説明

給湯機

【課題】タンク式の給湯機において、1台の給湯機に対して複数の浴槽を接続可能な給湯機を提供する。
【解決手段】タンク10内の高温熱媒体と当該高温熱媒体よりも低温の低温水とを利用して一般給湯端末に給湯する一般給湯経路20と、タンク10内の高温熱媒体と当該高温熱媒体よりも低温の低温水とを利用して浴槽A,Bに給湯する浴槽給湯経路30と、を備え、浴槽給湯経路30は、各浴槽A,Bに接続する配管45,48,49,50(分岐経路)と、この分岐経路の分岐部S1に各分岐経路への給湯状態を切換可能な第1浴槽切替三方弁V5、第2浴槽切替三方弁V6(弁機構)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンク式の給湯機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タンク式の給湯機は、浴槽端末に給湯する浴槽給湯経路(湯はり経路)を1経路と、一般給湯端末(蛇口、シャワーなど)に給湯する一般給湯経路を1経路備えている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−196588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来のタンク式の給湯機では、給湯機(貯湯ユニット)1台に対して浴槽の設置台数は1台であったため、浴槽を複数使用する場合は、給湯機を2台設置する必要があった。このため、給湯機1台で複数の浴槽を制御できないかという要求がある。しかし、浴槽に給湯する浴槽給湯経路(湯はり経路)は1箇所しか設けられていないため、給湯機1台に対して複数の浴槽を接続することができなかった。
【0005】
本発明は、タンク式の給湯機において、1台の給湯機に対して複数の浴槽を接続可能な給湯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、タンク内の高温熱媒体と当該高温熱媒体よりも低温の低温水とを利用して一般給湯端末に給湯する一般給湯経路と、タンク内の高温熱媒体と当該高温熱媒体よりも低温の低温水とを利用して浴槽端末に給湯する浴槽給湯経路と、を備え、前記浴槽端末を複数台備え、前記浴槽給湯経路は、各浴槽端末に接続する分岐経路と、前記分岐経路の分岐部に前記各分岐経路への給湯状態を切換可能な弁機構と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、タンク式の給湯機において、1台の給湯機に対して複数の浴槽を接続可能な給湯機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態に係る給湯機におけるタンク内の湯を利用した浴槽給湯を示す全体構成図である。
【図2】一方の浴槽から他方の浴槽への浴槽給湯を示す全体構成図である。
【図3A】浴槽Aの湯はり時の制御を示すフローチャートである。
【図3B】浴槽Aの湯はり時の制御を示すフローチャートである。
【図4】本実施形態に係る給湯機の変形例を示す全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る実施形態の給湯機1について図面を参照して説明する。まず、給湯機1の全体の構成について図1を参照して説明する。なお、図1および図2では、制御部4と各種弁およびセンサなどとの接続の図示を省略している。
【0010】
図1は、本実施形態に係る給湯機におけるタンク内の湯を利用した浴槽給湯を示す全体構成図、図2は、一方の浴槽から他方の浴槽への浴槽給湯を示す全体構成図である。なお、図1では、通常の浴槽Aの湯はり時の流れ、図2では、浴槽Bから浴槽Aへの浴槽水の移動時の流れ、をそれぞれ配管に太線を入れて示している。
【0011】
図1および図2に示すように、給湯機1は、貯湯ユニット2、ヒートポンプユニット3、浴槽A、浴槽Bなどで構成されている。貯湯ユニット2は、タンク10、一般給湯経路20、浴槽給湯経路30などを備えている。
【0012】
タンク10は、例えば、ステンレス鋼などの材料によって、円筒形状の胴板、この胴板の上部の開口を覆う上部鏡板、胴板の下部開口を覆う下部鏡板の3部材で構成されている。
【0013】
タンク10には、水道管21からの水道水が、配管22、減圧弁V1、配管23を順次介してタンク10の下部10aに導入されるように構成されている。配管22には、ストレーナSTが設けられている。
【0014】
タンク10の下部10aの水は、配管31、三方弁V10、配管32を順次介してヒートポンプユニット3に導かれ、ヒートポンプユニット3で加熱されて温水となった後、配管33を介してタンク10の上部10bに導かれ、タンク10内に貯湯される。また、配管33には、バイパス配管34が分岐して接続され、バイパス配管34が三方弁V10と接続されている。
【0015】
ヒートポンプユニット3は、タンク10の下部10aから取り出した水の沸き上げなどに用いるものであり、例えば、冷媒(例えば、二酸化炭素)を圧縮して高温・高圧にするコンプレッサと、コンプレッサからの冷媒を凝縮させるとともにタンク10からの水を熱交換することによって加熱するコンデンサと、コンデンサからの冷媒を膨張させる膨張弁と、大気中の熱を吸熱して膨張した冷媒を蒸発させるエバポレータと、を備えて構成されている。
【0016】
タンク10内の温水の温度は、例えば、タンク10内の下部から上部にいくにしたがって、相対的に低温、中温、高温の温度分布となっている。なお、高温熱媒体とは、例えば65℃から90℃の温度範囲のものを意味している。ただし、高温熱媒体と、この高温熱媒体の温度よりも低い低温水(例えば、水道管21から供給される水道水)とを利用して一般給湯や浴槽給湯を行うものであれば、前記した温度範囲に限定されるものではない。
【0017】
また、タンク10には、鉛直方向に沿って、貯湯される温水の温度を検出する複数のサーミスタ11,12,13,14,15,16が上部から下部に間隔を置いて配置されている。これらのサーミスタ11,12,13,14,15,16によって検出されたタンク10内の温水温度を示す検出信号は、制御部4に出力され、給湯機1の制御に使用される。
【0018】
一般給湯経路20は、台所、洗面所、風呂場などの蛇口やシャワー等の一般給湯端末(不図示)に給湯するものであり、供給された湯を一度利用して完了するような利用形態のものを意味している。この一般給湯経路20は、配管22,24,25,41によって構成されている。
【0019】
また、一般給湯経路20には、給湯混合弁V2が設けられ、この給湯混合弁V2の一方(高温熱媒体側)の導入ポートに配管41の下流端が接続され、他方(低温水側)の導入ポートに配管24の下流端が接続され、導出ポートに配管25の上流端が接続されている。給湯混合弁V2は、制御部4によって、配管41からの湯(高温熱媒体)と配管24からの水(低温水)との混合比率が制御される。
【0020】
また、一般給湯経路20には、配管25に上流側から給湯流量センサFS1、給湯温度センサTS1が設けられている。制御部4は、給湯流量センサFS1によって検出された流量と給湯温度センサTS1によって検出された給湯温度とに基づいて、台所リモコンR1で設定された給湯温度となるように給湯混合弁V2での混合比率を制御する。
【0021】
浴槽給湯経路30は、浴槽A,Bに給湯する回路であり、配管22,26,41〜50によって構成されている。なお、配管22、配管41の一部は、一般給湯経路20と配管を共有している。
【0022】
また、浴槽給湯経路30には、風呂混合弁V3、風呂電磁弁V4、第1浴槽切替三方弁V5、第2浴槽切替三方弁V6、循環調整弁V7、風呂循環ポンプP、浴槽水加熱経路60が設けられている。
【0023】
風呂混合弁V3は、一方(高温熱媒体側)の導入ポートに配管42の下流端が接続され、他方(低温水側)の導入ポートに配管26の下流端が接続され、導出ポートに配管43の上流端が接続されている。また、風呂混合弁V3は、制御部4によって、配管42からの湯(高温熱媒体)と配管26からの水(低温水)との混合比率が制御される。
【0024】
風呂電磁弁V4は、浴槽Aまたは浴槽Bの湯はり時に開弁するON/OFF式の弁(遮断弁)であり、導入ポートが配管43を介して風呂混合弁V3の導出ポートと接続され、配管44を介して第1浴槽切替三方弁V5の導入ポートと接続されている。
【0025】
また、配管44には、風呂電磁弁V4側から第1浴槽切替三方弁V5側に向けて順に風呂流量センサFS2、浴槽Aおよび浴槽Bの水位を検出する水位センサLS、風呂戻り温度センサTS2が設けられている。風呂流量センサFS2は、配管44と配管46との分岐部S1よりも風呂電磁弁V4側に位置し、水位センサLSおよび風呂戻り温度センサTS2は、分岐部S1よりも第1浴槽切替三方弁V5側に位置している。
【0026】
第1浴槽切替三方弁V5は、浴槽A側と浴槽B側のいずれかに切換える弁であり、配管45を介して浴槽Aの循環アダプタAD1の一方の接続ポートと接続され、配管49を介して浴槽Bの循環アダプタAD2の一方の接続ポートと接続されている。すなわち、第1浴槽切替三方弁V5は、配管44と配管45とを連通させる浴槽A接続状態(第1状態)と、配管44と配管49とを連通させる浴槽B接続状態(第2状態)とのいずれかに設定可能な弁である。なお、循環アダプタAD1は、例えば、浴槽Aの内壁側面の下部に取り付けられ、循環アダプタAD2は、浴槽Bの内壁側面の下部に取り付けられている。
【0027】
第2浴槽切替三方弁V6は、浴槽A側と浴槽B側のいずれかに切換える弁であり、配管48を介して浴槽Aの循環アダプタAD1の他方の接続ポートと接続され、配管50を介して浴槽Bの循環アダプタAD2の他方の接続ポートと接続されている。すなわち、第2浴槽切替三方弁V6は、配管47と配管48とを連通させる浴槽A接続状態(第1状態)と、配管47と配管50とを連通させる浴槽B接続状態(第2状態)とのいずれかに設定可能な弁である。
【0028】
なお、本実施形態では、配管45,48,49,50によって分岐経路が構成され、第1浴槽切替三方弁V5、第2浴槽切替三方弁V6によって弁機構が構成されている。また、第1浴槽切替三方弁V5と第2浴槽切替三方弁V6が位置している部分が分岐部に相当する。
【0029】
循環調整弁V7は、配管47への流量と浴槽水加熱経路60への流量を調整可能な弁であり、一方の導出ポートが配管47の上流端と接続され、他方の導出ポートが浴槽水加熱経路60の上流端と接続され、導入ポートには配管44から分岐して接続された配管46が接続されている。
【0030】
風呂循環ポンプPは、配管46に設けられ、制御部4によって駆動されることにより、浴槽Aに貯留された浴槽水または浴槽Bに貯留された浴槽水を循環調整弁V7に向けて導出するように構成されている。また、配管46には、循環調整弁V7と風呂循環ポンプPとの間に水流スイッチFSWが設けられている。この水流スイッチFSWは、流体が流れることでONになり、流体の流れが無くなることでOFFになる機能を有する。
【0031】
浴槽水加熱経路60は、浴槽Aに貯留された浴槽水または浴槽Bに貯留された浴槽水を加熱する(暖める)機能を有し、追いだき熱交換器61、配管62,63で構成されている。
【0032】
追いだき熱交換器61は、コイル状に巻回して構成され、タンク10内の上部に配置されている。配管62は、循環調整弁V7の導出ポートから延び、タンク10を貫通して、タンク10内の追いだき熱交換器61の上流端と接続されている。配管63は、上流端が追いだき熱交換器61の下流端と接続され、タンク10を貫通して延び、配管47の途中と接続されている。また、配管63には、追いだき熱交換器61で加熱された後の浴槽水の温度を検出する追いだき温度センサTS3が設けられている。
【0033】
なお、浴槽水加熱経路60は、本実施形態の構成に限定されるものではなく、電気ヒータなどの加熱手段で暖めるものであってもよく、またはタンク10の外部に設けられた熱交換器によって暖められるものであってもよい。
【0034】
なお、配管22〜24,26,41〜44には、図1において矢印で示す方向の流れのみを許容する逆止弁CVがそれぞれ設けられている。また、配管44には、浴槽A,B側(二次側)から1次側への逆流を防止する逆流防止装置70が設けられている。また、配管42には、配管81を介して逃がし弁80が設けられている。また、タンク10の下部10aには、配管91を介して手動式の排水弁90が設けられている。
【0035】
制御部4は、CPU、プログラムを記憶したROM、RAM、入出力インターフェイスなどで構成され、給湯混合弁V2、風呂混合弁V3、風呂電磁弁V4、第1浴槽切替三方弁V5、第2浴槽切替三方弁V6、循環調整弁V7、三方弁V10、風呂循環ポンプP、ヒートポンプユニット3を制御する。
【0036】
また、制御部4は、サーミスタ11〜16で検出されたそれぞれのタンク内温度(検出信号)、給湯流量センサFS1および風呂流量センサFS2で検出された各流量(検出値)、水位センサLSで検出された水位(検出値)、給湯温度センサTS1、風呂戻り温度センサTS2および追いだき温度センサTS3で検出された各温度(検出値)、水流スイッチFSWで検出されたON信号を、それぞれ取得する。
【0037】
また、制御部4は、台所リモコンR1からの各種操作信号、風呂リモコンR2,R3からの各種操作信号を取得する。台所リモコンR1には、給湯機1の運転を開始する運転開始ボタン、給湯温度を設定する給湯温度設定ボタンなどが設けられている。風呂リモコンR2には、浴槽Aの湯はりを開始する湯はり開始ボタン、追いだきボタン、給湯量を設定する湯量設定ボタンなどが設けられている。同様に、風呂リモコンR3には、浴槽Bの湯はりを開始する湯はり開始ボタン、追いだきボタン、湯量設定ボタンなどが設けられている。
【0038】
次に、本実施形態に係る給湯機1の湯はり制御について図3Aおよび図3Bを参照(適宜、図1および図2を参照)して説明する。図3Aおよび図3Bは、湯はり時の制御を示すフローチャートである。なお、以下では、浴槽Aに湯はりする場合について説明する。
【0039】
まず、利用者が風呂リモコンR2に設けられた浴槽Aの湯はり開始ボタンを操作すると、図3Aに示すように、ステップS10において、制御部4は、風呂リモコンR2からの湯はり開始信号を取得し、浴槽Aの湯はりを開始する。これにより、制御部4は、第1浴槽切替三方弁V5を浴槽A接続状態(第1状態、配管44と配管45とが連通する状態)、かつ、第2浴槽切替三方弁V6を浴槽A接続状態(第1状態、配管47と配管48とが連通する状態)にそれぞれ切換える。
【0040】
そして、ステップS20に進み、制御部4は、浴槽Bを使用しているか否かを判定する。なお、浴槽Bが湯はり中、浴槽Bが湯はり後の保温中などである場合に浴槽Bを使用していると判定する。すなわち、制御部4は、風呂リモコンR2から湯はり信号、保温信号を取得した場合、浴槽Bが使用中であると判定する。
【0041】
ステップS20において、制御部4は、浴槽Bを使用していないと判定した場合には(No)、ステップS30に進み、浴槽Bの残湯を確認する。すなわち、制御部4は、第1浴槽切替三方弁V5を浴槽B接続状態(第2状態、配管44と配管49とを連通させる状態)、かつ、第2浴槽切替三方弁V6を浴槽B接続状態(第2状態、配管47と配管50とを連通させる状態)とした後、水位センサLSによって、残湯ありまたは残湯なしを確認する(判定する)。すなわち、水位センサLSは、浴槽Bの循環アダプタAD2の全体が浴槽水に浸かっていれば検出値(水位)が出力されるので、検出値が出力されれば残湯ありと判定することができ、検出値(水位)が出力されなければ、残湯なしと判定することができる。
【0042】
ステップS30において、制御部4は、浴槽Bの残湯ありと判定した場合には(Yes)、ステップS40に進み、浴槽Bの浴槽水の温度を検出する。この浴槽Bの浴槽水の温度は、風呂戻り温度センサTS2によって検出される。なお、ステップS30において、制御部4は、浴槽Bの残湯なしと判定した場合には(No)、後記するステップS130に進む。
【0043】
そして、ステップS50に進み、制御部4は、第2浴槽切替三方弁V6を浴槽A接続状態(第1状態、配管47と配管48とを連通させる状態)に切換え、循環調整弁V7をバイパス側(配管47側、追いだき熱交換器61をバイパスする側)に切換える。これにより、第1浴槽切替三方弁V5が浴槽B接続状態、第2浴槽切替三方弁V6が浴槽A接続状態になる。
【0044】
そして、ステップS60に進み、制御部4は、ステップS40で検出された浴槽Bの浴槽水の温度が浴槽Aの設定温度より低いか否かを判定し、浴槽Bの浴槽水の温度が浴槽Aの設定温度より低いと判定した場合には(Yes)、ステップS70に進む。ちなみに、浴槽Bが湯はり完了直後などであれば、浴槽Bの浴槽水は、浴槽Aの設定温度前後の温度であり、浴槽Bが湯はり完了から長時間が経過していれば、浴槽Bの浴槽水は、浴槽Aの設定温度よりも低いぬるま湯や水に近い温度である。
【0045】
ステップS70において、制御部4は、風呂循環ポンプPの運転を開始する。これにより、浴槽Bの浴槽水(残湯)は、配管49を介して抜き取られ、そして、第1浴槽切替三方弁V5、配管44の一部、配管46を介して循環調整弁V7に送られる。このとき循環調整弁V7がバイパス側に切換えられているので、循環調整弁V7に送られた浴槽Bの浴槽水の全量が配管47に導入され、第2浴槽切替三方弁V6、配管48を介して浴槽Aに供給されるようになっている。また、風呂循環ポンプPの運転が開始されると、水流スイッチFSWがON(オン)になる。
【0046】
そして、ステップS80に進み、制御部4は、風呂戻り温度センサTS2と追いだき温度センサTS3のそれぞれの温度により、浴槽Bの浴槽水の温度が浴槽Aの設定温度になるように循環調整弁V7の開度を調整する。
【0047】
すなわち、循環調整弁V7の開度を、バイパス側から追いだき熱交換器61側に徐々に切り替えることにより、浴槽Bの浴槽水の一部が配管62を介して追いだき熱交換器61に導入され、タンク10内の高温熱媒体(高温水)との熱交換によって浴槽水が加熱された後、配管63を介して配管47に導出される。そして、配管47からの湯水と配管63からの湯とが合流した浴槽Bの浴槽水は、第2浴槽切替三方弁V6、配管48を通って浴槽Aに供給される(図2参照)。このように、制御部4は、風呂戻り温度センサTS2と追いだき温度センサTS3のそれぞれの温度を確認しながら循環調整弁V7の開度を調整するようになっている。
【0048】
そして、ステップS90に進み、制御部4は、水流スイッチFSWがOFF(オフ)であるか否かを判定する。すなわち、浴槽Bの浴槽水を浴槽Aに移動させると、浴槽Bの浴槽水が徐々に減少して、浴槽Bの浴槽水の水面が循環アダプタAD2より低下すると、風呂循環ポンプPで浴槽Bの浴槽水を取り出すことができなくなり、水流スイッチFSWがOFF(オフ)になる。
【0049】
ステップS90において、制御部4は、水流スイッチFSWがOFFではないと判定した場合には(No)、ステップS80に戻り、水流スイッチFSWがOFFであると判定した場合には(Yes)、図3BのステップS120に進む。
【0050】
一方、ステップS60において、制御部4は、ステップS40で検出した浴槽Bの浴槽水の温度が、浴槽Aの設定温度より低くない場合(No)、浴槽Bの浴槽水の温度が浴槽Aの設定温度と同じか浴槽Aの設定温度より高い場合、ステップS100に進む。例えば、浴槽Bの浴槽水の温度が42℃、浴槽Aの設定温度が40℃の場合である。
【0051】
ステップS100において、制御部4は、風呂循環ポンプPの運転を開始する。これにより、浴槽Bの浴槽水(残湯)は、配管49、第1浴槽切替三方弁V5、配管44,46、循環調整弁V7、配管47、第2浴槽切替三方弁V6、配管48を介して浴槽Aに移動する(図2参照)。このように、浴槽Bの浴槽水の温度が浴槽Aの設定温度と同じかそれ以上の場合には(S60、No)、浴槽Bの浴槽水を追いだき熱交換器61で加熱することなく浴槽Bの浴槽水をそのまま浴槽Aに移動させる。なお、風呂循環ポンプPの運転が開始されると、水流スイッチFSWがON(オン)になる。
【0052】
そして、ステップS110に進み、制御部4は、水流スイッチFSWがOFFであるか否かを判定し、水流スイッチFSWがOFFではない(ONである)と判定した場合には(No)、ステップS110の処理を繰り返し、水流スイッチFSWがOFFであると判定した場合には(Yes)、図3BのステップS120に進む。
【0053】
図3Bに示すように、ステップS120において、制御部4は、風呂循環ポンプPの運転を停止し、第1浴槽切替三方弁V5を浴槽A接続状態に切換え、循環調整弁V7をバイパス側に切換え、風呂電磁弁V4を閉じる。これにより、第1浴槽切替三方弁V5、第2浴槽切替三方弁V6および循環調整弁V7の弁の状態が、浴槽Aの通常の湯はり状態となる。
【0054】
そして、ステップS140に進み、制御部4は、浴槽Aの設定温度になるように風呂混合弁V3の開度を調整し、風呂電磁弁V4を開にして、所定量の湯を供給した後、風呂電磁弁V4を閉じる。
【0055】
すなわち、図1において太線で示すように、タンク10の上部から取り出された高温水(高温熱媒体)が配管41,42を介して風呂混合弁V3に導入されるとともに、水道管21からの水道水(高温熱媒体よりも低温の低温水)が配管22,26を介して風呂混合弁V3に導入され、風呂戻り温度センサTS2によって検出される温度が浴槽Aの設定温度になるように風呂混合弁V3での混合比率が制御される。これにより、風呂混合弁V3で混合された湯は、配管43,44,45を介して浴槽Aの循環アダプタAD1の一方の開口から吐出される。
【0056】
またこのとき、循環調整弁V7が追いだき熱交換器61をバイパスする側に切り換えられているので、風呂混合弁V3で混合された湯は、配管43,44から配管46に導入され,配管46に導入された湯の全量が配管47,48を介して浴槽Aの循環アダプタAD1のもう一方の開口から吐出される。
【0057】
なお、所定量とは、予め決められた量であり、浴槽Aが空の状態から浴槽Aの循環アダプタAD1の全体が浸かるまでの量を意味している。ただし、浴槽Bの浴槽水を浴槽Aに移動させた場合、浴槽Aにはすでに浴槽水が貯留しているので、ステップS140において、所定量の湯を浴槽Aに供給すると、浴槽水が循環アダプタAD1を超えることになる。
【0058】
そして、ステップS150に進み、制御部4は、水位センサLSで浴槽Aの現在の水位を確認し、風呂リモコンR2に設定された浴槽Aの設定湯量になるように注湯量(給湯量)を計算する。すなわち、制御部4は、設定湯量から、水位センサLSの検出値に相当する湯量を減算し、残りの湯量を計算する。なお、前記したステップS140において、所定量として、浴槽Aの循環アダプタAD1の全体が浸かるまでの量に設定することにより、浴槽Bの浴槽水を浴槽Aに移動させたときに、浴槽Aの浴槽水の水位が循環アダプタAD1の全体が浸かるまでの水位でない場合であっても、そこから所定量の湯を追加することにより、循環アダプタAD1の全体が浸かるまで浴槽水の水位を上げることができ、ステップS150において、浴槽Aの水位を確実に検出できる。
【0059】
そして、ステップS160に進み、制御部4は、風呂電磁弁V4を開にして、ステップS150で計算した給湯量(注湯量)の湯を浴槽Aに入れる。風呂電磁弁V4が開にされることにより、風呂混合弁V3で混合された湯が再び浴槽Aに向けて供給される。
【0060】
ステップS160で計算した湯を入れた後、ステップS170に進み、制御部4は、浴槽Aに供給された浴槽水(湯)の温度を検出する。この浴槽水の温度は、風呂戻り温度センサTS2によって検出される。
【0061】
そして、ステップS180に進み、制御部4は、ステップS170で検出された浴槽Aの浴槽水の温度が浴槽Aの設定温度であるか否かを判定する。ステップS180において、制御部4は、浴槽Aの設定温度であると判定した場合には(Yes)、ステップS210に進み、湯はり完了と判定する。なお、湯はり完了と判定した場合には、風呂電磁弁V4を閉じる。
【0062】
また、ステップS180において、制御部4は、浴槽Aの設定温度でない(設定温度よりも低い)と判定した場合には(No)、ステップS190に進み、風呂循環ポンプPの運転を開始する。なお、このとき、制御部4は、風呂電磁弁V4を閉じる制御を行う。風呂循環ポンプPの運転を開始することにより、浴槽A内の浴槽水が、配管45,44,46、循環調整弁V7、配管47,48を通って浴槽Aに戻るようにして循環する。
【0063】
そして、ステップS200に進み、制御部4は、風呂戻り温度センサTS2と追いだき温度センサTS3により、浴槽Aの設定温度になるように循環調整弁V7の開度を調整する。すなわち、浴槽Aから配管45,44,46に導出された浴槽水について、循環調整弁V7によって追いだき熱交換器61側と、配管47側(追いだき熱交換器61をバイパスする側)との分配比率を調整しながら循環させる。このとき、風呂戻りセンサTS2と追いだき温度センサTS3とのそれぞれの温度を確認しながら、追いだき熱交換器61に導入する流量を循環調整弁V7により調整する。
【0064】
そして、ステップS170に戻り、制御部4は、浴槽Aの浴槽水の温度を検出し、ステップS180に進み、浴槽Aの設定温度であるか否かを再度判定する。ステップS180において、制御部4は、浴槽Aの設定温度であると判定した場合には(Yes)、湯はり完了と判定し(S210)、風呂循環ポンプPの運転を停止する。
【0065】
一方、図3AのステップS20において、制御部4は、浴槽Bを使用していると判定した場合(Yes)、つまり浴槽Bが湯はり中、湯はり後の保温中などであって、風呂リモコンR3から湯はり信号や保温信号を取得した場合には、ステップS130に進み、浴槽Aに対して通常の湯はりを行う。すなわち、制御部4は、第1浴槽切替三方弁V5を浴槽A側に切換え、かつ、第2浴槽切替三方弁V6を浴槽A側に切換え、循環調整弁V7をバイパス側に切換える。
【0066】
そして、ステップS140に進み、制御部4は、浴槽Aの設定温度となるように風呂混合弁V3の開度を調整し、風呂電磁弁V4を開にして、所定量の湯を供給した後、風呂電磁弁V4を閉じる(図1参照)。このようにして、浴槽Aにまず所定量の湯を供給することにより、ステップS150で浴槽Aの水位を検出できるようになり、残りの湯量を計算することができる。その後、ステップS160ないしS180の処理またはステップS160ないしステップS200の処理を行って、浴槽Aの湯張りを完了する(S210)。
【0067】
なお、本実施形態では、浴槽Aの湯はりについて説明したが、浴槽Bの湯はりについても、第1浴槽切替三方弁V5と第2浴槽切替三方弁V6との切換えが浴槽Aの湯はりの場合とは逆になるだけで、浴槽Aの湯はりと同様にして構成することができる。
【0068】
以上説明したように、本実施形態に係る給湯機1によれば、一般給湯経路20と浴槽給湯経路30と、浴槽A,B(複数の浴槽端末)とを備え、浴槽給湯経路30に、各浴槽A,Bに接続する配管45,48,49,50(分岐経路)と、この分岐経路の分岐部に各分岐経路への給湯状態を切換可能な第1浴槽切替三方弁V5および第2浴槽切替三方弁V6(弁機構)と、が備えられることにより、1台の貯湯ユニット(給湯機1)に対して複数の浴槽A,Bを接続することが可能になる。
【0069】
また、本実施形態によれば、2台の浴槽A,Bを備え、浴槽Bに浴槽水が貯留している場合、第1浴槽切替三方弁V5および第2浴槽切替三方弁V6(弁機構)を介して分岐経路(配管45,48,49,50)を切り換えて、浴槽給湯経路30に設けられた風呂循環ポンプPを運転することで、浴槽Bの浴槽水を浴槽Aに移動させることができる(図2参照)。このようにして、浴槽Bの浴槽水を浴槽Aの湯はり時のお湯に利用できることにより、節水性を高めることができる。また、本実施形態によれば、浴槽Bの浴槽水の熱を浴槽Aの湯はり時の湯に取り込むことができるので、浴槽Aの湯はりに必要な熱量を削減することができ、省エネルギ化を図ることが可能になる。
【0070】
また、本実施形態によれば、浴槽給湯経路30に浴槽水を加熱する浴槽水加熱経路60を備えているので、浴槽Bの浴槽水を浴槽Aに移動させる際、浴槽Bの浴槽水の温度が浴槽Aの設定温度よりも低いときに、浴槽Bの浴槽水を容易に加熱することができる。さらに、浴槽Aの浴槽水を追いだきする場合と、浴槽Bの浴槽水を追いだきする場合とで、共通の浴槽水加熱経路60を利用することができ、給湯機1のシステム構成を簡略化できる。
【0071】
本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。例えば、本実施形態では、タンク10内の湯(高温熱媒体)と水道管21からの水(低温水)とを混合して(利用して)、一般給湯および浴槽給湯を行うタイプの給湯機1を例に挙げて説明したが、このようなタイプの給湯機に限定されず、タンク10内の高温熱媒体と水道管21からの水(低温水)とを熱交換して(利用して)、一般給湯および浴槽給湯を行うタイプの給湯機であってもよい。また、一般給湯についてタンク10内の高温熱媒体と水道管21からの水との熱交換を行い(利用して)、浴槽給湯についてタンク10内の高温熱媒体と水道管21からの水とを混合する(利用して)タイプの給湯機に適用してもよい。ちなみに、熱交換を行う場合には、例えば、タンク10の上部から取り出した湯をタンク10の下部に戻るように配管を接続し、この配管の途中に熱交換器および循環ポンプを設けることで構成できる。
【0072】
また、本実施形態では、タンク10の上部10bから取り出した湯(高温熱媒体)と、水とを風呂混合弁V3で混合して浴槽給湯(注湯)を行う場合について説明したが、これに限定されるものではなく、タンク10の中間部に、中間取出部の配管を設けて、この中間取出部から取り出したタンク10内の中温水と、タンク10の上部から取り出した高温水とを第二の風呂混合弁で混合する構成を追加してもよい。なお、湯はり時において中温水を積極的に取り出して少なくすることで、ヒートポンプユニット3の効率(COP:Coefficient Of Performance)を向上させることができる。
【0073】
また、本実施形態では、貯湯ユニット2に2台の浴槽A,Bを接続した場合について例を挙げて説明したが、2台の浴槽に限定されるものではなく、3台以上接続する構成であってもよい。例えば、1台の貯湯ユニット2に3台の浴槽(A,B,C)を接続する場合には、四方弁を設けたり、または一対の三方弁を設けたりすることで対応できる。
【0074】
また、本実施形態では、第1浴槽切替三方弁V5および第2浴槽切替三方弁V6が貯湯ユニット2内に設けられている場合を例に挙げて説明したが、図4に示すように、第1浴槽切替三方弁V5および第2浴槽切替三方弁V6を貯湯ユニット2の外部に設けるようにしてもよい。これにより、貯湯ユニット2と1台の浴槽とを接続する場合も、貯湯ユニット2と2台の浴槽とを接続する場合も、共通の貯湯ユニット2を用いることができる。よって、2台の浴槽A,Bを接続する場合には、第1浴槽切替三方弁V5および第2浴槽切替三方弁V6が収容されたボックス(不図示)を貯湯ユニット2と接続し、そのボックスに浴槽Aおよび浴槽Bとを接続する配管を接続すればよい。
【0075】
また、風呂リモコンR2に、浴槽Bの浴槽水を浴槽Aに移動させる浴槽水移動ボタンを設ける構成にしてもよい。この場合、浴槽水移動ボタンを操作することで、循環調整弁V7をバイパス側、第1浴槽切替三方弁V5を浴槽B側、第2浴槽切替三方弁V6を浴槽A側に切換えた状態において、風呂循環ポンプPの運転が開始されることにより、浴槽Bの浴槽水が、配管49、第1浴槽切替三方弁V5、配管44の一部、配管46、循環調整弁V7、配管47、第2浴槽切替三方弁V6、配管48を通って浴槽Aに移動される。よって、例えば、二世帯住宅(1階に浴槽B、2階に浴槽A)において、浴槽A側にのみ洗濯場が設けられている場合において、洗濯時に、浴槽Bの浴槽水を浴槽Aに移動させることにより、浴槽Bの浴槽水を洗濯に利用することが可能になる。その結果、浴槽Bの浴槽水が無駄に捨てられるのを防止することができる。
【符号の説明】
【0076】
1 給湯機
2 貯湯ユニット
3 ヒートポンプユニット
4 制御部
10 タンク
22,24,25,41 配管(一般給湯経路)
22,26,41〜50 配管(浴槽給湯経路)
60 浴槽水加熱経路
61 追いだき熱交換器
62,63 配管
A,B 浴槽(浴槽端末)
AD1,AD2 循環アダプタ
P 風呂循環ポンプ
R1 台所リモコン
R2,R3 風呂リモコン
V1 減圧弁
V2 給湯混合弁
V3 風呂混合弁
V4 風呂電磁弁
V5 第1浴槽切替三方弁(弁機構)
V6 第2浴槽切替三方弁(弁機構)
V7 循環調整弁
FS1 給湯流量センサ
FS2 風呂流量センサ
FSW 水流スイッチ
LS 水位センサ
TS1 給湯温度センサ
TS2 風呂戻り温度センサ
TS3 追いだき温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク内の高温熱媒体と当該高温熱媒体よりも低温の低温水とを利用して一般給湯端末に給湯する一般給湯経路と、
タンク内の高温熱媒体と当該高温熱媒体よりも低温の低温水とを利用して浴槽端末に給湯する浴槽給湯経路と、を備え、
前記浴槽端末を複数台備え、
前記浴槽給湯経路は、各浴槽端末に接続する分岐経路と、前記分岐経路の分岐部に前記各分岐経路への給湯状態を切換可能な弁機構と、を備えることを特徴とする給湯機。
【請求項2】
前記浴槽端末を2台備え、
一方の前記浴槽端末に浴槽水が貯留している場合、前記弁機構を介して前記分岐経路を切り換えて、前記浴槽給湯経路に設けられた風呂循環ポンプを運転することで、一方の前記浴槽端末の浴槽水を他方の前記浴槽端末に移動させることを特徴とする請求項1に記載の給湯機。
【請求項3】
前記浴槽給湯経路は、浴槽水を加熱する浴槽水加熱経路を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の給湯機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−113514(P2013−113514A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261109(P2011−261109)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】