説明

給炭機

【課題】簡単な構成で石炭に同伴して持込まれる汚泥がベルトコンベヤの後方に落下することを防止可能な給炭機を提供する。
【解決手段】石炭をミルへ供給するベルトコンベヤ12と、該ベルトコンベヤ12を収納し、石炭貯槽の石炭供給管と連結し、石炭を該ミル4導く排出ノズルを備えるケーシングと、該ケーシング内であって、石炭が該ベルトコンベヤ12の後方18に落下することを防止するサイドフード31と、を備える給炭機10において、該サイドフード31は、少なくとも上部が固定され下部が該ベルトコンベヤ12の長手方向に揺動可能な複数の可撓体54を備え、該複数の可撓体54は、該ベルトコンベヤ12の短手方向に隙間なく配設され、該可撓体54の下端と該ベルトコンベヤ12の上端とは所定の間隔を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粉炭焚きボイラなどで使用される石炭バンカからミルへ送る石炭の供給量を制御する給炭機に関する。
【背景技術】
【0002】
図5は、火力発電所などで使用される微粉炭焚きボイラへ石炭を供給する石炭供給設備1の概略的構成の一部を示す図である。周知のように火力発電所など用いられる微粉炭を燃料とする微粉炭燃焼装置では、貯炭場に貯留した石炭をコンベヤで石炭バンカ2に運び、ここで一度貯留した後、さらに石炭バンカ2の下部に設けた給炭機3を介して石炭をミル4に送り、ここで石炭を、粉砕、分級した後、所定の大きさの微粉炭をボイラ(図示を省略)へ空気搬送し燃焼させる。
【0003】
給炭機には、テーブルフィーダ、スクリューフィーダ、ベルトフィーダタイプなどいくつかの型式の装置が開発されているが、発電所で使用される微粉炭燃焼装置では、ベルトフィーダタイプの給炭機がよく使用されている。ベルトフィーダタイプの給炭機3は、ケーシング11内にベルトコンベヤ12を収納し、ケーシング11の上面一端部近傍には、開口部13が穿設され、この開口部13を覆うように石炭バンカ2の石炭供給管15が取付けられている。さらにケーシング11の底面の他端部近傍には、ミル4へ石炭を供給する排出ノズル16が設けられている。さらに給炭機3は、図示を省略した計量装置を備え、ボイラの負荷に応じてベルトコンベヤ12の回数数を増減させ、石炭供給管15から石炭を受入れ、排出ノズル16を通じて所定量の石炭をミル4へ供給する。またケーシング11内部には、石炭バンカ2から供給された石炭がベルトコンベヤ12の後方18及び側方17に落下することを防止するために、フードが取付けられている。このフードは、後面をカバーするサイドフード21、側面をカバーするガイドフード(図示を省略)からなり、前面は開放され、サイドフード21は、石炭供給管15のほぼ真下に取付けられている。
【0004】
このように構成される石炭供給設備1を用いて、ヤードに野積みされた石炭をボイラへ供給すると、石炭に含まれる水分が給炭機3を経てそのままミル4へ送り込まれる。この水分は、ミル4に悪影響を与えるためこれを解決する方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。この方法は、石炭供給管を末広がりな錐状となるようケーシング内に延長させ、この石炭供給管の下端近傍に、この石炭供給管内壁面に沿って流下する水を受けるための環状樋を設けるとともに、この環状樋の底部に、流下した水をケーシングの外部に導く排水管を設けるとするものである。これより、石炭に含まれる水分を減少させた状態で石炭をミルへ送ることが可能となり、ミルにおける石炭の乾燥時間が減少するなど優れた効果を奏するとする。
【0005】
給炭機3については、さらに別の課題もある。これは石炭に同伴して持ち込まれる汚泥が給炭機3のベルトコンベヤ12の後方18に堆積し、給炭機3の運転を阻害すると言うものである。図6は、図5のVI部の拡大図であって、給炭機3のベルトコンベヤ12の後方18に汚泥70が堆積している様子を示した図である。この汚泥70は、石炭60に同伴して持ち込まれる汚泥70が乾燥し硬くなったものであり、ベルトコンベヤ12の後方18に落下している汚泥70の大きさは、200mmから300mm程度の大きさである。この大きさは、サイドフード21の下端22とベルトコンベヤ12の上端19との隙間d3よりも大きい。汚泥70がベルトコンベヤ12の後方18に落下し堆積すると、汚泥70がベルトコンベヤ12に接触し、ベルトコンベヤ12の動きを阻害するため、給炭機3の運転を停止し、蓄積した汚泥70を取出す作業が必要となる。この作業は、石炭60の炭種、石炭60の水分量などによって異なるものの、1週間に1回程度の割合で汚泥70を取出すケースもある。
【特許文献1】特開平11−76856号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
石炭60に同伴して給炭機3に持ち込まれる汚泥70がベルトコンベヤ12の後方18に落下することを防止する簡単な方法として、サイドフード21の下部にゴム板など可撓性ある部材を取付け、この部材の下端をベルトコンベヤ12の上端19に当接させ、サイドフード21とベルトコンベヤ12との隙間d3をなくする方法が考えられる。しかしながらこの方法では、可撓性部材の下端とベルトコンベヤ12の上端19との間に汚泥70等が入り込み、ベルトコンベヤ12に大きな負荷が加わり、ベルトコンベヤ12は過負荷で停止してしまう。汚泥70がベルトコンベヤ12の後方18にいかに落下するのか、メカニズムが十分に検討されていないこともあって、現在までのところ解決策がないのが実情である。
【0007】
本発明の目的は、簡単な構成で石炭に同伴して持込まれる汚泥がベルトコンベヤの後方に落下することを防止可能な給炭機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、石炭をミルへ供給するベルトコンベヤと、該ベルトコンベヤを収納し、該ベルトコンベヤへ石炭を供給する石炭貯槽の石炭供給管と連結し、該ベルトコンベヤが輸送する石炭を該ミルへ導く排出ノズルを備えるケーシングと、該ケーシング内であって、石炭が該ベルトコンベヤの後方に落下することを防止する、該ベルトコンベヤの長手方向に直交し該石炭供給管の下方に取付けられた該ベルトコンベヤの上端と所定の隙間を有するサイドフードと、を備える給炭機において、
該サイドフードは、少なくとも上部が固定され下部が該ベルトコンベヤの長手方向に揺動可能な複数の可撓体を備え、該複数の可撓体は、該ベルトコンベヤの短手方向に隙間なく配設され、該可撓体の下端と該ベルトコンベヤの上端とは所定の間隔を有することを特徴とする給炭機である。
【0009】
また本発明は、石炭をミルへ供給するベルトコンベヤと、該ベルトコンベヤを収納し、該ベルトコンベヤへ石炭を供給する石炭貯槽の石炭供給管と連結し、該ベルトコンベヤが輸送する石炭を該ミルへ導く排出ノズルを備えるケーシングと、該ケーシング内であって、石炭が該ベルトコンベヤの後方に落下することを防止する、該ベルトコンベヤの長手方向に直交し該石炭供給管の下方に取付けられた該ベルトコンベヤの上端と所定の隙間を有するサイドフードと、を備える給炭機において、
該サイドフードは、上下2つのサードフードを備え、上部サイドフードはケーシングに固定された板状体であり、下部サイドフードは、上部サイドフードの下部に上部が固定され下部が該ベルトコンベヤの長手方向に揺動可能な複数の可撓体であり、該複数の可撓体は、該ベルトコンベヤの短手方向に隙間なく配設され、該可撓体の下端と該ベルトコンベヤの上端とは所定の間隔を有することを特徴とする給炭機である。
【0010】
また本発明は、前記給炭機において、前記複数の可撓体は、一枚の板状の可撓体に複数のスリットを設け形成することを特徴とする。
【0011】
また本発明は、前記給炭機において、前記上部サイドフードは、下部が山型に切取られジグザグの形状を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、石炭がベルトコンベヤの後方に落下することを防止するサイドフードを備える給炭機において、サイドフードは、少なくとも上部が固定され下部がベルトコンベヤの長手方向に揺動可能な複数の可撓体を備えるので、汚泥が可撓体に付着しても可撓体が揺動すると可撓体表面に引張又は圧縮応力が働く。この結果、汚泥と付着している可撓体との間の付着力が弱まり、汚泥はサイドフードの裏面に回り込む前にサイドフードから剥離するので、ベルトコンベヤの後方に汚泥が落下することを防止できる。よって従来の給炭機と異なり、サイドフードに付着して成長した汚泥がベルトコンベヤの後方に落下することがなく、給炭機を停止してこれらを除去する必要がない。さらにサイドフードが複数の可撓体から構成されるので、各可撓体は、各々自在に揺動する。この結果、サイドフードに付着した汚泥は、さらに剥離しやすくなる。また、複数の可撓体は、ベルトコンベヤの短手方向に隙間なく配設され、可撓体の下端とベルトコンベヤの上端とは所定の間隔を有するので、石炭供給管を通じて供給される石炭が、ベルトコンベヤの後方に落下することはない。また、サイドフードの構造が簡単であるので、安価に実施することができると共に、既設の給炭機へも容易に適用することができる。
【0013】
また本発明によれば、複数の可撓体は、一枚の板状の可撓体に複数のスリットを設け形成することができるので安価に又簡単に製造することができる。
【0014】
また本発明によれば、上部サイドフードは、下部が山型に切取られジグザグの形状を有するので、下部サイドフードはより自由に揺動することができる。これにより、サイドフードに付着した汚泥を、サイドフードの裏面に回り込む前に剥離させることが可能となり、ベルトコンベヤの後方に乾燥した汚泥が落下、堆積することがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1、図2及び図3は、本発明の実施の一形態としての給炭機10の概略的構成の一部を示す斜視図、給炭機10の概略的構成の一部を示す断面図、及びフード30の一部を示す斜視図であって、第二サイドフード50を取外した状態を示す図である。図5及び図6と同一の部材には同一の符号を付して、詳細な説明は省略する。
【0016】
本実施形態に示す給炭機10の基本的な構成は、図5及び図6に示す従来の給炭機3と同一であり、給炭機10は、略直方体のケーシング11内にベルトコンベヤ12を収納し、ケーシング11の上面一端部近傍には、石炭を受入れるための開口部(図示を省略)が穿設されている。この開口部(図示を省略)に、図示を省略した石炭バンカの石炭供給管が接続され、ケーシング11の底面の他端部近傍に設けられた排出ノズルを通じてミルへ石炭を供給する。給炭機10は、図示を省略した計量装置を備え、ボイラの負荷に応じてベルトコンベヤ12の回転数を増減させ、所定量の石炭をミルへ供給する。ケーシング11内部には、石炭バンカから供給された石炭がベルトコンベヤ12の後方18及び側方17に落下することを防止するためのフード30が取付けられている。このフード30は、後面をカバーするサイドフード31、側面をカバーするガイドフード32(32a、32b)からなり、前面は開放されている。サイドフード31は、石炭供給管(図示を省略)の下方に、石炭供給管の壁面とほぼ同一平面となるように取付けられている。これらの点についても、従来の給炭機3のフードと同一である。
【0017】
本給炭機10の特徴は、石炭60がベルトコンベヤ12の後方18及び側方17に落下することを防止するためのフード30、特にサイドフード31の構造、形状、取付要領などにある。サイドフード31は、上下2段に取付けられたサイドフードで構成され、上段には、ケーシング11の内壁に固定される第一サイドフード40、下段には、この第一サイドフード40の下部41に固定される第二サイドフード50を備える。
【0018】
第一サイドフード40は、金属製の板状体でケーシング11の内壁にベルトコンベヤ12の長手方向に直交するように固定されている。第一サイドフード40の横幅は、ベルトコンベヤ12の横幅よりも若干狭い。また第一サイドフード40は、下部41の一部が複数山型に切取られジグザグとなっている点に形状上の特徴があり、ベルトコンベヤ12の上端19と下端42との間隔d1が、従来の給炭機3に比較し大きくなっている。
【0019】
第二サイドフード50は、可撓性の部材からなる板状体、例えばゴム板であり、略矩形の形状を有する。横幅は、第一サイドフード40と略同一であり、第一サイドフード40の下部41に押え板36及びボルトナット37により固定されている。第二サイドフード50は、上下方向にスリット51が設けられ、このスリット51は、ベルトコンベヤ12の短手幅方向に複数、本実施形態では7本設けられている。さらにスリット51の上端部には、孔53が穿設されている。第二サイドフード50は、このスリット51の上端が第一サイドフード40の下端42とほぼ一致するように第一サイドフード40に固定されているので、8本の短冊状体54は、各自独立して動くことができる。特にベルトコンベヤ12の長手方向の動きは、動きを制限する他の部材がないため下部57は自由に揺動することができる。また、ベルトコンベヤ12の上端19と第二サイドフード50の下端52との間隔d2は、従来の給炭機3のサイドフード21の下端22とベルトコンベヤ12の上端19との間隔d3とほぼ同じである。
【0020】
次ぎに本実施形態に示すサイドフード31の働きを、汚泥70がサイドフード31に付着、剥離する想定メカニズムとともに説明する。図4は、本給炭機10の第二サイドフード50に付着した汚泥70が、第二サイドフード50から剥離する想定メカニズムを説明するための図である。また図7は、従来の給炭機3のサイドフード21に付着した汚泥70が、サイドフード21から剥離する想定メカニズムを説明するための図である。従来の給炭機3において、石炭60に同伴され給炭機3に送られた汚泥70が、固化しベルトコンベヤ12の後方18に落下するメカニズムは、次ぎのように想定される。
【0021】
屋外に貯蔵された石炭60のように水分を含む石炭60を給炭機3へ送ると、石炭に同伴して給炭機3に持込まれた汚泥70がサイドフード21に付着する。この汚泥70には粘度質のものも含まれ、この汚泥70は、給炭機3の運転時間ととも付着量が増加し成長する。給炭機3のサイドフード21は、ケーシング11内に取付けられており、さらにケーシング11は密閉されているため、ミル4の熱がサイドフード21に付着した汚泥70に伝わり、汚泥70に含まれる水分は蒸発し、汚泥70は乾燥し硬くなる。サイドフード21には、石炭供給管15から供給される石炭60が衝突するものの、乾燥し強固にサイドフード21に付着した汚泥70は、この程度の衝撃力ではサイドフード21から剥離しない。石炭60が給炭機3に供給されさらに時間が経過すると、この汚泥70が石炭60に同伴する汚泥70を取込ながらサイドフード21の裏面23に回り込み、ある程度の大きさに成長すると、汚泥70の一部がベルトコンベヤ12の上端19に接触する。これより汚泥70に衝撃が加わり、ひび71が入ると同時にサイドフード21から剥離する。このときサイドフード21の裏面23に位置する汚泥70bは、サイドフード21が邪魔となってベルトコンベヤ12の上に落下しても前方に進めず、結局、ベルトコンベヤ12の後方18に落下するものと推察される。
【0022】
これに対して、本実施形態に示す給炭機10のサイドフード31から汚泥70が剥離するメカニズムは次ぎのように推察される。第一サイドフード40は、金属製の板からなりケーシング11の内壁に固定されているので、従来の給炭機3と同様、第一サイドフード40に付着した汚泥70は、自重により第一サイドフード40の壁面を流下する。このとき一部の汚泥70は、他の汚泥70を取込ながら成長する。第一サイドフード40の下端42に達した汚泥70は、さらに第二サイドフード50の壁面を流下する。このとき、第一サイドフード40の下端42は、シグザグの形状を有しているので突起の部分に汚泥70が集中し、主にここから第二サイドフード50へ移動する。第二サイドフード50に付着した汚泥70は、従来の給炭機3と同様に、時間ともに成長し、ミル4からの熱を受けて固化する。
【0023】
第二サイドフード50は、上部56が固定され、下部57が固定されていない複数の可撓性を有する短冊状体54で構成されているので、短冊状体54への石炭60の衝突、又は給炭機10の振動により各短冊状体54が独立してベルトコンベヤ12の長手方向に揺動することができる。短冊状体54が撓むと短冊状体54の表面に引張応力、又は圧縮応力が生じ短冊状体54の表面に伸び、縮みが生じる。これに対して第二サイドフード50、つまり短冊状体54に付着した汚泥70は、固化しており、短冊状体54と同じように伸び、縮むことができないため、汚泥70は第二サイドフード50から剥離する。これにより汚泥70が大きく成長し、第二サイドフード50の裏面55に回り込む前に汚泥70が剥離することで、ベルトコンベヤ12の後方18に汚泥70が落下しないものと推察される。
【0024】
これらのことから、汚泥70をベルトコンベヤ12の後方18に落下することを防止するには、第二サイドフード50が供給される石炭60に接触し、又はケーシング11の振動により撓み、部材表面に引張応力、又は圧縮応力が生じることが必要である。本実施形態に示す第二サイドフード50は、上部56が固定され、下部57が固定されていないので、部材のたわみ量は、片持梁の撓みと同様に考えられる。短冊状体54のたわみ量は、短冊状体54に加わる荷重及びその位置、短冊状体54の形状(長さ、厚さ、幅)及び弾性係数の関数として表される。小さい荷重で大きく撓ませるには、短冊状体54の長さは長く、幅は狭く、厚さは薄く、部材の弾性係数は小さい方がよい。これらを本実施形態の給炭機10に当てはめて見ると、第一サイドフード40の下端42とベルトコンベヤ12の上端19との間隔d1を大きくし、第一サイドフード40の下部41に第二サイドフード50の上部56を固定することで、第二サイドフード50の固定部と自由端との距離が大きくなり、第二サイドフード50は適当に撓むことができる。また本実施形態に示す給炭機10では、第二サイドフード50に縦方向のスリット51を設け、第二サイドフード50を短冊状の部材の集合体としたので、一つの短冊状体54の幅が狭く、十分に撓むことができる。これについては、後述の実施例で実証済みである。
【0025】
さらに第二サイドフード50を短冊状の部材の集合体とすると、各短冊状体54がばらばらに動くことから、汚泥70が剥離しやすい。例えば、一の短冊状体54が下端52をベルトコンベヤ12の前方に撓ませても、隣りの短冊状体54もこれに倣って下端52をベルトコンベヤ12の前方に撓ませているとは限らず、逆にベルトコンベヤ12の後方18に下端52を撓ませている場合もある。よって隣合う二つの短冊状体54に汚泥70が付着しても、この汚泥70は剥離してしまう。この点からも、第二サイドフードは、短冊状体の集合とすることが好ましいと言える。なおここで言う短冊状とは、必ずしも薄い縦長の形状のみを意味するのではなく、広く正方形に近い形状のものも含む。後述の実施例においても、1つの短冊状の部材の縦横は、1.1倍程度である。
【0026】
一方、サイドフード31の本来の役割は、供給する石炭60がベルトコンベヤ12の後方18に落下することを防止するものであるので、この点を考慮して第二サイドフード50の仕様を決定する必要がある。例えば、第二サイドフード50の厚さを極端に薄くすると、たわみ量は大きくなるものの、石炭60がベルトコンベヤ12の後方18に落下することを防止することができない。同様に、第二サイドフード50の縦方向に多数のスリット51を設け、幅を極端に狭くした場合も同様である。また、第二サイドフード50が撓んだ状態のままでは、付着した汚泥70と第二サイドフード50との接触面に応力が働かず、汚泥70は剥離しない。よって、第二サイドフード50は、荷重が取除かれると元の状態に戻ることが可能な部材であることが必要である。
【0027】
さらに第二サイドフード50の下端52とベルトコンベヤ12の上端19との間隔d2も、石炭60がベルトコンベヤ12の後方18に落下しないように、石炭60の粒度に応じて適切に決定する必要がある。石炭60をベルトコンベヤ12の後方18に落下させないようにするには、第二サイドフード50の下端52とベルトコンベヤ12の上端19との間隔d2は、狭い方がよいけれども、極端に狭くすると、この隙間に石炭60又は汚泥70が挟まり、これが原因でベルトコンベヤ12が過負荷で停止することもあるので注意が必要である。
【0028】
上記実施形態では、第二サイドフード50を、一枚の可撓体にスリット51を設け、複数の短冊状体54を形成する例を示したけれども、第二サイドフード50の形成方法は、この方法に限定されるものではない。所定の形状、大きさを有する可撓性材料からなる短冊状体54を、ベルトコンベヤ12の短手方向に隙間なく配設することで第二サイドフード50を形成してもよい。
【実施例】
【0029】
実施例1
以下、発電所で実際に運用されている給炭機へ本発明を適用した例を示す。給炭機10の仕様を表1に示す。なお給炭機10の構成は、図1から図3に示す給炭機と同一である。
【表1】

【0030】
上記給炭機10に以下の要領でサイドフード31を取付けた。表2にサイドフードの寸法等を示した。
【表2】

【0031】
表2に示すように第一サイドフード40は、横幅が570mm、厚さが3mmの金属製の板であり、下端42とベルトコンベヤ12の上端19との間隔d1が80mmとなるように取付けた。また第一サイドフード40の下部41を幅方向に連続して4箇所山型に切取った(図3参照)。このときの下端42から山の頂部までの高さは15mmとした。さらに第一サイドフード40の両側面には、石炭60の落下を防止するためのガイドフード32a、32bを設けた。第二サイドフード50には、市販されている一般的なゴム板であって、厚さ3mmの天然ゴム(NR)製のゴム板を使用した。第二サイドフード50には、縦方向に長さ80mmのスリット51を幅方向に7本入れ、横幅W2が約71.3mmの8本の短冊状体54を形成した。さらに各スリット51の上端部に、直径6mmの孔53を穿設した。このゴム板をスリット51の上端が第一サイドフード40の下端42と一致するように、抑え板36及びボルトナット37を用いて第一サイドフード40に固定した。このとき、第二サイドフード50の下端52とベルトコンベヤ12の上端19との間隔d2は、16mmとした。この給炭機10を使用したところ、長期間にわたりベルトコンベヤ12の後方18に汚泥70が全く落下しなかった。
【0032】
比較例1
第二サイドフード50に縦方向のスリット51を設けなかった以外は、実施例1と同じである。このサイドフードを用いて給炭機を運転したところ、従来の給炭機と同様、ベルトコンベヤ12の後方18に汚泥70が落下した。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施の一形態としての給炭機10の概略的構成の一部を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の一形態としての給炭機10の概略的構成の一部を示す断面図である。
【図3】本発明の実施の一形態としての給炭機10のフード30の一部を示す斜視図であって、第二サイドフード50を取外した状態を示す図である。
【図4】図1の給炭機10の第二サイドフード50に付着した汚泥70が、第二サイドフード50から剥離する想定メカニズムを説明するための図である。
【図5】火力発電所などで使用される微粉炭焚きボイラへ石炭を供給する石炭供給設備1の概略的構成の一部を示す図である。
【図6】図5のVI部の拡大図であって、従来の給炭機3のベルトコンベヤ12の後方18に汚泥70が堆積している様子を示す図である。
【図7】従来の給炭機3のサイドフード21に付着した汚泥70が、サイドフード21から剥離する想定メカニズムを説明するための図である。
【符号の説明】
【0034】
2 石炭バンカ
4 ミル
10 給炭機
11 ケーシング
12 ベルトコンベヤ
15 石炭供給管
16 排出ノズル
18 ベルトコンベヤ後方
19 ベルトコンベヤ上端
30 フード
31 サイドフード
40 第一サイドフード
41 第一サイドフードの下部
50 第二サイドフード
51 スリット
52 第二サイドフードの下端
54 短冊状体
56 第二サイドフードの上部
57 第二サイドフードの下部
60 石炭
70 汚泥

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭をミルへ供給するベルトコンベヤと、該ベルトコンベヤを収納し、該ベルトコンベヤへ石炭を供給する石炭貯槽の石炭供給管と連結し、該ベルトコンベヤが輸送する石炭を該ミルへ導く排出ノズルを備えるケーシングと、該ケーシング内であって、石炭が該ベルトコンベヤの後方に落下することを防止する、該ベルトコンベヤの長手方向に直交し該石炭供給管の下方に取付けられた該ベルトコンベヤの上端と所定の隙間を有するサイドフードと、を備える給炭機において、
該サイドフードは、少なくとも上部が固定され下部が該ベルトコンベヤの長手方向に揺動可能な複数の可撓体を備え、該複数の可撓体は、該ベルトコンベヤの短手方向に隙間なく配設され、該可撓体の下端と該ベルトコンベヤの上端とは所定の間隔を有することを特徴とする給炭機。
【請求項2】
石炭をミルへ供給するベルトコンベヤと、該ベルトコンベヤを収納し、該ベルトコンベヤへ石炭を供給する石炭貯槽の石炭供給管と連結し、該ベルトコンベヤが輸送する石炭を該ミルへ導く排出ノズルを備えるケーシングと、該ケーシング内であって、石炭が該ベルトコンベヤの後方に落下することを防止する、該ベルトコンベヤの長手方向に直交し該石炭供給管の下方に取付けられた該ベルトコンベヤの上端と所定の隙間を有するサイドフードと、を備える給炭機において、
該サイドフードは、上下2つのサードフードを備え、上部サイドフードはケーシングに固定された板状体であり、下部サイドフードは、上部サイドフードの下部に上部が固定され下部が該ベルトコンベヤの長手方向に揺動可能な複数の可撓体であり、該複数の可撓体は、該ベルトコンベヤの短手方向に隙間なく配設され、該可撓体の下端と該ベルトコンベヤの上端とは所定の間隔を有することを特徴とする給炭機。
【請求項3】
前記複数の可撓体は、一枚の板状の可撓体に複数のスリットを設け形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の給炭機。
【請求項4】
前記上部サイドフードは、下部が山型に切取られジグザグの形状を有することを特徴とする請求項2又は3に記載の給炭機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−1435(P2008−1435A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−169915(P2006−169915)
【出願日】平成18年6月20日(2006.6.20)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】