説明

給水用ウイルスろ過・除去システム

【課題】家禽飼育施設などの閉鎖空間への給水を安全に保つ給水用ウイルスろ過・除去システムを提供する。
【解決手段】給水源からウイルスをろ過・除去するシステムであって、水源12と閉鎖空間用の給水源14、16、18とを介在し、かつ微粒子、浮遊物質(MES)、コロイド物質及び微生物を捕集する3つのフィルター20、22、24と、ウイルスを破壊するUVC放射ランプ26とを有する除染器10と、その除染器10の不調を通報する警報制御装置36とを備えている。それぞれのフィルター20、22、24の出口における水圧を測定する圧力センサー28、30、32と、UVC放射ランプ26の不調を検知するUV測定器27とを備えている。警報制御装置36が圧力センサー28、30、32のうちの少なくとも1台又はUV測定器27から警報信号を受信したときは、水源12と除染器10との間に配置された遮断装置38により水を遮断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給水からウイルスをろ過及び除去するシステムに関し、特に家禽飼育施設の給水からの鳥インフルエンザウイルスを除去することができる給水用ウイルスろ過・除去システムに関する。
【背景技術】
【0002】
今日、H5N1ウイルスがヒト間で感染することで、鳥インフルエンザが世界的に流行する可能性があり、世界的に心理的な脅威となっている。
【0003】
WHOによれば、H5N1ウイルスはその遺伝子をヒト感染性のインフルエンザと交換できるらしいため、世界的な流行は不可避である。この場合、遺伝的再配列が起こり、そのような恐ろしいヒト間の感染が可能な遺伝的性質を備えた新型ウイルスが出現するだろう。
【0004】
政府及び州は現実的な考え方をとっており、本質的にヒト間での流行防止対策に焦点を合わせている。その結果として彼らは、H5N1ウイルスに対する有効性が未だ立証されていないタミフル(ロシユ社の登録商標)のような抗ウイルス薬、又は病院職員に限り効果が立証されているFFP1型マスクを備蓄している。
【0005】
同様に、最近のBritish Medical Journalに発表された記事によれば、流行地域からの旅行者の入国を制限する方法では、そのうちの17%を検出できるに過ぎない。
【0006】
WHOに属する世界的な動物の健康に関する機関であるIOE(国際獣疫事務局)によれば、ヒト間での流行を回避できる最も効果的な対策の一つは、動物内のウイルスの量を抑制又は制限することである。
【0007】
先進国では、過去に汚染されていない家畜を封じ込める措置が大いに効果を発揮するだろう。その場合、未だ管理されていない唯一あり得る汚染媒介物は、水源の種類(河川、湖、プール、側溝、井戸、湧き水など)に関係なく家禽向けの給水用の水である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、家禽飼育施設などの閉鎖空間への給水を安全に保つ給水用ウイルスろ過・除去システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成する本発明の給水用ウイルスろ過・除去システムは、水源12と閉鎖空間用の少なくとも1つの給水源14、16、18とを介在する除染器10と、前記除染器10の不調を通報する警報制御装置36とを備え、前記除染器10が、5μm超の大きさの微粒子及び懸濁物質を捕集する第1フィルター20と、0.5μm超の大きさの微粒子、懸濁物質及びコロイド物質を捕集するカートリッジ式の第2フィルター22と、0.1μm超の大きさの細菌からなる微生物を捕集する第3フィルター24と、ウイルスを破壊するUVC放射ランプ26とを有する給水用ウイルスろ過・除去システムであって、前記フィルター20、22、24の出口における水圧をそれぞれ測定する圧力センサー28、30、32と、前記UVC放射ランプ26の不調を検知する検知手段とを前記警報制御装置36に接続すると共に、前記水源12と前記除染器10との間に水遮断手段を配置し、前記警報制御装置36が前記圧力センサー28、30、32及び検知手段のうちの少なくとも1台から警報信号を受信したときに、前記水遮断手段により水を遮断するようにしたことを特徴とするものである。
【0010】
検知手段は、UVC放射ランプ26の最も好ましくない時点の放射強度である使用初期における放射強度を百分率で連続的に表示するUV測定器27であることが望ましい。
【0011】
除染器10の初期運転に悪影響を与える水源12の水圧低下を検知するための圧力センサー34を、除染器10の入口に設置することが望ましい。
【0012】
警報制御装置36は、圧力センサー28、30、32、34からの単一又は複数の警報信号を受信したときに、第1〜第3フィルター20、22、24のうちの1個又は複数個の交換をただちに決定できるようにプログラムされたマイクロプロセッサーであることが望ましい。更に、その警報制御装置36は、交換が必要なフィルター20、22、24又はUVC放射ランプ26のアップグレードの必要性をユーザに向けて画面に表示するコンピュータに、WiFiに基づく無線LANを通じて接続されているのがよい。
【0013】
本発明の給水用ウイルスろ過・除去システムは、鳥インフルエンザの感染を防ぐために家禽飼育施設の給水に好適に用いられる。その場合には、インターネット52に接続され、少なくとも1台の除染器46、48、50からの警報信号を受信する複数のコンピュータ40、42、44と、同じくインターネット52に接続され、故障箇所を修理するチームを現場へ派遣するために、コンピュータ40、42、44からの警報信号を受信する警報センター54とから構成される集中管理システムを構築することが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の給水用ウイルスろ過・除去システムによれば、水源12と閉鎖空間用の少なくとも1つの給水源14、16、18とを介在する除染器10と、前記除染器10の不調を通報する警報制御装置36とを備え、前記除染器10が、5μm超の大きさの微粒子及び懸濁物質を捕集する第1フィルター20と、0.5μm超の大きさの微粒子、懸濁物質及びコロイド物質を捕集するカートリッジ式の第2フィルター22と、0.1μm超の大きさの細菌からなる微生物を捕集する第3フィルター24と、ウイルスを破壊するUVC放射ランプ26とを有し、前記フィルター20、22、24の出口における水圧をそれぞれ測定する圧力センサー28、30、32と、前記UVC放射ランプ26の不調を検知する検知手段とを前記警報制御装置36に接続すると共に、前記水源12と前記除染器10との間に水遮断手段を配置し、前記警報制御装置36が前記圧力センサー28、30、32及び検知手段のうちの少なくとも1台から警報信号を受信したときに、前記水遮断手段により水を遮断するようにしたので、水源12の種類にかかわらず、除染器10内の3台のフィルター20、22、24によって水の濁りを取り、かつ下流のUVC放射ランプ26によるウィルスの破壊作用に影響を与える要素を除去することができる。更に、各フィルター20、22、24又はUVC放射ランプ26が不調となったときには、水源12と除染器10との間を遮断して、給水源14、16、18を閉じることができる。そのため、閉鎖空間への給水を安全に保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態からなる給水用ウイルスろ過・除去システムを示す。
【0017】
この給水用ウイルスろ過・除去システムは、水源12から受け取った汚染除去の対象となる水を循環する除染器10、即ち水分配ネットワークから構成される。汚染が除去された水は、除染器10の出口で1つ又は複数の給水源14、16、18に送られる。その給水源14、16、18は、鳥インフルエンザの感染を軽減するために、閉鎖空間である家禽飼育施設、即ち養鶏場に除染された水を提供する。
【0018】
除染器10は、連続する3つのフィルター20、22、24及びUVC放射ランプ26を備えている。第1フィルター20は、約5μmより大きなサイズの、微粒子、寄生虫及び懸濁物質(MIN:Material in Suspension)を捕集するが、この「微粒子、寄生虫及びMIN」という用語は、鉱物型、動物型、又は植物型の任意の要素を指すものである。第2フィルター22は、約0.5μmより大きなサイズの微粒子及びMIN、並びにコロイド物質を捕集するカートリッジ式のフィルターである。第3フィルター24は、0.1μmより大きなサイズである細菌のような微生物を捕集するよう設計された限外ろ過フィルターである。
【0019】
これら3つのフィルター20、22、24を通過させると水の濁りは解消されるが、それは水が微粒子、MIN、コロイド物質、寄生虫又は微生物などの要素をもはや含んでいないことを示している。上記の要素の1つは、単独で又は他と共同してUVC放射ランプ26によるウイルス汚染の除去作用を損なうことがある。UVCが放射される水は、極めて少量のウイルスしか含んでいないだろう。もはや上記の要素のような粒子によって大量に覆われてはいない水は、UVCの放射によって完全に不活性化される。このことは全てのA型、B型及びC型のインフルエンザウイルス、その中でも特に鳥インフルエンザを媒介するA型インフルエンザであるH5N1に当てはまる。
【0020】
UVC放射ランプ26は、250〜256nmの波長の光を放射する。その平均的な照射量は60mJ/cmである。参考までに言うと、A型インフルエンザを不活性化するのに必要な照射量は6.6mJ/cmである。
【0021】
UV測定器27は、UVC放射ランプ26の最も好ましくない時点であるランプ使用初期における放射強度を百分率で連続的に表示する。それは、ランプの経時劣化、ランプを覆っているクオーツシースの詰まり、及び水質劣化といった性能に影響する全てのパラメータを考慮する有効な指標となる。
【0022】
圧力センサー28、30、32は、水圧を測定して異常な負荷損失(圧力低下)、即ちフィルターの詰まりを検知するために、各フィルター20、22、24の出口に配置されている。この負荷損失は、最適な動作状態から逸脱したことを示すものである。
【0023】
除染器10の良好な運転に悪影響を与える恐れのある、水源12からの水圧低下を検出するため、除染器10の手前にも圧力センサー34が配置されている。
【0024】
圧力センサー28、30、32、34及びUV測定器27は、警報制御装置36に直接に接続されている。警報制御装置36には、圧力センサー28、30、32、34及びUV測定器27からの警報信号を受信して、水源12の出口に配置された水遮断手段である遮断装置38に水を遮断する命令を送信するようにプログラムされたマイクロプロセッサーを用いるのがよい。有効性の上からは、1つの警報信号のみを受信したときでも、給水源14、16、18を遮断する遮断命令信号を出すようにすべきである。
【0025】
注目すべきことは、警報制御装置36は、各センサー28、30、32、34、27からの警報信号を受け取ると直ちに不調箇所を決定することである。実際、水源12の圧力が低下すると、この圧力低下が除染器10の全てのフィルター20、22、24に反映されるため、全てのセンサー34、28、30、32が警報制御装置36に警報信号を送信する。第1フィルター20だけが不調である場合は、警報信号は圧力センサー28、30、32によって送信される。第2フィルター22だけが不調である場合は、警報信号は圧力センサー30、32によって送信される。最後に、第3フィルター24だけが不調である場合は、圧力センサー32だけが警報信号を送信する。UV測定器27から送信される警報信号が、UVC放射ランプ26の運転不良を示すことは勿論である。
【0026】
除染器10の不調を直ちに知るためには、フィルター20、22、24の1つ又は複数、あるいはUVC放射ランプ26の不調を示す報告がユーザーに伝達されるのがよい。それを実現するには、警報制御装置36は、WiFi若しくはブルートゥース接続を介して、若しくは搬送電流によって、又はその他の適切な接続によって、ユーザーのコンピュータに接続されることが望ましい。これにより、複数の除染器10を管理するユーザーは、そのコンピュータの画面に表示される警報及び/又は報告によって警告を受けるであろう。そして彼は、どの除染器46、48、50が不調であり、その不調な除染器のどのフィルターの交換が必要であるか、又はUVC放射ランプのアップグレードが必要かどうかについて、ただちに知ることができるだろう。
【0027】
図2は、除染器の集中管理システムを示す。
【0028】
各ユーザーは、図面から分かるように、コンピュータ40、42、44を有している。各コンピュータは、連続的な接続、即ち無線LANの1つであるWiFi接続を介して、その制御下にある警報制御装置につながっている。従って、コンピュータ40は、WiFiによって3つの除染器46,48,50の警報制御装置に接続している。
【0029】
コンピュータ40、42、44はインターネット52に接続されている。警報センター54もまたインターネット52に接続している。その目的は、全てのコンピュータからの警報を受信して、集中化された機関によって管理される制御ポイントで管理することである。このようにして、警報センター54が警報を受信するとただちに、不調な除染器の場所及び内容(不調な装置はフィルターとUVC放射ランプのいずれであるか)が分かり、故障箇所を修理するためのチームを現場に派遣することができる。このような解決方法により、使用コストを最小限に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態からなる給水用ウイルスろ過・除去システムを示すブロック系統図である。
【図2】図1に示す給水用ウイルスろ過・除去システムを複数管理する集中管理システムを示すブロック系統図である。
【符号の説明】
【0031】
10 除染器
12 水源
14、16、18 給水源
20 第1フィルター
22 第2フィルター
24 第3フィルター
26 UVC放射ランプ
27 UV測定器
28、30、32、34 圧力センサー
36 警報制御装置
38 遮断装置
40、42、44 コンピュータ
46、48、50 除染器
52 インターネット
54 警報センター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水源12と閉鎖空間用の少なくとも1つの給水源14、16、18とを介在する除染器10と、前記除染器10の不調を通報する警報制御装置36とを備え、
前記除染器10が、5μm超の大きさの微粒子及び懸濁物質を捕集する第1フィルター20と、0.5μm超の大きさの微粒子、懸濁物質及びコロイド物質を捕集するカートリッジ式の第2フィルター22と、0.1μm超の大きさの細菌からなる微生物を捕集する第3フィルター24と、ウイルスを破壊するUVC放射ランプ26とを有する給水用ウイルスろ過・除去システムであって、
前記フィルター20、22、24の出口における水圧をそれぞれ測定する圧力センサー28、30、32と、前記UVC放射ランプ26の不調を検知する検知手段とを前記警報制御装置36に接続すると共に、前記水源12と前記除染器10との間に水遮断手段を配置し、前記警報制御装置36が前記圧力センサー28、30、32及び検知手段のうちの少なくとも1台から警報信号を受信したときに、前記水遮断手段により水を遮断するようにした給水用ウイルスろ過・除去システム。
【請求項2】
前記検知手段が、前記UVC放射ランプ26の最も好ましくない時点の放射強度である使用初期における放射強度を百分率で連続的に表示するUV測定器27である請求項1に記載の給水用ウイルスろ過・除去システム。
【請求項3】
前記除染器10の初期運転に悪影響を与える前記水源12の水圧低下を検知するための圧力センサー34を、前記除染器10の入口に設置した請求項1又は2に記載の給水用ウイルスろ過・除去システム。
【請求項4】
前記警報制御装置36が、前記圧力センサー28、30、32、34からの単一又は複数の警報信号を受信したときに、前記第1〜第3フィルター20、22、24のうちの1個又は複数個の交換をただちに決定できるようにプログラムされたマイクロプロセッサーである請求項3に記載の給水用ウイルスろ過・除去システム。
【請求項5】
前記警報制御装置36が、交換が必要な前記フィルター20、22、24又は前記UVC放射ランプ26のアップグレードの必要性をユーザに向けて画面に表示するコンピュータに、WiFiに基づく無線LANを通じて接続されている請求項4に記載の給水用ウイルスろ過・除去システム
【請求項6】
前記給水用ウイルスろ過・除去システムが、鳥インフルエンザの感染を防ぐために家禽飼育施設の給水に適用されたウイルスろ過・除去システムである請求項5に記載の給水用ウイルスろ過・除去システム。
【請求項7】
請求項6に記載の給水用ウイルスろ過・除去システムを集中管理するシステムであって、
インターネット52に接続され、少なくとも1台の除染器46、48、50からの警報信号を受信する複数のコンピュータ40、42、44と、
前記インターネット52に接続され、故障箇所を修理するチームを現場へ派遣するために、前記コンピュータ40、42、44からの警報信号を受信する警報センター54と、から構成される集中管理システム。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−518176(P2009−518176A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−543860(P2008−543860)
【出願日】平成17年12月12日(2005.12.12)
【国際出願番号】PCT/FR2005/003103
【国際公開番号】WO2007/068804
【国際公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(507283827)
【氏名又は名称原語表記】NICOLAI,Lionel
【出願人】(507283838)
【氏名又は名称原語表記】NICOLAI,Alain
【出願人】(508116584)
【氏名又は名称原語表記】LASSUS,Marc
【出願人】(508116573)
【氏名又は名称原語表記】CASTRO,Robert
【Fターム(参考)】