説明

給湯システム

【課題】蓄電池(11)から供給された電力を利用してヒートポンプ給湯機(5)を運転する給湯システム(1)で、蓄電池(11)の蓄電池本体(12)やパワーコンディショナ(13)を冷媒で冷却する際の結露を防止して電気絶縁性の低下を防止する。
【解決手段】冷媒回路(20)の放熱行程後の冷媒と蓄電池(11)とを熱交換させて蓄電池(11)を冷却する熱回収熱交換器(14)を設け、蓄電池(11)の冷えすぎを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電池から供給された電力を利用して給湯装置を運転できるように構成された給湯システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、貯湯タンク内で温水を生成する給湯装置が知られている。
【0003】
特許文献1に開示の給湯装置は、ヒートポンプ式の給湯機である。この給湯装置は、冷媒回路を有する熱源ユニットと、貯湯タンクを有するタンクユニットとを備えている。給湯装置の貯湯運転(沸き上げ運転)時には、冷媒回路の圧縮機が運転されて冷凍サイクルの動作が行われる。貯湯タンク側の水は、冷媒回路で放熱する冷媒によって加熱される。これにより、貯湯タンク内では、所定温度の温水が生成される。貯湯タンク内に溜められた温水は、浴槽やシャワー等の利用対象へ適宜供給される。
【0004】
また、特許文献1の給湯装置は、電気料金が廉価となる深夜時間帯(午後11時から午前7時まで)に運転されて貯湯タンク内に温水を貯めるように構成されている。これにより、給湯装置の運転に要するコストが抑えられている。
【0005】
更に、特許文献1の給湯装置には、給湯装置に電力を供給する手段として、蓄電池が用いられている。この蓄電池を用いることで、深夜時間帯に電力を蓄電し、この電力を利用して日中に給湯装置で沸き上げ運転を行うことができる。こうすることにより、夜間の貯湯量が不足しても昼間に蓄電池で沸き上げ運転を行えるので、システムの小型化を図ることができる。
【0006】
一方、特許文献1の給湯装置では、蓄電池の温度管理のため、冷媒回路の蒸発器を利用して蓄電池を冷却するようにしている。そして、蓄電池の熱を利用して冷媒を蒸発させ、蓄電池の温度が上昇しすぎて放熱ロスによる効率低下が生じるのを防止できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−164124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、冷媒回路の蒸発器で蓄電池を冷却する場合、蒸発器の温度が低いために蓄電池の本体やパワーコンディショナ(電力変換器)が結露するおそれがある。そして、蓄電池が結露すると、電気絶縁性が低下してしまう。
【0009】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、蓄電池から供給された電力を利用して給湯装置を運転することができるように構成された給湯システムで、蓄電池(11)の蓄電池本体(12)やパワーコンディショナ(13)を冷媒で冷却する際の結露を防止して電気絶縁性の低下も防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明は、冷媒回路(20)と該冷媒回路(20)の放熱器(22)で加熱される温水を貯湯する貯湯タンク(40)とを有するヒートポンプ給湯機(5)と、夜間に蓄えた電力を該ヒートポンプ給湯機(5)に供給する蓄電池(11)とを備えた給湯システムを前提としている。
【0011】
そして、この給湯システムは、上記冷媒回路(20)における放熱行程後の冷媒と上記蓄電池(11)とが熱交換を行う熱交換部(14)を備えていることを特徴としている。
【0012】
この第1の発明では、蓄電池(11)から放出される熱が、冷媒回路(20)の放熱行程後の冷媒で回収される。このことにより、放熱行程後の冷媒が加熱され、モリエル線図(図2参照)において蒸発行程のエンタルピ差が小さくなるので、必要蒸発能力が小さくなる。また、蓄電池(11)が冷媒により冷却される際の温度は蒸発行程の冷媒を用いるよりも高くなる。
【0013】
第2の発明は、第1の発明において、上記蓄電池(11)の充電中に、常に上記ヒートポンプ給湯機(5)の沸き上げ運転を行うように該ヒートポンプ給湯機(5)を能力制御する制御部(70)を備えていることを特徴としている。
【0014】
この第2の発明では、蓄電池(11)の充電中には常にヒートポンプ給湯機(5)の沸き上げ運転(貯湯運転)を行うようにヒートポンプ給湯機(5)が能力制御される。蓄電池(1)の充電中に沸き上げ運転を行わない期間があると、蓄電池(11)の排熱を冷媒で熱回収できない期間が生じることになるが、この発明では、運転中に運転中に熱回収を行えない期間が生じなくなる。
【0015】
第3の発明は、第2の発明において、上記制御部(70)は、夜間の蓄電池(11)の充電運転とヒートポンプ給湯機(5)の沸き上げ運転を同時に終了させるように構成されていることを特徴としている。
【0016】
この第3の発明では、夜間の蓄電池(11)の充電運転とヒートポンプ給湯機(5)の沸き上げ運転が同時に終了する。したがって、第2の発明と同様に、運転中に運転中に熱回収を行えない期間が生じないようにすることができる。
【0017】
第4の発明は、第1から第3の発明の何れか1つにおいて、上記蓄電池(11)が、蓄電池本体(12)と電力変換器(13)とを含むことを特徴としている。
【0018】
この第4の発明では、蓄電池本体(12)と電力変換器(13)の両方からから放出される熱を冷凍サイクルの放熱行程後の冷媒で回収し、冷凍サイクルの動作を効率よく行うことができる。
【0019】
第5の発明は、第1から第4の発明の何れか1つにおいて、上記冷媒回路(20)の冷媒が二酸化炭素であり、該冷媒を超臨界圧力に圧縮して冷凍サイクルを行うように構成されていることを特徴としている。
【0020】
この第5の発明では、高圧圧力が超臨界圧力の冷凍サイクルにおいて、放熱行程後の高圧冷媒により蓄電池(11)の熱が回収される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、冷媒回路(20)の必要蒸発能力が小さくなるので、蒸発温度を高くして冷凍サイクルのCOP(成績係数)を向上させることができるし、ファン風量を少なくしてシステムの効率を高めることもできる。また、蒸発器のサイズを小さくすることにより、装置のコストダウンや小型化を実現することもできる。
【0022】
また、蓄電池(11)が放熱後の冷媒で冷却されるため、従来のように冷媒回路(20)の蒸発器で冷却するものと比較すると、蓄電池(11)が冷えすぎるのを防止できる。したがって、蓄電池(11)の結露による電気絶縁性の低下を防止することが可能となる。
【0023】
上記第2の発明によれば、蓄電池(11)の充電中には常にヒートポンプ給湯機(5)の沸き上げ運転を行うようにヒートポンプ給湯機(5)を能力制御して、運転中に熱回収を行えない期間が生じないようにしているので、システムの運転効率を高めることができる。
【0024】
上記第3の発明によれば、夜間の蓄電池(11)の充電運転とヒートポンプ給湯機(5)の沸き上げ運転が同時に終了するようにして、運転中に運転中に熱回収を行えない期間が生じないようにしているので、第2の発明と同様にシステムの運転効率を高めることができるし、深夜電力の時間帯を無駄なく利用できる。
【0025】
上記第4の発明によれば、蓄電池本体(12)と電力変換器(13)の両方からから放出される熱を冷凍サイクルの放熱行程後の冷媒で回収し、冷凍サイクルの動作を行うことができる。したがって、蓄電池本体(12)の放熱ロスを少なくできることに加えて、電力変換器(13)の変換ロスを少なくして、無駄の少ない熱回収を行うことができる。
【0026】
上記第5の発明によれば、高圧圧力が超臨界圧力の冷凍サイクルにおいて、放熱行程後の二酸化炭素冷媒で蓄電池(11)の熱が回収されるので、冷媒がフラッシュせず、膨張機構(23)を確実に液シールすることができる。したがって、膨張機構(23)の動作を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る給湯システムの回路構成図である。
【図2】図2は、図1の給湯システムにおける冷凍サイクル動作を示すモリエル線図である。
【図3】図3は、夜間の熱回収運転の動作を示すフローチャートである。
【図4】図4は、深夜時間帯における蓄電池の充電運転とヒートポンプ給湯機の沸き上げ運転の時間的な関係を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0029】
図1は、本実施形態に係る給湯システム(1)の回路構成図である。この給湯システム(1)は、冷媒回路(20)を有する熱源ユニット(10)と、貯湯タンク(40)を有するタンクユニット(30)とを備えている。そして、上記熱源ユニット(10)とタンクユニット(30)を温水回路(50)で接続することにより、ヒートポンプ給湯機(5)が構成されている。
【0030】
上記冷媒回路(20)は、圧縮機(21)と放熱器(22)と膨張機構(23)と蒸発器(24)とが順に接続された閉回路である。蒸発器(24)の近傍には、冷媒と空気を熱交換させるための蒸発器ファン(25)が設けられている。また、圧縮機(21)は、電動機の回転速度をインバータ制御することができる可変容量圧縮機である。
【0031】
この冷媒回路(20)には、冷媒として二酸化炭素が充填されている。また、この冷媒回路(20)では、冷媒の高圧圧力が超臨界圧力になるように圧縮機(21)で圧縮される。つまり、冷媒回路(20)では、高圧圧力が超臨界圧力になる冷凍サイクル(以下、超臨界冷凍サイクルという)が行われる。
【0032】
上記熱源ユニット(10)には、ヒートポンプ給湯機(5)に電力を供給する手段として蓄電池(11)が設けられている。この給湯システム(1)は、熱源ユニット(10)及びタンクユニット(30)に接続された商用電源(図示せず)により駆動することができる一方、夜間に商用電源から蓄電池(11)に蓄えた電力を昼間にヒートポンプ給湯機(5)に供給して運転することもできるようになっている。
【0033】
上記蓄電池(11)は、蓄電池本体(12)と、商用電力を蓄電する際のAC/DC変換や蓄電池本体(12)から出力する際のDC/AC変換を行うパワーコンディショナ(電力変換器)(13)とを備えている。この蓄電池(11)には、蓄電池本体(12)とパワーコンディショナ(13)の両方に接するように配置された熱回収熱交換器(熱交換部)(14)が設けられている。この熱回収熱交換器(14)は、上記冷媒回路(20)の放熱器(22)と膨張機構(23)の間に接続され、冷媒回路(20)における放熱行程後の冷媒と蓄電池(11)(蓄電池本体(12)及びパワーコンディショナ(13))とが熱交換を行うように構成されている。
【0034】
上記貯湯タンク(40)は、該貯湯タンク(40)に市水を供給するための吸水口(41)と、該貯湯タンク(40)から温水を出湯するための出湯口(42)と、該貯湯タンク(40)に温水を注水するための第1注湯口(43)及び第2注湯口(44)を備えている。この貯湯タンク(40)には、熱源ユニット(10)で生成した温水を貯湯タンク(40)に供給する上記温水回路(50)と、貯湯タンク(40)内の温水をシャワーや浴槽などの利用対象へ供給するための出湯回路(60)とが接続されている。
【0035】
上記温水回路(50)は、貯湯タンク(40)と、温水ポンプ(51)と、上記放熱器(22)と、第1三方弁(52)とが接続された閉回路である。上記放熱器(22)は、冷媒回路(20)の冷媒が流れる冷媒流路(22a)と、温水回路(50)の温水が流れる温水流路(22b)とを有し、冷媒と温水が熱交換して温水が加熱されるように、例えばプレート熱交換器で構成されている。
【0036】
この温水回路(50)では、貯湯タンク(40)の下端の温水ポート(45)が温水ポンプ(51)を介して放熱器(22)における温水流路(22b)の下端の入口ポート(22c)に接続されている。温水流路(22b)の上端の出口ポート(22d)は、第1三方弁(52)の第1ポート(P1)に接続されている。第1三方弁(52)の第2ポート(P2)と第3ポート(P3)は、それぞれ、貯湯タンク(40)の第1注湯口(43)と第2注湯口(44)に接続されている。以上の構成により、冷媒回路(20)の放熱器(22)で加熱された温水が貯湯タンク(40)に貯湯される。
【0037】
上記出湯回路(60)では、出湯口(42)に接続された出湯管(62)が第2三方弁(63)を介してシャワー口などの利用対象(61)に接続されている。貯湯タンク(40)の吸水口(41)には給水管(64)が接続されている。この給水管(64)は、途中で分岐した分岐管(65)により上記第2三方弁(63)に接続されている。この分岐管(65)を流れる水を出湯管(62)の温水に混ぜることにより、出湯温度が調整される。
【0038】
上記熱源ユニット(10)には、この給湯システム(1)の運転動作を制御するコントローラ(70)(制御部)が設けられている。このコントローラ(70)は、冷媒回路(20)の圧縮機(21)や膨張機構(23)の制御、温水回路(50)の温水ポンプ(51)や第1三方弁(52)の制御、さらには出湯回路(60)の第2三方弁(63)の制御などを行う。
【0039】
また、コントローラ(70)は、上記蓄電池(11)の充電中に、常に上記ヒートポンプ給湯機(5)の沸き上げ運転を行うようにヒートポンプ給湯機(5)の能力を制御する。具体的には、充電時間よりも沸き上げ運転時間が短くならないように圧縮機(21)の能力を調整して冷媒回路(20)の運転を行う。さらに、コントローラ(70)は、夜間の蓄電池(11)の充電運転とヒートポンプ給湯機(5)の沸き上げ運転を同時に終了させるように制御を行う。
【0040】
−運転動作−
次に、本実施形態の給湯システム(1)の運転動作について、図2のモリエル線図を参照して説明する。沸き上げ運転(貯湯運転)は、通常は電気料金が廉価となる深夜時間帯に行われる。
【0041】
熱源ユニット(10)において圧縮機(21)を起動すると、蒸発器(24)から圧縮機(21)に吸入されたA点の冷媒が圧縮されて高圧圧力(超臨界圧力)になり、B点において圧縮機(21)から吐出される。圧縮機(21)から吐出された冷媒は、放熱器(22)に流入して温水回路(50)の水(温水)に放熱し、C点まで冷却される。冷却されたC点の冷媒は熱回収熱交換器(14)を通過する。
【0042】
このとき、蓄電池(11)で充放電が行われていると、蓄電池本体(12)が発熱している。また、蓄電池(11)での充電時はパワーコンディショナ(13)でAC/DC変換が行われ、蓄電池(11)での放電時はパワーコンディショナ(13)でDC/AC変換が行われるので、パワーコンディショナ(13)も発熱している。したがって、冷媒は、熱回収熱交換器(14)を通過するときに蓄電池本体(12)及びパワーコンディショナ(13)から熱を回収し、D点まで加熱される。本実施形態の給湯システム(1)では、夜間(深夜時間帯)は常にこの熱回収運転が行われる。
【0043】
パワーコンディショナ(13)を通過したD点の冷媒は、膨張機構(23)で減圧されてE点の低圧冷媒になり、蒸発器(24)に流入する。蒸発器(24)において、冷媒は空気と熱交換して蒸発する。蒸発器(24)で蒸発したA点の冷媒は圧縮機(21)に吸入され、再度圧縮される。このようにして冷媒が冷媒回路(20)を循環し、冷凍サイクルの動作が行われる。
【0044】
沸き上げ運転時、温水回路(50)では温水ポンプ(51)が運転される。このことにより、貯湯タンク(40)内の水が放熱器(22)の温水流路(22b)を流れ、冷媒回路(20)の冷媒で加熱されて温水になる。温水は放熱器(22)から流出し、第1三方弁(52)を経て貯湯タンク(40)に流入する。沸き上げ運転時は、温水がこのようにして温水回路(50)を循環することにより、所定の温度に加熱された温水が貯湯タンク(40)に蓄えられる。また、貯湯タンク(40)に蓄えられた温水は、昼間の出湯運転時に浴槽やシャワーでの利用に供される。出湯される温水の温度は、第2三方弁(63)を開いて温水と冷水を混合することにより調整される。
【0045】
次に、夜間の熱回収運転について、図3のフローチャートを用いて説明する。
【0046】
ステップST1では、翌日の負荷を予想し、その予想負荷に応じた必要蓄熱量を計算する。次にステップST2では、その必要蓄熱量に基づいてヒートポンプ給湯機(5)の夜間の沸き上げ運転時間を計算し、ステップST3では、蓄電池(11)の夜間の充電運転時間を計算する。ここでいう「夜間」は、電気料金が廉価となる深夜時間帯のことである。
【0047】
ステップST4では、ヒートポンプ給湯機(5)の夜間の沸き上げ運転時間と充電池の夜間充電時間を比較し、ヒートポンプ給湯機(5)の運転時間の方が長いかどうかを判別する。判別結果が「YES」の場合はステップST5に進んで貯湯と充電を同時に行い、図4の運転パターン(A1),(A1)に示すように夜間の蓄電池(11)の充電運転とヒートポンプ給湯機(5)の沸き上げ運転を同時に終了する。貯湯と充電を同時に行っている間は、蓄電池(11)の熱で冷媒が加熱される。
【0048】
ステップST4の判別結果が「NO」の場合は、図4の運転パターン(B)に示すように熱回収されない期間が存在することになるので、ステップST6に進んでその間の沸き上げ能力を調整してからステップST5に進む。具体的には、ステップST6で圧縮機(21)の運転容量を小さくして沸き上げ能力を落とすことで、夜間沸き上げ運転時間が夜間充電運転時間と同じかそれよりも長くなるように制御する。このようにすることで、貯湯運転中に熱回収しながら充電池(11)を充電する。
【0049】
−実施形態の効果−
本実施形態では、充電池本体(12)やパワーコンディショナ(13)から放出される熱を、冷媒回路(20)の放熱行程後の冷媒で回収する(熱回収する)ようにして、蓄電池本体(12)での充放電ロスやパワーコンディショナ(13)での変換ロスを小さくし、効率のよい運転を可能にしている。特に、蓄電池本体(12)の排熱だけでなくパワーコンディショナ(13)の排熱も利用しているので、運転効率を効果的に高めることができる。
【0050】
そして、このように熱回収運転を行うことにより、放熱行程後の冷媒を加熱し、モリエル線図において蒸発行程のエンタルピ差が小さくなるようにして、必要蒸発能力を小さくするようにしている。したがって、本実施形態によれば、冷媒の蒸発温度を高くして冷凍サイクルのCOPを向上させることができるし、ファン風量を少なくしてシステムの効率を高めることもできる。また、蒸発器(24)のサイズを小さくすることにより、装置のコストダウンや小型化を実現することもできる。
【0051】
また、本実施形態では、放熱行程後の冷媒で蓄電池本体(12)とパワーコンディショナ(13)を冷却することにより、冷却温度が従来よりも高くなるようにしているので、蓄電池本体(12)やパワーコンディショナ(13)での結露を防止できる。したがって、電気絶縁性が低下するのも防止できる。
【0052】
さらに、本実施形態によれば、上記コントローラ(70)により、蓄電池(11)の充電中には常にヒートポンプ給湯機(5)の沸き上げ運転を行うようにヒートポンプ給湯機(5)を能力制御するようにしているので、運転中に運転中に熱回収を行えない期間が生じるのをなくし、効率を高めることができる。さらに、夜間の蓄電池(11)の充電運転とヒートポンプ給湯機(5)の沸き上げ運転を同時に終了させるようにしていることによっても、運転中に運転中に熱回収を行えない期間が生じるのをなくし、効率を高めることができる。
【0053】
また、本実施形態によれば、放熱行程後の冷媒で熱回収を行う構成を採用するとともに、二酸化炭素を冷媒に用いて超臨界冷凍サイクルを行うようにしているので、放熱後の冷媒であってもフラッシュしない。したがって、膨張機構(23)が確実に液シールされ、動作を安定させることができる。
【0054】
さらに、本実施形態によれば、夜間に蓄電池(11)に蓄えた電力によりヒートポンプ給湯機(5)を24時間いつでも運転することができるから、貯湯タンク(40)への夜間の蓄熱量が不足しても蓄電池による貯湯運転で蓄熱量を補うことができる。したがって、ヒートポンプ給湯機(5)の小型化を図ることができるし、蓄電池(11)を使用して貯湯運転を行うことによりシステムのCOPを高めることもできる。
【0055】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0056】
例えば、冷媒回路(20)の高圧圧力は、必ずしも超臨界圧力にしなくてもよい。その場合、放熱(凝縮)行程後に過冷却した冷媒がフラッシュしない範囲で蓄電池(11)の排熱を冷媒で熱回収すればよく、そうすれば、上記実施形態と同様に膨張機構(23)の動作も安定させることができる。
【0057】
また、本発明では、蓄電池(11)の充電中に、常にヒートポンプ給湯機(5)の沸き上げ運転を行うように該ヒートポンプ給湯機(5)を能力制御したり、夜間の蓄電池(11)の充電運転とヒートポンプ給湯機(5)の沸き上げ運転を同時に終了させたりしなくてもよく、放熱後の冷媒で熱回収を行うようにする限りは、蓄電池(11)の結露や絶縁性低下は防止できる。
【0058】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0059】
以上説明したように、本発明は、蓄電池から供給された電力を利用して給湯装置を運転する給湯システムについて有用である。
【符号の説明】
【0060】
1 給湯システム
5 ヒートポンプ給湯機
11 蓄電池
12 蓄電池本体
13 パワーコンディショナ(電力変換器)
14 熱回収熱交換器(熱交換部)
20 冷媒回路
22 放熱器
40 貯湯タンク
70 コントローラ(制御部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒回路(20)と該冷媒回路(20)の放熱器(22)で加熱される温水を貯湯する貯湯タンク(40)とを有するヒートポンプ給湯機(5)と、夜間に蓄えた電力を該ヒートポンプ給湯機(5)に供給する蓄電池(11)とを備えた給湯システムであって、
上記冷媒回路(20)における放熱行程後の冷媒と上記蓄電池(11)とが熱交換を行う熱交換部(14)を備えていることを特徴とする給湯システム。
【請求項2】
請求項1において、
上記蓄電池(11)の充電中に、常に上記ヒートポンプ給湯機(5)の沸き上げ運転を行うように該ヒートポンプ給湯機(5)を能力制御する制御部(70)を備えていることを特徴とする給湯システム。
【請求項3】
請求項2において、
上記制御部(70)は、夜間の蓄電池(11)の充電運転とヒートポンプ給湯機(5)の沸き上げ運転を同時に終了させるように構成されていることを特徴とする給湯システム。
【請求項4】
請求項1から3の何れか1つにおいて、
上記蓄電池(11)は、蓄電池本体(12)と電力変換器(13)とを含むことを特徴とする給湯システム。
【請求項5】
請求項1から4の何れか1つにおいて、
上記冷媒回路(20)は、二酸化炭素が冷媒として充填され、該冷媒を超臨界圧力に圧縮して冷凍サイクルを行うように構成されていることを特徴とする給湯システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−87993(P2013−87993A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227179(P2011−227179)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)