説明

給水装置用エア引き込み弁および給水装置

【課題】水槽に貯めた水をポンプで管路に吸い上げて給水する給水装置で、ポンプを停止したときに、管路の先端からの給水を安価な構成で自動的に止めることができるようにすることである。
【解決手段】水槽1の水をポンプ2で吸い上げるホース3の途中へエアを引き込むエア引き込み弁10を設けることにより、ポンプ2が停止したときに、水槽1の水をホース3へ吸い上げるサイホン作用を遮断し、管路の先端からの給水を安価な構成で自動的に止めることができるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水槽に貯めた水をポンプで管路に吸い上げて給水する給水装置に用いられる給水装置用エア引き込み弁と給水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、庭やプランタ等に植えた植物に散水用の給水をする場合は、水道の蛇口にホースを接続して、ホースの先端から給水している。水道の蛇口またはホースの途中に、タイマで作動するタイマ付きバルブを取り付け、所望の時刻に所望の時間だけ自動的に散水できるようにしたものもある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、近くに水道の蛇口がないベランダ等で、プランタや植木鉢に植えた植物に散水用の給水をする場合は、水を入れた如雨露等の給水容器をベランダ等に持ち運び、それぞれの植物に散水するようにしている。しかしながら、このような散水方法は、重い水を持ち運ぶのに労力を要し、特に、多くの植物が植えられている場合は、一度に少しずつの水しか持ち運ぶことができないので、大変な労力を要する。
【0004】
このように水を供給可能な水道の蛇口が近くにない場合に、水を持ち運ぶことなく散水用等の給水をする手段としては、水槽に貯めた水をポンプでホース等の管路に吸い上げて、管路の先端から給水する給水装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4359937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した水槽に貯めた水をポンプで管路に吸い上げて給水する給水装置は、水を供給可能な水道の蛇口が近くにない場合でも、楽に給水することができるが、ホース等の管路の開口した先端が水槽の水位よりも低い位置にあると、ポンプを停止しても、サイホン作用によって水槽内の水が管路に吸い上げられ、管路の先端からの給水を止めることができない問題がある。
【0007】
このような水槽内の水を管路へ吸い上げるサイホン作用による管路の先端からの給水を止めるためには、管路の途中に電磁弁等のバルブを設けることが考えられるが、バルブを電磁弁等の自動バルブとする場合は、給水装置が高価なものとなる。安価な手動バルブとする場合は、バルブの開閉に余分な手間がかかる。また、ポンプをタイマで作動するタイマ付きポンプとし、所望の時刻に所望の時間だけ自動的に給水できるようにする場合は、手動バルブでは対応することができず、自動バルブとする場合も、タイマ付きポンプと連動させる必要があり、給水装置がより高価なものとなる。
【0008】
そこで、本発明の課題は、水槽に貯めた水をポンプで管路に吸い上げて給水する給水装置で、ポンプを停止したときに、管路の先端からの給水を安価な構成で自動的に止めることができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明に係る給水装置用エア引き込み弁は、水槽に貯めた水をポンプで管路に吸い上げて、前記管路の先端から給水する給水装置に用いられ、前記管路の途中に設けられて、前記ポンプが停止したときに、前記管路へエアを引き込む構成を採用した。
【0010】
すなわち、水槽に貯めた水をポンプで管路に吸い上げて、管路の先端から給水する給水装置の管路の途中に、ポンプが停止したときに、管路へエアを引き込むエア引き込み弁を設けることにより、管路の途中へ引き込んだエアによって、水槽内の水を管路へ吸い上げるサイホン作用を遮断し、管路の先端からの給水を安価な構成で自動的に止めることができるようにした。
【0011】
前記エア引き込み弁としては、筒状の弁箱の側部または一方の底部に、前記管路の上流側に接続される給水口と管路の下流側に接続される排水口を設け、他方の底部にエア孔を設けて、前記弁箱に収納した弁体を、前記給水口から供給される水の圧力で前記他方の底部側へ移動させて、前記エア孔の周囲の弁座に押し付け、前記ポンプが停止して前記弁箱内の水圧がなくなったときに、前記弁体が前記エア孔からエアを引き込むように前記一方の底部側へ移動するものを採用することができる。
【0012】
すなわち、ポンプが停止して弁箱内の水圧がなくなると、弁箱内の水が給水口や排水口から重力によって流出するとともに、弁体がエア孔からエアを引き込むように弁座から離脱するように移動し、外部のエアがエア孔から弁箱内に引き込まれて弁箱内の水密状態が解消され、サイホン作用が自然に遮断されるので、別途の駆動源を設けることなく、管路の先端からの給水を安価な構成で自動的に止めることができる。
【0013】
前記弁箱のエア孔に嵌挿され、前記弁箱の筒軸方向にスライド移動する弁軸を設け、この弁軸に前記弁体を設けることにより、弁体の移動をスムーズに案内することができるとともに、エア孔から弁箱内への異物の侵入を抑制することができる。
【0014】
前記弁体を、前記弁軸に外嵌したOリングとすることにより、安価に入手でき、接着剤等を用いずに弁軸に取り付けることができるので、簡単に弁体を形成することができる。なお、一般的に入手可能なゴムパッキン等のシール部材を弁体として用いてもよい。
【0015】
前記弁箱内へ嵌挿され弁軸の端部に、前記筒状の弁箱の横断面を覆う遮蔽板を設け、この遮蔽板を前記弁軸と一緒に前記筒軸方向へ移動させることにより、ポンプの作動開始時に、給水口からの水の水圧を遮蔽板で受けて、弁軸の弁体を速やかに弁座に押し付け、エア孔からの水漏れを抑制するとともに、ポンプの停止時に、弁箱から重力で流出する水の流れに乗せて遮蔽板をエア孔と反対側へ移動させ、弁軸の弁体を速やかに弁座から離脱させることができる。
【0016】
前記遮蔽板に、表裏に貫通する貫通孔を設けることにより、ポンプの停止時に、遮蔽板をエア孔と反対側へより速やかに移動させることができる。この理由は、ポンプの停止直後には、弁箱内の水は遮蔽板の両側に存在するが、エア孔側に存在する水がこの貫通孔を通って流出側へ抜けるときの水流が、遮蔽板の移動を促進するためである。なお、この貫通孔はあまり大きいと効果がなく、直径1.5〜2.5mmの範囲としたときに、遮蔽板の移動を促進する効果が最も大きくなり、より速やかに弁箱内へエアを引き込むことができる。
【0017】
前記遮蔽板の前記一方の底部側への移動位置を前記給水口よりも前記他方の底部側の位置に規制する手段を設けることにより、ポンプが再び作動されたときに、給水口からの水圧で遮蔽板をエア孔が設けられた底部側へ速やかに移動させ、エア孔からの水漏れを抑制することができる。
【0018】
また、本発明に係る給水装置は、上述したいずれかの給水装置用エア引き込み弁を用いた構成を採用した。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る給水装置用エア引き込み弁は、水槽に貯めた水をポンプで管路に吸い上げて、管路の先端から給水する給水装置の管路の途中に、ポンプが停止したときに、管路へエアを引き込むようにしたので、水槽内の水を管路へ吸い上げるサイホン作用を遮断し、管路の先端からの給水を安価な構成で自動的に止めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1の実施形態の給水装置を模式的に示す構成図
【図2】図1の水槽の近傍を示す縦断面図
【図3】(a)は図2のエア引き込み弁を示す縦断面図、(b)は(a)のIIIb−IIIb線に沿った断面図
【図4】図3(a)のエア孔を開放した状態を示す縦断面図
【図5】第2の実施形態の給水装置の水槽の近傍を示す縦断面図
【図6】(a)は図5のエア引き込み弁を示す縦断面図、(b)は(a)のエア孔を開放した状態を示す縦断面図
【図7】図6のエア引き込み弁の変形例を示す縦断面図、(b)は(a)のエア孔を開放した状態を示す縦断面図
【図8】第3の実施形態の給水装置の水槽の近傍を示す縦断面図
【図9】(a)は図8のエア引き込み弁を示す縦断面図、(b)は(a)のエア孔を開放した状態を示す縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。図1乃至図4は、第1の実施形態を示す。この給水装置は、ベランダのプランタ等に植えられた植物に散水する散水用のものであり、図1に示すように、水槽1に貯められた水を、投げ込み式のポンプ2で管路としてのホース3に吸い上げて、ホース3から散水するようになっている。ホース3には分岐管継手4によって複数の分岐ホース3aが接続され、各分岐ホース3aの先端に、プランタPの土に差し込まれる複数の差し込み散水ノズル5aが取付けられている。また、1つの分岐ホース3aの先端には、手持ち散水ノズル5bも取付け可能とされている。各差し込み散水ノズル5aの先端は、水槽1の水位よりも低い位置で開口している。
【0022】
図2に示すように、前記ポンプ2はタイマ2aを備えており、その作動時刻と作動時間を任意に設定できるようになっている。したがって、このタイマ2aを設定することにより、所望の時刻に所望の時間だけポンプ2を作動して、留守中等でも自動的に散水することができる。また、水槽1の上端縁には、ホース3を係止する係止具6が取付けられ、このホース3の係止部に、後述する弁箱11を縦置きとされたエア引き込み弁10が、ホース3の途中に介在するように取付けられている。水槽1の中に垂らされた上流側のホース3は、弁箱11の下向きの底部に接続され、水槽1の外に垂らされた下流側のホース3は、弁箱11の側部に接続されている。なお、係止具6を省略して、エア引き込み弁10の上流側と下流側のホース3を、水槽1の中と外に垂らすようにしてもよい。
【0023】
図3(a)、(b)に示すように、前記エア引き込み弁10は、下向きの底部に上流側のホース3が接続される給水口11aが設けられ、側部に下流側のホース3が接続される排水口11bが設けられた縦置き円筒状の弁箱11と、弁箱11の上向きの底部を覆い、中心にエア孔12aが設けられた弁蓋12と、エア孔12aに上下方向へスライド自在に嵌挿された弁軸13と、弁軸13に外嵌され、弁軸13と一緒に昇降してエア孔12aの周囲の弁座12bに押し当てられる弁体としてのOリング14とで基本的に構成されている。弁箱11、弁蓋12および弁軸13は、いずれも塩化ビニル樹脂等の合成樹脂で形成されている。
【0024】
前記弁箱11の底部の給水口11aは下向きに開口するように、側部の排水口11bは水平方向に開口するように取付けられている。また、底部の給水口11aには、弁箱11内への異物の侵入を防止するためのステンレス鋼製のメッシュフィルタ15が取り付けられている。このメッシュフィルタ15は、中央部に上向きの凸部15aが形成された形状とされている。
【0025】
前記弁軸13は、エア孔12aとの間にスライド移動を可能とする隙間を開けて嵌挿され、弁箱11内へ嵌挿された下端に、弁箱11の横断面を覆う遮蔽板16が一体に形成されている。この遮蔽板16と弁箱11の内周面との間にも、スライド移動を可能とする隙間が開けられている。これらの隙間は、図面上では判別できない程度のわずかな隙間である。また、弁軸13には、軸方向に延びるエア引き込み用の凹溝13aが設けられ、その上端部には、後述するように下降したときにエア孔12aを覆う鍔部13bが設けられており、その上側に、重力による弁軸13の下降を促進するための錘17が装着されている。
【0026】
前記遮蔽板16には、上下に貫通する貫通孔16aが設けられるとともに、その外周部の上下面に、昇降をスムーズにするために面取り16bが施されている。貫通孔16aの直径は1.5〜2.5mmとされており、後述するポンプ2の停止時に、遮蔽板16が一体に形成された弁軸13の下降を促進する。
【0027】
前記Oリング14は、弁軸13の遮蔽板16の上側に形成された大径部13cに当接されるように、環状溝13dに嵌め込まれて装着されている。また、弁座12bは、エア孔12aの孔縁に形成された孔径が狭まるテーパ面とされ、そのテーパ角度は10〜20°の範囲に設定されている。テーパ角度が10°未満では、Oリング14が弁座12bにくい込み過ぎて、離脱しにくくなる恐れがあり、テーパ角度が20°を超えると、シール性が低下する恐れがあるからである。
【0028】
前記ポンプ2が作動されると、水槽1からホース3に吸い上げられる水が給水口11aから弁箱11に流入し、図3(a)に示したように、遮蔽板16の下側に負荷されるポンプ2からの水圧によって、Oリング14が弁軸13と一緒に押し上げられ、弁座12bに押し当てられるOリング14によってエア孔12aが閉塞される。したがって、弁箱11に流入した水はそのまま排水口11bから下流側のホース3に排出され、各散水ノズル5aから、または散水ノズル5a、5bから散水される。遮蔽板16は、Oリング14が弁座12bに押し当てられる前に、弁箱11に流入する水がエア孔12aから漏れる水漏れを抑制する。
【0029】
図4は、前記ポンプ2を停止した状態を示す。ポンプ2の停止によって弁箱11内の水圧がなくなると、弁箱11内の水は主として下向きに開口する給水口11aから重力によって流出し、水槽1内に戻される。この水の流出に伴って遮蔽板16が下降して、弁軸13と一緒に下降するOリング14が弁座12bから離脱し、外部のエアがエア孔12aから弁箱11内に引き込まれる。したがって、弁箱11内の水密状態が解消されてサイホン作用が自然に遮断され、散水が自動的に止められる。このとき、遮蔽板16は弁箱11の底部近くまで下降し、給水口11aに取り付けられたメッシュフィルタ15の凸部15aに係止される。このため、水が流出する給水口11aが遮蔽板16で閉塞されることはない。また、エア孔12aは弁蓋12から突出する弁軸13の上端部の鍔部13aで覆われるので、エア孔12aから異物が侵入する恐れもない。なお、鍔部13bを弁蓋12に係止して、遮蔽板16の下降位置を弁箱11の底部近くに規制するようにしてもよい。
【0030】
前記ポンプ2を再び作動したときは、図3(a)に示したように、水圧で遮蔽板16と一緒に上昇するOリング14が弁座12bに押し当てられ、再び散水が開始される。第1の実施形態のエア引き込み弁10は、弁箱11の底近くまで遮蔽板16の昇降ストローク領域に利用できるので、後述する第2の実施形態のものよりも、弁箱11の高さ寸法をコンパクトに設計することができる。
【0031】
図5および図6は、第2の実施形態を示す。この給水装置も第1の実施形態のものと同様の散水用のものであり、図5に示すように、係止具6で係止され、水槽1の中に垂らされた上流側のホース3がエア引き込み弁10の縦置きの弁箱11の側部に接続され、水槽1の外に垂らされた下流側のホース3が、弁箱11の下向きの底部に接続されている。
【0032】
図6(a)に示すように、このエア引き込み弁10は、縦置き円筒状の弁箱11の側部に上流側のホース3が接続される給水口11aが設けられ、底部に下流側のホース3が接続される排水口11bが設けられている点と、遮蔽板16の下降位置を側部の給水口11aよりも上方に規制する規制手段として、弁箱11の内周面に遮蔽板16の外周部を側部の給水口11aの直上で係止する段差部11cが形成されている点とが第1の実施形態のものと異なり、弁箱11の高さ寸法が第1の実施形態のものよりも高くなっている。その他の部分は、第1の実施形態のものと同じであり、弁蓋12にエア孔12aが設けられ、エア孔12aにスライド自在に挿通された弁軸13に、弁体としてのOリング14が外嵌されており、ポンプ2が作動されると、給水口11aから流入する水の水圧によって、Oリング14がエア孔12aの周囲の弁座12bに押し当てられる。また、遮蔽板16には貫通孔16aが設けられ、弁軸13には、凹溝13aと鍔部13bが設けられるとともに錘17が装着されている。
【0033】
図6(b)に示すように、この実施形態では、ポンプ2の停止によって弁箱11内の水圧がなくなると、弁箱11内の水が給水口11aと排水口11bから重力によって流出し、遮蔽板16が給水口11aの直上まで下降して、Oリング14が離脱したエア孔12aから外部のエアが弁箱11内に引き込まれ、サイホン作用が遮断されて、散水が自動的に止められる。
【0034】
図7(a)、(b)は、第2の実施形態のエア引き込み弁10の変形例を示す。この変形例は、前記遮蔽板16の下降位置を給水口11aよりも上方に規制する手段として、弁軸13の上端部に設けられた鍔部13bが弁蓋12の上面に係止されるようになっている点が異なる。その他の部分は、第2の実施形態のものと同じであり、鍔部13bの上側には錘17が装着されている。なお、遮蔽板16の下降位置を規制する手段としては、弁軸13の上部にEリングやCリング等の止め輪を装着し、この止め輪を弁蓋12の上面に係止する手段を採用することもできる。
【0035】
上述した第1および第2の実施形態では、弁軸13に錘17を装着するとともに、遮蔽板16に直径1.5〜2.5mmの貫通孔16aを設けたが、これらの錘17や貫通孔16aを省略するか、貫通孔16aの直径を1.5〜2.5mmの範囲外としても、ポンプ2が停止したときに弁軸13を下降させて、エア孔12aから弁箱11内へエアを引き込むことができる。
【0036】
図8および図9は、第3の実施形態を示す。この給水装置も散水用のものであり、図8に示すように、係止具6で係止され、水槽1の中に垂らされた上流側のホース3がエア引き込み弁10の横置きの弁箱11の一方の底部に接続され、水槽1の外に垂らされた下流側のホース3が、弁箱11の側部に下向きに接続されている。
【0037】
図9(a)に示すように、このエア引き込み弁10は、弁箱11が横置き円筒状とされており、一方の底部に上流側のホース3が接続される水平方向に開口した給水口11aが取り付けられ、下向きの側部に下流側のホース3が接続される下向きに開口した排水口11bが設けられるとともに、他方の底部を覆う弁蓋12の中心にエア孔12aが設けられている。給水口11aには、弁箱11の内方へ突出する凸部15aが形成されたステンレス鋼製のメッシュフィルタ15が取り付けられている。
【0038】
前記エア孔12aには、左右方向へスライド自在に弁軸13が嵌挿され、エア孔12aの周囲の弁座12bに押し当てられるOリング14が、弁軸13に外嵌されている。弁軸13は、エア孔12aとの間にスライド移動を可能とする隙間を開けて嵌挿され、弁箱11内へ嵌挿された先端に、弁箱11の横断面を覆う遮蔽板16が一体に形成されるとともに、弁蓋12から突出する基端に、後述するように一方の底部側へ移動したときにエア孔12aを覆う鍔部13bが設けられている。また、弁軸13には軸方向に延びるエア引き込み用の凹溝13aが設けられ、遮蔽板16には直径1.5〜2.5mmの貫通孔16aが設けられるとともに、その外周部の上下面に、面取り16bが施されている。
【0039】
前記Oリング14は、弁軸13の遮蔽板16の横に形成された大径部13cに当接されるように、環状溝13dに嵌め込まれて装着されている。また、弁座12bは、エア孔12aの孔縁に形成された孔径が狭まるテーパ面とされ、そのテーパ角度は10〜20°の範囲に設定されている。
【0040】
前記ポンプ2が作動されると、水槽1からホース3に吸い上げられる水が給水口11aから弁箱11に流入し、図9(a)に示したように、遮蔽板16の左側に負荷されるポンプ2からの水圧によって、Oリング14が弁軸13と一緒に右方へ移動し、弁座12bに押し当てられるOリング14によってエア孔12aが閉塞される。したがって、弁箱11に流入した水はそのまま排水口11bから下流側のホース3に排出され、散水が開始される。遮蔽板16は、Oリング14が弁座12bに押し当てられる前に、弁箱11に流入する水がエア孔12aから漏れる水漏れを抑制する。
【0041】
図9(b)は、前記ポンプ2を停止した状態を示す。ポンプ2の停止によって弁箱11内の水圧がなくなると、弁箱11内の水は給水口11aと排水口11bから重力によって流出し、この水の流出に伴って遮蔽板16が左方へ移動して、Oリング14が弁座12bから離脱し、外部のエアがエア孔12aから弁箱11内に引き込まれる。したがって、弁箱11内の水密状態が解消されてサイホン作用が自然に遮断され、散水が自動的に止められる。このとき、遮蔽板16は弁箱11の給水口11a近くまで移動し、給水口11aに取り付けられたメッシュフィルタ15の凸部15aに係止される。このため、水が流出する給水口11aが遮蔽板16で閉塞されることはない。また、エア孔12aは弁軸13の鍔部13bで覆われるので、エア孔12aから異物が侵入する恐れもない。
【0042】
上述した各実施形態では、弁軸13にエア引き込み用の凹溝13aを設けたが、これらの凹溝13aは省略することもできる。この場合は、弁軸13とエア孔12aの間の隙間からのみ、エアが引き込まれる。
【0043】
上述した各実施形態では、エア引き込み弁の弁箱を円筒状のものとし、給水口と排水口を底部と側部に分けて設けたが、弁箱は多角筒状のものとすることもでき、給水口と排水口は、両方を底部または側部に設けることもできる。また、給水口と排水口の両方を、水平方向またはこれよりも下向きに開口させたが、これらの一方または両方を水平方向よりも上向きに開口させても、ポンプが停止したときに、エア孔からエアを引き込むことができる。
【0044】
上述した各実施形態では、ポンプを投げ込み式でタイマ付きのものとしたが、ポンプは水槽の外に置かれる外置き式のものとすることもでき、手動でスイッチを入切するものとしてもよい。
【0045】
上述した各実施形態では、給水装置を植物への散水用のものとしたが、本発明に係る給水装置は、散水用のものに限定されることはなく、例えば、水道の蛇口のないキャンプ場や、災害等で長期断水状態となった場所等で、各種用途の水を給水するものとすることもできる。
【符号の説明】
【0046】
1 水槽
2 ポンプ
2a タイマ
3 ホース
3a 分岐ホース
4 分岐管継手
5a、5b 散水ノズル
6 係止具
10 エア引き込み弁
11 弁箱
11a 給水口
11b 排水口
11c 段差部
12 弁蓋
12a エア孔
12b 弁座
13 弁軸
13a 凹溝
13b 鍔部
13c 大径部
13d 環状溝
14 Oリング
15 メッシュフィルタ
15a 凸部
16 遮蔽板
16a 貫通孔
16b 面取り
17 錘

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水槽に貯めた水をポンプで管路に吸い上げて、前記管路の先端から給水する給水装置に用いられ、前記管路の途中に設けられて、前記ポンプが停止したときに、前記管路へエアを引き込む給水装置用エア引き込み弁。
【請求項2】
前記エア引き込み弁を、筒状の弁箱の側部または一方の底部に、前記管路の上流側に接続される給水口と管路の下流側に接続される排水口を設け、他方の底部にエア孔を設けて、前記弁箱に収納した弁体を、前記給水口から供給される水の圧力で前記他方の底部側へ移動させて、前記エア孔の周囲の弁座に押し付け、前記ポンプが停止して前記弁箱内の水圧がなくなったときに、前記弁体が前記エア孔からエアを引き込むように前記一方の底部側へ移動するものとした請求項1に記載の給水装置用エア引き込み弁。
【請求項3】
前記弁箱のエア孔に嵌挿され、前記弁箱の筒軸方向にスライド移動する弁軸を設け、この弁軸に前記弁体を設けた請求項2に記載の給水装置用エア引き込み弁。
【請求項4】
前記弁体を、前記弁軸に外嵌したOリングとした請求項3に記載の給水装置用エア引き込み弁。
【請求項5】
前記弁箱内へ嵌挿され弁軸の端部に、前記筒状の弁箱の横断面を覆う遮蔽板を設け、この遮蔽板を前記弁軸と一緒に前記筒軸方向へ移動させるようにした請求項3または4に記載の給水装置用エア引き込み弁。
【請求項6】
前記遮蔽板に、表裏に貫通する貫通孔を設けた請求項5に記載の給水装置用エア引き込み弁。
【請求項7】
前記遮蔽板の前記一方の底部側への移動位置を前記給水口よりも前記他方の底部側の位置に規制する手段を設けた請求項5または6に記載の給水装置用エア引き込み弁。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の給水装置用エア引き込み弁を用いた給水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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