給湯機
【課題】通常使用する流量よりも少ない節水流量となるように、流量を変動させながら段階的に減少させることで、使用性を維持しつつ、節水と省エネルギーとを実現した給湯機を提供すること。
【解決手段】お湯を出湯部へ供給する給湯管路40と、前記給湯管路40に設けられ流量を調整する流量調整手段44と、制御手段23とを備え、前記給湯管路40を流れる湯水の平均流量が段階的に減少するように、前記給湯管路40を流れる湯水の流量の振幅と周期とを、前記流量調整手段44により変化させることを特徴とする給湯機で、節水流量でも、快適性とすすぎ性を維持しつつ、節水と省エネルギーを実現することができる。
【解決手段】お湯を出湯部へ供給する給湯管路40と、前記給湯管路40に設けられ流量を調整する流量調整手段44と、制御手段23とを備え、前記給湯管路40を流れる湯水の平均流量が段階的に減少するように、前記給湯管路40を流れる湯水の流量の振幅と周期とを、前記流量調整手段44により変化させることを特徴とする給湯機で、節水流量でも、快適性とすすぎ性を維持しつつ、節水と省エネルギーを実現することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスや石油や電気を熱源とする給湯機や、大気熱と電気を熱源とするヒートポンプ給湯機などの給湯機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の給湯機のシャワー装置は、シャワー給湯使用時に検出したシャワー流量が、予め入力設定したシャワー流量の目標値以下の流量である場合に、リモコンに表示または音声で省エネ使用量であることを報知することで、シャワー使用量が省エネ使用量かどうかをシャワー利用者に知らせることができるようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図12は、従来のシャワー使用時のシャワーヘッド45からの湯の出方を示したものである。同図の左図はシャワーヘッド45を穴が見える側から見た図である。湯が出る穴(たとえば45a、45b)が開けられている。
【0004】
同図の右図はシャワーヘッドから出た湯が体などに当たるまでの軌跡の一部と当たる場所を示したものである。上記左図穴45a、45bからで出た湯は右図点A、点Bに当たる。その他から出た湯も同様に右図に対応した点に当たることになるので、図12で示した場合には、同図のように2つの同心円上に多数の点が並ぶことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−24913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の構成では、シャワー給湯流量の目標値は、シャワー利用者が通常使用するシャワー流量(利用者の好みの流量)以下の流量に単に設定されるはずだから、目標とするシャワー流量は利用者の好みの流量よりも少なくなるので、シャワー使用者は我慢して使用することになる。
【0007】
また、シャワーヘッドを固定して使用すると、シャワーヘッドから出た湯が体に当たる位置は一定になるので、人の触覚に対しては受動的な刺激となるため、順応により刺激の強度が弱く感じてくる。そのため、シャワー感に対して物足りなく感じるようになるという快適性の課題を有していた。
【0008】
また、単にシャワー流量を下げるだけでは、体や頭髪を洗った後の石鹸やシャンプーを十分すすぎ流せるとは限らない。通常、シャワー流量が小さくなると、すすぎの性能が落ちるので、すすぎ性能が悪くなるという課題を有していた。
【0009】
さらに、すすぎ性能が悪くなった分、シャワーで石鹸やシャンプーをすすぎ流す時間が長くなり、結果として、1回のシャワーで使用する使用量が減少しない場合や、時には、逆に使用量が増加してしまう場合があり、省エネ性や節水効果に課題を有していた。
【0010】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、通常使用する流量よりも少ない節水流量となるように、流量を変動させながら段階的に減少させることで、使用性を維持しつつ、節水と省エネルギーとを実現した給湯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記従来の課題を解決するために、本発明の給湯機は、お湯を出湯部へ供給する給湯管路と、前記給湯管路に設けられ流量を調整する流量調整手段と、制御手段とを備え、前記給湯管路を流れる湯水の平均流量が段階的に減少するように、前記給湯管路を流れる湯水の流量の振幅と周期とを、前記流量調整手段により変化させることを特徴とするものである。
【0012】
これによって、通常使用する流量よりも流量の少ない節水流量への変化が感じにくくなり、また、出湯部であるシャワーヘッドから出た湯が体に当たる位置が常に変化するため、人の触覚に対しては能動的な刺激となるので順応による刺激の強度の低下がなく、さらに、湯が当たる面積も増えるので、節水流量でも、快適性とすすぎ性を維持しつつ、節水と省エネルギーを実現することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、通常使用する流量よりも少ない節水流量となるように、流量を変動させながら段階的に減少させることで、使用性を維持しつつ、節水と省エネルギーとを実現した給湯機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態1における給湯機の構成図
【図2】(a)本発明の実施の形態1における電動弁の上面概略図(b)同電動弁の側断面図
【図3】同給湯機の経過時間に対する平均流量の変化を示す特性図
【図4】同流量変化の振幅と周波数に対するシャワー感を説明する説明図
【図5】(a)本発明の実施の形態1における給湯機の平均流量に対する第一段階の周期と振幅の流量変化を示す図(b)同給湯機の平均流量に対する第二段階の周期と振幅の流量変化を示す図(c)同給湯機の平均流量に対する第三段階の周期と振幅の流量変化を示す図
【図6】同給湯機のシャワー使用時の湯の体に当たる場所の説明図
【図7】(a)本発明の実施の形態1における回転角度の変化を示す特性図(b)図7(a)に示された回転角度の変化と流量との関係を示す特性図
【図8】(a)本発明の実施の形態1における経過時間と回転角度との関係を示す特性図(平均流量:大、振幅:小)(b)同経過時間と回転角度との関係を示す特性図(平均流量:中、振幅:中)(c)同経過時間と回転角度との関係を示す特性図(平均流量:小、振幅:大)
【図9】(a)本発明の実施の形態1における経過時間と流量との関係を示す特性図(振幅:小)(b)同経過時間と流量との関係を示す特性図(振幅:中)(c)同経過時間と流量との関係を示す特性図(振幅:大)
【図10】(a)本発明の実施の形態1における経過時間と回転角度との関係を示す他の特性図(平均流量:大、振幅:小)(b)同経過時間と回転角度との関係を示す他の特性図(平均流量:中、振幅:中)(c)同経過時間と回転角度との関係を示す他の特性図(平均流量:小、振幅:大)
【図11】(a)本発明の実施の形態1における経過時間と流量との関係を示す他の図(振幅:小)(b)同経過時間と流量との関係を示す他の図(振幅:中)(c)同経過時間と流量との関係を示す図(振幅:大)
【図12】従来のシャワーヘッドから出た湯の体に当たる場所の説明図
【発明を実施するための形態】
【0015】
第1の発明は、お湯を出湯部へ供給する給湯管路と、前記給湯管路に設けられ流量を調
整する流量調整手段と、制御手段とを備え、前記給湯管路を流れる湯水の平均流量が段階的に減少するように、前記給湯管路を流れる湯水の流量の振幅と周期とを、前記流量調整手段により変化させることを特徴とする給湯機で、通常使用する流量よりも流量の少ない節水流量への変化が感じにくくなり、さらに、通常使用する流量よりも少ない節水流量であっても、シャワー等の出湯部から出湯されるお湯が当たる位置が、周期的に変化するので、すすぎ性能や使用感を落とさず節水効果があり、節水になる分だけ湯を沸かす必要がなくエネルギー削減になるので、省エネルギーを図ることができる。
【0016】
第2の発明は、前記給湯管路を流れる湯水の流量の振幅は前回よりも大きく、かつ、周期は前回よりも小さくなるように、前記流量調整手段により変化させることで、前記給湯管路を流れる湯水の平均流量を段階的に減少させることを特徴とするもので、平均流量が減少してもその変化がわかりにくいので、快適性の向上を図ることができる。
【0017】
第3の発明は、流量調整手段は、弁穴を有する弁本体、前記弁本体の内部に収納され開口部を有する弁体、前記弁体に固定された駆動軸、前記駆動軸に接続された駆動装置から構成された電動弁であることを特徴とするもので、所定の周期、振幅に対して、容易に所定の流量変化率を実現できるので、節水と快適性向上とを実現する信頼性の高い制御が可能ある。
【0018】
第4の発明は、振幅が小さい場合の弁体の回転速度は、振幅が大きい場合の弁体の回転速度よりも小さいことを特徴とするもので、周期に応じた流量変化になるので、快適性の向上を図ることができる。
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0020】
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態における給湯機の構成図である。同図において、本実施の形態の給湯機は、給水管路31から送られてくる水を加熱する熱源部29と流量制御部22と給湯管路40とから構成されている。前記流量制御部22は、前記給湯管路40に備えられ湯水の流量を検出する流量検出手段43と湯水の流量を調整する流量調整手段44と、シャワー使用時の初期流量である基準流量を決定する基準流量設定手段46と、実際に使用する湯水の平均流量である節水流量を設定する節水流量設定手段47と、流量検出手段43と基準流量設定手段46と節水流量設定手段47とからの信号で流量調整手段44の動作を制御する制御手段23とから構成されている。
【0021】
また、給湯管路40にはカランなどの給湯端末42やシャワーヘッド45などが配管接続されている。なお、同図では、給湯機にリモコン9を設け、この給湯機のリモコン9の機能の一つとして、節水流量設定手段47の機能を具備する構成としている。また、流量調整手段44としては、図2に示すような電動弁により形成される。この電動弁はステッピングモータなどのモータで弁体を駆動し流路断面積を変化させることによって所定の流量に制御することができる。
【0022】
同図において、流体の流入する流体通路101の途中に弁穴103を有する弁座104を形成した弁本体105の内部に開口部106を具備した弁体108を備えた構成としている。また、電動駆動装置110は、後述するように、ステッピングモータと複数の歯車から成り、弁体駆動軸109によって弁体108と接続されている。そして電動駆動装置110は弁体駆動軸109を軸として、弁体108を回転させる。このときに形成される弁体108の開口部106と弁穴103とによってできる貫通面積の割合を変化させて、流体通路101から入ってくる湯水の流量を制御して流体通路102から吐出させる。
【0023】
また、前述した電動駆動装置110の構成の一例として同図に示すように、ステッピングモータなどの駆動部111の回転は歯車機構によって減速され、最終的に弁体駆動軸109によって、弁体108を回転させる構成である。駆動機構の一例として同図では、3段歯車機構を示す。第一の歯車112はステッピングモータなどの駆動部111の駆動軸に固定されている。
【0024】
また、第二と第三の歯車113、114は同軸で固定され、同様に第四と第五の歯車115、116は同軸で固定さている。そして、第六の歯車117は前記弁体駆動軸109と同軸で固定されている。さらに、第一、第二の歯車112、113で一段目、第三、第四の歯車114、115で二段目および第五、第六の歯車116、117で三段目の変速を行う構成となっている。前記駆動部111であるステッピングモータで弁体を駆動し前述した水流路断面積を変化させることによって所定の流量になるように制御する。
【0025】
以上のように構成された給湯機について、以下にその動作、作用を説明する。図1において、シャワーの使用者がシャワーを浴びる前に、節水流量設定手段47の機能を具備するリモコン9を操作して節水流量を設定する。節水流量としては直接流量を設定してもよいが、後述する基準流量に対して減少させる率(節水率)を設定しても良い。
【0026】
ここでは節水率を設定するものとする。シャワーの使用者が節水率を設定すると、制御手段23は、流量調整手段44である電動弁の弁体を所定の位置に移動させる。所定の位置とは、後述するように、節水流量を中心に弁体を移動(回転)するために必要な回転代を設けるためであり、例えば、電動弁の弁体が全開のときの流量に対して約80〜90%程度になる位置に設定する。
【0027】
そして、シャワーの給湯回路を開くと、制御手段23は流量検出手段43が検出した信号を用いてそのときの流量を計測する。さらに、流量検出手段43が検出をした流量が安定してから所定の時間ΔTが経過した時点の流量を初期流量である基準流量として決定する。この基準流量はすなわちシャワー使用者の好みの流量である。
【0028】
制御手段23は、この決定された基準流量と先に設定された節水率とから節水流量を求める。節水率をZ%、基準流量をRkとすると、節水流量Rsは、Rs=Rk×(1−Z/100)となる。
【0029】
さらに以下に述べるように、制御手段23は流量調整手段44を制御して、前記流量の平均値が、基準流量Rkから節水流量Rsになるように段階的に変化させる。図3は横軸に経過時間をとり、縦軸に給湯の平均流量を取って、シャワー給湯開始後の経過時間に対する給湯の平均流量の変化を示したものである。同図中のRkは基準流量、Rsは節水流量、Zは節水率を示す。経過時間T1でシャワーが開始され、T2以降で流量が安定し、さらに所定の時間ΔT経過した時間T3で基準流量を確定したことを示す。基準流量が決定されたら、制御手段23は流量調整手段44を調整して、給湯流量の変動の周期と振幅を制御することによって、同図に示すように、第一段(経過時間T3〜T4)、第二段(経過時間T4〜T5)、第三段階(経過時間T5以降)というように段階的に給湯流量の平均値が基準流量から節水流量になるようにする。
【0030】
平均流量が異なる場合の変動の振幅と周期の関係とシャワー感は次のようになる。図4は、横軸に流量変化の振幅を取り、縦軸に流量変化の周波数(周波数=1/周期)を取って、そのときのシャワー感をあらわしたものである。例えば、振幅を同じにして周波数を大きく(周期を小さく)すると、シャワー感としては強く感じる。また、周波数を同じにして振幅を大きくすると、強弱の変化を感じるようになる。特にこの強弱の変化に対して
の感じ方は、人によってばらつきが大きい。だから、あまり振幅を大きくしすぎると不快に感じる人の割合が大きくなってしまう。
【0031】
同図に点Aで示す平均流量が大きい場合を基準に平均流量が小さい場合の振幅と周波数とは次のように決定する。平均流量を中心に流量を変化させる場合、シャワー感を基準流量(好みの流量)と同等にするために、流量変化の最大値を基準流量と同等に設定する。そのため、平均流量を小さくすると流量変化の振幅は大きくなる。しかし、単に振幅を大きくしただけでは、平均流量の大きい場合よりも流量が小さいので当然シャワー感は弱くなる。同図に示すように弱く感じる分だけ周波数を大きく(周期を小さく)して点Bの状態にすれば、平均流量を小さくしても平均流量が大きい場合と同等に近いシャワー感を得ることができる。
【0032】
図5は、図3における各段階の給湯流量の変動の周期と振幅を示す。同図において、第一段階、第二段階、第三段階となるに従って平均流量は小さくなり、第一段階の周期と振幅をTs1、S1、第二段階の周期と振幅をTs2、S2、第三段階の周期と振幅をTs、Sとする。各段階における点線は平均流量を示し、この平均流量を中心に流量が変動するように制御する。
【0033】
また、図4で説明したように、各段階における流量の最大値は基準流量Rkであるので、振幅の制御としてはS1<S2<Sという関係にある。さらに平均流量を小さくするに従い、周波数を大きくするということは、周期の制御としてはTs1>Ts2>Tsという関係にある。そして、これらの振幅と周期の関係になるように、制御手段23は、流量調整手段44である電動弁の弁体を平均流量の位置を中心に周期的に開閉を繰り返すように制御する。
【0034】
初期流量である基準流量から節水流量に一度に変化させれば、比較的変化が大きく、シャワー感として、若干違和感がある場合があるが、図3、図5に示すように、平均流量を段階的に落とすことで変化を和らげ、さらに、最初は周期を大きく設定し段階的に小さくすることでさらにその変化を感じにくくなるので、シャワーの使用感を落とさず節水が可能である。すなわち、従来のように単に流量を落とすことと比べると、快適性の向上となる。
【0035】
リモコン9の機能の一つとして、節水流量設定手段47の機能を具備する構成としているが、具体的には、節水率入力部(図示せず)とこの節水率入力部で設定された値を表示する表示部(図示せず)とを備えた構成がある。このときシャワー利用者は節水率を、表示部に表示される数値を見ながら、前記節水率入力部(例えば、テンキー入力や増加減できるキー)を操作して設定する。あるいは、周囲に数値(節水率)表示があるダイヤルまたはスライド入力部(図示せず)を用いて節水率を設定してもよい。
【0036】
さらに、具体的に節水率を設定しなくても、予め設定された2つ以上の節水率の中から選択する構成にしても良い。例えば、節水率20%を「大」、節水率10%を「中」、節水率5%を「小」、節水なしを「切」として、前記リモコン9にスイッチを設ける構成である。このために4個のスイッチを設けても良いし、一つのスイッチで押すたびに上記設定内容が順に変わるようにしても良い。
【0037】
このように、予め設定された複数の節水率の中から節水率を選択する方法は、簡単に好みの節水率を選べるので、利便性が向上する。また、「大」、「中」、「小」、「切」のどれを選択しているかがわかるように、リモコン9に表示部を設け、その選択状態を表示するとさらに利便性が向上する。なお、LEDなどの点灯する数で選択状態を表示しても良い。
【0038】
さらに、リモコン9に表示部(図示せず)を設け、メニュー画面の中で選択できるようにしても良い。また、上記では「大」、「中」、「小」、「切」の4段階の選択であったが、これよりも多くても良いし、少なくても良い。また、前記予め設定された2つ以上の節水率は給湯機で固定の値であっても良いし、リモコンを操作してシャワー使用者が自分自身に応じた節水率を変更できる構成としても良い。このようにすれば、よりシャワー使用者の好みのシャワー感が得られ、さらに快適性の向上になる。
【0039】
図6はシャワー流量を周期的に変動させた場合のシャワーヘッド45からの湯水の出方を示したものである。同図の左図はシャワーヘッド45を穴が見える側から見た図である。湯水が出る穴(たとえば45a、45b)が開けられている。同図の右図はシャワーヘッド45から出た湯水が体などに当たるまでの軌跡の一部と当たる場所を示したものである。前述したように、流量調整手段44である電動弁の弁体を平均流量の位置を中心に開閉を繰り返すとそれに対応してシャワーヘッド45の内部の湯水の圧力が変化する。すなわち、前記弁体108を流路面積が小さくなる方向に移動させと、シャワーヘッド45の内部の圧力は低下する。
【0040】
逆に、前記弁体108を流路面積が大きくなる方向に移動させると、シャワーヘッド45の内部の圧力は増加する。ただし、前記弁体108の移動と圧力の変化とは時間遅れがある。この圧力変動に応じてシャワーヘッドから出た湯水の軌跡も変化する。同図の点線は、シャワーヘッド45の穴45aからで出た湯水の軌跡を示したものであり、中央の点線を中心に上下の点線で示される範囲で変化する。
【0041】
そして、体に当たる部分は、同図のAで示す略長方形になる。同様に、穴5bから出た湯水の体に当たる部分は同図のBで示す略長方形になる。その他の穴から出た湯水についても同様になり、結局、従来例の場合に比べて、シャワーヘッドから出た湯水が体に当たる面積が増加することになる。
【0042】
このように、シャワー流量を周期的に変化させると、体に当たる面積が大きくなるので、図12の従来例のように一定流のシャワーの場合と比較して、シャワー感をほぼ同等に維持し、さらに石鹸やシャンプーのすすぎ落としの性能も維持して、節水の効果が得られる。さらに、使用湯量が少なくなる分、沸き上げる湯量が減少するので省エネルギーの効果もある。
【0043】
なお、給湯の平均流量に対する変動の周期と振幅の変化を説明した図5では、流量の変化の最大値と基準流量とをほぼ同等の流量にしていたが、流量の変化の最大値を基準流量よりも大きくしても良い。この場合、最大流量付近のときにシャワーの強さが大きく感じられ、シャワー感も維持されるので、快適性が維持される。
【0044】
次に、振幅と周波数を変える場合の変化速度について説明する。図7は、横軸に弁体駆動軸109を回転軸とする弁体108の回転角度を取り、縦軸に湯水の流量を取って、弁体の回転角度に対する湯水の流量変化を示したものである。なお、原点とする回転角度は、同図の上のAで示される弁体108の位置で、流量が最大になる位置であり、流体通路101に対して開口部106が対照になる位置である。
【0045】
また、106、107はそれぞれ弁体108に設けられた開口部と非開口部であり、さらに、前記開口部106には、回転軸方向の異なる位置に第一の端面118と第二の端面119の2つの端面がある。弁体108を弁体駆動軸109に向かって時計と同じ回転方向(CW)に回転していくと同図の上に示す弁体108の位置はA、B、C、D、Eと変化し、またもとのAに戻る。このときの流量変化は下の図の点A、B、C、D、Aに対応
する。
【0046】
同図からわかるように、電動弁を流れる流量は、A−B間とE−A間で最大で、C−D間で最小(閉止)となる。そして、B−C間(同図の領域1)とD−E間(同図の領域2)の回転角度領域では、流量が回転角度に対して変化している。すなわち、流量制御を行う場合は、領域1と領域2のどちらかの領域に弁体108を回転させ、所定の流量を得ることができる回転角度になるように駆動部111であるステッピングモータを回転させる。
【0047】
このとき弁体108の回転速度はステッピングモータに入力するパルス速度に比例し、流量の変化速度は前記弁体108の回転速度にほぼ比例する。だから、流量の変化速度はステッピングモータに入力するパルス速度に比例することになるので、流量の変化速度の制御は、ステッピングモータに入力するパルス速度を制御すれば可能である。
【0048】
図8は、横軸に経過時間を取り、縦軸に弁体108の回転角度を取って、経過時間に対する弁体108の回転角度を表したものである。同図の下段の図は振幅が大きい(平均流量が小さい)場合、中段の図は振幅が中程度(平均流量が中程度)の場合、上段の図は振幅が小さい(平均流量が大きい)場合である。なお、弁体108の回転速度は3つの場合とも同じである。
【0049】
図8のように弁体108の回転速度制御をすると、図9のような流量変化となる。図9は、横軸に経過時間を取り、縦軸に流量を取って、経過時間に対する流量の変化を表したものである。上、中、下段の3つの場合とも弁体108の回転速度が同じであるので、同図で示すように、3つの場合とも流量の変化速度は同じである。
【0050】
すなわち、同図に示す流量変化の傾き角度θがほぼ同じである。この場合、下段の振幅が大きいときは、流量変化が正弦波状で滑らかな変化であるが、振幅が小さくなるに従い矩形波状の変化となることがわかる。このような流量の変化速度の場合、シャワーを浴びていると、最大流量と最小流量とが交互に感じることになり、流量の変化を大きく感じてしまい、人によっては不快に感じる場合がある。
【0051】
そこで、図10に示すように、振幅の大きさによって流量の変化速度を変える。図10は、横軸に経過時間を取り、縦軸に弁体108の回転角度を取って、経過時間に対する弁体108の回転角度を表したものである。同図の下段の図は振幅が大きい(平均流量が小さい)場合、中段の図は振幅が中程度(平均流量が中程度)の場合、上段の図は振幅が小さい(平均流量が大きい)場合であり、弁体108の回転速度は振幅が小さいほど小さい。
【0052】
図10のように弁体108の回転速度制御をすると、図11のような流量変化となる。図11は、横軸に経過時間を取り、縦軸に流量を取って、経過時間に対する流量の変化を表したものである。振幅が小さいほど回転速度は小さいので、流量の変化速度も振幅が小さいほど変化速度も小さくなる。
【0053】
すなわち、同図に示すように、振幅の大、中、小に対応する流量変化の傾き角度をθ、α、βとすると、θ>α>βの関係となる。また、この場合、振幅の異なる下段、中段、上段の3つの場合とも、流量の変化が正弦波状で滑らかな変化となる。このように振幅が小さいほど、流量の変化速度を小さくすれば、流量は徐々に変化するので、シャワーを浴びていても流量変化を余り感じないので、快適性が向上する。
【0054】
なお、図2の場合は3段歯車機構としているので、ステッピングモータなどの駆動部1
11の回転方向を、必要とする弁体108の回転方向とは逆方向に回転させればよい。すなわち、弁体を時計と同じ回転方向(CW)に回転させるときは、駆動部111の回転方向を時計の回転とは逆方向(CCW)にし、弁体を時計の回転とは逆方向(CCW)に回転させるときは、駆動部111の回転方向を時計と同じ回転方向(CW)にする。また、図3では、3段階で初期流量である基準流量から節水流量に下げたが、2段階であっても、4段階以上であっても、作用、効果としては同様である。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上のように、本発明にかかる給湯機は、使用者が使用したい流量に対して、所定の節水率になる節水流量とし、使用者が使用したい流量と体感的に同等の感覚で節水流量での節水シャワーを行うことが可能となるので、単独のシャワー装置としても、前記シャワー装置の機能を組み込んだ給湯機としても、節水手段としての利用が可能である。
【符号の説明】
【0056】
23 制御手段
40 給湯管路
44 流量調整手段
46 基準流量設定手段
47 節水流量設定手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスや石油や電気を熱源とする給湯機や、大気熱と電気を熱源とするヒートポンプ給湯機などの給湯機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の給湯機のシャワー装置は、シャワー給湯使用時に検出したシャワー流量が、予め入力設定したシャワー流量の目標値以下の流量である場合に、リモコンに表示または音声で省エネ使用量であることを報知することで、シャワー使用量が省エネ使用量かどうかをシャワー利用者に知らせることができるようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図12は、従来のシャワー使用時のシャワーヘッド45からの湯の出方を示したものである。同図の左図はシャワーヘッド45を穴が見える側から見た図である。湯が出る穴(たとえば45a、45b)が開けられている。
【0004】
同図の右図はシャワーヘッドから出た湯が体などに当たるまでの軌跡の一部と当たる場所を示したものである。上記左図穴45a、45bからで出た湯は右図点A、点Bに当たる。その他から出た湯も同様に右図に対応した点に当たることになるので、図12で示した場合には、同図のように2つの同心円上に多数の点が並ぶことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−24913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の構成では、シャワー給湯流量の目標値は、シャワー利用者が通常使用するシャワー流量(利用者の好みの流量)以下の流量に単に設定されるはずだから、目標とするシャワー流量は利用者の好みの流量よりも少なくなるので、シャワー使用者は我慢して使用することになる。
【0007】
また、シャワーヘッドを固定して使用すると、シャワーヘッドから出た湯が体に当たる位置は一定になるので、人の触覚に対しては受動的な刺激となるため、順応により刺激の強度が弱く感じてくる。そのため、シャワー感に対して物足りなく感じるようになるという快適性の課題を有していた。
【0008】
また、単にシャワー流量を下げるだけでは、体や頭髪を洗った後の石鹸やシャンプーを十分すすぎ流せるとは限らない。通常、シャワー流量が小さくなると、すすぎの性能が落ちるので、すすぎ性能が悪くなるという課題を有していた。
【0009】
さらに、すすぎ性能が悪くなった分、シャワーで石鹸やシャンプーをすすぎ流す時間が長くなり、結果として、1回のシャワーで使用する使用量が減少しない場合や、時には、逆に使用量が増加してしまう場合があり、省エネ性や節水効果に課題を有していた。
【0010】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、通常使用する流量よりも少ない節水流量となるように、流量を変動させながら段階的に減少させることで、使用性を維持しつつ、節水と省エネルギーとを実現した給湯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記従来の課題を解決するために、本発明の給湯機は、お湯を出湯部へ供給する給湯管路と、前記給湯管路に設けられ流量を調整する流量調整手段と、制御手段とを備え、前記給湯管路を流れる湯水の平均流量が段階的に減少するように、前記給湯管路を流れる湯水の流量の振幅と周期とを、前記流量調整手段により変化させることを特徴とするものである。
【0012】
これによって、通常使用する流量よりも流量の少ない節水流量への変化が感じにくくなり、また、出湯部であるシャワーヘッドから出た湯が体に当たる位置が常に変化するため、人の触覚に対しては能動的な刺激となるので順応による刺激の強度の低下がなく、さらに、湯が当たる面積も増えるので、節水流量でも、快適性とすすぎ性を維持しつつ、節水と省エネルギーを実現することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、通常使用する流量よりも少ない節水流量となるように、流量を変動させながら段階的に減少させることで、使用性を維持しつつ、節水と省エネルギーとを実現した給湯機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態1における給湯機の構成図
【図2】(a)本発明の実施の形態1における電動弁の上面概略図(b)同電動弁の側断面図
【図3】同給湯機の経過時間に対する平均流量の変化を示す特性図
【図4】同流量変化の振幅と周波数に対するシャワー感を説明する説明図
【図5】(a)本発明の実施の形態1における給湯機の平均流量に対する第一段階の周期と振幅の流量変化を示す図(b)同給湯機の平均流量に対する第二段階の周期と振幅の流量変化を示す図(c)同給湯機の平均流量に対する第三段階の周期と振幅の流量変化を示す図
【図6】同給湯機のシャワー使用時の湯の体に当たる場所の説明図
【図7】(a)本発明の実施の形態1における回転角度の変化を示す特性図(b)図7(a)に示された回転角度の変化と流量との関係を示す特性図
【図8】(a)本発明の実施の形態1における経過時間と回転角度との関係を示す特性図(平均流量:大、振幅:小)(b)同経過時間と回転角度との関係を示す特性図(平均流量:中、振幅:中)(c)同経過時間と回転角度との関係を示す特性図(平均流量:小、振幅:大)
【図9】(a)本発明の実施の形態1における経過時間と流量との関係を示す特性図(振幅:小)(b)同経過時間と流量との関係を示す特性図(振幅:中)(c)同経過時間と流量との関係を示す特性図(振幅:大)
【図10】(a)本発明の実施の形態1における経過時間と回転角度との関係を示す他の特性図(平均流量:大、振幅:小)(b)同経過時間と回転角度との関係を示す他の特性図(平均流量:中、振幅:中)(c)同経過時間と回転角度との関係を示す他の特性図(平均流量:小、振幅:大)
【図11】(a)本発明の実施の形態1における経過時間と流量との関係を示す他の図(振幅:小)(b)同経過時間と流量との関係を示す他の図(振幅:中)(c)同経過時間と流量との関係を示す図(振幅:大)
【図12】従来のシャワーヘッドから出た湯の体に当たる場所の説明図
【発明を実施するための形態】
【0015】
第1の発明は、お湯を出湯部へ供給する給湯管路と、前記給湯管路に設けられ流量を調
整する流量調整手段と、制御手段とを備え、前記給湯管路を流れる湯水の平均流量が段階的に減少するように、前記給湯管路を流れる湯水の流量の振幅と周期とを、前記流量調整手段により変化させることを特徴とする給湯機で、通常使用する流量よりも流量の少ない節水流量への変化が感じにくくなり、さらに、通常使用する流量よりも少ない節水流量であっても、シャワー等の出湯部から出湯されるお湯が当たる位置が、周期的に変化するので、すすぎ性能や使用感を落とさず節水効果があり、節水になる分だけ湯を沸かす必要がなくエネルギー削減になるので、省エネルギーを図ることができる。
【0016】
第2の発明は、前記給湯管路を流れる湯水の流量の振幅は前回よりも大きく、かつ、周期は前回よりも小さくなるように、前記流量調整手段により変化させることで、前記給湯管路を流れる湯水の平均流量を段階的に減少させることを特徴とするもので、平均流量が減少してもその変化がわかりにくいので、快適性の向上を図ることができる。
【0017】
第3の発明は、流量調整手段は、弁穴を有する弁本体、前記弁本体の内部に収納され開口部を有する弁体、前記弁体に固定された駆動軸、前記駆動軸に接続された駆動装置から構成された電動弁であることを特徴とするもので、所定の周期、振幅に対して、容易に所定の流量変化率を実現できるので、節水と快適性向上とを実現する信頼性の高い制御が可能ある。
【0018】
第4の発明は、振幅が小さい場合の弁体の回転速度は、振幅が大きい場合の弁体の回転速度よりも小さいことを特徴とするもので、周期に応じた流量変化になるので、快適性の向上を図ることができる。
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0020】
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態における給湯機の構成図である。同図において、本実施の形態の給湯機は、給水管路31から送られてくる水を加熱する熱源部29と流量制御部22と給湯管路40とから構成されている。前記流量制御部22は、前記給湯管路40に備えられ湯水の流量を検出する流量検出手段43と湯水の流量を調整する流量調整手段44と、シャワー使用時の初期流量である基準流量を決定する基準流量設定手段46と、実際に使用する湯水の平均流量である節水流量を設定する節水流量設定手段47と、流量検出手段43と基準流量設定手段46と節水流量設定手段47とからの信号で流量調整手段44の動作を制御する制御手段23とから構成されている。
【0021】
また、給湯管路40にはカランなどの給湯端末42やシャワーヘッド45などが配管接続されている。なお、同図では、給湯機にリモコン9を設け、この給湯機のリモコン9の機能の一つとして、節水流量設定手段47の機能を具備する構成としている。また、流量調整手段44としては、図2に示すような電動弁により形成される。この電動弁はステッピングモータなどのモータで弁体を駆動し流路断面積を変化させることによって所定の流量に制御することができる。
【0022】
同図において、流体の流入する流体通路101の途中に弁穴103を有する弁座104を形成した弁本体105の内部に開口部106を具備した弁体108を備えた構成としている。また、電動駆動装置110は、後述するように、ステッピングモータと複数の歯車から成り、弁体駆動軸109によって弁体108と接続されている。そして電動駆動装置110は弁体駆動軸109を軸として、弁体108を回転させる。このときに形成される弁体108の開口部106と弁穴103とによってできる貫通面積の割合を変化させて、流体通路101から入ってくる湯水の流量を制御して流体通路102から吐出させる。
【0023】
また、前述した電動駆動装置110の構成の一例として同図に示すように、ステッピングモータなどの駆動部111の回転は歯車機構によって減速され、最終的に弁体駆動軸109によって、弁体108を回転させる構成である。駆動機構の一例として同図では、3段歯車機構を示す。第一の歯車112はステッピングモータなどの駆動部111の駆動軸に固定されている。
【0024】
また、第二と第三の歯車113、114は同軸で固定され、同様に第四と第五の歯車115、116は同軸で固定さている。そして、第六の歯車117は前記弁体駆動軸109と同軸で固定されている。さらに、第一、第二の歯車112、113で一段目、第三、第四の歯車114、115で二段目および第五、第六の歯車116、117で三段目の変速を行う構成となっている。前記駆動部111であるステッピングモータで弁体を駆動し前述した水流路断面積を変化させることによって所定の流量になるように制御する。
【0025】
以上のように構成された給湯機について、以下にその動作、作用を説明する。図1において、シャワーの使用者がシャワーを浴びる前に、節水流量設定手段47の機能を具備するリモコン9を操作して節水流量を設定する。節水流量としては直接流量を設定してもよいが、後述する基準流量に対して減少させる率(節水率)を設定しても良い。
【0026】
ここでは節水率を設定するものとする。シャワーの使用者が節水率を設定すると、制御手段23は、流量調整手段44である電動弁の弁体を所定の位置に移動させる。所定の位置とは、後述するように、節水流量を中心に弁体を移動(回転)するために必要な回転代を設けるためであり、例えば、電動弁の弁体が全開のときの流量に対して約80〜90%程度になる位置に設定する。
【0027】
そして、シャワーの給湯回路を開くと、制御手段23は流量検出手段43が検出した信号を用いてそのときの流量を計測する。さらに、流量検出手段43が検出をした流量が安定してから所定の時間ΔTが経過した時点の流量を初期流量である基準流量として決定する。この基準流量はすなわちシャワー使用者の好みの流量である。
【0028】
制御手段23は、この決定された基準流量と先に設定された節水率とから節水流量を求める。節水率をZ%、基準流量をRkとすると、節水流量Rsは、Rs=Rk×(1−Z/100)となる。
【0029】
さらに以下に述べるように、制御手段23は流量調整手段44を制御して、前記流量の平均値が、基準流量Rkから節水流量Rsになるように段階的に変化させる。図3は横軸に経過時間をとり、縦軸に給湯の平均流量を取って、シャワー給湯開始後の経過時間に対する給湯の平均流量の変化を示したものである。同図中のRkは基準流量、Rsは節水流量、Zは節水率を示す。経過時間T1でシャワーが開始され、T2以降で流量が安定し、さらに所定の時間ΔT経過した時間T3で基準流量を確定したことを示す。基準流量が決定されたら、制御手段23は流量調整手段44を調整して、給湯流量の変動の周期と振幅を制御することによって、同図に示すように、第一段(経過時間T3〜T4)、第二段(経過時間T4〜T5)、第三段階(経過時間T5以降)というように段階的に給湯流量の平均値が基準流量から節水流量になるようにする。
【0030】
平均流量が異なる場合の変動の振幅と周期の関係とシャワー感は次のようになる。図4は、横軸に流量変化の振幅を取り、縦軸に流量変化の周波数(周波数=1/周期)を取って、そのときのシャワー感をあらわしたものである。例えば、振幅を同じにして周波数を大きく(周期を小さく)すると、シャワー感としては強く感じる。また、周波数を同じにして振幅を大きくすると、強弱の変化を感じるようになる。特にこの強弱の変化に対して
の感じ方は、人によってばらつきが大きい。だから、あまり振幅を大きくしすぎると不快に感じる人の割合が大きくなってしまう。
【0031】
同図に点Aで示す平均流量が大きい場合を基準に平均流量が小さい場合の振幅と周波数とは次のように決定する。平均流量を中心に流量を変化させる場合、シャワー感を基準流量(好みの流量)と同等にするために、流量変化の最大値を基準流量と同等に設定する。そのため、平均流量を小さくすると流量変化の振幅は大きくなる。しかし、単に振幅を大きくしただけでは、平均流量の大きい場合よりも流量が小さいので当然シャワー感は弱くなる。同図に示すように弱く感じる分だけ周波数を大きく(周期を小さく)して点Bの状態にすれば、平均流量を小さくしても平均流量が大きい場合と同等に近いシャワー感を得ることができる。
【0032】
図5は、図3における各段階の給湯流量の変動の周期と振幅を示す。同図において、第一段階、第二段階、第三段階となるに従って平均流量は小さくなり、第一段階の周期と振幅をTs1、S1、第二段階の周期と振幅をTs2、S2、第三段階の周期と振幅をTs、Sとする。各段階における点線は平均流量を示し、この平均流量を中心に流量が変動するように制御する。
【0033】
また、図4で説明したように、各段階における流量の最大値は基準流量Rkであるので、振幅の制御としてはS1<S2<Sという関係にある。さらに平均流量を小さくするに従い、周波数を大きくするということは、周期の制御としてはTs1>Ts2>Tsという関係にある。そして、これらの振幅と周期の関係になるように、制御手段23は、流量調整手段44である電動弁の弁体を平均流量の位置を中心に周期的に開閉を繰り返すように制御する。
【0034】
初期流量である基準流量から節水流量に一度に変化させれば、比較的変化が大きく、シャワー感として、若干違和感がある場合があるが、図3、図5に示すように、平均流量を段階的に落とすことで変化を和らげ、さらに、最初は周期を大きく設定し段階的に小さくすることでさらにその変化を感じにくくなるので、シャワーの使用感を落とさず節水が可能である。すなわち、従来のように単に流量を落とすことと比べると、快適性の向上となる。
【0035】
リモコン9の機能の一つとして、節水流量設定手段47の機能を具備する構成としているが、具体的には、節水率入力部(図示せず)とこの節水率入力部で設定された値を表示する表示部(図示せず)とを備えた構成がある。このときシャワー利用者は節水率を、表示部に表示される数値を見ながら、前記節水率入力部(例えば、テンキー入力や増加減できるキー)を操作して設定する。あるいは、周囲に数値(節水率)表示があるダイヤルまたはスライド入力部(図示せず)を用いて節水率を設定してもよい。
【0036】
さらに、具体的に節水率を設定しなくても、予め設定された2つ以上の節水率の中から選択する構成にしても良い。例えば、節水率20%を「大」、節水率10%を「中」、節水率5%を「小」、節水なしを「切」として、前記リモコン9にスイッチを設ける構成である。このために4個のスイッチを設けても良いし、一つのスイッチで押すたびに上記設定内容が順に変わるようにしても良い。
【0037】
このように、予め設定された複数の節水率の中から節水率を選択する方法は、簡単に好みの節水率を選べるので、利便性が向上する。また、「大」、「中」、「小」、「切」のどれを選択しているかがわかるように、リモコン9に表示部を設け、その選択状態を表示するとさらに利便性が向上する。なお、LEDなどの点灯する数で選択状態を表示しても良い。
【0038】
さらに、リモコン9に表示部(図示せず)を設け、メニュー画面の中で選択できるようにしても良い。また、上記では「大」、「中」、「小」、「切」の4段階の選択であったが、これよりも多くても良いし、少なくても良い。また、前記予め設定された2つ以上の節水率は給湯機で固定の値であっても良いし、リモコンを操作してシャワー使用者が自分自身に応じた節水率を変更できる構成としても良い。このようにすれば、よりシャワー使用者の好みのシャワー感が得られ、さらに快適性の向上になる。
【0039】
図6はシャワー流量を周期的に変動させた場合のシャワーヘッド45からの湯水の出方を示したものである。同図の左図はシャワーヘッド45を穴が見える側から見た図である。湯水が出る穴(たとえば45a、45b)が開けられている。同図の右図はシャワーヘッド45から出た湯水が体などに当たるまでの軌跡の一部と当たる場所を示したものである。前述したように、流量調整手段44である電動弁の弁体を平均流量の位置を中心に開閉を繰り返すとそれに対応してシャワーヘッド45の内部の湯水の圧力が変化する。すなわち、前記弁体108を流路面積が小さくなる方向に移動させと、シャワーヘッド45の内部の圧力は低下する。
【0040】
逆に、前記弁体108を流路面積が大きくなる方向に移動させると、シャワーヘッド45の内部の圧力は増加する。ただし、前記弁体108の移動と圧力の変化とは時間遅れがある。この圧力変動に応じてシャワーヘッドから出た湯水の軌跡も変化する。同図の点線は、シャワーヘッド45の穴45aからで出た湯水の軌跡を示したものであり、中央の点線を中心に上下の点線で示される範囲で変化する。
【0041】
そして、体に当たる部分は、同図のAで示す略長方形になる。同様に、穴5bから出た湯水の体に当たる部分は同図のBで示す略長方形になる。その他の穴から出た湯水についても同様になり、結局、従来例の場合に比べて、シャワーヘッドから出た湯水が体に当たる面積が増加することになる。
【0042】
このように、シャワー流量を周期的に変化させると、体に当たる面積が大きくなるので、図12の従来例のように一定流のシャワーの場合と比較して、シャワー感をほぼ同等に維持し、さらに石鹸やシャンプーのすすぎ落としの性能も維持して、節水の効果が得られる。さらに、使用湯量が少なくなる分、沸き上げる湯量が減少するので省エネルギーの効果もある。
【0043】
なお、給湯の平均流量に対する変動の周期と振幅の変化を説明した図5では、流量の変化の最大値と基準流量とをほぼ同等の流量にしていたが、流量の変化の最大値を基準流量よりも大きくしても良い。この場合、最大流量付近のときにシャワーの強さが大きく感じられ、シャワー感も維持されるので、快適性が維持される。
【0044】
次に、振幅と周波数を変える場合の変化速度について説明する。図7は、横軸に弁体駆動軸109を回転軸とする弁体108の回転角度を取り、縦軸に湯水の流量を取って、弁体の回転角度に対する湯水の流量変化を示したものである。なお、原点とする回転角度は、同図の上のAで示される弁体108の位置で、流量が最大になる位置であり、流体通路101に対して開口部106が対照になる位置である。
【0045】
また、106、107はそれぞれ弁体108に設けられた開口部と非開口部であり、さらに、前記開口部106には、回転軸方向の異なる位置に第一の端面118と第二の端面119の2つの端面がある。弁体108を弁体駆動軸109に向かって時計と同じ回転方向(CW)に回転していくと同図の上に示す弁体108の位置はA、B、C、D、Eと変化し、またもとのAに戻る。このときの流量変化は下の図の点A、B、C、D、Aに対応
する。
【0046】
同図からわかるように、電動弁を流れる流量は、A−B間とE−A間で最大で、C−D間で最小(閉止)となる。そして、B−C間(同図の領域1)とD−E間(同図の領域2)の回転角度領域では、流量が回転角度に対して変化している。すなわち、流量制御を行う場合は、領域1と領域2のどちらかの領域に弁体108を回転させ、所定の流量を得ることができる回転角度になるように駆動部111であるステッピングモータを回転させる。
【0047】
このとき弁体108の回転速度はステッピングモータに入力するパルス速度に比例し、流量の変化速度は前記弁体108の回転速度にほぼ比例する。だから、流量の変化速度はステッピングモータに入力するパルス速度に比例することになるので、流量の変化速度の制御は、ステッピングモータに入力するパルス速度を制御すれば可能である。
【0048】
図8は、横軸に経過時間を取り、縦軸に弁体108の回転角度を取って、経過時間に対する弁体108の回転角度を表したものである。同図の下段の図は振幅が大きい(平均流量が小さい)場合、中段の図は振幅が中程度(平均流量が中程度)の場合、上段の図は振幅が小さい(平均流量が大きい)場合である。なお、弁体108の回転速度は3つの場合とも同じである。
【0049】
図8のように弁体108の回転速度制御をすると、図9のような流量変化となる。図9は、横軸に経過時間を取り、縦軸に流量を取って、経過時間に対する流量の変化を表したものである。上、中、下段の3つの場合とも弁体108の回転速度が同じであるので、同図で示すように、3つの場合とも流量の変化速度は同じである。
【0050】
すなわち、同図に示す流量変化の傾き角度θがほぼ同じである。この場合、下段の振幅が大きいときは、流量変化が正弦波状で滑らかな変化であるが、振幅が小さくなるに従い矩形波状の変化となることがわかる。このような流量の変化速度の場合、シャワーを浴びていると、最大流量と最小流量とが交互に感じることになり、流量の変化を大きく感じてしまい、人によっては不快に感じる場合がある。
【0051】
そこで、図10に示すように、振幅の大きさによって流量の変化速度を変える。図10は、横軸に経過時間を取り、縦軸に弁体108の回転角度を取って、経過時間に対する弁体108の回転角度を表したものである。同図の下段の図は振幅が大きい(平均流量が小さい)場合、中段の図は振幅が中程度(平均流量が中程度)の場合、上段の図は振幅が小さい(平均流量が大きい)場合であり、弁体108の回転速度は振幅が小さいほど小さい。
【0052】
図10のように弁体108の回転速度制御をすると、図11のような流量変化となる。図11は、横軸に経過時間を取り、縦軸に流量を取って、経過時間に対する流量の変化を表したものである。振幅が小さいほど回転速度は小さいので、流量の変化速度も振幅が小さいほど変化速度も小さくなる。
【0053】
すなわち、同図に示すように、振幅の大、中、小に対応する流量変化の傾き角度をθ、α、βとすると、θ>α>βの関係となる。また、この場合、振幅の異なる下段、中段、上段の3つの場合とも、流量の変化が正弦波状で滑らかな変化となる。このように振幅が小さいほど、流量の変化速度を小さくすれば、流量は徐々に変化するので、シャワーを浴びていても流量変化を余り感じないので、快適性が向上する。
【0054】
なお、図2の場合は3段歯車機構としているので、ステッピングモータなどの駆動部1
11の回転方向を、必要とする弁体108の回転方向とは逆方向に回転させればよい。すなわち、弁体を時計と同じ回転方向(CW)に回転させるときは、駆動部111の回転方向を時計の回転とは逆方向(CCW)にし、弁体を時計の回転とは逆方向(CCW)に回転させるときは、駆動部111の回転方向を時計と同じ回転方向(CW)にする。また、図3では、3段階で初期流量である基準流量から節水流量に下げたが、2段階であっても、4段階以上であっても、作用、効果としては同様である。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上のように、本発明にかかる給湯機は、使用者が使用したい流量に対して、所定の節水率になる節水流量とし、使用者が使用したい流量と体感的に同等の感覚で節水流量での節水シャワーを行うことが可能となるので、単独のシャワー装置としても、前記シャワー装置の機能を組み込んだ給湯機としても、節水手段としての利用が可能である。
【符号の説明】
【0056】
23 制御手段
40 給湯管路
44 流量調整手段
46 基準流量設定手段
47 節水流量設定手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
お湯を出湯部へ供給する給湯管路と、前記給湯管路に設けられ流量を調整する流量調整手段と、制御手段とを備え、前記給湯管路を流れる湯水の平均流量が段階的に減少するように、前記給湯管路を流れる湯水の流量の振幅と周期とを、前記流量調整手段により変化させることを特徴とする給湯機。
【請求項2】
前記給湯管路を流れる湯水の流量の振幅は前回よりも大きく、かつ、周期は前回よりも小さくなるように、前記流量調整手段により変化させることで、前記給湯管路を流れる湯水の平均流量を段階的に減少させることを特徴とする請求項1に記載の給湯機。
【請求項3】
流量調整手段は、弁穴を有する弁本体、前記弁本体の内部に収納され開口部を有する弁体、前記弁体に固定された駆動軸、前記駆動軸に接続された駆動装置から構成された電動弁であることを特徴とする請求項1または2に記載の給湯機。
【請求項4】
振幅が小さい場合の弁体の回転速度は、振幅が大きい場合の弁体の回転速度よりも小さいことを特徴とする請求項2に記載の給湯機。
【請求項1】
お湯を出湯部へ供給する給湯管路と、前記給湯管路に設けられ流量を調整する流量調整手段と、制御手段とを備え、前記給湯管路を流れる湯水の平均流量が段階的に減少するように、前記給湯管路を流れる湯水の流量の振幅と周期とを、前記流量調整手段により変化させることを特徴とする給湯機。
【請求項2】
前記給湯管路を流れる湯水の流量の振幅は前回よりも大きく、かつ、周期は前回よりも小さくなるように、前記流量調整手段により変化させることで、前記給湯管路を流れる湯水の平均流量を段階的に減少させることを特徴とする請求項1に記載の給湯機。
【請求項3】
流量調整手段は、弁穴を有する弁本体、前記弁本体の内部に収納され開口部を有する弁体、前記弁体に固定された駆動軸、前記駆動軸に接続された駆動装置から構成された電動弁であることを特徴とする請求項1または2に記載の給湯機。
【請求項4】
振幅が小さい場合の弁体の回転速度は、振幅が大きい場合の弁体の回転速度よりも小さいことを特徴とする請求項2に記載の給湯機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図6】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図6】
【図12】
【公開番号】特開2011−252685(P2011−252685A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−128546(P2010−128546)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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