説明

給水給湯用樹脂管

【課題】狭いスペースでも容易に配管引き回しを行うことができる樹脂管を提供する。
【解決手段】補強層を介して内層と外層を積層した給水給湯用樹脂管。内層は、(1)MFR0.5〜60g/10分のエチレン単独/10重量%未満α−オレフィンをエチレン(共)重合体20〜80重量部、(2)MFR0.5〜60g/10分のエチレン/10〜40重量%α−オレフィン共重合体20〜80重量部、及び(3)ラジカル発生剤を溶融混練した樹脂組成物(A)を、また、外層は、エチレン重合体又はエチレンとα−オレフィン類との共重合体(a)を、それぞれ、エチレン性不飽和シラン化合物(b)とラジカル発生剤(c)の存在下でグラフト反応させ、シラノール縮合触媒(d)と安定剤(e)を混合したエチレン系樹脂組成物を成形した後、水の存在下に結合シランの加水分解反応により架橋したシラン架橋ポリエチレンよりなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は給水給湯用樹脂管に係り、特に、内層が高強度で柔軟な架橋ポリエチレンよりなり、外層が極めて柔軟なシラン架橋ポリエチレンよりなり、また、内層と外層との間に補強層が介在していることにより、著しく柔軟で、狭いスペースにおいても小曲率半径にて湾曲させて引き回すことができる給水給湯用樹脂管に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、新築の住宅の90%以上に給湯器が設置されており、配管材である樹脂管も、耐熱性に優れる架橋ポリエチレン管やポリブテン管を用いるのが主流となっている。このような給水給湯用樹脂管に求められる耐用年数は、25年とも30年とも言われており、さらに最近の住宅のロングライフ化に伴って、それ以上の耐久性も要求されるようになっている。
【0003】
給水給湯用樹脂管には、耐熱性だけではなく、内部に水道水が流通されるので、その材料に耐塩素水性が求められる。そのため、通常給水給湯用樹脂管に使用されているポリエチレンの耐塩素水性を高めるためには、ポリエチレンの密度が高いものを使用する必要がある。しかし、密度を高めると、ポリエチレン管の柔軟性が悪くなり、現場での作業性を極端に悪くする。すなわち、ポリエチレン管の耐塩素水性と柔軟性とは、いわゆるトレードオフ(二律背反)の関係にある。これらの条件に対して、従来、耐塩素水性及び柔軟性が必要とされる配管、例えば、管壁を二層で構成した配管が提案され、一般的には、内層にある程度耐塩素水性に優れた材料を使用し、外層に柔軟性を有する材質を使用したものが提案されてきた。
【0004】
具体的には、給水給湯用樹脂管を複層構造にして、前記耐塩素水性と柔軟性とのバランスをとろうとする技術が開示されている。特許文献1には、内層が、密度0.91〜0.94g/cmであるシラン架橋ポリエチレンから構成され、外層が柔軟性のシラン架橋ポリオレフィンから構成される給水給湯用管状体が開示されている。特許文献2には、内周面層及び外周面層が、少なくとも一種以上のオレフィン共重合体からなるベースポリマーと、有機不飽和シラン及び遊離ラジカル発生剤を含有させたキャリアポリマーAと、シラノール縮合触媒及び酸化防止剤を含有させたキャリアポリマーBとからなる組成物をベースポリマーの結晶融点よりも高い温度において溶融混合して成形し、次いで、水分と接触させて架橋し、密度が0.860〜0.885g/cmである柔軟性シラン架橋ポリオレフィンからなり、内周面層が密度0.885〜0.910g/cmであるポリエチレンを用いた柔軟性シラン架橋ポリエチレンからなる給水給湯用ホースが開示されている。
【特許文献1】特開2001−289367号公報
【特許文献2】特開2001−108160号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、これら特許文献1,2に開示されている二層構造を有する管状体は、柔軟性には優れているが、内層に用いられるシラン架橋ポリエチレン管の密度が0.94g/cm以下であることにより、次のような欠点がある。
即ち、ポリエチレンの密度が0.94g/cm以下のものは、低密度から中密度のポリエチレンに分類されており、近年の樹脂管のロングライフ化の要求に対して、内層管として利用するには耐塩素水性が不十分であるという問題があった。
【0006】
また、密度が0.94g/cm以下の低中密度のポリエチレン管は、耐熱間内圧クリープ性能が低いため、内層管としての強度が不十分であるという問題もある。このような低中密度のポリエチレン管を内層に用いると、樹脂管に水道水を流通して内圧をかけたときに円周方向に引っ張り応力が作用し、この負荷を長時間加えることによって、樹脂管が徐々に塑性変形して遂には破壊に至る。
【0007】
これらの問題を解決するために、上記特許文献1,2では、樹脂管の柔軟性を維持するために内層管の樹脂の密度はそのままにしつつ、外層管で内層管に不足していた耐塩素水性及び耐熱間内圧クリープ性能を補うように、樹脂管全体の厚さに占める内層管の厚さに対して極端に厚い外層管を使用する構成を採用している。しかし、外層管を過度に厚くすることにより複層構造の樹脂管の総厚みが大きなものにならざるを得ず、給水給湯用樹脂管を設置する限られたスペース内に、さらに余分な空間を占めてしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、上記従来の問題点を解決し、耐熱性、耐塩素水性に優れる上に、極めて柔軟であり、また肉厚を過度に厚くすることなく、狭いスペースにおいても小曲率半径にて湾曲させて配管の引き回しを行うことができる給水給湯用樹脂管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明(請求項1)の給水給湯用樹脂管は、それぞれ架橋ポリエチレンを主成分とする内層及び外層と、該内層と外層との間に介在する補強層とを有する給水給湯用樹脂管において、該内層は、
(1):メルトフローレート0.5〜60g/10分の範囲のエチレン単独もしくは10重量%未満のα−オレフィンを共重合したエチレン(共)重合体20〜80重量部と、
(2):メルトフローレート0.5〜60g/10分の範囲の10〜40重量%のα−オレフィンを共重合したエチレン/α−オレフィン共重合体20〜80重量部と、
(3):前記(2)のエチレン/α−オレフィン共重合体100重量部に対してラジカル発生剤0.01〜2.0重量部と
を溶融混練した樹脂組成物(A)と、下記一般式(I)で表されるエチレン性不飽和シラン化合物(b)とをラジカル発生剤(c)の存在下でグラフト反応させ、次いでこの反応物に、シラノール縮合触媒(d)と安定剤(e)とを混合してなるエチレン系樹脂組成物を成形した後、水の存在下に上記結合シランの加水分解反応により架橋したシラン架橋ポリエチレンよりなり、
該外層は、エチレン重合体又はエチレンと炭素数4以上のα−オレフィン類との共重合体(a)と、下記一般式(I)で表されるエチレン性不飽和シラン化合物(b)とをラジカル発生剤(c)の存在下でグラフト反応させ、次いでこの反応物に、シラノール縮合触媒(d)と安定剤(e)とを混合してなるエチレン系樹脂組成物を成形した後、水の存在下に上記結合シランの加水分解反応により架橋したシラン架橋ポリエチレンよりなることを特徴とする。
SiR3−n …(I)
(一般式(I)において、RはSiに直接又は酸素原子を介して結合するエチレン性不飽和炭化水素基であり、Rは炭素数1〜12のアルキル基、Yは加水分解可能な有機基であり、nは0〜2の整数である。)
【0010】
請求項2の給水給湯用樹脂管は、請求項1において、(1)及び/又は(2)の(共)重合体がメタロセン触媒を用いて(共)重合した(共)重合体であることを特徴とするものである。
【0011】
請求項3の給水給湯用樹脂管は、請求項1又は2において、(1)及び/又は(2)のα−オレフィンが、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、及びプロピレンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンであることを特徴とするものである。
【0012】
請求項4の給水給湯用樹脂管は、請求項1ないし3のいずれかにおいて、前記共重合体(a)のメルトフローレートが0.1〜10.0g/10分、密度が0.85〜0.96g/cmであることを特徴とするものである。
【0013】
請求項5の給水給湯用樹脂管は、請求項1ないし4のいずれか1項において、該外層の密度が0.850〜0.900g/cmであり、硬度(JIS K 6253)が60〜90であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の給水給湯用樹脂管は、内層が高強度で柔軟なシラン架橋ポリエチレンよりなり、特に、外層が著しく柔軟なシラン架橋ポリエチレンよりなる。また、内層と外層との間に補強層が介在している。このため、肉厚を過度に厚くすることなく、シラン架橋ポリエチレン本来の耐熱性及び耐塩素水性を確保した上で、著しく柔軟なものとなり、狭いスペースにおいても小曲率半径にて湾曲させて引き回すことができる。
【0015】
本発明によれば、例えば、通常の架橋ポリエチレン単層管の1.5倍程度の耐圧強度を有し、曲げ応力が架橋ポリエチレン単層管の1/2程度であり、曲げ半径が架橋ポリエチレン単層管の70%程度の給水給湯用樹脂管を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の給水給湯用樹脂管は、内層と、内層を取り巻く補強層と、この補強層を取り巻く外層とを有する。
まず、外層及び内層を構成するシラン架橋ポリエチレンについて説明する。
なお、本明細書において、「(共)重合」とは「重合」と「共重合」の総称であり、従って、「(共)重合体」は「重合体」と「共重合体」の双方を意味する。
【0017】
[外層のシラン架橋ポリエチレン]
まず、外層を構成するシラン架橋ポリエチレンについて説明する。
本発明の給水給湯用樹脂管の外層は、エチレン重合体又はエチレンと炭素数4以上のα−オレフィン類との共重合体(a)と、前記一般式(I)で表されるエチレン性不飽和シラン化合物(b)とをラジカル発生剤(c)の存在下でグラフト反応させ、次いでこの反応物に、シラノール縮合触媒(d)と安定剤(e)とを混合したエチレン系樹脂組成物(以下、この樹脂組成物を「外層用樹脂組成物」と称す場合がある。)を成形した後、水の存在下に上記結合シランの加水分解反応により架橋したものである。
【0018】
この外層は、好ましくは、密度(JIS K7112に準拠)が0.850〜0.900g/cmであり、硬度(JIS K 6253に準拠)が60〜90である。
【0019】
このエチレン重合体及びエチレンと炭素数4以上のα−オレフィン類との共重合体(成分(a))は、特に限定されるものではないが、チーグラー系触媒、クロム系触媒等の各種触媒を用い、中低圧下又は高圧下において、気相法、溶液法、懸濁重合法等の各種重合法により得られた(共)重合体である。
【0020】
炭素数4以上のα−オレフィン類としては、1−ブテン、2−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、2−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、2,2−ジメチル−1−ブテン、2−メチル−1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、2−メチル−1−ヘキセン、3−メチル−1−ヘキセン、2,2−ジメチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ペンテン、2,3−ジメチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、2,2,3−トリメチル−1−ブテン、1−オクテン、2,2,4−トリメチル−1−オクテン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0021】
成分(a)のメルトフローレート(JIS K7210に準拠、温度190℃、荷重21.18N)は通常0.1〜10g/10分であり、好ましくは0.5〜8g/10分である。メルトフローレートが0.1g/10分未満では、溶融粘度が高くなり成形時の加工機への負荷が大きく、成形外観も悪化する傾向となる。メルトフローレートが10g/10分超過では、粘度が低くなり押出加工が困難となることがある。
【0022】
また、成分(a)の密度は通常0.85〜0.96g/cmであり、好ましくは、0.86〜0.95g/cmである。密度が0.85g/cm未満では架橋ポリエチレンとしての十分な架橋度、ゲル分率が得られず、0.96g/cm以上では、所定量のエチレン性不飽和シラン化合物を含有することができなくなり、(共)重合体表面に滲みでて滑性が増し安定した架橋特性を有するグラフト変性物を得ることができないことがある。
【0023】
エチレン性不飽和シラン化合物(成分(b))としては、以下の一般式(I)で表される化合物が使用される。
SiR3−n …(I)
【0024】
一般式(I)において、RはSiに直接又は酸素原子を介して結合するエチレン性不飽和炭化水素基であり、ラジカル反応性を有するものである。このような基としては、炭素数2〜12のアルケニル基、アリル基やオキシアルケニル基が好ましく、例えば、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、ブテニル基、γ−(メタ)アクリルオキシプロピル基等が挙げられる。Rは炭素数1〜12のアルキル基であり例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、デシル基等が挙げられる。Yは加水分解可能な有機基を表し、例としては、メトキシ基、エトキシ基、ホルミルオキシ基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、アリールアミノ基などが挙げられる。nは0,1又は2である。
【0025】
成分(b)として特に好ましいのは次の一般式(II)で表される化合物である。
【0026】
【化1】

【0027】
一般式(II)において、RはH又はCH、Rは相互に同一でも異っていてもよい炭素数4以下の直鎖又は分岐アルキル基、Rは炭素数4以下の直鎖、分岐アルキル基、又はフェニル基である。具体的には、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン等が挙げられる。
【0028】
グラフト変性させる反応系に存在させるエチレン性不飽和シラン化合物(b)の量は、目的とする成型品の架橋度、反応条件(温度、時間)などにより決定されるが、経済性、反応前・反応中の取り扱いの容易性から成分(a)100重量部に対し、0.1〜10重量部の範囲から選ばれる。好ましくは、0.2〜5重量部である。成分(b)の量が0.1重量部未満では十分なグラフト化及び架橋度を得ることができないため、機械的強度、耐熱性、耐クリープ性等の諸特性が十分向上せず、10重量部超過では溶融粘度が高くなり過ぎて、押出機に過負荷がかかり作業性が悪化したり、成形不良を起こす傾向となる。
【0029】
ラジカル発生剤(成分(c))は、ポリオレフィンのグラフト化反応に一般的に用いられる化合物であればよく、特に限定されるものではないが、グラフト反応温度において6分未満の半減期を有する化合物の中から選ぶのが好ましい。より好ましくは、グラフト反応温度において1分間未満の半減期を有する化合物である。具体的には、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルオキシ−2−エチルヘキサノエートなどの有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、メチルアゾビスイソブチレートなどのアゾ化合物が挙げられる。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。成分(c)の添加量は特に限定されるものではないが、前述の成分(a)100重量部に対し、通常0.001〜5重量部であり、好ましくは0.01〜2重量部である。成分(c)が0.001重量部未満ではグラフト化反応が十分進行しないので所望のゲル分率が得られず、5重量部を超えるとラジカル発生剤による目的としない架橋反応(過酸化物架橋)が進行し、スコーチ現象の発生、表面平滑性の低下、粘度の上昇等が起こり、作業性が悪化する傾向となる。
【0030】
シラノール縮合触媒(成分(d))としては、錫、亜鉛、鉄、鉛、コバルト等の金属カルボン酸塩、チタン酸エステルおよびキレート化合物の有機金属化合物、有機塩基、無機酸および有機酸などが挙げられる。具体的には、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジラウレート、酢酸第一錫、カプリル酸第一錫、ナフテン酸鉛、ナフテン酸コバルト、チタン酸テトラブチルエステル、チタン酸テトラノニルエステル、ジブチルアミン、ヘキシルアミン、ピリジン、硫酸、塩酸、トルエンスルホン酸、酢酸、ステアリン酸、マレイン酸などが挙げられる。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。成分(d)の添加量は特に限定されるものではないが、前述の成分(a)100重量部に対し、通常0.001〜5重量部であり、好ましくは0.005〜2重量部である。成分(d)が0.001重量部未満では十分な架橋反応が進まず、5重量部を超えると押出機内で早期架橋が起こりスコーチ現象が発生する傾向となる。
【0031】
安定剤(成分(e))としては、酸化防止剤、光安定剤、金属害防止剤等が使用できる。酸化防止剤として、具体的には、例えば、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,4,6−トリ−t−ブチルフェノール、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、ブチル化ヒドロキシアニソール、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のモノフェノール系、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,6−ビス(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルベンジル)−4−メチルフェノール等のビスフェノール系、1,1,3−トリス(2’−メチル−4’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、トリス〔β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル〕イソシアヌレート、テトラキス〔メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン等のトリ以上のポリフェノール系、2,2’−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)等のチオビスフェノール系、アルドール−α−ナフチルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、フェニル−β−ナフチルアミン等のナフチルアミン系、p−イソプロポキシジフェニルアミン等のジフェニルアミン系、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−β−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N−シクロヘキシル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン等のフェニレンジアミン系のもの等が挙げられ、中で、モノフェノール系、ビスフェノール系、トリ以上のポリフェノール系、チオビスフェノール系等が好ましい。
【0032】
光安定剤や紫外線吸収剤の具体例としては、4−t−ブチルフェニルサリシレート、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、エチル−2−シアノ−3,3′−ジフェニルアクリレート、2−エチルヘキシル−2−ジアノ−3,3′−ジフェニルアクリレート、2(2′−ヒドロキシ−3′−t−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2(2′−ヒドロキシ−3,5′−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−5−クロルベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2(2′−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、モノグリコールサリチレート、オキザリック酸アミド、フェニルサリチレート、2,2′,4,4′−テトラヒドロキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0033】
金属害防止剤としては、ヒドラジド誘導体、シュウ酸誘導体、サリチル酸誘導体などを挙げることができ、ヒドラジド誘導体金属害防止剤としては、N,N′−ジアセチルアジピン酸ヒドラジド、アジピン酸ビス(α−フェノキシプロピオニルヒドラジド)、テレフタル酸ビス(α−フェノキシプロピオニルヒドラジド)、セバチン酸ビス(α−フェノキシプロピオニルヒドラジド)、イソフタル酸ビス(β−フェノキシプロピオニルヒドラジド)などが挙げられ、シュウ酸誘導体金属害防止剤としては、N,N′−ジベンザル(オキザリルジヒドラジド)、N−ベンザル−(オキザリルジヒドラジド)、オキザリルビス−4−メチルベンジリデンヒドラジド、オキザリルビス−3−エトキシベンジリデンヒドラジド等が挙げられ、サリチル酸誘導体金属害防止剤としては、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、デカメチレンジカルボン酸ジサリチロイルヒドラジドが挙げられる。好ましい金属害防止剤はサリチル酸誘導体金属害防止剤である。
【0034】
これらの安定剤は1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0035】
成分(e)の添加量は特に限定されるものではないが、前述の成分(a)100重量部に対し、通常0.001〜5重量部であり、好ましくは0.001〜3重量部である。成分(e)の添加量が0.001重量部未満では十分な安定化効果が得られず、5重量部を超えると着色等の影響が生じ、また成形不良を起こすと共に添加量の増加に見合う効果の向上は得られず経済的でなくなる傾向となる。
【0036】
成分(b)、成分(c)は成分(a)に前もって含浸させた後、グラフト反応を行なうことが好ましい。前述の様に、成分(a)の密度が規定の範囲外であると成分(b)、(c)が含浸しにくく、安定した架橋性能を得ることが出来ず好ましくない。含浸の操作方法は特に限定されるものではないが、通常、加温が可能なミキサーで60〜100℃で攪拌することにより行われる。また、成分(d)、成分(e)も前もってポリエチレン系樹脂と溶融混練した後、或いは粉状のポリエチレン系樹脂とミキサーなどを用いて混合した後、供給される。ここで、上記ポリエチレン系樹脂は成分(b)、(c)を含浸させたポリエチレン系樹脂成分(a)と同じでもよいし、異なっていてもよい。また、成分(d)、成分(e)に加えて、着色剤、防錆剤、充填剤、難燃剤等を目的に応じて含有させることができる。
【0037】
上記のグラフト反応は押出機中で行うのが好ましい。このような押出機としては、2カ所以上の原材料供給口を有する押出機を用いるのが特に好ましい。このような押出機を用いる場合、第一供給口より成分(b)、成分(c)を含有させた成分(a)を供給し溶融混練してグラフト化反応をさせ、そして、第二供給口より予めポリエチレン系樹脂に混合された成分(d)、および成分(e)を供給する。成分(a)〜(e)を第一供給口より同時に供給すると、ラジカル発生下で共存する酸化防止剤がその発生ラジカルと反応し、グラフト化反応の効率を下げ、同時に成形機中の水分と架橋触媒が反応し部分的に架橋反応が生じ、成形中の変動が大きく安定した反応、充分な架橋度、ゲル分率が得られず、安定した押出成形外観が得られないことがある。
【0038】
押出機としては、単軸スクリュー押出機、2軸スクリュー押出機、3本以上のスクリューを備えた多軸スクリュー押出機等が挙げられ、いずれも好適に用いられる。上記単軸スクリュー押出機としては、特に限定されるものではないが、一般的なフルフライト型スクリューを有する押出機のみならず、不連続フライト型スクリュー、ピンバレル、ミキシングヘッド等を有する押出機等も挙げられ、いずれも好適に用いられる。又、上記2軸スクリュー押出機としては、特に限定されるものではないが、噛み合い同方向回転型押出機、噛み合い異方向回転型押出機、非噛み合い異方向回転型押出機等が挙げられ、いずれも好適に用いられる。上記スクリューの形状は、特に限定されるものではないが、同方向回転型なら2〜3条タイプ、異方向回転型なら2〜8条タイプであることが好ましく、フルフライト型を中心として、部分的にニーディングディスク、シールリング、逆ネジ、ローター等のスクリューエレメントを有しているものであっても良く、又、平行スクリュー型もしくはコニカルスクリュー型のいずれであっても良い。上記各種スクリュー型押出機のなかでも、混練性能等を考慮すると、噛み合い(セルフワイピング)同方向回転型2軸スクリュー押出機がより好適に用いられる。
【0039】
加熱シリンダーゾーンにおけるスクリューのL/D(L;スクリュー長さ、D;スクリュー直径)は、20以上であることが好ましく、さらに好ましくは、L/D=24〜40である。L/Dが20未満の押出成形機では、シラングラフト反応、縮合反応の二つの反応を連続して行うには短く、十分な架橋度、ゲル分率を有するシラン架橋ポリエチレンを得ることが難しくなる傾向となる。又、本発明においては、上記押出機の先端に所望形状のダイを設置し、得られたシラン変性ポリオレフィンを一段階で所望の形状に賦形することにより、混合と成形を連続的に行って、工程の簡略化を図っても良い。
【0040】
加工条件は特に限定されるものではなく、例えばスクリュー回転数、押出量、シリンダー設定温度等は、グラフト化反応の速度を考慮して押出機内滞留時間、混練度、成形品の強度等を考慮して適宜決定されれば良く、又、残存水分や不純物等を除去するために、例えば、真空ベント機能が付与されていても良い。
【0041】
上記プロセスにて得られた樹脂成形体は水雰囲気中に曝すことにより、架橋が進行する。進行速度は水雰囲気中に曝す条件によって決まるが、室温〜200℃の温度範囲で、10分〜1週間の範囲で曝せばよい。特に好ましい条件は、常温〜130℃の温度範囲で、30分〜100時間の範囲である。シラン架橋ポリエチレンを長期間に亘って柔軟で優れた特性を発揮させるためには、ISO 10147−1994に準拠して測定したゲル分率(架橋度)が65%以上、特に65〜70%であることが好ましい。ゲル分率は、エチレン性不飽和シラン化合物のグラフト率、シラノール縮合触媒の種類、量、架橋させる際の条件(温度、時間)などを変えることにより、調整することができる。
【0042】
[内層のシラン架橋ポリエチレン]
次に、内層を構成するシラン架橋ポリエチレンについて説明する。
【0043】
一般に、ポリエチレンは電気的性質、機械的性質、化学的性質に優れているが、熱変形温度がHDPE(高密度ポリエチレン)で132〜135℃と低く、クリープ性能、耐ストレスクラック性、寸法安定性などに欠点がある。これらの欠点は架橋させることにより著しく改良することができる。しかしながら、架橋させることにより、熱可塑性が失われてしまうため、溶融成形などのリサイクルが不可能になりこれが普及の大きな妨げになっていた。
【0044】
ポリエチレン及び又は他のポリオレフィンを遊離ラジカル発生剤、例えば有機過酸化物の作用の下で架橋させることにより、前記重合体の性質を改変させることは公知である。しかしながら、その処理方法は非常に難しく困難を伴う。仮に、処理を過度に実施すると、処理装置、例えば押出機中でゲル化してしまい、押し出しが困難になり、処理物を取り出すのに多大な労力がかかったりする。また、生成物が熱可塑性を有していないために、目的とする形状に加工することが困難である。
【0045】
本発明の給水給湯用樹脂管の内層を構成しているシラン架橋ポリエチレンは、
(1):メルトフローレート0.5〜60g/10分の範囲のエチレン単独もしくは10重量%未満のα−オレフィンを共重合したエチレン(共)重合体(以下「エチレン(共)重合体(1)」と称す場合がある。)20〜80重量部と、
(2):メルトフローレート0.5〜60g/10分の範囲の10〜40重量%のα−オレフィンを共重合したエチレン/α−オレフィン共重合体(以下「エチレン/α−オレフィン共重合体(2)」と称す場合がある。)20〜80重量部と、
(3):前記(2)のエチレン/α−オレフィン共重合体100重量部に対してラジカル発生剤(以下「ラジカル発生剤(3)」と称す場合がある。)0.01〜2.0重量部と
を溶融混練した樹脂組成物(A)と、前記一般式(I)で表されるエチレン性不飽和シラン化合物(b)とをラジカル発生剤(c)の存在下でグラフト反応させ、次いでこの反応物に、シラノール縮合触媒(d)と安定剤(e)とを混合してなるエチレン系樹脂組成物(以下、この樹脂組成物を「内層用樹脂組成物」と称す場合がある。)を成形した後、水の存在下に上記結合シランの加水分解反応により架橋してなるものである。
【0046】
ここで、(1),(2)のエチレン(共)重合体とは、一般的に高密度ポリエチレンと呼ばれるエチレンの単独重合体もしくはα−オレフィンを共重合した共重合体である。上記ポリエチレンは一般にはチーグラー触媒と呼ばれるチタン化合物/アルキルアルミ化合物触媒あるいはメタロセン触媒を用いて(共)重合される。本発明では、これら触媒で(共)重合したポリエチレンを用いることが出来る。更に好ましくは本発明にはメタロセン触媒で重合したポリエチレンが用いられる。
【0047】
メタロセン触媒とは一般にはシクロペンタジエン誘導体と遷移金属の錯体及び還元剤よりなり、遷移金属錯体としてはジルコノセン、チタノセン、フェロセンハフノセン等が有名である。還元剤としては有機アルミ化合物、有機ホウ素化合物が知られていて具体的な例としてはメチルアルミノキサン(MAO)ボレートなどが有名である。メタロセン触媒を用いてエチレンを重合するとHDPEの重合で一般的なチーグラー触媒で得られる(共)重合体に比較して分子量分布の狭い(共)重合体が得られる。
【0048】
エチレンとα−オレフィンの共重合体においては、共重合体の分子量が増加するにしたがいチーグラー系はコモノマーの組成が減少するのに対してメタロセン系は均一な組成の(共)重合体が得られる特徴を有している。本発明では、ポリエチレンマトリックス中でα−オレフィンを共重合した(共)重合体をゴム成分として架橋させるのが好ましい。メタロセン触媒で(共)重合した(共)重合体をゴム成分として用いて動架橋反応を行うと、架橋反応が均一に進む。得られる樹脂組成物は流動性と成形物の外観のバランスが良好であり、架橋反応で架橋密度を高めた組成物であっても、これらを用いて得られる成形物は肌荒れが起こりにくく外観が良好である。
【0049】
マトリックス成分であるエチレン単独の重合体もしくは10重量%未満のα−オレフィンを共重合したエチレン(共)重合体(1)及びエチレン/α−オレフィン共重合体(2)は、メルトフローレート(JIS K7210、温度190℃、荷重2.16kg)が0.5〜60g/10分の範囲にあることが肝要である。メルトフローレートが60g/10分を超えると、得られる樹脂組成物(A)の物性、特に耐熱特性が低下する傾向がある。また、0.5g/10分未満であるとマトリックスが軽度の架橋を起こしても組成物に熱可塑性がなくなる。
【0050】
マトリックスを形成するエチレン(共)重合体(1)の樹脂組成物(A)中の割合は20〜80重量%、好ましくは30〜70重量%である。エチレン(共)重合体(1)の樹脂組成物(A)中の割合が20重量%未満では、たとえメルトフローレートの高い低粘度のものを用いても樹脂組成物(A)中で連続相を形成することが難しくなり好ましいモルホロジーを形成出来なくなるため好ましくなく、また80重量%を超えると、連続相の架橋に過酸化物が消費されるようになり架橋反応のコントロールが難しくなるためである。
【0051】
なお、エチレン(共)重合体(1)及びエチレン/α−オレフィン共重合体(2)において、エチレンと共重合するα−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、プロピレンが好適である。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0052】
この樹脂組成物(A)を構成する架橋ポリエチレンは、特定の架橋性エチレン系組成物を動架橋させることでポリエチレンの熱可塑性を失わせることなく、高弾性率、耐熱性の改良、低収縮率、耐ストレスクラック性などを向上させたものである。
【0053】
この樹脂組成物(A)は、架橋反応因子を厳密にコントロールすることによりゴム成分である架橋体をマトリックス樹脂中に分散させ、マトリックス樹脂は流動性を保持するようにした樹脂組成物である。
【0054】
この樹脂組成物(A)としての熱可塑性のポリエチレン架橋体を得るための架橋(動架橋)反応について次に説明する。
一般にα−オレフィンを共重合した共重合体は第3級カーボンを有していてラジカルの攻撃を受けやすく架橋反応が進みやすい。得られる樹脂組成物(A)が熱可塑性を有するためには、架橋反応時に樹脂組成物のマトリックスを形成するエチレン(共)重合体(1)が架橋反応を起こす以前にα−オレフィンを多く含有するゴム成分であるエチレン/α−オレフィン共重合体(2)がラジカル開始剤(3)を消費して架橋し、マトリックス中に粒子状で分散、架橋反応が終了することが重要である。
【0055】
ラジカル発生剤(3)としては、有機過酸化物やアゾ化合物を用いることができ、このうち、有機過酸化物は多官能性モノマーと併用しても良い。
【0056】
ラジカル発生剤(3)の具体的な例としては、ラウロイルパーオキサイド、ジプロピオニトリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルヒドロキシパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレートのような有機過酸化物や、アゾビスイソブチロニトリル、アゾイソブチルバレロニトリルのようなアゾ化合物が挙げられる。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。ラジカル発生剤の使用量は架橋反応に供されるエチレン/α−オレフィン共重合体(2)の100重量部に対して好ましくは0.01〜2.0重量部の範囲である。
【0057】
有機過酸化物と併用される多官能性モノマーとしては、ゴム成分であるEPR(エチレンプロピレンラバー)、エチレン/1−ブテン共重合体のようなエチレン/α−オレフィン共重合体が有機過酸化物の水素引き抜き反応により生成するポリマーラジカルが開裂崩壊する以前に、これらポリマーラジカルを安定化し、架橋効率を高める働きを有するものである。これらの具体的な例としては、エチレンジメチルアクリレート、ジビニルベンゼン、ポリエチレングリコールジメチルアクリレート、ジアリルイタコネート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレート、トリアリルホスフェートなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。多官能性モノマーの使用量は、エチレン/α−オレフィン共重合体(2)100重量部に対して好ましくは0.01〜2.0重量部である。
【0058】
動架橋とは、混合溶融時に架橋させることであり、具体的には、架橋反応を実施する際の溶融反応(溶融HDPE)に剪断を与えながら反応させることを意味し、より具体的には、架橋反応をブラベンダー、バンバリーミキサー、ニーダー、押出機あるいは反応機を用いて溶融混練あるいは攪拌しながら反応物を架橋反応試薬と反応させることを意味する。
【0059】
溶融混練とは、樹脂が溶融する温度で高剪断下で混合することである。樹脂に与える剪断は大な程架橋ゴム成分は小粒子状でマトリックス中に分散する。剪断を与える装置としてはブラベンダー、ニーダー、単軸、二軸の押出機が用いられる。反応温度は150〜280℃より好ましくは170〜250℃である。
【0060】
なお、樹脂組成物(A)には、一般的な樹脂組成物にしばしばみられるように各種の添加剤を添加することが出来る。
このような添加剤としては混和可能な熱可塑性樹脂、安定剤、滑剤、無機充填材、難燃剤、着色剤、その他がある。
【0061】
本発明の給水給湯用樹脂管の内層は、係る樹脂組成物(A)と、前記一般式(I)で表されるエチレン性不飽和シラン化合物(b)とをラジカル発生剤(c)の存在下でグラフト反応させ、次いでこの反応物に、シラノール縮合触媒(d)と安定剤(e)とを混合したエチレン系樹脂組成物(内層用樹脂組成物)を成形した後、水の存在下に上記結合シランの加水分解反応により架橋したものである。なお、前記一般式(I)で表されるエチレン性不飽和シラン化合物(b)、ラジカル発生剤(c)、シラノール縮合触媒(d)、安定剤(e)については、いずれも、外層用樹脂組成物の項で例示したものと同様のものを用いることができる。
【0062】
この内層は、好ましくは、密度(JIS K7112に準拠)が0.945〜0.950g/cmであり、硬度(JIS K 6253に準拠)が100〜150である。
【0063】
グラフト変性させる反応系に存在させるエチレン性不飽和シラン化合物(b)(成分(b))の量は、目的とする成型品の架橋度、反応条件(温度、時間)などにより決定されるが、経済性、反応前・反応中の取り扱いの容易性から前記樹脂組成物(A)(成分(A))100重量部に対し、0.1〜10重量部の範囲から選ばれる。好ましくは、0.2〜5重量部である。成分(b)の量が0.1重量部未満では十分なグラフト化及び架橋度を得ることができないため、機械的強度、耐熱性、耐クリープ性等の諸特性が十分向上せず、10重量部超過では溶融粘度が高くなり過ぎて、押出機に過負荷がかかり作業性が悪化したり、成形不良を起こす傾向となる。
【0064】
ラジカル発生剤(成分(c))の添加量は特に限定されるものではないが前述の成分(A)100重量部に対し、通常0.001〜5重量部であり、好ましくは0.01〜2重量部である。成分(c)が0.001重量部未満ではグラフト化反応が十分進行しないので所望のゲル分率が得られず、5重量部を超えるとラジカル発生剤による目的としない架橋反応(過酸化物架橋)が進行し、スコーチ現象の発生、表面平滑性の低下、粘度の上昇等が起こり、作業性が悪化する傾向となる。
【0065】
シラノール縮合触媒(成分(d))の添加量は特に限定されるものではないが、前述の成分(A)100重量部に対し、通常0.001〜5重量部であり、好ましくは0.005〜2重量部である。成分(d)が0.001重量部未満では十分な架橋反応が進まず、5重量部を超えると押出機内で早期架橋が起こりスコーチ現象が発生する傾向となる。
【0066】
安定剤(成分(e))の添加量は特に限定されるものではないが、前述の成分(A)100重量部に対し、通常0.001〜5重量部であり、好ましくは0.001〜3重量部である。成分(e)の添加量が0.001重量部未満では十分な安定化効果が得られず、5重量部を超えると着色等の影響が生じ、また成形不良を起こすと共に添加量の増加に見合う効果の向上は得られず経済的でなくなる傾向となる。
【0067】
成分(b)、成分(c)は成分(A)に前もって含浸させた後、グラフト反応を行なうことが好ましい。前述の様に、成分(A)の密度が規定の範囲外であると成分(b)、(c)が含浸しにくく、安定した架橋性能を得ることが出来ず好ましくない。含浸の操作方法は特に限定されるものではないが、通常、加温が可能なミキサーで60〜100℃で攪拌することにより行われる。また、成分(d)、成分(e)も前もってポリエチレン系樹脂と溶融混練した後、或いは粉状のポリエチレン系樹脂とミキサーなどを用いて混合した後、供給される。ここで、上記ポリエチレン系樹脂は成分(b)、(c)を含浸させたポリエチレン系樹脂成分(A)と同じでもよいし、異なっていてもよい。また、成分(d)、成分(e)に加えて、着色剤、防錆剤、充填剤、難燃剤等を目的に応じて含有させることができる。
【0068】
上記のグラフト反応は押出機中で行うのが好ましい。このような押出機としては、前記外層用樹脂組成物の場合と同様の押出機を用い、同様の方法でグラフト反応を行うことができる。このような押出機を用いる場合、第一供給口より成分(b)、成分(c)を含有させた成分(A)を供給し溶融混練してグラフト化反応をさせ、そして、第二供給口より予めポリエチレン系樹脂に混合された成分(d)、および成分(e)を供給する。
【0069】
外層の場合と同様に、加工条件は特に限定されるものではなく、例えばスクリュー回転数、押出量、シリンダー設定温度等は、グラフト化反応の速度を考慮して押出機内滞留時間、混練度、成形品の強度等を考慮して適宜決定されれば良く、又、残存水分や不純物等を除去するために、例えば、真空ベント機能が付与されていても良い。
【0070】
上記プロセスにて得られた樹脂成形体は水雰囲気中に曝すことにより、架橋が進行する。進行速度は水雰囲気中に曝す条件によって決まるが、室温〜200℃の温度範囲で、10分〜1週間の範囲で曝せばよい。特に好ましい条件は、常温〜130℃の温度範囲で、30分〜100時間の範囲である。シラン架橋ポリエチレンを長期間に亘って柔軟で優れた特性を発揮させるためには、ISO 10147−1994に準拠して測定したゲル分率(架橋度)が65%以上、特に65〜70%であることが好ましい。ゲル分率は、エチレン性不飽和シラン化合物のグラフト率、シラノール縮合触媒の種類、量、架橋させる際の条件(温度、時間)などを変えることにより、調整することができる。
【0071】
[補強層]
補強層としては、繊維径が10〜100μm程度のポリエステルなどの繊維をブレード状に巻いたものが好適である。この補強層は網目状に設けられ、網目の開口部を通して内層と外層とが直接に接着されるようにするのが好ましい。網目の開口としては、平均開口面積が0.5〜2mm程度のものが好適である。
【0072】
[給水給湯用樹脂管の直径、各層の厚み]
本発明の給水給湯用樹脂管は、その直径(外径)が13〜30mm、特に13〜27mm程度であることが好ましい。
【0073】
この場合、内層の厚さは0.5〜3mm、特に0.8〜1.5mm程度が好適であり、外層の厚さは0.5〜3mm、特に0.8〜1.5mm程度が好適である。内層の厚さが厚過ぎると強度はあるが、剛性が強いものになり、薄過ぎると強度が低下し、座屈しやすくなる。外層の厚さが厚過ぎると軟質化するが、全体的に厚みが厚過ぎて継ぎ手に接続できなくなり、薄過ぎると剛性が強いものとなる。
【0074】
[給水給湯用樹脂管の製造方法]
本発明の給水給湯用樹脂管を製造するには、まず、第1に前述の内層用樹脂組成物を押し出し成形し、第2にこの上に補強層を巻き付け、第3にこの補強層を前述の外層用樹脂組成物で被覆する。次いで、外層と内層に水を接触させて架橋させる。
【0075】
上記のようにして製造される本発明の給水給湯用樹脂管は、例えば、外径17.0mm、内径12.8mm、外層厚さ0.8mm、内層厚さ1.3mmで、補強層が繊維径50μmのポリエステル繊維をブレード巻き(網目の平均開口面積1mm)したものである場合、人力によって曲率半径70mm程度に容易に湾曲させることができる。
一方、同径の市販の架橋ポリエチレン管の場合、人力によって湾曲させた場合の曲率半径は通常約100mmである。
本発明の給水給湯用樹脂管は著しく容易に湾曲させ、狭いスペースでも容易に配管引き回しを行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ架橋ポリエチレンを主成分とする内層及び外層と、該内層と外層との間に介在する補強層とを有する給水給湯用樹脂管において、該内層は、
(1):メルトフローレート0.5〜60g/10分の範囲のエチレン単独もしくは10重量%未満のα−オレフィンを共重合したエチレン(共)重合体20〜80重量部と、
(2):メルトフローレート0.5〜60g/10分の範囲の10〜40重量%のα−オレフィンを共重合したエチレン/α−オレフィン共重合体20〜80重量部と、
(3):前記(2)のエチレン/α−オレフィン共重合体100重量部に対してラジカル発生剤0.01〜2.0重量部と
を溶融混練した樹脂組成物(A)と、下記一般式(I)で表されるエチレン性不飽和シラン化合物(b)とをラジカル発生剤(c)の存在下でグラフト反応させ、次いでこの反応物に、シラノール縮合触媒(d)と安定剤(e)とを混合してなるエチレン系樹脂組成物を成形した後、水の存在下に上記結合シランの加水分解反応により架橋したシラン架橋ポリエチレンよりなり、
該外層は、エチレン重合体又はエチレンと炭素数4以上のα−オレフィン類との共重合体(a)と、下記一般式(I)で表されるエチレン性不飽和シラン化合物(b)とをラジカル発生剤(c)の存在下でグラフト反応させ、次いでこの反応物に、シラノール縮合触媒(d)と安定剤(e)とを混合してなるエチレン系樹脂組成物を成形した後、水の存在下に上記結合シランの加水分解反応により架橋したシラン架橋ポリエチレンよりなる
ことを特徴とする給水給湯用樹脂管。
SiR3−n …(I)
(一般式(I)において、RはSiに直接又は酸素原子を介して結合するエチレン性不飽和炭化水素基であり、Rは炭素数1〜12のアルキル基、Yは加水分解可能な有機基であり、nは0〜2の整数である。)
【請求項2】
請求項1において、(1)及び/又は(2)の(共)重合体がメタロセン触媒を用いて(共)重合した(共)重合体であることを特徴とする給水給湯用樹脂管。
【請求項3】
請求項1又は2において、(1)及び/又は(2)のα−オレフィンが、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、及びプロピレンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンであることを特徴とする給水給湯用樹脂管。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、前記共重合体(a)のメルトフローレートが0.1〜10.0g/10分、密度が0.85〜0.96g/cmであることを特徴とする給水給湯用樹脂管。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、該外層の密度が0.850〜0.900g/cmであり、硬度(JIS K 6253)が60〜90であることを特徴とする給水給湯用樹脂管。

【公開番号】特開2010−144907(P2010−144907A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−325844(P2008−325844)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】