補助地板2に形成されている、回転子10の回転軸を中心にした円弧状の長孔2aに挿入している。尚、間隔規制部材15は、上記の間隔規制部材3〜6と共通の部品である。また、下記の作動説明から分かるように、絞り羽根7の反対側にも、このような間隔規制部材をもう一つ嵌合させておくと、本実施例の場合よりも好ましいものとなる。
【0023】
本実施例の場合には、絞り羽根7の駆動手段として、上記のように構成された電流制御式モータを採用しているが、本発明の駆動手段は、このようなモータに限定されるものではない。電流制御式モータであっても、主に固定子の構成の違いによって種々のものが知られている。また、絞り羽根の駆動手段としては、従来からステップモータや電磁プランジャを採用することも知られているし、特許文献1に記載されているように、DCモータを採用することも知られている。従って、本発明の駆動手段は、それらのいずれであっても構わない。そして、このことは、下記の実施例2の場合も同じである。
【0024】
次に、本実施例の作動を説明する。図1は、地板1の開口部1aが照射光の光路を規制している状態を示したものである。そして、このときには、コイル11に対して電流が供給されていない。しかしながら、周知のように、回転子10の永久磁石と第1固定子枠8に設けられた磁性体部材との間には吸引力が作用していて、回転子10には時計方向へ回転する力が与えられているが、その回転を、図示していないストッパに阻止されることによって、この状態が確実に維持されている。この状態において、照射光の明るさを弱くするために、光路の開口を小さくしたい場合には、コイル11に対して順方向の電流を供給する。それによって、回転子10は反時計方向へ回転させられるので、絞り羽根7は、略左方向へ移動させられていく。
【0025】
このとき、絞り羽根7は、支軸1cに対して摺動するが、支軸1dには接触せず、しかも、地板1や補助地板2とは接触していないので、円滑に作動し、作動音も小さい。また、このとき、絞り羽根7は、間隔規制部材3,4の少なくとも一方に摺接するが、それらとの間は、面接触せず、相互に斜めに接触することがあるので、そのような接触をした場合には、それらの間隔規制部材3,4を回転させることになり、一層、円滑に作動し作動音も抑制される。更に、このとき、絞り羽根7は、支軸1dに取り付けられている方の間隔規制部材5,6の少なくとも一方にも摺接する。しかしながら、絞り羽根7の下端部は支軸1dには接触せず、支軸1dの位置より上方で間隔規制部材5,6の少なくとも一方に摺接するので、間隔規制部材5,6は、摺接時の摩擦によって回転させられ、絞り羽根7の移動には殆ど影響を与えず、作動音を発生させることも殆どない。
【0026】
更にまた、本実施例の場合には、絞り羽根7が、円柱形の出力ピン10aに対して円形の孔7cで連結されているため、その連結部における摩擦抵抗力は小さいし、作動音の発生も抑制される。また、間隔規制部材15の存在によって、絞り羽根7と、補助地板2の長孔2aの近傍部との摩擦抵抗力も緩和されるようになっている。更に、間隔規制部材15ともう一つの間隔規制部材によって、絞り羽根7を挟むようにした場合には、絞り羽根7が、出力ピン10aを設けている合成樹脂製の腕部に直接接触しないようになり、一層効果的になる。但し、本発明は、出力ピン10aに、間隔規制部材を取り付けることは必須ではない。また、本実施例の場合には、全ての間隔規制部材をフッ素樹脂で製作しているが、それらの一部又は全てを、フッ素樹脂以外の材料で製作しても構わない。これらのことは、下記の実施例2の場合も同じである。
【0027】
このようにして、図1において、絞り羽根7が略左方向へ移動していくと、やがて、絞り羽根7に形成されている絞り開口部7bが地板1の開口部1a内に入ってゆく。そして、絞り開口部7bの中心が開口部1aの中心に一致すると、図示していないストッパによって、回転子10の回転と絞り羽根7の移動が阻止される。図4は、そのときの状態を示したものである。また、この状態になると、コイル11に対する通電が断たれるが、そのときには、周知のように、回転子10の永久磁石と第1固定子枠8に設けられた磁性体部材との間に作用する吸引力によって、回転子10には反時計方向へ回転する力が与えられるため、図4の状態が確実に維持される。
【0028】
また、照射光の明るさを強くするために、絞り羽根7を、図4に示された位置から図1に示された位置へ移動させる場合には、コイル11に対して逆方向の電流を供給する。それによって、回転子10は時計方向へ回転させられるので、絞り羽根7は略右方向へ移動させられていくことになるが、このときにも、既に説明した理由によって、絞り羽根7は、大きな作動音を発生させることなく且つ円滑に移動することになる。そして、図1に示された位置に達すると、図示していないストッパによって、回転子10の回転と絞り羽根7の移動が阻止され、その直後に、コイル11に対する通電が断たれる。尚、本実施例の場合には、図4の状態においてプロジェクタによる投影が終了し、電源をオフにされた場合にも、遅延回路が働くようになっていて、その遅延時間中に絞り羽根7が自動的に図1の位置に復帰させられることになる。
【実施例2】
【0029】
次に、図5〜図8を用いて実施例2を説明する。この実施例は、上記の実施例1の場合と同様に、絞り開口を一つだけ制御するようにすることも可能であるが、絞り開口を連続的又は段階的に制御することも可能であるため、それらのうち、絞り開口を連続的に制御するようにされている場合で説明する。そして、図5は、地板に形成されている開口部が光路を規制している状態を示した平面図であり、図6は、構成部材の重なり状態を理解し易く示した断面図であり、図7は、図5のB―B線断面図であり、図8は、2枚の絞り羽根の絞り開口形成縁によって最小絞り開口を形成した状態を示している平面図である。
【0030】
先ず、本実施例の構成を説明する。地板21は、耐熱性を有する合成樹脂製であって平面形状は細長い長方形をしており、円形をした光路用の開口部21aのほかに、左端近傍部に、大きな異形の開口部21bを有している。補助地板22は、金属製であって、地板21と略同じ外形をしており、適宜な手段によって地板21に取り付けられ、地板21との間に羽根室を構成しているが、図5においては、その一部だけが右上方に示されている。そして、この補助地板22にも、上記の開口部21aと対向するところに、図示していない同じ形状の開口部が形成されている。
【0031】
地板21の羽根室側の面には、その幅方向の両端近傍部に、二つの支軸21c,21dが立設されている。これらの支軸21c,21dは、全く同じ形状をしていて、図7に示されている支軸21dの場合のように、地板21に形成された円形の肉厚部に立設されており、先端の小径部を補助地板22の孔に嵌合させている。また、支軸21cには、フッ素樹脂製であってリング状をした三つの間隔規制部材23,24,25が、間隔規制部材23を一番地板21側にして順に回転可能に取り付けられており、支軸21dにも、同じ形状で同じ材質の三つの間隔規制部材26,27,28が、間隔規制部材26を一番地板21側にして順に回転可能に取り付けられている。
【0032】
羽根室内には、2枚の絞り羽根29,30が配置されている。図5に示されているように、それらのうち、地板21側に配置されている絞り羽根29は、地板21の開口部21aよりも大きな開口部29aを有しているほか、左端近傍部には円形の孔29bを有し、幅方向の片側には長孔29cを有している。それらのうち、開口部29aは、右半分の縁は半円形をしているだけであるが、左約半分の縁は絞り開口形成縁として形成されている。そして、この絞り羽根29は、間隔規制部材23,24の間で、長孔29cを支軸21cに嵌合させており、図7に示されているように、その幅方向の他端側は、支軸21dに取り付けられている間隔規制部材26,27の間に配置されている。
【0033】
他方、絞り羽根30は、地板21の開口部21aよりも大きな開口部30aを有しているほか、左端近傍部には円形の孔30bを有し、幅方向の片側には長孔30cを有している。それらのうち、開口部30aは、上記の絞り羽根29の開口部29aとは対称的な形状をしており、左半分の縁は半円形をしているだけであるが、右約半分の縁は絞り開口形成縁として形成されている。そして、この絞り羽根30は、図7に示されているように、間隔規制部材27,28の間で、長孔30cを支軸21dに嵌合させており、その幅方向の他端側は、支軸21cに取り付けられている間隔規制部材24,25の間に配置されている。
【0034】
このように、本実施例の場合にも、絞り羽根29,30には、長孔29c,30cが一つずつ形成されているだけであって、支軸21c,21dの一方にだけ取り付けられるようになっている。しかも、それらの長孔29c,30cや支軸21c,21dは、実施例1における長孔7dや支軸1c,1dと同様に、単純な形状をしている。また、間隔規制部材23,24,25,26,27,28は、リング状をした共通部品である。そのため、本実施例における絞り羽根29,30の取付け構成も、関係部品の加工が容易であるうえに、組付け作業も簡単に行え、コスト面で極めて有利な構成になっている。
【0035】
地板21の羽根室外の面には、2枚の絞り羽根29,30の共通の駆動手段として一つの電磁アクチュエータが取り付けられている。本実施例の電磁アクチュエータは、上記の特開2005−24638号公報の第2実施例に記載されている構成をした電流制御式のモータであって、実施例1で説明したモータとは、その一部の構成が異なるだけである。
【0036】
図6に示されているように、第1固定子枠31と第2固定子枠32の間には、回転子33の収容室が構成されていて、永久磁石を有する回転子33が、それらの固定子枠31,32に軸受けされている。固定子枠31,32の外側には、回転子33の軸受部を囲むようにして一連の溝が形成されており、その溝内には底の方から順にコイル34,35が巻回されている。また、第1固定子枠31の外周面であって、コイル34,35を巻回する溝が形成されていないところには窪み状に図示していない凹部が形成されており、そこには、図示していないが、回転子33の回転位置を検出可能なホール素子(磁気感応素子)が収容されている。そして、コイル35やホール素子を包むようにして、円筒状のヨーク36が第1固定子枠31に嵌装されている。また、回転子33は、回転子軸が合成樹脂製であり、それと一体に成形されていて、収容室から相反する径方向へ延伸している二つの腕部の先端には、出力ピン33a,33bが形成されている。
【0037】
そして、本実施例のモータは、その一部を地板21の開口部21bから羽根室側に挿入した状態にしておき、第2固定子枠32を二つのビス37,38で螺着することによって、地板21の羽根室外の面に取り付けられている。そして、その取付け状態においては、出力ピン33aは、絞り羽根29の孔29bと、図6に示されている間隔規制部材39に対して回転可能に嵌合し、その先端を、補助地板22に形成されている長孔22aに挿入している。また、もう一方の出力ピン33bは、絞り羽根30の孔30bと、図6に示されている間隔規制部材40に対して回転可能に嵌合し、その先端を、補助地板22に形成されている長孔22bに挿入している。尚、本実施例の場合にも、各出力ピン33a,33bに、絞り羽根29,30を間にして、もう一つの間隔規制部材を取り付けると、より好ましい構成になる。また、上記の長孔22a,22bは、実際には、回転子33の回転軸を中心にして円弧状に形成されている。
【0038】
次に、本実施例の作動を説明する。上記したように、本実施例の固定子枠31,32の両方には、二つのコイル34,35が重ねて巻回されているが、コイル34に順方向の電流を供給した場合には、図5において、回転子33を反時計方向へ回転させる回転力が発生し、コイル35に順方向の電流を供給した場合には、回転子33を時計方向へ回転させる回転力が発生するように構成されている。そして、それらの回転力は、大きな電流を供給するほど大きくなる。従って、コイル34,35に供給される電流値が同じ場合には、回転子33は、いずれの方向へも回転せず、停止状態が維持されることになる。
【0039】
ところで、図5に示されている状態は、プロジェクタの不使用状態を示したものである。そのため、いずれのコイル34,35に対しても電流が供給されていない。プロジェクタの使用に際して電源をオンにすると、コイル34,35の両方に順方向の電流が供給される。そして、照射光を一番強くする場合には、回転子33が図5の位置にあることを図示していないホール素子が検出し、コイル34,35には同じ大きさの電流が供給される。そのため、回転子33は図5の位置に停止したままであり、照明光の光路は、地板21の開口部21aによって規制されるようになる。
【0040】
照明光を弱くするために、光路の開口を小さくする場合は、コイル34に供給する電流よりも、コイル35に供給する電流の方を大きくする。それによって回転子33は、図5において時計方向へ回転することになるが、その回転速度は、コイル34,35に供給される電流値の差によって左右される。そのようにして、回転子33が時計方向へ回転すると、絞り羽根29は、出力ピン33aによって略右方向へ移動させられ、絞り羽根30は、出力ピン33bによって略左方向へ移動させられて、光路は、2枚の絞り羽根29,30の絞り開口形成縁の協働によって得られた絞り開口によって規制されるようになる。そして、回転子33が時計方向へ回転すればするほど、絞り開口は小さくなっていく。
【0041】
このようにして、回転子33が時計方向へ回転してゆき、絞り開口が所定の大きさになると、ホール素子による検出結果に対応して、コイル34,35に供給される電流値が同じになり、回転子33の回転が停止され、その停止状態が維持される。そして、その後は、照明光を強くしたい場合には、コイル35に供給する電流よりも、コイル34に供給する電流の方を大きくするし、弱くしたい場合には、コイル34に供給する電流よりも、コイル35に供給する電流の方を大きくして、絞り開口を随時変化させることになる。図8は、そのようにして、絞り開口を一番小さくしたときの状態を示したものである。
【0042】
ところで、このようにして2枚の絞り羽根29,30が移動させられるときには、支軸21c,21dの一方に対してだけ摺動し、他方に対しては全く接触しない。しかも、地板21や補助地板22とも全く接触しないし、相互に接触することもない。そのため、2枚の絞り羽根29,30は円滑に作動し、作動音の発生も抑制される。また、このとき、各絞り羽根29,30は、取り付けられていない方の支軸には接触せず、しかも、その支軸に取り付けられている間隔規制部材には、その支軸よりも地板21の幅方向の中央側で摺接するので、その摺接によって間隔規制部材を回転させることになるし、取り付けられている方の支軸に取り付けられている間隔規制部材の方も回転させることもあるため、一層、円滑に作動し作動音の発生も抑制される。
【0043】
更に、本実施例の場合にも、絞り羽根29,30が、円柱形の出力ピン33a,33bに対して円形の孔29b,30bで連結されているため、その連結部における摩擦抵抗力は小さく、作動音の発生も抑制される。また、間隔規制部材39,40の存在によって、絞り羽根29,30と、補助地板22の長孔22a,22bの近傍部との摩擦抵抗力も緩和されるようになっている。更に、出力ピン33a,33bに対して、絞り羽根29,30の反対側にもう一つの間隔規制部材を嵌合させるようにすると、絞り羽根29,30が、出力ピン33a,33bを設けている合成樹脂製の腕部に直接接触しなくなり、一層効果的になる。
【0044】
このようにして、プロジェクタによる投影が行われ、終了したときには、電源をオフにする。そのとき、本実施例の場合にも遅延回路が働くようになっているので、その遅延時間中に回転子33は反時計方向へ回転され、図5の位置に復帰して停止させられる。
【0045】
尚、上記の各実施例の場合には、いずれも、回転子と一体の出力ピンを絞り羽根に直接連結させているが、本発明は、そのような構成に限定されず、他の部材を介して連結するようにしても構わない。例えば、実施例2のように、2枚の絞り羽根を相反する方向へ作動させる場合には、一方の地板に駆動部材を回転可能に取り付けるようにし、その回転中心から異なる径方向位置においてその駆動部材に設けられている二つのピンを、上記の出力ピン33a,33bのようにして各絞り羽根の孔に嵌合させると共に、その駆動部材を、回転子の出力ピンによって往復回転させるようにすることが考えられる。そして、そのようにする場合には、実施例2の回転子33のように、二つの出力ピン33a,33bを設ける必要はなく、実施例1の回転子10のように、一つの出力ピン10aだけでもよいことは言うまでもない。
【0046】
また、上記の各実施例は、各種プロジェクタ用の絞り装置を前提にして説明したが、本発明の絞り装置は、カメラ用の絞り装置としても、舞台照明などを行う照明機器用の絞り装置としても実施可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】地板に形成されている開口部が光路を規制している状態を示した実施例1の平面図である。
【図2】構成部材の重なり状態を理解し易く示した実施例1の断面図である。
【図3】図1のA―A線断面図である。
【図4】絞り羽根に形成されている絞り開口部が光路を規制している状態を示した実施例1の平面図である。
【図5】地板に形成されている開口部が光路を規制している状態を示した実施例2の平面図である。
【図6】構成部材の重なり状態を理解し易く示した実施例2の断面図である。
【図7】図5のB―B線断面図である。
【図8】2枚の絞り羽根の絞り開口形成縁によって最小絞り開口を形成した状態を示している実施例2の平面図である。
【符号の説明】
【0048】
1,21 地板
1a,1b,7a,21a,21b,29a,30a 開口部
1c,1d,21c,21d 支軸
2,22 補助地板
2a,7d,29c,22a,22b 長孔
3〜6,15,23〜28,39,40 間隔規制部材
7,29,30 絞り羽根
7b 絞り開口部
7c,29b,30b 孔
8,31 第1固定子枠
9,32 第2固定子枠
10,33 回転子
10a,33a,33b 出力ピン
11,34,35 コイル
12,36 ヨーク
13,14,37,38 ビス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が光路用の開口部を有していて全体として細長い形状をしており両者の間に構成した羽根室内においていずれか一方の幅方向の両端近傍部に第1支軸と第2支軸を立設している二つの地板と、前記開口部よりも小さな絞り開口部を有していて幅方向の片側に形成された長孔を前記第1支軸に嵌合させており駆動手段によって前記地板の長手方向へ往復作動させられる絞り羽根と、各々がリング状をしていて前記二つの支軸に対して前記絞り羽根を間にして二つずつ回転可能に嵌合されている四つの間隔規制部材と、を備えていて、前記絞り羽根が作動するときには、少なくとも前記第2軸に嵌合されている前記二つの間隔規制部材が回転され得るようにしたことを特徴とする絞り装置。
【請求項2】
前記駆動手段は、コイルを有する固定子と永久磁石を有する往復回転可能な回転子とからなっていて前記二つの地板の一方に取り付けられている電磁アクチュエータであり、該回転子には、径方向へ延伸した腕部が設けられていて、該腕部の先端に形成された出力ピンを、前記羽根室内において、前記絞り羽根に形成された孔に回転可能に嵌合させていることを特徴とする請求項1に記載の絞り装置。
【請求項3】
各々が光路用の開口部を有していて全体として細長い形状をしており両者の間に構成した羽根室内においていずれか一方の幅方向の両端近傍部に第1支軸と第2支軸を立設している二つの地板と、絞り開口形成縁と幅方向の片側に形成された長孔とを有していて該長孔を前記第1支軸に嵌合させており駆動手段によって前記地板の長手方向へ往復作動させられる第1絞り羽根と、絞り開口形成縁と幅方向の片側に形成された長孔とを有していて該長孔を前記第2支軸に嵌合させており前記駆動手段によって前記第1絞り羽根とは相反する方向へ同時に往復作動させられ該絞り開口形成縁と前記第1絞り羽根の前記絞り開口形成縁とによって前記開口部よりも小さな絞り開口を形成する第2絞り羽根と、各々がリング状をしていて前記二つの支軸に対して三つずつ回転可能に嵌合されており前記二つの地板の一方に隣接して嵌合されているものは該地板と前記第1絞り羽根との間に配置され真中に嵌合されているものは前記二つの絞り羽根の間に配置され前記二つの地板の他方に隣接して嵌合されているものは該地板と前記第2絞り羽根との間に配置されているようにした六つの間隔規制部材と、を備えていて、前記二つの絞り羽根が作動するときには、少なくとも前記二つの絞り羽根の間に配置されている前記二つの間隔規制部材が回転され得るようにしたことを特徴とする絞り装置。
【請求項4】
前記駆動手段は、コイルを有する固定子と永久磁石を有する往復回転可能な回転子とからなっていて前記二つの地板の一方に取り付けられている電磁アクチュエータであり、該回転子には、相反する径方向へ延伸した第1腕部と第2腕部とが設けられていて、それらの腕部の先端に形成された出力ピンを、各々、前記羽根室内において、前記各絞り羽根に形成されている孔に回転可能に嵌合させていることを特徴とする請求項3に記載の絞り装置。
【請求項5】
前記出力ピンの先端は、前記二つの地板の他方に形成された円弧状の長孔に挿入されており、該出力ピンには、前記二つの地板の他方と前記絞り羽根との間に配置されるようにして、リング状をした間隔規制部材が回転可能に嵌合されていることを特徴とする請求項2又は4に記載の絞り装置。
【請求項6】
前記間隔規制部材が、フッ素樹脂で製作されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の絞り装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2009−14849(P2009−14849A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−174370(P2007−174370)
【出願日】平成19年7月2日(2007.7.2)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】