説明

給水管システムにおける殺菌制御

本発明は、給水管システムが設置されている領域に家禽及び/又はブタが不在であるときに、給水管システム中の微生物を制御する方法を提供する。本方法は、I)給水管システムと水性殺菌液とを接触させることと;II)該水性殺菌液と接触させた後に少なくとも1回、水及び/又は1以上のスケール除去剤を含む水溶液で該給水管システムを洗い流すことと、を含み、該水性殺菌液は、水と、A)活性臭素含量が約50,000ppm以上であり、水と、(i)(塩素とともに又は塩素なしで)塩化臭素又は塩化臭素及び臭素と、(ii)スルファミン酸の過塩基性アルカリ金属塩及び/又はスルファミン酸、アルカリ金属塩基及び水と、を含む構成成分から構成され、(i)及び(ii)の相対的比率が、活性臭素に対する窒素の原子比が0.93よりも大きくなるような比率であり、組成物のpHが7より高い、水性殺生物液又は、B)水と、(i)臭化アンモニウム、臭化水素、少なくとも1つの臭化アルカリ金属、少なくとも1つの臭化アルカリ土類金属及びこれらの何れか2以上の混合物から選択される少なくとも1つの臭素源と、(ii)塩素源と、場合によっては(iii)少なくとも1つの無機塩基と、場合によっては(iv)スルファミン酸及び/又はスルファミン酸の金属塩と、を含む構成成分から構成される水性殺生物液又は、C)A)及びB)の組み合わせから選択される水性濃縮殺生物液と、を含む構成成分から構成される。
該水性殺菌液との接触による給水管システムの材料の劣化は最小限に抑えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給水管システムにおけるハロゲン系殺生物剤での殺菌制御に関する。
【背景技術】
【0002】
動物用、特に家禽(poultry)及びブタ(swine)用の給水管システムは、「清浄」である必要があり、即ち、微生物汚染があってはならないか又は微生物汚染量は最小限度でなけれなばらない。給水管システムに存在する微生物は、給水管から水を摂取する際に家禽又はブタにより取り込まれ、家禽鳥類又はブタの病気を引き起こし得、抗生物質により家禽又はブタを治療する必要が生じることが多い。さらに、給水管の汚染は、バイオフィルムの形態をとることが多く、これには、微生物を保護する粘液層が含有され、従って通常、バイオフィルムは制御及び排除することがより困難である。
【0003】
給水管システムにおける細菌汚染を制御するための方法は既知である。通常、殺菌性物質で給水管システムを定期的に洗い流す。給水管システムの殺菌汚染の制御においては漂白剤濃縮液が有効であることが知られているが、一方で漂白剤は、給水ニップル及び給水加減装置を通常構成する物質を劣化させる。給水管システム材料の劣化がごく僅かである、過酸化物を用いた処理方法が知られているが、処理を行う直前に2種類の構成成分を予め混合する必要があり、この処理を実施するための特別な装置が必要である。給水管システム材料の劣化を回避しながら又は最小限に抑えながら、微生物を制御する際に有効である給水管システムの処理法を見出すことができれば、特に、このような処理が実施又は遂行し易く、経済的であれば、非常に有利であろう。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、給水管システム、特に家禽及びブタ用の給水管システムを浄化するための方法を提供する。本発明の実施に際して、水性殺菌液と接触させることにより給水管システムを浄化する。驚くべきことに、殺生物剤が臭素系であるにもかかわらず、給水管システムの材料に対して悪影響は殆ど認められなかった。言い換えると、この給水管システムの材料の劣化とは、本発明の実施に際して、給水管システムの部品が、臭素系殺生物剤での処理後に適切にその機能を発揮し続け得る程度のものである。加えて、臭素系殺生物剤は既存の系にうまく融合する。本発明において臭素系殺生物剤を使用することによりもたらされる別の長所は、給水管システム中のpH値の低下が回避されることであり;2から5の範囲のpH値はカビの生育を促進することが分かっている。
【0005】
本発明のある実施態様は、給水管システムが設置されている領域に家禽及び/又はブタが不在のときに給水管システムにおいて微生物を制御するための方法である。本方法は、
I)給水管システム及び水性殺菌液(aqueous microbiocidal solution)を接触させることと;
II)この水性殺菌液との接触後に少なくとも1回、水及び/又は1以上のスケール除去剤を含む水溶液でこの給水管システムを洗い流すことと、を含み、
この水性殺菌液は、水と、
A)活性臭素含量が約50,000ppm以上であり、水と、(i)(塩素とともに又は塩素なしで)塩化臭素又は塩化臭素及び臭素と、(ii)スルファミン酸の過塩基性アルカリ金属塩及び/又はスルファミン酸、アルカリ金属塩基及び水と、を含む構成成分から構成され、(i)及び(ii)の相対的比率が、活性臭素に対する窒素の原子比が0.93よりも大きくなるような比率であり、組成物のpHが7より高い、水性殺生物液又は、
B)水と、(i)臭化アンモニウム、臭化水素、少なくとも1つの臭化アルカリ金属、
少なくとも1つの臭化アルカリ土類金属及びこれらの何れか2以上の混合物から選択される少なくとも1つの臭素源と、(ii)塩素源と、場合によっては(iii)少なくとも1つの無機塩基と、場合によっては(iv)スルファミン酸及び/又はスルファミン酸の金属塩と、を含む構成成分から構成される水性殺生物液、又は
C)A)及びB)の組み合わせ
から選択される水性濃縮殺生物液(concentrated aqueous biocidal solution)と、を含む構成成分から構成される。前記水性殺菌液との接触による給水管システムの材料の劣化は最小限に抑えられる。
【0006】
これら及びその他の実施態様及び本発明の特色は、次の説明及び添付の特許請求の範囲からまたさらに明らかになろう。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本書類を通じて使用される場合、「給水管システムを浄化する」という句は、微生物汚染を最小限にするか又は排除するための給水管システムの処理を指す。本書類を通じて、「給水管システム」という用語は、少なくともダイヤフラム部、給水管及びニップル部を含み、場合によっては給水加減装置、水道メーター、メディケーター、スロープ補償器、止水栓、ステップ制御器(step regulator)、スタンドチューブ/エアーブリーザー及び/又はパイプを含み得る系を指す。通常、給水管システムの部品としてフィルターパネルが含まれるが、通常、フィルターパネルに水性殺菌液が接触することはない。給水管システムにおいて、メディケーターは一般に、ポリ塩化ビニル(PVC)又は塩素化ポリ塩化ビニル(CPVC)製であり;ダイヤフラムは一般にブナゴム、エチレンプロピレンジエンモノマーゴム(EPDM)又はネオプレン製であり;パイプは通常、PVC製であり;給水加減装置は通常、CPVC製であり;給水管は通常、PVC製であり;ニップル部は通常、プラスチック及び金属から構成される。家禽用ニップル部の給水器は通常、ステンレス鋼製(特にグレード302、303又は304)又は黄銅製であり;ブタ用の場合、ニップル部の給水器は通常、ステンレス鋼製である。ニップル部は給水ニップルと呼ばれることがある。
【0008】
本書類を通じて使用される場合、「微生物」という用語は、別段の断りがない限り、細菌、酵母及びカビを指す。同様に、「微生物汚染」という用語は、本書類を通じて使用される場合、給水管システム中の細菌、酵母及び/又はカビの望ましくない生育を指す。
【0009】
給水管システムの殺菌処理中、家禽鳥類は給水管システムが設置されている領域に不在である。給水管システムを使用する家禽の非限定例としては、ニワトリ、雄鶏、シチメンチョウ、カモ、ガチョウ、ウズラ、キジ、ダチョウ、猟鳥、雌鶏、エミュー、雛鳥、ホロホロチョウ及びコーニッシュ鶏が挙げられる。給水管システムの殺菌処理中、ブタは給水管システムが設置されている領域に不在である。給水管システムを使用するブタの例としては、肉豚、繁殖用雌豚、未経産豚、去勢豚、種豚及び家畜豚(pig)が挙げられる。「給水管システムが設置されている領域に不在」という句は、給水管システムにおいて、その系又はその系の一部の処理が行われている最中である区画又は囲い中に、家禽及びブタがいないことを意味し、言い換えると、給水管システムの処理中に、家禽及びブタが、給水管システムに接近し、給水管システムから水を摂取できないようになっている。家禽及びブタが飲む水は、本発明に従い処理されない。
【0010】
給水管システムを浄化するための標準的手順において、ポンプを通じて殺生物剤の水性濃縮殺菌液を吸い上げ、水と混合し;水と水性濃縮殺生物液との混合により生成される水性殺菌液を使用して給水管システムを処理する。ポンプ流量は、水に対する水性濃縮殺生物液の特定比率が通常は約1:128(1ガロンあたりおよそ1オンス)となるように設定する。より高い又は低い、異なる濃度の水性殺菌液中の殺生物剤が望ましい場合、本発
明の実施に際してポンプ流量に対する調整が実行可能ではあるが、ポンプ流量を調整するのではなく、一般には水性殺生物液中の殺生物剤の濃度を調整することが好ましい。
【0011】
給水管システムを水性殺菌液と接触させる際、水性殺菌液は通常、所望の接触時間、通常は約1時間から約36時間、好ましくは約3時間から約24時間にわたり給水管システム中で保持し、その後、通常は水性殺菌液を給水管システムから洗い流す。殺菌処理後、その系から水性殺菌液の残留物を全て除去するために、水及び/又は1以上のクエン酸などのスケール除去剤(デスケーラ)を含む水溶液による洗い流しを行う。複数回洗い流しを行う場合、水及び/又は1以上のスケール除去剤を含む水溶液で各洗い流しを行い得る。例えば、洗い流しを2回行う場合、水で1回洗い流し、1以上のスケール除去剤を含む水溶液でもう1回洗い流してもよいし、又は2回とも水で洗い流すか、もしくは2回とも1以上のスケール除去剤を含む水溶液で洗い流してもよい。場合によっては、給水管システムを水性殺菌液で処理する前に、水及び/又は1以上のスケール除去剤を含む水溶液で給水管システムを洗い流し得る。大気圧で又はより高圧で洗い流し得る。大気圧よりも高い圧力で少なくとも1回洗い流すことの1つの長所は、それにより、系に沈着している固体物質の除去が促進され得るということである。
【0012】
上記A)及びB)の水性濃縮殺生物液は、その中に臭素系殺生物剤を有し、従ってこれらの溶液には残留臭素がある。
【0013】
上記A)の水性殺生物液は、水と、(i)(塩素とともに又は塩素なしで)塩化臭素又は塩化臭素及び臭素と、(ii)スルファミン酸の過塩基性アルカリ金属塩(好ましくはスルファミン酸のリチウム、ナトリウム及び/又はカリウム塩)及び/又はスルファミン酸、アルカリ金属塩基及び水と、から構成される。好ましくは、塩素のモル量は、臭素のモル量及びスルファミン酸アニオンの水溶性供給源のモル量と同等であるか又は臭素のモル量及びスルファミン酸アニオンの水溶性供給源のモル量未満であるかの何れかである。(i)及び(ii)の相対的比率は、活性臭素に対する窒素の原子比が0.93を超えるような比率であり、水性濃縮殺菌液のpHは7より高い。
【0014】
A)の水性殺生物液を調製する場合、そのpHは、無機塩基の使用によって、通常は少なくとも7であり、好ましくは、通常、7より高いpH、例えば10−14の範囲となる。好ましい塩基はアルカリ金属塩基、好ましくはリチウム、ナトリウム及び/又はカリウムの酸化物又は水酸化物、より好ましくは水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムである。水性濃縮殺生物液を調製する際にスルファミン酸を使用する場合、この溶液はまた、塩基、好ましくは溶液をアルカリ性、即ち7を上回るpH、好ましくは約10を上回り、最も好ましくは約13以上に維持するために十分な塩基とともに提供されるべきである。
【0015】
当然のことながら、上記A)の水性殺生物液が塩化臭素、塩化臭素及び臭素の混合物から構成されるか、又は塩素のモル量が臭素のモル量と同等であるかもしくは臭素のモル量未満であるかの何れかである、臭素及び塩素の組み合わせが使用される場合でも、通常、生成溶液のpHを約13以上に上昇させるための過程で水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属塩基が使用されるため、殆どの塩素は通常、塩化ナトリウムなどの塩化物塩を形成するので、この水性殺生物液は臭素系である。従って、上記A)の水性殺生物液中の塩素は、意味のある殺生物剤として存在しない。
【0016】
A)の水性殺生物液は1以上の活性ハロゲン種を有し、好ましい水性殺生物液は1以上の活性臭素種を有する。A)の水性殺生物液の活性臭素含量は、約50,000ppm(wt/wt)以上である。好ましくは、A)の水性殺生物液は、約100,000ppm(wt/wt)以上の活性臭素、例えば約105,000から約215,000ppmに
及ぶ活性臭素を有する。活性ハロゲン含量は、従来のデンプン−ヨウ素滴定を使用して測定可能である。上記A)の水性殺生物液のpHは7より高く、好ましくは約10以上、より望ましくは約12以上及びさらにより望ましくは約13以上である。上記A)の水性殺生物液中の活性臭素に対する窒素の原子比は0.93よりも大きい。
【0017】
A)の水性殺生物液を製造するための過程は、米国特許第6,068,861号及び同第6,299,909B1号に記載されている。50,000ppmを超える活性ハロゲンを含有するA)の水性殺生物液は、SWG(商標)殺生物剤(Albemarle Corporation)の商標でAlbemarle Corporationから市販されており;受け取り時のこの水性生成物のpHは通常、13から14の範囲である。
【0018】
上記B)の水性殺生物液は、水と、(i)臭化アンモニウム、臭化水素、少なくとも1つの臭化アルカリ金属、少なくとも1つの臭化アルカリ土類金属及びこれらの何れか2以上の混合物から選択される少なくとも1つの臭素源と、(ii)塩素源と、場合によっては(iii)少なくとも1つの無機塩基と、場合によっては(iv)スルファミン酸及び/又はスルファミン酸の金属塩と、を含む構成成分から構成される。B)の水性殺生物液を構成するための適切な臭素源としては、臭化アンモニウム、臭化水素、LiBr、NaBr、KBrを含む様々な適切な臭化アルカリ金属及び適切な臭化アルカリ土類金属、即ちMgBr及びCaBr、が挙げられる。必要に応じて2以上の臭素源の混合物を使用することができる。好ましい臭素源はNaBrである。適切な塩素源としては、次亜塩素酸塩、一般には次亜塩素酸アルカリ金属又は次亜塩素酸アルカリ土類金属、固体塩素源及び塩素(Cl)が挙げられる。B)の水性殺生物液は、場合によっては(iii)少なくとも1つの無機塩基及び場合によっては(iv)スルファミン酸及び/又はスルファミン酸の金属塩を含み得る。
【0019】
上記B)の水性殺生物液の定義内に包含される水性殺生物液を構成する、好ましいいくつかの組み合わせがある。
【0020】
a)の水性殺生物液は、好ましい組み合わせであり、水と、(i)B)に対して上記で記載するとおりの少なくとも1つの臭素源と、(ii)少なくとも1つの次亜塩素酸アルカリ金属及び/又は少なくとも1つの次亜塩素酸アルカリ土類金属である塩素源と、(iii)無機塩基と、から成っている構成成分から構成される。これらの構成成分の相互作用の結果、残留臭素が適切に高い水溶液が得られる。a)の水性殺生物液を構成するための適切な臭素源は、B)に対して上記で記載のとおりである。必要に応じて2以上の臭素源の混合物を使用することができる。好ましい臭素源はNaBrであり、特に、微量のメタノールなどのアルコールが除去されているNaBrである。
【0021】
a)の水性殺生物液を構成するために、様々な次亜塩素酸アルカリ金属又は次亜塩素酸アルカリ土類金属を使用することができる。従って、次亜塩素酸リチウム、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸カルシウム、次亜塩素酸マグネシウムなどの材料を使用することができる。このような次亜塩素酸塩のうち、次亜塩素酸ナトリウム又は次亜塩素酸カルシウムの使用が最も好ましい。a)の水性殺生物液を調製する際に臭素源として臭化アンモニウムを用いる場合、米国特許第6,478,973号に記載のようにこれとともに次亜塩素酸ナトリウムを使用することが望ましい。次亜塩素酸塩溶液は、漂白剤として有用であり、他の有用な生成物を調製するための中間体であるので、いくつかの次亜塩素酸塩溶液が市販されている。Be、Sr又はBaの臭化金属又は次亜塩素酸塩は、毒性面で懸念があるため使用すべきではない。従って、本明細書中で使用される場合、「アルカリ土類」という用語からBe、Sr及びBaが排除される。
【0022】
a)の水性殺生物液を構成する際に臭化物塩の使用量に対して過剰量の次亜塩素酸塩が
使用される場合、得られる溶液は、塩素系化学種ならびに残留臭素を含有する。これらの塩素系化学種は、使用している溶液中に必要量の臭素蓄積が存在する限りは無害である。好ましくは、過剰な次亜塩素酸塩は、溶液中のハロゲン蓄積が基本的に臭素蓄積からなるように、次亜塩素酸アルカリ金属又は次亜塩素酸アルカリ土類金属水溶液で逆滴定される。
【0023】
a)の水性殺生物液の構成において無機塩基を使用する。好ましい塩基は、アルカリ金属塩基、好ましくはリチウム、ナトリウム及び/又はカリウムの酸化物又は水酸化物、より好ましくは水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムである。無機塩基を使用する場合、pHは通常、約7以上及び好ましくは7より高く、例えば約10から約14の範囲のpHである。
【0024】
b)の水性殺生物液において、スルファミン酸及び/又はスルファミン酸の金属塩は任意であるが、好ましい。スルファミン酸の金属塩は通常、スルファミン酸リチウム、スルファミン酸ナトリウム及びスルファミン酸カリウムを含むアルカリ金属塩である。スルファミン酸は、単独で又は1以上のスルファミン酸の金属塩との混合物として使用することができる。スルファミン酸及び/又はスルファミン酸ナトリウムが好ましい。
【0025】
本発明を実施するに際して使用することができる市販のa)の水性殺生物液は、Stabrex(登録商標)殺生物剤(Nalco Chemical Company)の商品名で入手可能である。この製品は、スルファミン酸塩を含むことによって活性臭素種の化学分解及び物理的蒸発に対して安定化された活性臭素を含有する。スルファミン酸で安定化されたa)の水性殺生物液の調製に関するさらなる詳細については、米国特許第6,007,726号;同第6,156,229号;及び同第6,270,722号を参照のこと。
【0026】
b)の水性殺生物液は好ましい組み合わせであり、水と、(i)B)に対して上記で記載するとおりの少なくとも1つの臭素源と、(ii)固形塩素化剤である塩素源と、(iii)無機塩基と、から構成される。b)の水性殺生物液を構成するための適切な臭素源及びそれに対する選好性はB)に対して上記で記載のとおりである。必要に応じて2以上の臭素源の混合物を使用することができる。適切な固形塩素化剤としては、トリクロロイソシアヌル酸塩及びジクロロイソシアヌル酸ナトリウムが挙げられる。
【0027】
b)の水性殺生物液の構成において無機塩基が使用される。好ましい塩基は、アルカリ金属塩基、好ましくはリチウム、ナトリウム及び/又はカリウムの酸化物又は水酸化物、より好ましくは水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムである。無機塩基を使用する場合、pHは通常、約7以上及び好ましくは7より高く、例えば約10から約14の範囲のpHである。
【0028】
b)の水性殺生物液において、スルファミン酸及び/又はスルファミン酸の金属塩は任意であるが、好ましい。スルファミン酸の金属塩は通常、スルファミン酸リチウム、スルファミン酸ナトリウム及びスルファミン酸カリウムを含むアルカリ金属塩である。スルファミン酸は、単独で又は1以上のスルファミン酸の金属塩との混合物として使用することができる。スルファミン酸及び/又はスルファミン酸ナトリウムが好ましい。
【0029】
b)の水性殺生物液は、BromMax(登録商標)殺生物剤(Enviro Tech Chemical Services、Inc.)の商品名で市販されている。この製品は、スルファミン酸塩を含むことによって活性臭素種の化学分解及び物理的蒸発に対して安定化された活性臭素を含有する。スルファミン酸で安定化されたb)の水性殺生物液の調製に関するさらなる詳細については、米国特許第7,045,153号;同第7,
309,503号;及び同第7,455,859号を参照のこと。
【0030】
c)の水性殺生物液は好ましい組み合わせであり、水と、(i)B)に対して上記で記載するとおりの少なくとも1つの臭素源と、(ii)塩素源と、(iv)スルファミン酸及び/又はスルファミン酸の金属塩から構成される。c)の水性殺生物液を調製するための適切な臭素源及びそれに対する選好性はB)に対して上記で記載のとおりである。必要に応じて2以上の臭素源の混合物を使用することができる。
【0031】
c)の水性殺生物液を構成するための塩素源は、塩素及び/又は様々な次亜塩素酸アルカリ金属又は次亜塩素酸アルカリ土類金属の何れかであり得る。次亜塩素酸塩は、a)に対して上記で記載するものの何れかであり得る。このような次亜塩素酸塩のうち、次亜塩素酸ナトリウムが最も好ましい。
【0032】
スルファミン酸の金属塩は通常、スルファミン酸リチウム、スルファミン酸ナトリウム及びスルファミン酸カリウムを含むアルカリ金属塩である。スルファミン酸は、単独で又は1以上のスルファミン酸の金属塩との混合物として使用することができる。スルファミン酸が好ましい。
【0033】
c)の水性殺生物液において、無機塩基は任意であるが、好ましい。好ましい塩基は、アルカリ金属塩基、好ましくはリチウム、ナトリウム及び/又はカリウムの酸化物又は水酸化物、より好ましくは水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムである。無機塩基を使用する場合、pHは通常、約7以上及び好ましくは7より高く、例えば約10から約14の範囲のpHである。
【0034】
本発明の実施に際して使用することができるc)の市販の水性殺生物液は、Justeq07殺生物剤(Justeq、LLC)の商品名で入手可能である。この製品は、スルファミン酸塩を含むことによって安定化された活性ハロゲン種を含有する。c)の水性殺生物液の調製のための過程は、米国特許第6,478,972号;同第6,533,958号;及び同第7,341,671号に記載されている。
【0035】
臭素系殺生物剤を含有する水性殺菌液は、塩素系殺菌剤よりも臭いが少ない傾向がある。さらに、臭素系殺菌剤の一部は、存在し得る窒素性化学種と反応する可能性があり得る一方、その結果生じるブロマミンも微生物学的作用を保持する。従って、このような副反応は、これらの臭素系殺菌剤の使用による微生物学的効果を実質的に低下させない。さらに、ブロマミンは通常、その区域の労働者に対して不快な特性を示さず、一方、同じ条件下である種の塩素系殺菌剤の使用により生じるクロラミンは強力な催涙物質となる傾向がある。
【0036】
本水性殺菌液を構成するために水と組み合わせる場合、水と水性濃縮殺生物液との割合は、活性ハロゲン種の濃度が、臭素総量として約50から約3200ppm(wt/wt)の範囲、好ましくは臭素総量として約100から約2000ppm(wt/wt)の範囲、より好ましくは臭素総量として約300から約1800ppm(wt/wt)の範囲及びさらにより好ましくは臭素総量として約400から約1600ppm(wt/wt)の範囲の残留臭素をもたらすものである。これらの範囲内のより高い残留臭素をある程度達成するために、水に対する水性濃縮殺生物液の比率が1:128よりも高くなるようにポンプ流量を調整する必要があり得る。
【0037】
本水性殺菌液は通常、約5から約39℃の温度で使用するが、必要に応じてより高い温度で、例えば約43℃以下で使用することができる。
【0038】
他の添加物が本水性殺菌組成物と適合性があり、給水管システム材料の劣化が最小限となるか又は劣化させず、感知されるほど本水性殺菌液の殺菌効果を低下させないならば、本水性殺菌液と組み合わせて他の添加物を使用することができる。一般に、米国特許第6,506,718号に詳細に記載されるようなある種の遊離基捕捉剤、キレート剤、pH緩衝剤、界面活性剤及びポリマーなど、水性次亜塩素酸塩漂白剤溶液と適合する添加物を必要に応じて使用し得る。上記基準に合致する、1以上の湿潤剤、ヒドロトロープ、増粘剤、消泡剤、発泡剤、色素及び同様の機能的添加物を使用することも可能である。使用する場合、本発明に従い使用される殺菌剤と組み合わせて使用しようとする、選択した適切な各添加物の量は、それが使用される理由となる特性を提供するのに十分なものであるべきである。このような添加物の製造者からの推奨は、この点において有用な指針である。このようなその他の添加物が含まれる場合、これは通常、水性殺菌液を構成するために水と混合しようとする水性殺生物液の吸い上げ前に水性殺生物液中に存在する。あるいは、このような添加物は、水性殺生物液と混合しようとする水に添加することができる。給水管システムが水性殺菌液で満たされることを示し得る色素及び/又は発泡剤などのある種の成分を含むことは好ましい。
【0039】
「残留臭素」を測定するための適切な方法は公知であり、文献で報告されている。例えば、Standard Methods For the Examination of Water and Wastewater,第18版,1992,American Public Health Association,1015 Fifteenth Street,NW,Washington,DC 20005(ISBN0−87553−207−1),4−36ページ及び4−37ページ;Hach Water Analysis Handbook,第3版,1997,Hach Company、Loveland Colorado,特に1206及び1207ページ;及びHandbook of Industrial Water Conditioning,第7版,Betz Laboratories,Inc.,Trevose,PA19047(Library of Congress Catalog Card Number:76−27257),1976,24−29ページを参照のこと。
【0040】
「残留臭素」という用語は、殺菌に利用可能な処理済み水中に存在する臭素種の量を指す。残留量は、使用する分析試験法により、「総量」又は「遊離量」としての何れかで測定することができる。本件において、本明細書中で、殆どの場合、残留臭素に対する数値は臭素総量ベースで与える。下記で与えられる「塩素総量」に対する分析手順を使用することにより、このような値を監視することができる。しかし、必要に応じて、下記で与えられる「遊離塩素」に対する分析手順を使用することによって、「遊離臭素」ベースで残留臭素を監視することができる。何れの場合においても、得られる数値は塩素に対するものであり、従って、対応する臭素の値を得るために、このような値に2.25を乗じる。通常、ある試料における「臭素総量」ベースの値は、同じある試料における「遊離臭素」ベースの値よりも高くなろう。理解する上で重要な点は、塩素総量試験手順又は遊離塩素試験手順の何れで値が測定されるにしろ(しかし、塩素総量試験手順の使用が推奨される。)、本発明が、処理済みの水媒体中に実際に存在する残留臭素に関するということである。
【0041】
本発明の水性殺菌組成物を構成することにおいて使用される水の中の活性臭素量を測定するために、標準的な周知の分析手順を使用することができる。「活性臭素」という用語は、言うまでもなく、殺菌活性の能力がある全ての臭素含有化学種を指す。+1酸化状態の臭素は全て殺菌活性があり、従って「活性臭素」という用語に含まれることは当技術分野で一般に受け入れられている。当技術分野で周知であるように、臭素、塩化臭素、次亜臭素酸、次亜臭素酸イオン、三臭化水素酸、三臭化イオン及び有機−N−臭素化化合物は、+1酸化状態の臭素を有する。従って、これら、ならびにこのようなその他の化学種は
、それらが存在する程度まで、本発明の組成物の活性臭素含量を構成する。例えば、米国特許第4,382,799号及び米国特許第5,679,239号を参照のこと。当技術分野で確立されている、溶液中の活性臭素量を測定するための方法は、デンプン−ヨウ素滴定であり、これにより、何れの化学種が活性臭素を構成し得るかにかかわらず、試料中の活性臭素全てが測定される。Willard−Furman、Elementary Quantitative Analysis,第3版,D.Van Nostrand
Company,Inc.,New York、Copyright 1933,1935,1940の第XIV章を参照すれば分かるように、臭素及びその他の多くの酸化剤の量的測定のための古典的なデンプン−ヨウ素法の有用性及び精度が昔から知られている。
【0042】
活性臭素を測定するための典型的なデンプン−ヨウ素滴定は次のように行われる:ヨウ素フラスコに磁石式撹拌器を配置し、50mLの氷酢酸を入れる。活性臭素を測定しようとする試料(通常約0.2−0.5g)の重量を測定し、酢酸を含有する上記のフラスコに添加する。次に、水(50mL)及び含水ヨウ化カリウム(15%(wt/wt);25mL)をそのフラスコに添加する。水封によりそのフラスコを塞ぐ。次いで、溶液を15分間撹拌し、その後、フラスコを開封し、ストッパー及びシール部分を水ですすいでフラスコに流し入れる。自動ビュレット(Metrohm Limited)に0.1normal チオ硫酸ナトリウムを満たす。ヨウ素フラスコ中の溶液を0.1normal
チオ硫酸ナトリウムで滴定し;薄黄色になったら、1mLの1wt%デンプン水溶液を添加し、フラスコ中の溶液の色が薄黄色から青色に変化する。青色が消失するまでチオ硫酸ナトリウムでの滴定を継続する。試料重量及び滴定したチオ硫酸ナトリウム溶液の体積を用いて活性臭素量を計算する。このようにして、この方法を使用することにより、実際の化学形態にかかわらず、本発明の組成物中の活性臭素量を測定することができる。
【0043】
活性臭素を測定するための別の標準的方法はDPD試験手順として一般に知られている。この方法は、水溶液系中のごく少量の活性臭素を測定するのに非常に適している。低レベルの活性ハロゲンを測定するための標準的DPD試験は、1974年にPalinにより考案された古典的試験手順に基づく。A.T.Palin,「Analytical Control of Water Disinfection With Special Reference to Differential DPD Methods
For Chlorine,Chlorine Dioxide,Bromine,Iodine及びOzone」,J.Inst.Water Eng.,1974,28,139参照。Palin法の様々な現代版があるが、この試験のうち推奨されるものは、Hach Water Analysis Handbook、第3版、copyright 1997に詳細に記載されている。「塩素総量」(即ち活性塩素)に対する手順は、この出版物の379ページに記載されるMethod 8167であり、簡潔に述べると、「塩素総量」試験には、活性ハロゲンを含有する希釈水試料に、DPD粉末指示薬(即ちN,N’−ジエチルジフェニレンジアミン)を含む粉末、KI及び緩衝液を導入することが含まれる。存在する活性ハロゲン種はKIと反応してヨウ素種を生成させ、これによりDPD指示薬が赤/ピンクに変化する。発色度は、試料中に存在する「塩素総量」種(即ち「活性塩素」)の濃度に依存する。この発色度は、比色計によって測定し、発色度読み取り値をmg/L Clの単位の「塩素総量」値に変換するために較正を行う。存在する活性ハロゲンが活性臭素である場合、mg/L Br単位で活性臭素の結果を表すために、mg/L Clの単位での結果に2.25を乗じる。
【0044】
より詳細に述べると、DPD試験手順は次のとおりである:
1.「塩素総量」試験に反応する水中に存在する化学種の量を測定するために、採取から数分以内に及び好ましくは採取後すぐに水試料を分析すべきである。
2.「塩素総量」試験に反応する水試料中に存在する化学種の量を試験するためのHa
ch法8167には、Hach Model DR 2010比色計の使用が含まれる。キーボード上で「80」を入力することにより、保存されている塩素測定用のプログラム番号を呼び出し、続いて装置側面のダイアルを回転させることによって吸収波長を530nmに設定する。2本の同一の試料セルに10mLの印まで試験対象の水を入れる。これらのセルの一方を適宜選択してブランクとする。第二のセルに、DPD Total Chlorine Powder Pillowの中身を添加する。これを10−20秒間振盪して混合し、ピンク−赤色の発色が起こった場合は、DPD「塩素総量」試験試薬と陽性に反応する化学種が水中に存在することを示す。キーパッド上で、SHIFT TIMERキーを押して3分間の反応時間を開始させる。3分後、本装置のブザーが鳴り、反応が終了したことを知らせる。10mLセルライザーを用いて、ブランク試料セルをHach Model DR 2010の試料区画に収容し、迷光による影響を防ぐために遮蔽体を閉じる。次いで、ZEROキーを押す。数秒後、ディスプレイに0.00mg/L
Clが表示される。次に、この装置でゼロ値を設定するために使用したブランク試料セルをHach Model DR 2010のセル区画から取り出し、DPD「塩素総量」試験試薬を添加した試験試料と入れ替える。次いで、ブランクに対して行ったように遮光体を閉じ、READキーを押す。数秒以内にmg/L Cl単位の結果がディスプレイに表示される。これは、実験対象の水試料の「塩素総量」レベルである。この値に2.25を乗じることによって、水試料中の活性臭素レベルが与えられる。
【0045】
次の実施例は、説明を目的として与えられるものであり、本発明の範囲に対して制限を課すものではない。
【実施例1】
【0046】
総臭素濃度が様々である、所望の濃度となるようにある程度希釈したスルファミン酸塩安定化塩化臭素の溶液(SWG(商標)殺生物剤;Albemarle Corporation)をポンプによって水に対して1:128の比率になるように吸い上げて、給水管システムを洗い流すために使用する溶液を調製した。テキサスの養鶏場で試験を行った。試料を連続希釈し、次いでコロニー計数を行うために播種した。log10のコロニー形成単位/mLの好気性プレートカウント(APC)として、存在する微生物量に関するデータを殺生物剤処理の前後に回収した。結果を表1でまとめる。表1において、各値は、2つのデータ点の平均であり、総臭素濃度は概算である。
【表1】

【0047】
給水管システムの部品において及び鶏舎で一般に使用されるポンプのダイヤフラムにおいて適合性試験を行い、使用濃度でSWG(商標)殺生物剤がこれらの材料と適合することを確認した。この試験から問題は生じなかった。また、結果を上記表1で報告した実地試験中、給水管システム又はポンプのダイヤフラムの劣化に関する問題も生じなかった。
【実施例2】
【0048】
ルイジアナ州北部の3ヶ所の異なる農場で、実施例1におけるような実験を繰り返した。殺生物剤処理前後に、100mLあたりのコロニー数として、存在する微生物量におけるデータを回収した。水をろ過し、コロニー計数のためにそれを播種する前に、試料の希
釈は行わなかった。結果を表2でまとめる。表2において、報告する総臭素濃度は概算である。
【表2】

【実施例3】
【0049】
ミシシッピ州南部の3ヶ所の異なる商業的採卵鶏場で実験を行った。3ヶ所全ての農場で、私設井戸から給水管用の水を得ていた。各農場で、バイオフィルムを回収するための装置を鶏舎給水管システムに設置した。この装置には、バイオフィルムが生育し得、分析のために容易に取り出すことができる、金属及びプラスチックワッシャが含まれた。金属ワッシャは、ニップルドリンカーで一般的に使用される302ステンレス鋼製であった。プラスチックワッシャは、商業的養鶏業務用の水移送管を構成する材料と非常に類似しているビニル材料製であった。
【0050】
各鶏舎には、対照とするために4台の装置を設置し(処理なし)、抗微生物処理用に4台の装置を設置した。鳥を移動させようとする時期までわずか8週間となった時点で農場にこれらの装置を設置した。鳥を移動させた後、対照装置を給水管から取り出し、ビニール袋に入れ、分析のために氷冷状態でジョージア大学に発送した。残りの装置は置いておき、スルファミン酸塩安定化塩化臭素の溶液(SWG(商標)殺生物剤;Albemarle Corporation)を水と1:128の比率で給水管に導入し、給水管システムを洗い流すために使用する溶液を構成させた。希釈した殺生物剤は約24時間、送水管に留まった。24時間後、この管を水で15分間洗い流した。残りの装置を給水管から取り出し、ビニール袋に入れ、分析のために氷冷状態でジョージア大学に発送した。装置は翌日に到着し、同日分析を行ったか又は氷冷状態で保存し、翌日分析を行った。
【0051】
分析のために、金属及びプラスチックワッシャを無菌状態で装置から取り出した。各ワッシャには、「上(top)」及び「下(bottom)」面と呼ばれる面があり、上面はねじ頭に面する面である。各ワッシャは上面を上に向けて滅菌ペトリ皿に置き、2分して左右を示すために印を付した(左右側)。左側(上及び下)を顕微鏡分析用に確保し、右側(上及び下)からコロニー形成単位(CFU)分析用に検体を拭い取った。殺生物剤の残留物を中和するために、DE中和緩衝液で湿らせた滅菌綿棒を用いて試料を拭い取った。1mLのDE中和緩衝液拭い液を0.1%ペプトン水(最小増殖栄養溶液)で希釈し、スパイラルプレーターを用いてアリコートを2つ組のR2A寒天(低栄養量)培地に播
種した。1セットのプレートを25℃で7から10日間、好気性(大気)条件下でインキュベートした。他のセットのプレートを25℃で7から10日間、嫌気性(Gas−pack)条件下でインキュベートした。この培地及び使用したインキュベート時間は、Standard Methods for the Examination of Water(従属栄養細菌検査(heterotrophic plate count))に記載のものに従う。これらのプレート上で生育したコロニー数を数え、CFU/cm(拭い取ったワッシャの面積に基づく。)を計算した。
【0052】
未処理面上のバイオフィルム生育は、ある1つの農場由来の1試料に対する286CFU/cmという低い値から、別の農場由来の試料における2,500,000CFU/cmという高い値まで、実質的に多様であった。処理した系に対して、6つの試料で好気性カウントが検出限界を下回った(プラスチック面に対して4CFU/cm、金属面に対して1CFU/cm)。結果を表3でまとめる。表3において、CFU/cmの平均値を処理及び対照(未処理)試料の両方に対して報告する。平均値には検出限界を下回った少なくとも1つの試料が含まれるので、表3において、いくつかの数値を「未満(<)」として示す。これらの試験の結果から、殺生物処理が、各鶏舎の給水管システム由来のバイオフィルム中の微生物を不活性化することにおいて有効であったことが示される。
【表3】

【0053】
2ヶ所の農場(D及びE)に対する対数減少データを下記表4でまとめる。計算には検出限界を下回る試料が含まれるので、殆どの対数減少は、実際には表4で示されるものよりも大きい。加えて、バイオフィルムの元のレベルが低い場合、検出限界ゆえに、対数減少が大きくなり得ない。表4の対数減少データから、プラスチック面と金属面との間の殺生物処理の有効性に差がないことが示される。また、対数減少は鶏舎間で同様である。3対数減少が、数値の99.9%低下と同等であることに注意すること。
【表4】

【0054】
井戸水又は都市用水などの水中に一般に存在し得る天然の不純物以外に、「水性の」という形容詞はまた、一連の水中での臭素系殺菌剤の構成において(例えば塩化臭素と過塩基性水溶液中のスルファミン酸ナトリウムとの間の反応によって)形成される塩が溶解して水中に存在することも容認する。また、「水性の」は、水に溶解し得る範囲のハロゲン系殺菌剤それ自身の量と、それに加えて反応後に残留し得る何らかの溶解反応物が水中に存在することも容認する。さらに、水は、反応が行われる容器から溶解し得る数原子ならびに水に辿り付き得る浮遊不純物を含有し得る。ここでのポイントは、普通に考えて、含まれる特定の状況下で、「水性の」という用語が、媒体又は溶媒を完全に純粋な水に制限することはなく、水溶液又は媒体などが、その中に通常存在するか及び/又は論理的に存在すると予想されるものを含有し得るということである。「水」という用語は、それが完全に純粋でなければならないことを示すものではない。
【0055】
本明細書又はその特許請求の範囲の何れかの場所で化学名又は式で言及される構成成分は、単数又は複数の何れで言及されるものであれ、化学名又は化学型で言及される別の物質(例えば、別の構成成分、溶媒など)と接触する前にそれらが存在するものと認められる。得られる混合物又は溶液中で、化学変化、変換及び/又は反応が行われることは、どのようなものでも、このような変化、変換及び/又は反応が、本開示に従い求められる条件下で特定の構成成分を一緒にした当然の結果であるので、問題ではない。従って、この構成成分とは、所望の操作を行うことと関連して又は所望の組成物を形成する際に一緒にされる成分であると認められる。
【0056】
本発明は、本明細書中で引用される材料及び/又は手順を含むか、それらからなるか又は基本的にそれらからなり得る。
【0057】
本明細書中で使用される場合、本発明の組成物中の成分の量を修飾するか又は本発明の方法で使用される「約」という用語は、例えば、現実での、標準的な測定及び濃縮液調製のために使用される液体の操作手順又は使用液体(use solution)により;これらの手順での不注意による誤りにより;組成物を調製するか又は本方法を遂行するために使用される成分の、製造、供給源又は純度の違いなどにより起こり得る数量の変動を指す。
【0058】
約という用語はまた、特定の最初の混合物からもたらされる組成物に対する平衡条件の違いにより異なる量も包含する。「約」という用語により修飾されていてもされていなくても、本特許請求の範囲は、量に対する同等物を含む。
【0059】
明示的に別段の定めがあり得る場合を除き、「a」又は「an」という冠詞は、本明細書中で使用される場合、その冠詞が指す一要素に本記載又は特許請求の範囲を限定するものではなく、またそれを限定するものと解釈すべきではない。むしろ、「a」又は「an」という冠詞は、本明細書中で使用される場合、文章から明示的に示されない限り、1以上のこのような要素に及ぶものとする。
【0060】
本発明は、その実施に際して、多くの変更を行い得る。従って、上述の説明は、本明細
書中、上記で与えられる特定の例示に本発明を限定するものではなく、そのように限定するものと解釈すべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
I)給水管システムと水性殺菌液とを接触させることと;
II)該水性殺菌液と接触させた後に少なくとも1回、水及び/又は1以上のスケール除去剤を含む水溶液で該給水管システムを洗い流すことと、を含み、
該水性殺菌液が、水と、
A)活性臭素含量が約50,000ppm以上であり、水と、(i)(塩素とともに又は塩素なしで)塩化臭素又は塩化臭素及び臭素と、(ii)スルファミン酸の過塩基性アルカリ金属塩及び/又はスルファミン酸、アルカリ金属塩基及び水と、を含む構成成分から構成され、(i)及び(ii)の相対的比率が、活性臭素に対する窒素の原子比が0.93よりも大きくなるような比率であり、組成物のpHが7より高い、水性殺生物液、又は
B)水と、(i)臭化アンモニウム、臭化水素、少なくとも1つの臭化アルカリ金属、少なくとも1つの臭化アルカリ土類金属及びこれらの何れか2以上の混合物から選択される少なくとも1つの臭素源と、(ii)塩素源と、場合によっては(iii)少なくとも1つの無機塩基と、場合によっては(iv)スルファミン酸及び/又はスルファミン酸の金属塩と、を含む構成成分から構成される水性殺生物液、又は
C)A)及びB)の組み合わせ
から選択される水性濃縮殺生物液と、を含む構成成分から構成され、
該水性殺菌液との接触による給水管システムの材料の劣化が最小限である、
該給水管システムが設置されている領域に家禽及び/又はブタが不在であるときに、該給水管システム中の微生物を制御する方法。
【請求項2】
前記水性殺菌液と接触させる前に、水及び/又は1以上のスケール除去剤を含む水溶液で前記給水管システムを洗い流すことをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水性殺菌液の残留臭素が臭素総量として約50から約3200ppm(wt/wt)の範囲である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記水性殺菌液の残留臭素が臭素総量として約100から約2000ppm(wt/wt)の範囲である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
水性殺生物液がA)である、請求項1から4の何れかに記載の方法。
【請求項6】
前記(ii)の金属塩基が水酸化ナトリウムである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記活性臭素含量が約100,000ppm以上である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記活性臭素含量が約105,000ppmから約215,000ppmの範囲である、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記pH値が約10以上である、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記水性殺菌液の残留臭素が臭素総量として約50から約3200ppm(wt/wt)の範囲であり、前記水性殺生物液の活性臭素含量が約100,000ppm以上であり、pH値が約13以上である、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
前記水性殺生物液がB)である、請求項1から4の何れかに記載の方法。
【請求項12】
前記水性殺生物液が、
a)該水性殺生物液のpHが7より高くなるように、水と、(i)臭化アンモニウム、臭化水素、少なくとも1つの臭化アルカリ金属、少なくとも1つの臭化アルカリ土類金属及びこれらの何れか2以上の混合物から選択される少なくとも1つの臭素源と、(ii)少なくとも1つの次亜塩素酸アルカリ金属及び/又は少なくとも1つの次亜塩素酸アルカリ土類金属と、(iii)無機塩基、又は
b)水性殺生物液のpHが7より高くなるように、水と、(i)臭化アンモニウム、臭化水素、少なくとも1つの臭化アルカリ金属、少なくとも1つの臭化アルカリ土類金属及びこれらの何れか2以上の混合物から選択される少なくとも1つの臭素源と、(ii)固形塩素化剤と、(iii)無機塩基、又は
c)水と、(i)臭化アンモニウム、臭化水素、少なくとも1つの臭化アルカリ金属及び少なくとも1つの臭化アルカリ土類金属及びこれらの何れか2以上の混合物から選択される少なくとも1つの臭素源と、(ii)塩素源と、場合によっては(iii)少なくとも1つの無機塩基と、(iv)スルファミン酸及び/又はスルファミン酸の金属塩、又は
d)a)からc)の何れか1以上の組み合わせ
から構成される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記水性殺生物液がa)である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記水性殺生物液がb)である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記水性殺生物液がc)である、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
スルファミン酸及び/又はスルファミン酸の金属塩が含まれる、請求項14又は15の何れかに記載の方法。
【請求項17】
(ii)が少なくとも1つの次亜塩素酸アルカリ金属である、請求項11から14の何れかに記載の方法。
【請求項18】
(i)が次亜塩素酸ナトリウムである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
(ii)がトリクロロイソシアヌル酸塩又はジクロロイソシアヌル酸ナトリウムである、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
(iii)が水酸化ナトリウムである、請求項13又は14の何れかに記載の方法。
【請求項21】
前記pH値が約10以上である、請求項13又は14の何れかに記載の方法。
【請求項22】
(iv)がスルファミン酸である、請求項13又は15の何れかに記載の方法。
【請求項23】
(i)が臭化ナトリウムである、請求項11から22の何れかに記載の方法。
【請求項24】
少なくとも1つの色素及び/又は発泡剤が前記水性殺生物液中に存在する、請求項1から17の何れかに記載の方法。

【公表番号】特表2013−512734(P2013−512734A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542081(P2012−542081)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【国際出願番号】PCT/US2010/057586
【国際公開番号】WO2011/068705
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(594066006)アルベマール・コーポレーシヨン (155)
【Fターム(参考)】