説明

給湯装置

【課題】流量調整弁を増設することなく、既存のお湯はり混合弁を制御することによってお湯はり時の給湯温度の変動を抑制する給湯装置を提供する。
【解決手段】給湯装置1では、お湯はり混合弁71の開度を初期開度にしてお湯はりをすることによって、お湯はり混合弁71の開度が、目標温度の湯を供給するために必要な開度のままでお湯はりを開始するときに比べて、給湯温度の変動が抑制される。また、お湯はり混合弁71の開度が終期開度になってからお湯はり電磁弁61を閉めることによって、給湯にまわされる湯量若しくは水の量が瞬間的に変動することが抑制されるので、給湯温度の変動も抑制される。なお、制御部は、終期開度を、給湯流量センサ43の検出流量、タンク温度センサ44の検出温度、及び目標温度の少なくとも1つ以上に基づいて変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯装置に関し、特に、タンクに貯められた湯を混合弁にて水と混合して供給する給湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タンクに貯められた湯と給水管からの水とを混合して供給する給湯装置では、給湯使用中に風呂の湯はりが行なわれたとき、給湯にまわされる湯量若しくは水の量が瞬間的に変動するため、給湯温度が変動する。この現象を解消するために、例えば、特許文献1(特開2009−115395号公報)に開示されている給湯装置では、お湯はり用の流量調整弁を設けて湯量若しくは水の量の変動を抑制している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に開示されている給湯装置では、流量調整弁を増設することになるので、コストアップとなる。
【0004】
本発明の課題は、流量調整弁を増設することなく、既存のお湯はり混合弁を制御することによってお湯はり時の給湯温度の変動を抑制する給湯装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1観点に係る給湯装置は、タンクに貯えられた湯と給水管からの水とを混合して利用側に供給する給湯装置であって、第1給湯ラインと、第2給湯ラインと、第1混合弁と、第2混合弁と、開閉弁と、制御部とを備えている。第1給湯ラインは、浴槽にお湯をためるための湯の通路である。第2給湯ラインは、浴槽以外の給湯接続口に延びる湯の通路である。第1混合弁は、タンクからの湯と給水管からの水とを混合して第1給湯ラインに流す。第2混合弁は、タンクからの湯と給水管からの水とを混合して第2給湯ラインに流す。開閉弁は、第1給湯ラインに設置されている。制御部は、開閉弁、第1混合弁、及び第2混合弁を制御する。また、制御部は、浴槽に目標温度の湯を供給する湯張り制御において、第1混合弁の開度を目標温度の湯を供給するために必要な開度とは異なる初期開度にしてから開閉弁を開ける。
【0006】
この給湯装置では、第1混合弁の開度を初期開度にして湯張りをすることによって、第1混合弁の開度が目標温度の湯を供給するために必要な開度のままで湯張りを開始するときに比べて、湯張りにまわされる湯量若しくは水の量が抑えられるので、給湯にまわされる湯量若しくは水の量が瞬間的に下がることは抑制され、給湯温度の変動も抑制される。
【0007】
本発明の第2観点に係る給湯装置は、第1観点に係る給湯装置であって、第1温度センサと第2温度センサとをさらに備えている。第1温度センサは、第1混合弁から出る湯の温度を検出する。第2温度センサは、第2混合弁から出る湯の温度を検出する。制御部は、第1混合弁の開度調節を第1温度センサの検出温度に基づいて、第2混合弁の開度調節を第2温度センサの検出温度に基づいて、フィードバックによって行っている。さらに、制御部は、湯張り制御時、第1温度センサの検出温度が目標温度に到達するように第1混合弁の開度調節を行うとともに、開度調節の周期を第2混合弁の開度調節の周期よりも遅くしている。
【0008】
この給湯装置では、第1混合弁の開度が、初期開度から徐々に目標温度の湯を供給するために必要な開度へ近づくので、湯張りにまわされる湯量若しくは水の量も徐々に変化する。その結果、給湯にまわされる湯量若しくは水の量が瞬間的に変動することが抑制され、給湯温度の変動も抑制される。
【0009】
本発明の第3観点に係る給湯装置は、第1観点に係る給湯装置であって、第1温度センサと第2温度センサとをさらに備えている。第1温度センサは、第1混合弁から出る湯の温度を検出する。第2温度センサは、第2混合弁から出る湯の温度を検出する。制御部は、第1混合弁の開度調節を第1温度センサの検出温度に基づいて、第2混合弁の開度調節を第2温度センサの検出温度に基づいて、フィードバックによって行っている。さらに、制御部は、湯張り制御時、第1温度センサの検出温度が目標温度に到達するように第1混合弁の開度調節を行うとともに、開度調節のフィードバックゲインを第2混合弁の開度調節時のフィードバックゲインよりも弱くする。
【0010】
この給湯装置では、第1混合弁の開度が、初期開度から徐々に目標温度の湯を供給するために必要な開度へ近づくので、湯張りにまわされる湯量若しくは水の量も徐々に変化する。その結果、給湯にまわされる湯量若しくは水の量が瞬間的に変動することが抑制され、給湯温度の変動も抑制される。
【0011】
本発明の第4観点に係る給湯装置は、第2観点または第3観点に係る給湯装置であって、制御部が、第1混合弁から目標温度の湯を所定量供給した後、第1混合弁の開度を目標温度の湯を供給するために必要な開度とは異なる終期開度にしてから開閉弁を閉める。
【0012】
一般に、湯張りが終了して、第1混合弁の開度を目標温度の湯を供給するために必要な開度のままで開閉弁が閉じられたとき、給湯にまわされる湯量若しくは水の量が瞬間的に変動するため、給湯温度が変動する。
【0013】
しかし、この給湯装置では、第1混合弁の開度が終期開度になってから開閉弁を閉めることによって、第1混合弁の開度が目標温度の湯を供給するために必要な開度のままで開閉弁が閉じられたときに比べて、給湯にまわされる湯量若しくは水の量が瞬間的に変動することが抑制されるので、給湯温度の変動も抑制される。
【0014】
本発明の第5観点に係る給湯装置は、第4観点に係る給湯装置であって、給湯流量センサとタンク温度センサとをさらに備えている。給湯流量センサは、第2混合弁から出る湯の流量を検出する。タンク温度センサは、タンクに貯められている湯の温度を検出する。また、制御部は、第1混合弁の初期開度および/または終期開度を、給湯流量センサの検出流量、タンク温度センサの検出温度、及び目標温度の少なくとも1つ以上に基づいて変更する。
【0015】
この給湯装置では、第1混合弁の開度が終期開度になってから開閉弁を閉めることによって、第1混合弁の開度が目標温度の湯を供給するために必要な開度のままで開閉弁が閉じられたときに比べて、給湯にまわされる湯量若しくは水の量が瞬間的に変動することが回避されるので、給湯温度の変動が抑制される。
【0016】
本発明の第6観点に係る給湯装置は、第4観点に係る給湯装置であって、制御部が、第1混合弁から出る湯の温度が目標温度とは異なる終期目標温度に到達するように終期開度を調節する。さらに、制御部は、所定時間が経過後、第1混合弁から出る湯の温度が終期目標温度に到達しない場合は、開閉弁を閉じる。
【0017】
第1混合弁から出る湯の温度が終期目標温度に収束しないために湯張り制御が終了しない場合、目標温度とは異なる温度の湯が浴槽に継続して流れる。しかし、この給湯装置では、所定時間が経過後、第1混合弁から出る湯の温度が終期目標温度に到達しないときは開閉弁が閉じられるので、目標温度とは異なる温度の湯が浴槽に継続して流れることは回避される。
【0018】
本発明の第7観点に係る給湯装置では、第4観点に係る給湯装置であって、遠隔操作装置をさらに備えている。遠隔操作装置は、操作部と表示部とを有している。操作部は、湯張り制御を開始および停止させる。表示部は、湯張り制御が実行しているか否かを表示する。また、制御部は、遠隔操作装置に湯張り制御を停止させる操作入力があったとき、湯張り制御を停止したことを遠隔操作装置の表示部に表示させた後、第1混合弁の開度を終期開度にする。
【0019】
この給湯装置では、終期開度で継続しているからといって、遠隔操作装置から湯張り終了の指令を出したあとも湯張り表示を残したままにした場合、ユーザーが湯張り終了ができないと誤解する可能性があるので、それを防止するために、遠隔操作装置に湯張り制御を停止させる操作入力があったとき、湯張り制御が停止されたことを遠隔操作装置に表示させる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の第1観点に係る給湯装置では、第1混合弁の開度を初期開度にして湯張りをすることによって、第1混合弁の開度が目標温度の湯を供給するために必要な開度のままで湯張りを開始するときに比べて、湯張りにまわされる湯量若しくは水の量が抑えられるので、給湯にまわされる湯量若しくは水の量が瞬間的に下がることは抑制され、給湯温度の変動も抑制される。
【0021】
本発明の第2観点または第3観点に係る給湯装置では、給湯にまわされる湯量若しくは水の量が瞬間的に変動することが抑制され、給湯温度の変動も抑制される。
【0022】
本発明の第4観点または第5観点に係る給湯装置では、第1混合弁の開度が終期開度になってから開閉弁を閉めることによって、給湯にまわされる湯量若しくは水の量が瞬間的に変動することが抑制されるので、給湯温度の変動も抑制される。
【0023】
本発明の第6観点に係る給湯装置では、所定時間が経過後、第1混合弁から出る湯の温度が終期目標温度に到達しないときは開閉弁が閉じられるので、目標温度とは異なる温度の湯が浴槽に継続して流れることは回避される。
【0024】
本発明の第7観点に係る給湯装置では、ユーザーが湯張り終了ができないと誤解することが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係る給湯機の外観斜視図。
【図2】本発明の一実施形態に係る給湯機の概略構成図。
【図3】本発明の一実施形態に係る給湯機の貯湯装置と負荷とを連絡する配管の回路図。
【図4】お湯はり動作の制御フローチャート。
【図5A】本発明の一実施形態に係る給湯装置において、お湯はり混合弁およびお湯はり電磁弁の動作に対するお湯はり温度と給湯温度の変化を示すグラフ。
【図5B】従来の給湯装置において、お湯はり混合弁およびお湯はり電磁弁の動作に対するお湯はり温度と給湯温度の変化を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の具体例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0027】
(1)給湯装置1の全体構成
図1は、本発明の一実施形態に係る給湯機の外観斜視図である。図1おいて、給湯装置1は、ヒートポンプユニット(加熱手段)2と貯湯装置3とによって構成され、ヒートポンプユニット2のケーシング120内には、蒸気圧縮式の冷凍回路が収納され、貯湯装置3のケーシング130内には、タンク31が収納されている。
【0028】
ヒートポンプユニット2と貯湯装置3とは、水が流通できるように往き管36及び戻り管37によって連絡されている。タンク31の水は、往き管36を通ってヒートポンプユニット2へ進入する。ヒートポンプユニット2で加熱された水は、戻り管37を通ってタンク31に戻る。
【0029】
ヒートポンプユニット2と往き管36との接続部には、水側空気抜き栓27aが設けれ、ヒートポンプユニット2と戻り管37との接続部には、湯側空気抜き栓27bが設けられている。便宜上、水側空気抜き栓27a及び湯側空気抜き栓27bを総称して空気抜き栓27と呼ぶ。空気抜き栓27は、タンク31が空状態から満水状態になったとき、タンク31及び配管に進入した空気を抜くために使用される。
【0030】
貯湯装置3の下部には、三方弁38の操作レバー38aと排水口40が設けられている。図1を正面から視て、作業者が操作レバー38aを右側へ向けることによって、タンク31内の水が排水口40へ向う。作業者が操作レバー38aを左側へ向けることによって、タンク31内の水が往き管36へ向う。そして、作業者が操作レバー38aを真下に向けることによって、タンク31内の水は、往き管36及び排水口40のどちらへも向わない状態になる。
【0031】
貯湯装置3の上部には、逃し弁75の操作レバー75aが設けられている。作業者はタンク31内に水を給水するときは、操作レバー75aを上に向けて、逃し弁75を開状態とする。タンク31内が満水になり、タンク31から溢れた水は、逃し弁75を通って排水口40へ流れる。
【0032】
(2)詳細構成
(2−1)ヒートポンプユニット2
図2は、本発明の一実施形態に係る給湯機の概略構成図である。図2において、ヒートポンプユニット2は、マフラー21a、圧縮機21、水熱交換器22内の冷媒管22a、減圧手段としての膨張弁23、及び空気熱交換器24が、冷媒配管25によって環状に接続された蒸気圧縮式の冷凍回路20を有する。
【0033】
また、冷凍回路20には、水熱交換器22から出る高圧高温の冷媒と、空気熱交換器24から出る低圧低温の冷媒との間で熱交換を行うため、液ガス熱交換器26が配置されている。具体的には、水熱交換器22と膨張弁23とを連結する冷媒通路と、空気熱交換器24と圧縮機21とを連結する冷媒通路との間で熱交換が行われる。
【0034】
制御部4は、ヒートポンプユニット2と貯湯装置3を運転制御する。
【0035】
(2−2)貯湯装置3
図2に示すように、貯湯装置3は、タンク31、水熱交換器22内の水管22b及び水循環ポンプ32が、環状に接続された水循環回路30を有する。
【0036】
図3は、本発明の一実施形態に係る給湯機の貯湯装置と負荷とを連絡する配管の回路図である。なお、ここで述べる負荷とは、給湯と風呂を指す。図3において、湯循環配管73は、タンク31の頭部と底部を連絡しており、途中には追焚熱交換器78と循環ポンプ79が接続されている。
【0037】
また、湯循環配管73は、タンク31の頭部とお湯はり混合弁71および逃し弁75とを連絡している。具体的には、湯循環配管73は第1給湯分岐管73a及び第2給湯分岐管73bを有しており、第1給湯分岐管73aが湯循環配管73とお湯はり混合弁71とを連絡し、第2給湯分岐管73bが湯循環配管73と逃し弁75を連絡している。
【0038】
給湯配管74は、タンク31の頭部と給湯混合弁72とを連絡している。
【0039】
給水管51は、水供給源とお湯はり混合弁71及び給湯混合弁72とを連絡している。具体的には、給水管51は第1給水分岐管51a、第2給水分岐管51b及び第3給水分岐管51cを有しており、第1給水分岐管51aが給水管51とお湯はり混合弁71とを連絡し、第2給水分岐管51bが給水管51と給湯混合弁72とを連絡し、第3給水分岐管51cが給水管51とタンク31の底部とを連絡している。
【0040】
また、第1給水分岐管51a、第2給水分岐管51b及び第3給水分岐管51cの上流には減圧逆止弁76が接続されている。さらに、第3給水分岐管51cと給水管51との接続部近傍には水温センサ46が設けられており、水温センサ46がタンク31から温度影響を受けないように配慮されている。
【0041】
第1給湯管81は、お湯はり混合弁71と風呂水循環配管94とを連絡しており、途中に複合水弁84が配置されている。複合水弁84は、お湯はり電磁弁61と、排水弁64と、お湯はり水量センサ45とで構成されている。
【0042】
風呂水循環配管94は、浴槽91から出て浴槽91に戻り、途中に風呂水循環ポンプ93が接続されている。なお、追焚熱交換器78において、風呂水循環配管94と湯循環配管73との間で熱交換が行われる。
【0043】
第2給湯管82は、給湯混合弁72と蛇口92とを連絡し、途中に給湯流量センサ43が配置されている。
【0044】
共通管35及び排水管39とは、タンク31の底部と排水口40とを連絡している。共通管35と排水管39とは、三方弁38を介して接続されている。つまり、共通管35は三方弁38の入口Aに接続され、排水管39は三方弁38の出口Bに接続されている。
【0045】
また、共通管35及び往き管36は、タンク31の底部とヒートポンプユニット2とを連絡している。共通管35と往き管36とは、三方弁38を介して接続されている。つまり、往き管36は三方弁38の出口Cに接続されている。
【0046】
戻り管37は、ヒートポンプユニット2とタンク31の底部とを連絡している。戻り管37の途中には、戻り三方弁52が設けられている。戻り三方弁52は、制御部4によって制御される。戻り分岐管37aは、戻り三方弁52とタンク31の頭部とを連絡している。制御部4は、戻り三方弁52を介して戻り管37内の水をタンク31の頭部へ流す。
【0047】
タンク31の側壁には、頭部から底部へ向かい一定間隔をおいて残湯量検知手段としてのタンク温度センサ44a〜44eが設けられている。タンク31の各高さ位置の湯温をタンク温度センサ44a〜44eで検知することによって湯の温度と残湯量が算出される。なお、タンク温度センサ44a〜44eを総称してタンク温度センサ44とよぶ。
【0048】
(3)風呂のお湯はり
風呂のお湯はりは、給湯装置の主要機能である。ここで言う、お湯はりとは、お湯はり以外に、高温たし湯、たし湯、さし水など、お湯はり混合弁71を介して風呂(浴槽)に目標温度の湯を供給する機能全般を指しており、以後、お湯はり、高温たし湯、たし湯、及びさし水のいずれかの機能を行う制御を「お湯はり制御」とよぶ。
【0049】
一般に、1つのタンクに貯えられた湯が、蛇口(又はシャワー)への給湯および風呂のお湯はりの両方に常に使用されるときには問題はないが、両者の一方に湯が使用されているときに他方にも湯が使用されたとき、或いは、両者に湯が使用されているときにいずれか一方の湯の使用が中止されたときには、お湯はり混合弁71或いは給湯混合弁72の開度が急に開いたり閉じたりするので、両者のどちらか一方だけに使用されるときに比べて制御のバランスが崩れ易い。
【0050】
上記のような場合、浴槽に供給される湯の温度が変動してもユーザーは気にならないが、蛇口またはシャワー(以後、蛇口等とよぶ)の湯温が変動したときにはユーザーは湯温の変動を直に感じるので、不快になる。
【0051】
したがって、蛇口等に給湯しているときに、お湯はりの要求があった場合でも、蛇口等への給湯温度が変動するような事態は回避されるべきである。
【0052】
そこで、本実施形態では、ユーザーからのお湯はり要求があった場合でも、お湯はり混合弁71の開度を、蛇口等から出る湯の温度に変動を与えない開度、つまり、お湯はり混合弁71の開度を直ぐに目標温度のお湯を出すための開度にするのではなく、お湯はり混合弁71の開度を目標温度とは異なる温度のお湯若しくは水を供給するための開度となるように制御されている。
【0053】
(3−1)お湯はり動作
(3−1−1)お湯はり要求があるとき
図4は、お湯はり動作の制御フローチャートである。以下、図4の制御フローチャートの各ステップに沿ってお湯はり動作の制御について説明する。制御部4は、ステップS1において、ユーザーからお湯はり要求があるか否かを判定し、お湯はり要求があると判定したときはステップS2へ進み、お湯はり混合弁71の初期開度を決定する。さらに、制御部4は、ステップS3へ進み、そこでお湯はり混合弁71の目標開度をステップS2で決定された初期開度に設定する。
【0054】
お湯はり制御において、お湯はり混合弁71の初期開度は、目標温度の湯を供給するために必要な開度とは異なる開度である。但し、初期開度は、蛇口等に供給している湯の量が少ないときと、多いときとで区別されており、少ないときの初期開度は、多いときの初期開度よりも大きい。なお、蛇口等に供給している湯の量は、給湯混合弁72から出る湯の流量であるので、第2給湯管82に設置された給湯流量センサ43によって検出される。
【0055】
また、ユーザーが、お湯はり、高温たし湯、たし湯、及びさし水のいずれかの機能を要求したとき、機能によっては、お湯はり混合弁71から供給される湯の目標温度も変わるので、初期開度は目標温度に基づいても変更される。
【0056】
また、ユーザーが、お湯はり、高温たし湯、及びたし湯のいずれかの機能を要求したとき、そのときのタンク31内の湯の沸き具合によっても初期開度は変更される。なお、タンク31内の湯温はタンク温度センサ44a〜44eによって検出される。
【0057】
もちろん、初期開度は、給湯流量センサ43の検出流量、タンク温度センサ44a〜44eの検出温度、及び、目標温度の少なくとも1つ以上に基づいて変更されてもよいし、初期開度が一定値に固定されてもよい。
【0058】
次に、制御部4は、ステップS4において、お湯はり混合弁71が目標の初期開度に到達したか否かを判定し、目標の初期開度に達したと判定したときはステップS5に進み、そこでお湯はり電磁弁61を開く。さらに、制御部4は、ステップS6に進み、そこでお湯はり混合弁71から出る湯の温度が目標温度に追従するようにフィードバック制御する。なお、お湯はり混合弁71から出る湯の温度は第1温度センサ41で検出されている。
【0059】
また、制御部4は、給湯混合弁72の開度調節を第2温度センサ42の検出温度に基づいて、フィードバック制御によって行っている。第2温度センサ42は、給湯混合弁72から出る湯の温度を検出するセンサであり、第2給湯管82に配置されている。
【0060】
さらに、制御部4は、お湯はり混合弁71の開度調節を行うときの開度調節の周期を給湯混合弁72の開度調節の周期よりも0.5秒程度遅くしており、お湯はり混合弁71の開度が初期開度から、徐々に、目標温度の湯を供給するために必要な開度へ近づくので、お湯はりにまわされる湯量若しくは水の量も徐々に変化する。その結果、給湯にまわされる湯量若しくは水の量が瞬間的に変動することが抑制され、給湯温度の変動も抑制される。
【0061】
(3−1−2)お湯はり要求がないとき
次に、制御部4は、ステップS7において、お湯はり要求がなくなったか否かを判定し、お湯はり要求がないと判定したときには、ステップS8へ進み、お湯はり目標温度を終期目標温度に設定する。お湯はり混合弁71の動作としては、目標開度を終期開度に設定する。但し、終期開度は、初期開度の求め方とは異なり、制御部4が、お湯はり混合弁71から出る湯の温度(以後、お湯はり温度とよぶ)が目標温度とは異なる終期目標温度(例えば、20°C)に到達するように開度を調節した結果として得られる。
【0062】
したがって、ステップS9において、制御部は、お湯はり温度が終期目標温度になるようにお湯はり混合弁71をフィードバック制御する。同時に、ステップS10において、制御部4は、フィードバック制御の開始からの経過時間(以後、フィードバック制御時間とよぶ)を計時する。
【0063】
なお、お湯はり要求なしとは、お湯はり、高温たし湯、たし湯、及びさし水のいずれかの機能が働いているとき、その働いている機能が実質的に終了したこと、或いは、ユーザーからリモコン5を介して、その働いている機能を停止させる操作があったことを意味する。
【0064】
リモコン5は、お湯はり、高温たし湯、たし湯、及びさし水の機能を停止させるための操作部(図示せず)と、お湯はり、高温たし湯、たし湯、及びさし水の機能が働いているか否かを表示する表示部(図示せず)とを有している。
【0065】
制御部4は、お湯はり、高温たし湯、たし湯、及びさし水のいずれかの機能が働いているときに、リモコン5を操作部を介してその機能を停止させる操作入力があった場合、その機能を停止したことをリモコン5の表示部に表示させ、その後、お湯はり混合弁71の開度を、お湯はり温度が終期目標温度に到達するように調節する。
【0066】
なぜなら、リモコン5の操作部から中止指令を出したあとも終期開度になるまで継続するからといって、お湯はりなどの表示を残したままにした場合、ユーザーがお湯はりなどを終了させることができないと誤解する可能性があり、それを防止するためである。
【0067】
次に、制御部4は、ステップS11において、お湯はり温度が終期目標温度に到達したか否かを判定し、お湯はり温度が終期目標温度に到達したと判定したときはステップS12へ進み、お湯はり電磁弁61を閉じる。
【0068】
また、制御部4は、ステップS11において、お湯はり温度が終期目標温度に到達していないと判定したときはステップS111へ進み、フィードバック制御時間が所定時間を経過したか否かを判定し、フィードバック制御時間が所定時間を経過したと判定したときは、お湯はり電磁弁61を閉じる。
【0069】
また、制御部4は、ステップS111において、フィードバック制御時間が所定時間を経過していないと判定したときは、引き続きフィードバック制御時間の計時の続行と監視を行う。
【0070】
制御部4がステップS111でフィードバック制御時間が所定時間を経過したか否かを判定する理由は、お湯はり温度が終期目標温度に収束しないためにお湯はり制御が終了しない場合、目標温度とは異なる温度の湯が浴槽に継続して流れることを回避するためである。本実施形態では、所定時間が経過後、お湯はり温度が終期目標温度に到達しないときはお湯はり電磁弁61が閉じられるので、目標温度とは異なる温度の湯が浴槽に継続して流れることは回避される。
【0071】
(4)初期開度および終期開度を導入することの効果の確認
図5Aは、本発明の一実施形態に係る給湯装置において、お湯はり混合弁およびお湯はり電磁弁の動作に対するお湯はり温度と給湯温度の変化を示すグラフである。また、図5Bは、従来の給湯装置において、お湯はり混合弁およびお湯はり電磁弁の動作に対するお湯はり温度と給湯温度の変化を示すグラフである。
【0072】
図5Aおいて、本実施形態では、お湯はり混合弁71の開度調節に初期開度および終期開度を導入しているので、例えば、ある時点でリモコン5から制御部4にお湯はり要求があったとき、制御部4は、t1時間かけてお湯はり混合弁71の開度を初期開度にする。
【0073】
お湯はり混合弁71の開度が初期開度になった時点で、制御部4は、お湯はり電磁弁61を開ける。このとき、給湯温度の変動は、お湯はり混合弁71の開度が目標温度の湯を供給するために必要な開度のままでお湯はりが開始されるとき(図5B参照)に比べて、給湯温度の変動が抑制されている。
【0074】
その後、制御部4は、お湯はりが終了するまで、或いは、ユーザーがリモコン5で強制的にお湯はりを停止するまでお湯はり混合弁71から目標温度の湯を供給させる。
【0075】
お湯はり電磁弁61が開いてからt2時間経過して、お湯はり要求がなくなったとき、制御部4は、お湯はり温度を目標温度よりも低い終期目標温度になるように、お湯はり混合弁71の開度を調節する。t3時間経過後、お湯はり温度が終期目標温度となったとき制御部4はお湯はり混合弁71の開度が終期開度になった判定し、お湯はり電磁弁61を閉じる。このとき、給湯温度の変動は、お湯はり混合弁71の開度が目標温度の湯を供給するために必要な開度のままでお湯はり電磁弁61が閉じられるとき(図5B参照)に比べて、給湯温度の変動が抑制されている。なお、t3時間が所定時間に達しても、お湯はり温度が終期目標温度にならないとき、制御部4は強制的にお湯はり電磁弁61を閉じる。
【0076】
それに対し、図5Bにおいて、従来の給湯装置では、お湯はり混合弁71の開度調節に初期開度および終期開度を導入していないので、お湯はり要求があったとき、お湯はり混合弁71の開度は直ちに目標開度と到達するように制御され、目標開度に到達したときお湯はり電磁弁61が開く。お湯はり電磁弁61が開くと同時に目標温度に達したお湯が浴槽に供給され、この直後、給湯温度が激しく変動している。
【0077】
また、お湯はり要求がなくなったときも、お湯はり電磁弁61が直ちに閉じ、この直後に給湯温度が激しく変動している。
【0078】
以上のように、本実施形態の給湯装置1のように、初期開度および終期開度を導入することの効果は格別である。
【0079】
(5)特徴
(5−1)
給湯装置1では、お湯はり混合弁71の開度を初期開度にしてお湯はりをすることによって、お湯はり混合弁71の開度が、目標温度の湯を供給するために必要な開度のままでお湯はりを開始するときに比べて、給湯温度の変動が抑制される。なお、制御部4は、初期開度を、給湯流量センサ43の検出流量、タンク温度センサ44の検出温度、及び目標温度の少なくとも1つ以上に基づいて変更する。
【0080】
(5−2)
給湯装置1では、制御部4は、お湯はり混合弁71の開度調節の周期を給湯混合弁72の開度調節の周期よりも遅くしている。お湯はり混合弁71の開度は、初期開度から徐々に目標温度の湯を供給するために必要な開度へ近づくので、給湯にまわされる湯量若しくは水の量が瞬間的に変動することが抑制される。
【0081】
(5−3)
給湯装置1では、お湯はり混合弁71の開度が終期開度になってからお湯はり電磁弁61を閉めることによって、給湯にまわされる湯量若しくは水の量が瞬間的に変動することが抑制されるので、給湯温度の変動も抑制される。なお、制御部は、終期開度を、給湯流量センサ43の検出流量、タンク温度センサ44の検出温度、及び目標温度の少なくとも1つ以上に基づいて変更する。
【0082】
(5−4)
給湯装置1では、お湯はり混合弁71から出る湯の温度が終期目標温度に収束しない場合、所定時間が経過後、お湯はり混合弁71から出る湯の温度が終期目標温度に到達しないときはお湯はり電磁弁61が閉じられるので、目標温度とは異なる温度の湯が浴槽に継続して流れることは回避される。
【0083】
(5−5)
給湯装置1では、リモコン5にお湯はり制御を停止させる操作入力があったとき、お湯はり制御が停止されたことをリモコン5に表示させ、ユーザーがお湯はりの終了ができないと誤解すること防止している。
【0084】
(6)変形例
実施形態では、制御部4は、お湯はり混合弁71の開度調節の周期を給湯混合弁72の開度調節の周期よりも遅くすることによって、給湯にまわされる湯量若しくは水の量が瞬間的に変動することを抑制しているが、制御方法はそれだけに限定されない。
【0085】
例えば、制御部4が、お湯はり混合弁71の開度調節のフィードバックゲインを給湯混合弁72の開度調節時のフィードバックゲインよりも弱くする、という制御方法でも、給湯温度の変動を抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
以上のように、本発明によれば、お湯はり開始による給湯温度の変動が抑制されるので、1つのタンクに貯えられたお湯を混合弁で水と混合して供給する給湯装置に有用である。
【符号の説明】
【0087】
1 給湯装置
4 制御部
5 リモコン(遠隔操作装置)
31 タンク
41 第1温度センサ
42 第2温度センサ
43 給湯流量センサ
44 タンク温度センサ
44a,44b,44c,44d,44e タンク温度センサ
51 給水管
61 お湯はり電磁弁(開閉弁)
71 お湯はり混合弁(第1混合弁)
72 給湯混合弁(第2混合弁)
81 第1給湯管(第1給湯ライン)
82 第2給湯管(第2給湯ライン)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0088】
【特許文献1】特開2009−115395号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク(31)に貯えられた湯と給水管(51)からの水とを混合して利用側に供給する給湯装置であって、
浴槽にお湯をためるための第1給湯ライン(81)と、
前記浴槽以外の給湯接続口に延びる第2給湯ライン(82)と、
前記タンク(31)からの湯と前記給水管(51)からの水とを混合して第1給湯ライン(81)に流す第1混合弁(71)と、
前記タンク(31)からの湯と前記給水管(51)からの水とを混合して第2給湯ライン(82)に流す第2混合弁(72)と、
前記第1給湯ライン(81)に設置される開閉弁(61)と、
前記開閉弁(61)、前記第1混合弁(71)及び前記第2混合弁(72)を制御する制御部(4)と、
を備え、
前記制御部(4)は、前記浴槽に目標温度の湯を供給する湯張り制御において、前記第1混合弁(71)の開度を前記目標温度の湯を供給するために必要な開度とは異なる初期開度にしてから前記開閉弁(61)を開ける、
給湯装置。
【請求項2】
前記第1混合弁(71)から出る湯の温度を検出する第1温度センサ(41)と、
前記第2混合弁(72)から出る湯の温度を検出する第2温度センサ(42)と、
をさらに備え、
前記制御部(4)は、前記第1混合弁(71)の開度調節を前記第1温度センサ(41)の検出温度に基づいて、前記第2混合弁(72)の開度調節を前記第2温度センサ(42)の検出温度に基づいて、フィードバックによって行っており、
さらに、前記制御部(4)は、前記湯張り制御時、前記第1温度センサ(41)の検出温度が前記目標温度に到達するように前記第1混合弁(71)の開度調節を行うとともに、前記開度調節の周期を前記第2混合弁(72)の開度調節の周期よりも遅くする、
請求項1に記載の給湯装置。
【請求項3】
前記第1混合弁(71)から出る湯の温度を検出する第1温度センサ(41)と、
前記第2混合弁(72)から出る湯の温度を検出する第2温度センサ(42)と、
をさらに備え、
前記制御部(4)は、前記第1混合弁(71)の開度調節を前記第1温度センサ(41)の検出温度に基づいて、前記第2混合弁(72)の開度調節を前記第2温度センサ(42)の検出温度に基づいて、フィードバックによって行っており、
さらに、前記制御部(4)は、前記湯張り制御時、前記第1温度センサ(41)の検出温度が前記目標温度に到達するように前記第1混合弁(71)の開度調節を行うとともに、前記開度調節のフィードバックゲインを前記第2混合弁(72)の開度調節時のフィードバックゲインよりも弱くする、
請求項1に記載の給湯装置。
【請求項4】
前記制御部(4)は、前記第1混合弁(71)から前記目標温度の湯を所定量供給した後、前記第1混合弁(71)の開度を前記目標温度の湯を供給するために必要な開度とは異なる終期開度にしてから前記開閉弁(61)を閉める、
請求項2又は請求項3に記載の給湯装置。
【請求項5】
前記第2混合弁(72)から出る湯の流量を検出する給湯流量センサ(43)と、
前記タンク(31)に貯められている湯の温度を検出するタンク温度センサ(44)と、
をさらに備え、
前記制御部(4)は、前記第1混合弁(71)の前記初期開度および/または前記終期開度を、
前記給湯流量センサ(43)の検出流量、
前記タンク温度センサ(44)の検出温度、及び、
前記目標温度、
の少なくとも1つ以上に基づいて変更する、
請求項4に記載の給湯装置。
【請求項6】
前記制御部(4)は、前記第1混合弁(71)から出る湯の温度が前記目標温度とは異なる終期目標温度に到達するように前記終期開度を調節し、
さらに前記制御部(4)は、所定時間が経過後、前記第1混合弁(71)から出る湯の温度が前記終期目標温度に到達しない場合は、前記開閉弁(61)を閉じる、
請求項4に記載の給湯装置。
【請求項7】
前記湯張り制御を開始および停止させる操作部と、前記湯張り制御が実行しているか否かを表示する表示部とを有する遠隔操作装置(5)をさらに備え、
前記制御部(4)は、前記遠隔操作装置(5)に前記湯張り制御を停止させる操作入力があったとき、前記湯張り制御を停止したことを前記遠隔操作装置(5)の前記表示部に表示させた後、前記第1混合弁(71)の開度を前記終期開度にする、
請求項4に記載の給湯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【公開番号】特開2012−141090(P2012−141090A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293656(P2010−293656)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】