説明

給湯器

【課題】災害時等に、一度に多量のお湯を供給できる給湯器を提供する。
【解決手段】蛇口31aから湯を供給する給湯器1であって、前記給湯器1を、コンロ2と、底面の近傍に蛇口31aを備えた鍋3と、により構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可搬タイプの給湯器に関し、特に一度に多量のお湯を供給することのできる給湯器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、お湯を供給できる可搬タイプの給湯器として、電気ヒータ式のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、ヒータの電源が近くに存在しない屋外等でお湯を供給する場合には、カセット式コンロと鍋若しくはやかんとを組み合わせてお湯を沸かすことが知られている。
【0004】
【特許文献1】実公平7−40927号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電気ヒータ式の給湯器は、災害等で停電した場合には使用することができないという問題がある。
【0006】
一方、カセット式コンロと鍋等を組み合わせて使用する場合には、鍋等をコンロから持ち上げてからお湯を供給することになる。このため、使用者の操作できる重量を考慮すると鍋等の容量が限られてしまい、一度に多量のお湯を供給することができず、例えば、炊き出し等で一度に多量のお湯を必要とする災害時の避難場所等では、お湯の供給量が絶対的に不足するという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、上記のような問題点を考慮し、災害時等に、一度に多量のお湯を供給できる給湯器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記のような目的を達成するためになされたものであり、この目的は、下記(1)〜(5)の発明によって達成される。
【0009】
(1)蛇口から湯を供給する給湯器であって、
前記給湯器は、
コンロと、
底面の近傍に蛇口を備えた鍋と、から構成されていること
を特徴とする給湯器。
【0010】
(2)前記鍋を囲む保護部材を設け、この保護部材に前記蛇口を貫通させるための貫通部を形成したこと
を特徴とする上記(1)に記載の給湯器。
【0011】
(3)前記鍋と前記保護部材との間に、前記コンロからの熱を断熱するための断熱部材を設け、この断熱部材に前記蛇口を貫通させるための貫通部を形成したこと
を特徴とする上記(2)に記載の給湯器。
【0012】
(4)物品を載置するための載置部材を、前記保護部材の上部に着脱可能に設けたこと
を特徴とする上記(3)に記載の給湯器。
【0013】
前記コンロの外側で前記保護部材を支持するための脚部を、前記保護部材の下部に設けたこと
を特徴とする上記(4)に記載の給湯器。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る給湯器によれば、災害時等においても、一度に多量のお湯を供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る給湯器を実施するための一実施の形態について、図面を参照して説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0016】
図1は、本発明の一実施の形態に係る給湯器1の分解斜視図を示したものである。
図1に示すように、本実施の形態に係る給湯器1は、コンロ2と、鍋3と、保護部材4と、断熱部材5と、載置部材6とから構成されている。
【0017】
コンロ2は、小型のボンベを着脱可能に交換できるカセット式コンロであって、バーナー2aと、バーナー2aを着火させるためのスイッチ2bとを備えている。また、バーナー2aの周囲には、鍋等を支持するための支持部材2cが、等間隔で設けられている。なお、バーナー2aの周囲には、風よけのための風防部材を設けてもよい。
【0018】
鍋3は、鍋本体31と鍋蓋32とで構成されている。
鍋本体31は、円筒状に形成されており、底面31dの近傍であって鍋本体31の側面には、蛇口31aが設けられている。蛇口31aは、溶接によって鍋本体31に取り付けられる。このように、本実施形態の給湯器1によれば、底面近傍に蛇口31aを備えた鍋3を用いるので、鍋の内部に溜められている湯の大部分を使うことができるとともに、鍋を持ち上げずにお湯を供給することができるので、ある程度鍋の容量を大きくすることが可能となり、一度に多量の湯を供給することができる。したがって、例えば、災害時の避難所等のように、緊急用のドライフーズを大量に調理する必要が場合であっても、一度に多量の湯を供給することでき、温かい食事を提供することができる。また、コンロ2に鍋3を載置させた状態で、蛇口31aを操作できるので、安全な状態でお湯を供給することができる。
【0019】
また、蛇口31aは、底面31dから所定の距離を隔てるようにして取り付けられている。このように底面から所定距離を隔てて蛇口31aを設けることにより、鍋本体31の内部には、常に一定量の湯が残存することになるので、空焚きを防止することができる。なお、本実施形態では、鍋本体31の容量が7リットルであるのに対して、約1リットルのお湯が鍋の内部に残存するように設定されている。
【0020】
図2は、蛇口31aが取り付けられている付近の鍋本体31の拡大図であるが、図2に示すように、蛇口31aが取り付けられている鍋本体31の側面には、溶接によって、蛇口31aの根元部分を覆うように耐熱カバー34が設けられている。耐熱カバー34は、上向きに開口を有するU字形状で構成されており、下方より供給されるバーナー2aの排熱から蛇口31aを保護することができる。
【0021】
図3は、鍋本体31を底面方向から見た際の平面図であるが、図3に示すように、鍋本体31の底面31dには、溶接によって、複数の係合部材31cが取り付けられている。係合部材31cには、コンロ2の支持部材2cと係合するための凹部等が形成されている。この凹部と支持部材2cとを係合させることにより、鍋3をコンロ2にしっかりと載置させることができ、給湯器1を安定した状態で使用することができる。
【0022】
蛇口31aのバルブ31bを捻ることにより、鍋本体31に溜められたお湯を供給することができる。バルブ31bは、鍋本体31から所定距離を隔てた位置に設けられている。このように、鍋本体31から所定距離を離してバルブ31bを設けることにより、バルブ31bを操作する際に、熱せられた断熱部材5等に指等が触れることを防止することができる。
【0023】
本実施形態では、鍋本体31は、部材の加工・溶接の容易性や保温性を考慮して、ステレンス材で構成されているが、水の沸きあがり時間を考慮して、熱伝導性の高いアルミ材で構成するようにしてもよい。また、お湯の残存量の確認を容易にするために、鍋本体の側面の一部に耐熱ガラスで構成された除き窓を設けるようにしてもよい。
【0024】
鍋蓋32は、円盤状に形成されており、中央部付近には、鍋蓋32を鍋本体31に対して着脱するための把手33が設けられている。図4は、鍋蓋32の構成図であるが、図4に示すように、把手33の下方には、凹部32aが形成されており、凹部32aの中央には、鍋本体31内部で発生した蒸気を上方へ逃がすための蒸気孔32bが形成されている。このように、凹部32aを設けて、凹部32aに掛け渡されるように把手33を取り付けることにより、鍋蓋32の上部を平らに成形することができる。
【0025】
また、把手33の中央部にも、蒸気孔33bが形成されている。蒸気孔32b及び蒸気孔33bは、上下方向に一列となるように配置されており、後述するように、ロート部材を挿入して保持するための機能をも有している。
【0026】
なお、本実施形態では、蒸気孔32bは、凹部32aに1個形成したが、凹部32a以外の場所に複数設けるようにしてもよい。蒸気孔を2個以上設けることにより、鍋蓋32を閉じた状態で、鍋本体31への採光が可能となって、お湯の残存量の確認を容易に行うことができる。また、本実施形態では、鍋蓋32は、鍋本体31と同じステレンス材で構成されているが、お湯の残存量の確認を容易にするために、耐熱ガラス等を用いた透明の蓋としてもよい。
【0027】
保護部材4は、略正方形状に成形されており、格子状の外壁41を有するように構成されている。保護部材4は、鍋3と同様にステレンス材で構成されている。外壁41は、鍋3を囲むように構成されており、外壁41の一部には、鍋本体31の蛇口31aを貫通させるための貫通部4aが設けられている。貫通部4aは、保護部材4で鍋3を囲んだ際に蛇口31aと対応する位置にまで、保護部材4の上周端部からの切り込みを形成することにより構成されている。
【0028】
このように、本実施形態の給湯器1では、保護部材4に、蛇口31aを貫通させるための貫通部4aを形成しているので、鍋3を保護部材4で囲んで給湯器1を組み立てる際に、蛇口31aが邪魔になることはない。また、貫通部4aは、鍋3の蛇口31aを保護部材4に組み付ける際のガイド機能を有するので、給湯器1の組み立て作業効率を高めることができる。
【0029】
保護部材4の下部には、給湯器3を屋外で使用する際に、コンロのバーナー2aへの風の影響を低くするための防風カバー7が一体に設けられている。防風カバー7の一部には、鍋本体31の蛇口31aを貫通させるための貫通部7aが設けられている。また、貫通部7aの近傍には、コンロ2のバーナー2aの状態を確認するための覗き窓7bが設けられている。覗き窓7bを設けることにより、保護部材4を外すことなく、バーナー2aの状態を容易に確認することができる。なお、この防風カバー7には、外部から空気をコンロ2に取り入れるための通風孔を形成するようにしてもよい。
【0030】
また、保護部材4の下部には、脚部42が設けられている。脚部42は、外壁41の格子を形成する部材の一部をU字状に折り曲げることにより構成されている。脚部42は、コンロ2の外郭の外側に位置するように構成されており、給湯器1が載置されている地面等に接触して保護部材4を支える。このように、保護部材4、保護部材4に支持された載置部材6及び載置部材6に載置された缶詰等の重量を、脚部42で支えることによって、コンロ2にかかる負担重量を軽減し、給湯器1の製品寿命を長くすることができる。
【0031】
断熱部材5は、鍋本体31の側面に沿うように円筒状に形成されている。断熱部材5を設けることで、バーナー2aからの熱を逃がさずに断熱することができるため、給湯器1の熱効率を向上させることができる。また、屋外等で使用する際における防風機能も向上させることができる。
【0032】
断熱部材5の上周端部には、コンロ2に対して断熱部材5を着脱可能にするための把手53が溶接により取り付けられている。また、断熱部材5の一部には、鍋本体31の蛇口31aを貫通させるための貫通部5aが形成されている。この貫通孔5aは、断熱部材5で鍋3を囲んだ際に、蛇口31aと対応する位置にまで、断熱部材5の下周端部からの切り込みを形成することにより構成されている。
【0033】
このように、本実施形態の給湯器1では、断熱部材5に、蛇口31aを貫通させるための貫通部5aを形成しているので、鍋3を断熱部材5で囲んで給湯器1を組み立てる際に、蛇口31aが邪魔になることはない。また、貫通部5aは、断熱部材5を鍋3の蛇口31aに取り付ける際のガイド機能を有するので、給湯器1の組み立て作業効率を高めることができる。
【0034】
また、断熱部材5の内周面には、溶接によって貫通部5aに沿うように耐熱カバー51を形成するようにしてもよい。このように、貫通部5aに沿って耐熱カバー51を設けることにより、鍋3と断熱部材5との間を通過するバーナー2aの排熱から蛇口31aを保護することができる。特に、蛇口31aの存在によって排熱が渦状となり、蛇口31aの上方から回りこむような場合に有効である。また、上述した鍋本体31に設けられた耐熱カバー34と組み合わせることで、より確実にバーナー2aの排熱から蛇口31aを保護することができる。
【0035】
断熱部材5及び把手53は、鍋3と同様にステレンス材で構成されている。また、断熱部材5は、鍋3と保護部材4との間に位置するように、コンロ2に対して着脱可能となっている。
【0036】
載置部材6は、略正方形状の側壁部61と、側壁部61に着脱可能に構成された網部材62とを備えている。側壁部61に対して網部材62を着脱可能とすることにより、載置部材6を取り外さずに、鍋3に水を補給することできる。また、網部材62のメンテナンス等を簡単に行うことができる。
【0037】
網部材62は、網目を有する略正方形状の扁平部材であって、鍋3から供給される蒸気を通過させる。また、側壁部61の上部には、溶接により把手63が設けられている。載置部材6及び把手63は、保護部材4と同様にステレンス材により構成されている。
【0038】
網部材62には、缶詰等の物品が載置されて、コンロ2からの排熱や鍋3から供給される蒸気によって加熱される。また、側壁部61の下端部の形状と保護部材4の上端部の形状とは、略一致するように形成されており、把手63により、載置部材6を保護部材4に対して着脱することができる。
【0039】
図5は、ロート部材を用いた場合の使用状態を示す図であり、図5に示すように、載置部材6の網部材62の上方からロート状部材10を、鍋蓋32に形成された蒸気孔32b、33bに挿入し、ペットボトル等の水を鍋3に供給することができる。これにより、網部材62を取り外すことなく、鍋3に水を補給することができる。
【0040】
図6は、本発明の一実施の形態に係る給湯器の斜視図である。
図6において、図1と対応する部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0041】
本実施形態の給湯器1は、まず、保護部材4を、コンロ2の外側に脚部42が位置するようにして、コンロ2に取り付ける。次に、鍋3を、保護部材4に形成された貫通部4aと蛇口31aとが合致するようにして、コンロ2の支持部材2c上に載置する。次に、断熱部材5を、鍋3と保護部材4との間に位置するようにして、コンロ2に取り付ける。このとき、断熱部材5に形成された貫通部5aと蛇口31aとを合致するようにする。最後に、載置部材6の下端部を、保護部材4の上端部と合致するようにして、給湯器1を組み付ける。なお、鍋3に水を供給するタイミングは、鍋3をコンロ2に載置したタイミングでもよいし、給湯器1の組み付け完成後にロート状部材10を用いて行ってもよい。
【0042】
図6に示すように、組み立てられた本実施形態の給湯器1では、鍋3の蛇口31aは、保護部材4の外壁41から突出するように構成されており、使用者は、単にノズル31bを捻るだけで、鍋3内のお湯を使用することができる。したがって、本実施形態の給湯器1によれば、避難場所等においても、簡単にドライフーズのような避難食を調理することができ、温かい状態の食事を提供することができる。
【0043】
また、本実施形態の給湯器1によれば、お湯を沸かすと同時に、載置部材6の網部材62に缶詰等を載置するだけで、缶詰等を加温状態にすることができる。
【0044】
また、本実施形態の給湯器1によれば、保護部材4により、鍋3及び断熱部材5が囲われているので、例えば、災害避難所等の人の多い場所で給湯器1を使用する場合であっても、人が熱せられた鍋等に直接触れることがなく、給湯器の安全性を向上させることができる。
【0045】
図7は、図6中のA−A線で切断した給湯器1の断面図である。
【0046】
図7に示すように、コンロ2のスイッチを捻ることにより、コンロのバーナー2aが着火する。バーナー2aは、鍋3の中に溜められた水を加熱するとともに、バーナー2aにより生じた排熱は、図中の矢印で示したように、鍋3と断熱部材5との間にできた隙間9を通って、鍋3の上方へ向かって放出される。一方、鍋3の内部で発生した蒸気は、鍋蓋32に形成された蒸気孔32b、33bを通って、鍋3の上方に向かって放出される。放出された排熱及び蒸気は、載置部材6の網部材62を通過して、給湯器1の上方へ放出される。
【0047】
本実施形態の給湯器1では、鍋3の上部に放出された排熱や蒸気によって、載置部材6の網部材62に載置されている缶詰8等の加温食材を温めることができる。したがって、本実施形態の給湯器1によれば、一度に多量の湯を供給すると同時に、温められた缶詰等を供給することができるので、非難場所等において、温かい状態の食事を大量に提供することができる。
【0048】
なお、本発明の給湯器は、上述の各形態に限定されるものではなく、特に保護部材、断熱部材、載置部材は、その他材料、構成等において本発明の構成を逸脱しない範囲において種々の変形、変更が可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施形態に係る給湯器の分解斜視図である。
【図2】蛇口が取り付けられている付近の鍋の拡大図である
【図3】本発明の一実施形態で使用する鍋を底面方向から見た際の平面図である
【図4】本発明の一実施形態で使用する鍋蓋の構成図である。
【図5】ロート部材を用いた場合の使用状態図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る給湯器の斜視図である。
【図7】図6中のA−A線で切断した給湯器の断面図である。
【符号の説明】
【0050】
1・・給湯器、2・・コンロ、2a・・バーナー、2b・・スイッチ、2c・・支持部材、3・・鍋、31・・鍋本体、31a・・蛇口、31b・・バルブ、31c・・係合部材、31d・・底面部、32・・鍋蓋、32a・・凹部、32b・・蒸気孔、33・・把手、33b・・蒸気孔、4・・保護部材、4a・・貫通孔、41・・外壁、42・・脚部、5・・断熱部材、51・・耐熱カバー、53・・把手、6・・載置部材、61・・側壁部、62・・網部材、63・・把手、64・・載置板、7・・防風カバー、7a・・貫通部、7b・・覗き窓、8・・缶詰等、9・・隙間、10・・ロート部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛇口から湯を供給する給湯器であって、
前記給湯器は、
コンロと、
底面の近傍に蛇口を備えた鍋と、から構成されていること
を特徴とする給湯器。
【請求項2】
前記鍋を囲む保護部材を設け、この保護部材に前記蛇口を貫通させるための貫通部を形成したこと
を特徴とする請求項1に記載の給湯器。
【請求項3】
前記鍋と前記保護部材との間に、前記コンロからの熱を断熱するための断熱部材を設け、この断熱部材に前記蛇口を貫通させるための貫通部を形成したこと
を特徴とする請求項2に記載の給湯器。
【請求項4】
物品を載置するための載置部材を、前記保護部材の上部に着脱可能に設けたこと
を特徴とする請求項3に記載の給湯器。
【請求項5】
前記コンロの外側で前記保護部材を支持するための脚部を、前記保護部材の下部に設けたこと
を特徴とする請求項4に記載の給湯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−106956(P2008−106956A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−287774(P2006−287774)
【出願日】平成18年10月23日(2006.10.23)
【出願人】(000158312)岩谷産業株式会社 (137)
【Fターム(参考)】