説明

給水管接続方法

【課題】水まわり器具改修の際、改修階の床厚内のみで給水管位置を変更する際の配管接続部に漏水の無い給水管接続方法を提供することにある。
【解決手段】床内部に一部埋設された既設給水管周囲の床材を除去して既設給水管の端部を露出させ、給水管継手と、偏心用直管と、偏心用2次継手とをこの順に組み上げて一体的に構成し、前記給水管端部と前記給水管継手とを接続する給水接続方法において、前記給水管継手のゴムパッキンが劣化しても漏水しないように、給水管両端接続部をパテ、樹脂を含浸させたガラスマットまたは樹脂で被うことにより、漏水を防ぐことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、水まわり改修の際、既設給水管の位置を変更する給水管接続構造に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、階上に設置されたトイレ室等の衛生設備室(以下「トイレ」と略す)の改修を行う際、便器等の住設器具(以下「便器」と略す)に洗浄水を供給する給水管の接続は、図8に示すように行っていた。即ち、改修するトイレの床下、一般には下階の天井内にある既設給水管の接続継手103部分から既設給水管2を取り外し、スラブ102における、新たに器具を設置する位置の給水位置に、給水管を貫通させる穴101を開けなおし、穴101の位置に新設する配管の位置を変える作業を行なう。
【0003】しかし、この方法は床下、つまり下階の天井内での作業を伴うため、下階の天井を一旦壊し、作業完了後に新たに取り付けるといった面倒な作業が必要であり、高い位置で作業を行うため、作業性も悪かった。また、下階で作業を行う必要があり、施工階だけでなく、下階の使用も一次中断せざるを得なかった。特に、マンション等の集合住宅では、改修する世帯とは別の世帯である下階の使用を中断させることになり、改修の大きな障害となっていた。
【0004】また、下階の天井内作業を省く為に、改修する階のトイレの床上で既設配管をやり変えるという方法も考えられるが、床上に給水管が露出していると、見栄えが悪いと共に、新たに設置される便器の外周部(はかま部分)に当たり、便器の設置が出来ないという問題がある。
【0005】かかる問題を解決するため、近年、改修する床面の一部を除去して配管スペースを形成し、そのスペース内で既設給水管との接続、偏芯、新設の給水管との接続を行うという接続構造、接続方法が採用されている。このような接続構造は、一般に床下から立ち上がる既設給水管の端部に偏芯用の給水管継手を接続し、この給水官継手の下流側に偏芯用直管を接続し、この偏芯用直管の下流側に新設給水管を接続している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の構造においては、既設給水管は床下から立上がるため、既設給水管端部の接続部下部の配管周囲は床材で固定された状態である。通常、給水管接続には漏水の可能性が少ないネジ接続を用い、止水方法はシールテープやシール材を使う。しかし上記のような場合の固定された配管にネジを切ることは通常困難であり、一般に袋ナットによる接続方法が採用されることが多い。袋ナットは止水にゴムパッキンを使う構造であるため、止水性能はネジ接続に用いるシールテープやシール材に比べて格段に弱い。つまり、袋ナットによる接続方法では既設給水管との接続、偏芯、新設の給水管との接続部に漏水が起きる可能性があり、床面を除去して形成された配管スペースは配管完了後、同質の床材やモルタルで埋め戻されるため、万が一にも漏水の無い接続方法が要望されている。
【0007】本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、水まわり器具改修の際、改修階の床厚内のみで給水管位置を変更する際の配管接続部に漏水の無い給水管接続方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】上記目的を達成するために請求項1は、階上での給水管接続方法であって、床内部に一部埋設された既設給水管周囲の床材を除去して既設給水管の端部を露出させ、給水管継手と、偏芯用直管と、偏芯用2次継手とをこの順に接続して一体的に構成し、前記既設給水管端部と前記給水管継手とを接続する給水管接続方法において、既設給水管端部と給水管継手とを接続した後に、給水管継手の両端接続部の周囲に樹脂系のパテを塗布して水密状に被覆した水密状に被覆したことを特徴とする給水管接続方法である。前記給水管継手の1次止水が一般的にゴム等のパッキンであることから、モルタルに埋め戻してメンテナンスが出来なくなった場合、あるいは将来的に前記パッキンが劣化して止水できなくなった場合でも前記パテが2次止水帯となって漏水しない。
【0009】請求項2は、階上での給水管接続方法であって、床内部に一部埋設された既設給水管周囲の床材を除去して既設給水管の端部を露出させ、給水管継手と、偏芯用直管と、偏芯用2次継手とをこの順に接続して一体的に構成し、前記既設給水管端部と前記給水管継手とを接続する給水管接続方法において、既設給水管端部と給水管継手とを接続した後に、給水管継手の両端接続部の周囲に樹脂を含浸したガラスマットを巻き付けて水密状に被覆したことを特徴とする給水管接続方法である。前記給水管継手の1次止水がゴムのパッキンであることから、モルタルに埋め戻してメンテナンスが出来なくなり、将来的に前記パッキンが劣化して止水できなくなった場合でも前記ガラスマットが2次止水帯となって漏水しない。
【0010】請求項3は、階上での給水管接続方法であって、床内部に一部埋設された既設給水管周囲の床材を除去して既設給水管の端部を露出させ、給水管継手と、偏芯用直管と、偏芯用2次継手とをこの順に接続して一体的に構成し、前記既設給水管端部と前記給水管継手とを接続する給水管接続方法において、既設給水管端部と給水管継手とを接続した後に、給水管継手の両端接続部の周囲に樹脂系のパテを塗布し、その後さらに樹脂を含浸したガラスマットを巻き付けることで水密状に被覆したこと特徴とする給水管接続方法である。前記パテが2次止水帯、樹脂を含浸したガラスマットが3次止水帯となり、将来的に1次止水のパッキンが劣化して止水できなくなった場合でも、止水性能が向上し漏水しない。
【0011】請求項4は、階上での給水管接続方法であって、床内部に一部埋設された既設給水管周囲の床材を除去して既設給水管の端部を露出させ、給水管継手と、偏芯用直管と、偏芯用2次継手とをこの順に接続して一体的に構成し、前記既設給水管端部と前記給水管継手とを接続する給水管接続方法において、前記床材を除去した部分に流動性のある樹脂を流し込み、給水管継手の両端接続部を水密状に被覆したことを特徴とする給水管接続方法である。前記パテや樹脂を含浸したガラスマットよりも作業性が良く、確実に止水できる。
【0012】請求項5は、階上での給水管接続方法であって、床内部に一部埋設された既設給水管周囲の床材を除去して既設給水管の端部を露出させ、給水管継手と、偏芯用直管と、偏芯用2次継手とをこの順に接続して一体的に構成し、前記既設給水管端部と前記給水管継手とを接続する給水管接続方法において、既設給水管端部と給水管継手とを接続した後に、偏芯用直管の途中に該直管を囲繞するように樹脂系のパテを用いて土手を作り、前記床材除去部の既設給水管側と該土手部とで形成された略方形の囲いの中に、流動性のある樹脂を流しこむことにより、給水管継手の両端接続部を水密状に被覆したことを特徴とする給水接続方法である。前記給水管継手の1次止水が一般的にゴム等のパッキンであることから、モルタルに埋め戻してメンテナンスが出来なくなった場合、あるいは将来的に前記パッキンが劣化して止水できなくなった場合でも、前記床材除去部と該土手部とで形成された略方形の囲いの中に流し込まれた樹脂によって水密性が確保され、漏水しない。
【0013】請求項6は、階上での給水管接続方法であって、床内部に一部埋設された既設給水管周囲の床材を除去して既設給水管の端部を露出させ、給水管継手と、偏芯用直管と、偏芯用2次継手とをこの順に接続して一体的に構成し、前記既設給水管端部と前記給水管継手とを接続する給水管接続方法において、給水管継手の両端接続部に、両方の接続部全体を覆うことが可能な容器を固定し、該容器に樹脂を流し込み、給水管継手の両端接続部を水密状に被覆したことをことを特徴とする給水管接続方法である。前記接続部周囲の床材を除去した部分が現場により変わっても樹脂の量を一定にすることにより、コストを下げることができる。また量を一定にすることにより反応時の温度上昇を押さえることができ、給水配管内の塩ビライニングにも影響を与えない。
【0014】
【発明の実施の形態】以下に図面を参照して本発明をより具体的に説明する。なお、ここに挙げるものは上記各発明の実施の形態の一例であり、本発明の内容がこれに限定されるものではない。
【0015】図1は、本発明の一実施形態のものであり、給水管継手1の両端接続部にパテ、ガラスマットまたは樹脂で加工を施す前の状態を示す。既設配管2に給水管継手1が接続されており、新設配管を偏芯した新たな位置に配管を立上げた状態である。
【0016】施工手順として、既設配管2の周囲の床材を給水管継手1が床厚内で取り付け出来、かつ、新たに配管する偏芯用直管3、偏芯用2次継手31、新設配管32の立ち上げ位置の床材を、新たな配管が床厚内で取付け出来る深さ7まで除去する。接続部に用いる給水管継手1は図9(a)に示すように既設配管2及び偏芯用直管3にネジを切らずに袋ナット111で接続可能な構造である。既設配管2及び偏芯用直管3に、図9(b)に示すゴムパッキン108、ワッシャー109及びロックリング110を介して袋ナット111を絞め込んで接続する。全ての配管を完了後、床材を除去した部分をモルタル等で埋め戻す。
【0017】ところで、給水管継手1はゴムパッキン108のみで止水しているため、ゴムパッキン108が将来経年劣化した場合の漏水、パッキン108の方向間違い、入れ忘れ等での漏水が懸念される。上記のようにモルタル等で埋め戻してしまうと、ゴムパッキン108の交換等が非常に大変な作業である。
【0018】そのため、ゴムパッキン108が将来的に劣化等で漏水をおこしても問題ないように、図2は、給水管継手1の袋ナット111の2ヶ所に2次止水手段として樹脂パテ8を施工した状態である。樹脂パテ8の種類は、2液性のエポキシなど管やエルボとの密着性が良いものが好ましい。該施工においては、袋ナット111と既設給水管2及び偏芯用直管3の間に隙間が発生しないため止水性が格段に向上し漏水の心配がない。
【0019】図3は、請求項2の発明の実施例を示す。給水管継手1に樹脂を含浸したガラスマット9を巻き付けても良い。該施工においては、袋ナット111と既設給水管2及び偏芯用直管3の間に隙間が発生しないため止水性が格段に向上し漏水の心配がない。また、好ましくは図2の樹脂パテ8を施工した後、さらに前記樹脂を含浸したガラスマット9を巻き付けることにより、漏水の心配は極めて小さくなる。
【0020】図4においては、新設配管のために除去した床材部分をモルタル等で埋め戻すことなく、流動性樹脂10を流し込んだ状態である。この方法は、簡便かつ、袋ナット111と既設給水管2及び偏芯用直管3との隙間に流動性樹脂を確実に侵入させることができるため、止水性はさらに上がる。
【0021】ところで、図4の状態において流動性樹脂10の量が除去した床材の量によってはかなり多くなるため、コストが高くなることが考えられる。そのため、好ましくは図5のように土手3を樹脂系のパテで製作し、その中に流し込むことで流動性樹脂10の量を減らすことが出来る。従ってコストダウンにつながる。また、給水が急閉止した場合に、過大な水圧が発生しても継手に漏水を起こさない継手包含寸法として、a=10〜30mmの範囲が好ましい。
【0022】また、図6のように給水管継手を包む容器11を取付け、その中に流動性樹脂10を流し込むことで、流動性樹脂10の量を大幅に減らすことができる。この方法もコストダウンにつながる。
【0023】容器11は、好ましくは2分割で、給水管継手1の全体を左右、または前後から挟みこむ形状であり、樹脂硬化温度に対する耐熱性を保持している。樹脂容器11の材質としては,ポリプロピレンやポリエチレンなどが好ましい。挟み込んだ後、ゴムバンドで一体化する。一体化手段は、ネジ止め、接着等が好ましいが特に限定はされない。図7(a)および(b)に容器の具体的な形状を示す。樹脂容器11は、複数箇所ある差し込むための爪16と差し込まれる穴17があり、給水管継手を挟み込むように施工すれば良い。シール材18は粘着性のあるシリコン系やゴム系のクッション材などが考えられるが材質は限定されない。
【0024】図7(b)の樹脂容器11の形状は、図10R>0のように給水立ち上がり位置2が和風便器113と接近していることから、樹脂容器11が和風便器113と干渉しない形状である。また、図5の場合と同様にa寸法は10〜30mmが好ましい。
【0025】上述の流動性を有する樹脂を流し込む場合、樹脂に骨材を混入させることも可能である。骨材としては、天然石が望ましい。このほか、セラミックボールも用いることが可能である。この天然石が、硬化後の樹脂部分の強度を上げることに役立つほか、硬化の際に樹脂が発する反応熱を吸収する役割を果たすことになり、鋼管内部の塩ビライニングに悪影響を及ぼさない。
【0026】
【発明の効果】本発明によれば、水まわり器具改修に際し、改修階の床上作業で給水管位置を変更する際の給水管接続部の漏水の心配がなくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の配管接続を示す断面図である。
【図2】本発明の樹脂パテを塗布した状態を示す断面図である。
【図3】本発明の樹脂を含浸したガラスマット巻き付けた状態を示す断面図である。
【図4】本発明の樹脂を流し込んだ状態を示す断面図である。
【図5】本発明の土手を製作して樹脂を流し込んだ状態を示す断面図である。
【図6】本発明の樹脂を容器に流し込んだ状態を示す断面図である。
【図7】(a)本発明の樹脂を流し込む容器の具体的な形状である。
(b)本発明の樹脂を流し込む容器の具体的な形状である。
【図8】従来の接続方法を示す断面図である。
【図9】(a)本発明で使用する給水管継手の接続構造を示す斜視図である。
(b)本発明で使用する給水管継手の接続時を示す斜視図である。
【図10】既設給水管と和風便器の状態を示した図である。
【符号の説明】
4、床仕上げ材
5、下地モルタル
6、スラブ
8、樹脂パテ
9、樹脂を含浸したガラスマット
10、流動性樹脂
11、容器
16、接続穴
17、爪部
18、シール材
100、104、既設配管
105、新設継手
106、新設配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】 階上での給水管接続方法であって、床内部に一部埋設された既設給水管周囲の床材を除去して既設給水管の端部を露出させ、給水管継手と、偏芯用直管と、偏芯用2次継手とをこの順に接続して一体的に構成し、前記既設給水管端部と前記給水管継手とを接続する給水管接続方法において、既設給水管端部と給水管継手とを接続した後に、給水管継手の両端接続部の周囲に樹脂系のパテを塗布して水密状に被覆したことを特徴とする給水管接続方法。
【請求項2】 階上での給水管接続方法であって、床内部に一部埋設された既設給水管周囲の床材を除去して既設給水管の端部を露出させ、給水管継手と、偏芯用直管と、偏芯用2次継手とをこの順に接続して一体的に構成し、前記既設給水管端部と前記給水管継手とを接続する給水管接続方法において、既設給水管端部と給水管継手とを接続した後に、給水管継手の両端接続部の周囲に樹脂を含浸したガラスマットを巻き付けて水密状に被覆したことを特徴とする給水管接続方法。
【請求項3】 階上での給水管接続方法であって、床内部に一部埋設された既設給水管周囲の床材を除去して既設給水管の端部を露出させ、給水管継手と、偏芯用直管と、偏芯用2次継手とをこの順に接続して一体的に構成し、前記既設給水管端部と前記給水管継手とを接続する給水管接続方法において、既設給水管端部と給水管継手とを接続した後に、給水管継手の両端接続部の周囲に樹脂系のパテを塗布し、その後さらに樹脂を含浸したガラスマットを巻き付けることで水密状に被覆したこと特徴とする給水管接続方法。
【請求項4】 階上での給水管接続方法であって、床内部に一部埋設された既設給水管周囲の床材を除去して既設給水管の端部を露出させ、給水管継手と、偏芯用直管と、偏芯用2次継手とをこの順に接続して一体的に構成し、前記既設給水管端部と前記給水管継手とを接続する給水管接続方法において、前記床材を除去した部分に流動性のある樹脂を流し込み、給水管継手の両端接続部を水密状に被覆したことを特徴とする給水管接続方法。
【請求項5】 階上での給水管接続方法であって、床内部に一部埋設された既設給水管周囲の床材を除去して既設給水管の端部を露出させ、給水管継手と、偏芯用直管と、偏芯用2次継手とをこの順に接続して一体的に構成し、前記既設給水管端部と前記給水管継手とを接続する給水管接続方法において、既設給水管端部と給水管継手とを接続した後に、偏芯用直管の途中に該直管を囲繞するように樹脂系のパテを用いて土手を作り、前記床材除去部の既設給水管側と該土手部とで形成された略方形の囲いの中に、流動性のある樹脂を流しこむことにより、給水管継手の両端接続部を水密状に被覆したことを特徴とする給水接続方法。
【請求項6】 階上での給水管接続方法であって、床内部に一部埋設された既設給水管周囲の床材を除去して既設給水管の端部を露出させ、給水管継手と、偏芯用直管と、偏芯用2次継手とをこの順に接続して一体的に構成し、前記既設給水管端部と前記給水管継手とを接続する給水管接続方法において、給水管継手の両端接続部に、両方の接続部全体を覆うことが可能な容器を固定し、該容器に樹脂を流し込み、給水管継手の両端接続部を水密状に被覆したことをことを特徴とする給水管接続方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図8】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2002−89749(P2002−89749A)
【公開日】平成14年3月27日(2002.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−140241(P2001−140241)
【出願日】平成13年5月10日(2001.5.10)
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】